雑談掲示板
【ゲームブック風】テキストクエストその3【リレー小説?】
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名前:時雨
投稿日:2018-01-14 22:04
ID:gX20EMvk
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当スレッドは、進行役が主導する物語を読み手が進めていくゲームブックもどきです!
今回は前回からの続きとなります。全部読まなくても大まかな流れが分かるよう定期的にまとめが入っているので良かったら見てね。
前々回→http://mhxbbs.com/thread/ta/new/67089.html
前回→http://mhxbbs.com/thread/ta/new/78531.html1、スレッドの概要
私達の分身たる主人公「あなた」の視点でMHXXの世界でハンター生活を送ります。
「あなた」がどんな結末をたどるかは物語の展開次第です。
皆で「あなた」を好きなように導いてあげましょう。【あらすじ】
その1 >>46(シナリオ42~45まで) その2 >>392(シナリオ46~47.5まで) その3>>631(シナリオ48~)
【入手した物】
>>47【オリジナル特殊個体図鑑】
その1>>49 その2>>6323、進行の流れ
クエストの提示(クエスト終了まで提示者が進行役の権利を得る)
↓
進行役が文章を書きつつ選択肢などの分岐を提示し、読み手がそれに答えながらクエストをすすめる
↓
クエスト成功!or失敗…
↓
たまにはクエスト以外のイベントなんかも!?
↓
次のクエストへ!4、ルール説明 ※必ずよくお読み下さい
基本的なマナーについて
・当スレッドの設定議論などは当スレッド内で行って構いませんので別途関連スレッドを建てないで下さるようお願いします。
・雑談、感想、アドバイスなども禁止しないので気軽に冷やかしてね!
進行役について
・前シナリオが終わった後、最も早くクエスト提示を行った者が次の進行役の権利を得るものとします。
・進行役の権利を得た者は目印として@を名前に入れて下さい。
・何らかの理由で進行役を続けられ無くなった場合、その旨を宣言することで権利を譲渡できます。(もう寝るとか続き思い付かないとか)
・進行役が権利移譲を宣言してから最も早く引継ぎを宣言した者がそのシナリオの進行役を引き継ぐものとします。
・選択肢が選ばれる等して進行の準備が整ってから三日以上書き込みがなかった場合、進行役の権利を譲渡したものとします。(出来れば前もって宣言してね)
・シナリオ本文の編集については丸々削除したり、意味が変わる程の大幅な修正などはしないようにお願いします。(誤字脱字、文章の微修正や加筆程度は良い)
作中の設定について
・原作ゲームのモンスターハンターシリーズ及びハンター大全シリーズの情報を、当スレッドで共有する基本的な世界観として扱います。(参考:MH大辞典wiki)
・提示するシナリオについては原作ゲーム内のクエストの他、オリジナルのクエスト等も可とします。
・登場させるキャラクターについては原作ゲーム内のキャラクターの他、オリジナルのキャラクターも可とします。
・登場させるモンスターについては原作ゲーム内のモンスターの他、それらの設定を一部変更した特殊個体としてならオリジナルモンスターも可とします。
・一から考えたオリジナルモンスターや人語を喋るモンスターなどについては作中での登場はご遠慮ください。
・登場させる装備については原作ゲーム以外のオリジナルの物はご遠慮ください。
その他
・上記のルールは全て原則として扱い、>>1の裁量で限定的に変更される場合があります。(要望なども相談に応じます)
・当スレッドの進行、運用に問題が発生した際は>>1が調整、決定する権限を持つものとします。 -
2
名前:時雨
投稿日:2018-01-14 22:18
ID:gX20EMvk
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恐らくはスレ編集等を代役ですが担当しなければならないのでしょう。
至らぬところは沢山あるでしょうが、皆様色々アドバイス等お願い致します。
と言う訳で前回のシナリオ進行役である難亭・凝態氏、シナリオ42『若芽萌ゆ、古代の森に、紅葉の 』の続きをよろしくお願いします。 -
3
名前:暇
投稿日:2018-01-14 22:25
ID:8i.qyjh2
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スレ立てお疲れ様です
1レスは残して❤って言ったのに普通に埋められてて草生えますよ
最後の自分のレス編集すれば足りるからままエアロ(寛容)前回までのあらすじ
新天地「遺群嶺」の探索を任されたあなたは、そこで謎の古龍、天彗龍バルファルクと邂逅する。
討伐作戦が失敗し、行方を眩ませたバルファルクとの決戦が近い事を予感しながらも、あなたは今、新人ハンター達を庇いながら凶暴竜から逃げ回る羽目に陥っていた。
今回はいよいよ本格的に追い回されるシナリオ42後半からスタートです。と前回同様開幕のあらすじを入れてみる。
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4
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-14 22:36
ID:2vNnRjOI
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自分の目の前で、一匹のマッカォが転倒する。
唐突の事態に驚いた俺だが、巻き込まれて転ぶ訳にはいかないと、転倒したマッカォの体を飛び越えて、逃走を続けた。…………グシャ
背後から、先程転倒したマッカォが圧倒的重量に潰される音が虚しく響く。他でもない命の潰えるその音によって、ここは些細なキッカケで命が失われる『狩場』なのだと、いやが応にも実感させられた。
今度は後ろを走っていたマッカォがバランスを崩し、しかしなんとか転ばぬようにと、丁度目の前にいたアルザスのアイテムポーチのベルトを掴む。だが、直後にそのマッカォの尻尾をイビルジョーの邪悪なる顎門が捉え、喰らおうと凄まじい力で引っ張る。
これを離したら死ぬと自覚したマッカォは、懸命にアルザスのアイテムポーチのベルトを掴み続ける。結果として、アルザスの体、ひいては俺の体が、後ろに引っ張られる形になり……ブチッ!
アイテムポーチのベルトが引き千切られる音と共に、俺の体は反動によって大きく前に傾く。それでもなんとか踏み止まり、生き延びる最後の希望が千切れたことにより、イビルジョーに屠り喰らわれるマッカォの悲痛な断末魔を背中に浴びながら、それでも振り返る事なくただ前へと進んだ。
ベルトが外れたことにより落下しそうになるアルザスのアイテムポーチを、アズリーがキャッチする。まだ稼ぎの少ない新米のハンターにとって、アイテムポーチが失われるのはハンター廃業の危機であることを知っていたからだろう。息が苦しい。体がどうしようもなく重い。
だが、エリア2から1へ向かう為の狭い通路はもうすぐそこだ。あそこならイビルジョーも簡単には侵入しないし、どちらかといえば広いエリア6に向かう道を通ろうとするだろう。ここさえ抜ければ……!しかし、そんな希望を打ち砕くかのように、俺の頭上を大きな岩塊が通り過ぎた。
一撃でハンターを圧死させるような巨大な岩塊。それそのものは、俺たちに直撃することは無かった。無かったが……問題は、その岩が砕け散ったことによって生まれる瓦礫が、見事にエリア1への通路を塞ぐように崩れたことにあった。
勿論、頑張ってそれだって越えられないほどのものではない。しかし、越えようとしているうちにイビルジョーに上半身から喰らわれるだろうという程度には、高く積み重なっていた。振り返って見れば、エリア6に向かう道も、同様に塞がれている。
逃げ道を塞がれた俺たちとマッカォ達は、ただただ呆然と、後ろに迫る暴食の竜王の姿を振り返った。……イビルジョーは、奴は最初からこれを狙っていたのだ。
誰一人、誰一匹として逃がさないために。アルザスを、ゆっくりと背中から下ろす。
「アズリー、アルザスを連れて逃げろ。」
有無を言わさず、ただそれだけを伝えて、俺はハンマー、鬼鉄を構えた。
イビルジョーは古龍並みの脅威とされる最恐のモンスター。それに対して自分は単騎、しかも、手にしているのはあまり扱い慣れないハンマーだ。さっきも述べたようにエリアを塞ぐ瓦礫は、時間をかけなければ越えられない。しかしそれは、逆に言えば、時間さえかせれば越えることが出来るということ。ならば、その時間を、自分で作ればいい。
恐暴竜と、目が合った。
自分の力で勝つことが出来るのだろうか?
極限の緊張のなかで、そう自問する。
だが、今の自分がやるべきことは、勝つことではなく、時間を稼ぐことだと思い出した。勿論、こんなところで死ぬつもりはないので、時間を稼いでツバメと合流し、なんとか撃退に持ち込むのが理想だが…… -
5
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-14 23:33
ID:2vNnRjOI
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一瞬にも、一生にも感じられた睨み合い。
……先に動いたのは、果たしてどちらであっただろうか?
イビルジョーの牙と、俺のハンマーが交差する。一瞬拮抗した両者の力は、しかし直ぐにイビルジョーの圧倒的筋力量が勝り、慣れないハンマーで体重移動が上手くいかなかった俺は、軽々と吹き飛ばされ、マッカォの集団の中に落ちてしまう。
背中を強かに地面に打ち付けられ、肺の中の空気が一気に漏れ出た。「先生!?」
アズリーの叫び声が聞こえる。
その声を聞いて、早く息を吸わなくては、早く立ち上がらなくてはと、痛む体を無理やり奮い立たせ、体を起こす……。
するとそこには、イビルジョーの牙が今まさに自分を喰らわんと、大きく開かれていて……っ!!
その時、側に這い寄る『死』の気配に、俺は思わず目を閉じてしまった。それは、狩人としてはまさしく愚行に他ならなかったが、しかし結果から述べるならば、それはプラスの結果をもたらすこととなった。
瞬間、閉じられた瞼の上から、眩い閃光が網膜を刺激する。
それは、これまでの狩猟で幾度となく使った、閃光玉の光。そして、それを投げたのは他でもない……「やれやれ、知り合いの知り合いを助けに来たら、まさかこんなことになるとはのぉ。人生というのは珍妙なものじゃな。それにしてもあなたよ、」
……ベリオシリーズに身を包んだ、ツバメ。
「これは、貸し一つでは足らんかも知れんぞ?」
閃光によって視界を封じられてなお暴れ続けるイビルジョーの姿を見て、頬に冷や汗を伝せながらも、彼女……否、彼はそう言って笑ってみせた。
「確かに今は夜じゃがいつまでそこで寝ておるつもりじゃ?ほれ、立てるじゃろ。」
場の空気を和ませる為か、皮肉を交えながらも、ツバメは手を差し伸べた。
差し出されたツバメの手を借りて起き上がり、ハンマーを改めて構え直す。形成逆転……とまでは行かないが、これで先程よりは遥かに状況が改善したと言える。
イビルジョーが視界を取り戻さない内に、ツバメはオプシドホルンを掻き鳴らす。攻撃力上昇【大】と防御力上昇【大】の旋律により、自分の身体が強化されていくのがわかった。そうしている内に、イビルジョーは視界を取り戻し、改めて此方を睨み付けた。
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6
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-14 23:36
ID:2vNnRjOI
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視界を取り戻したイビルジョーが、再び此方を睨み付け……、
咆哮。
既に三度目となるその大音量は、それでも俺に強い威圧感を与え続けた……が、今回はそれに屈することは無かった。肩を並べる仲間というのは、こんなにも頼もしいものなのだ。
直後に放たれたイビルジョーの噛み付き攻撃を、二手に分かれて回避する。そうして、虚空を噛みちぎったイビルジョーの顔面を、双方から狩猟笛とハンマーで強打した。今度はしっかりと体重の乗った一撃、いや、二撃。さしものイビルジョーも頭部にそれを受けたのは痛手だったのか、よろよろと後ろによろめき、後退する。
邂逅以来初めて明確なダメージを受けたイビルジョーに、なおも追撃を加えるため、さらにハンマーを振りかぶると、今度は此方のターンだと、イビルジョーがその場で大きく足踏みをした。瞬間、巨大地震と見紛うほどの振動が地面を伝い、さっきのお返しと言わんばかりに俺達の体をよろめかせる。結果、なんとしても転倒を避けるために必死にバランスを取る羽目になった俺たちは、一瞬その場に硬直させられた。
そして、その格好のチャンスを、この暴食の竜王が逃してくれるはずもなく、すぐさま次の動きに移り、その巨体の全身を用いたショルダータックルで、ツバメの軽い体を吹き飛ばした。
ツバメも何とか身を躱そうとしたようだが、そのあまりの攻撃範囲の広さに避けるに避けきれず、一部が掠ってしまったらしい。逆に言えばそれは、掠っただけで人間が一人吹き飛ぶほどの力があったというわけで……、「……っ!ツバメっ!?」
ツバメが吹き飛ばされたことにより、俺の意識は一瞬、そちらに向けられてしまう。そして、それこそがこの竜の思うツボだったのだ。
続けて放たれた強力な噛み付きが、あっという間にすぐ目の前まで迫る。遅れてそれに気付いた俺は、慌てて体を逸らし、なんとか直撃を避けることには成功した。しかし、その拍子に奴の口から滴る酸性の液体が防具に付着し、ジュージューと音を立てながら堅牢な飛竜の王の鎧を溶かしていく。ヤバいっ!?
この状態に危険を感じた俺は、咄嗟の判断で後ろに飛び退く。しかし、イビルジョーはそれすらも許さずに、小さくジャンプする形で飛びかかり、俺を後ろに押し倒した。
どれだけもがこうとも、自分を押さえつける脚の力が弱まることは無い。酸によって腐食された防具が、イビルジョーの体重にミシミシと悲鳴をあげる。
顔のすぐ真横に、奴の唾液が滴り落ちた。それだけで、地面にあった草は瞬く間に溶かされ、消える。それを見届けた後、ゆっくりと上に視線を戻せば、すぐそこには凄まじい臭気を放つイビルジョーの口があって…………自分がこの匂いの一部になるのは嫌だなと、考えたのはそれだけだった。
–––––––だが、どれだけ待とうとも、その牙が俺の体を引き裂くことは無く……
ドゴォォォォオオオオンンンッ!!
……けたたましい崩壊音と共に、イビルジョーの巨体は突如として蹴倒された。
–––––––クロロロロォォォッ!!
特徴的な鳴き声と共に現れたのは、右側に真紅の冠羽を持つ、やたらと小さなドスマッカォだった。
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7
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-15 16:57
ID:vAR5VuSY
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一時的に書き込み不能になってしまったため、更新が滞りました。申し訳ありませんでした。
……何故だ?(・・?)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー–––––––クロロロロォォォッ!!
何処からともなく現れ、イビルジョーを蹴倒したドスマッカォは、木々を巻き込みつつ転倒したイビルジョーを睨み付け、叫んだ。
普通より一回り小さな体、琥珀色の瞳、右側頭部の真紅の冠羽、異様な雰囲気……見間違えよう筈もない。それはアズリー達を発見する前、エリア8にて邂逅した謎のドスマッカォだった。
そのドスマッカォが訪れた途端、エリアの隅で身を寄せ合って震えていたマッカォ達が、一斉に湧き立った。それはまるで窮地に現れた英雄を讃えるように、まるで既に勝利を確信したかのように。跳ね回って歓喜の声を上げたのだ。
だが、そんなマッカォ達を咎めるように、ドスマッカォは短く吠える。
マッカォ達はそれを聞くと即座に静まり返り、イビルジョーが蹴倒されたことにより開いた道を駆け抜け、エリア4やエリア3方面へと一目散に逃げていった。「な……なんじゃ、アレは。」
ツバメの顔が驚愕に染まる。かく言う俺もそうであった。だって誰が信じられる?ドスマッカォがイビルジョーを蹴倒し、マッカォ達を避難させるなどと……
驚愕のあまり動きを止めていた俺たちに、ドスマッカォはゆっくりと振り返る。
その透き通るような琥珀色の瞳が、まるで品定めでもするかのように此方を見つめて……
……その真後ろから、起き上がったイビルジョーの、邪悪なる顎門が迫っていた。食われる。
誰もがそう思っていた。
俺も、ツバメも、そしてイビルジョーも、ドスマッカォがこの状態から背後に迫る邪悪なる顎門を躱す術は無いだろうと……そう考えていた。
だが、次の瞬間その思考は盛大に裏切られることとなる。刹那、ドスマッカォがその場で大きく身を捻り、回し蹴りの要領でイビルジョーの顔面側部にその大きな脚を炸裂させる。結果、ドスマッカォを喰らう筈であったその顎門は大きく横に逸らされ、空を裂く。
だが、先程は不意を打たれたこともあってドスマッカォに蹴倒されていたイビルジョーも、二度もやられてくれるほど甘い相手では無い。ドスマッカォに蹴られた勢いをそのまま自らの回転エネルギーに変換し、酸性の液体を撒き散らしつつその場で大きく一回転した。
イビルジョーの動きに合わせて薙ぎ払われたそのヒルのような重厚な尻尾が、回し蹴りの直後で体勢が不安定なドスマッカォの体を捉え、軽々と吹き飛ばす。
通常よりは一回りほど小さいとはいえ、ドスマッカォほどの質量があるものが綺麗な放物線を描いて飛んでいく様子は、なんとも非現実的な光景であった。
近くにあった大木に激突したドスマッカォは、その場にグッタリと崩れ落ち、しかしなおも起き上がろうともがく。
しかし、イビルジョーは奇襲とはいえ、つい先程自分を蹴倒したドスマッカォに起き上がる暇を与えるつもりはさらさら無かったようだ。
さっき俺にそうしたように、小さくジャンプして飛び掛かり、ドスマッカォを上から押さえつけた。自らの下でもがくドスマッカォを右脚で押さえつけつつも、イビルジョーはジロリと此方を見つめた。それが何を意図しているのか俺には到底理解しかねたが、その真紅の瞳にはたしかに『逃しはしない』という意思が宿っているようにも感じられた。
戦況は混沌の様相を呈し始める。アズリー達は無事ベースキャンプに辿り着いただろうか?あのドスマッカォは敵か味方か?取り敢えず今やるべきことは……
Q、あなたの行動を選択して下さい。
1、戦う(戦法を指定Q2へ)
2、逃げる(移動エリアを指定)
3、アイテムを使用(アイテムを指定Q2へ)
4、その他(自由枠)Q2、ターゲットを選択してください。
1、ドスマッカォ
2、イビルジョー
3、その他(自由枠) -
8
名前:千壱
投稿日:2018-01-15 19:15
ID:9HmB38Tg
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いつの間にかスレ3弾目が出来ている……
更新速度が速くて驚愕の限りです。私も見習わねば……選択肢は3→3をチョイス。
エリア1を塞ぐ岩に大タル爆弾を使用し、破壊を試みる方針で行きましょう。ところで、前スレの途中から名前欄のタイトルが変わっていますが、何かの意図なのでしょうか……?
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9
名前:暇
投稿日:2018-01-15 19:58
ID:8i.qyjh2
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前半に引き続きドスマッカォのファンサービスが光ますねぇ…
なんだドスマッカォっていいやつじゃん -
10
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-15 20:26
ID:eQ8q3XjI
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>>8勿論わざとでございますよ。(*´꒳`*)
具体的にはイビルジョー乱入後から変更しています。目標が『三人の発見』から『イビルジョーからの逃走』に変わった時です。
あ、今の内に言っておきましょう。このシナリオでずっとピンチ続きなのは『ある理由』からです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーこの状況から戦うにしても逃げるにしても、取り敢えず脱出の経路くらいは確保しておくべきだろう。
幸いにして、イビルジョーは現在ドスマッカォに襲い掛かっている最中、すぐに此方に向かってくるようなことは来ない筈だ。その間にエリア1への道を塞ぐ岩を、大タル爆弾で吹き飛ばす……。
もし成功すれば撤退も攻撃も今より遥かに容易になるだろうし、現在のような背水の陣では無くなるはずだ。
……危険な賭けだが、やってみる価値はある。
大タル爆弾を抱え、エリア1への道を塞ぐ岩の近くに設置する。「危ない、後ろを見よ!!」
だが、そんな最中に、ツバメの警告の声が、俺の背後から浴びせられた。その声を聞いて、ほぼ反射のように振り向くと、眼前にはイビルジョーの邪悪なる顎門が開かれていて……
「ハァァァアアッ!!」
しかしその牙が俺に迫る寸前、猛々しい掛け声と共に、ツバメの手に握られたオプシドホルンがイビルジョーの側頭部を穿つ。彼の小さな体には見合わないような力によって振るわれた一撃は、イビルジョーをよろめかせ……しかしイビルジョーの突撃の威力を殺しきるには足りない。結果、大きく前傾にバランスを崩したイビルジョーは、岩の前に設置されは爆弾に顔面から突っ込み……
閃光……爆発。
焔が激しく立ち上り、爆煙がもうもうと巻き上がり、爆風が背の低い草花を蹂躙する。
幸いにも咄嗟の緊急回避によってイビルジョーの体にぶつかることも爆発をモロにくらうことも無かったが、それでも爆発の余波が全身を打ち付け、激しい衝撃が痛みの信号となって脳に届けられた。
衝撃波に吹き飛ばされるままにゴロゴロと地面を転がると、その先にいたツバメに抱き起こされる。そして、彼の手から無言で手渡された回復薬を、こちらも無言で感謝を伝えつつ飲み干した。何故奴がドスマッカォを放棄してまで俺に襲い掛かったのか、それが気になり不意に後ろを振り返ると、そこにあったのは太腿に大きな爪痕を刻まれ、血を流しながらもよろよろと立ち上がるドスマッカォの姿。
……つまり、逃げられてもいつでも追いつける獲物よりも、たった今逃げられそうな獲物を優先したというわけか。さて、イビルジョーの体によってエリア1への道が塞がれているが……流石の奴も顔面から爆風を浴びて無事とはいかないだろう。現に、イビルジョーの体は先程からピクリとも動かない––––––––
ゴォ……ッ!
––––––––場の雰囲気が、凍り付いた。
それは、全ての生物にとり共通の脅威となる者への、潜在的恐怖。
それは、生き物とは呼べぬ『魔物』が目覚めた事を報せる、本能の警鐘。
体感温度が目に見えて下がり、心臓は激しく早鐘を打ち、空気さえも重く感じられ、なんとも息苦しい。漆黒の瘴気が立ち上り、彼の者は目を醒ました。
イビルジョー。
非常に高い代謝を維持するため、常に捕食することを強いられ続けるそのモンスターは、身体が傷つくのも厭わず大型モンスターや同族にさえも攻撃し続けるがために、通常の場合は非常に短命である。
だが、ごく稀に、何の因果か、本来想定されているよりも遥かに永き時を生きてしまった個体が、老化によって食欲を制御するリミッターに変調をきたした結果、暴走状態になって命の尽き果てるまで捕食を続ける正真正銘の『魔物』となってしまうことがある。
この状態に陥ったイビルジョーの凶暴性、戦闘力は通常の個体からも一線を画し、ハンターズギルドでは『邂逅した場合即時撤退を原則とする』という異例の措置を設け、その『魔物』をこう呼称した。"怒り喰らうイビルジョー"
Q、あなたの行動を選択して下さい。
1、戦う(戦法を指定Q2へ)
2、逃げる(移動エリアを指定)
3、アイテムを使用(アイテムを指定Q2へ)
4、その他(自由枠)Q2、ターゲットを選択してください。
1、ドスマッカォ
2、怒り喰らうイビルジョー
3、その他(自由枠) -
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名前:名無しさん
投稿日:2018-01-16 07:54
ID:56luAg7A
[編集]
うおおすごいヤバそう
折角道を開いたんだからここは逃げておくべきだろうけどドスマッカォを放っておいて良いのかと言われるとなぁ~~んか引っかかるなぁ…
よしじゃあいっそ手を分けるか!
3で自分は残ってる生肉ちょこちょこ小出しにしながら時間を稼ぎつつツバメを逃がしてマッカォの群れをここに誘導させる
エリア1に逃げるのはその後って事で…これで義理分は返せるやろ
群れがボスを見捨てる選択をしたりそもツバメが群れに敵と見なされて襲われて誘導どこらじゃないならその時も後は知らんで逃げる
…しかしこんなに生肉大判振る舞いしたら疲労を狙う勝ち筋は完全に消えたな -
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名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-16 20:40
ID:hsQbZJeY
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…予想外。
……想定外。
だが、言ってしまえばそれは、もともとそうであったともいえる。
そりゃあそうだ。新人三人を救出しようとしてイビルジョーが乱入してくるなんて、一体誰が予測できようか。もしかしたら、驚愕と恐怖が振り切れてしまっただけかもしれないが、不思議と冷静な思考が今行うべきことを模索し、取捨選択し、自分にできる『最善』を導き出す。
そうして導き出した『最善』の、あまりのお粗末さに自分でも苦笑いを浮かべるしかないが、むしろこれだけの窮地で打開策を見つけることが出来ただけで上出来とさえ言えた。
不確定要素も多い、成功率は限りなく低く、そもそも作戦が成功するまで戦局を持たせることが出来るかどうかさえ不安。だが、これより他に道はないと、怒り喰らうイビルジョーを呆然と見上げるツバメに、静かに耳打ちをする。俺の耳打ちを聞いて、ツバメはギョッと振り返った。
まあその反応も頷けるだろう、だって俺だってこんな奇抜な作戦を聞かされたら驚愕する。
だが、反論は許さない。横暴に思われるかも知れないが、現状、議論している暇などありはしないのだ。「……やるからには、成功させなくてはの。」
一瞬考え込み、そして諦めたようにツバメは俺の作戦に乗った。俺より頭のいい彼は、その一瞬でこの賭けの成功率の低さを導き出したのだろう。しかしそれでも、俺を信じて了解してくれたのだ。
––––––––決死の作戦は、暴食の竜王の咆哮から始まった。
俺はアイテムポーチから生肉を取り出し、怒り喰らうイビルジョーに見せつけるように掲げる。もとより凄まじい食欲を持つイビルジョーが、さらに食欲を暴走させたような存在が、その新鮮な肉の香りを無視できようはずもなく、黒い瘴気の中に浮かび上がる赤い視線は、すぐさま俺に狙いを定めた。
「行けっ!!」
その瞬間、怒り喰らうイビルジョーが俺に誘導されたことにより生まれたエリア1への隙間を、小柄なツバメが駆け抜ける。頼む、気付いてくれるなよ……っ!
しかし、そんな俺の願いも虚しく、怒り喰らうイビルジョーは自らの脇を抜けようとするツバメへとターゲットを変更した。「……っ!危なっ……」
ツバメの危機を感じ、そう叫ぼうとしたその瞬間、俺の真横を緑色の流星が駆け抜ける。
それは言ってみれば、武術の達人が使うような『縮地』の歩法。刹那の間に彼我の距離を詰め、怒り喰らうイビルジョーに肉薄したのは、彼のドスマッカォであった。
ドスマッカォの体が素早く縦に一回転し、ツバメに向けて振り返ろうとしていた怒り喰らうイビルジョーの体にその刺々しい尻尾を力強く叩きつける。その様は、まるでリオレイアの必殺技、サマーソルトを彷彿とさせる。その一撃は、怒り喰らうイビルジョーの巨体をよろめかせるには不十分、しかし、その動きを僅かに遅らせ、ツバメに逃げる隙を与えるには十分な威力があった。
「……こっちだ化物!」
逃げるツバメをなおも追いかけようとする怒り喰らうイビルジョーの注意を、『大挑発』を以て逸らす。瞬間、怒り喰らうイビルジョーの視線が此方を向き、再び俺の手に握られた生肉に集中する。そうだ、それでいい。此方だけを見ていろ。
作戦が成功するかはツバメ……そしてマッカォ達次第。俺はそれまで何とか怒り喰らうイビルジョーをこのエリアに縛り付け、時間稼ぎをしていればいい。
俺一人なら、怒り喰らうイビルジョー相手に時間稼ぎすら難しいだろう。しかし、今の俺は一人では無い……いや、厳密に言えば一人だが……–––––––––クルァァァッ!!
たまたま利害が一致した、協力者が『一匹』いる。
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名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-16 20:44
ID:hsQbZJeY
[編集]
猛然と振り下ろされたハンターの一撃を、マッカォはひらりと受け流すようにして躱した。ケプトスから進化した走竜下目に分類される鳥竜種の中でも最も体が小さく軽いマッカォは、逆に言えば最も身軽で的が小さい。さらに言えば戦況の有利不利を『考え』、撤退を『自己判断』するような知能もある。
何よりこのマッカォ達は、あのドスマッカォの手下なのだ。
そんな彼等にとって、大振りな一撃を躱すなど、言ってしまえば造作も無いことだった。マッカォの羽毛のような鱗の色は緑、その色は見事に周囲の茂みに紛れ、自由な奇襲と離脱を可能とさせていた。
ただでさえ今は夜。昼であっても見つけづらいものを、月明かりだけを頼りに見つけろというのも無理な話だ。
唯一特徴的といえるのは赤い顔だが、実を言えば、多くの野生動物にとり赤という色は非常に認識し辛い。とは言え、三色型色覚を持つ人間ならばハッキリと認知することが出来るのだが……–––––––––クォウ!
一匹のマッカォが、まるで自分の居場所を知らせるかのように鳴き声を上げる。
当然、ハンターはそれに反応し、次の瞬間にはマッカォがいた場所に重々しい一撃を振り下ろす。だが、そこに既にマッカォの姿はない。ハンターの手に伝わってくるのは、ただ茂みの小枝が折れていく虚しい感触のみ。ザザザザザザ––––––––
茂みの中を蠢くマッカォ達の数は、次第に増えていっている。
ハンターの攻撃を受けて傷ついた者は即座に戦線から離脱し、森の中からさらに多くの仲間を掻き集めて戻ってくる。それを延々と繰り返し、その数は最早数えるのすら億劫であるほどだ。勿論、マッカォ達だって常にハンターの攻撃を避け続けられた訳ではない。ハンターの強力な一撃によって、既に十数匹のマッカォが儚く命を散らしている。
しかし、それでもマッカォ達はハンターから逃げることはしない。例え距離を取り、撤退することはあっても、まるで何かに駆られているかのように必死にハンターに対して挑発を繰り返す。この時、ハンターはまだ気付いていなかった。
マッカォ達が必死に自分の攻撃をいなしながらも、一つの方向を目指していることを。自分が、最初にマッカォ達と遭遇した地点から、既に一キロ以上もの距離を移動していることを……。
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名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-16 20:49
ID:hsQbZJeY
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一体、怒り喰らうイビルジョーと戦って、どれだけの時が経ったことだろう。一分の刹那にも感じられ、しかし一日以上戦っているのではないかとも思えてしまう。
俺やドスマッカォがどれだけ攻撃しても、怒り喰らうイビルジョーの底なしの体力の前には明確なダメージを与えきることが出来ず、逆に怒り喰らうイビルジョーの攻撃はその一撃一撃が俺たちを容易に屠ってなおお釣りがくるような威力を持つ。今がただの時間稼ぎに過ぎないとしても、戦況は限りなく悪かった。
怒り喰らうイビルジョーの口に、赤黒い瘴気が集められていく。
それは既に幾度となく見た、一撃であらゆる者の命を刈り取る死のブレスの予備動作。
瞬間、漆黒の渦が古代林の一角を呑み込み、生い茂る草花や遥かな時代を感じさせる巨木、不動の岩でさえも打ち崩しながら薙ぎ払われる。
怒り喰らうイビルジョーに肉薄していたドスマッカォは懐に潜ることでそのブレスをやり過ごし、さらにブレスを放っている最中であるがために無防備となる怒り喰らうイビルジョーの土手っ腹を握りしめた拳で殴りつけた。
かたや現在距離が開いていた俺は、後ろに下がることでそのブレスの攻撃範囲圏内から逃げる。しかし、ブレスを放つ時に怒り喰らうイビルジョーが大きく前進した上、ただでさえ頭部に瘴気を纏っている時はブレスの攻撃範囲が飛躍的に上昇しているがために、流石に直撃とはならなかったが、ブレスの先端部が防具に少し掠ってしまう。
しかも間の悪いことに、どうやら今自分が装備しているレウスSシリーズと怒り喰らうイビルジョーのブレス……此方の方が色は黒っぽいがバルファルクのものと同じ龍属性のブレスらしい……は相性が悪いらしく、ただ掠っただけなのに表面に焼け爛れたような跡が出来てしまう。
それだって一回だけならばまだ問題はない。問題なのは怒り喰らうイビルジョーの攻撃によって既に数回はそういう損傷を受けていることだ。このままいけばいずれ防具は破損してしまうだろう。そうなったら終わりなのは誰が見ても明らかだった。
なお、そのような攻撃を受けるたびに体にイビルジョーの頭部に纒われているものと同じ赤黒い雷のようなものが纏わり付いているのだが、どうやらこれそのものには特に影響は無いようだ。一般的に龍属性は属性の力を封じる力、属性を持たない鬼鉄を手にしている俺には影響が無いのだろう。直後、ブレスを吐き終えた怒り喰らうイビルジョーに、俺は鬼鉄に力を溜めながら接近する。そして、最大限の威力を持って叩き出されたハンマーの一撃が、怒り喰らうイビルジョーの頭部に炸裂した。
バキバキッ……!
ハンマーの一撃が怒り喰らうイビルジョーの頭を捉えた瞬間、鈍い音と共にその邪悪なる顎門の一部が崩れ去る。顎をカチ割られた怒り喰らうイビルジョーはその痛みに怯み、大きく後退した。それは怒り喰らうイビルジョーが見せた初めての明確なダメージリアクションだった。自らの攻撃が通っていることに希望が芽生え、更なる追撃を加えようとして……
……次の瞬間、後ろに仰け反っていたはずの怒り喰らうイビルジョーは即座に体を前のめりにさせ、追撃を加えようとする俺の体を突き飛ばした。「……ぐっ!?」
激しい衝撃と共に、俺の体は大きく後ろに吹き飛ばされ、水に濡れた地面の上を何度も転がった。一部が破損した防具の上から、冷たい水は容赦なく侵入し、夜の森の冷え込みも相まって刻一刻と俺の体力を奪っていく。ハンマーを持つ腕に既に力は入らず、気力だけで持っているようなものだった。
頼む。ツバメ、早く来てくれ!
息を付いている暇もなく、怒り喰らうイビルジョーは絶えず攻撃を続ける。だが、そんな怒り喰らうイビルジョーの動きが突如として鈍った。
よく見れば、その頭部からは赤黒い瘴気が晴れ、口のの隙間からだらし無く涎を垂らしている。それは怒り喰らうイビルジョーが疲労状態に陥っていることを表している。モンスターの疲労時は一般的にはチャンスだが……
Q、あなたの行動を選択してください。
1、疲労時の隙を狙って積極的に攻める。
2、あくまで慎重に立ち回る。
3、罠等のアイテムを交えて立ち回る。
4、その他(自由枠) -
15
名前:蟹
投稿日:2018-01-16 21:04
ID:B8nXzJ4E
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怒りが収まったしここは隙を見てさっさと退くに限るかと
4.一目散に逃げ出す
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16
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-16 23:32
ID:IpgeFCM2
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怒りが収まったことにより、今、怒り喰らうイビルジョーの動きは先ほどに比べて大きく減速している。逃げるならば今だろう。
とは言ったものの、逃げるべきエリア1側にはイビルジョーが鎮座しているし、疲労状態の怒り喰らうイビルジョーは言ってしまえば食欲が最大限にまで高まった状態、無策のまま逃げるのは賭けに等しい。
だが、その賭けは先程の怒り状態に比べれば遥かに此方に分がいいのは明らかであろう。
ツバメの頑張りが無駄になってしまうかも知れないが、正直俺も既に体力は限界に近い。出来ることならば今のうちに逃げておくべきだと思う。とにかく怒り喰らうイビルジョーの視界からさえ逃れられれば、回り道をしてベースキャンプに辿り着くことは容易に出来る。そうと決まれば、鬼鉄を背中に背負い、怒り喰らうイビルジョーに背を向けて走り出す。当然怒り喰らうイビルジョーはそれを追ってくるが、行動速度が格段に素早くなる怒り時の先程ならばともかく、動きが鈍る疲労時ならば全速力で走れば十分逃走は可能だった。
だが、そんな俺の背中を、突如として激しい衝撃が襲った。
肺の空気が一気に押し出され、俺は数メートル上へとかち上げられる。空中で一瞬の制止を見せた体は、しかし次の瞬間には重力に従って落下を開始し、地面に強かに激突する。
その時の衝撃によってアイテムポーチから転げ落ちたのか運良く目の前にあった生命の粉塵の袋を手を伸ばして掴み取り、落ちそうになる意識をなんとか繋ぎ止めながらその中身を吸引する。
生命の粉塵の効果によって傷が癒えていくのを確認すると、俺は即座に後ろを振り返った。俺が背中に衝撃を受けた時、まだ怒り喰らうイビルジョーの攻撃が俺に届くほど俺と奴の距離は接近していなかったはず。にも関わらず何故、俺が攻撃を受けたのか……
……答えは簡単だった。俺に当たったのは怒り喰らうイビルジョーの攻撃ではなく、ドスマッカォの尻尾だったのだ。
しかしそれはドスマッカォがわざと俺を攻撃したというわけではない。後ろを振り返った俺の目に入ってきたのは、怒り喰らうイビルジョーの邪悪なる顎門によって左腕を捉えられ、振り回されるドスマッカォの姿だった……。
目を凝らしてよく見れば、ドスマッカォの口からも涎が漏れ出、見るからに体に力が入っていない。それは紛れも無い、疲労状態の所見。
……考えてみれば当然だ。ドスマッカォのような小さな体が、怒り喰らうイビルジョー相手に戦うくらい激しく動き続けたのだ。寧ろこれまで明確な疲労を見せていなかったことが奇跡とさえ言える。ドスマッカォが顎門に咥えられている間は、奴の攻撃範囲が爆発的に上昇していると考えていいだろう。あの超範囲では、最早逃げることはおろか近付くことすらも最早容易では無い。
しかも悪いことは続くもので、背中を触ってみればさっきまで背負われていたはずの鬼鉄が無い。後ろから衝撃を受けたことにより、何処かへ吹き飛んでしまったのだ。視線を巡らせて探してみれば、なんと鬼鉄があるのは怒り喰らうイビルジョーの足下、アレでは取りに行くことも出来ない。戦況は更なる悪化の一途を辿る。
表現するならば『絶望』の一言に尽きるだろう。……ドスマッカォの琥珀色の瞳が、静かなる闘志の焔を宿していることを除けば。
-
17
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-16 23:35
ID:IpgeFCM2
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***
目を閉じる度に、竜は思い出す。
瞼の裏を、さながら走馬灯のように駆け巡る光景。親を殺され、仲間を焼かれ、
一対の巨影に、全てを奪われたあの時。しかし当時まだ幼い竜の頭の中にあったのは、怒りでも、憎しみでも、悲しみでも、悔しさでもなかった。
ただ、失望していた。
––––––『ああ、自分が生まれた種族は、こんなにも弱いのだな』と。
それまで捕食者であった者が捕食される側に回った時、竜は漸くその当然の事実に気が付いたのだ。
……だからこそ、竜は力を求めた。何も奪われる事のない、種族の壁さえも蹴破れるような、そんな圧倒的な強さを望んだのだ。そして、竜はその為にはどんな手段や苦行でさえ厭わず、本来遥か格上の相手にも、同族にさえも平然と手をかけた。
それが、種として、生き物として終わっている行いであると分かっていても、それでも力への際限なき渇望が、どこまでも竜を進めさせ続けたのだ。
そうして、ただ一心に、一途に、ひたすらに強くなって……
自らの親兄弟、仲間を殺した飛竜の番を、死闘の末に単騎で殺害した時……しかし竜の心の中にあったのは、達成感でも、安堵感でも、虚無感でも、満足感でもなく……
……そこにはただただ冷たい失望感だけがあった。
『あの時自分が見ていることしか出来なかった強者は……こんなにも、弱かったのか』と。だが、竜は知る。
それは、圧倒的な力を持ち、自然界を駆けぬける覇者達。
それは、知恵と技と武器と数を以て、覇者をも討つ狩人達。
竜は幾度となく敗北を味わい、幾度となく醜く逃走し、幾度となく死を覚悟し、そしてその度に成長し、歓喜した。
『自分はこんなにも弱いのだ』と。
弱いからこそ、強くなれる可能性を残しているのだと。竜は戦いの中で、様々なものを学んでいった。
例えば、予備動作無しで走り出す走法。
例えば、後退しながら狙いを定める技。
例えば、強力な攻撃を被害を抑えて受け流す方法。
例えば、数を的確に用いて面を制す戦法。
例えば、相手の行動を封じに更なる追撃を畳み掛ける方法。
……例えば、生き物の関節を外す方法。
***
……ゴキッ……!
生々しいその音が、夜の森に嫌にハッキリと響いた。
怒り喰らうイビルジョーも、そして俺も、その音がドスマッカォの肩から鳴ったのには気付いても、何故今そのような音が鳴ったのか、その理由に気付かなかった。
唯一それを知るドスマッカォは、左腕を咥えられながらも、怒り喰らうイビルジョーの体を蹴ることで、その場で大きく回転する。結果、ドスマッカォの体は邪悪なる顎門に捕らわれた左腕だけを残して縦方向に捻られ、そして……ブチィッ!!
直後、ドスマッカォは怒り喰らうイビルジョーの拘束から脱出し、俺の真横に軽やかに着地した。だが、その左肩からは真っ赤な鮮血が溢れ出し、その先端は完全に失われている。
当然だ、ドスマッカォの左肩から先は、未だ怒り喰らうイビルジョーの邪悪なる顎門に捕えられたままなのだから。数瞬の後に、俺はドスマッカォが行ったことを理解した。
いや、理解したからこそ、理解出来なかった。
肩の関節を自分で外し、その場で体を捻って腕から先を捻り切ることで、強引に怒り喰らうイビルジョーの拘束から逃れるなど……「痛いってレベルじゃねぇだろ……。」
ドスマッカォは左腕を失ってなお、激しい闘志を宿した瞳で、怒り喰らうイビルジョーを睨み続けた。
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18
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-16 23:40
ID:IpgeFCM2
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ドスマッカォのあまりにも予想外過ぎる行動により、幸いにして怒り喰らうイビルジョーの攻撃範囲は元の状態へと戻ったが、しかし戦況が良くなったとはお世辞にも言い難い。
頼りとなる鬼鉄はイビルジョーの足下であるし、ドスマッカォも左腕を失った。さらに、怒り喰らうイビルジョーが口の中に残ったドスマッカォの左腕を喰らうことにより、一時的に疲労状態から脱却してしまったのだ。どうする?どうすればいい?
どれだけ思考を巡らそうとも、この状況から巻き返すビジョンが浮かんでは来なかった。
ドスマッカォだって必死に怒り喰らうイビルジョーを睨みつけてはいるが、それが虚勢であることは誰が見ても明らかである。疲労の色は依然として消えず、これまでの戦闘で全身がボロボロに傷付いている。そして、それは他ならぬ怒り喰らうイビルジョー自身も理解していた。
最早急ぐ必要も無いだろうと、怒り喰らうイビルジョーはゆっくりと此方に歩みを進める。その一歩一歩が酷く焦れったい動作にも関わらず、俺の足は凍りついたように竦み、どうしても逃げ出す事が出来なかった。––––––––クォォォォォッ!
そんな絶望的な戦局に、一つの小さな影が乱入した。
何処からか登場したマッカォが、勇ましく吠えながら怒り喰らうイビルジョーに襲い掛かる。それに対し怒り喰らうイビルジョーはさしたる問題では無いと言わんばかりにマッカォの小さな体を踏みつぶそうとするが、マッカォは身軽な動きでその足を躱し、怒り喰らうイビルジョーの膝裏に齧り付いた。––––––––ァァァァァァァァァァアアアアアアアアッ!!!
直後、四方八方から襲い掛かる緑色の波。十、二十、三十、四十、それどころでは無いほどの凄まじい数のマッカォが、一斉に怒り喰らうイビルジョーに襲い掛かった。
これにはさしもの怒り喰らうイビルジョーも危険を感じたのか、体を振り回し、咆哮を上げ、纏わりつくマッカォ達を引き剥がす。どれだけ数があろうともマッカォ達と怒り喰らうイビルジョーの力の差は圧倒的で、マッカォ達は軽々と吹き飛ばされ、怒り喰らうイビルジョーから引き剥がされてしまう。「でやぁぁあっ!!」
しかし、怒り喰らうイビルジョーに襲い掛かったのはそれだけでは無かった。狩技、『鉄鋼身』を発動させたツバメの狩猟笛による叩きつけが、怒り喰らうイビルジョーの足に炸裂する。
完全にマッカォの群れに気をとられていた怒り喰らうイビルジョーは、突如襲い掛かった衝撃に耐えられず、横倒しに転倒した。
転倒してもがく怒り喰らうイビルジョーに、マッカォの群れが再び纏わりつく。一匹一匹がせいぜい鱗一枚に傷をつけるくらいしか出来なくとも、それが何十、何百と重なれば確実なダメージに繋がっていく。全身を緑に覆われたイビルジョーを尻目に、ツバメは呆然としている俺に駆け寄り、俺の手に鬼鉄を握らせながら、天使のような笑みを浮かべて言った。
「作戦成功、じゃな。」
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19
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-16 23:45
ID:IpgeFCM2
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ツバメとの合流が完了し、喜んだのもつかの間、周囲には再び不穏な空気が流れ始める。
怒り喰らうイビルジョーが、再び激昂状態に陥ったのだ。
赤黒い瘴気を身に纏った怒り喰らうイビルジョーは、自らに群がるマッカォの群れを瞬く間に蹴散らし、薙ぎ払いブレスを溜めてマッカォ達を一斉に虐殺しようと試みる。
しかし、そんな怒り喰らうイビルジョーの顎を、ドスマッカォの右アッパーが捉え、チャージされたブレスは不発に終わる。俺達もマッカォ達に続いて戦線に加わるが、しかし作戦が成功してなお、絶望的な戦局を脱すことができたとはいえ、どうしても決定打に欠けていた。
マッカォ達がいくら攻撃してもそれは表面を削るにとどまる。それだけで怒り喰らうイビルジョーの膨大な体力を削ることは不可能に近い。一番火力があるドスマッカォでさえ蓄積された疲労により十全な実力を出すことは出来ていない。それは俺やツバメだって同じだろう。ツバメの狩猟笛の旋律がマッカォ達にも有効ならもう少し話は変わっただろうが、そう上手い話があるわけもない。だが、そんな俺の心配をよそに、ツバメの表情は自信に満ち溢れていた。
「決定打に欠ける……と思っておるな?心配せずとも良い、その『決定打』はもうじきに到着する。それは強いハンター様がの。」
……ツバメの言っていることが、俺には理解出来なかった。
ハンターが来る?まさかアズリー達を連れて来るわけではあるまいし、この狩場に俺たち以外のハンターがいたのか?
しかし、どんなに俺がそれを問おうとも、ツバメはただニヤリと笑って返すだけで、決して答えを教えてはくれなかった。だが、ツバメが答えを教えてくれずとも、怒り喰らうイビルジョーに向けて放たれた二つの青白い光球が、俺にその答えを示してくれた。
「あのマッカォ達には舌を巻くわい。なんせお主と似たような発想を持っておったからの……どうやら向こうの方が大胆だったようじゃがな……」
そう言ってツバメが視線を促すと、それとほぼ同時に、混沌とする戦場に黄緑色に発光する虫が流れ込んで来た。それは、ハンターがシビレ罠などの調合にも良く用いる、雷光虫と呼ばれる虫だ。
一匹一匹では微弱な電気を発することしか出来ないが、集まれば膨大な電力を生み出すその虫は……あるモンスターと共生関係にあることで有名である。
その共生関係にあるモンスターとは……「さあ、ハンター様のお出ましじゃぞ。」
ザン……ザン……
悠然と、しかし猛々しく、その者は戦場に足を踏み入れた。
無数の光粒を身に纏い、夜の森でただ一匹、月よりも明るく輝くその姿は、まさに王者の貫禄。……ある者はそのモンスターを、『森の王』と呼び、
……またある者は、『鮮烈なる蒼光』と呼称する。雷狼竜ジンオウガ。
またの名を…………、
–––––––––––無双の狩人《ハンター》
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20
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-16 23:57
ID:56luAg7A
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おおおおお!
クソ分かりずらい指定をちゃんと拾ってもらった上に絵にしたら凄い映えそうな状況に…!
もうダメだぁ…お終いだぁ…って所にフワァっと雷光虫の群れが現れてハテナと思った瞬間ドスンとジンオウガが現れたらドラマチックっすね。 -
21
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-17 15:17
ID:95PfIYuc
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>>20そうおっしゃっていただけるなら苦労して書いた甲斐があるってもんですよ。(´∀`=)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーハンターの視線が、静かに『魔物』へと注がれた。
ハンターは元々、この近辺の王者として君臨していた。ただ歩くだけで小型モンスター達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、溢れんばかりの森の恵みを最大限に享受することが出来ていた。
だが、いつからかそんな生活に影が差し始める。
獲物の数が目に見えて減少し、自分を恐れていたモンスター達が、自分以外の『何か』を恐れ始める。それは誇り高き孤高のハンターにとって、許し難い屈辱であった。
そして、ハンターと『魔物』は邂逅する。
だが、両者の実力の隔たりは明確であった。一度『魔物』のブレスを浴びればハンターの纏う電気は掻き消され、一度『魔物』が瘴気を纏えばハンターの攻撃はその殆どが通用しなくなる。
ハンターは生まれて初めて、明確な敗走を味わった。
本来の縄張りを追われ、慣れない土地での生活を強いられた。それは、ハンターにとって、到底許せることでは無かったのだ。
そして今、再び『魔物』と邂逅した時、彼の中を燻っていた感情の炎が俄かに騒めき立つ。
あの日失われた物……王者のプライド、狩人の矜持、己の領域、そういったモノを取り戻す為、ハンターはあの日敗れた『魔物』の前に再び対峙する。その胸中に、決意を灯して。
***
……赤と碧の視線が交差する。
それは刹那の静寂だった。まるで、砕竜の粘菌が赤く膨らんでいくように、徐々に緊張が高まっていき……弾ける。
ハンターと『魔物』の戦いの火蓋は、両者の咆哮によって切って落とされた。かたや青白い雷を全身に纏い、かたや漆黒の瘴気を半身に纏い……様子見や手加減などといったものは一切無く、初手から全力と全力がぶつかり合う。
蒼光を纏うジンオウガの右腕が、怒り喰らうイビルジョーに向けて振り下ろされた。もとより怒り喰らうイビルジョーというのは機動力に優れたモンスターではない上、体も大きく的となりやすい。そんな怒り喰らうイビルジョーが攻撃力と素早さを兼ね備えたジンオウガの一撃を回避するなど、土台無理な話だった。鈍い打撃音と、雷光の弾ける音が、真夜中の森に響き渡る。
蒼光が閃き、激しい電撃が怒り喰らうイビルジョーの身を穿つ。体格に恵まれ、モンスターの中でも類稀なる運動能力を持ったジンオウガの放つ一撃は、俺達やマッカォ達が放つソレとは文字通り桁違いの威力を誇る。さしもの怒り喰らうイビルジョーも、ただでさえマッカォ達の攻撃で身を守る鱗が傷付いた中で被弾しては、到底無傷で済むような攻撃ではない。さらに言えば、怒り喰らうイビルジョーの一番苦手とする属性は、ジンオウガが最も扱いに長けた雷属性、両者の相性は目に見えていた。
怒り喰らうイビルジョーの体に大きな傷が刻み込まれ、ドス黒い血が溢れ出す。残念ながらその傷は筋肉の収縮によってすぐに塞がれてしまうが、それはこの戦いにおいて怒り喰らうイビルジョーが負った初めての明確な傷であった。
衝撃と痛みによろめいた怒り喰らうイビルジョーに、さらに追撃を加えんとする影が迫る。
左腕を失ったドスマッカォは、なんと雷とを纏うジンオウガの背中を足蹴にして天高く跳ね上がり、怒り喰らうイビルジョーの背中の上に飛び乗った。
興奮状態のイビルジョーは背中の筋肉の膨張により過去に受けた傷の数々が露出するのは良く知られているが、怒り喰らうイビルジョーは常時その状態である。そして、そのことをさっきまでの戦闘で『学習』したのか、怒り喰らうイビルジョーの背中に飛び乗ったドスマッカォは、その傷を抉るようなして攻撃を開始した。
右腕の爪で露出した肉を引き裂き、強靭な脚で背中を蹴りつけ、鋭い棘が生えた尻尾で打ち付ける。当然怒り喰らうイビルジョーも背中に乗るドスマッカォを振るい落とそうと暴れるが、ドスマッカォは怒り喰らうイビルジョーの背中に爪と牙を食い込ませてそれに耐える。
そうして、怒り喰らうイビルジョーの抵抗が収まれば再び攻撃を繰り返し、フィニッシュと言わんばかりに全力でその背中を蹴り付けると同時に、怒り喰らうイビルジョーの巨体を薙ぎ倒した。ドスマッカォの猛攻に堪らず転倒した怒り喰らうイビルジョーに、ジンオウガのタックルが、ツバメの狩猟笛が、俺のハンマーが、そして、マッカォ達の波状攻撃が襲い掛かる。
……形勢は完全に逆転していた。
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22
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-17 18:58
ID:vAR5VuSY
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形成が逆転してなお、怒り喰らうイビルジョーの暴走は止まらない。
際限なき憤怒に、歯止めなき渇望に、地獄のような飢餓に、あるいは最早怒り喰らうイビルジョー自身ですら、それを止める方法が分からないのかもしれない。尾の一薙がマッカォの群れを吹き飛ばす。運良く生き残った者もいれば、その一撃で岩に叩きつけられて死んだ者もいる。俺はもはやそれが怒り喰らうイビルジョーのものなのか返り血なのかも分からぬほど、鮮血で真っ赤に染め上げられた尻尾を躱しつつ、その腹部にハンマーのかち上げを命中させた。怒り喰らうイビルジョーには既に腹筋を締める余力さえ残っていないのか、その一撃の衝撃はは怒り喰らうイビルジョーの消化器を穿ち、怒り喰らうイビルジョーは堪らず胃の内容物を吐き出す。
そんなダメージを負いながらも、怒り喰らうイビルジョーはただ怒りに任せて上半身をがむしゃらに振るい、自らに群がる敵に容赦ない攻撃を仕掛ける。戦闘が始まったばかりの頃に比べれば目に見えて弱っているとは言え、その膂力は巨大なジンオウガをも吹き飛ばし、底無しの体力はなおも尽きる気配を見せない。怒り喰らうイビルジョーが瀕死なのは最早誰が見ても明らかだった。
暗緑色の鱗は剥がれ落ち、剥き出しになった皮膚には無数の傷が刻まれ、ジンオウガの雷によって焼け爛れた場所も数知れず、全身は自身の血で真っ赤に染め上げられ、背中にある古傷が弾けて痛々しい肉面が晒され、繰り返される息は絶え絶えで、爛々と輝いていた赤い瞳は既にその光を半ば失っている。にも関わらず、その攻撃はより重く、その足捌きはより速く、その憎悪はさらに燃え、怒り喰らうイビルジョーは暴れ続ける。
その姿は、怒り喰らうイビルジョーという生命体が、果たして生きる為に暴れているのか、それとも暴れる為に生きているのか……そう考えてしまうほど、
……哀れだった。ツバメの体力増加【大】の旋律により、これまでの戦闘で磨り減った体力が回復していくのがわかる。あの旋律は一定時間が経たなければ再度回復出来ないが、その分大きな回復効果を望めるのだ。
そんなツバメの支援を受けながら、俺は怒り喰らうイビルジョーに攻撃を繰り返す。この苦境が一刻も早く終わるように、怒り喰らうイビルジョーが一刻も早く解放されるように。……おそらくそれは、ジンオウガの背面ボディプレスが怒り喰らうイビルジョーの巨体を揺るがした、次の瞬間の事だったと思う。
突如として、怒り喰らうイビルジョーが暴れるのを止め、その動きを変えた。瘴気の晴れた頭で、古代林の地面を破り、地中へと潜り始めたのだ。一瞬、何が起こったのか自分でも信じられなかった。
––––––––それは逃走だったのだ。
これまで、獲物を追い求めることしかしてこなかった怒り喰らうイビルジョーの……暴走するように暴れ狂い、猛威を無差別に撒き散らし続けた絶対的な捕食者の、明確な敗走だった。
命を惜しむが故に、逃げ出したのだ。古代林に、静寂が訪れる。
まるで、さっきまでの戦いなど初めからありはしなかったかのように、夜の森は沈黙した。ただ、
––––––––ォォォォオオオンンッ!!
月の映える夜空に木霊する竜の咆哮が、俺達の勝利を告げているようだった。
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23
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-17 19:02
ID:vAR5VuSY
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怒り喰らうイビルジョーが逃走し、これにて一件落着……と、そう上手く行くとは到底思えなかった。
ザン……ッ!
ジンオウガの碧い視線が、今度は俺達の姿を捉える。
考えてみれば当然だ、マッカォ達がどんな方法で奴をここまで誘き出したかは知らないが、登場した時点で超帯電状態になっていたということは、それぐらいジンオウガを怒らせるような事をしたということ。更に言えば、怒り喰らうイビルジョーを撃退し、新たな縄張りを手に入れたジンオウガにとって、先程まで共闘していたとはいえ今の俺達は単なる『侵入者』でしかない。––––––––縄張りに侵入するべからず。
それが、ジンオウガの存在を初めて知った時に、その名と共に聞いた言葉だった。
凄まじい威圧感を放ち、じっとこちらを見据えるジンオウガに、俺の周囲にいたマッカォ達は警戒の声を上げ、ドスマッカォでさえもボロボロの体で臨戦態勢に移行する。
比較的傷の少ないツバメは、狩猟笛を構えながら、俺を庇うように前へ出た。
正直、今の状態でジンオウガに襲い掛かられれば、おそらく俺達に勝ち目は無いだろう。まだ傷の少ないジンオウガに対し、俺達は長期に渡る戦闘による疲労で既に満身創痍。いくらジンオウガを狩猟した経験もあるとはいえ、それはこの差を覆すほどのアドバンテージにはなり得なかった。ザン……ザン……ッ!!
ジンオウガが、登場した時と同様に、悠然と、しかし猛々しく、此方に向けて歩みを進めた。
ツバメの狩猟笛を握る手には力が篭り、マッカォ達は姿勢を低くして今にも飛び掛かろうと構え、ドスマッカォは威嚇するように吠える。
だが俺には、不思議とジンオウガの雰囲気に、俺達に対する害意が込められていないように感じた。直後、ジンオウガがその右腕に蒼光を纏わせながら、大きく跳躍する。
俺達のいる方向に向けて跳んだジンオウガは、しかし俺達の頭上をも飛び越えて……、
……真後ろの地面から飛び出し、俺達の背後から奇襲を仕掛けようとしていた怒り喰らうイビルジョーの頭に、強烈な一撃を見舞った。––––––––グァァァァアアアアッ!!
奇襲を仕掛けようと地中から飛び出した直後に頭部に攻撃をくらった怒り喰らうイビルジョーは、驚きと痛みのあまりすぐさま地中へと逃げ帰って行く。
最後の奇襲が失敗した。おそらくもう二度と戻って来ることはないだろう。ジンオウガは、そんな怒り喰らうイビルジョーの姿を見送りながら小さく吠えると、驚愕する俺達を一瞥し、悠然と、しかし誇り高く、森の奥へと去って行った。
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24
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-17 19:05
ID:vAR5VuSY
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––––––––ドサッ……
静まり返った夜の森の中に、その音は嫌に大きく響いた。
おそらく今まで気力だけで立っていたのだろう。操り人形の糸が切れたかのように地面に倒れ伏したドスマッカォに、マッカォ達が縋り付く。
現状生き残っている者の中で最も傷が多いのは、まず間違えなくドスマッカォだった。緑色の鱗は血によってドス黒く染まり、先端が失われた左肩は痛々しい傷を晒している。僅かに上下する腹がその者の確かな生存を証明しているが、それだって虫の息と言っていい。おそらくこのまま放置していれば、ドスマッカォは夜明けを待たず事切れるだろう。それは別に、俺やツバメにとって特段何か不都合があることでは無かった。寧ろ、今後他のハンターがこのドスマッカォに襲われるかも知れないという可能性を考えれば、このまま放っておくのが最善の判断だとさえ言えた。
……だが、何故だろうか。
気が付けば俺の足はドスマッカォに向けて進んでいた。瀕死のドスマッカォに接近する俺に、マッカォ達は当然警戒の声を上げる。しかし、それでも俺がただ黙って歩みを進めていくと、やがてマッカォ達はオズオズと道を開けた。間近まで接近した俺を、ドスマッカォはその透き通るような琥珀色の瞳で見つめた。
一度はあんなにも恐れた視線……だが俺は、今この瞬間において、まるで臆する事なくただ真っ直ぐにその眼光を見つめ返した。Q、あなたの行動を指定してください。
1、自由枠 -
25
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-17 19:38
ID:k9YzprU6
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・敬意と共に脳天をかち割る
正直この状態で生かしておく方が残酷だと思う
あ、ただトドメの後に黙祷だけしてやってほしい>>26>>27
実際登山とかで滑落して半死半生の状態になったときはリーダーがこれ以上苦しまないように56すこともあるんやで
だから今のドスマッカォにはこれが救いやろうとね?>>28
んなこと言ったらどう考えても助からない重傷のやつを無理に延命させて苦痛長引かせるのもエゴでしょーよ、結局何するにしても人間様のエゴよ
批判染みたことを言うくらいならドスマッカォが助かるような案を考えればいいジャマイカ
追記
今なおそのワンコのこと思い出せる位に可愛がってたんだろ、胸張りな、ほれハンカチ -
26
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-17 19:49
ID:.giYi9k6
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な、なんか重い選択…
1、回復薬を一瓶振りかけてからキャンプに帰る
その後の生き死にはともかくとして前々回のスレでココット村長の「人と自然の調和を図るのがハンター」とかニコラスの「狩人では無く守り人」と言う言葉を考えると敢えてこの場で仕留める理由も無いかなぁ
ていうかやったら外道やろ!追記
ぎゃあ被った!
すいません気にせず脳天勝ち割って下さい! -
27
名前:時雨
投稿日:2018-01-17 19:53
ID:gX20EMvk
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手を乗せて目を閉じさせる、とかかね
共にイビルと戦った戦友だし、せめてもの手向けにな>>25
それ大丈夫か? 脳天カチ割ったら周りのマッカォから総攻撃受けない?
>>28
描写みたところ凄く信頼されてるドスマッカォっぽくてなぁ。
その設定すっかり忘れてたなぁ。じゃああれだ、攻撃して楽にしてやった上で何らかの武器の素材にするか。
というかこのドスマッカォ、強さ的には下位? それとも上位? -
28
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-17 21:35
ID:r9G/sj0k
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「アイツが頃してくれと言ったから頃した」
「この犬が頃してくれと言った気がしたから頃した」
前者は安楽死や尊厳死といった観点から理解できなくもないけど後者は完全にエゴだよねコレ
はたして我々人間の価値観を、このマッカォに押し付けてしまっていいのだろうか…別に>>25を批判してる訳じゃないんだ
ちょっと昔のわんこがタヒんだ時を思い出してセンチメンタルになってるだけなんだ… -
29
名前:蟹
投稿日:2018-01-17 23:30
ID:B8nXzJ4E
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介錯とでも言うべきだろうかね
気高き魂をせめてあえぎ苦しむ情けない姿を晒す前に仕留めるというのはある種礼儀だろうけど、せめてこいつの素材で何か装備を作れるといいな……
どう選択するにせよ、一度でいいからツバメにも確認を取りたい
あとは帰ったあとで新米連中に、詳細を少しごまかした上でこの状況をどうするか聞いてみたい>>27
マッカォはリーダーが劣勢になると逃げ出す性格のモンスターだからむしろ特に何もされないと思う -
30
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-18 00:13
ID:oHOBvmJQ
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そう言えばこのドスマッカォはやけに群れの統率が取れてた辺り特殊な個体だったと思うんだけど後で解説あるのかな?
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31
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-01-18 07:37
ID:2vNnRjOI
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((((;゚Д゚)))))))←自分で問いを投げかけておいて問題が大きくなったらビビるダメ作者の図。
まあ、よっぽどのことが無い限り一番最初に書き込んだ>>25様の意見でいかせてもらいますが。
ところでまた一時的に『掲示板に書き込み出来ません』になったんですけどアレってそういうシステムがあるんですか?>>30説明は後程(特殊個体だとほぼ自供)
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32
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-18 12:19
ID:G1ur6N.c
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既に虫の息となったドスマッカォを見つめ俺は静かにアイテムポーチの中に手を入れ、回復薬を一瓶取り出そうとして……だが止めた。
ドスマッカォの負った傷は既に回復薬で治るようなものではないし、仮に治ることがあったとしても、左腕を切断されたことにより失われた血は戻らない。それに……そもそもモンスターには回復薬の効果が殆ど無いことを、俺は知っていた。生命の粉塵でモンスターの体力が回復しないのと理屈としては同じだ。代わりに、次の瞬間に俺の手が伸びたのは……背中にあるハンマー、鬼鉄。
この戦場において、俺の命を救ってくれた『武器』だった。このドスマッカォは、明ける陽を望む事なく死ぬだろう。それは最早変えようの無い事実だ。怒り喰らうイビルジョーの強酸性の唾液によって顔の半分が焼け爛れ、欠けた牙のようなものが今でもその体の至る所に突き刺さっている。呼吸は弱々しく、眼光は鋭さを失い、今改めて近付いてみれば、体温も極端に低下していることがよくわかる。
このまま放っておけば、ドスマッカォは死ぬ寸前まで苦しみ続けなくてはならない。
……だからせめてもの手向けに、この手でその苦しみを終わらせてやろうと思った。
それは俺の傲慢かも知れない。
あるいは勝手な思い上がりかも知れない。
だけど確かに、このドスマッカォは『殺されずに死ぬこと』を拒んでいるように見えてならなかった。俺が武器を構えたことにより、周囲にいるマッカォ達は俄かに騒めき立つ。俺に対して最大限の警戒を露わにし、今にも襲い掛かろうと姿勢を低くする。
……そうだ。これがモンスターとハンターの正しい関係。互いに己の武器を振るい、命を奪い合う。両者は決して相容れないのだ。ましてや、心が通じ合うことなど、あってたまるものか。
そう思って無ければ、ハンターなんて続けていけない。–––––––––グァゥ。
そんなマッカォ達を止めたのは、他でも無いドスマッカォ自身だった。自分達の主を守ろうと、決して無傷ではない体で懸命に俺を威嚇していたマッカォ達は、ドスマッカォから放たれたその声に暫く狼狽するような動きを見せると、一匹、また一匹と、何も言わずにその場から去って行った。
……やがて最後の一匹が見えなくなり、今この場にいるのは、俺とドスマッカォ、そしてツバメだけとなる。ドスマッカォが、ジッと俺の顔を見つめた。
両者が言葉を交える事は、最後の瞬間まで決して無かった。しかし、互いに言いたい事だけは、確かに伝わった気がした。
不思議と、口角が吊り上がる。それはある意味呆れだったし、それはある意味嘲りだったし、しかし、それはある意味敬意でもあり、それは紛れも無い、今の俺に表現し得る最高の賛辞だった。天高く振り上げた鬼鉄が、月光を反射して淡く輝く。
直後、振り下ろされたハンマーの一撃は、一条の光の筋となり、綺麗な弧を描いてドスマッカォの頭部へと吸い込まれ……「……お前、凄ぇ奴だよな。」
……修羅の道を生き急いだ一つの竜の物語が、ここに終幕を迎えた。
-
33
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-18 12:36
ID:G1ur6N.c
[編集]
***
目を閉じる度、竜は思い出す。
瞼の裏を、さながら走馬灯のように駆け巡る光景。目に入る全てが『初めて』だったあの頃。
仲間と、家族と、不安定ではあったけど、それでも1日1日を踏みしめるように生きていたあの頃の事を。
あの時の自分は、きっと何よりも弱くて……だけど、幸せだったのだと思う。
弱いからこそ、些細なことにも喜びを見出して、
弱いからこそ、刹那の命を最大限に楽しんで、
弱いからこそ、家族の大切さを知っていた。そして、全てを失ったあの日、自分は弱さから逃げ出した。
些細な喜びも、刹那の楽しみも、家族の温もりも、全てから目を背けて、強さに逃げたのだ。
溢れ出す悲しみを、漏れそうになる不安を、湧き出でる喪失感を、『失望したのだ』と偽って……偽物の命を生き急ぐ日々。
結局自分は、どこまでいっても、『心』が弱いままだったのだと思う。どれだけ力を鍛えようと、どれだけ技を磨こうと、どれだけ知略を学ぼうと、その中心をなすものが、弱いままだったのだ。……自分の命に、何か意味はあったのだろうか?
……自分は、自分という存在が生きた証を、何かこの世に残せただろうか?わからない。
だが、もうわからなくても良かった。もう満足した。
だってそうだろう?単なる心の弱いドスマッカォが、全てを屠り喰らう魔物相手に大立ち回りだなんて、それだけで十分ふざけた話だ。これ以上望むなんて流石に贅沢が過ぎるってものだろう。
自分はもう満足、十分過ぎるくらいに生きた。
やり残した事なんて有りはしない。今は一早く、家族の元へ向かいたい。……だけど、
……だけど最後に、自分を殺すお前に、一つだけ頼みがある。
自分の言葉はお前には伝わらないし、お前の言葉は自分には理解出来ない。それでも、例え種族が違っても……『何か』が伝わると信じて、たった一つだけ、頼みがあるんだ。
どうか……どうか自分を殺したことを誇ってくれ。そして強くなってくれ。自分を殺したお前は、何よりも強い存在だったと……そう、この広い世界に証明してくれ。……それが自分の、最初で最期の願いだ。
どこまでも澄み渡った夜空に、無数の星が瞬いて……、自分に振り下ろされようとしている重鈍な鉄塊が、月明かりを反射して淡く輝いた。
……知らなかった。
今まで、顧みたことも無かったから……–––––––この森の星空は、こんなにも綺麗だったんだな。
***
-
34
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-18 19:29
ID:Znrt97HA
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穏やかにその生涯を閉じたドスマッカォの瞼を、そっと手で閉じさせる。それと同時に、まるで初めて生き物を殺した時のような、どうしようもなく複雑な感情が込み上げてくるのを、俺は止めることが出来ずにいた。
『モンスターだって、生きている。』
それは、言葉にするまでもないほど、当たり前のこと。ハンターとして初めて武器を握った時から知っていたことのはずなのに……なのに今、改めて強くそれを自覚させられた。知らぬうちに、忘れていたのだろうか……?幾度となく繰り返す内に、俺は省みることさえ辞めてしまったのか……。
自分の身に纏う鎧の一つが、
自分の握る武器の一振りが、
普段何気なく使う、多種多様な道具の数々が、
……その全てが、数多の命の上に成り立っていることを。––––––––或いは、『ハンター』という存在そのものが、『傲慢』なのかも知れない。
だけど、進んだ道は戻れはしない。
そして、はなから戻るつもりなどありはしない。
共に戦う仲間がいて、守るべき場所があって、遥かなる夢がある限り……俺は決して、ハンターを止めることは無いのだろう。
だからせめて、今まで俺がこの手で殺めてきた多くの命に報いるために……
今この瞬間、消え行こうとしている気高き竜の魂に報いるために……
俺は、強くなろうと改めて誓った。ツバメの小さな手が、静かに俺の肩に置かれた。
彼は俺を、責めも、怒りも、褒めも、慰めもしなかった。上っ面だけの言葉を発することなく、ただ黙ってそこにいてくれた。
……帰ろう。俺たちの帰るべき場所へ。ツバメと並んでベースキャンプに向けて数歩歩いたところで、ふと後ろを振り返ると、既にもの言わなくなったドスマッカォの亡骸に、一つの影が近付いていることに気が付いた。
その影は、マッカォと言うには大きくて、ドスマッカォと言うにはまだ小さ過ぎる、所謂"成り掛け"の個体。とは言え、頭には短くはあるが冠羽が生えており、尻尾も大きく発達し始めている。思い返してみれば最初にドスマッカォと出会った時に彼の真横に控えていたのが、この個体だったような気がする。恐らく、彼の群れのサブリーダー的存在だったのだろうというのは想像に難くなかった。
そんな"成り掛け"は、二度と起きる事のない主の骸に駆け寄ると、悲しそうに一声鳴く。そして、小さな手で主の鮮血を掬い取ると、自らの短い冠羽の右側に擦り付けた。
それは奇しくも、死んだドスマッカォの右側頭部にあった紅の冠羽にそっくりで……"成り掛け"が、黙ってその場を去ろうとする俺達の背中に向けて、短く吠えた。
そこにどのような感情がこもっているのかなど、俺には到底理解出来ない。当然だ。だって竜と人は相容れないのだから……。
ただ……「次会う時は、敵同士かも知れないな。」
俺は振り返りもせずに、そう言い放った。
その言葉に意味などないかも知れないけど、それでも、言ったのだ。……きっとあのドスマッカォの亡骸も、モンスターに喰われ、小動物に喰われ、微生物に喰われ……やがてはこの広い森の一部として、土となって消えてしまうのだろう。残酷な時間の流れと共に、彼が生きたその証は一つ、また一つと消えていき、やがて世界は、彼の存在を忘れてしまうのだろう。
だからせめて、俺だけは覚えていよう。
俺は、お前のことを忘れないぞ。
お前の生きた証が消えようとも、世界がお前の存在を忘れようとも、
……俺だけは、いつまでも覚えている。–––––––––きっと、忘れない。
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35
名前:蟹
投稿日:2018-01-18 20:09
ID:B8nXzJ4E
[編集]
これスケベハンターちゃうやん!クッソイケメンの主人公やんけ!
いいぞもっとやれ
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36
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-18 23:14
ID:DXCTkSc.
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「「「先生!」」」
ツバメと共にベースキャンプへと戻ると、そこではアズリー、アルザス、エイジロウの三人が揃って拠点のベットの上に寝かされていた。
よく見れば、三人ともある程度怪我に対する応急処置をした跡がある。しかも彼等三人が何かを食べたのか底の浅い空の食器が三つほど隅に重ねられていた。
一瞬、一体誰がそんなことをしたんだ?と疑問に思うが、その疑問はすぐに解消される。「取り敢えず、クエスト達成お疲れ様でした。と言ったところですかね?」
……飛行船のエンジンを動かしながら、飛行船の乗務員はそう言って俺を労った。
状況を察するに、恐らく彼がベースキャンプに居た三人の世話を見ていてくれたのだろう。一番ダメージの少ないアズリーに詳しい話を聞くと、どうやら空きっ腹にも優しいお粥を作ってくれたうえ、それぞれの傷に対して的確な応急処置を施してくれたようだ。「いやぁ、褒められるほどのことじゃ無いですよ。ほら、あの時みたいに飛行船が墜落して何もできない……なんてことになると困りますからね。その為に培ったノウハウが偶々お役に立っただけです。」
どうやら彼にとってあの墜落事故は人生を変えるような出来事だったらしく、飛行船の乗務員を続けながらも超本格的なサバイバル術を学んだそうだ。どうりで逞しくなっているわけである。
まあ、下手すれば死にかけて居たのだからそれも当然と言えば当然か。「それにしてもボロボロですね。いや、相手があのイビルジョーだったことを考えれば、むしろその程度の傷で済んだだけ儲けものかな?まあ、応急処置は航行中にやるので飛行船に乗ってください。見たところ全員出来るだけ早く村に戻って、しっかりとした休息を取る必要がありますからね。」
彼に促されるままに、俺達は飛行船へと乗り込んでいく。
そうして、飛行船の甲板まで入ったところで……俺は膝から崩れ落ちた。そんな俺にアズリー、アルザス、エイジロウの三人は当然驚き、「先生っ!?」と自分達の疲労と怪我も顧みずに駆け寄ろうとした。
当然俺は三人に心配ないことを伝えようとするが、俺が口を開く前にツバメが三人を制した。「安心せい、別に怪我をしたわけではない。今回はかなり危なかったからの、気が抜けたのじゃろう。ほれ、お主達も安静にしておれ。」
まさしくツバメの言う通りだった。此度の一件は控えめに言って臨死体験ツアーだ。一瞬でも気を抜けばそれが死に直結し、狩場では常に気を張り詰めっぱなしであった。そして今、漸く安全な場所に辿り着いたことでそれが緩んだ途端、体にまるで力が入らなくなったのである。
もう立つのさえ億劫だというのは、まさにこの状態を示すのだろう。「では、行きは最速で向かうことを優先しましたが、帰りは出来るだけ揺らさないようにゆっくりと戻りましょうか。」
そんな俺を気遣ってくれたのか、飛行船の乗務員もそんな提案をする。彼のその言葉通り、出航時は大抵の場合大きく揺れる飛行船の船体が、今はあまり揺れていない。飛行船の操縦についてはてんで詳しくないが、素人考えでもそれが相当なテクニックを要することなのは十分に理解できた。
……やがて飛行船はその高度を上げて行き、大空へと舞い上がる。
それに伴って遠ざかっていく古代林の姿が、俺達が全員無事に脱出出来たのだということを改めて実感させた。顔を上げて見れば、東の地平線に朱い朝陽が燃えている。
暗闇と静寂が支配する長い長い夜が明け、夜明けが訪れたのだ。–––––––広大な海の水面まで真っ朱に染め上げて燃える朝陽は、まるで俺達の帰還を祝福しているようであった。
*QUEST CLEAR*
エピローグを二、三本挟んで終了です。
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37
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-19 16:16
ID:vAR5VuSY
[編集]
〜エピローグ1〜
俺達がやっとの思いで龍歴院へと辿り着いたのは、昼を大きく過ぎた頃だった。飛行船の中で仮眠を取ったとは言え、肉体的にも精神的にもすぐにでもマイルームのベースキャンプに倒れ込みたいところではあるが、残念ながらまだやるべきことがある。オババへの救助完了の報告だ。
「……そうかい。怒り喰らうイビルジョーが……。」
俺の一連の報告を聞いて、オババは神妙そうに頷いた。目を閉じて俯くその様子は遠目に見れば居眠りをしているようにしか見えないが、こう見えて今オババの頭の中では凄まじい速度で思考が繰り返されているのだろう。
だが、そんなオババの思考を遮るように、アイルーの郵便屋さんがオババに何やら手紙のような物を手渡す。オババは一度熟孝を解除し、郵便屋さんの手から手紙を受け取ると、ガサガサとそれを開き、終始黙ったままその手紙を読み終え……しばし目を伏せた後に、俺に向けて言った。「どうやら、アンタの心配事が無くなったようだよ。」
俺は一瞬、その言葉の意味がわからなかった。いや、オババの言う『心配事』が何であるのかは分かっているのだが、それが『無くなった』という、その意味がわからなかったのだ。
だってそれは…………、「古代林の常駐調査隊が、怒り喰らうイビルジョーの"死骸"を発見した。全身が焼け焦げ、酷い有様だったという話だ。」
怒り喰らうイビルジョーが……死んだ?
死んだのか?あのモンスターが、あの魔物が……っ!「最新の情報で、詳細はまだ分かっていないが……おそらくはアンタが発見したディノバルドの特殊個体か……他にも角が半ばから異常に成長したキリンなんかも確認されている。もしかしたら弱ったところをそういう連中に殺られたのかもね。」
……確かに、あの日見た異形のディノバルドや、古龍という極めて謎の多い規格外の存在ならば、十分に弱っているという前提で怒り喰らうイビルジョーを殺すことが出来るかもしれないが、しかしそれでも、やはりあれだけの猛威をまざまざと見せつけられた怒り喰らうイビルジョーが惨殺されたという、その事実が信じられなかった。……信じられなかったというか、受け入れ難かった。
「バルファルクの件といい、頭の痛い限りだよ。全く……」
オババはそう言ってこめかみを抑え、深い溜息を吐いた。ハンターから見れば何時も座っているだけにしか見えないギルドマネージャーも、裏では山のような仕事の数々と格闘しているのだろう。
そんなオババには悪いが、今回は報告の他にもう一つ、俺の我儘を聞いてもらう為にここに来たのだ。それが確実に達成されるかは期待出来ないが、試しているだけ試してみよう。「ん?頼みさね?まあ、アンタには新人三人をロクな準備も無しに救ってもらった恩もあるし、よっぽどの事じゃ無い限り一つくらいなら構わないよ。」
どうやら感触は良さそうだ。
じゃあ……ダメ元で頼み込んでみよう。「オババ、実はもう一軒、特殊個体の存在が確認されたんだ。ドスマッカォなんだけどさ……俺が、名前決めても良いかな?」
「はぁ〜、アンタもつくづく縁があるね。それにしてもドスマッカォの特殊個体なんて初耳さね。で?その名前はどんなのだい?」
「それは–––––––」
Q、ドスマッカォ特殊個体(及びその群れと業を継承した新生ドスマッカォ)の名称を決定してください。
1、鞍馬(クラマ)ドスマッカォ※鞍馬天狗
2、風花(フウカ)ドスマッカォ※風に散る花
3、崢嶸(ソウコウ)ドスマッカォ※人生の険しさ
4、夕星(ユウツヅ)ドスマッカォ※宵の明星
5、傑士(ケッシ)ドスマッカォ※際立って優れた人物
6、紅鏡(コウキョウ)ドスマッカォ※太陽の意
7、奇譚(キタン)ドスマッカォ※変わった物語
8、その他(俺が考えるっ!!) -
38
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-19 17:03
ID:xGWEJYdc
[編集]
5にしよう
特殊個体命名の選択肢とはまた斬新な… -
39
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-19 17:58
ID:oHOBvmJQ
[編集]
一匹スゴイ身に覚えのある古龍がいましたねぇ…
-
40
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-19 18:17
ID:pJBQclzA
[編集]
〜エピローグ2〜
俺の我儘だったとは言え、新しい特殊個体の登録にはそれ相応の手続きが必要になり、しかもその途中で諸々の事情(怒り喰らうイビルジョーの乱入など)をツバメに教えられたエリクシルが涙目で乱入してきた事により、かなりの時間を取られることとなってしまった。
日が西に傾いた頃、俺は漸く懐かしのマイルームへと戻ってきた。時間にすればたった一日空けただけなのに、こんなにも懐かしく思えてしまうのは、それだけ濃い時間を過ごしたからだろう。
鎧を床に無造作に投げ捨て、久々にインナー姿になった俺は、バフッと顔面からベットに倒れ込む。「チカレタ……」
言うべきことはそれだけだった。
もう二度とあんなことやりたくないというのが正直な感想だが、しかし誰か知り合いが助けを求めているとなると俺はまた直ぐに飛び出してしまうのだろう。我がことながら難儀な性格に生まれたものだ。
そうして自室のベットに倒れ込んで、暫く黙ってグダグダしていた俺は、ふと懐に入れた紅色の冠羽を取り出す。
窓から僅かに射し込む夕日を浴びて、冠羽はキラリと輝いた。あのドスマッカォの特殊個体の名前は、「傑士」。
傑士とは、極めて優れた人物を指す言葉だ。類義語として傑物とも言う。種族的な弱さを乗り越え、本来遥か格上の相手である怒り喰らうイビルジョーを相手に立ち回ったあのドスマッカォにはまさに相応しい称号であろう。
そして、その傑士を殺した俺は、その分だけ強くならなくてはならない。これはそういう誓いでもあった。今が夕方であるのと、飛行船の中で仮眠を取ったからだろうか。どうしようもなく疲れているはずなのに、何故か目が冴えてならない。そう、言うなればそれは……胸騒ぎにも似た、疼き。
ふと思い立って誘惑のベットから立ち上がり、防具に袖を通し、武器を手に取った。そうして静かに目を閉じると、瞼の裏には一匹の龍の姿が映し出される。***
水面を割り、風を引き裂き、雲を吹き飛ばして、自らの寝床へと帰還する。捕らえた獲物を無造作に地面に放り投げ、龍は遥かなる山頂から世界を見下ろした。
何処までも果てのない雲海が、夕日を浴びて赤く染まっている。それは既に見慣れた光景のはずなのに、何故か今、その景色が目に焼き付いて離れなかった。自らの翼から龍気を噴出し、周囲の床に溜まったゴミを吹き飛ばすと、そこにゴロリとうずくまる。
ついさっき捕らえたばかりの獲物の新鮮な肉を引き裂きながら、龍は静かに瞼を閉じた。瞼の裏には、一人の狩人が映し出される。
–––––––––。
-
41
名前:朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる@難亭
投稿日:2018-01-19 18:47
ID:pJBQclzA
[編集]
〜エピローグ3〜
瞼の裏に映し出された龍と、頭の中で既に何度やったかわからない、空想の戦闘を開始する。
放たれる弾幕をすり抜け、龍に肉薄し、手に握られた武器でその巨体を穿つ。瞼の裏に映し出された狩人と、頭の中で既に何度やったかわからない、空想の戦闘を開始する。
猛攻を寄せ付けぬ弾幕を張り巡らせ、接近されたら翼を以って叩き潰す。初めて会った時は、龍の力の前に手も足も出ずに、ただ逃げることしか出来なかった。
初めて会った時は、ただ逃げることしか出来ない、歯牙にもかけないようなか弱い存在だった。
だけど、幾度となく邂逅を繰り返す度に、段々と互角に立ち回れるようになってきて……、
だけど、幾度となく邂逅を繰り返す度に、段々と追い詰められることが多くなってきて……、
『……そして今、』
……不思議と、勝てるビジョンが浮かんでくる。
……次は負けるかもしれないと、思ってしまう。
『だけど、だからこそ、来るべき決戦に備えて、己を磨くのだ。』
鱗を引き裂く一撃はより鋭く、
巨剣の一撃をも阻む鱗はより硬く、
嵐のような攻撃を躱す身のこなしは更に軽く、
小さき身を貫く刺突の嵐は更に激しく、
龍の猛攻を防ぐ堅牢なる鎧はなおも強く、
堅牢な鎧をも粉砕する一撃はなおも重く、
『囲む全てに見守られ、持てる全てをそこに賭け、』
龍と––––––
狩人と––––––
『–––––––––相対する。』
……決着の時は近い。
***
***
***シナリオ42、完
〜info〜
アイテム、「紅の冠羽」を入手しました。(ドスマッカォの最期を看取った)
アイテム、「恐暴竜の鉤爪」を入手しました。(シナリオ序盤で入手した落し物)
称号、「デイドリームビリーバー」を入手しました。(何よりも強くあれと願われた) -
42
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-01-19 18:49
ID:pJBQclzA
[編集]
*特殊個体メモリアル*
跳狗竜特殊個体「傑士」 分類:鳥竜種
やや小柄な体躯と、右側頭部に存在する紅の冠羽が特徴の跳狗竜の特殊個体。
非常に優れた身体能力と学習能力を持ち、竜としての全身をフルに使った格闘術によって高機動高回転高出力の打撃を乱打しつつ、回避やイナシを交えて攻撃をやり過ごす、縮地によって間合いを一瞬で調整するなど、まるで人間で言う達人のような動きを行い、通常の個体からは考えられないような戦闘力を発揮する。ただし、体そのものは通常の跳狗竜と多少力で勝るものの大差は無く、打たれ弱い上に、身体能力の限界を遥かに超える激しい動きが祟って疲労しやすい。
また、そのカリスマ性によって人望(竜望?)もあるのか、通常個体とは違い群れの統率力にも長けており、ピンチに陥ってマッカォ達に見捨てられるといった事もない。
シナリオ42にて既にどう足掻いても助からない傷を受け、あなたによって介錯されるが、その志は若いドスマッカォの"成り掛け"によって受け継がれた。*登場人物(?)紹介*
修羅の道を歩んだ竜「傑士ドスマッカォ」
性別:♂(?) 年齢:16 種族:跳狗竜
幼い頃に火竜と雌火竜によって親、兄弟、仲間を惨殺されたドスマッカォ。それ以来ひたすらに強さを求め続けた。まぁ、群れを滅ぼされた事により、非力なマッカォが一匹で生きなくてはならなくなったのだから、強くならなくては生きられなかったというのもあるが……。
自分が戦って強いと思った相手の戦闘スタイルは積極的に取り入れるタイプであるため、技のバリエーションが豊富。実はイナシはブレイブスタイルを扱うハンターと戦った時に身につけた技能である。
怒り喰らうイビルジョーとの戦いで大怪我を負い、あなたの手によって介錯を受ける。現在故人……否、故竜。
※この登場人物紹介は作者なりの(下手な)冗談です。登場人物紹介に載せる必要はありませんのであしからず。 -
43
名前:時雨
投稿日:2018-01-19 19:07
ID:xGWEJYdc
[編集]
難亭しお疲れ様でしたー。
読み応えがある素晴らしいシナリオでした。
スレを読み返したと仰っていただけあり、随所に過去のシナリオネタが散りばめられており楽しんで読むことが出来ました。
さて、次はバルファルクとの決戦ですかね? 誰がやるのかなぁ。因みに『角が半ばから異常に成長したキリン』って、兎氏が書いたお使いシナリオに登場したキリンですね?
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44
名前:千壱
投稿日:2018-01-19 19:35
ID:9HmB38Tg
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シナリオ42、お疲れ様でした。
かなり速いペースで更新されていて、しかもモンハン愛が伝わってくる文章でもあり、非常に濃密な回でした。 -
45
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-01-19 19:52
ID:pJBQclzA
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※あとがき
な、な、な……長いわぁぁぁぁああああっ!!
_, ,_ パーン
( ‘д‘)
⊂彡☆))Д´)
はい、申し訳ございません。スレ埋めのための短編のはずが(一週間で完結したとはいえ)凄まじい長さになってしまいました。
試しにザッと集計してみたら四万文字を軽く超えて五万文字に肉薄しております。いつのまにそんなに書いたん自分!?
私にとってリレー小説というのは初めての試みでしたが、自分なりにやりたいことは出来たと思います。いやぁ、楽しかった。
あ、因みに一番やりたかったのはエピローグ3のアレです(暴露)。さて、話の構成も文の細かい描写もてんで拙いものでしたが、お楽しみ頂けたでしょうか?もし皆様がお楽しみ頂けたと言うならば、この身にとりこれほどの労いはございません。
このあとがきではタイトルなんかの説明を少々。
まず、気付かれた方も多いと思われますが、話の前半と後半でタイトルが一度変更されています。
前半は『若芽萌ゆ、古代の森に、紅葉の』
後半は『朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる』
となっており、イビルジョーの乱入直後からタイトルが差し替えられているのです。
両方を並べて繋げると、
『若芽萌ゆ、古代の森に、紅葉の、朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる』
(わかめもゆ、こだいのもりに、もみじばの、あけびゆめみて、ふるははもゆる)とお読み下さい。
御察しの通り五、七、五、七、七という短歌調になっています。前半の『若芽萌ゆ』とは「植物の新芽(≒新米ハンター)が茂る」という意味で、『古代の森に』は言うまでもなく古代林のこと、『紅葉の』は和歌などに用いられる枕詞で「朱」に掛かる言葉です。
そして後半、『朱陽夢見て』の『朱陽』。これ一番意味がわからなかったかと思いますが、心配いりません、造語ですから。
『朱』とは赤と似たような意味を持つ漢字ですが、実はこの文字「あけ」とも読み、「夜が明ける」のような意味を含みます。つまり私が作った造語である『朱陽』とは「明ける赤い陽」、即ち『朝日』このとを示すのです。
ということで、『朱陽夢見て』というのは、「朝日を待ち望んで」といったニュアンスになるでしょうか。
そして最後の節、『旧葉は燃ゆる』はそのままの意味で、「古くなった葉が燃え尽きて死ぬ」という感じですね。最初の節の『若芽萌ゆ』と同じ読みの言葉を使うことで両者を対比させています。……はい、早い話が妄想過多な私が勝手に作った短歌です。以上タイトルの説明終わり!
最後に、このシナリオで描きたかったのは、モンスターにもそれぞれの人生、物語があり、生きているということです。決して武具の素材や邪悪な敵などではなく、一つの命だということです。
それが書きたくてこのシナリオの進行役をやらせて頂きました。まぁ、これぞ釈迦に説法ではありますが。読了お疲れ様です。お読み頂きありがとうございました。
では、バルファルク戦半裸待機っ!!>>43(^言^)ニヤリ.....
-
46
名前:時雨
投稿日:2018-01-19 20:50
ID:gX20EMvk
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あなたの日記十一冊目 目次に戻る(>>1)
十一冊目(ここ) 十二冊目(>>392)
──────────────シナリオ42 『若芽萌ゆ、古代の森に、紅葉の、朱陽夢見て、旧葉は燃ゆる』(前スレの続き>>4)
新人ハンターの二人を逃がしイビルジョーと対峙するあなたとツバメの前に現れたのは紅の冠羽が特徴のドスマッカォであった。
ドスマッカォと連携し立ち向かう途中、恐暴竜は『怒り喰らうイビルジョー』へと変貌。想定外の事態に驚愕するもツバメに作戦を伝える。
そしてツバメとマッカォ達が連れてきた『雷狼竜 ジンオウガ』と共に恐暴竜を撃退する事に成功。
恐暴竜との戦闘により深い傷を負った跳狗竜に介錯を施し、『傑士 ドスマッカォ』と名付けたあなたは格上の相手にも果敢に立ち向かった彼のように強くならなくてはならない、と誓うのであった。* * *
シナリオ43『凶星一条』(>>52)
数多のモンスターを狩猟し実力を付けてきたあなた達の元へ、ついに天彗龍バルファルク狩猟依頼が来た。
頼れる仲間達であるエリクシルとミーシャ、そしてエリザベートと共に遺群麗へと向かう事に。
空路での天彗龍の襲撃を受けた後、地上にて『龍星バルファルク』と相対するハンター達。
翼脚を使用した数々の技に苦戦を強いられるが激闘の末、気高き誇りを持つ天彗龍の討伐に成功する。
そしてこの功績を受けてG級の資格を得たあなたとその仲間達は、更なる世界の広がりを予感した。* * *
シナリオ44『昏き沼底、死の抱擁』(>>105)
太古の病毒事件とよく似た謎の病が発生し、その上通常の毒への対抗手段が通用しない正体不明の猛毒を撒き散らすドスイーオス達が沼地にて確認されているとギルドマネージャーと『不老のミラルパ』から聞き、事件が起こっているという鉱山都市『スカラグラート』へと向かう一行。
ドスイーオスの特殊個体『原罪』そしてドスイーオス達と同じ猛毒を持つガブラスとの遭遇、その毒を受けてしまい生死をさ迷うなど様々な出来事がありながらも、このドスイーオスが人間の手によって作り出されたこと、そして沼地で起きた一連の事件の全ての元凶を突き止める。
古龍に故郷を滅ぼされ、それを放置したハンターズギルドに恨みを持ち、今回の復讐を決行したミラルパの娘である『ギムル・ジルヴァート』。
彼女は単なる悪人というわけではなかった。単なる悪人であれば止める方法などいくらでもあったのだ。その優れた頭脳をもっと別の事に活かせなかったのかとさえ思う。
きっと多くの者の心に残ることになるだろう。多くの者の人生に影響を与えることになるだろう。それだけあなたにとっても大きな事件だった。* * *
シナリオ45『泥も乾く戦慄』 (>>269 続き>>343)
ギルドナイトの『イレーネ・シルヴィス』からボルボロスの狩猟、そして謎のモンスターの調査を受けたあなたは彼女が連れてきたという『チャールズ・ビショップ』、彼と関係があると思われるエドワード、そしてレイカを連れ砂漠へと向かった。
土砂竜の狩猟の最中、チャールズが偶然を装ってエドワードが巻き込まれるように立ち回っている事に気付き戦慄するが、彼の手を見切り策を全て見切ることに成功する。
しかし謎のモンスター、『鏖魔ディアブロス』が乱入しボルボロスが惨殺され次の獲物だと言わんばかりに襲い掛かってきたが、何とか撒く事に成功した。
ギルドに追究したい節もあったが、これからお世話になるであろう職場で早々に騒動も起こしたくはないため、あなたは飛行酒場を後にした。 -
47
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-19 20:54
ID:gX20EMvk
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あなたの道具箱4ページ目 (1~3ページ目は前スレを参照)
【勲章(アイテム)】
・紅の冠羽(ドスマッカォの最期を看取った)
・恐暴竜の鉤爪(シナリオ42序盤で入手した落し物)
・対鋼龍絶殺マニュアル
・猛毒のサンプル
・割れた純水晶(幻の宝石を入手した証。今ではただのクズ水晶)
【称号】
・デイドリームビリーバー(何よりも強くあれと願われた)
・銀翼 (バルファルクを討伐した)
・G級 (G級ハンターに昇格した)
・憂鬱(変異ドスイーオスを捕獲した)
・哲学者(事件の真相に辿り着いた)
・策士(チャールズの策を打ち破った)
・千両役者(色んなアイテムを駆使した)
・大食らい(最大金冠サイズのハプルボッカを狩猟した)
・愛の戦士(カーサル・ロマンシアの救助に成功?した)
・鴉(クリス・レイヴンが仲間になった)
・黒曜石(ブラキディオスを狩猟した)
・フレイム(グラビモスを狩猟した)
・一歩踏み出す勇気(エリクシルにブレイヴスタイルが解禁された)
・謎のヒーロー(ドンドルマの影で暗躍した!)
【素材】
・天彗龍の上位素材
・土砂竜のG級素材
・砕竜のG級素材
・鎧竜のG級素材
・泡狐竜のG級素材及び、天眼タマミツネの素材
・雷狼竜のG級素材及び、金雷公のG級素材
・迅竜のG級素材
・迅竜のG級獰猛化素材 -
48
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-19 20:56
ID:.5GgP9ko
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49
名前:時雨
投稿日:2018-01-19 20:56
ID:gX20EMvk
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特殊個体図鑑 目次に戻る(>>1)
────────────────
跳狗竜特殊個体「傑士」 分類:鳥竜種
やや小柄な体躯と、右側頭部に存在する紅の冠羽が特徴の跳狗竜の特殊個体。
非常に優れた身体能力と学習能力を持ち、竜としての全身をフルに使った格闘術によって高機動高回転高出力の打撃を乱打しつつ、回避やイナシを交えて攻撃をやり過ごす、縮地によって間合いを一瞬で調整するなど、まるで人間で言う達人のような動きを行い、通常の個体からは考えられないような戦闘力を発揮する。ただし、体そのものは通常の跳狗竜と多少力で勝るものの大差は無く、打たれ弱い上に、身体能力の限界を遥かに超える激しい動きが祟って疲労しやすい。
また、そのカリスマ性によって人望(竜望?)もあるのか、通常個体とは違い群れの統率力にも長けており、ピンチに陥ってマッカォ達に見捨てられるといった事もない。
シナリオ42にて既にどう足掻いても助からない傷を受け、あなたによって介錯されるが、その志は若いドスマッカォの"成り掛け"によって受け継がれた。
* * *天彗龍特殊個体『龍星バルファルク』 分類:古龍種
とあるハンターとの戦いの中、追い詰められ前脚に深い傷を負った天彗龍が成長した個体。
怒り状態になった際には噴射口だけではなく前脚の傷からも龍気が噴出される。
他の種類のモンスターと戦闘する事が多いのか戦闘能力及び学習能力が高く、マガラ種のような翼脚を利用した突進や自らの体を捻って龍気を噴き出し突進の威力を倍増させるなど無類の強さを発揮する。
────全てはあの宿敵を完膚無きまでに叩きのめす為に、奴に対して自らの全てを賭けて勝利する為に。
シナリオ43にてあなた達によって討伐。* * *
ドスイーオス特殊個体 『原罪』 分類:鳥竜種
人間の手によって生み出された特殊個体。ある種の生物兵器である。異形に発達したトサカに顔面が侵食され、視力を失っている。触るだけで命が危ぶまれるような猛毒を大量に宿しており、体格も非常に大きい上に獰猛化していた。特殊個体最大金冠獰猛化など普通あり得ないとはまさしくその通りで、彼は多くの犠牲の中から厳選された類い稀な個体なのである。
薬物で自由を奪われ、劣悪な環境に追いやられ、共喰いまで強いられて、それでもなお死ぬことを許されなかった、ある意味では、沼地を中心とする一連の事件における一番の加害者にして、被害者。
シナリオ44にてあなた達が捕獲したものを何らかの手法によって持ち出され、行方不明である。
斯くして、人類の禁忌は再び侵された。* * *
天眼タマミツネ特殊個体『無明無音タマミツネ 』 :分類 海竜種
仇敵ジンオウガとの戦いの末、視力だけでなく聴力も失った天眼タマミツネの特殊個体。
潤滑液や泡を用いた索敵方法により依存しており、近付く者には容赦ない攻撃を加える。 反面強力な衝撃等で一気に泡が弾け飛ぶと周りの状況が掴めなくなりパニックに陥る。
その生態ゆえに食事も儘ならず残された命も風前の灯だったが、金雷公の尾に付着した自らの眼球の存在に薄々気付いており、それを取り戻すべく熾烈な戦いを続けていた。
シナリオ47.5にて何の因果かエリクシル達との邂逅を機に奪われた眼を取り戻し、渓流で安らかに眠りにつく。 -
50
名前:兎
投稿日:2018-01-20 08:40
ID:KbHxnmCE
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難亭氏シナリオお疲れ様でしたー、タイトル変更がスレの変わり目とも重なっていい演出になりましたね。
展開も斬新で思わず読み入ってしまう程でした、共闘の結末には思うところがある方も居るとは思いますが、個人的にはこの方が綺麗事にならずにいい終わり方だったなぁと思っております。
そしてさらりと回収されたキリンフラグ、やるとしたら青電主ばりのライトニングブレード撃たせればいいかな……
ちなみに自分はオストガロア戦を貰ったのでバルファルク戦は誰かに譲ろうと思っております、我こそはと言う方どうぞw -
51
名前:時雨
投稿日:2018-01-20 22:17
ID:gX20EMvk
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んー、バルクシナリオやるかいねぇ。
ただ少し準備がらいるんでお待ちを。 -
52
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-21 00:26
ID:gX20EMvk
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よし、やってく。何時も通りの駄文ですがお付き合いくださいませ。
──────────────
~シナリオ43 凶星一条~───飛行船墜落事故、再び発生!? 原因は天彗龍か!?───
煽り立てるような見出しの踊る「月刊狩りに生きる」の特集ページを読みながら、俺はベットの上で転がっていた。
記事の内容は以下のようだ。
先日調査用大型飛行船が救援を求めている小型飛行船を発見。停泊させる為に接近していたところを、その小型飛行船の後方から赤い彗星が高速飛行で突っ込んできて衝突。
その結果リオレウスのブレスにも耐えられるほどの強度を誇る飛行船は粉砕され、その飛行船に乗っていたハンター達は宙へ投げ出されそのまま落下していったという。記事の中にある『赤い彗星』という言葉から天彗龍の仕業と見て間違いはないだろう。
奴も活動が活発化してきている。何か手を打たなければならないといっても、奴は様々な地域を飛び回っている為なかなか居場所が特定する事が出来ないでいる。
奴は、天彗龍は今何処に…。「天彗龍なら今は遺群嶺、その頂上に巣食っているようだぞ。」
声のした方、家の入口の方を首だけ動かして確認すると龍歴院の主席研究員ハーグとクルトアイズが並び立っていた。
何故二人が此処に、というか今の情報は本当なのか!?「あぁ、本当だとも。 龍歴院の調査員やハンター達の懸命の調査によって分かった事さ。 君が読んでいた『狩りに生きる』に書かれている記事の後、奴はそこに留まっている。 時折、飛行船を見つけてはその周囲を飛び回るという行動を見せているみたいだよ。」
「そこでお前に龍歴院の幹部の方々からの直々の指令が下された。 よく聞いておけ。」クルトアイズが改まった態度で再び口を開く。
「龍歴院所属ハンター、あなた!遺群嶺にて天彗龍を討伐し、奴から制空権を奪還せよ!」
クルトアイズから指令書を受け取り、俺は直ぐに準備に取り掛かった。
一度は奴から逃走し、再び相見えた際には撃退にまで追い込んだが、今回は奴との生死を掛けた戦いとなるだろう。だが、それがなんだというんだ。
アマネの言葉を借りればこれは俺自身の誇りを掛けた戦いだ。今度こそ天彗龍に勝つという強い決意を抱いて俺は準備に取り掛かる。アイテムの準備はこれで良し、あとは奴と戦う為の装備だ。
幸いにも、出発まで時間はある。狩りに同行するメンバーを考えなくては…。────────────────
1 バルファルク討伐に同行するメンバーを選択して下さい
2 現状制作可能な物から今回使用する装備を選択してください -
53
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-21 00:29
ID:xGWEJYdc
お、来とるやんけ
ならメンバーはミーシャ、エリザベート、アンキセスでええか
装備は他の人に任せた -
54
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-01-21 00:37
ID:pJBQclzA
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待ってました!
取り敢えず力の爪を作っておきましょう。装備は詳しいこと言えないのでパスで。 -
55
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-21 03:07
ID:Oe2YV8Z.
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ほう……ならば、防具は龍耐性の高いセルタスシリーズ!
タクミ君が提案してくれてたからねそして武器は因縁の得物、コロナ!
龍やられも効かんし属性で攻めたれ……砲術王が死んでる? 何のことだ?
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56
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-21 07:43
ID:0rqwOutE
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じゃあ節目だし仲間はエリちゃんランドの兄貴りゅーしかの初期PTで
龍識船からの砲撃戦から始める事が出来れば砲術王死なないからランドラット共々輝いてどうぞ…砲撃戦後の降下?何のことだ?
-
57
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-21 13:43
ID:gX20EMvk
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女性陣が残ったか。
つうかスタイルと狩技指定忘れてた。まぁブレイヴと混沌の刃薬でええやろ。
>>55 俺もタクミ君にセルタス装備着せてるから今更今更。
──────────────────今回扱う武器は『コロナ』、以前バルファルクと相対した際にも振るった武器だ。
身を包むのは鉄甲虫と重甲虫の素材を使用した『セルタス装備』、タクミの『セルタス装備は龍耐性が高い』という提案から作った装備だ。使わない手はないだろう。
相手は翼爪を使い敵意の対象を時に貫き、時に前方を引き裂き、時に吹き飛ばす性質を持つ。ならばブレイヴスタイルで相手の攻撃を受け流し、懐に入り攻め込むのが良いだろう。「あ、来ましたね! お待ちしていました!」
「いよいよ決戦ですかね? 腕が鳴りますねー。」
「アタシまで呼ばれるなんてねぇ、まぁそれなりにやらせてもらうよ。」龍識船に来てみれば既にエリクシルとミーシャ、そしてエリザベートが待機していた。彼女達は装備を選ぶ前に同行の指示を出しておいたメンバーだ、誰も出払っていなかったのは幸運としか言いようがない。
理想のプランと言えば守備力に優れたエリザベートが奴の攻撃を引き付け、エリクシルがレンキンスタイルで全員の支援をしつつ援護射撃、ミーシャに奴の観察をしてもらいつつ彼女と共に攻め立てる、こんなところだろうか。「そうだあなたさん、クルトアイズさんが来る前にこれ渡しておきますね。」
そう言いながらエリクシルはポーチの中を漁り、赤い爪を取り出しこちらに手渡してきた。
その手に持つだけで全身に力が溢れてくる、効果は確かなようだ。「それって『力の爪』ですよね? イビルジョーの狩猟なんてしたことありましたっけ?」
「そういやぁ、ツバメから聞いたな。 エイジロウの奴の救助をしに行った時にイビルジョーと鉢合わせたってな。 そん時に拾ったのか。」恐暴竜イビルジョーと老山龍と呼ばれる古龍種の爪から『力の護符』や『守りの護符』といった護符の力を増幅する不思議な力があることが判明している。
その爪と護符を調合すれば、新たに『力の爪』と『守りの爪』といったものを作ることが出来るのだ。その効果は確かなもので、護符と共にお守りとして持ち歩くハンターもいる。
ありがとうと御礼を言えば、エリクシルは「喜んでいただけてよかったです」と微笑み、ミーシャに脇腹をつつかれていた。「全員揃ったか。 なら説明を始めさせてもらうぞ。」
様子を伺いに来たらしいクルトアイズが来て早々、指令書の内容を改めて説明を行う。
説明を聞き逃すまいと彼の話に耳を傾ける事にした。
遺群嶺付近までは龍識船で移動、そこからは備え付けてある小型の飛行船を使用して着陸するようだ。
今のバルファルクは遺群嶺に近付く飛行船を見境無く襲っている。もし龍識船で着陸を試みてしまうと、狩りに生きるに書かれていたハンター達の二の舞になってしまう上に龍識船計画が水の泡と化してしまう。
幸い小型飛行船にはバリスタと擊龍槍といった兵器は積んである為、襲撃された際の対応は可能だ。最も天彗龍が襲撃してこない事を願うしかないが。
今回選抜されなかったメンバー達は各地域の巡回に行って貰う事になるらしい。「説明は以上だ。 君たちの無事て検討を祈る。」
そう言って彼は龍識船に乗り込んでいる他の仲間達の元へ向かう。どうやら仲間達にも説明に向かうらしい。
龍識船が大きな駆動音を上げ、ゆっくりと地を離れ始める。 甲板から下を見れば龍歴院のスタッフ達が手を振り見上げている。
向かうは遺群嶺、天彗龍が待ち構えているであろう場所だ。 -
58
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-21 19:48
ID:B8nXzJ4E
[編集]
ちょっと待って?「赤い彗星」?
このバルファルク通常の3倍の速度なのかな?
嘘やろ、勝ち目がないやん
まあ某神喰いゲームには神速種とかいうヤベー奴がいるしまあなんとかなるかというのは冗談で、とりあえずワールド楽しいです
バルファルク戦後のシナリオ用意して待機してますね -
59
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-21 20:42
ID:fvHaSB/o
[編集]
なんか3ターン後ぐらいに勝手に爆散しそうなタイトルですな
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60
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-21 20:53
ID:gX20EMvk
[編集]
>>59 何故タイトル元ネタが分かったのか。
種火周回お世話になってます。
─────────────「ほぉ、あれが遺群嶺かい。 どうやって出来たんだいありゃあ?」
「話に聞いていただけですけど凄いところですよねぇ。 あぁ、あそこにはどんな素材があるんだろう…。」遠くに見える天を貫いて聳え立つ山を見てエリザベートとエリクシルは感嘆の声を上げる。
龍識船が遺群嶺に近付き、備え付けれた小型飛行船に乗り込むと乗組員や受付嬢から激励の言葉を受けて出発した。
飛行船はあまり操作に慣れていないハンター達でも簡単に操作できるような作りになっており、現在はミーシャがその操縦桿を握っている。
「運転を変わろうか?」とミーシャに声を掛けるが、「大丈夫ですよー。 快適な空の旅を楽しんで下さいねー。」
と返された。
いや、バルファルクがいつ襲ってくるか分からないのに楽しめる筈がないだろう、と思ったが彼女なりの気遣いと直ぐに分かった。
とはいえ安易にリラックスするという訳にもいかない。周囲を見渡し何時でも天彗龍の強襲に対応出来るようにしておく。澄み渡った青空に眼下に広がる白い雲、そして後方には遥か遠くに見える赤い星が見えていて……。
…まて、星だと?今は真昼だというのに?まさかあれは……?
その正体を理解したとき、機械的な轟音が辺りに響かせ星が輝きを増していき、どんどん近付いてくる。「ミーシャ! 急いで回避しなッ!!」
「もう既にやってます、よっ!」操縦桿を回して飛行船の向きを変えた直後、その彗星は轟と音を立てて飛行船の真横を通り過ぎていく。
僅かに輝く金属質に似た甲殻。背中から伸びる巨大な一対の翼脚からは赤い炎のような光を放つ龍属性エネルギーを勢いよく噴出している。
そしてそれは俺達の乗る飛行船の横を通り過ぎていく際に、奴の蒼い瞳と交錯する。
銀翼の凶星は進路を変え凄まじい勢いで飛行船の正面に飛来。あわや激突、と思いきや龍気を進路方向と反対側に噴き出し静止する。
『銀翼の凶星』と称される『天彗龍 バルファルク』が今、俺達の目の前に現れたのだ。「こっちは飛行船の運転に集中します! 皆さんは兵器を使って天彗龍をッ!」
ミーシャはそういいながら飛行船の操縦桿を握る。
絶望と災厄の化身が空路を使用する侵入者達に対して怒号を放つ。かくして空の上という奴に最も有利な場所で、凶星との激戦が始まることとなった。~行動を選択してください~
1 自由枠飛行船に付けられている兵器:バリスタ、大砲、擊龍槍
※ミーシャは飛行船の操作に集中しているため行動不能>>63
出来るだけ皆の案採用できるようにするからええんやで -
62
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-21 21:14
ID:xGWEJYdc
突進してきたところを撃龍槍ぶちかますか?
usjのモンハンリアルみたいにさ -
63
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-01-21 21:27
ID:qQWrnDY2
[編集]
煙玉をバリスタの弾に括り付けて発射。注意を引いたら閃光玉からの体勢を崩したところに撃龍槍……
後、出来ればペイントボールもバリスタの弾に括り付けてバルファルクに命中させたいですね。あると無いとでは全然違いますから。あくまで言ってみただけなので>>62の選択を優先してください。
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64
名前:蟹
投稿日:2018-01-22 00:02
ID:B8nXzJ4E
[編集]
あっおい待てい
ペイントならエリクシルのボウガンでもペイント弾が撃てるし当てられそうならそっちでもいいと思うゾあとミーシャ氏には場所は選ばなくていいから最短ルートで陸につけて欲しいと伝えておいて欲しい
それと、仲間の装備はなんでしょう? -
65
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-22 22:32
ID:gX20EMvk
[編集]
>>64
地上戦に移行してから開示する予定だったけど、一応書いとくか。
エリクシル:パピメルS装備 王砲ライカン レンキン
ミーシャ:いつもの混合装備 バリエンテ ブレイヴ
エリザベート:アグナ装備 フレイムスロワー ブレイヴ──────────────
空中という奴にとって有利な戦場、長時間戦うのは危険だろう。ならば…
───ミーシャ、出来るだけ近い所で陸に付けてくれッ! 場所は選ばなくてもいい!!
「了解いたしました。… 少々運転が荒っぽくなりますが、我慢して下さいねッ!」舵を勢いよく回せば飛行船は旋回し遺群嶺の大地へ近づいていく。大きく揺れる飛行船から振り落とされないように、気球と船を繋ぐロープを握りながら天彗龍を見据える
バルファルクは縄張りに入り込んだ敵を、自身の身体に傷を負わせた宿敵をそうやすやすと逃すはずも無く龍気を噴き出し素早く滑空、飛行船に掴みかからんとする。
飛行船の左側に移動し脚を手摺に掛けようとした時バリスタ二本が奴に命中、しかも突き刺さったのは以前の戦いで俺がつけた傷がある前脚だ。
天彗龍は器用に空中で急制動を掛け停止、痛みに悶えながらバリスタを抜こうと奮闘しているようだ。というか今のバリスタは誰が…。「お見事ですエリザベートさん! 良くバリスタを当てられましたね!」
「まぁな、峯山龍の狩猟に何度か行った事あるからなッ!バリスタぐらいお手のモンさッ!… 最も奴がご丁寧に近づいてくれてたってのもあるがな。 」どうやらエリザベートがやってくれていたらしい、なんとまぁ頼れる奴だろうか。
飛行船がバルファルクのと距離を取る前にエリクシルにペイント弾を撃ってくれと頼むと、「分かりましたッ!」と雷狼竜の軽弩を構え発射。
しかしペイント弾が命中する直前バリスタを抜き終えたらしい天彗龍が再び龍気を噴出させこちらに突撃、エリクシルの放ったペイント弾は空を切る。「すみません、外してしまいました…!」
「謝んじゃないよッ! またバリスタをぶつけるからそん時に…。」
───エリザベート、ならこうするのはどうだ!?
「あ? なんかあんのかい?」バリスタ砲台を構えていたエリザベートを引き止めるとアイテムポーチから煙玉を取り出しロープでバリスタに括り付ける。
───撃ってくれッ! これで奴の注意が引けたらそれでいいッ!
「了解! そんじゃあアイツを引きつけるんなら、ここだなッ!」砲身から放たれたバリスタからはバルファルクの赤い龍気とは違う白い煙が噴き出しながらバルファルクの真横を一直線に飛んでいく。
明らかに狙いの外れた相手の攻撃に天彗龍の顔は一瞬、一筋の煙の方を見る。
それでいい。───一瞬でもそちらを向いてくれたらそれでいいのだ。───エリクシル! もう一度ペイント弾をッ!
「はい! 今度は外しませんよッ!」今一度撃ち出された銃弾はこの大空に吹く風に乗りバルファルクに命中。ペイントの実の香りは正面からくる風に大部分が掻き消されているが、僅かながら匂いが漂っているため効果はないという訳ではないだろう。
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66
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-23 19:50
ID:1Px3GYIk
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大一番にハーレムパで挑むスケハンの鑑
>>62
USJって今そんなんあるんか -
67
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-23 21:49
ID:gX20EMvk
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一筋の煙から目を離し、再びこちらに狙いを定める天彗龍に閃光玉を投げつける。
しかしバルファルクの自慢の空中でのスピードは閃光玉が破裂するより速く、眩い光が青空に走ったのは奴の遥か後ろ。目を眩ませてもがいている隙に陸に辿り着くという目論見は失敗してしまった。
龍属性エネルギーを勢いよく噴出させ、今度は飛行船の右側に並行するように近づいていくると、エリクシルがいる場所目掛け龍気を噴き出しながら翼爪を突き刺してくる。「ちょおっと、揺れますよー! しっかり捕まっていてくださいねー!」
「きゃあっ!?」ミーシャが舵を大きく回した事で船は傾き、文字通り鋭い一撃はエリクシルへの直撃は免れたものの、飛行船の側面を削り取り船体に大きな傷が入ってしまった。
「野郎ッ!」とエリザベートは船が体制を整え直したのを確認し再びバリスタを発射。三本程金属質に似た甲殻に突き刺さるがバルファルクは怯みもしない。
それどころか更に龍気を噴出させ、俺達の乗る飛行船を追い抜いていってしまった。「え? ……えーと、撃退出来たんでしょうか…?」
「んー、ならいいんですけど。 あんなに執拗い相手なんだからアレで終わる筈がないと思うんですよねー。」
「あぁ、そうだな。 何だか嫌な予感がするねぇ。」…あぁ、その通りだ。アイツがそう簡単に諦める筈がない。
船首から見える景色を見れば塔のように天高く聳える山の横にバルファルクであろう赤い星が見える。その星は赤い軌道を空に描きながら山の後ろを回って……。「……あの、段々近づいてきてませんか!?」
「まさかアイツ、船に突撃してくるつもりかいッ!?」やはり奴は諦めが相当悪いようだ、あのハンター達と同じように俺達を一網打尽にするつもりらしい。
俺達が慌てふためいている間にもドンドン加速度は増していく。何か、奴の突撃を止められる物は…!「あなたさん、船首の方に撃龍槍がありますよー! 私の合図に合わせてスイッチを押してください!」
───…分かった!任せておけ!
「……頼みましたよ。 皆の命がかかっているんだから。」ミーシャに言われるがままに船首へ向かうとそこには巨大なスイッチと、落ちてしまわないように紐で括り付けられている小槌が。これでスイッチを叩いて擊龍槍を起動させるようだ。
空を裂き雲を突き抜け近付いてくる天彗龍に対して、俺は小槌を構えミーシャの合図を待つ。
焦ってはいけない、深呼吸を数度繰り返し、昂ぶった感情を一旦沈めにかかる。
飛行船最接近したバルファルクは勢いを殺さぬま翼爪を構え船首へ振り下ろそうとし───、「……今ですッ!」
合図を受けバルファルクより早く小槌を振り下ろせば、船首に取り付けられていた撃龍槍が回転しながら射出される。
俗にいうパイルバンカーと呼ばれる技術が取り込まれた撃龍槍はバルファルクの脇腹を直撃。甲殻が剥がれ落ちくっきりと杭で打ち込まれた痕が天彗龍の身体に残った。
余りの激痛にバルファルクは悲鳴を上げながら降下を始める。漸くこの空での戦いも終わりか。
そう思い安心し切って座り込んでいたところに、「きゃあッ!?」
「うおぉッ!?」
「…あー、これはやられましたね。」後方から轟音と悲鳴が聞こえ振り向けば飛行船の甲板、その中心に大きな穴がポカリと空いてしまっている。
どうやらバルファルクの奴は痛みに耐えながらも翼爪を突き出し、飛行船を攻撃してきたらしい。やはり侮れない強敵である。「あー、皆さん報告がございますのでよくお聞き下さい。」
───なんだ?
「えっとどうしたの、ミーシャちゃん?」
「どうやら今のバルファルクの一撃で飛行船の操縦が効かなくなったみたいなんですよー。」
「………はぁ!?」
───………何だか猛烈に嫌な予感がするのは気のせいか。
「えーと、それってつまり…。」
「はい、この飛行船は今から墜落しますよ。 あとは自由落下をお楽しみ下さいませー。」
「うわあああんやっぱりいいいいいい!!」飛行船がガクリと大きく揺れ、俺は手近な手スリを力いっぱい握りしめる。
周りを見渡せば全員が自分の近くにあったものにしがみつくようにして耐えている。飛行船はみるみる傾いて行き、その高度を失って行く。
かくして俺は人生で二度目の飛行船墜落を経験する事となったのであった。 -
68
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-01-23 22:11
ID:Znrt97HA
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やっぱりカプコン製の航空機は墜落する運命にあるんですね。
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69
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-23 23:56
ID:gX20EMvk
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目を開けると徐々に薄明かりが瞳に差し込んできた。 闇に慣れ切ってない瞳に少しずつ周囲の景色が映ってゆく。
ひとまず起き上がって状況を確認する為に周りを見渡す。
盛大に地面を削りながら岩に激突したのであろう、前半分がペシャンコに潰れた飛行船を見つけた。どうやらあの時と同じように俺は激突前に放り出されたようだ。
目の前には見覚えのある石造りの巨大な遺跡があり、三段階に段差がある。どうやら遺群嶺のエリア2に落下したようだ。
仲間達はといえば…、「お、漸く目が覚めたか。」
「本当ですねー。 いやー、よかったよかった。」
「本当によかったです! あ、これ即席ですけど作った回復薬です!」全員五体満足でいるようだ、良かったと安堵の息が漏れる。
「ありがとう」と言いながらエリクシルから手渡された回復薬を一呑みする。即席とはいえ効果は絶大で全身の痛みが引いていく。「さぁてと、お前達構えなよ? 奴さん、こっちを見つけたみたいだぜ。」
炎戈竜の尻尾を模したガンランス、『フレイムスロワー』を構えて警戒すりエリザベートの言葉に、空を見上げれば赤い彗星が流れていく…と思いきや、突然それが進路を変え凄まじい勢いでこちらに飛来。
あわや激突…と思いきや翼の形態を変え、器用に空中で急制動を掛け着地。
自慢の空での戦闘で相当痛手をおった為か、興奮に入り龍エネルギーが活性化しているのが分かった。
胴体部分の光が増していき、翼脚や頭部はより強く噴出する龍気の影響で黒く変色、後頭部からも龍気が放出され始めており顔を包み込んでその眼光が陰の中に消えてしまった。
それだけでは無い。
俺が以前つけた傷からも龍気と思われるものが噴き出しており、それは脇腹の撃龍槍が打ち込まれた跡も動揺だった。「何だか資料で見たバルファルクとはまた何か違うみたいですねー。」
「みてぇだな、あんまり詳しくは見てねぇがな。」
「折角の資料なんだからよく読んでくださいよ、エリザベートさん…。」
「まぁあれだ、アイツもお前が色んなモンスターと狩猟して強くなっていったようにあの天彗龍も強くなってた、でとこかねぇ。」まさかとは思ったが奴は古龍、れっきとした『一つの生命』だ。俺が仲間達と様々な経験を積み成長していったように、奴もまた生命を喰らい打ち倒していくことで成長していったのだ。
龍気を全身から噴き出しながら天高く吼えるバルファルク。こちら建て直しは済んだもの油断できない相手であることは間違いない、慎重に立ち回らなければ。~行動を選択してください~
1.ブレイヴ状態になることを優先しながら攻撃
2.攻撃を受けぬよう堅実に慎重に攻撃
3.アイテムを使用する(アイテム明記)
4.自由枠 -
70
名前:蟹
投稿日:2018-01-24 20:14
ID:B8nXzJ4E
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とある諸事情で発売日にワールドできなくなりました(憤怒)
それはさておき、エスコート回で11号実験として龍気の情報を得ているのであなた、エリちゃん、エリクシルの属性弾に関しては龍気の出ていない部位を攻撃
エリクシルの物理弾とミーシャについては逆に龍気の出ている部分にダメージを与えてその弱体化を図ってみましょうか
あえて選択肢に従うとすれば1、ただし油断は禁物で -
71
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-25 22:32
ID:gX20EMvk
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そう言えばWエリなのか、エリックいたらトリプルエリに…。
───────────天彗龍戦の作戦は既に立ててある。
龍属性エネルギーは属性を遮断してしまうので火属性の武器である俺とエリザベート、そしてエリクシルの雷撃弾は龍気が噴出していない部位を、ミーシャとエリクシルの通常弾や斬裂弾といった物理弾と弓矢は逆に龍気が出ている部位を狙うというものだ。
これはハイメル調査隊隊長、彼が纏めてくれた報告書のおかげで立てられた作戦だ。彼の努力は無駄になどしない。瞬きする隙すら惜しい緊張感で張り詰めた静寂は、相手によって乱暴に打ち砕かれる。
後方を向いている翼爪から龍気を噴き出し一瞬身を屈めたかと思えば、轟と音を立てて急加速して突進してくる。
迅竜や千刃竜以上の速さで迫り来るそれを、俺とエリザベートは盾を、ミーシャは弓を使いかすらせるようにしていなしエリクシルは慌てながらも突進の進路から離れて避ける。
相手を通り越して突き進んだバルファルクは、エリアの端まで行ったところで四つの脚を使って方向転換をする。「なろぉ、こっちも行かせてもらうよッ!」
───行くぞエリザベート!天彗龍低い唸り声を上げながら、四方に散った俺達を睨みつけるその隙を見計らいエリザベートと共に動き出す。
狙いは後ろ脚、多くの大型モンスターで急所となりづらい代わりに頭部から遠いために比較的隙が多くなりやすい場所だ。
当然バルファルクは迎撃しようと動くが頭部に山なりに飛んできた重い矢と、龍気が噴き出されていない片方の前脚に突き刺さったあと斬り裂くようにして炸裂する弾を受け、視線を遠距離から攻撃をする二人に向ける。
距離を詰め、コロナを抜き取って比較的反撃されにくい後ろ脚目掛け振り下ろす。奴を斬りつける度に紅蓮の焔が宙を舞った。ミーシャとエリクシルの二人目掛け翼爪を突き出して攻撃したバルファルクは片翼の龍気を噴射すると勢いよく反転、俺と反対側の後ろ脚を突きを放っていたエリザベート目掛け翼脚のカドを叩きつけてきた。
「やべ!?」と慌てて盾を構えるエリザベート。直後その表面に、強烈な衝撃が襲いかかる。「~~~ッ! いってぇ、やりやがったなッ!」
そう憎らしげに叫びながらエリザベートは盾を持っていた方の腕を軽く振る。防御力に優れたガンランスの盾とはいえ、奴の攻撃は相当強力なようだ。
-
72
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-26 22:25
ID:gX20EMvk
[編集]
皆がワールドをやる中俺は執筆致します。 そうだよPS4ないんだよ。
あ、このバルファルクは一応特殊個体の括りで魔改造しまくってますので、そこはご注意ください。
────────────────天彗龍は全身の筋肉をバネのように使って小さく横にステップすると、翼を反転させ巨大な爪が生えた腕のような形状となる。
翼が光を放ったかと思えば、ミーシャとエリクシル目掛け光弾状の龍気を乱射させる。「あわわわ…!」
「ほいよっと~♪」一人は武器をしまって慌てながら、一人は軽々と光弾をいなして回避していくと、彼女達の方へ狂竜化した黒蝕竜のように翼脚を使った突進を仕掛けてくる。
翼脚で地面を踏み締める度に大地に亀裂が走り、龍気が辺り一面に噴き出していく。巨大な翼脚を使ったそれは黒蝕竜のものと比べると、範囲も相俟って凶悪なものに見えた。「うわわ…、きゃあッ!?」
「よっと、流石に当たるかと思った。 エリクシルさん大丈夫ですか?」
「う、うん。 大丈夫だよミーシャちゃん。」ミーシャはギリギリのところで突進を受け流すが、エリクシルは噴き出した龍気に吹き飛ばされてしまう。
怪我を負っていないか心配になったが、龍耐性が高いパピメルS装備であった為か無事でいるようだ。「よそ見すんなスケベハンター、来るぞッ!!」
───スケベハンターはやめて欲しいんだがッ!エリザベートの言葉に視線を向ければ奴は体の向きをこちらに変えている。
ぐっと、身を屈め、龍気を噴き出しながら宙に浮く。先程のようなあの突進かと思えば、宙に浮きながら体を捻っているのが見えて───赤い尾を引かせながら、自らの身体を回転させながら標的目掛け突っ込んできた。───……そんなのありかーッ!?
「…ちぃッ!」あまりの予想外の攻撃に思わず叫びながら盾で攻撃を受け流していなす。
盾で攻撃を受けた直後その表面に、強烈な衝撃が襲い掛かってきた。腕を貫き肩まで衝撃が突き抜けていく。
一撃を凌ぎ、砂煙をあげてバルファルクが着地している隙に俺は距離を取った。完全にこちらに狙いを定めている天彗龍の死角から、エリザベートが背負ったガンランスを抜き放って突き穿つ。「アラよっとッ!」
鋭い突きの一撃。斬るのではなく、貫く事だけに特化したその一撃はバルファルクの甲殻に阻まれる。弾かれた刀身は滑るようにして全く意図していない方向へと流される。
エリザベートは舌打ちし、今度は踏み込むと同時にガンランスを豪快に振り上げる。狙うは堅い鱗の少ない腹。突き出された一撃は先程とは違う手応え。先程は弾かれた刃はしかし、今度はしっかりとバルファルクの脇腹に突き刺さる。それを見て、エリザベートは不敵な笑みを浮かべた。「…はっ! 派手にぶっ飛びなッ!」
そして一切の躊躇なく引き金を引いた。その瞬間、突き刺さった刃のすぐ上にある砲口から砲火が走る。それも一つでは無い、込められていた砲撃を三つ全て撃ち出す。
至近距離で、しかも脇腹に突き刺さったまま放たれた砲撃にバルファルクも堪らず怯み、大きく体を仰け反らせる。 -
73
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-28 15:06
ID:gX20EMvk
[編集]
砲撃の反動で勢い良く刃を抜くと、そこから真っ赤な血が勢い良く吹き出した。エリザベートは一度バックステップで位置を変えら彼女はその大きな盾を構えた。それに合わせるようにして小さな盾を構える。
バルファルクが翼脚を反転させ、真下に光を放っているのが見えたからだ。
そして龍気が放たれて周囲が弾け飛ぶ。
それぞれガードでこの一撃をやり過ごす。ただし、重量があるガンランスを携えたエリザベートは防いでもビクともせずに、すぐにガードにすぐ移行できる状態で上段突きを放つが、軽量な片手剣を携えるこちらは勢いに負けて大きく後退を余儀なくされる。
これが軽量であり機動力が売りの片手剣の弱点の一つでもある。抜けた穴を埋めるように、様子を窺っていたミーシャが動き出す。
やや上を狙って放たれた矢は大きく弧を描き、命中と同時に爆発しバルファルクの頭を一瞬にして炎で包み込んだ。
弓使いの必殺攻撃、強撃矢だ。ニトロダケを原料とした液体火薬を入れたビンを矢に備え付け、それをモンスター目掛けて放つ攻撃。その威力は矢のみの時よりも高く、弓使いの決戦兵器と位置づけられる。
容赦のない強撃矢の嵐にバルファルクは悲鳴を上げて暴れる。その後ろではエリクシルが龍気を纏っていない部分目掛け電撃弾を連続して撃ち出しているのがみえた。
こちらも暴れるバルファルクに気をつけながら、確実に攻撃を積み重ねている。コロナの刀身で吹き荒れる炎は勢いを増し、斬りつける度に炎が鱗を弱らせ刃を通りやすくさせる。
序盤にしては実にいいペースだ、そう感じていた。だが、天彗龍はそんなペースを掻き乱すようにして暴れ回る。
再び翼脚が光ったかと思えば、バルファルクは一瞬飛び上がり両翼を地面に叩きつけたと同時に龍気が辺りに撒き散らされ、その攻撃範囲を広げていく。
俺とエリザベートはそれぞれガードでこの攻撃をやり過ごし、ミーシャはギリギリで回避に成功する。一人完全に安全圏にいたエリクシルはのを引き付けようと連続射撃する。
だがバルファルクは間髪入れずに続いて突進を仕掛ける。脚元にいた俺とエリザベートはいなそうとするが、俺は勢いを止められずに吹き飛ばされてしまう。
地面に背中から叩きつけられる俺を見て、「あなたさんッ!?」と叫びながらエリクシルは慌てて駆け寄る。ミーシャも一瞬こちらへと意識を向けてしまい、エリザベートは完全に孤立してしまった。
慌ててエリクシルに「エリザベートの援護ッ!」と叫ぶが、遅過ぎた。
バルファルクは後退すると龍気を噴出させながら前方を豪快に引っ掻く。これにはエリザベートも驚き、ガードが一瞬遅れてしまい直撃を受け、彼女は大きく吹き飛ばされ段差に叩きつけられる。「……ぐぅッ!」
「エリザベートさんッ!?」吹き飛ばされたエリザベートはそのまま地面の上を何度か転がりようやく止まる。
予期せぬ事態の連続に、チームは完全にバラバラな動きになってしまった。
ここからどう逆転すべきか…。~行動を選択してください~
1 別エリアに移動して体制と整え直す
2 アイテム使用(アイテム明記)
3 こちらに引き寄せて注意を引く
4 その他 -
74
名前:天ノ者
投稿日:2018-01-28 15:35
ID:59nVq676
[編集]
初めての書き込みですが選択を選ばせていただきます。
2で閃光玉を使って整え直す、でお願いします。
他に良い案が出ればそちらを優先して下さい。 -
75
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-28 16:30
ID:Dp1TuWiI
[編集]
ガンナーの2人には近づかせないように立ち回りたいところ。
閃光玉外した時のことを考えて3も選択しておこう。イナシもあることだしところで、本文中にイャンガルルガが混じってますぞ。
PS4持ってないのはワイも同じだから、焦らずじっくり書いて下さいまし。 -
76
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-28 21:34
ID:gX20EMvk
[編集]
なーんでガルルガ出てきたんだろ…、直しときますね。
──────────倒れているエリザベートは意識はあるようで受けたダメージの痛みに苦しげな声を漏らしている。
直ぐにでも救助に向かいたいが、防御力が低いガンナーである二人には余り天彗龍に近づかせるようなことはしたくない。
ならばこれしかないだろう、と俺は走って距離を取り腰に携えた角笛を取って吹く。
エリア全体に響く角笛の音色に、狙いをこちらに変えて龍気を噴射する突進を繰り出そうとするバルファルク。その眼前に閃光玉を投げつけてやる。
放物線を描き放たれたそれは、眩い閃光を撒き散らす。龍気を噴き出し宙に浮いていた天彗龍は、突然に目が眩んだせいでバランスを崩され、地面へと墜落する。───今のうちにエリザベートを頼むッ!!
「あの子はこちらで引き付けておきますんで早く!」
「…! はい、分かりました!」エリクシルをエリザベートの元へ向かわせ、俺とミーシャは地面で目が眩んだまま、激しくもがいているバルファルクを引きつける。
以前倒れたままのエリザベートへ駆け寄るとエリクシルは彼女のアイテムポーチを漁り、回復薬を取り出し飲ませようとする。「……へ、このくらい平気だっつーの。 助けが無くても回復薬ぐらい飲めるからとっとと行きな。」
「そんな元気のない声で言われても、誰が信じますか?
「……チッ、お節介娘が。」
「あなたさん譲りですからね。」ニコリと笑うエリクシルに、エリザベートは呆れたように苦笑を浮かべる。
全身から噴き出ていた龍気が掻き消え、本来の銀色の甲殻が見える状態で手探りで体を起き上がらせるバルファルク。ここから、視力が回復する迄の十何秒かが勝負だ。
先程エリザベートが攻撃した天彗龍の脇腹に位置取り、自分を軸に回転し、その遠心力を利用して放つ剣撃は炎を纏って肉を焼き斬る。迸る血には見向きもせず、ただひたすらに剣撃を叩き込む。
頭の近くを見やれば、ミーシャが大胆に陣取り剛射を放っていた。とはいえ、麻痺とは違い目が眩んだだけでは体そのものの動きを阻害されている訳では無い。攻撃が加えられたなら当然相手は反応する。
たとえ見えなくても、適当に当たりをつけて繰り出せば攻撃を食らう危険は残ってしまう。誰でも見えなければ取り敢えず前に手を出すだろう。つまり、この場合真正面という立ち位置は一番危険になるのだ。
そんな場に陣取る彼女の剛胆さには舌を巻いてしまう。「二人共、戻りましたッ!」
「アンタらあんがとよッ! 生きて帰ってたらいい酒奢ってやるからなッ!!」体勢を整え戻って来たエリザベートは俺の反対側から突き出す。
突きを重ね、ガンランスを持ち上げ叩きつけ、すぐさま引き金を引いて砲撃、そして腰だめに構えてフレイムスロワーを真っ直ぐ突きつける。
穂先から青白い超高温の炎が迸り、まるで獲物に狙いを定めるモンスターもかくやという緊張感がその穂先に集約されていく。
そして、ガンランスから竜撃砲が発射された。
強烈な一撃が、目が眩んで前後不覚に陥っていたバルファルクの脇腹に命中。巨体があまりの衝撃に大きく仰け反った。「はっ! どんなもんだいッ!」
───やるじゃないかッ!俺とエリザベート、二人揃って武器を持つのとは逆の手で小さく拳を握り締める。だが油断してはいけない、砂煙の向こう側で奴が何をするか分からないからだ。
巻き上がった砂埃の向こうで、閃光玉の影響から回復したそれは翼に龍気を溜めて飛び立つ。
その際、砂煙を一瞬にして掻き消しその風圧で俺は思わず尻餅をついてしまった。
龍気を噴出し、雲海の上を猛スピードで飛行するバルファルク。ペイントボールの匂いからして崖の下、エリア3へと移動したようだ。調合や斬れ味を修復させて、崖を飛び降りエリア3へと突入した俺達を出迎えるようにしてバルファルクは駆けてくる。
幸い単調な走りであったため何とか回避することは出来たが、さて…。~行動を選択してください~
1 狩技で攻め立てる
2 エリクシルに何か錬金してもらいながら攻撃
3 アイテム使用
4 その他 -
77
名前:名無しさん
投稿日:2018-01-28 22:13
ID:LBemxso6
[編集]
酔っぱらいです。2で。
何かって何かわからんがエリクシルに任せてみよう。ここまで来た仲間を信頼していく! -
78
名前:蟹
投稿日:2018-01-28 22:29
ID:B8nXzJ4E
[編集]
新大陸たのしいれす
狩技というと指定は可能ですかね?
2で気合玉を作ってもらってからエリクシルで麻痺弾、麻痺が決まり次第(ダメならまた閃光玉で拘束して)1の狩技攻めといきましょうか
あなたは混沌に心眼→会心の重ね塗り、エリクシルはラピッドかチャージ、エリザベートさんはAAか覇山、ミーたんはトリニティで一応指定 -
79
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-29 21:43
ID:gX20EMvk
[編集]
突進の勢いそのままに崖に頭をぶつけたバルファルクは、四肢で体を支えたまま頭を軽く振っている。思いの外自分に来た衝撃が大きかったようだ。
しかしこれからどう挑もうか、奴は予想外の攻撃方法を持っている。狩技でも使用して有利に立つのも手だが、発揮出来るような気力があるかと言われると…。「あの、私に任せてくれませんか! 取っておきのものがあるんです!」
そう名乗り出たのはエリクシルだった。
取っておきのものとは何だろうか?まぁ彼女の事だ、この場が有利になるようなものである事は間違いないだろう。
「あぁ、頼んだぞ。」と声を掛ければエリクシルは満点の笑みで「はい!!」と返し、レンキン樽を振り始める。
一回、二回、三回、四回と振り続け五回レンキン樽を振った際激しく噴き出していた白い湯気と同時に白色の球体がポロリと落ちてきた。
これは、なんだ?「レンキン気合玉です! 効果は…実際に体感して貰いましょう!!」
そういうとエリクシルはレンキン気合玉を地面に叩きつける。それと同時に黄土色の煙が噴き出し、俺達を包み込む。
煙に包み込まれて分かったのは全身に力が湧き出てくるという事、そして感覚が刃物のように研ぎ澄まされていくという事だ。「レンキン気合玉、煙を浴びる事でハンターの力を引き上げる事ができるマカ錬金第二の奥義です!」
「はぁ、凄いなこりゃ。 感心したよ。」
「ありがとうございますエリクシルさん。」
「どういたしまして、でもまだ終わりませんよ!」そういってエリクシルは王砲ライカンを構え、天彗龍のアキレス腱を狙うように一撃を放つ。
甲殻に命中すると中の黄色い液体がブチ撒けられる。その瞬間、麻痺毒が美しく煌めいた。
空気に触れる事で麻痺毒は光り輝く性質を持っている。ラングロトラが吐き出す麻痺毒なんかもその例だ。
バルファルクはゆっくりと振り向くと麻痺弾を撃ち出すエリクシル目掛け、槍のような翼を刺突するがエリクシルは身体を捻じるようにして避けると、回避した先で再び麻痺弾を撃ち込み始める。その隙をついてエリザベートはバルファルクの腹下へ潜り込むとフレイムスロワーを切り上げ連続して砲撃を放つ。
強烈な衝撃と共に天彗龍は悲鳴をあげるが、そこへミーシャの放った重射矢と共にコロナを抜き取って襲いかかる。
振り上げた片手剣を目の前の脚へと叩き込む。吹き荒れる炎と共に打ち出された一撃は天彗龍の鱗の一部を削りながら刃先は肉へと到達し、わずかな傷を与えた。そんな俺を鬱陶しく思ったのかバルファルクは前脚を振り上げてひっかこうとしてきたが、奴の首筋に麻痺弾が命中し、中に入っていた液体がブチ撒けられてバルファルクの体表に発光しながら飛散。次の瞬間、天彗龍は突如体を痙攣させて動きを止めた。
-
80
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-29 23:46
ID:gX20EMvk
[編集]
「皆さんッ! 今ですッ!」
エリクシルの声に一斉に頷くと、目の前で麻痺毒によって動きを封じられたバルファルクへ攻撃を仕掛ける。
俺は攻撃を仕掛ける前にそれぞれの刃薬を塗りたくり、刃薬まみれの剣を盾に擦り付け、摩擦熱で刃薬を発火、紫色の焔が片手剣を包み込む。
『混沌の刃薬』を塗ったその上から更に心眼の刃薬を一雫ポタリと落とせば、紫の焔に混ざるようにして白い焔が現れる。どうやらこの混沌の刃薬には他の刃薬を活性化させる性質があるらしく、心眼の刃薬の場合は斬れ味回復が望めるようだ。
奴の胴体にはエリザベートが陣取っているため、俺は痺れて動かない尻尾に向かってその刃先を全力で叩き込んだ。
深く、深く入り込む。もう何度目の攻撃かもわからない。でも少しずつ鱗は剥がれ、次第に肉が顕になる。コロナの刃先はそこへ的確に滑り込み、血を迸らせる。疲労で痛む腕を鼓舞しながら、必死になって狙いを定めて剣を振るい続ける。「それじゃあ私もいいところ、見せますかねっ!」
「この角度なら、いけるッ!」ミーシャは三本の矢を番え始め、エリクシルはその場でしゃがみ込み弾を装填し始める。
軽弩から高速連射された無数の弾丸は翼脚に命中すると、当たる度にヒビを増やしていく。そこから襲い来るのは弓から放たれた二つの矢、風を切り裂きながら飛翔し翼脚へ命中、三本目の矢を構え力強く引き絞る。
狙いを定め、引き絞った矢を一気に撃ち放つ。巨大な槍のような一撃は天彗龍の翼脚の甲殻を破壊していた。「そんじゃあ、お熱いのかましてやるかッ!」
エリザベートの方を見れば彼女が盾越しに構えると、穂先に青白い炎が収束していくのが見えた。
だがその熱量は先程の竜撃砲とは比較にならない。ガンランス全体が青白いエネルギーに覆われていき、渦巻く獄炎が銃槍を中心に発生された。
その威力、及び爆発力は竜撃砲以上、というかもはや砲撃というより最早火炎放射の域では無いだろうか。
巨大な焔の球体が消滅すると、エリザベートの持つ盾が一瞬だけだが炎上している様子が見られる。あまりの熱量のせいか、盾を構えて爆炎を防ぎつつ使用しなければならないようだ。
しかし彼女の武器はかの炎戈竜の素材でできたもの、火耐性はそれなりにあるはずだ。
鋼鉄だろうが火属性モンスター由来だろうが関係なく着火してしまうのだからすさまじい威力とも言えよう。 -
81
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-30 22:34
ID:gX20EMvk
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文章短いけど投下。
後でバルファルクの特殊個体図鑑投下します。
───────────────強固な鱗の下、強靭な筋肉にミシミシと音を立てて怒張していく気配が伝わってきた。動きを制限していた麻痺毒が体から消え去り回復したのだ。
バルファルクの全身から再び龍気が噴き出し、空気が弾け、全周囲に凄まじいまでの咆哮の圧が襲いかかる。
本能的なのが恐怖感に駆られ、思わず耳を抑えて座り込んでしまう。必死に目だけを開いて周りを見渡せば、全員が同じ様に耳を塞いでいる。
いくら歴戦のハンターとなったエリザベートやミーシャであっても、この恐怖には打ち勝てないらしい。怒り出したバルファルクは自身を取り囲んでいた四人を振り切って走り出し、距離をとったところで反転、即座に翼脚から光弾状の龍気を発射する。
ようやく動けるようになったとはいえ、体勢か完全に崩れてしまっていたミーシャとエリクシルがまともに食らってしまった。───エリクシル! ミーシャ!
「…チッ、こういうのは慣れてないんだがね。 まぁ、しゃあねぇかね。」エリザベートはそういうとアイテムポーチから生命の粉塵を取り出して辺りにばら撒く。
その粉塵に触れた瞬間、柔らかな何かが体を包み込むような感覚に襲われ、そして自然と元気が出て来る。
苦しそうに見えた二人の表情も幾分か和らいで見える。「エリザベートさんありがとうございます!」
「さっきの借りを返しただけさ、これでチャラだよな?」
「さてさてどうしましょうか? まだまだやる気ですよあの子。」アイツをあの子呼ばわりか、というツッコミは置いておくとして。
バルファルクに視線を戻せば、低い唸り声を上げながらこちらを牽制するように歩いて距離を詰めてくる。妙な緊張感が背筋を駆け上がっていくのを感じる。
───天彗龍 バルファルク。それは今まで経験した大型モンスターの中で最も厄介な相手であった。~行動を選択してください~
1 攻撃を受けぬよう堅実に慎重に攻撃
2 足を攻撃して転倒を狙う
3 アイテムを使用して撹乱する(アイテム明記)
4 その他 -
82
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-01-30 22:57
ID:gX20EMvk
[編集]
天彗龍特殊個体『龍星バルファルク』
とあるハンターとの戦いの中、追い詰められ前脚に深い傷を負った天彗龍が成長した個体。
怒り状態になった際には噴射口だけではなく前脚の傷からも龍気が噴出される。
他の種類のモンスターと戦闘する事が多いのか戦闘能力及び学習能力が高く、マガラ種のような翼脚を利用した突進や自らの体を捻って龍気を噴き出し突進の威力を倍増させるなど無類の強さを発揮する。
────全てはあの宿敵を完膚無きまでに叩きのめす為に、奴に対して自らの全てを賭けて勝利する為に。 -
83
名前:千壱
投稿日:2018-02-01 05:04
ID:9HmB38Tg
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早朝から失礼します
2回目の怒り状態なので、これを凌げば空気吸引でチャンスが訪れると予想。なので選択肢は1で。
あと、今のうちにブレイヴ化してラッシュの準備をしておくというのも追加でお願いします。 -
84
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-02-01 23:02
ID:gX20EMvk
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リアル知識ロール程恐ろしいものはないな、これはバルクと戦ってたら分かることだけど。
────────二回目の怒り状態、攻撃はいずれも厄介極まりないものばかりだ。
ならば一刺ししては退き、退いては隙を見つけ斬り込む、所詮一撃離脱戦法がよいだろう。
そして今の自分の状態を改めて確認する。ブレイブスタイル特有の全身に湧き出てくるあの力の張りが感じられない。隙を見て気を高められたらよいが。
のしのしとこちらに狙いを定め近づいてくる天彗龍、その視界から外れるようにして動いたガンナーの二人は数発の狙撃を命中させる。
攻撃をまるで無視したまま、視線を俺に合わせたまま、迂回するように徐々に距離を詰めてくる。
そしてその距離が一定のところまで縮まったところで、いきなりバルファルクは動き出す。上半身を大きく擡げて後脚で立ち上がりつつ、両翼脚で地面を思い切り叩き付ける。
当たる寸前のところでクルリと回転しつ回避し先程まで居た場所をみれば、地面に叩きつけられた巨大な翼脚は地面を砕いて岩盤を隆起させている。攻撃をいなすことが出来ず、直撃していたらどうなっていただろうか。
そう考えていると、天彗龍はゆっくりとこちらに向き直り目が合った。
俺はコロナをしまい一目散に走り出す。バルファルクの動きは見ていない。
最悪逃げる方向に追いかけてこないとも限らなかったが、そこは来ないと信じて走るしかない。
背後で矢を放つ音と狙撃の音が聞こえる。「オラァッ!」
エリザベートの掛け声が聞こえたところで、バルファルクの標的から脱したと判断して胸を撫で下ろす。
見ればミーシャとエリクシルは標的から外れている時にしか攻撃せず、エリザベートも一撃加えては盾でガードして防いでいる。
これで隙を見て、一人ずつぐらいならば回復の為に離脱することが可能だろう。───何とかやれるようにはなった、か……?
「あわわ…、うわぁ!?」嵐のような猛攻が、今度はエリクシルに襲いかかる。
王弩ライカンは取り出す隙すらなく背負ったまま。おかげで逃げる動きには不自由はないが、それでも一撃一撃を必死で避けてどうにか回避できるという有様である。
エリクシルを援護する為にミーシャが放った山なりに飛翔する矢が天彗龍の頭部に命中、続けてビンが割れて爆発を起こし悲鳴を上げて仰け反った。
バルファルクは両翼を広げては怒号を上げながらミーシャに向かって全力で走り出す。
そしてミーシャのすぐ上を飛び上がったかと思えば、すれ違いざまに龍気で下を薙ぎ払っていた。
だがミーシャは子供のように口角を吊り上げて笑いながら、龍気で薙ぎ払われると同時に踊るようにしていなして避けていく。 -
85
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-02-02 23:41
ID:gX20EMvk
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ミーシャが引き付けている間にこちらの動きに気づいていないバルファルクの背後から接近し、その太い脚を動かすアキレス腱目がけて切れ味全開のコロナを叩き込む。
荒れ狂う炎が悲鳴のような爆音を上げながら天彗龍の肉を焼き切る。その一撃に堪らず、バルファルクは転倒した。「やった、バルファルクが!」
「今のうちに畳み掛けますよー!」
「おっしゃぁ、行け行け行け!」仲間を鼓舞しながら攻撃を再開する。
これまで散々、いいように翻弄され続けてきたバルファルクに対してやってきた好機だ。
これを僅かにも無駄にする事は出来ない。
エリザベートはチャンスとばかりにバルファルクの顔面の前に立ち、フレイムスロワーを構える。その砲身に備え付けられたハッチはすでに閉じられており、一撃必殺の射撃が可能という合図、彼女は容赦なく引き金を引く。
穂先に青白い炎が集束し、突き付けた穂先とバルファルクの体表との間で凄まじい爆裂が起こる。
仰け反る体を必死に押さえ込んで体勢を立て直した時、天彗龍の頭部の表面を覆う鱗が弾け飛んだ。
竜撃砲がうまく決まったのと同時に、空からは無数の銃弾や矢が飛来。倒れているバルファルクの身を次々に撃ち抜いていく。
荒れ狂う炎の嵐のようにはコロナを振り回し、自身も踊り狂う。次々に放たれる炎撃に天彗龍の体が焼け焦げていく。しばらく蹂躙された後にようやく起き上がるが、反撃の隙を与えずに俺を含めた近接組は一度後退、ガンナー組も攻撃しながら距離を開ける。
バルファルクは再び赤い尾を引かせてドリルのように回転しながら俺とエリザベートに突進してくる。
しかしこちらは盾を使い華麗にいなして回避、相手を通り越して突き進んだ天彗龍は憎らしげに相手を見据える。
全身を覆っていた龍気が消滅し、元の状態へと姿を変えるバルファルク。次はどんな攻撃をしてくるのだろうか、よく観察しなければならない。
バルファルクはその場に立ち止まり、独特な音を立てながら胸部に空気を吸い込み始めた。
動きを止めている今がチャンスなのだろうが、何をしているのか分からないため、警戒を怠らないようにする。
とにかく時間がないことは確かであろう、迅速に対応しなければ…。~空気を吸い込み始めたバルファルクに対して…~
1 胸部目掛け攻撃する
2 相手の様子見をする -
86
名前:蟹
投稿日:2018-02-03 19:08
ID:B8nXzJ4E
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これは畳み掛けなきゃ今後勝機を得られるか分からんし1やぞ
-
87
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-02-03 23:58
ID:gX20EMvk
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いや、今このチャンスを逃してしまえば勝機が得られなくなってしまうだろう。ならば…、
「…えっ、あなたさん!?」
「おいおい何しやがんだ!?」奴目掛け一目散に走り出す。
時間がない、早く、急げと頭の中で騒ぎ立てつつ空気を吸い続けている天彗龍の真下に辿り着いた俺は、赫い光を放ち点滅する胸部目掛けコロナを抜き放つ。
手応え、あり!
そのまま炎を纏う剣撃を連続して上から下へ、下から上へ、右から左へ、左から右へ振るう。
鱗が剥がれ、甲殻は削げ落ち、胸部に剣が深く突き刺さるとバルファルクは大きく仰け反り───爆発。
爆発の衝撃に思わず尻餅をつく。バルファルクを見れば派手に転倒を起こしているようだ。胸部からは龍気が僅かながら漏れ出ている。
今のは奴の体内の龍気が爆発したものだったのか。「…よし、皆さん行きましょう!」
「全く、人の事は言えませんけどあなたさんも無茶しますよねー。」
「ホントだな。 まぁ、今回は良しとしようか!」すぐさまこのチャンスを逃すまいと三人は天彗龍に向かって攻め込んでいく。
起きあがり一歩遅れて、コロナを構え斬り込む。
バルファルクは四肢をばたつかせ起き上がろうとする。中々起き上がれない様子だったが、その四肢の動きは同時に纒わり付く俺達を押しのける働きもしていた。
意識しての事なのか、無意識に本能的にやってのけたのか定かではないが、何れにしても野生のしぶとさには舌を巻きながらひたすらに斬りつけていた。やっとの事で身を起こしたバルファルクに対して、俺は一旦距離を取るがエリザベートはしつこく攻撃を繰り返していた。その動きが悪目立ちしたのか、すかさず鋭利な翼脚が繰り出されるが、難なく重厚な盾により防がれる。
その展開を見越していたかのようなタイミングで、今度はミーシャが閃光玉を投げ入れる。
再び目を眩まされた天彗龍は、狙いも定めず暴れ始める。だがその攻撃はいずれもその場で行うものばかり、簡単に足元に辿り着くことが出来た。
斬りつけ、斬り裂き、斬りあげる。
バルファルクに対して全力で剣を振るう。他のメンバーもエリクシルとミーシャは不意に伸びてくる翼脚に注意しながら狙撃、エリザベートは突きと砲撃を繰り返している。
やがてバルファルクは視力が回復したのか頭を振る。そして奴の体に異変が起こり始めた。「あっ! 脚を引きずり始めましたよ!!」
エリクシルの言葉どおりバルファルクは突如足を引きずって歩き出した。それはモンスターが弱っている証拠だ。
身構える俺達だったが、彼らの予想に反してバルファルクはそのまま足を引きずって俺達とは別方向に向かう。 -
88
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-02-04 21:17
ID:gX20EMvk
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「逃げるつもりかッ!」
エリザベートはそう叫ぶと急いで逃げるバルファルクを追いかける。俺もその後を追い、ガンナー組は背中目掛け追撃する。
足を引きずるバルファルクはそれほど速くない。
最初に走り出したエリザベートはなんとか天彗龍の側面に追いつくとフレイムスロワーを引き抜いて突き付けた。遅れて俺もバルファルクの後部にコロナを叩き込む。背中には矢と弾丸が突き刺さっている
だが、こちらの猛攻撃を無視してバルファルクは足を引きずりながらも歩き続ける。───止まれッ!
後足の甲殻をコロナの刃が斬り裂いて真っ赤な血が噴き出るが、バルファルクは止まらない。
「止まれってんだッ!」
エリザベートはガンランスを叩きつけ、弾倉にある弾を全て撃ち出し、銀色の甲殻を焦がすがそれでもバルファルクの足は緩まない。そして、
「二人共、離れてッ!」
「バルファルクが飛び立ちますよー!」二人の声にバルファルクから離れた刹那、天彗龍は翼に龍気を溜めて飛び立ち岩壁の向こうに消えて行った。一瞬でも遅れていたら巻き込まれていただろう。
…逃げられた。
思わず天彗龍が消えた空を見上げる。エリザベートも「逃がしちまったか」と残念そうにた見上げ、エリクシルとミーシャも残念そうにバルファルクが消えた方向を見上げながらため息する。「逃げられちゃいましたね。」
「あぁ、惜しかったなぁ。」
「空気を読まない子ですねー、あの子。」
「ミーシャちゃん、あんまりそういうことは言わない方が…。」幸いにも誰も怪我はなく無事だった。
各自回復や斬れ味の修復を行い、ミーシャは僅かに香るペイント弾の香りを頼りに遺群嶺の手に持つ地図と位置を見比べている。「どうやらエリア9、あの子の巣に帰ったみたいですねー。」
「エリア9って確か…。」
「はい、あの上ですねー。」ミーシャの指を指した先を見れば、そこには天を貫いて聳え立つ山が。天高く蠢く曇天が山を覆い、雷が闇の中で光を放っている。
恐らくはその先、山の頂に奴がいるのであろう。
ならば向かわなくてはならない。奴と決着をつける。過去の因縁を、断ち切る為に。
少し不安げながらも後を付いてくるエリクシルへ目配せし、崖を登り暗雲の立ち込める頂へと脚を進めていく。・・・・・
そこはまるで別世界のようであった。
山頂にあたるエリア9は乱雲を抜けた先にあり、眼下には雲海が広がっている。
空は薄暗く月が登っている。先程までの嵐とは何だったのかと言いたくなる。
そんな世界で唯一、存在している生命───バルファルクは静かに眠りについている。
改めて見ても、銀色に輝く鱗に覆われた流線型の体躯と、極めて特異な進化を遂げた巨大な翼脚。一目見ただけで、強敵だとわかる。
がその自然の鎧も、これまでの戦闘でずいぶんと疲弊している。鱗は所々剥がれ、傷口からは今も血が滲んでいる。爆弾を使った事で焦げている箇所もあり、明らかに初めて遭遇した時と比べて弱っている事がわかる。その傷をつけ、ここまで奴を追い込んだのは、紛れもない自分達なのだ。
あと少し。まるで自分に言い聞かせるようにしてつぶやく。
眠っていても恐怖を感じずにはいられない相手だ、どう行動するのが良いだろうか。 -
89
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-02-04 21:24
ID:gX20EMvk
[編集]
~行動を選択してください~
1.眠っているバルファルクに対して…
1 大樽爆弾G×8
2 エリザベートの竜撃砲
3 上二つの合わせ技2.目覚めたバルファルクに対して…
・刃薬の指定OK、ご自由にどうぞ。
1 懐へ潜り込み、脚を攻撃する
2 部位なんて関係ねぇ!と斬れるところを斬りまくる
3 相手の出方を見て慎重に立ち回る
4 アイテム使用(アイテム名明記)
5 その他 -
90
名前:天ノ者
投稿日:2018-02-05 20:10
ID:59nVq676
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1,3で。大樽は翼においてガンナーに起爆してもらいましょう。竜撃砲は頭部に。
2,会心の刃薬をぬって爆発に巻き込まれないように後ろ足を攻撃でお願いします。 -
91
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-02-06 22:55
ID:gX20EMvk
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寝ている今がチャンス、ならばと飛行船に積んでいた大樽爆弾Gを二つ抱え気持ち良さそうに眠るバルファルクの頭に設置する。
飛行船が墜落した衝撃で爆発していないのは不幸中の幸いといったところか。「たーるっ♪」
「えっ、えーっとミーシャちゃん? その掛け声って何なの?」
「巫山戯てんのか、それ?」
「言わなきゃダメな気がするんですよ、ほらほらエリクシルさんもー。 エリちゃんさんもはやくー。」
「えっ…た、たーるっ……うぅ、恥ずかしいよこれ……!」
「アタシもかい!? …たーるっ………いやアタシには似合わねぇな、うん。 つーかエリちゃんさんって何だおい!」申し合わせたわけでもないのに合計八つの大樽爆弾Gが天彗龍の周囲に設置される。
爆破はエリクシルに任せて「攻撃用意を」と、声を掛けると武器を構え俺がバルファルクの背後、エリクシルとミーシャがそれぞれ両側に、そしてエリザベートがバルファルクの正面に立つ。
念の為にコロナに会心の刃薬を塗り、発火させる。奴が爆発に耐え姿を現す可能性があるからだ。
エリクシルは全員準備が出来ているか見回してきたので、奴が起きてしまわないように無言で頷く。他の二人も同じようにして頷くと、エリクシルは頷き返して目測で狙いを定めて引き金を引く。撃ち出された弾丸は寸分の狂いなく設置した方の大樽爆弾Gに命中。刹那、隣に置かれていた爆弾にも起爆しもう一発にも誘爆して大爆発、黒煙と爆風が辺りを包み込む。とんでもないモーニングコールだ。まぁ、夜なのだが。
天に向かって立ち上る黒煙を見詰める。だが、バルファルクの姿はその黒煙に隠れて見えない。倒したのか、それともまだ生きているのか、わからない。
突如、辺りに激しい暴風が吹き荒れる。叩きつけるように吹き荒れる暴風に思わず目に片手を添えて守った。「まだかッ!」
エリザベートの悔しそうな声に視線を向けると、黒煙を龍気で吹き飛ばし巨爪でしっかりと大地を掴むバルファルクが見える。
それでも流石に大樽爆弾G八つの威力には堪えたようで、その身はよりボロボロに傷ついていた。だが、それでも彼はまだ倒れない。
奴のプライドが、その身を支えているのだ。
改めてバルファルクの底力と迫力、そしてその誇りの高さに驚かされ、感動する。
今まで多くのモンスターと戦って来たが、これほどまでに力強さを放つモンスターはいなかった。
その自慢の身がボロボロになっても、王の誇りを胸に血にまみれた翼を広げ、傷だらけの足を引きずってでも立つ、それがバルファルクなのだろう。
三度怒るバルファルクは鋭い眼光で俺達を睨むと、そのボロボロな体から思えないような力強い怒号を放った。
そして奴の眼前にてエリザベートはガンランスを構え、「……はっ!」
砲口から凄まじい大爆発が起き、巨大な炎と黒煙がバルファルクの頭を包み込む。バルファルクは頭に襲いかかる衝撃に思わず体を大きく仰け反らせた。
-
92
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-02-07 23:18
ID:gX20EMvk
[編集]
エリザベート竜撃砲が炸裂したと同時に、エリクシルとミーシャも中距離からの射撃を開始する。それを見て俺もコロナを構え斬り込む。
上から下へ体重を掛けて振り下ろした一撃はバルファルクの後ろ脚の甲殻を引き裂き、真っ赤な血が噴き出す。
振り下ろし、斬り抜き、突き、回転斬り。様々な形で嵐のように剣撃の乱舞を叩き込むうちに次第次第に疲労が腕に蓄積して痛みが生じるようになる。
しかし構っていられるかと、それを歯を食いしばって耐えながら次々に全力で剣を振るい続ける。
竜撃砲で後退したエリザベートも戦線に戻ると、突き攻撃と砲撃を組み合わせた攻撃を繰り返す。当然黙ってやられるような天彗龍でもなく、エリザベート目掛け翼脚を伸縮する槍や極太の杭のように素早く刺突させるが、それを巨大な盾で防ぎ切る。そしてまるで何事もなかったかのように再び鋭い突きを攻撃を腹に向かって突き刺す。
続いてバルファルクは上体を起こして立ち上がり、自身の下方へ龍気を放つ。エリザベートは盾によって防ぎきれたが、俺はいなすことができず直撃、まるで殴られたかのように吹き飛ばされる。
地面に激しく叩きつけられ、咳き込んでいたところにバルファルクはさらなる追撃を仕掛けようと振り返る。
だが、振り返った天彗龍の頭に向かってエリクシルは銃弾を放つ。放たれた二発の銃弾は天彗龍のこめかみ辺りに辺り、一瞬遅れて斬烈が迸り、そこから更に重力に従い落下してきた重射矢が命中、その衝撃にバルファルクは悲鳴を上げて仰け反る。
こちらの容赦のない全力攻撃の嵐に、バルファルクは成す術がない───だが、相手は古龍。逆境に屈するほど愚かな存在ではない。むしろ闘志はより激しく燃え上がる。
両翼を展開させ後方へ跳ぶとそのまま龍気を噴射、俺とエリザベートはだけではなくガンナーの二人の位置まで龍気は飛ばされる。
各自がギリギリで盾で防ぐ、いなすなどして回避するが、続けて翼脚を使った突進を仕掛けてくる。
だが直線的なその攻撃をそれぞれ横に跳んで回避し、すぐさま突撃を再開する。 -
93
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-02-09 19:28
ID:Znrt97HA
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打ち上げタル爆弾、たーるっ♪
地味に懐かしいネタを使いましたね。そしてただ一人無言で爆弾を設置するKY主人公。 -
94
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-02-10 00:42
ID:gX20EMvk
[編集]
回避した敵に向かって再度突撃する。力強い鳴き声と共に突進するバルファルクの満身創痍な体からは考えられないような速さで俺達に襲い掛かる。
「散れッ!」
エリザベートの掛け声に俺を含めた三人は散開、だが彼女だけはその場から動かず重厚な盾を構え始める。
すさまじい速度で突撃接近して来るバルファルクは前脚でガンランスの盾に掴みかかり、エリザベートを押し倒さんとする。対してエリザベートは倒されまいと腰を落として耐え凌いでいる。
彼女の大胆な行為に驚くが、すぐさまその意図を察して反転、追い越した天彗龍を追撃する。エリクシルとミーシャも同様で追い始めていた。
天彗龍の前脚とガンランスの盾による鍔迫り合いの接戦が繰り広げられていたが、徐々にエリザベートがバルファルクを押し返していく。
そして…「……オ、ラァッ!」
盾で突き返すようにして拘束から抜け出すと、バルファルクの頭部目掛け砲撃を連続して放つ。
自分が押し返された事に動揺した天彗龍の頭部を砲火が包み込む。
更にエリクシルとミーシャの二人は残り少ないビンや弾丸を惜しみなく次々に装填して撃ち放ち、容赦のない弾丸の雨のようなすさまじい集中砲火が天彗龍の動きを封じる。
少し遅れた俺は、三人の集中攻撃に完全に動きを封じられているバルファルクに向かって剣で生物の構造上どうしても鎧を身に纏えないアキレス腱を狙って斬り掛かる。
大剣のような強力な一撃ならまだしも、片手剣の一撃程度ではビクともしない。思わず舌打ちしてしまったが、連続して剣を叩き込む。もはや褐色の体表の上にベットリと自らの血で真っ赤に染まったバルファルクは唸り声を上げて辺りを威嚇する。
自らの命が尽きかけている事を知っているからこそ、許せない──こんな矮小な生物に負けるなど、許せるはずもなかった。
一際大きな怒号を轟かしたバルファルクはゆっくりとこちらへ振り返る。
全身を真っ赤に染め、怒り狂う瞳はもはや理性を完全に失い、血走っている。口からは呼吸するたびに真っ白な息と真っ赤な血が溢れる。涎と血が混じった真っ赤な粘液を垂らしなが天彗龍は怒りに任せて咆哮する。
その場で外気を吸引し龍気を翼脚の噴出口から噴き出すと、ふわりと浮かび上がり月が見える空へ飛ぶ。
移動か…?そう思い空を見上げれば、彗星となったバルファルクは赤い尾を引かせて空を飛び回っておりゆっくりと転回、突如反転すると彗星は地上に近づく度にその光を増していく。
まさか、こっちに突っ込んでくる気か!?
古龍の大技、そして超高速で高高度から突っ込んでくるというだけであるが、飛行船を一撃で大破させるほどの破壊力を誇り、並大抵の防御力、それこそエリザベートの盾でも到底その衝撃を受け止める事はできないだろう。
ならば全力で回避するしか方法はないだろう。
しかし問題はタイミングだ、上手く回避出来なければ巻き込まれて一瞬でお陀仏だろう。何としてでも回避しなくては…。~彗星の回避のタイミングを…~
1 自分の勘に任せる
2 ミーシャの合図を頼りにする -
95
名前:蟹
投稿日:2018-02-10 02:30
ID:B8nXzJ4E
[編集]
自分の命に関わることだ、そこは自分の力で生を勝ち取って欲しいものですよ。1で。
いっそイナシとも思ったけどあれイナシできたっけ?ワールドのやりすぎで全く覚えてない
-
96
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-11 10:55
ID:bluoxc3Y
たしかイナシ出来たかと
-
97
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-02-11 23:41
ID:gX20EMvk
[編集]
天から舞い降りる凶星はそのスピードを上げ地上の俺達目掛け迫り来る。
その赤い彗星を見て、俺は手に持っていた片手剣を構え直し、いなしの構えの型を整えていた。
…この選択は無謀に近いものだ。恐らくこの攻撃は奴にとって必殺技といっても過言ではないもの、それを真正面から受け止めようなどと…。
だが今の奴の、瀕死という状態にも関わらず最後の一瞬まで死を諦めないで戦い続けるその姿に敬意を持って、全力で迎え撃ちたいと思ったのだ。「あなたさん!? 一体何をしてるんです!?」
「エリクシルさん、今は気にしてる場合じゃありませんよー。 もうすぐそこまで来ちゃってますし。」
「あぁ、今からじゃとても間に合わん! 今はあれを全力で回避するぞ!」「あなたさん!!」とエリクシルの悲痛な叫びが聞こえるが、彼女たちは動けなかった。
すぐ目の前には彗星が迫っている。少しでも油断すれば回避し損ね途端に彗星の餌食となるだろう。
エリクシルは今すぐに駆け出して俺を止めたいだろう。しかし今ここで彼女が動けば自分だけではなくエリザベートやミーシャにも危険が及んでしまう。それはあってはならない事だ。
背後からの声を聞きながらも、俺はいなしの構えを解かず構え続ける。そして天より落ちし彗星は隕石の如く地上へ一直線に突っ込んでいき───爆撃。襲い来る轟音と振動、そして少し遅れて暴風が巻き起こる。
バルファルクの着地時には全身のあまりの運動エネルギーにより地面を抉っていた。
耳鳴りのような音が鳴り周りの音が聞こえなくなるが、すぐに聞こえるようになる。
どうやらあの攻撃をいなすことに成功したらしい。正直なところ怖いと思ったのは事実だ。
今まで狩猟したモンスターにも引けを取らぬ威力でいる、怖くないはずがないだろう。 -
98
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-02-13 20:50
ID:gX20EMvk
[編集]
振り返り奴が着地した先を見据える。
もうもうと上がる黒煙の柱、しかしそれは内側から伸びた巨大な一対の翼が激しく揺れる事で霧散する。
爆心地から現れたのはボロボロの姿をした天彗龍。鱗は所々剥がれ落ち、焼け焦げ、血が銀色の体を赤く染めている。
最早初めて遭遇した当初の面影は何処にもない───だが残った煙を吹き飛ばすかのように天を仰ぐと、その奥底から込み上がる怒号を天高く響かせるバルファルクには未だ戦意がある事を知らしめている。
そしてこちらをじっと見詰め、攻撃をする訳でもなく低く唸っていた。
どちらかが動けば、戦闘が開始されるような緊張の時。俺はじっとバルファルクの動きを見詰める。
すると、そんなバルファルクと瞳が合った。しかし恐怖はない。ただ互いを見詰め合うだけで、何も起きない───しかし、俺はその時確かにその瞳に奴の誇りが見えた気がした。
死すべき場所は、己が領域である空を望める場所。どうやら奴は自分の墓場はあんな地の低い場所ではなく、堂々と戦い、そして空の下と決めたらしい。
グッと柄を握り直すと、気高き銀翼の凶星と対峙する。───…掛かってこい。 これで終わりにしてやる。
怒号と共にバルファルクは向かって右側の翼による刺突を行う。槍のような攻撃を避け、左側の翼の攻撃を小さな盾で防ぐ。
続けてこちらに狙いを定め突進を仕掛けるが、ガンナー組による容赦のない弾丸の雨のようなすさまじい集中砲火、続けて脚元に潜り込んでいたエリザベートによる連続砲撃が天彗龍の動きを封じた。
今しかない。目を逸らす事なく天彗龍と対峙し、構えたコロナを全力で振り下ろす。その一撃はバルファルクの右顔に炸裂し、鱗を吹き飛ばして大量の血を吹き飛ばす。
───刹那、バルファルクは断末魔の悲鳴を上げて天を仰ぐように首を持ち上げると、そのまま力を失って横倒しになるようにして倒れた───蒼空に響いた彼の最期の声は、山彦となってしばらく鳴り続けた。─────────
バルファルクは、まだ生きていた。だが、もはやその命の灯は消えようとしている。
彼の宿敵は眼前に立つと、彼と目を合わせる。先程までは見下ろしていたはずの彼の瞳は、今では見上げる形になっている。
薄れゆく意識の中、目の前の自分に打ち勝ったちっぽけな存在でしかない敵の姿をしっかりと目に焼き付け、果敢に挑んで来た彼らの勝利を、そして自らの敗北を認めた。
───その時、頬に何か温かなものを感じた。
それは、目の前の小さな敵から流れ落ちた涙。なぜ涙を流すのか、人間のような繊細な感情を持たない彼にはきっとわからないだろう。「……今は、ゆっくり休んでくれ」
その言葉に彼はゆっくりと目を閉じる。
それが、彼が聞いた最後の音であった……。 -
99
名前:凶星一条@時雨
投稿日:2018-02-13 21:43
ID:gX20EMvk
[編集]
~エピローグ~
天彗龍狩猟が討伐に終わり、その後は大騒ぎであった。
龍識船の乗組員達による割れんばかりの歓声と護衛任務を行っていたは仲間達からの祝辞の後、飲んで食って騒いでの大騒ぎになった。
そして龍歴院に無事帰投し、飛行船乗場からでると一斉に集まるハンターや職員達の視線、直後、割れんばかりの歓声に包まれる。
名前も知らぬハンター達に背中を力任せに叩かれるなどされていると、人波を掻き分けギルドマネージャーが此方へやってきた。「よくやってくれたハンター達! 天彗龍を打ち倒したことにより龍識船だけではなく飛行船が無事に航海する事が出来る! これで暫くは安全じゃろうて。」
そう言って短く笑ってから一息つくと、ギルドマネージャーは改まって口を開く。
「…これは上の爺共が決めたことじゃがのう、まぁアタシにもこれには異議はないさな。」
「あの爺共がか? 何かろくな事でも無さそうだな…。」
「黙って聞きなランドラット、これはアンタ達にとって重大な知らせさね。 ……コホン、さて龍歴院所属ハンター、あなたよ…この度の骸龍及び天彗龍討伐の達成、実に見事であった。」
「その≪功績≫と≪勇気≫を湛え、あなたとその仲間達一行に≪G級ハンター≫としての資格を与える物とする!」
「じ、G級ハンターだぁ!?」ランドラットが驚きの声を上げると、職員やハンター達の歓声が先程よりも増した。
俺はと言えば…あまりにも突拍子もない言葉に、一瞬思考がフリーズした。
仲間達からは驚愕の表情を浮かべる者や、事の重大性に未だ気付いていない者もいる。
G級ハンターといえば、ギルドより指定された古龍および古龍級モンスターを討伐できた者のみが認められるというハンターの最高位であり、大陸全体から見ても一握りの数しかいないと言われるほど極めて特別な存在とされている。
当然、戦うモンスターもよく知られた種であってもその身体能力と戦闘能力が大きく変化しているような屈強かつ特殊な個体ばかりであり、まだ研究の進んでいない未知の亜種や新種の狩猟を任せられることもあると聞くが…。「ま、これからの活躍に期待しておるよと言うことじゃな。」
ホッホッホッと笑いながら、いまだに困惑している俺達を尻目に人波の中に消えていくギルドマネージャー。
G級ハンター、か。
イマイチ実感が湧かないが、それらの言葉の響きにはこれから更なる世界の広がりを感じさせるものがあった。
これから先何が待ち受けるのか、実に楽しみだ。~シナリオ43~
凶星一条 クリア!・称号『銀翼』を入手しました(バルファルクを討伐した)
・称号『G級』を入手しました(G級ハンターに昇格した)
・天彗龍の上位素材を入手しました
・全ての二つ名モンスターの特殊許可クエスト券を入手しましたあともう少しだけ続くのじゃ。あとがきだけどな!
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100
名前:あとがき@時雨
投稿日:2018-02-13 22:11
ID:gX20EMvk
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ワールドやりたいなぁと思いながら書いていたシナリオ43です。
それではあとがきを始めます。・タイトル由来
FGO皆の大英雄アーラシュさんの宝具『流星一条』です。
一文字変えれば禍々しくなりますねこれ。・隠れタイトル
『銀翼の凶星』です。
やはりバルファルクなら外せないタイトルですので。・龍星バルファルクの技解説
1 翼脚を使用した突進
狂竜化したゴアとシャガルの使ってくるあれ。
翼のデカさで凶悪さが増すと思ったので採用。
2 回転しながらの龍気噴出突進
モンハン的にいえば朧隠の錐揉み突進、ス○ファイ的にいえば○イコ○ラッシャー。
3 バックジャンプ龍気噴出
ぶっちゃけレウスのバックジャンプブレスこれにてあとがき終了です。
さて、舞台はG級へ移りモンスターも強力かつ屈強なモンスターがあなた達へと立ち塞がります。
果たしてこの先何が起こることやら…。それではお疲れ様でしたー。
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101
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-02-13 23:08
ID:Znrt97HA
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時雨様バルクシナリオお疲れ様でした!
やっぱりこういう大事な場面は昔からここにいた人がやらないとねぇ。。素敵な戦闘描写にシビれました!さて、次は誰のシナリオでしょう?
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102
名前:時雨
投稿日:2018-02-15 22:40
ID:gX20EMvk
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何なら難亭氏やってもええんやで
俺は暫くシナリオ作成するしねー -
103
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-02-16 21:12
ID:2vNnRjOI
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事前予告していた蟹氏の登場を待機しつつプロットの製作開始。
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104
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-02-20 22:55
ID:5kq/irXI
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蟹氏が名乗りを上げないから私がやっちゃおうかなぁ〜。チラッチラッ
前回私がやったのが時雨氏リスペクト回だったので、今回は暇氏リスペクト回で、ターゲットは太古の病魔編。
前ほどの高速投稿は出来ないかもしれないですけど、そこそこ素早く執筆させていただきたく思います。※諸注意
難易度極めて高い
病魔編同様、若干の謎解き要素も
愉快な話ではないかも…?
またもドス鳥竜
後味は渋味の強いほろ苦
趣味全開明日の午後辺りから投稿を始めるのでそれまでに異議があったらどうぞ〜。
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105
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-21 15:59
ID:95PfIYuc
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タイトルが既に不穏(ノД`)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーその事件の大元の始まりは、ある一通の連絡からだった。
アルコリス地方の北西に位置する険しい山脈、ヒンメルン山脈。かつて栄華を誇ったとされるシュレイド王国とその他の地域を隔てるその偉大なる自然の障壁の更に北の果て、東シュレイド共和国とクルプディオス湿地帯に挟まれた山嶺の中腹に、トン辺りの鉱石産出量が通常の鉱山の約1.5倍という驚異的な超良質鉱山が発見されたとの報告がとある筋から上げられたのだ。
すると必然、その報せを受けた各組織の上層部は迅速に行動を開始する。それは地理的にその鉱山から最も近くに位置する東シュレイド共和国然り、今でも大陸に大きな影響力を持つ西シュレイド王国然り、鉱石の産出地として世界的に知られているエルデの民然り、そして、クルプディオス湿地帯をハンターの狩猟地、"沼地"として登録しているハンターズギルド然りであった。
報せを受けた各上層部は、互いに出方を伺いつつも、なんとかその優良な鉱山を我が物にせんと暗躍に暗躍を重ね、結果、決して日の当たらぬ事のない所で非常に醜い争いが繰り広げられたのだが、そのおおよそを語ってしまえば話が非常に長くなってしまうのでそこは割愛するとして、紆余曲折の果てにその鉱山は西シュレイドが資本、東シュレイドが労働力と交通、エルデ地方から技術、ハンターズギルドから周囲の安全の確保という、落とすところに綺麗に落としたとも、非常に不安定とも言える状態で運営されることとなった。
もちろん、思想も文化も生活圏も全く違う人々が集まったのであるから、最初こそ大小関わらず決して少なくない数の問題は発生したものの、最終的には大きな国際問題に発展するようなこともなく、表面上は平和な日々が流れていた。そう、ある時までは……
その事件の発端は、あるモンスターの襲来だった。
……モンスターの襲来によって日常が崩壊するのは、この世界ではさして珍しい事ではないはずであった。今この瞬間にも、大陸のどこかで名もなき集落が危機に晒されていることだろう。それだけ人々は、モンスターの脅威と共にこの世界を生きてきた。だが、そうであるにも関わらず、そのモンスターの襲来は、人々を混迷の彼方に陥れ、大陸をも震撼させることとなる。圧倒的力を持つ古龍の襲来とはまた異なった、不気味で異質な恐怖を齎したのだ。
その、日常茶飯事であるはずのモンスターの襲来という出来事は、しかし他の事件とは明らかに異なる"本質"を持っていたのだから。
–––––––斯くして、無垢の敵意はその牙を剥いた。
***
「ドス……イーオス?」
早朝にギルドマネージャーのオババがお呼びだと無理矢理に叩き起こされ、寝惚け眼に聞いたそのモンスターの名は、俺にとってあまりにも意外なものだった。
ドスイーオスと言えば、小型鳥竜種の中でも最も危険度の高いモンスター、イーオスの親玉の個体だ。他の鳥竜を遥かに上回る体力と、気化することによって広範囲に拡散する出血性の毒液、灼熱の火山から極寒の洞窟にまで適応できる生命力、大規模な群れを束ねる統率力を兼ね備えた非常に面倒な相手であり、初心者ハンターの敵う相手ではない。
しかし、それはあくまでも一般的に弱いと見なされているドス鳥竜の中での話。モンスター全体を見ればドスイーオスよりも強いモンスターなどごまんと存在するし、ぶっちゃけて言ってしまえばドスイーオスなどその括りでは雑魚同然のモンスターである。
さらに言うならば、そのドス鳥竜の中でさえもドスイーオスが一強かと問われればそうとは言い難い。二本しか指がなく、爪も非常に短いドスイーオスに対し、ドス鳥竜の中では最多の七本の長く鋭い鉤爪を持つドスランポス。麻痺毒によって此方の動きを拘束するドスゲネポス。氷液によって此方の動きを封じつつスタミナも奪うドスギアノス。ドス鳥竜の中でも屈指の運動能力を持つドスマッカォ。それぞれに特徴があり、どれが一番危険かと問われても一概にどうとは言えないだろう。ともあれ、高々そんな中型モンスター如きのために早朝に叩き起こされたのは誠に遺憾であり、俺のギルドマネージャーのオババに向ける視線の温度が下がっていくのも無理からぬことであった。
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106
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-21 16:03
ID:95PfIYuc
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全く、コッチは先日のバルファルク戦の疲れを癒さなくてはならないというのに、ドスイーオス程度に呼び出されていては堪らない。
「……その顔を見るに、アンタ「何でドスイーオス程度でわざわざ朝っぱらから呼び出されなければならないのだクソババァ。」とか考えてるんだろう?」
「いや、流石にクソババァまでは……」
「ほう、ということはその前までは否定しないのかい。」クソババァ……っ!
まんまと誘導尋問に引っかかってしまった俺が憎々しげにオババを睨み付けると、しかしその視線の先にあったオババの悲痛そうな表情が、俺が呼び出された原因がが決して冗談ごとではないことをありありと物語っていた。
……いや、それどころの話ではない。普段殆ど表情を表に出さないオババがこんな顔をするなんてそうそうある事ではないのだ。それこそ、古龍の襲来か或いはそれに匹敵する異常事態でも無い限り……。「……アンタこの前G級に昇格しただろう?今回のドスイーオスは推定G級個体……だが問題はそれだけじゃあない。」
「どういうことだ……?」
「詳しくはこの私がご説明致しましょう。」訝しげに疑問を投げかける俺の言葉に応えたのは、オババではない全く別の声だった。
非常に落ち着いた口調でいきなり語りかけられたものだから、思わず一瞬キョトンとしてしまったが、すぐさま我に返ってその声がした方に視線を向ける。
…………向けたんだが、しかし誰もいない。「下ですよ、下。」
……下?
その声に倣って視線を下に向けてみると、そこに居たのは俺の腹の高さくらいの身長しかない、せいぜい10歳やそこらといった程度の小さな子供だった。「お初にお目に掛かります。龍歴院の誇る凄腕、"スケベハンター"様。先日は見事G級に昇格とのことで、界隈はその噂で持ちきりですよ。なんでも、複数人の女性と親しい仲である若手のエースが、類稀な速さでG級に昇格し、美女ハンター達とハーレムパーティーを築いたとかで。……おっと失礼、自己紹介が遅れてしまいました。私は此方のギルドマネージャー殿とは古い知り合いのミラルパというしがない商人でございます。」
……その噂とやらにツッコミ所が満載なのだが、それは一先ず置いておくとしてだ……。
ミラルパと名乗った子供はそう言うと流れるような所作で一礼した。
動作や態度は完全に大人のそれなのだが、肝心の容姿がこれ以上ないってくらい子供であるがために、どうしても幼い子供が背伸びしているようにしか見えない。少しほっこりするまである。
……というか、何故こんなところにこのような子供がいるのだろうか?重装備のハンターやキリッとした出で立ちの研究員ばかりであるこの龍歴院において、このミラルパという子供の容姿は中々に浮いている。もしかして迷子かな?「その表情で何を考えているのかおおよそ察したので予め言っておきますね。私、これでも貴方より年上ですから。見ての通り竜人族なので、あしからず。」
一緒に親を探してあげないと……などと考えていた俺の思考を知ってか知らずか、ミラルパはジトっとした目付きで俺を見据えつつ、そう言ってきめ細やかな長い黒髪を掻き上げて先端の尖った特徴的な耳を晒した。よくよく見てみれば髪を搔き上げる左手の指は4本である。尖った耳に4本指……それは紛れも無い竜人族の特徴であった。
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107
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-21 16:07
ID:95PfIYuc
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尖った長耳に4本指、それらはこの小さな子供、ミラルパが竜人族であることを示していた。
なるほど、寿命の長い竜人族ならこの容姿でも俺より年上なんてことも普通にあり得る……のか?そうだとするとネコ嬢ことカティなんかも俺より年上ということになるが……俄かには信じ難いな。
……これは後で聞いた話であるが、偏に竜人族と言っても、そもそも『竜人族』というのはいくつもの氏族の総称であり、全てが同一の種族というわけではないらしい。すると当然、種族によって成長速度には著しい差があり、ミラルパはその中でも極端に成長が遅い種族であるとのこと。納得。「納得したのならよろしい。それでは本題に入らせて頂きましょう。……スケベハンター様、貴方は太古の病毒事件を覚えておいででしょうか?」
「……太古の病毒事件。」ミラルパの口から飛び出したのは、俺にとって非常に懐かしい(といってもこれまでが濃密すぎただけで言うほど時間は経っていない)事件だった。
太古の病毒事件……それは脱皮することも叶わず長き時を生きたゴア・マガラの特殊個体である『病魔』を中心に巻き起こった一連の事件のことである。アレは俺達が経験したなかでも中々に過酷な一件だった、忘れるはずがない。「……その様子では覚えていらっしゃるようですね。まぁ、当事者なのですから当然と言えば当然ですが……その事件を見事解決し、そしてこの度G級へと至った貴方に私から指名依頼があります。最近、クルプディオス湿地帯に隣接する鉱山都市にて太古の病毒事件とよく似た謎の病が発生し、その上通常の毒への対抗手段が通用しない正体不明の猛毒を撒き散らすドスイーオス達が確認されています。件の実績のある貴方には見事この事件を解決して頂きたいのです。」
なるほど、そういうことならば合点がいった。ただドスイーオスを討伐するだけではなく、その異変についても解決しなければならないようだ。
「しかし、異変の方はもし太古の病毒と同じものなら対策なんていくらでも……」
「はぁ……それを此方が考えなかったと思いますか?狂竜ウイルスのように活動による克服もウチケシの実による抑制も全く役に立ちませんでしたよ。ですから似てはいますが太古の病毒とは全く異なる性質のものかと……ドスイーオス達の吐き出す毒の変異とその異変、両方の謎を解決して頂きたいのです。」俺の提案は、しかしミラルパによって即座に遮られた。まあ、事が事だし試さないわけがなかったか。
しかし、さっきからミラルパの言葉に気になる点が存在する。ドスイーオス"達"とはどういう事だ……?まさかとは思うが、ドスイーオスが複数いるのか?「いえ、ドスイーオスはあくまで一匹だけですが、その手下であるイーオス達もドスイーオスと同じ通常の毒への対抗手段が通用しない猛毒を吐き出すんです。何せ少しでも毒液を浴びてしまったらアウトですから、鉱山都市の人々もすっかり震え上がっています。」
なるほど、それなら安心……というほどでもないが、それほど最悪の状況ではなかった。幾ら単体でそこまで強いモンスターでは無いとはいえ、ドスイーオスが複数で向かってきたら俺だってひとたまりもない。とは言え、それはハンターである俺の感想であり、一般人にとってはイーオス一匹ですら十分すぎるほどの脅威なのだからこれを放置するわけには行かない。
別に正義漢ぶるつもりはないが、困っている人を放って置いたら男が廃るってものだろう。「わかった、その依頼、受けt「ちょっと待ちな。」……?」
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108
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-21 16:11
ID:95PfIYuc
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「ちょっと待ちな。」
二つ返事でミラルパの依頼を受けようとしていた俺の声を、さっきまでだんまりを通していたオババの声が唐突に遮った。それも、何やら怒気を孕んだ様子で……。
オババのこんな声を聞くのは初めてかもしれない。そういえばさっきからずっと様子がおかしいが、何かあるのだろうか?「ミラルパ、アンタまだ肝心な事を二つ程言ってないだろう。」
……肝心な事?
「おっと、怖い怖い。流石はかつて女傑として名を馳せた龍歴院のギルドマネージャー殿だ、まあそう喧嘩腰にならないでくださいよ。丁度これから言うつもりだったんですから。」
「フン、どうだかね。」
「……で?その肝心な事って……」
「ええ、それはですね……」俺の問いに対し、ミラルパは勿体つけるように間を空けて答える。
「一つ、今回の依頼は、ハンターズギルドによって狩猟地に指定されていない、非狩猟区域で行われる事。あ、勿論密漁扱いにならないように面倒くさい事前申請やらの手続きは済ませてありますよ。」
「な……っ!?」ミラルパの口から出たのは、俺達ハンターにとっては極めて衝撃的な言葉だった。
非狩猟区域とは、すなわちハンターズギルドによって狩猟地に指定されていない区域、言ってしまえば完全に未開の地だ。当然地図はおろかベースキャンプすら無いし、古龍観測所の気球による支援も無い。狩猟環境は不安定を通り越して混沌であり、もしかしたら生命線であるネコタクサービスすら存在しない可能性もある。超絶ハイリスクな環境である。
しかし、それだけならここまで驚いたりはしない。だが、それよりなにより、そもそもギルドの指定していない区域でモンスターの狩猟を行うのは、例えハンターライセンスを持っている者であっても紛う事なき密漁行為である。密猟といったら、最悪極刑に処される大罪だ。ギルドマネージャーであるオババの前で堂々と話しているのだから本当に大丈夫なのだろうが、それでもビビってしまうのは仕方がない。「そして、もう一つ。これは最も重要な事柄です。」
……つまり、さっきのは一番重要じゃないということか?
ミラルパの落とした特大爆弾と、これから更に落とされるであろう超巨大爆弾に、俺の心臓はバクバクと早鐘を打つばかりである。爆弾だけに爆爆……やかましい。「……今回の事件では、ドスイーオスの毒液にやられた数人の炭鉱夫の他に、既に謎の病によって一般の老人や幼子に数人の死人が出ています。太古の病毒によく似たその病の原因は、その手の学者によって何らかの毒物を体内に摂取したことによるものであり、少なくとも伝染病などではないことは分かっているのですが……依然正体不明のままでは近隣地域の上層部は納得しません。その謎の病を伝染病なのではと恐れる者も多く……。」
ミラルパはそこで一旦言葉を区切り、落ち着きながらも強い感情がこもった口調で言い放った。
「……これは脅しではなく、事実として聞いてください。いえ、なんなら脅しでも構わない。……もし貴方にこの依頼を受けていただけなかった……或いは貴方がその謎の病の正体を突き止めることが出来なかった場合、伝染病であると思い込んだ近隣の連中が、その謎の病の大陸全土への拡大を恐れ、あの地域一帯の"消毒"を始めるかも知れないんです。」
「……消毒?」消毒ってどういう事だ……?
俺のそんな疑問に答えたのは、他ならぬオババだった。「……軍事用語で言うところの……"皆殺し"だよ。」
☆☆☆
※クエスト開始
〜昏き沼底、死の抱擁〜
メインターゲット
・変異ドスイーオスの群れの掃討
難易度:★
・謎の病の原因の究明
難易度:★★★★★
我ながら酷過ぎる難易度設定なので、シナリオ期間中一人でも正解を言えば成功とさせて頂きます。今のところあからさまに怪しいのはドスイーオスだが……?Q.クエストに同行するメンバーを指定してください。
1、自由枠(一々選択肢を書き出すのは面倒くs……行数の関係で無理でした。) -
109
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-21 17:57
ID:6l665hoE
[編集]
新しいシナリオきたきた!
とりあえずベテラン組をって思ったけど、アマネさん確かに王立古生物書士隊のメンバーだったと思うしアマネさん入れたら何か分かるかも
あと二人はアリーチェさんとエドワードさんのベテラン組にしとこうかな -
110
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-21 19:31
ID:tLBqqyxo
[編集]
これクエストに行くメンバーの他にバックアップ担当のメンバーとか選べるかね?
もし選べるなら毒の成分分析とかやれそうなエリクシルとか、同じくベテラン勢のライカ&イオン辺りにバックアップ担当して貰いたいな -
111
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-02-21 19:39
ID:eQ8q3XjI
[編集]
>>110可能ですよ〜。
前回と違って四人までとか条件は付けてないですからね。というかよく見たら何ですかこの超本気メンツは……出来る限り戦力集めました!感ハンパないですよ。これは難易度に上方修正……はしないとして、ちょっと手を加えましょう。
-
112
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-21 22:06
ID:eQ8q3XjI
[編集]
ほい、分割ですよ。(`・ω・´)
もっと計画的に書くべきでしたか……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー伝染病の感染拡大を防ぐ為に周辺地域の住民を皆殺し……か。恐ろしい話を聞いてしまった。
いや、「恐ろしい話」などと他人事のように捉えてはいられない。それが実際に行われるか行われないか……それらは全て俺の肩に掛かっているのだから……。今回ばかりは何としても事件の原因を解き明かし、そして出来ることならばその元を断たなければならない
だが、それは例えG級に昇格したと言えども一介のハンターでしかない俺一人の力だけでは到底成し得ないことだろう。相当な実力を持つ協力者が必要だ。なので俺は、知り合いの中でも特にこのような事件で頼りになりそうな者や、俺よりも遥かに優れた実力者である者に片っ端から声を掛けた。勿論、四人までなどといういつものルールは無しだ。当たり前だが、先々日の新人達の救出劇において狩場に丁度五人のハンターがいたのが原因かどうかは微妙だが、とにかく見事にジンクス通り酷い目にあったので、狩場に出るのは原則四人までにするつもりではある。しかし、もしかしたらモンスターの狩猟と謎の病の原因の調査、両方を同時に行わなければならないような事態が起きないとも限らない。その時に戦力が減るのは何としても避けたい。それに、未開の土地に調査に赴く必要があるのだから、相応のバックアップが無ければ例えG級ハンターと言えどもやっていけないだろう。
というわけで、知り合いのベテラン達に声を掛けてみたのだが……「どうしてこうなった……。」
「これは……流石は今をときめくスケベハンター様。錚々たる面子が揃いましたね。……国でも滅ぼすおつもりですか?」こういう事件に強そうだと一番に声を掛けたクルトアイズは途中までは感触が良かったものの、何故かミラルパの名前を出した途端急用が出来たとその場を去ってしまったので今この場にはいないのだが、その他のベテランハンターには殆どOKを貰えた。
その結果、出来上がったのが今のチームである。 -
113
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-21 22:10
ID:eQ8q3XjI
[編集]
ミラルパは揃ったメンバーを見て嬉しいような呆れたような複雑な表情をしつつ、言葉を続けた。
「『バリスタエド』ことアルバレストをこよなく愛するベテランハンターのエドワード。『ドンドルマの白髪鬼』……いえ、今は『銀弾』でしたっけ?ミス・ドンドルマの殿堂入りを果たした凄腕女性ランサーのアリーチェ。『狩場彩る舞神』の異名を持つハンター兼書士隊員のアマネ・ミソラ。バックアップに『闇を喚ぶ黒猫』ライカ・F・ジュヌミアと『夕刻の蝶』イオン・H・ハイアーインズの化け物コンビと『錬金術師』のエリクシル、確か苗字は……おっと、これは言ってはいけないことでしたかな?フフフ……。そしてこれに近年稀に見る速さでG級に昇格した『スケベハンター』ことあなた、ですか。……もう一度お聞ききしますね、国でも滅ぼすおつもりですか?」
「いやまあ、いて困ることは無いだろうし……。」流石にこのメンバーが揃っていても国を滅ぼしたりは……出来ない……と、思う。俺、信じてる。出来ないといいなぁ〜。
集まったメンバーのエゲツなさに思わず遠い目を浮かべてしまうが、事態が事態であるだけに戦力は大きい方がいいのは誰が考えても明白であるので、これだけのメンバーを揃えることが出来たのは紛う事なき幸運だろう。……幸運というか、バルファルクが討伐されて生態系に平穏が戻ったことにより、誰も彼もが暇になったのが主な原因だったようだが。
何せ多くの人の命が俺たちの肩に掛かっていると言って過言では無いのだから、戦力はあって余ることは無い。「G級昇格早々厄介な指名依頼に当たったな、あなたよ。」
「太古の病毒事件の時の実績を買われて……ってヤツか?俺はあの時は丁度別の仕事でかなり遠方に行ってたからなぁ。」
「昔似たような任務に就いたことがあるわ。任せなさい。」まず、俺と同行してドスイーオス達の掃討に当たるのがエドワード、アマネ、アリーチェの3人だ。ドスイーオス達の吐き出す毒液は浴びると相当に危険らしいので、ガードの固いランサーのアリーチェを中心に、経験豊富なエドワードと王立古生物書士隊員として知識も豊富なアマネを合わせた非常に手堅いメンバーだ。
「なんか……私の場違い感が凄いのですが大丈夫でしょうか?」
「あら?そんなことありませんわ。エリクシルさんと言えば腕の良いハンター兼錬金術師として今や界隈でもそこそこ有名ですわよ。」
「所謂適材適所だよ。状況によっては僕とイオンの方が足手まといになっちゃうかも知れないしね。」そして、バックアップには毒の成分などを分析してくれるかも知れないと期待してエリクシル。そしてもしもの事態の時にフットワークの軽いライカとイオンを据えた。二人とも気転は効きそうなので、どんな状況においても少なくとも足手まといにはならないだろう。
こうして、強力な協力者を得つつ、俺はG級ハンターとして初めての指名依頼へと歩みを進めた。
……恐らく、これまでで最も後味を悪く感じたであろう、その事件に。
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114
名前:時雨
投稿日:2018-02-21 22:53
ID:gX20EMvk
[編集]
お、難亭氏のシナリオ来てましたか。
…すっごい不吉なタイトルやなぁ、すっごいガチメンやなぁ。
主人公が後味が悪く感じた事件、か。 期待して待っています。 -
115
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-21 23:18
ID:G1ur6N.c
[編集]
「これでも個人規模としてはそこそこ豪華な飛行船を用意したのですが……肝心の乗員がそれ以上に豪華ですね。スケベハンター様もそうは思いませんか?」
「エエソウデスネ。」現在、俺たちはミラルパの用意した高速飛行船に乗って、一路北を目指している。個人で飛行船を所有しているというだけでも十分すぎるほどに凄いことなのに、ミラルパが用意した飛行船はその室内までもがまるで貴族の屋敷のように上品な高級感に溢れているのだ。見た目は子供だが、ミラルパも伊達にギルドマスターと伝手を持っているわけではないらしい。やはり金持ちか……一時期は金欠ハンターとさえ言われた俺としては少し羨ましい。
さて、そんな高級感溢れる室内において、イオンやアリーチェ辺りは上品で落ち着いた雰囲気がこれ以上ないってくらい似合っているのだが、このような場には足を踏み入れるどころか、まともにこの目で見たことさえない俺は緊張でガチガチである。少し意外なのは、仲間だと思っていたエリクシルも案外動揺していないことか……。ちなみにこの場にいるのは俺、ミラルパ、アリーチェ、イオン、エリクシル、アマネの六人である。エドワードは「少し外を見てくる」と言って甲板へと上がっていき、ライカは「実は僕、朝は苦手なんだ」と一人仮眠室へ向かった。その姿が一瞬本当に猫のように見えたのは内緒だ。
「ミラルパって何処かで聞いたことがあると思ってたけど、本当に貴方があの『不老のミラルパ』だったとはね。まさかこんな小さな子供だとは思わなかったわ。」
「ガワだけですけどね。……かつてドンドルマで名を馳せた銀弾のアリーチェ様にこの名を憶えていただいていたとは、光栄の極みでございます。」アリーチェの言葉に、ミラルパは爽やかな笑みを浮かべて応えた。
どうやら彼女はミラルパの事を少し知っているようだが、一体どのような人物なのだろうか?少なくとも只者でないのは確かなのだが……「あら?貴方知りませんの?『不老のミラルパ』と言ったら一代で大陸中に支店が置かれるような大商会を築き上げた立志伝中の傑物として有名ですわよ。まぁ、私もそんなお方がこのような幼子の姿をしていらっしゃるとは思いませんでしたけれど……。」
「いえいえ、もう後続に任せて引退した身でありますし、さしもの私の名声も僅か二十年という短い時で人外魔境と言われるG級を制覇した夕刻の蝶様と闇を喚ぶ黒猫様のお二方には到底敵いませんよ。……サイン100枚ほどくださいませんか?」
「絶対売りますわね。」
「ふふ、冗談です。」このあどけなさが残る悪戯っぽい笑みを浮かべた子供が、大陸に名を馳せる大商会を立ち上げたのか……世界って広いな。
「皆んな、ちょっと来てくれ!」
俺が不思議な感慨に浸っていると、この部屋の丁度真上にある飛行船の甲板からそんなエドの声が響いてきた。声の感じから切羽詰まったような様子は見受けられないが、丁度飛行船の室内が暇になってきていたので、これ幸いと俺たちは階段を昇って甲板へと出た。現在仮眠中のライカを除いてだが。
甲板に出ると、冷たい空気が風となって頬を撫でた。それは高度が高いからというのもあるが、近頃の気温が下がってきたのも要因の一つとしてあるだろう。
ゾロゾロと一列になって甲板へ出た俺たちは、飛行船の左側で何やら望遠鏡を覗いて何処か遠くを見ているエドを発見し、何事かと問いかける。するとエドは、望遠鏡から目を離しつつ、その先にある黒い影の塊を指差して言った。「あそこだ、見ろ。」
エドに促されるままに、俺は望遠鏡を覗き込み、そして思わず息を呑んだ。そこに写っていたのは夥しい数の……
「ガブラスの群れだ。それもかなり大きい。」
ガブラス……それは、古龍種などの強大なモンスターのおこぼれを狙って大陸各地を旅する蛇竜種の小型モンスターだ。その生態の関係上、ガブラスが大量に現れると大きな災厄が訪れることが多いので、世界各地で災いの凶兆として恐れられている存在。
そんなモンスターが、巨大な群れを成して……「……北へ向かっている。」
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116
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-22 04:54
ID:1Px3GYIk
[編集]
難亭さんも地味に兎さん並に読ませる文章を書いてくれてると思う
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117
名前:蟹
投稿日:2018-02-22 11:21
ID:B8nXzJ4E
[編集]
すみませぬ、Wにうつつを抜かしてシナリオが終わってることの確認も放ったらかしでした。
このクエスト、G級でしょうか?それとも上位?
例の用意してたシナリオはG級までの繋ぎシナリオでしたが、G級に突入とあらばそれ用に調整しますかな -
118
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-22 12:50
ID:o5wE3o6U
[編集]
>>117
推定G級個体のドスイーオスだってオババが言ってるからG級やで -
119
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-22 18:27
ID:pJBQclzA
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>>116嬉しいですが流石にそれは言い過ぎですよ、努力するほどに遠さを感じますからね。兎様マジリスペクト。
>>117前回の時雨氏のエピローグでG級昇格とあったのでそれに倣わせて頂きました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー元々は小さな工場街でしかなかったのだが、今から約十年ほど前のこと、ヒンメルン山脈の中腹に新たに発見された超良質鉱山の存在により、ここ数年で急速な発展を遂げた街、"スカラグラート"。
鉱石の産出と、製品の加工。その両方を行うことができるこの街は、現在各地で相次ぐ二つ名個体や古龍といった強大なモンスターの襲撃や、飛行船産業の急速な発達、未知なる新大陸への五度目の大規模渡航計画などにより、半ば戦争景気じみた賑わいを見せていた。炭鉱夫や職人達が条件の良い仕事を求めてこの地に集まり、彼等の家が新たに建てられ、家族が出来、人が増え、そうして生まれた需要を満たすために商人達がこの地へ根付き、商人達の護衛を行うためハンター達がここを訪れ……今では十数万人もの人々が暮らすとも言われている大都市へと発展した。
「今日のプーギーレースの大本命は勿論12番のスカーレットスフィア!次点で6番のワイルドファング!大穴は11番のゲドゥルリヒだ!さあ賭けた賭けた!」
「大穴掛けにゃ男じゃねぇ!11番に200z!」
「あんだと?1000zじゃあ高過ぎるだ?これ以上まからんわぁ!」
「あらちょっと、あそこの人そこそこイケメンじゃない?」
「あら本当……でも女連れみたいよ?」
「そうねぇ、残念。」街のやや外れに飛行船で着陸し、市街地の中心部へ向けて歩くこと数分。ミラルパに案内され、俺たちはなんとも騒がしい喧騒の中に放り込まれていた。
「なんか、思ってたよりもずっと賑やかだなぁ。」
心底意外そうに呟くアマネの声に、俺やエドワードは無言で頷いて肯定の意を示した。
流石に交通の便が少々悪い関係上、大都市であるドンドルマには到底敵わないが、謎の病が蔓延しているとは思えないほどの活気だ。さっきの上品で落ち着いた雰囲気の飛行船の中から一変、まさに俺たちの慣れ親しんだ"大衆の雑踏"とでも言うべき、煩いけど居心地は意外と良い独特の空気がある。そんな街の様子を見て、俺がまず始めに抱いたのは、「本当に謎の病など蔓延しているのだろうか?」という印象だった。
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120
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-22 18:30
ID:pJBQclzA
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謎の病など知らぬかとかのように、街は大いに賑わっていた。
それこそ、本当に謎の病など蔓延しているのか、そもそも俺たちが此処へ連れてこられた大前提を疑問に感じてしまうほどに……。この前の太古の病毒事件においてはもっと陰々滅々とした空気が手に取るように感じ取れたのだが、少なくとも今見た限りではそういったものは微塵も感じ取れない。件の事件の時は被害に遭ったのが小さな集落一つだけだったからと言えばそうなのだが、それにしたってこの活気はおかしいのではないだろうか?
そんな事を考えていると、どうやら自然に顔に出てしまっていたのか、俺の疑問にミラルパが答えてくれた。「謎の病が広がっているという割には随分と賑わっているな……とお思いでしょう?実はそうなんです。その謎の病が蔓延しているのは此処、スカラグラートの西部の一部地域のみで、その他の地域は殆ど被害報告が挙げられていないのですよ。」
「成る程……しかしこの街の様子を見ると、どうやら"消毒"については民衆は何も知らぬようだな?」
「それはまあ……この数の人間がパニックに陥る様子をエドワード様は見たいですか?あくまでも"最悪の場合"は実行される"かも知れない"というだけの事を今話すのはあまりにもタイミングが悪すぎますからね。」成る程、徒らに教えて混乱を招く訳には行かないと……しかし、さっきから気になっていたのだが、商人であるミラルパとこの街は一体どういう関係があるのだろうか?
と、聞いてみたら隣にいたアリーチェに溜息で返されてしまった。「いえ、不老のミラルパの名前すら知らなかったのだから仕方ないと言えば仕方ないのだけれど……。私だって噂程度にしか知らないけど、そもそもこの街は不老のミラルパの多大なる支援を受けて成長してきたらしいわ。おかげで実質の最高権力者である知事様でさえ不老のミラルパには頭が上がらないそうよ。」
「え、ミラルパってそんなお偉いさんだったのか?」いつもこちらにへり下るような敬語口調だし、見た目も子供だから、全然そんな感じしなかったけど……。
じゃあこっちも敬語にするべき?などと気楽に考えていると、そんな俺に仮眠から起きたばかりのライカがトドメを刺しに来た。因みにこの男、仮眠から目覚めた直後は寝癖が付いていたのに、刹那の瞬きの後にはまたいつもの髪型に戻っていた。どんなイリュージョンだ。「お偉いさんというか、この街どころかミラルパは大陸各地に手を伸ばしている訳だし……恐らくギルド上層部や王侯貴族にも顔が効くと思うからなぁ。大商会というくらいだから悪どいことも少なからずやってるだろうし……。見た目こそ子供だけど、絶対に敵に回しちゃいけないタイプの人だと思うよ?」
「……ヒェ」俺さっきまでメッチャタメ口で話してたけど消されないよな!?
「そんな恐れる必要はありませんよ。貴方を敵に回しても一文の得にもならないですし、敬語で話されるのは苦手なのでタメ口で大丈夫です。」
よ、よかった。本人から許可を……そういえばさっきからずっと、さも当然のように心の内を読まれてるんだよなぁ。
……なんかいろいろ、気を付けよう。賑やかな喧騒の中、俺は一人決意を新たにした。
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121
名前:兎
投稿日:2018-02-22 20:15
ID:h3fvt/Eg
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遅ればせながら時雨氏シナリオお疲れ様でしたー、体調も完全に戻ったので一気に強化バルファルク戦読ませていただきましたー
やはりアイツの彗星アタックは盛り上がりますねぇ……描写栄えする行動があるモンスはホント好きです。そして難亭氏シナリオ楽しみにしていますねー、とりあえず汚染地域に到着したら水質調査と地質調査、ドスイーオスの活動範囲はさっと調べたいところですね。
ガブラスも飛んでたことですし毒と古龍でオオナズチの線もあるかなー、とか個人的に考えてもいますが... -
122
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-22 21:56
ID:DXCTkSc.
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「掲示板に書き込み出来ません。」
……フガァァァアアッ!一時間くらいで持ち直しましたけどほんと何ですかアレ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーその後、ミラルパに連れられて市街地の中心部を訪れた俺たちは、何やらお偉いさん達と挨拶をさせられたり、気難しそうな学者達にゴタゴタと長ったらしい説明を受けたりしたのだが、その全てを語って仕舞えば非常に冗長になってしまうこと間違えなしなので詳細は割愛させていただく。何せその最中俺は殆ど言葉を発していないのだ。
話の方はミラルパが殆ど受け答えをし、偶にエドワードやライカなどのベテラン組が一言二言質問に答える程度で、俺は完全に何もせず座っているだけの簡単なお仕事に徹していた。とはいえ、学者達のお話の方はそこそこ重要なことも言っていたので、しっかりと記憶に留めてはいるのだが。
まず、俺達の主な任務。
問題のスカラグラート西部は、例の変異ドスイーオスの縄張りである山の麓の湿地に地理的に最も近い位置に存在するため、現時点では謎の病の原因の最有力候補であるドスイーオスを真っ先に討伐し、可能であればドスイーオス或いはイーオスの吐き出す毒液をサンプルとして回収して帰還すること。回収した毒液のサンプルと謎の病の原因物質が同じ性質のものであればその時点で事件は解決。俺たちは報酬を受け取って帰還となる。
しかし、もしそうでなかった場合、調査を続行して謎の病の原因を調査することになる。そこからは具体的な行動例は示されていない。人々に事情を聞くなどして情報を集めるも良し、周辺を探索して手がかりを掴むも良しだ。
調査にかける時間は最大でも一週間。なんでも龍歴院がそれ以上長期間俺達のような一大戦力を一つの案件に集中させるのを良しとしなかったらしい。つまりそれを過ぎればクエスト失敗、そのあとに何が起こるかは想像も出来ない。次に、変異ドスイーオスについて。
変異ドスイーオスの群れは通常の毒に対する対抗手段が通用しない特殊な毒を吐き出し、数ヶ月前に鉱山を群れで襲撃した時には少なくない死者が出たようだ。しかも厄介なことにギルドの推定ではG級個体であり、一般のハンターではまず狩ることは出来ない。その時点で既に当時G級昇格間際だった俺に白羽の矢が立っていたらしい。
変異ドスイーオスが吐き出す毒は非常に異質で、本来出血毒であるはずのそれは、浴びるだけで頭痛、立ち眩み、平衡感覚の喪失、運動機能の低下、吐き気などの様々な症状を併発する劇物となっているらしく、その上解毒薬や漢方薬などのオーソドックスな解毒アイテムもまともに通用しない。対抗手段と言えば秘薬やいにしえの秘薬といった超高級品の回復アイテムで強引に体力を持ち直す程度しか現状見つかっていないようだ。
毒液を一発食らうたびに秘薬系を一つ消費しなければならないなんて考えるだけでも恐ろしい。絶対に被弾しないようにしなくては。そして、変異ドスイーオスの縄張りである麓の沼地について。
現在は変異ドスイーオスのあまりの危険性のため完全に立ち入り禁止になっており、近況は全くの不明であるが、異変が起こる前は稀に非常に濃い霧が発生すること以外は至って普通の湿地帯であったそうだ。キノコ類が多く獲れる環境が揃っていたため、ババコンガやモスなどがよく集まっていたそうだが……。
また、非常に美しい蓮沼もあったそうで、旅人なんかには人気のある観光スポットでもあったらしい。
それ以外でも、洞窟では偶に宝石が獲れたりするらしいので、一刻も早い立ち入り禁止の解除を望んでいる人は決して少なくないらしい。最後に、西部に蔓延している謎の病について。
現在判明していることは、西部に一定期間以上滞在していない者には症状は出ていないこと、謎の病は体内になんらかの異物を取り込んだことによるものであり、少なくとも伝染病などではないこと、そして、体力のない老人や子供を死に至らしめるだけの危険性があることの三つだ。こちらもまたウチケシの実や解毒薬は通用せず、秘薬系で強引に体力を持ち直すしか対抗手段がない。今のところ情報はこれくらいだが、この事件の黒幕となるモンスターは……
1、解る(早!?……あなたの推理も一緒に。
2、まだ全然情報が足りない。 -
123
名前:蟹
投稿日:2018-02-22 23:10
ID:B8nXzJ4E
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濃い霧、となると近年の作品で霧を撒いてステルスしてるオオナズチの可能性が高いけど何らかの毒キノコがババコンガやモス経由で持ち込まれた可能性もあるかも
あるいは鉱山都市ということでモンスターではなく何か未発見の鉱物由来の毒物に周辺生物が汚染された結果というのもあるのかな? -
124
名前:時雨
投稿日:2018-02-22 23:39
ID:gX20EMvk
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鉱山で病気っていうとイタイイタイ病みたいなものかなぁ。
産業が発展してきているって事だから、鉱物を掘り過ぎた結果西部に鉱物由来の毒物が山の地下水から流れ出て…みたいな可能性はあるかも。
モンスターの正体はもう少し探りたいな、もうちょい追求しなくちゃ。 -
125
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-23 20:56
ID:95PfIYuc
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>>123>>124(^言^)ニヤリ...
皆さんも気兼ねなく予想を書いちゃって下さいね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー––––––––この時、既に俺の中にはある可能性が浮かんでいた。でもそれは、現時点では単なる憶測の範囲内でしかなく、これといって根拠の無い仮説に過ぎないもの……。
しかし、もしそれが真実だとするならば–––––––––––––––願わくば、今回の調査で、その憶測が確証にならないことを祈るばかりだ……。
「どうしたんですか?」
……深い思考の坩堝に嵌まりかけていた俺を現実に引き戻したのは、そんなエリクシルの声だった。
どうやら知らず知らずの内に暗い顔を浮かべてしまっていたらしく、エリクシルの顔色は酷く心配げだ。ミラルパに心を読まれまくることといい、もう少しポーカーフェイスを心掛ける必要があるかもしれない。
……ポーカーフェイス云々はともかく、俺の考えていることは現時点では何の根拠もない妄言でしかないのだから、まだ他人に話すには論拠が稚拙すぎる。
だから俺は、咄嗟に取り繕って誤魔化した。「……いや、なんでもない。ただ、竜車に座りっぱなしは疲れたな〜と思っただけさ。」
「あぁ、よくわかります。私もさっきからお尻が痛くて痛くて……広い街ですから西部までと言っても意外と遠いんですね。現状これくらいしか移動手段が無いそうですけど。…………今は言えないのかも知らないですけど、言えるようになったらいつでも言ってください。私達、家族……同然じゃないですか。」……エリクシルの目は誤魔化せない、か。
それでも、俺を信じて言うタイミングを任せてくれるエリクシルの優しさが、今はとてもありがたかった。
それに……そうだよな。あの全ての始まりの日、飛行船が墜落した一件以降、特に当時同じ飛行船に乗っていたランドラット、りゅ〜しか、エリクシルの三人とは幾度となく同じ釜の飯を食ってきた、いわば家族同然の存在だ。「ああ、俺達は家族だ。」
「ふぇ?え……いえ、……っはい!」
「……そろそろ到着するのでその辺にしてくださいませんか?」仲間の有り難みを噛み締めている俺と、何故か無駄に声が上ずっているエリクシルに、ミラルパがジト目で声を掛けた。いや、ジト目を向けられているのは主に俺だけだが……。なにはともあれ、長かった竜車の道も漸く終わりを迎えたようだ。
中心部は賑やかだったが、はたして西部とはどのような場所なのだろうかと、俺はふと気まぐれに竜車から顔を出し、外の景色を見て……絶句した。……視界の範囲内に動く人の姿が全く見当たらないのだ。
少し前まで確かに人が生活していたであろう痕跡は多々あるのだが、肝心のそこに住む人々がいない。人がいないと言う意味では狩場も全く変わらないはずなのに、ただそれだけで俺は激しい恐怖と動揺を覚えている自分がいるのに気が付いた。
人あってこその街、人のいない街は……ただの廃墟だ。「現在謎の病に罹っている人達は街の一箇所に集められていますから……この辺りにはもう殆ど人が残っていませんね。放置された家畜や畑で周囲は荒れ放題です。」
ミラルパはそう言うと、それは深い深い溜息を吐いた。
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126
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-23 20:58
ID:95PfIYuc
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街の中心部に居た時は殆ど感じ取れなかった、太古の病毒事件の時同様の独特な"澱んだ空気"。それが今は、手に取るように感じ取ることができる。名のある吟遊詩人でもあるまいし、その空気を上手く言葉で表すことなど出来ないが……あえて言葉にして例えるなら、『大気に苦しみが充満している』という感じ。……うん、やっぱり上手く言葉にはできない。
「空気が重いなぁ……物理的にじゃなくて心情的に。……そういえば聞いてなかったが、土壌や水質に異常は無かったのか?特に生活用水や畑なんかの土が毒物に汚染されてた……っていうのは珍しい話じゃないだろ?」
王立古生物書士隊として世界各地を巡っているだけあってかこういう場においても比較的余裕があるアマネが、思い出したようにミラルパに問いを投げかけた。アマネの言うことはもっともであり、例えば生活用水として使われている川の上流にゲリョスが縄張りを作ってしまった影響で水が使えなくなり、ハンターに緊急の討伐依頼が出ると言うのも別段珍しい話ではない。
「はぁ、それこそこの手の問題では真っ先に調べ尽くされるものでしょう。何度も検査されて土壌も水質も異常無しと出ていますよ。あと因みに、影響が出ているのは何故か人間だけで、家畜なんかは不思議と無事なんですよね。」
聞いたところによると、ドスイーオスの縄張りは比較的近いとはいえ、それは広大な街の中では比較してというだけの話であり、土壌が汚染されるほど至近距離にあるわけでもなく、またこの近辺の生活用水は地下数百メートルからポンプで汲み上げた地下水であるそうだ。
……しかし、毒のルートは全くの不明で、倒れているのは人間だけ……か。それじゃあまるで……「……まるで何者かが、人間だけを狙ってコッソリ毒を盛っているみたい、だね。」
ライカの口に出した言葉は、奇しくも俺と全く同じ感想だった。
人間だけを狙ってコッソリ毒を盛る……そんな奴に、心当たりが無いかと言えば嘘になるが……いや、奴は俺たちによって捕獲されたはずだし……今回の一件には関係ないだろう。少なくとも奴と同一個体は。「到着しました、こちらが一番大きい隔離施設になります。足元に気を付けてお降りください。」
そこまで考えていると丁度ミラルパに呼ばれたので、即座に思考を中断して竜車を降りる。比較的建物の密度の高いこの街の中でも一際目立つ大きな建物、なんでも今は使われていなかった蔵であったそうだが、今回の一件で一番手頃で広い建物として名前が挙がったため、急遽謎の病に罹った人々を運び込む施設にしたらしい。
本来中の荷物を守る為に備え付けられた厳重な分厚い扉が、ギギギ…と重々しい音を立てつつ、ゆっくりと俺たちに向けて開かれた。
……さっきの街の中心部の賑やかな様子を見て、俺は無意識のうちに今回の一件の規模を甘く見てしまっていたようだ。…俺がそう改めて思い知らされたのは、謎の病に罹った人々が集められている建物の扉が開かれ、その中に繰り広げられる光景を目の当たりにした丁度その時だった。
「これは……酷いわね。」
「似たような光景を何度も見てきたとは言え……とても慣れるものではありませんわ。」この広い建物の中であっても、床一面を埋め尽くすが如く所狭しと並べられた文字通り無数の人々。立ち上がっている人間など全体のおよそ何パーセント程であろうか?厳密にはまだ生きているのだからこういう表現はあまり適切ではないのかもしれないが、素直な印象を述べるならばそこはまさに"死屍累々の地獄"だった。
賑やかな喧騒などその場には一切存在せず、聞こえてくるのは医師団と見られる者達の掛け声と、親しい者の名を呼ぶ声と、瀕死の者の既に言葉のていを成していない呻き声のみ。
横たえられた人々の顔色は一様に蒼白で、時折苦しそうにモゾモゾと蠢いていなければ、本当に生きているのかと疑ってしまうほど、まるで生気が感じられなかった。「……これが、この街の現状です。」
ミラルパの呟きに、俺は目の前の光景が夢でも幻でもない"現実"であることを、嫌にはっきりと自覚させられた。
Q1.この後の行動分担を指定してください。
1、変異ドスイーオス達の狩猟に向かう(四人まで)
→メンバーの装備を指定してください。
2、この場で聞き込みや調査を行う(全員可)
→行動を指定してください。
・受け答えが可能そうである者を選んで情報収集
・周辺の水質、地質の調査
・秘薬を集めるなどして治療を手伝う
など。 -
127
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-23 21:45
ID:dMXZ57C.
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1、ドスイーオス狩猟組はとりあえず書士隊らしいアマネと遠距離狙撃から散弾ブッパまでドス鳥竜の群れ相手の対応力が高そうなエドワードには行ってほしい
でもこれこのままぶっ転したらラギアクルスを冤罪でブッコろして安心したところに追加の地震もらったモガ村みたいにならんやろか…?
ここは狩猟する前に1、2日がっつりストーキングして生態調査などできますかね?
できるならフットワーク軽いらしいライカを加えて3人、ダメなら盾持ってるアリーチェとピーヒャラ笛吹く係のあなたの4人で向かう
具体的な装備は作者のイメージと都合にお任せで2は…残ったメンバーで治療手伝いかなぁ
調査はやりつくされたって言ってるし、この惨状の中アレコレ聞くのは無神経だし
治療に専念して多少持ち直せば重要なことは向こうからしゃべるやろ(適当) -
128
名前:時雨
投稿日:2018-02-23 21:59
ID:gX20EMvk
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ゲリョスの毒は兵器として使われたことがあるってどっかで見たな、何処だっけか…。
ゲリョスぐらい狡賢い奴なら隠れて人にバレず毒を仕込むことも出来るだろうが…。 -
129
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-23 22:14
ID:r9G/sj0k
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これはどうも蟲毒っぽいな
架空のドスイーオスを隠れ蓑に愚かな人間どもがデスレース展開してるパターンやろ -
130
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-24 06:28
ID:bWtX3JvQ
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これは…根じゃな?
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131
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-24 15:59
ID:95PfIYuc
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掲示板に書き込み出来ませんの呪いで投稿出来なかった分を連投です!(`・ω・´)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーここからはチームを二つに分担して行動することになる。
主に、変異ドスイーオス達を狩猟するチームと、この場に残って調査や治療手伝いを行うチームの二つ。どちらも事は一刻を争う予断ならない状況であり、非常に口惜しい事にどちらか一方に戦力を集中させるわけにはいかないのだ。本来ならば、ドスイーオスが本当に今回の件の黒幕であるのか、それを数日間観察して見極めたいところなのだが、残念ながら今の俺たちには僅か一週間しか時間が許されていない。不測の事態に備えるという意味でも、ドスイーオスのためだけに数日間も釘付けにされるのは正直言ってあまりにも大きい、大きすぎる。それに、件のドスイーオスは間違えなくその吐き出した毒液によって少なくない被害……犠牲者を出しており、決して放置していい存在ではない。黒幕であるにせよ無いにせよ、調査を安全に行うために真っ先に狩猟する必要があるモンスターだ。
というわけで、他のメンバーやミラルパとも相談した結果、変異ドスイーオス狩猟は当初の予定通り今日の日没までに行われることとなった。
メンバーはヘビィボウガンのエドワード、ランスのアリーチェ、スラッシュアックスのアマネ、狩猟笛の俺の四人。遠隔攻撃、近接攻撃、防御、支援の4拍子が揃った非常にバランスのいいメンバーだ。
高々ドスイーオスとはいえ、今回の個体は推定G級個体である上一発でも浴びてしまえば命の保証は出来ないというほど強力な毒を吐き出す油断ならない相手だ。未知の土地というだけあって狩猟環境も壊滅的に悪いようなので、万全の準備を行う。残ったメンバーは錬金術師のエリクシルを中心として、この謎の病に対する唯一の対抗手段とも言える秘薬やいにしえの秘薬を調合して治療の手伝いに当たる。もしかしたら体調を持ち直した人の中に何か重要な情報を知っている人がいるかもしれないという打算も込みである。
そして、その秘薬やいにしえの秘薬の材料を提供してくれたのは他でも無い我らが元大商人ミラルパだ。竜車の後部にやたらと巨大な箱が備え付けてあると思ったらそんなものを積んでいたようである。
しかし、流石のミラルパも特にマンドラゴラなどの高級品をタダで譲るわけにはいかないらしい。それはミラルパの財布事情的にではなく、物流や経済への影響的に。
じゃあどうするんだと問うと、実はこの街には支払い能力は十分にあるのだと帰ってきた。最近導入された安価で大量に鉱石を精錬する技術により、今回の事件が起こるまではこの街は非常に潤っており、それによって大量に備蓄してある鉱石類をミラルパが買い取り、その対価に秘薬やいにしえの秘薬の材料を支払ったという形にするつもりであるようだ。役割分担を決めた俺たちは、早速各々の目的を果たすために行動を起こす……が、一刻も早く変異ドスイーオスの狩猟に出発しようとアイテムをポーチに詰め込んだり武器の手入れをしていた丁度その時、そんな俺に向けて一つの人影が近付いて来ているのに気が付いた。
一体なんの用だろうかと、思わず狩猟笛を調律する手を止めてそちらに視線を向けると、そこには仕立ての良い服装をした、黒髪のキリンテールに丸縁眼鏡を掛けた真面目そうな少女がいた。
少女は、俺がそちらに視線を向けたことに気付くや否や、手を振り上げながら駆け寄ってくる。……はて、何処かで見た覚えがある気がするのだが、一体誰だろうか?「やぁ、さっきぶりだね。……パパと違って面倒な挨拶は正直苦手だから、まず自己紹介から入らせてもらうよ、ボクの名前はギムル・ジルヴァート。この辺ではそこそこ名の知れた学者なんだけど、覚えているかい?」
学者……というところで漸く思い出した。彼女は都市の中心部にて俺達に対して説明会を行った学者達の内の一人、その中でもあの変異ドスイーオスについて主に調べていた人物だ。モンスターの話題というだけあって俺も一番真剣に聞いていたので、彼女の説明がなんだかんだ一番頭に残っている。
「ああ、覚えているけど……何の用だ?」
「実はね……突然ですまないのだけど、その変異ドスイーオスの討伐、ボクも連れて行ってもらう事は出来ないかな?」……何ですと?
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132
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-24 16:00
ID:95PfIYuc
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「まず無理ね。」
「そりゃ無理だろうな。」
「普通に無理だ。」
「そんなぁ〜……」見事なまでの満場一致の却下に、学者の少女……ギルムはガックリと項垂れた。一発の毒液が生死を左右する、推定G級個体のドスイーオスの縄張りに、あろうことかハンターでもなんでもない少女を連れて行くなんて、常識的に考えて出来るはずもなかった。
一応、足手まといにならない程度に戦闘経験はあるのか?と聞いてみたのだが、さも当然のように「全く無いけど?」と真顔で返されてしまったので、一瞬どんな反応をするべきか困ってしまった程である。「お願いだよ〜、パパの顔に免じてさ〜。」
しかし、全員から反対されてなお食い下がるギムル。いったい何が彼女をそこまで駆り立てるのか……。
というか、父親の顔に免じるも何も、俺たちはそもそもギムルとはほぼ初対面であるわけで、当然彼女の父親の顔など全く知らない。「ところで、さっきから気になってたんだが、その"パパ"ってそもそも誰のことだ?」
「私のことですよ。」俺の当然の疑問に答えたのは、意外なことにギムルではなかった。
突如背後から聞こえた声に俺が驚いて振り返ると、そこにあったのは疲れたように溜息をつくミラルパの姿……はい、ちょっとタンマ。この二十歳近い人間の少女の父親が十歳にしか見えない竜人族ってどういうことだ。「……といっても、血の繋がりがあるわけではありませんがね。」
「パパは育ての親なんだ。」詳しい話を聞くとこういうことらしい。
今から十五年ほど前、ギムルの住んでいた集落が古龍の襲撃を受けて壊滅し、何の因果か当時5歳だったギムル一人だけが生き残ってしまった。
家族も知り合いも全て失い、天涯孤独の身の上となったギムル……普通ならばそうなった時点でまともな生涯を送る可能性は限りなくゼロに近かったのだが、不幸中の幸いと言おうか…偶々近くに滞在していたミラルパがギムルを拾い、育てたらしい。
幼心に故郷の仇を討つのだと一時期はハンターを目指したギムル。しかし、生まれつき体の弱かった彼女にハンターという過酷な職業は厳しすぎた。自分の手では仇を討つことは出来ないのだと知り、失望感に苛まれるギムル…ミラルパはそんな彼女に一冊の学術書を手渡したらしい。そこから、ギムルは学者としての頭角を現し始めた。体は弱かったギムルだが、その脳のスペックは一級品だった。容姿こそ若いが長き時を生きてきたミラルパによる英才教育もあり、ギムルは同年代どころか学者全体で見ても類い稀に優れた学者となったそうな。
ただし性格的に商人には絶対に向かなかったそうなので、ミラルパの商会は別の人物が継いだようだが。成る程、事情はわかったが……しかしそれでもギムルがミラルパをパパと呼ぶその光景には違和感しかない。本人はまるで気にしていないようだが……。
「ともかく、スケベハンター様達に迷惑をかけないで下さい。お遊びじゃ無いんですよ。」
「……しゅん。」いや、こうして叱られてる光景を見ると完全に親娘なんだが。
というか、口で「しゅん」と言っているところを見るとギムルまだ余裕があるな。「じゃ、じゃあ、せめて捕獲してくれないかい!?ああいう特殊個体は基本的に世界に一匹しかいない超貴重な資料なんだ!」
……まあ、捕獲するくらいなら問題ないか?それよりもここで下手に断って、最悪俺達に無断で付いて来られるような事態になることだけはなんとしても避けなければならない。学者とは一つのことに集中してしまうと非常に面倒な人種なのだ。
そうなるくらいなら捕獲するくらいお安い御用だろう。他のメンバーに相談しても、まあ捕獲するくらいなら…という返答が返ってきた。「ありがとう、恩に着るよ!」
その答えに、パァと顔を明るくし、俺、アマネ、エドワード、アリーチェの順にブンブンと激しい握手を交わすギムル。確かにこの娘は、商人には向いていないかも知れない。
☆☆☆
※第1クエスト開始
〜血溜まりのLycoris〜
メインターゲット:変異ドスイーオス一頭の捕獲及び変異イーオスの殲滅
サブターゲット:変異ドスイーオスorイーオスの毒液の採取
失敗条件:あなたが力尽きる(秘薬系の所持数の関係上毒液を四発以上浴びてしまうと強制失敗。) -
133
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-02-24 16:02
ID:95PfIYuc
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万全の準備を終え、早速俺達は変異ドスイーオスを捕獲するため、奴の縄張りである麓の沼地へと向かった。
道中までの印象は……別段特筆するべきこともない、極々普通の湿地帯という感じ。沼地特有の植物は勿論、菌類や苔などが多く見られ、モンスターといえば偶にモスがいたりする程度。やや道が悪いのが難点ではあるが、そこは非常に平和な世界だった。「キノコの群生地がある。もしかしたらマンドラゴラも採れるかも知れないから採取しておくか。」
エドワードの提案に、反対意見を述べる者は居なかった。マンドラゴラは秘薬、いにしえの秘薬のどちらを調合する際にもキーとなる非常に重要かつ貴重なアイテムである。今回のように秘薬系アイテムを大量消費する必要がある場合、一個でも多く所持しておくべきものだ。
最悪、使い方次第ではそのまま秘薬の代用品として使えるということらしいし。「全然見つからないな……。」
しかし、どれだけ探そうとも、マヒダケや毒テングダケや特産キノコなどは大量に見つかるのだが、肝心のマンドラゴラの姿は全く見当たらない。やはり、こんな近場では粗方採り尽くされてしまったのだろうか?
それでも一本ぐらい残ってはいないものか……とウンザリするほど大量に採れる特産キノコを放り投げながらキノコの群生地を探していると、ふと俺が投げている特産キノコを火傷痕が特徴的な一匹のモスが食べていることに気が付いた。なんか上手いこと利用されている感じがして心底腹立たしいが、そんなことに意識を割いている場合では無いとより奥を探していると、俺はついにマンドラゴラの姿を発見した。……残念ながら、まだ素材として使えない幼菌だったが。
漸く見つけたとテンションが上がった所で見事に落とされ、俺がガックリとうなだれていると、その横を通るようにモスがマンドラゴラの幼菌に近付き、なんと貴重なマンドラゴラを食べ始めた。
しかも、そんな高級品であるマンドラゴラもどうやらこのモスの口には合わなかったらしく、モスは「ブギッ!!」と悲鳴のような鳴き声を上げて逃げ出した。その哀愁漂う後ろ姿に、何処か既視感を覚えている自分がいた。***
「結局、マンドラゴラは見つからなかったわね……。」
アリーチェの呟きに、誰もが一様に暗い表情を見せた。十分程度は探してみたのだが、本当に徹底的に見つからなかったのだ。これはもうこの辺りではもうマンドラゴラは採れないものと考えていいだろう。
「現地調合も出来ないとなると、秘薬系は相当慎重に使わないといけないな……。」
「しかし、慎重になり過ぎて毒にやられました……なんて事になったら洒落にならないぜ?」毒液を食らったら即座に使用しなければ命が危ぶまれるのに、温存しなければすぐに尽きる。そのジレンマにより、結局は毒液に被弾しないというのが一番現実的な解決策であるという、かなり無理のある状況だった。
「とにかく、使い所を見誤らないように……」
俺がポーチの中から秘薬を取り出しつつそう言うと、一瞬黒い影が通過した刹那、俺の手の上から秘薬の姿が消えた。
「……え?」
「メラルーだっ!」あまりにも突然の出来事に、一瞬頭が情報を処理することが出来なくなり固まってしまう俺。そんな中でも冷静だったエドワードが、咄嗟の判断で黒い影にヘビィボウガンの銃口を向け、重々しい射撃音と共に数発の弾丸を放つ。しかし、黒い影は風を切りつつ此方を惑わすような軌道で走り、エドワードが放った弾丸はそれを捉えることは無かった。
直後、現実に引き戻された俺が慌ててその黒い影……メラルーを追おうとするが、時すでに遅し、メラルーは茂みの向こうへと消えていった。……沼地に、一瞬の沈黙が訪れる。
アズリーの呆れたような視線が鋭利なランスの如く俺のガラスのハートにダイレクトに突き刺さり、顳顬を抑えて溜息を吐くエドワードから送られる"何かの圧力"に額からはこれでもかと冷や汗が噴き出し、いつのまにか背後に回って俺の肩にポンと手を置くアマネの表情は恐怖のあまり振り返って確認することすら出来ない。
そんな状況で、俺に言える言葉は一つのみだった。
「……ごめん。」
俺のG級昇格初めての任務は、メラルーとの鬼ごっこという非常に情けないものから始まった。
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134
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-02-24 18:38
ID:IpgeFCM2
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俺の秘薬を盗んだメラルーを探すこと数分、ここで大いに活躍したのは、王立古生物書士隊に所属するアマネであった。
「足跡はコッチに続いているぜ。」
「全然見えないわ……。」
「俺も流石に向きまではわからん。」調査員として通常の狩人よりも長く狩場などに滞在することが多いためか、やたらとサバイバル能力の高いアマネは、食料とするために兎や鳥などを仕留めるための正真正銘の"狩り"の経験も豊富で、素人では気付くことさえ出来ない足跡を発見し、あまつさえその進行方向まで探り当てるなど超人的な技能を発揮し、メラルーを追跡したのだ。
その姿にはさしもの経験豊富なエドワードも舌を巻いているが……足跡があることがわかるだけで充分異常なのは言うまでもない。いや、普通は見えないから。そうして、アマネの意外な技能を垣間見つつも、俺たちは拍子抜けするほどアッサリと件のメラルーの元まで辿り着いた。茂みを掻き分け、狭い洞窟のようになっている道を通り抜け、鬼ごっこは終わりだと言わんばかりに、メラルーの居場所に突入する。
……そして、誰もが言葉を失った。俺から盗んだ秘薬を握りしめ、ガックリと項垂れるメラルー。その傍らには、既にピクリとも動かなくなったもう一匹のメラルーが、静かに横たえられていた。
俺達が恐る恐ると近付くと、項垂れていたメラルーはふと此方を見上げ、俺にポイと盗んだ秘薬を投げ返してきた。「それはもう返すにゃ。もうオイラには要らないモノにゃ……。」
たったその一言で、そのメラルー……ひいてはその傍らに横たえられたもう一匹のメラルーに何があったのか、そのおおよそを察する事が出来てしまった。
おそらく、この横たえられたメラルーは何らかの理由で件の変異ドスイーオスの毒液を浴びてしまったのだろう。それをなんとか治そうとしたこのメラルーが、俺から秘薬を奪ってきたけど、その時にはもう……と、まあそういう事なのではないだろうか?
ならば……残酷な事をしていると自分でもよくわかるのだが……この貴重な情報源を逃す訳にはいかない。「そこのメラルーは、ドスイーオスにやられたのか?ソイツはどんな奴だった?教えてくれ……そうすればお前が秘薬を盗んだ件はチャラにしてやる。」
「ちょっとあなた……」メラルーの様子も顧みず、ズケズケと質問を投げかける。そんな俺のあまりの言い草にアリーチェが咎めようとするが、俺はそれを無言で制した。
既にコイツのせいで余計な時間を取られてしまった。悠長に説得している暇など無い。多少同情はすれど、今は任務を優先させるべきなのだから。「どうなんだ、答えろ。」
「…………ドスイーオスなんかじゃないにゃ。」
「何?」ドスイーオスじゃあ無い?まさかこの事件の中枢にいるのはドスイーオスでは無かったのか……?いや、しかし確かに変異ドスイーオスの姿は確認されているわけで……。
「アレはもっと禍々しくて、もっと怖ろしくて、もっと混沌とした化け物にゃ。もう少し西に行けばわかるにゃ……湖も、土も、空気も、植物も動物も鳥も虫もっ……みんな、みんな死んだ、死んでしまったにゃ。」
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135
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-02-24 18:39
ID:IpgeFCM2
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「––––––アレはもっと禍々しくて、もっと怖ろしくて、もっと混沌とした化け物にゃ。もう少し西に行けばわかるにゃ……湖も、土も、空気も、植物も動物も鳥も虫もっ……みんな、みんな死んだ、死んでしまったにゃ。」
そこまで言うと、メラルーは蹲ってガタガタと震え出した。
どうやら、ここより西……つまり件の変異ドスイーオスの縄張りとされているところに足を踏み入れるには、相当の覚悟が必要になりそうだ。事は既に俺たちの想像の範疇を超えているのかもしれない。
僅かに込み上げる手の震えが武者震いであると己に信じこませつつ、俺はメラルーを何とか落ち着かせるよう努めた。「ここから東に人の街がある。そこに俺の仲間がいるはずだから、エリクシル、ライカ、イオン、ミラルパの内誰かを見つけて詳しい事情を改めて話してくれないか?」
「……っさっきからしつこいにゃ!秘薬を盗んだ分はもう返したにゃ!もう一人にしてくれにゃ!……相棒が死んで、もう生きてる意味なんて無いのにゃ……。」だが、メラルーは俺の手を払いのけ、涙を流すこともできずに嗚咽した。大切な者を失う……その悲しみは、俺には到底理解出来ない。絶対に理解したくも無いがな。
しかし、そんなメラルーに、アリーチェが優しく声を掛けた。「その相棒だけど、何とか容体を持ち直したわ。」
「……にゃ?」一瞬理解に詰まり、ポカーンと口を開けて数秒の間呆然とするメラルー。そこで漸く理解が追いついたようで、バッと素早く振り返って横たえられていたもう一匹のメラルーの方を見た。
「全く、これだから素人は困るんだ……仮死状態だったよ。まだ死んではいなかった。もっとも、あとちょっと対処が遅れてたら危なかったろうけどな。」
「しかしあなたよ、本当に良かったのか?貴重な秘薬をこんなところで使って……」そんなメラルーの視線の先にいたのは、僅かだが息を吹き返しているもう一匹のメラルーと、その容体を診つつやれやれと溜息を吐くアマネ、そして心配そうな視線を俺に向けるエドワードの姿だった。
そう、俺がこのメラルーと話している間、アマネ達には秘薬でもう一匹のアイルーの治療を試みるようコッソリと頼んでいたのである。正直ここで秘薬を使ってしまうのは痛かったが、まあ例の毒に本当に秘薬が通用することを確認できたので良しとしよう。それから、俺は寝覚めが悪いのは心底嫌いだ。「……っ!恩に着るにゃ!」
「何、俺も目の前で死なれるのは寝覚めが悪いからな……。じゃあ、ソイツも連れて東の街に行ってくれるか?恩に着るなら、エリクシル、ライカ、イオン、ミラルパの誰かにこの周辺の事を知っている限りのことを話してくれると嬉しい。」
「お安い御用にゃ!泥棒稼業で培ったオイラの脚力と情報量、とくと見せてくれるのにゃーっ!」俺に深々と一礼したメラルーは、そう叫びながらもう一匹を背負って東の地に向けて一直線に駆け出した。自慢にならない自慢をしていたが、俺達を翻弄したその脚は本物である。情報量とやらも本物であるこを祈るばかりだ。
取り敢えず、秘薬という大きな代価を支払ってしまったが、ここら周辺の事に詳しい情報屋を確保することには成功したので良しとするか。さて……
「ヤバイよ、どうしよう。アリーチェ、出来るだけお前の盾で守ってくれ!」
「……色々台無しよ。」これで、俺が毒液を浴びていい回数は、たったの二回だ。
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136
名前:蟹
投稿日:2018-02-24 19:24
ID:B8nXzJ4E
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毒というよりもはや瘴気なんじゃないですかねこれ。
瘴気…ヴァルハザク……歴戦……ウッアタマガ冗談はさておき、この手のえげつねえ毒の類を扱う相手といえば病魔とジジイネルスキュラ(すまない、名前は忘れている)がいたような。
でも混沌って言ってるし渾沌マガラでも来たんじゃないですかね?(適当) -
137
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-02-24 21:42
ID:95PfIYuc
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–––––––––何という土地だろうか……。
メラルーと別れた後すぐに西を目指して歩き始めた俺達は、間も無くして彼の言っていた言葉の意味を深く理解した。
先程までの平和な景色など、今はもうどこにも存在しない。「こりゃあ、どう考えても普通じゃないな……」
アマネの口から、そんな呟きが漏れて出る。
奇しくもその言葉は、この場にいる全員の感想を代弁していた。なんとそこには、文字通り俺達以外に動く者の姿が一匹たりとも存在してなどいなかったのである。ケルピやアプトノスといった草食モンスターはおろか、その他の小動物も、鳥も、あまつさえ虫でさえも……。草花は立ったまま枯れ、巨木は根から腐って崩れ落ち、通常の毒沼でも平然と生息できるキノコ類ですら、その場に生きているものはただの一つとしてありはしなかった。
ただただ見渡す限り、奈落のようにドス黒い沼地が広がっているのみ……。––––––––生命の息吹から見放されている。
見晴らしが良いといえば良いのだが、どう考えてもそこは命の在るべき所では無かった。"全てが死んでいる"というメラルーの言葉は比喩でも誇張でも無かったのだ。
もし、足鎧の下に、この冷たく残酷な泥から足を守るためにとミラルパから譲り受けた薄い足袋を着用していなかったら、俺達だって今頃どうなっていたかわからない。それほどまでに、そこには濃密な死の気配が漂っていた。「そろそろマスクも付けよう。」
俺がそう言うと、他の3人もそれに従って口を覆うように特殊なマスクを装着した。
今回、ミラルパから譲り受けた装備は大きく分けて三種類。一つは耐水、耐毒加工を施されたボディスーツのような特殊インナー。もう一つは特に重要が高い手足を守る為の薄手の手袋と足袋。そして最後にこのガスマスクだ。
どれも最先端の技術が用いられた、まだ一般販売さえ行われていない貴重品であり、それを4セットも用意してくれたミラルパには本当に頭が上がらない。
とはいえ、それらの装備も決して欠点がないわけではない。耐毒インナーは動きを阻害しないために伸縮性を高くした関係上、一度破れてしまうと脆いし、ガスマスクは一定時間おきにフィルターの交換が必要だ。それでも、この生きとし生けるものを拒む沼を見れば、無いよりは数千倍マシだとさえ思えてしまう。冷たい泥に足を取られ、思うように前に進めない。
マスクを着用してなお消えぬ不快な刺激臭に、思わず顔を顰める。
緊張によって唇がカサついているのが、否が応でも分かってしまう。
常に身を苛み続ける悪寒を振り払うように、幾度となく身震いを繰り返した。
まるで、世界に俺たちだけが取り残されてしまったかのような……そんな拭い難い不安感が、ジンワリと滲むように湧いてくるのだ。しかし、そんな中でも、確かに存在する仲間の姿を支えに、俺たちは歩みを進め続けた。
……さて、ここからどちらに行くべきか。Q.向かう方向を指定してください。
1、観光名所だったという蓮沼方面
2、宝石が採れるという洞窟方面
3、稀に濃霧が発生するという平地方面
4、その他(自由枠) -
138
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-25 02:14
ID:LBemxso6
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今日も酔っぱらってるので選んでいこう。
金欠ハンターのあなたさんは2で今後の装備の資金を稼いでいこう、そんなことやってる時間はないって?背に腹は代えられないからな。 -
139
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-25 12:35
ID:7Y.5mBOk
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あっおい待てい
石取ってサンプルにすれば地質汚染の観点から研究が進むかもしれないゾ
あとどうせ汚染宝石なんかろくに売れないんだよなぁ…… -
140
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-25 12:53
ID:tLBqqyxo
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狂竜結晶「せやな」
鉱石が無関係だったら毒×鉱石で結び付きそうなバサルモスは消えそうかな -
141
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-25 13:57
ID:iQNy11Cw
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グラビモスも怪しいかな。
沼地にも現れるし、鉱石食故に有毒鉱物を取り込んでしまう可能性もあるし。
時折霧が発生する、というのはグラビのガス攻撃を表しているとも考えられる。ガブラスは……古龍に限らず屍肉がある場所なら何処にでも湧くだろうし。
さらにシナリオ中に出てきたモスが火傷を負っていたので、火属性モンスターの存在も示唆しているのかなと。>>143
見返してみたら確かにあったな。このモス逞しく生きてたんやな
というか前スレの目次が途中で終わってて見逃してた。暇氏ぃー -
142
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-02-25 15:48
ID:Znrt97HA
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しばし悩んだ末、俺達は偶に宝石が採れるという洞窟方面へと向かう事にした。洞窟というのは風雨を凌げ、気温も一年を通して安定しているため、多くの生き物が住処とする場所である。もしかしたら変異ドスイーオス達もそこをアジトとしているのかもしれないと考えたのだ。別にバルク装備を作った関係上金欠なので、換金できる高価な宝石が手に入ったらいいな〜とか考えてはいない。ないったらない。
この洞窟はどうやら古い鍾乳洞であるようで、天井から垂れ下がる無数の鍾乳石が、一種幻想的な風景を作り出している。入口が少々上り坂になっているためにあの冷たい泥も入って来ず、気温は精々10℃程度と沼地の洞窟としては比較的過ごし易いため、やはり生き物は存在しないとは言え、外の環境よりは幾分かマシに思えた。
そして同時に、過ごし易い環境ということは、それだけドスイーオスがこの地を根城としている可能性が高いということ……ポチャン……と、一滴の水が落ちる音が洞窟全体に反響する。
天井と床から無数に生える鍾乳石が、肉を引き裂く鋭利な牙のように……先の見えない洞窟が、全てを吞み込む怪物の胃袋のように……俺達を招き入れた。
腰から吊り下げたランプが、暗黒の世界に辛うじて光を落とし、見通すことの出来ない洞窟の奥を淡く照らす。甲高い水滴の音は、気付いた時には暗い静謐の底へと呑まれて消えていた。
***
「ほう、入り口付近は鍾乳洞だったが、奥は火山洞なのだな。偶々繋がったのか……或いは大型モンスターの通り道か。」
エドワードの呟きの通り、洞窟はある程度奥まで進むとその表情を一変させた。途中までは滑らかな鍾乳石によって形成される鍾乳洞だったのだが、今歩いている所はゴツゴツとした岩肌の露出した火山洞に変化している。
勿論宝石が採れるというのは考えるまでもなく後者であり、俺は宝石を求めて……コホン、汚染地の地質サンプルの回収の為に鉱石を採掘しつつ奥を目指した。しかし、結果から言えば、どれだけ洞窟の奥へ進もうとも、俺達が問題の変異ドスイーオスと邂逅することは決して無かった。
その代わりになのか、洞窟の一番奥地で俺達が目にした物は……「酷い臭いだ……大型鳥竜…多分ゲリョスあたりだろうな。」
……無数の糸のようなもので拘束された、毒怪鳥ゲリョスの"腐乱死体"であった。抉れたような肉面はドス黒く変色しており、死体の一部はドロドロに液状化するまで崩壊し、白い骨がむき出しになっているところまで見受けられる。
最早生きていた頃の面影を残していないそれは、洞窟という狭い空間の中に、鼻を突くような異臭、刺激臭を充満させていた。
そして、その傍らには、何処かで見たことがあるような赤紫色の結晶。宝石のようなそれと、ゲリョスを取り巻く糸のようなもの、そして何より被害者がゲリョスである点は、俺達にあるモンスターを連想させた。「……ネルスキュラ?いやしかし、奴等はこの周辺地域では確認されていない筈だ。」
影蜘蛛ネルスキュラ……鋏角種に分類されるそのモンスターは、一見すると蜘蛛のような姿をしており、頑丈な糸を用いてゲリョスを捕食、その皮を身に纏うことで苦手な電撃から身を守るという特異な生態を持つことで知られている。
そのモンスターの主だった外見的特徴は、蜘蛛のような姿、全身に纏ったゲリョスの皮、そして、背中に生えた巨大な紫色の結晶……。
そして、奴の主力たる武器は、大型モンスターの体重さえ支える強固な糸と、多彩な毒の扱いである。それは奇しくも、今の状況と見事に合致するものがあった。
ならば、一連の事件についても、ネルスキュラが関わっているということなのか……?
だが、その仮説に対し、モンスターについての知識が豊富なアマネの様子はどこか懐疑的だ。「確かにネルスキュラの……特に亜種は幼生の時にバルーニングという空の旅をするからな……それでここに流れ着いてしまった可能性も無い訳じゃあない。ただ……」
「ただ……?」
「元々"綺麗好き"なはずのネルスキュラがこんなことするかなぁ、と思うんだよなぁ。」グチャグチャに食い荒らされた形跡の見られるゲリョスの死体を眺めて、アマネはそう呟くように言ったのだった。
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143
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-25 16:56
ID:6l665hoE
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>>141
多分このモスって前スレの暇氏のシナリオに出たヤツじゃないかね?スキュラ、スキュラかー…
もしかして兎氏に出てきたあのネルスキュラ?でもあれって寿命でなくなってそうだしなぁ -
144
名前:難亭・凝態(半ギレ)
投稿日:2018-02-25 21:49
ID:DXCTkSc.
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コメントに使用できない文字が含まれています。
( ˙-˙ )......。
今度はなんやねん……。
どこもオカシとこないいつもどーりの文やろ。
どんだけ執筆妨害したら気が済むねん。……ちょっと検証してみるわ。(敬語崩壊中) -
145
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-26 12:20
ID:pJBQclzA
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あー、あの字ってダメだったのですか。
因みに、タイトルはミスじゃ無いですよ〜。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「取り敢えず秘薬は三ダース調合し終えました、比較的症状の重い方から処方してください。」
「了解しましたわ。エリクシルさんもあまり無理はし過ぎないようにしてくださいませ。」
「私は大丈夫ですよ。あとそれから、ずっと働き詰めだった医師団の皆さんに元気ドリンコを用意したので、宜しければ飲んで頂けるようお願いして頂けますか?」
「じゃあそっちは僕に任せて。彼等にまで倒れられたら洒落にならないからね。」あなた一行が沼地を探索していた丁度その頃、エリクシル、ライカ、イオンの三人は隔離施設にて懸命に治療を行っていた。常人離れした作業速度で、しかしミスすることもなく秘薬を調合し続けるエリクシルと、熟練の足捌きで無数の患者が敷き詰められた床をスルスルと駆け回るライカとイオン。最初は三人で秘薬を調合していたのだが、最終的にこの形が一番効率がいいということで落ち着いたのである。
ただし、幾らエリクシルと言えども凄まじい量の秘薬を調合し続けるのは流石に集中力が持たない。そんな彼女に助け舟を出したのは、他ならぬギムルであった。「ギムルさんもありがとうございます。」
「いやいや、コッチもお仲間に無理言っちゃったしね。それに、お礼を言うのは寧ろボクの方さ。キミたちが居なかったらここまで大規模な治療は出来なかっただろうからね。」
「そういえば、医師団の人達が言ってましたね。この謎の病の治療と原因の究明を一番熱心に調べてくれたのはギムルさんだったって。」
「いやまあ……一度気まぐれに手を出しちゃうと中途半端なのは嫌だからね。それにボク、謎って大好きだし!」
「ああ、その気持ち分かります!私も新しい錬金術のレシピがもう少しで出来そうな時とか、思わず徹夜しちゃいますもん。」一流の科学者であるギムルは、エリクシルと談笑しながらもしかし決して手を止めることはなく秘薬の調合をし続ける。流石にその道の本職であるエリクシルには到底及ばないが、ギムルは手先が器用であるからか特にミスをすることもなく秘薬を調合することが出来ていた。
話の内容はとても女子のそれではないが、その様子は遠目に見れば仲のいい年頃の少女二人が楽しく喋っているようにしか見えない。錬金術師と科学者、両者は根本を辿れば同じ学問を極めんと欲する者達であるからか、二人の相性はとても良かったようだ。「そういえば、エリクシルちゃんもバルファルク討伐のメンバーだったっけ?その細い身体のどこにそんな力があるのやら……人体の不思議というのはボク如きには一生かかっても解き明かせそうにないよ。」
一瞬空いた片手でエリクシルの細い腕をワシワシと揉みつつ唸るようにそう呟くギムル。見た目も触り心地も完全にか弱い乙女であるにも関わらず、これでも古龍の討伐経験のある一流に近い狩人であるというのだから、ハンターというのはつくづく意味のわからない連中である。
まあそれは、重心の偏りやすいランスを使いながらにしてあの美貌を保ち続けるアリーチェや、エリアルスタイルによって立体的かつ高機動で銃弾をばら撒く戦闘スタイルでありながらあの脚線美を維持するイオンも同じ事なのだが。「それは……私はそもそも比較的力を要求されないライトボウガン使いですし。」
「それでも過酷な狩場を駆け回ってるのには変わりないでしょ?体の弱いボクからするとその時点で十分凄いよ。あ、ところでさ、一つ聞きたい事があるんだけど……」
「はい、何ですか?」今度は何を聞かれるのだろうと普通に答えてしまうエリクシル。しかし、その直後に彼女はギムルの表情が嫌に真剣であることに気が付いた。
やや間を置いて、ギムルはエリクシルにその問いを投げかける。「……古龍と対峙した時、どんな気分だった?」
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146
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-26 16:08
ID:95PfIYuc
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「……古龍と対峙した時、どんな気分だった?」
ギムルは真剣な顔でエリクシルにその問いを投げかけた。それは或いは、幼き時に古龍によって全てを奪われた少女の、ハンターに対する未練のようなものであったのかも知れない。
勿論、突然そんな質問を受けるとは思いもしなかったエリクシルは、その内容も相まって数秒の間言葉を詰まらせてしまう。しかし、数秒の沈黙の後、エリクシルの小さな口から突いて出たのは、彼女なりの正直な気持ちだった。「……勿論怖かったけど、でも不安じゃありませんでした。」
「へぇ、どうしてだい?」そんなエリクシルの返答に、ギムルは意外そうな顔を見せる。怖いのに不安ではない、その感情はギムルには到底理解し難いものであったのだ。
しかし、それでもエリクシルはハッキリと自信を持ってこう言うのだ。「–––––––信頼できる仲間がいたから……」
その姿が、身体の為にハンターになることが出来なかったギムルには、少し眩しく見えてしまった。
「……それは主にあなた君とか?」
「ふぇ?は…はい!あ……いやでも、ミーシャちゃんやエリザベートさんも勿論信頼してますよ!」
「はは、キミって分かりやすいねぇ。ういやつめ。」
「か、からかわないで下さいよ!もう!」***
一目散に街にやって来たは良いものの、メラルーの姿では街に入るのは難しいし、ましてや人探しなんてもっと困窮を極めるだろう。この世界の人々には一般にメラルー=泥棒というイメージが広がっており、事実このメラルーは泥棒稼業で今日という日まで生きて来たのだ。勿論そうでないメラルーだって少なからず存在するだろうが、その泥棒たるメラルーを確認もせずそう易々と街に入れる者など余程のアホでも無い限りいはしない。
しかし、メラルー達だって馬鹿ではない。実は、彼等の必須携帯道具の中の一つに『白粉』というものがあり、これを全身に塗してアイルーに変装することによってメラルーは頻繁に人間の生活圏に出入りしているのである。そのため、要人や重要物資が出入りする場所ではネコートさんなどの例外でも無い限りはアイルーはまず水を掛けられて変装で無いことを確認される。
とは言え、アイルーが社会に多く溢れ始めている今、どこかしこでもその確認をするようなことは到底現実的ではなく、そのような事が行われているのは極々一部に限られるのだ。つまり、どういうことかと言うと、
「街に侵入するくらい朝飯前なのにゃ。」
「それを大路で言う奴があるかニャ!」まったく怪しまれるような素振りを見せず堂々と街に侵入することに成功したメラルーは、ドヤ顔でそう言い放ち、先刻目を覚ました相棒に思いっきり頭を引っ叩かれていた。
「にゃっ!?白粉が落ちたらどうするにゃ!命の恩人になんて態度にゃ!」
「それとこれとは話が別ニャ!そもそも、アタイの命の恩人はアンタじゃなくて人間だってさっきアンタ自身が話してたんじゃニャいか!」
「それはそうにゃけど……っと、こんなことしてる場合じゃ無いのにゃ!早くエリクシルかライカかイオンかミラルパっていう人を探さないといけないのにゃ!」
「はい、私がどうかしましたか?」二匹で言い争うメラルー達の背後から、突如少年の声が発される。ついさっきまで何の気配も無かった場所に突如人間らしき気配が現れたため、メラルー達は即座にその場を飛び退いてそれぞれの護身具に手を掛けた。嫌われ者である彼等は街の中であろうと決して気を抜かないのだ。
「まあまあ、そんな怖がらないでくださいよ、二匹のメラルーさん。」
しかし、完全に気配を殺していた少年……ミラルパは、何でも無いことのように二匹の正体を看破し、飄々とそう言ってのけた。その様子はまるで自然体であり、悪意も敵意も微塵も感じられない。つまり、この先の行動が完全に読めないのである。それは二匹にとってある意味、敵意を持たれているよりも怖い相手であった。
「完全にバレてるニャ、どすうるニャ?」
「あの手の相手は戦っても損するだけにゃ、勝っても、負けても。悪い事をするつもりはにゃいのだし、正直に事情を話すのはどうかにゃ?」
「……判断は任せるニャ。」
「つまり、丸投げかにゃ……はぁ……お察しの通りオイラ達はメラルーにゃ。だけど別に、悪さをする為にここに来たわけじゃないにゃ、今回はあなたっていうハンターに頼まれて来たのにゃ。」 -
147
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-26 20:58
ID:bWtX3JvQ
[編集]
半ギレは草
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148
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-02-26 22:14
ID:Znrt97HA
[編集]
悲報、戦闘パート突入前に三万文字を超える。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「そうでしたか、スケベハンター様に助けられて。」
「あのハンターそんな酷い異名付いてたのかにゃ……まあ、今はそんなことはどうでもいいにゃ。話した通り、周辺の環境にはかなり詳しいつもりにゃから、聞きたいことがあったら聞くといいにゃ。まぁ、勿論答えられないこともあるにゃろうけど。」
「いえいえ、こちらも正直立ち入り禁止区域の情報には飢えていましたから丁度良かったですよ。」その後、ミラルパに連れられて隔離施設にある小部屋に案内されたメラルー達は、ここまでノンストップで突っ走ってきた為にカラカラになった喉を水で潤しつつ、一連の事情を説明した。勿論、ミラルパだってメラルーの言うことを初めから信用していたわけではないが、彼が先程言ったように「立ち入り禁止区域の情報に飢えている」というのも紛れも無い事実である。もし、このメラルーの言っている事が真実であったとしたら、これ以上ない貴重な情報源であることは確かなのだ。何しろ、件の変異ドスイーオスの群れの影響で周辺地域の調査も思うように進まず、周辺一帯の全面立ち入り禁止になってしまってからは完全に手付かずなのである。そうでなくとも、謎の病の第一例の報告から調査隊の結成までは幾ら迅速に対応しようとも一週間程のタイムラグが発生してしまっていたのだから、その当時の周囲の様子の事を良く知る人物というのは非常に貴重なのだ。
真偽は話を聞いてから問えばいいこと、話を聞くだけなら損はしないのだから。「では、取り敢えず自己紹介から入りましょうか。私は商人のミラルパと申す者でございます。」
「不老のミラルパ、お噂はかねがねにゃ。オイラの名はシガレット、そしてこっちが相棒の……」
「シフォンニャ。」ミラルパの流れるような礼に対し、口調こそ変わらないが落ち着いた様子で至極丁寧に応じるシガレットと、投げやりな態度のシフォン。この場合はシフォンがどうこうと言うよりは、寧ろシガレットが異常なのであろう。というか、沼地であなた一行と邂逅した時とはエライ違いである。まぁ、相棒を失いそうという状況で冷静さを失うのは無理からぬ事であるが……。
「では、シガレット殿にシフォン殿、早速ですが今から一ヶ月前まで遡って今日までの沼地の様子をお聞かせ願えますか?」
「これまた随分とアバウトな指定にゃ。そんだけ情報が足りて無いってことにゃ?まあどっちでもいいにゃ。……一ヶ月前というと、丁度土砂降りの雨が降った時だったかにゃ……。」***
今から一ヶ月程前、それは丁度謎の病の第一例が発見されたのと丁度同じ時期、この周辺地域一帯にこの時期としては近年稀に見る大雨が観測された。とはいえ、もともと雨の多いこの地域のこと、その程度の雨でどうこうなるような事もなく、少なくとも人間の間では「なんか大雨だったねー」程度の認識で終わったのであった。
しかし、メラルー達にとってはそれだけで済む話ではなかった。その大雨と同時に謎の毒を含んだ泥が何処からともなく大量に流れ込んできたことによって、もともとその周辺を縄張りにしていたババコンガが立ち去り、その代わりと言わんばかりに元々もう少し山に近い場所を縄張りとしていた変異ドスイーオス達が進出してきたのだ。
それより約半年程度前からもう少し奥地でその姿が確認されていた変異ドスイーオスは、進出すると同時にその特異な猛毒を所構わず吐き散らし、たちまちその周辺を毒浸けにした。撒き散らされた猛毒が生き物を殺し、草木を枯らし、あっという間にあの死の土地の完成である。「そういえば、同じ時期に凄い地響きが鳴ったことがあったにゃ?」
「ニャ、アタイが動く山を見た時ニャ。」
「ああ、そういえばそんな寝言を言ってたにゃ。」
「寝言じゃニャい!ホントニャ!」ともあれ、あんな状態になってはとても住める筈がない。メラルー達は次第に活動域を人里近くへと追いやられていったそうだ。それでもシガレットは自慢の脚力を活かして何度かその地の様子を見に行った事があり、その途中で何度も正体不明の黒い靄や、太い糸のようなもの、不自然な形の岩の塊、更には烈しい閃光などを目撃したらしい。
もっとも、いずれも遠目に見たという程度だが。「アバウトな質問で答えられるのはこんな感じかにゃ?あ、あと気になってたのは、最近イーオスの姿をめっきり見なくなったのにゃ。いない訳じゃにゃいんだけど、かなり減った気がするのにゃ。」
「ほう、イーオスの数が?」 -
149
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-02-27 17:54
ID:IpgeFCM2
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>>150え?そうなんですか?
……ホンマや、沼地にいますわ。なんでいないって思ってたんでしょう?原生林と遺跡平原のイメージが強すぎたか……或いは巣が無いからか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「やれやれ、どうしたもんかね。」
「ギギネブラ……またこの地域には存在しないはずのモンスターよ。」毒怪竜ギギネブラ。それは凍土の洞窟などの寒くて暗い場所に好んで生息する大型の飛竜であり、原始骨格飛竜特有の高い運動能力と、毒に関して本種の右に出る者はいないというほどに多彩な毒の扱い、見かけに似合わず優れた知能により、非常に危険度の高いと言われているモンスターだ。本種は単性生殖を行うことで広く知られており、産み出す卵塊から大量のギィギと呼ばれる小型モンスターを排出する。このギィギは他の生物の血を吸って成長し、毒液を吐き出すようになるので囲まれると非常に危険なのだが、ギギネブラとの交戦中は卵塊を破壊するなどの対抗策を行わない限り、基本的に無数のギィギに囲まれることになるので、そういった意味でも非常に厄介なモンスターである。
そして何よりあのフルフルと同じように見た目が頗る気持ち悪い。戦うとしたらじっくりと動きを観察して戦いたいのだが、残念ながら全モンスターの中でも屈指のじっくり見たくない見た目をしているのである。なので、熟練のハンターであってもギギネブラのことは苦手とする者も多い。……もっとも、それは生きていたらの話であるが。
死んでから相当の時間が経ってしまったのだろう、既に骨だけになってしまったギギネブラの亡骸に、俺達は静かに手を合わせた。
ここに来てから、まだまともに生きている生物に遭遇していない。いく先々死ばかりだ。「蓮沼の方へ行ってみよう。水場ならば何か見つかるやも知れぬ。」
そんなエドワードの提案に、異を唱える者は居なかった。水はあらゆる命の源、そこであれば、ドスイーオスが見つかるかも知れない。この時の俺達の素直な心情を述べるならば、とっととドスイーオスの捕獲を完了させてこんな場所からはおさらばしたかったのである。というか、いい加減生きている存在を見たかったというのもあるが…。
洞窟からやや遠く、元観光名所であったという蓮沼に向かう俺達。その道中でも、やはり生き物らしき生き物はいない。先程からドスイーオスはおろかイーオス一匹見つけていないのだ。「ずっと気になってるんだがな……こんな所でドスイーオス達は本当に生きていけるのか?」
アマネのその疑問は、ある意味当然のものであった。
モンスターだってこの世界に生きる動物の一種である。そうであるからには当然、何かを食べなければ生きてはいけないのだ。しかし、この場所はどうだろうか?草木は枯れ果て、動物の姿は見えず、キノコでさえ存在しない。あるのは猛毒の冷たい泥と古い大型モンスターの亡骸だけだ。
果たしてそんな場所に、れっきとした肉食竜であるドスイーオスが住んでいられるだろうか?答えは否だ。俺がドスイーオスならまず他の場所へ移ろうとするだろう……。そんな疑念を抱きながらも、立ち枯れた植物の枝を掻き分け、ひたすらに蓮沼を目指して進み続けると、ふと一番先頭を歩いていたエドワードが立ち止まり、数秒の沈黙の後に、こう言った。
「……ここに来てからずっと漂ってた異臭の原因がわかったぞ。」
その言葉を発すると共に、エドワードは立ち枯れた植物の枝を払いのけ、平坦な地面へと飛び出した。それに続くように、アマネ、アリーチェ、そして最後に俺が、枝の細道を抜け出し、そこに降り立つ。
顔に張り付いた古い蜘蛛の巣を取っ払い、俺はゆっくりと顔を上げた。その先に広がっていたのは、巨大……いや、いっそ広大と言っていいほどの面積を誇る沼であった。しかしそこには……かつての観光名所の面影など無く……「–––––––いったい……、」
水面を埋め尽くすような、ドロドロ液状化して異臭を発する魚の死骸。水辺に一列に並ぶかのように斃れた草食動物の白骨遺体。そして、無残に破壊された大きな台車と、その傍らに放置された木箱。
「いったいこの沼地に、何が起こってるっていうんだ……っ!」
……美しき蓮沼は、今は何より醜い猛毒の温床に変じていた。
-
150
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-27 20:06
ID:eWqmPjXs
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書かれてしまった後でこう言うのも何だが、ネルスキュラは普通に沼地に出るよ。
この世界線では未発見、ってことなら良いんだろうけど…… -
151
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-02-27 22:15
ID:DXCTkSc.
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***
どろり、どろり、と沼の底。
ずぶり、ずぶり、と毒の水。
ひそり、ひそり、と死の淵へ。客を招かん、黄泉の宴。ずるり、ずるり、と這い出でる。
ぱたり、ぱたり、と斃れ伏す。
こそり、こそり、と死の淵へ。我を招かん、人の贄。ゆらり、ゆらり、と彷徨いて
ひらり、ひらり、と散り行きて
ぶらり、ぶらり、と死の旅へ。誰そ招かん、沼の底。どろり、どろり、
……どろり、
***
「結局、ドスイーオスの痕跡は無し……か。これは本格的に移動した可能性を検討しなければならないな。」
洞窟の方面にも、蓮沼の方面にも、結局ドスイーオスはおろかイーオスの姿さえ見つけることは出来なかった。残るは稀に濃霧が発生するという平地方面のみ。これで見つからなかったら、一度街に戻って報告しなければならない。
最悪のパターンは俺達とドスイーオスが入れ違いになって、今まさに街がドスイーオスに襲撃されているというものだが……もしそうだとしたら一刻も早く戻らなくてはならない。俺達は冷たい沼に足を取られつつも、やや速足で残る平地方面へと向かった。
イーオスというモンスターは非常に縄張りに対する執着が強く、生命力にも優れた生き物だ。何せ溶岩島と呼ばれる島そのものが火山となったかのような過酷なフィールドでさえ縄張り争いを繰り広げるような連中である。よっぽどのことがない限りは縄張りを捨てて別の地へ行くようなことは無いだろう。しかし、その"よっぽどのこと"がこの地では起きているように思えるのだ。さて、そうして辿り着いた平地方面。その第一印象は、"ただひたすらに何も無い"というものであった。立ち枯れた植物も生き物の死骸さえも無く、ただ真っさらな毒沼の平原となっている、それが平地方面の現状だった。
そんな真っさらな平原の中央に座す、巨大な異物。不自然な岩の塊のようにも見えるそれは、鎧竜グラビモスの幼体である、岩竜バサルモス……その残骸だった。生き物らしき部分は既に何者かによって粗方食い尽くされ、最早ただの岩と言って差し支えない酷い状態のものである。「また毒を持つモンスターの死骸……この調子じゃドスイーオスも死骸になってそうだぜ。」
ふとしたアマネの言葉に、しかし誰もがその情景を想像できてしまった。と言うよりは寧ろ、この環境で生きている生物の姿が想像出来なかったのである。どうせ此方にもイーオスもドスイーオスもいないのだろう。誰もがそう思っていた、まさにその時であった。
…………パチャン。
……その小さな水の音が、何故か嫌に大きく聞こえた。
-
152
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-02-27 22:30
ID:DXCTkSc.
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…………パチャン。
その小さな音を、しかし俺達は決して聞き逃すことは無かった。
「……っ!後ろっ!!」
直後、一番後ろを歩いていた俺に向けて吐きかけられた不気味に黒ずんだ毒液が、しかし瞬時に動き出したアリーチェの大楯に炸裂し、アリーチェは衝撃によって大きく後退することを余儀なくされたものの、俺に直撃することにはならなかった。
もし彼女のカバーが無かったら俺は開幕早々に毒液を一発浴びてしまうところであっただろう、そう考えると本当に頭が上がらない。「サンキュなアリーチェ。」
「礼はいいわ、頼まれたものね。……それにしてもなんて重い毒液。」どうやらメラルーと別れた後に言った「お前の盾で守ってくれ」というセリフを真に受けていたようだ。実際助けられたのだからどうこう言えないが、なんとも律儀な人柄である。
どんな局面にも対応しやすいだろうと持ち込んだメタルバグパイプを素早く吹き鳴らし、移動速度上昇とはじかれ無効の旋律を吹いた俺は、口元に僅かな笑みを浮かべつつ襲撃者を見て……驚愕した。「イーオスが二匹……だけか?」
イーオスが他の小型鳥竜種に比べて優れているところは、毒液という遠距離攻撃を持っているところ。そして遠距離攻撃の利点は、安全に火力を集中させられることだ。勿論イーオス達もその利点を理解しており、奴らは襲撃を仕掛ける時には必ずと言っていいほど大きな群れで動く。それが今はたったの二匹しかいないのだから、俺が驚いたのも無理はない。
二匹のイーオスは俺達と対峙すると、天に向けて大きく吠える。それは小型鳥竜種によく見られる、仲間を呼ぶための行動だった。
しかし、それによって大量の増援が送られてくるといった気配は一切無い。依然イーオスは二匹のまま、正直言って隙を晒していた。それでも俺達がその隙を突いてイーオス達に攻撃しなかったのは……言うなれば"嫌な予感"がしていたからだった。「……っ下だ!」
エドワードのその声に、俺達は一斉にその場を飛び退いた。直後、俺達の身体をすっぽりと覆ってしまえるだろうという大きな泥飛沫と共に、ついにソイツは俺達の前に姿を現した。
どろり、どろり…
ずぶり、ずぶり…昏く冷たい泥を全身に纏い、這い出でる紅の竜。
赤黒いオーラに抱かれて、妖しく輝く双眸は、しかし何も捉えることなく、どこか虚空を見つめていた。
隆々と異常に発達した筋肉が、ミシミシと軋むような音を立てる。
トレードマークである頭部のトサカは、ドス黒い紫色に変色し、その顔面をも侵食して覆い隠すほどに巨大化している。ソイツを見たとき、俺の頭にはある言葉が過った。
「ドスイーオスなんかじゃない、アレはもっと恐ろしくて、もっと禍々しくて、もっと混沌とした化け物だ」と、そう言ったのは相棒を失いかけたメラルーであったか。その時は、何を言っているのかよくわからなかったというか、混乱しているのだろうと話半分に聞いていたのだが…………コイツと対峙した今、その言葉の意味がよくよく理解できる。……ああ、そうだな。確かに断言しよう。
「ヴォォォォオオオオオァァァァァァァアアアアアッ!!!」
––––––それは最早、ドスイーオスとは呼べなかった。
Q.各メンバーの行動を指定してください。
1、その他(自由枠) -
153
名前:@難亭・凝態
投稿日:2018-02-28 17:42
ID:BFqht.qI
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装備を明記しておくのを忘れてました。申し訳無いです……。
あなた:ヘビィバグパイプ、バルクシリーズ
秘薬×1 いにしえの秘薬×1
エドワード:Sアルバレスト、バトルSシリーズ
秘薬×2 いにしえの秘薬×1
アリーチェ:ナイトスクウィード、EXレイアSシリーズ
秘薬×2 いにしえの秘薬×1
アマネ:王剣斧ライデン、隻眼シリーズ
秘薬×2 いにしえの秘薬×1 -
154
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-28 18:06
ID:YLeDPpoA
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赤黒いオーラ…獰猛個体か?
とりあえず毒に当たらないように立ち回りながら様子を見ようか -
155
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-02-28 21:29
ID:pJBQclzA
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ブルブルとその場で身震いし、竜がその身に纏わりつく泥を振るい落とすと、ドス黒い泥の下から顔を覗かせたのは、血のような真紅に染まった巨躯であった。
赤黒いオーラを頭部に纏い、虚空を見つめて妖しく輝く相貌。
イーオス特有の鱗の細かい皮にクッキリと浮き出た、不気味なほどに隆々とした筋肉。
変質したトサカにより、その頭部は最早本来の面影を残していなかった。ドスイーオスが沼の底から飛び出してきた。
それだけで俺達が驚愕するには十分であったというのに、その程度の事実などどうでもよくなってしまうほどに、そのドスイーオスの…いや、ドスイーオスらしきそのモンスターの姿は……「ヴォォォォオオオオオァァァァァァァアアアアアッ!!!」
……斯くも恐ろしい"異形"を醸していた。
「……デカい」
その言葉を呟いたのは、果たして誰であったであろうか?……或いは俺自身であったのかもしれない。しかし、それすらも分からなくなってしまうほどに、俺は目の前の存在に恐怖していた。
体長は尻尾まで含めて12mほどであろうか?それは当然ドスイーオスの中ではかなり巨大ではあるが、それより巨大なモンスターなどこの世界にはいくらでもいる。であるからには、その恐怖は大きさから来るものではないのだろう。勿論、強さでもないし、まして迫力でもありはしない。
……ただひたすらに、その竜は不気味だったのだ。瞬間、片脚で数回泥沼を叩いたドスイーオスが、突如俺を目掛けて猛然と飛びかかってきた。ドスイーオスの顔が此方を向いていなかったがために完全に不意を突かれる形となった俺は、しかし咄嗟に横に転がる事でそれを回避する。防護スーツ越しに伝わってくる冷たい泥の感触がひどく気持ち悪かったが、それよりもあのドスイーオスに触れられてはいけないという感情が、強く俺の脳に訴えかけてきたのだ。それは根拠の無い全くの勘であり、しかし明らかな確証でもあった。
ギリギリで回避した俺に間髪入れず噛み付いて追撃を仕掛けようとするドスイーオスの側頭部を、火薬の炸裂音と共にエドワードの持つボウガンの銃口から放たれた数発の銃弾が穿つ。それ自体にドスイーオスを止めるほどの力は無かったが、ドスイーオスの気がそれたことにより俺はすんでのところでその牙から逃れ、素早く立ち上がって体勢を立て直す。
俺を逃したドスイーオスは、再び数回片脚で泥沼を叩くと、今度は瞬時にエドワードに襲いかかり、しかしその真横から割って入ったアリーチェのランスによる突きを食らって大きく仰け反る。その隙にエドワードが再びドスイーオスから適正な距離をとり、アリーチェがバックステップでドスイーオスの反撃の体当たりを躱すと、そこで一旦勝負は仕切り直しとなった。狩人と竜の睨み合いにより、猛毒の沼地には一瞬の静寂が訪れる。
そんな中でやはり気になるのは、パチャパチャという泥水を叩くような音。先程からドスイーオスが何度も行なっている片脚で泥沼を叩くそれには、いったいどのような意味があるのだろうか……? -
156
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-02-28 21:33
ID:pJBQclzA
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パチャパチャ、パチャパチャ、
ドスイーオスが脚を動かす度に沼地に鳴るその音が、俺は無性に気になって仕方がなかった。一体何をやっているのか、それにどのような必要性があるのか、まるでわからなかったのである。
何か意味があっての行動なのだろうか?そんな風に考えていた俺の背後から、先程のイーオス達が見事に死角を突いて急襲してきた。一瞬その存在すら忘れかけていた俺は、一匹は咄嗟の判断で狩猟笛お得意の後方攻撃で撃退することが出来たが、しかしもう一匹はそうはいかない。高々一匹のイーオスの攻撃を食らうくらい、古龍の防具に身を包む俺にとってはさしたる問題ではないと思うのだが……しかし、そのイーオスが迫ると同時に、俺は先程ドスイーオスにも抱いた悪寒とまったく同質のものを感じ取った。それはつまり、コイツに触れられてはいけないという……
瞬間、蒼光が閃くと同時に、俺に接近していたイーオスの体に一筋の赤い筋が描かれ、そこから絵の具のように鮮やかな赤い液体が噴き出した。当然傷付けられたイーオスはその痛みのあまり大きく仰け反り、明確な隙を晒す。その隙を逃さず、流れるように駆り出された一撃が、イーオスを泥沼へと吹き飛ばした。
「悪い、助かった。」
俺の礼に対し、それを行った張本人たるアマネは、口元にニヤリと笑みを浮かべることで応え、再びドスイーオスに向き直る。
そして俺は、同じ種類の悪寒を二度も連続で味わったことにより、ある事を思い出していた。
ドスイーオスの牙に毒があるのはハンターの中でも比較的知られている事であるが、実はドスイーオスの鱗にも毒が含まれているのはあまり知られていない事実である。勿論それは牙や毒液本体とは比べるべくもないほど弱いものではあるが、高々ドスイーオスの素材と侮り、取り扱いを間違えた新人が死ぬ事故は今でも稀にあることらしい。昔加工屋のおっちゃんがそんな事を言っていたのを、今になってふと思い出したのだ。
通常の個体の鱗でさえ、取り扱いを間違えれば人一人を殺すことが出来るほどの毒性……。では、その毒が凄まじく強化されたこのドスイーオス及びイーオスのそれは、いったいどれほどの毒性を持っているのか、想像するだけでも恐ろしい。毒液だけではない。安全に捕獲を行うためには、ドスイーオスやイーオスそのものにも極力触れないような戦闘が要求される。それはつまり、奴等の攻撃は全て避けろということだ。
そんなことが果たして本当に可能であろうか?普通のドスイーオスであったならば、或いは可能であったかも知れないが……コイツは推定G級個体で、行動の読めない特殊個体で、しかも……「黒いオーラか……一丁前に獰猛化してやがる。かなりヤバそうな相手だが、どうする?」
……未だに謎の多い、獰猛化個体である。
だが、問題は可能不可能ではない、出来なければ死に直結しかねないのだ。そんなことこれまでのハンター人生で何回も経験した。出来る出来ないに関わらず、俺達はやるしかないのである。「攻撃は全部避けつつ、まずは様子見だ。ある程度行動を見切ったら、攻撃を全部避けつつ攻勢に出る。」
「……つまり、超絶本気出せってことな。」
「机上の空論……だが、やるしかない。」
「こうなると機動性に問題ある武器ばかりなのが厄介ね。」広範囲に広がる毒液で一網打尽にされぬようお互いに距離を取りつつ、ここからは喋る余裕も無くなるだろうと確認し合うように言葉を交わす俺達。見れば、四人である此方に対抗するかのように、二匹のイーオスがドスイーオスの両サイドを守るような位置に移動していた。先程傷付けたのにもうピンピン動いている……小型モンスターと言えども、G級個体というのは伊達ではなさそうだ。
「ヴォァァアッ!ヴォァァアッ!」
変異ドスイーオスの不気味な鳴き声が、猛毒の沼地に木霊する。
……戦いの火蓋は今、切って落とされた。
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157
名前:名無しさん
投稿日:2018-02-28 22:37
ID:kZLUgh2o
[編集]
最大金冠&獰猛化&特殊個体という欲張り3点セットか
2部位しかないドスイーオスが獰猛化したらほぼ全ての攻撃が強化対象になりそうだな……オソロシヤ地団駄を踏む行為は単なる癖なのか、それとも鉱毒とかにやられた影響か
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158
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-01 22:14
ID:pJBQclzA
[編集]
此方は相手の攻撃の一つ一つが命取り……。
方や相手は此方の攻撃をどれだけ浴びせようとも簡単には倒れないG級個体……。
そして当然、それは向こうも理解していることであろう。それは刹那の硬直だった。
極限の緊張の中、相手の動きを少しでも見切らんとするための睨み合い。一見するとなんの動きも無いように見えても、両者の戦いは既に始まっていたのだ。互いの手の内を見切り、腹を探り合うための精神戦とでも呼ぶべき戦いが……。
それは、現実時間にしたら10秒にも満たない短い時間の出来事。それが今は、一時間にも長く感じられる……。……静か過ぎる。
自分の心臓の鼓動の音が酷く煩い。
僅かな息遣いさえ集中を乱す。
徐々に高まる緊張の中、俺は口の中に溜まった唾をゆっくりと呑み下した。––––––刹那、紅き巨躯が跳躍する。
それと同時に長き睨み合いは終焉を迎え、各々が自らのするべき最善へと動き出す。それは俺達も勿論であるが、イーオス達もまた然りであった。硬直を自ら破ったドスイーオスは、全身に纏う黒いオーラを妖しく閃かせつつ、大きな放物線を描いて俺に向かって飛びかかってくる。先程から俺ばかりが狙われているのは、奴等が一人づつ潰した方が効率的である事を知っているからなのか……そういう知恵や経験に於いても、やはりG級というのは規格外だ。
……そうある種の感心さえ覚えた直後、俺はその考えさえまだ甘かった事を思い知らされる。
俺に向かって飛びかかってきたかのようにも思えたドスイーオスだったが、その真の狙いはそれを俺に直撃させる事ではなかったらしい。俺を大きく飛び越えたドスイーオスは、瞬時に此方に振り向いて毒液を吐きかける。直前にそれに気が付いた俺は、咄嗟の判断で横に飛んでその毒液を回避し、ドスイーオスを振り向く。
「後ろだっ!」
しかし、奴等の攻撃はそれだけに止まらなかった。
ドスイーオスに気を取られてまんまと背後を晒してしまった俺に、二匹のイーオス達がすかさず毒液を吐きかける。ドスイーオスの毒液を回避した直後で体勢の整っていない俺に、それを躱す術は無かった。
……が、二発の発砲音と共に、イーオスの毒液はジュッと音を立てて蒸発する。その蒸気でさえ十二分に危険ではあるのだが、現状ガスマスクを着用している俺達にとっては、毒液が直撃するよりは遥かにマシであったのは言うまでもない。
俺は火炎弾でイーオスの毒液を撃墜するという変態的な凄業を披露したエドワードに簡易的なハンドサインで賛辞と礼を述べると、即座に狩猟笛を構えてドスイーオスに肉薄する。ドスイーオス戦のセオリーは、側面に張り付きつつあまり距離を離し過ぎないように攻撃を続けること。特殊個体とはいえ根本的な骨格構造までは変わらないのだから、そのセオリーは通じるだろう。勿論それは言うまでもなく他のメンバーも理解しているので、俺に続いてアマネやアリーチェもドスイーオスに接近戦を仕掛ける。ただし、あくまでもまだ様子見の段階だ。接近戦を仕掛けるというのは、下手に深追いして反撃を食らえば一気にこっちが危険になる非常にリスキーな行動でもあるため、隙のできるような大ぶりな攻撃は使わず、あくまで小突く程度に収める。
しかし当然、それを黙って見ているようなイーオス達ではない。イーオスというのはランポス種のなかでも特別忠誠心の強い種族なのであるから、自分達のボスがやられるのをただ傍観しているはずもなく、すかさず蹴りや噛みつきによって攻撃を開始する。だが、やはりイーオス達が毒液を吐き出す事をしなかったのを見て、攻撃を捌きつつも俺は内心ほくそ笑んだ。
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159
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-01 22:18
ID:pJBQclzA
[編集]
イーオス達の毒は毒袋にある間は基本的に無害な物質であり、空気に触れる事で始めて有毒化する。そのため、勿論幾らかの耐性はあるものの、基本的にイーオスの毒はイーオスにも通用するのだ。……さて、もしそれが、大抵の場合は殆どの生物を一撃で仕留めてしまうような猛毒であったとしたら?当然同族のものであっても浴びてしまえばひとまりもない……とまではいかなかったとしても決して無傷では済まないだろう。
そして、遠隔攻撃の利点は火力を集中させやすいことであるというのは先述した通りではあるが、逆に遠隔攻撃の弱点と言っていいのは味方を巻き込みやすいがために敵味方入り混じる乱戦に滅法弱いということである。このままメインウェポンである毒液を封じつつジワジワと体力を削れば……そう思っていたのだが、相手はそんな甘い奴では無かったのはついさっき実感させられたばかりであった。「ヴォゥ!」
突然にドスイーオスが吠えたと思うと、さっきまで執拗に俺を狙っていたドスイーオス達の動きが突如として変化した。背を向けて走るドスイーオス達に、俺は一瞬逃げ出したのかと思ったが、その進行方向の先にいる人物を見て、戦慄を覚える。
「エドワード!」
そう、ドスイーオス達はそのターゲットを乱戦に持ち込もうとしていた俺から、遠距離から絶妙な援護射撃を行なっていたエドワードに変更したのだ。エドワードの持つ武器は機動力も低くガードも出来ないヘビィボウガン。そして遠隔攻撃の弱点は直近での乱戦。ドスイーオスとイーオス二匹の系三匹に同時に狙われることとなったエドワードはたちまち窮地に陥っていた。
しかし、俺のそんな心配は杞憂に終わることとなる。
ドスイーオスの攻撃に合わせ、エドワードは身を捻って錐揉みしつつ大きく回避した。それは彼の狩猟スタイルであるブシドースタイル特有のジャスト回避と呼ばれる技だ。それによって再び彼我の距離を離したエドワードに、しかしドスイーオスはなおも追撃を続行しようとするが、流石にそうは問屋が卸さない。–––––––一発の鋭い銀弾《シルバレト》が、紅き狩人達を貫いた。
経験からなのか誰よりも早くエドワードが狙われていることに気が付いたらしいアリーチェのランスによる高速突進が、昏き戦場を瞬く間に駆け抜ける。
その様はまるで邪悪な魔を打ち払う銀の弾丸の如く、背を向けてしまった愚かなイーオス達を立て続けに轢き、さらにドスイーオスに迫る。背を向けているドスイーオスに、その速度に反応することは不可能……誰もがそう感じていた。だが、ドスイーオスはまるで後ろに目でも付いているかのように、突如として背後から迫るアリーチェを振り返り、オーラを閃かせた頭突きによってその突進を強引に停止させる。異常に巨大化しているトサカはかなり硬質化しているらしく、アリーチェの突進を正面から受けたにもかかわらず先端が僅かに欠ける程度の傷しか付いていない。
そして、突進の勢いを殺されてしまえば、あとはアリーチェとドスイーオスの力勝負。当然人間ごときに勝ち目などあるはずもなく、アリーチェは大きく後退することを余儀なくされる。さらに、それによって隙を晒してしまうアリーチェに、彼女が突進で追い抜いたイーオス二匹が襲い掛かり……「流石にそれはさせねぇよっ!…と」
しかし、右に居た奴を俺のヘビィバグパイプが、左に居た奴をアマネの王剣斧ライデンが、それぞれ吹き飛ばす。それに対してアリーチェは短く感謝の意を述べるが、俺にとっては完全にお互い様というか、向こうに守ってもらった回数の方が遥かに多いので、気にするなと伝えた。
何せ、戦いはまだほんの序盤でしか無いのだから……。
-
160
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-01 22:20
ID:pJBQclzA
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互いが互いの動きをカバーし合わなければ戦えない……前回のバルファルク戦然り、立て続けにこんな厳しい戦いを強いられるのはそういう星の下に生まれてしまったのではないかと最近心配になる限りである。
そう考えると泣きたくなってくるのだが、残念ながら今は男泣きしていられる状況では無いらしい。
気付けばオーラを閃かせたドスイーオスがすぐ目の前まで迫っていた。……というかコイツまさか、強化されてない攻撃が無いのかっ!?ドスイーオスの力を溜めるように後ろに跳躍する予備動作を見て、すぐに次の攻撃に思い至った俺たちは、即座に散会してその場から退避する。直後、ドスイーオスの口からドス黒い毒液が大量に吐き出され、泥の中に広がった。多分、あそこには暫く足を踏み入れられないことだろう。いくら防護スーツを着込んでいるとはいえあそこまで濃度が高いと流石に抑えきれない。やはり、毒液を吐かせ続けると此方の行動範囲が抑制されて追い込まれるらしい。
ならばやはり、近接戦に持ち込んで毒液を吐かせないのが最善か……?いやしかし、それではさっきの繰り返しだ。一体どうする……?
考えなければ勝てないのに、相手は俺に考える時間を与えてはくれない。三度起き上がった兎に角タフなイーオス二匹が、各個撃破と言わんばかりに俺に襲いかかる。
また俺かっ!とツッコミたくなるが、これも奴等の作戦なのだろう。まさか命がかかってる戦場で一人狙いはズルいなんて俺も言うつもりは流石に無い。寧ろここは俺一人でこの二頭を抑え、ドスイーオスに攻撃しやすくするのが最善か。
……と、世の中そんな上手く行くはずもなく、さも当然の如くドスイーオスも俺を狙って攻撃してくる。俺もそれに脅威を感じ取って一瞬反応しそうになったが、直後にアリーチェが盾によってそれを阻んでくれたのを感じ取り、ホッと安堵の溜息を吐いた……束の間、なんとドスイーオスがその異様な力によって強引にアリーチェの大楯を押し退け、さらには盾に食らいついてアリーチェを強引に泥の上に押し倒したのが視界の隅に映った。
アリーチェもそれを危険と感じて横に転がって逃げようとするが、直後に彼女の腹をドスイーオスの強靭な脚が押さえ付け、それは叶わなかった。
ドスイーオスが大きく口を開き、今にもアリーチェの顔面に食らいつかんと牙を剥く。アマネの剣斧は機動力の問題で届かない。エドワードの銃弾で止められる確証は無い。咄嗟にポーチに手を伸ばした俺の右手に握られていたものは……Q.あなたの手に握られていたものは?
1、音爆弾
2、閃光玉
3、こやし玉
4、その他(自由枠) -
161
名前:時雨
投稿日:2018-03-01 22:30
ID:gX20EMvk
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拘束ならこやし玉だな、3で。
海外版では獰猛化モンスターをHyper Monsterって呼んでて、モンスターの名前の頭にHyperを付けるんだっけか。
「異常に興奮した」「活動が過多の」って意味のhyperactiveっていう単語から取ったのかねぇ? -
162
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-01 23:46
ID:hZfqFlls
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>>161
大辞典にもそんなこと書いてあったね。時雨氏もしかして大辞典民? ( ´∀`)人(´∀` )ナカーマさて、拘束攻撃復帰後の隙を突かれてもいけないから、アマネエドの2人には取り巻きのイーオスの掃除を頼もうか。
できる範囲でいいので。 -
163
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-02 22:59
ID:Znrt97HA
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ポーチから引き抜いた俺の手に握られていたのは、他の物と区別するために独特の模様の描かれた茶色い手投げ弾、こやし玉だ。
こやし玉と言えばその強烈な悪臭によってモンスターを追い払う力があるのはハンターのみならず誰もが知っている事実であろうが、それ以外にもこやし玉には拘束攻撃を無理やり解除するという用途が存在する。まさに今の状況にはおあつらえ向きのアイテムだった。「エドとアマネはアリーチェの復帰をフォローしろっ!」
そう指示を出す共に、俺の手から放たれたこやし玉は放物線を描いて飛び、アリーチェを押さえつけるドスイーオスの顔面に命中する。瞬間、視認可能な程の強烈な臭気がドスイーオスを覆い尽くし、ドスイーオスはあまりの臭さに堪らず悲鳴を上げて仰け反った。
当然、そのチャンスを逃すアリーチェではない。ドスイーオスの拘束が緩んだ僅かの隙に盾とランスでドスイーオスの体を強引に押し退け、ふらふらと立ち上がる。それに俺が安堵していると、ランスを杖代わりに立ち上がったアリーチェは、ふと俺の方を見て青ざめた顔で叫んだ。「……っ、後ろっ!?」
–––––––え?
刹那、俺の背中に鈍い衝撃が伝わるとともに、凄まじい倦怠感と苦痛が全身を苛み、天地がひっくり返ったかのような感覚に俺は思わず両膝をついて崩れ落ちる。危険を感じ取った俺は即座にアイテムポーチに手を伸ばし、丸薬を乱暴に一つ取り出し、唾と一緒に飲み込んだ。それと同時に、倦怠感や苦痛は徐々に落ち着き、薄らいでいく。
「……っはぁ、はぁ」
溜まった息を一気に吐き出し、荒い呼吸を繰り返しつつも後ろを振り返れば、そこにはエドワードの銃撃で怯むイーオス達の姿。どうやらこいつらが俺に向けて毒液を吐き掛けてきたようだ。アリーチェを助けることに夢中になって背後がおろそかになるとは俺もまだまだである。
……などと呑気な思考をしているが、これで秘薬を一個消費してしまった。つまりここからは俺はたったの一回しか攻撃を浴びることが出来ない。控えめに言って大ピンチである。俺はヘビィバグパイプの一薙ぎでイーオス達を退けると、その場に佇んでまだ荒いままだった息を整える。ほんの噂程度にしか聞いていなかったが、実際にやられてみてよくわかったことがある。あの毒は本当に洒落にならない。死人を出したというのは伊達ではないのだ。
背中のイーオス達の毒液を当たった箇所には、まだ拭いがたい違和感がジンワリと染みるように残っていた。焼け付くように熱いのに、刺すように冷たい……
……奴等はこんなものをその身の内に留めているというのか。「……っと、そんな場合じゃないな。」
息を整えた俺が素早く周囲を見渡せば、そこには乗り攻撃によってドスイーオスの追撃を阻害するアマネの姿があった。その傍らには、フラフラと足元の定まらない様子で立ち、ランスの鋒を前に構えようとするアリーチェ。さっきやられた俺だからこそ分かる、あの様子は確実に毒にやられている。
俺は慌ててアリーチェに駆け寄り、肩を貸して彼女を支え、彼女のポーチから秘薬を一つ取り出して差し出した。肩を貸した時に鎧越しでも分かる豊満な胸の感触に一瞬意識が向きそうになったが、今はそれどころではない。無心、無心である。「アリーチェ、無理はするな。今のうちに秘薬を飲んでおけ!」
「……っ。そうね、悔しいけど、これじゃとてもじゃないけど戦えそうにないわ。それより、さっきはごめんなさい。私のために……」
「いや、アレは普通に俺の不注意が原因だ。アリーチェは関係無い。それに、コイツ等は助け合わなきゃ勝てない。今更さ。」アマネがドスイーオスを、そしてエドワードがイーオス達を一瞬抑えている間に俺達は一言二言言葉を交わし、アリーチェは強走薬を飲み、俺は狩猟笛によって攻撃力強化と防御力強化の両方の旋律を吹き鳴らしてから戦線に復帰した……が、その瞬間、俺達は衝撃的なものを目撃することとなる。
なんと、ドスイーオスの背中にしがみついていたアマネの力が急に緩み、それを感じ取ったドスイーオスは身を捻ってアマネの右腕に食らいついて強引に泥沼の上に放り投げたのだ。すると必然、アマネの軽い身体は飛沫を上げつつ泥沼の上を二転三転と跳ね上がり、無様に泥塗れになりながら戦場を転がる。「アマネっ!?」
普段のアマネからは想像もつかないような失態に、俺は思わず脇目も振らずに彼に駆け寄った。ロクに動くことすら出来ていない彼を素早く抱き起こし、泥を振り払う。そうして露わになった彼の整った顔立ちの……あまりの蒼白さに俺は即座にある結論へと至った。
「毒……」
あのドスイーオスは本当に、触れるだけでも危険なのだ。
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164
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-02 23:02
ID:Znrt97HA
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直後、二つの足音が俺に敵の接近を知らせた。振り返るまでもない、イーオス達だ。
アマネのアイテムポーチから取り出した秘薬を強引に彼の口の中に押し込んでおき、俺は即座にヘビィバグパイプを構えて二匹のイーオスと対峙する。ドスイーオスはアリーチェとエドワードが抑えている……いや、逆にアリーチェとエドワードがドスイーオスに抑えられているのか?ともあれ、今の俺は助けの望めない二対一……しかも後ろに仲間を庇った状態だ。状況はお世辞にも良いとは言い難かった。「ギャァォ…」
「グァゥ…」獲物の姿を捉え、姿勢を低くして吠えるイーオス達。
高々小型モンスターであるイーオス…そうは思えない、思ってはいけない相手であるのは、これまでの戦いで嫌という程知らされてきた。さっきまではまるで分からなかった……コイツ等が何故ここまで何度も起き上がることが出来るのか。幾度となくエドワードの弾丸に貫かれ、アマネの斬撃に晒され、俺の狩猟笛に殴打され、アリーチェのランスに穿たれても起き上がるなんて、いくらG級特殊個体といえどもタフすぎる。
だが、今は不思議とその理由が理解できるのだ。コイツ等は俺たちの攻撃で何度も吹き飛ばされていた……どんな腰の入っていない攻撃でも確実に、だ。つまり、コイツ等は俺たちの反撃に合わせて後ろへ跳ぶことで、体力を温存しつつ最大限に此方に邪魔になるような攻撃を繰り返してきていたのだ。……言うは易し、だがそれを行うのは生半可なことではない。
……ああ、確かに認めよう、お前等は強いよ。なぁ、イーオス。––––––––今、俺にお前達のやっていたことが理解できたってことは、つまりお前達も今の俺と同じ気持ちってことなのか……?
「来いよ、アマネは殺らせねぇぞ?」
俺の挑発を理解してか否か、イーオス達は牙を剥いて猛然と飛びかかってくる。俺は僅かに身を逸らして一匹目のイーオスの牙をスレスレで躱すと、反撃に狩猟笛を叩き込む。…直後に襲いくる二匹目のイーオスを俺は片脚で無理矢理蹴り飛ばし、その衝撃に仰け反ったところで柄突き攻撃をその喉元にヒットさせた。
尚も飛びかかってくるイーオスを俺は半身を捻って躱し、叩き付けで無様に泥沼を舐めさせ、続けて背後から至近距離で毒液を吐きかけようとしたイーオスを後方攻撃で叩き伏せた。
吹っ飛ぶことでダメージを軽減するのが難しい上からの攻撃によって、イーオス達は少なくないダメージを受けたのか、一時的に俺から離れるように動く。もちろんそれを追うことはしない。下手に深追いすればアマネが危険であるからだ。イーオス達はその数秒にも満たない攻防で、彼我の強さを測ったのだろう。直後には俺が想定していた最悪の作戦を展開する。
それは即ち、片方が毒液を吐き続け、もう片方が俺に接近戦を仕掛けるという戦術だ。後ろにアマネがいる限り俺は毒液を躱すと訳にはいかない。結果として出来るのはその毒液が届く前に狩猟笛の攻撃で強引に撃ち落とすことなのだが、それをもう一匹のイーオスの猛攻が許さない。今のところ何とか凌ぐことは出来てはいるが、俺は徐々にアマネのいる後ろへと追い詰められていく。それでもなんとか対応出来ていたのは、最悪のパターンとはいえあくまでも想定の範囲内であったから。しかしこのイーオス達は、それだけにとどまる器ではなかった。
俺に接近戦を仕掛けていたイーオスが、突然その場で力の限り大きく踏み込んだ。すると必然、地面の泥が大きく跳ね上がり、俺の視界を占拠する。その僅かな隙を逃さず、イーオスは俺のヘビィバグパイプに食らいつき、なんとか此方の動きを抑え込もうと残った力を振り絞る。俺が何度そのイーオスごとヘビィバグパイプを地面に叩きつけ、その顔面を蹴り飛ばそうとも決して離さない。
そして、仲間が決死の覚悟で作ったチャンスを逃さず、もう一匹のイーオスが俺に襲い掛かり……っ!……しかし、その身は一振りの巨剣に貫かれた。
無意識領域からの鋭い刺突を受けたイーオスの腹部からは、鮮やかな鮮血がまるで彼岸花の花弁の如く舞い、イーオスは冷たい泥の中に崩れ落ちた。
それから間も無く、ヘビィバグパイプにしがみついていたイーオスもその力を失い、二度と立ち上がることなく倒れ臥す。……ゆっくりと後ろを振り返れば、そこには剣斧を突き出したアマネの姿。
「よっこらしょ」というオッさん臭い掛け声と共に自力で身を起こした彼は、沼地に堂々と座りつつ、ニヤリと笑みを浮かべつつ俺に向けてサムズアップし、言った。「あぁ、礼は要らねぇぜ?」
そんな彼に対し、俺は手を差し伸べて立つのを手伝いつつ、憎まれ口を叩くように応えた。
「言うかよバーカ、今更だろ?」
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165
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-02 23:04
ID:Znrt97HA
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この戦いにおいて何度も戦場を引っ掻き回してきたイーオス達の討伐になんとか成功した俺達は、しかし休む間も無くドスイーオスとの戦闘に合流する。幾らベテラン二人とはいえ何をしてくるかもわからない変異ドスイーオス相手に一撃も貰ってはいけないという緊張の中で戦うのは決して楽なことではないだろう。
泥沼に足を取られつつもなんとか俺達が戦線に合流すると、丁度青褪めた顔のエドワードが秘薬を口にし、その間アリーチェがドスイーオスをギリギリで抑えているという状況であった。正直あのエドワードが被弾していることにはかなり驚いたが、ここまでの出来事で驚きに関してはある程度振り切れているので、俺達は取り乱すことなくアリーチェを援護するためドスイーオスに肉薄する。もう背後から襲い掛かるイーオスに警戒する必要はない。俺達は全神経を注いでドスイーオスに攻撃を開始した。無数の弾丸が、連続の刺突が、舞う斬撃が、重々しい打撃が、ドスイーオスの深紅の体に一つ、また一つと傷を増やしていく。
勿論、ドスイーオスだってただ黙ってやられているだけではない。泥沼を波立たせ、俺達がバランスを崩したところで毒牙によって襲い掛かり、発達した筋肉を使った荒々しいタックルを繰り出し、その身に纏う黒いオーラをひっきりなしに騒めき立たせて暴れに暴れる。獰猛化の影響からかドスイーオスのスタミナは底知らずである一方、慣れない泥沼での戦闘によって俺達の疲労は時を追うごとに深刻なものになっていく。このまま戦い続けたらいずれはジリ貧になる、その無意識の焦りによって俺達の動きは徐々に雑になってしまっていた。
「くっ…!」
ドスイーオスの毒液を、アリーチェが盾でなんとか受け止める。このメンバーの中で一番スタミナを削られているのは間違えなく彼女であろう。アリーチェが言うには、このドスイーオスの吐き出す毒液はゲリョスなどのそれに比べて異様な程に重いのだそうだ。
ドスイーオスを四人で取り囲んで戦うこと早十数分、現在の秘薬所持数は俺が残り1、アマネがあの後もう一発被弾してしまい残り1、アリーチェも同様で残り1、ガンナーであるエドワードは辛うじて残り2というのが現状である。秘薬所持数が残り1である者は、次に毒液を浴びたら撤退しなくてはいけないというルールだ。というか、そうでもしないと死ぬ可能性があまりにも高く、危険すぎる。そして、アリーチェがとうとうその鉄壁のガードを崩され、冷たい泥沼の上に後ろ向きに倒れ込み……
「アリーチェ!」
……しかしその直後、これまで決して俺達に背を向けることがなかったドスイーオスが、突如として逃走を開始した。いや、厳密にはそれは逃走ではない。幾ら獰猛化していようとも、最終的には生き物である限り腹が減っては戦は出来ぬ。それは栄養補給の為の撤退だった。
そこで俺は、ここに来たときに抱いていたある疑問を思い出す。あらゆる命に見放されたこの地で、彼等は一体何を食べて生きてきたのだろうという、その疑問を……「あれは……」
シャク...シャク...シャク......
食料の存在しないこの地で、彼等はいったい何を糧としたのか。
通常数十匹規模の群れを形成するイーオス達が、何故ドスイーオスを含めてたった三匹しかいなかったのか。「っ!?……そんな。」
シャク...シャク...シャク......
……その答えが今、俺達の目の前に明確な形として指し示された。
でもそれは、あまりにも残酷な……あまりにも不憫な……あまりにも救われないものであった。「……。」
シャク...シャク...シャク......
一体何が、彼等をそこまでこの地に縛り付けるのであろうか?
いったいどうして、このドスイーオスはここまでしてこの地に拘るのであろうか?「なぁ、ドスイーオス。」
シャク...シャク...
「お前は一体、"何"なんだよ……。」
ついさっきまで部下であったはずの二匹のイーオスの亡骸を嬉々として喰らったドスイーオスが、その黒きオーラに抱かれた焦点の定まらない相貌で、じっとこちらを見据えていた。
–––––––血溜まりに佇んで、その目はいったい何処を見る。
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166
名前:時雨
投稿日:2018-03-02 23:48
ID:gX20EMvk
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ヒエ…なんやこいつ…
何だか4のあのムービー思い出したぞ…
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167
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-03 22:47
ID:DXCTkSc.
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今後の展開を予定通りに進めていいものか迷い更新速度低下中です。(´・_・`)
ええ、今前半の山場で五万文字突破したんですが、この調子だと完結までに十万文字超えるな〜という……_(:3 」∠)_
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーパシャン…パシャン…
ドスイーオスがまた、片脚を泥沼に叩き付ける。それによって同心円状に発生した波が俺達の足に当たり、まるで音が反響するかように新たな波紋を作り出す。それは、これまでの戦闘で何度も繰り返されて来たことであった。
そして……今。俺はその行いの意味を、静かに理解し始めていた。
まさかコイツ……直後、ドスイーオスが大きく前屈みになって泥沼を駆け抜け、一瞬で俺に肉薄する。その速度はこころなしか先程よりも俊敏だ。ドスイーオスが足踏みの後に襲ってくるだろうというのはこれまでのことで大体予測していた俺だが、ここに来て更にスピードを上げてくるとは思いもせず、僅かに反応が遅れてしまう。そこに割って入ったのがアリーチェだ。彼女はカウンター狙いでランスを伏せつつ、大楯を構えてドスイーオスの攻撃を受け止める……が、しかし向こうがスタミナを回復してしまったのに対し此方の疲労は依然として濃いままだ。ただでさえ両者には大きな体格差があるがために、ドスイーオスの攻撃によってアリーチェの盾は大きく捲られ、渾身のカウンター突きはまるで腰の入っていないものになってしまっていた。
だがそれでも、確かにドスイーオスの攻撃が止まったのは紛れも無い事実である。その一瞬の隙に、俺、アマネ、エドワードも攻撃を開始する。既に戦いが始まってから数十分も経っているのに、ドスイーオスは一向に弱る気配を見せようとはしない。それは果たしてコイツがG級個体だからなのか、或いは獰猛化しているからなのか、はたまた特殊個体の特性か……その全てか。
一応捕獲依頼であるから、相手の残存体力も考慮に入れつつ狩猟笛をぶん回していたその時、ドスイーオスが全身をバネのように使って大きく垂直にジャンプした。四人で群がっていた俺達の真上に出るドスイーオス……例えそれが初見の行動であってもその時点で充分すぎるほどの危険を感じ取った俺達は、即座に四方へ散会してドスイーオスの直下から離脱した。
直後、大きく跳ね上がったドスイーオスは、自らの真下目掛けて特大の毒液を吐き出した。ドス黒い紫色の液体が泥沼に落ち、大きな波飛沫を上げる。少しでも離脱が遅れていればアレに巻き込まれていたのだと思うと恐ろしい。だが、あれだけの量の毒液を消費する技だ、おそらく連発は不可能であろう。大量の毒液を吐き終え、ブルブルと顔を振るったドスイーオスが片脚を数回打ち鳴らした後に次なるターゲットに据えたのは、ここまでの戦闘で比較的ダメージの少なかったエドワードだ。
しかも、自らが先程吐き出した毒液の中に立っている間は近接武器で攻撃出来ないことを知っていた……いや、この戦いで新たに学習したかのように、ドス黒い紫色の液体の中央に居座って小さな毒液を何度も何度もエドワードに吐き続ける。対するエドワードも遠距離からの銃撃でそれに応え、戦いは射撃戦の様相を呈していた。「……ゴッホ、ゴホ…!ガスマスクのフィルターがそろそろ限界だ、今のうちに替えてしまおう。」
突如襲いくる噎せるような苦しみに思わず咳き込んだ俺は、エドワードが射撃戦をしている間に残る二人にそう提案する。二人もそろそろ息苦しさを感じ始めていたのか、俺の意見に反対することなく素早くフィルターを交換した。
……待てよ?今俺達が苦しくなり始めたってことは……
「ゴフッ…グァ!」
「エドワード!?」俺が気付いて振り返った時にはもう時既に遅し。その場で咳き込んだエドワードにドスイーオスの毒液が容赦なく命中する。幸い、俺より早く気付いたのか即座に反応したアリーチェがエドワードを守る位置に移動するが、ドスイーオスは依然として毒液の中に立っての一方的な遠距離攻撃を続けている。今のアリーチェのスタミナではエドワードが秘薬を飲んでフィルターを交換してを終えるまでにドスイーオスの重い毒液をずっとガードし続けるなんて現実的に不可能だ。かといってアレではドスイーオスを直接攻撃してブレスを中断させることも出来ない。
何かドスイーオスを足止めする方法は無いのか!?
Qドスイーオスの行動を中断させる方法は?
1、閃光玉を目の前で炸裂させる。
2、こやし玉を顔面に命中させる。
3、音爆弾を足元で破裂させる。
4、どこでもいいからタル爆弾系統を起爆しまくる。
5、その他(自由枠) -
168
名前:蟹
投稿日:2018-03-04 00:18
ID:B8nXzJ4E
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これそもそも攻めが効いている感じすらしないから勝てるかすらわからんぞ……
とりあえずアマネに閃光玉を任せ、自分はもう旋律とか関係なく狩猟笛を鳴らして注意を引いてみようというか、閃光玉が効いたら全員で一旦退却して体勢を立て直したい
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169
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-04 22:03
ID:Znrt97HA
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動きを止めることは敵わずともせめて意識を逸らすことさえ出来れば……!
そう考えた俺は、旋律なんて御構い無しに狩猟笛を吹き鳴らし始める。狩猟笛の演奏の音色はハンターには心地よく感じようともモンスターにとってはとても不愉快なものであり、モンスターのヘイトを大きく集めるという特徴がある。その性質を逆手に取ればエドワードから此方に注意を逸らすことも出来るのではと思ったのだ。そんな俺の目論見通り、ドスイーオスの注意は此方に向き、今にも俺に向けて毒液を吐き掛けようと力を溜める。
「アマネ、閃光玉!」
「わあってるっつの!」瞬間、アマネの手から一つの手投げ弾が放たれ、ドスイーオスの眼前で炸裂する。小さな命が潰えると共に、猛烈な光が俺達の視界を白一色に染め上げた。モンスターに限らず、一部の例外を除けば殆どの生物が頼りにしている感覚は、主に視覚である。閃光玉は強烈な閃光によってモンスターの視界を封じるという、ハンターだけでなく旅商人などもよく持ち歩いている護身用アイテムだ。視界を封じられた時の挙動はモンスターによって大きく異なり、その場で固まってしまうものもいれば、手がつけられないほどに暴れ狂うモンスターもいる。だが、どちらにせよ、自分がピンポイントで狙われるよりは遥かに安全であることは言うまでもなく、これによって命を救われたという人は決して少なくないだろう。特に小型鳥竜種などは目がいいだけあって、閃光玉の効果は絶大である……そのはずであった。
パシャン……パシャン……
だが、眩い閃光が消えたその時、俺のすぐ眼前には、ドス黒い紫色の液体が迫っていた。
「––––––––っ!?」
一瞬で危機を察知した俺は、咄嗟の判断で身を伏せる。直後、俺の頭頂ギリギリを通過して毒液は背後の泥沼へと虚しく落ちる。だが、身を伏せてなお立て続けに迫る毒液……横に転がってそれを回避しつつ、まさかという気持ちで顔を上げれば、そこには平然とした様子で俺を捉え続けるドスイーオスの姿。
「閃光玉が……効いてないだと!?」
そのようなことがあり得るのだろうか?
これまで戦ってきたどんな特殊個体だって、古龍だって、その種の特性を失うことは決して無かったというのに……このドスイーオスは、いったい何だって言うんだ……。「ヴォゥッ!ヴォゥッ!」
ドスイーオスが、天を仰いで二回吠えた。まるで己の力を誇示するかのように……まるで此方を嘲笑うかのように……まるで、勝利を確信したかのように……。
「お、おい…大丈夫か?」
「すまん、なんとか戦線復帰できる……どうしたんだ?」アマネやエドワードの声が、嫌に遠くに感じた……。
いったいどうすれば生き残れる?いったいどうすれば逃れられるんだ、この化け物から……。
俺は……怖い。お前の事が、何よりも……。こんなの初めてだ、今までで初めてだよ……俺はお前が、"生き物"に見えないんだ。俺は震えていた。思わず武器を取りこぼしそうになるほどの、強い恐怖に震えていた。それほどまでに、目の前の存在が常識では考えられないような化け物に見えてしまったのだ。
だけどその一方で、心の奥底に何か燻るような別の感情が存在する。それを上手く言葉で言い表すことは出来ない。モヤモヤと、雲がかかったかのようにハッキリとしない疑念を、俺は抱いていた。パシャン……パシャン……パシャ……
「…………ヴォゥ。」
だが次の瞬間、俺はそのモヤモヤが一気に晴れ渡ったような感覚に襲われる。ただ、その咆哮が酷く悲しげに聞こえてしまったという、本当にただそれだけで、パズルのピースが嵌るように、全てがわかってしまったかのような感じがしたのだ。
己の力を誇示する?此方を嘲笑う?勝利を確信する?……我ながらなんと馬鹿らしい思考だろう。何故その瞬間に思い至らなかったのだろうか、それが"呼び鳴き"であることを……。ドスイーオスは仲間を呼んでいたのだ。助けを求めていたのだ。
……その仲間を、ついさっき自分で食べてしまったと言うのに。……助けに来る仲間など、もうどこにもいないと言うのに。
今は、お前の事がよくわかる。
お前に閃光玉が通用しない原因も。
ずっとその目が虚空を捉えたままなのも。
片脚を泥沼に打ち付けるその行動の本当の意味も。
そして、仲間の死骸を平然と食らってしまったその理由も。そっか、お前––––––
「–––––––お前……、"目が見えていない"んだな。」
この、悲しき一匹の竜は……、
……友を食らった事にさえ、気付くことが出来なかったのだ。 -
170
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-05 18:55
ID:DXCTkSc.
[編集]
「ヴォゥ……。」
紅き竜は静かに吠えた。
普通の人が聞けば酷く威圧的に聞こえるであろうその咆哮は、しかし今聞いてみれば隠しようのない悲しみを孕んでいるようにも感じられた。パシャン……パシャン……
泥沼の水面に片脚を打ち付けるその行為で、奴は俺達の……そして既にもう何処にも居はしない仲間の位置を探っていた。小さな波の反響を感じ取って、無明の世界に懸命に光明を齎そうとしていたのだ。……先程も言ったように、鳥竜種というのはその感覚の殆どを視覚に頼っている。勿論嗅覚だってそれなりに優れてはいるが、それは視覚を失った分を補うにはあまりにも足りなさ過ぎた。だからこそ彼奴は、ああやってその弱点をなんとか補って、普通に生きることさえ難しいこの死の沼地を今日という日まで生きてきたのだろう。それがどれだけの苦難の道であったのか……五体満足の健康体である俺には到底想像もつかない。
いや、飢餓で倒れた仲間の屍を食らって飢えを凌ぎ……とうとう最後の一匹になるまで生き続けた生涯なんて、想像したいとも思えない。それが出来てしまったこのドスイーオスの事が、俺は確かにこれまでのどのモンスターよりも遥かに理解出来ないし……恐ろしい。化け物にしか見えないさ。……だけど同時に、憐れにも思う。
それは或いは傲慢な感情なのかもしれない。
何も知らないからこそ言うことのできる、無責任な憐みなのかもしれない。ああ、わかってるさ。俺はお前の事を救うことなんてできやしない。
死こそが救いなんて、人間側の勝手な妄想に過ぎないのかもしれない。死こそが救いであるならば……全てを犠牲にしてでもひたすらに生き続けたお前と、お前の糧となって死んでいったイーオス達が報われないから……。所詮部外者……いや、敵対者でしかない俺が、いかにしてお前の救いを決めることのできようものか。「……すまない、俺は何もしてやれない。」
狩猟笛の柄を握る手に、自然に力が入る。それは悔しさとも無力感ともまた違った、なんとももどかしい感情のあらわれだった。
けど、俺達はただの狩人なんだ。自然の調停者なんて気取ってはいるけど、所詮は自然界に息づく一匹の獣でしかない。そんな俺達に、お前を救うことなんて出来ないし……そして多分、お前もそれを望んではいないのだろう。
……所詮、人と竜は相容れるべきでない存在なのだから。
狩る、狩られる。ただそれだけの関係で十分だ。ドスイーオスの口から放たれたドス黒い毒液がすぐ真横を掠めた瞬間、俺は静かに俯いていた顔を上げた。世の中には考えるべきことがあまりにも多過ぎて……それは到底一人の脳に負えるものではない。人間は考える生き物であるが、そう多くのことを一度に考えるなんて不可能なのだから。
だからこそ、考えることが多過ぎて迷ってしまった時は、一度立ち止まって、考えることを二つだけにすればいい。俺は狩人であることと、お前がモンスターであること。
今考えることは、きっとそれだけで十分なのだから……。 -
171
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-05 18:56
ID:DXCTkSc.
[編集]
「皆んな、ドスイーオスから出来るだけ離れてくれ。」
俺はそう周りに指示を出すと、幾度となく吐き出される毒液を躱しつつ、ドスイーオスから距離を離していった。それは俺の指令を聞き届けてくれた他のメンバーも同様だ。勿論背中から毒液を浴びてしまえばひとたまりもないので背を向けることはしないが、ドスイーオスを視界に捉えつつも着実にその距離を離していく。
いくら遠隔攻撃が可能なドスイーオスといえど、それは『可能である』という範疇でしかない。放物線を描いて飛ぶその毒液は、リオス種の火球のように直進軌道で飛ぶブレスとは比べ物にならぬほどに射程が短いのだ。つまり、俺達が一定以上距離をとってしまえば、奴が此方に攻撃するためには、あの接近を阻害する厄介な猛毒ゾーンから出なくてはならなくなるということである。その俺の目論見通り、ある程度距離を離してしまうとドスイーオスの毒液は此方に届かなくなり、ドスイーオスは無駄である事を悟ってか毒液を吐きかけるのをやめた。後は此方に近付いてきてくれれば作戦はひとまず成功なのだが……
しかし、そこで俺にとって予想外の事態が発生する。
なんと漸く猛毒ゾーンから出てきたドスイーオスは、俺達に背を向けてふらふらと足を引き摺りつつ何処かへ逃走してしまったのだ。これまで異常な程に攻めの姿勢しか見せてこなかった……一瞬逃げたかと思いきや戦闘続行のための補給をしただけであり、次の瞬間にはギアアップして再び襲いかかってきた程のあのドスイーオスが、本格的に俺達から逃げ、薄い霞の中に姿を消してしまったのだ。ドスイーオスが去ったことで静寂を取り戻した沼地を見つめ、ただ呆然とする俺達。
そこで初めて、俺は先程までドスイーオスが展開していた戦闘スタイルの種類の名称に思い至る。鉄壁の守りを誇る場所に篭ってチマチマとした攻撃を繰り返す……それは紛う事なき"籠城戦"だったのだ。そして、籠城戦の主な狙いと言えば……増援が来るまでの時間稼ぎか、こちらが諦めるのを待つというもの。先程のドスイーオスの場合は両方だろうか……?どちらにせよ、俺はドスイーオスと知恵比べで負けたようなものである。
そのことで凄まじく腹立たしい思いでいっぱいだが、取り敢えず一時的にドスイーオスの猛威から解放されたことは事実なので、各々砥石を用いて斬れ味を回復したり、携帯食料を水で流し込んで磨り減ったスタミナを回復したり、弾丸を調合したりして体勢を立て直す。ドスイーオスに一杯食わされたのは事実であるが、そもそも何故奴は俺達から逃げ出したのだろうか?戦況は奴にとって決して不利では無かった…寧ろ有利でさえあったはずだ。そうであるにも関わらず、奴は逃走を選択した。しかも……
「足を引き摺ってたってことは……弱ってたってこと?私達そんなに攻撃できてたようには思えないのだけれど……」
「何らかの要因で初めから大きく体力を削られていたとかなら納得出来るが……」そう、モンスターが足を引き摺るというのは、かなり弱った……瀕死であることのサインである。それこそ、今回の依頼の条件である捕獲可能ラインを軽く超えるほどに。だが、G級で、獰猛化で、特殊個体という三拍子が揃ったモンスターにしては、もう弱っているというのはあまりにも早過ぎる気がしてならない。それこそ、エドワードの言うように初めから何らかの要因で体力を削られてでもいない限りは……例えば、
「例えば、他のモンスターに襲われてたりってとこか?」
そのアマネの台詞によって、俺達の間に沈黙が訪れる。ドスイーオスのあまりのインパクトに忘れかけていたが、その可能性は当初から存在していた。死体で見つかったバサルモス、ゲリョス、ギギネブラ……それら全てをドスイーオスがやったとは到底考え辛い。何か別のモンスターが存在して、それがこの事件に大きく関わっている可能性も無くはないのだ。
だが、例えばそれが本当に存在したとして、それは一体どのようなモンスターなのだろうか?そしてソイツが一体何をしたことによって、このような被害を齎す結果となったのだろうか?
多々ある問題の、何が原因で、何が原因ではなくて、何と何にどのような因果関係があるのか……まるで想像もできなかった。「取り敢えず、真相はドスイーオスを捕獲してからだ。」
そうは言ったものの、俺の中ではどうにも拭い切れない"予感"が燻り続けていた。
Q.どのエリアに向かいますか?
1、腐った蓮沼(元観光名所)
2、寂れた湿林(入り口付近)
3、光無き洞窟(宝石採れる)
4、その他(自由枠) -
172
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-05 23:23
ID:D/abgw7k
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んー、4で千里眼の薬があるなら使ってドスイーオスを追いかけたいなぁ
さてさて黒幕は誰なのやら、私には見当もつきませんわ
因みに上がった予想の中に答えはありますか? -
173
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-06 21:37
ID:hsQbZJeY
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>>172正解そのものは意外と早く出ましたね。
ただ、それは"正解"でありながら"真実"では無かったと……今の段階で私に言えるのはこれだけです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーードスイーオスを惜しくも逃してしまったが、こんなこともあろうかと、俺はあるものを用意していたのだ。
「それは…千里眼の薬か?」
千里眼の薬とは、飲むことで一時的に感覚が研ぎ澄まされ、モンスターの位置を探ることができるという優れ物だ。
効果からして若干怪しい雰囲気のする薬であるし、事実その成分は未だによくわかっていないらしいのだが、後遺症が出たという例は今まで一度もないようなので多分大丈夫だろう。薬を一本飲むだけでこの広大でしみったれた沼地をドスイーオスを求めて歩き回るという手間が省けるのだから、ハンターにとって非常に有用なアイテムであることは間違えようのない事実であろう。「……えっと、取り敢えず、それを最初に使わなかった理由は何だ?」
しかし、自慢げに千里眼の薬を掲げる俺に、アマネの口からそんな厳しいツッコミが入れられる。
「……え?」
「いや、『……え?』じゃなくて、それを最初に使ってれば一々探し回らずともドスイーオスを発見できたんじゃないか?」アマネの言うことも一理ある。いや、百理ある。千里眼の薬を最初に使っていればわざわざ洞窟や蓮沼なんかを渡り歩かずとも一発でこの平野にドスイーオスがいることを特定するくらい簡単だったはずだ。
では、何故俺がそれをしなかったのか……。「……忘れてた。」
この時俺に向けられたアマネ、アリーチェ、エドワードの三人の可哀想な人を見るような目の事を、多分俺は一生忘れないだろう。
***
「やはりというか、予想通りの場所だったな。」
千里眼の薬の導きに従って俺達がやってきたのは、この沼地に来て真っ先に入った宝石が採れるという洞窟の中であった。
これは前にも説明したであろうが、洞窟というのは雨風を凌ぐことが出来る上、年間を通して気温差が小さく快適であり、多くの生き物が住処とすることが多い場所だ。特に、この場所の洞窟は外部に存在する毒沼が侵入できない構造になっているという事情も相まって、休息地としてはうってつけの環境であろう。
ドスイーオスの持つ盲目であるというハンデも、視界の悪い暗所では殆ど関係ない。地面には薄くではあるものの水が張っている場所もあるため、ドスイーオスの使う波紋を利用した索敵も十分に機能する、まさに奴にとってはうってつけの巣であった。
どんな生き物であれ、己のホームグラウンドで戦った方が強いというのは考えるまでもない事実である。今回の目標はドスイーオスの討伐ではなく捕獲であるから、そう手間となる事態に陥る可能性は低いと考えられるが、それでも必ずしもドスイーオスが休眠状態に入っているという保証はどこにも存在しないので、俺達は細心の注意を払いつつ手元のランプの僅かな光と鍛え上げた己の目だけを頼りに、昏き洞窟の奥へと進んでいった。「捕獲用の罠と麻酔玉は全員持ってるよな?」
「当たり前よ。寧ろ、もしかしたら麻酔玉二発だけじゃ眠らないかも知れないから、多めに持ってきたくらいだわ。」確かに、アリーチェの言う通り、あの劇毒を扱うドスイーオスなら多少の麻酔で眠るようには思えない。多少多めにぶつけた方が安全かもしれないな。……もっとも、大型飛竜でさえ簡単に昏倒させられるような超強力な麻酔が"多少"であるかはわからないが。
ともあれ、嫌に長く感じたこの任務もこれで漸く終わり……そう思っていた、まさにその時だった。–––––––ミシミシ……バキッ!
「……え?」
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174
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-06 21:42
ID:hsQbZJeY
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–––––––ミシミシ……バキッ!
静かな洞窟の中に突如鳴り響いたその異音に、俺は何事かと顔を上げた。瞬間、俺の目に飛び込んできたのは、俺達目掛けて落下してくる巨大な鍾乳石……。長さ数メートル、直径30センチはあろうかという巨大な石の柱……当然当たってしまえば防具に身を包んでいようとひとたまりもない。
"このままでは危険だ"そう瞬時に悟った俺は、咄嗟の判断で後先の事など考えず後ろに続いていた他三人を突き飛ばす。俺に突如として突き飛ばされた三人は洞窟の入り口に近い方に後ろ向きに倒れ込み、俺はその反作用を受けて洞窟のより奥へと倒れ込んだ。
思えばその行動こそがこの直 後の窮地を招くこととなったのだが、その時の俺には迷っている暇など一瞬たりとも存在しなかったのである。ズドォォォォォォオオオオン………ッッ!
直後、倒れ込んだ俺達の丁度間に隔たるように巨大な鍾乳石が突き刺さり、砕け散る。そう、直後に砕け散ったとはいえ硬い洞窟の岩に大穴を開けて突き刺さったのだ。それだけでこの鍾乳石がどれだけの力を持っていたのかなど想像に難くないだろう。一瞬でも判断が遅れていれば全員まとめてペシャンコであった可能性も決して有り得ないことではないのだ。そう考えると全身の血が抜けていくような感覚に陥るが……しかし残念ながら震えている場合ではない。
巨大な鍾乳石が落ちた衝撃により洞窟全体が大きく揺れ、それによってまた別の鍾乳石が落下を始めたのだ。最初に降ってきたものに比べればいくらかサイズは劣るものの、相当な数である。この時ばかりは他のことを考える余裕など一切失い、俺は懸命に降りしきる鍾乳石の雨を躱し続けた。時間にするとどれくらいだろうか?凄まじく長い時間にも感じたが、その実数十秒もなかったのかもしれない。漸く鍾乳洞の崩壊が終わりを見せた頃、俺はゆっくりと顔を上げた。
「生きてる……良かったぁ、ドスイーオスをあと一歩目の前にして死んだんじゃ救われねぇよ。しかしなぁ……どうすんだよコレ。」
生きていることを然りと噛み締めていた俺の目の前にあったのは、無数に積み上げられた瓦礫の山。それによって他のメンバー三人と完全に分断されてしまったのである。勿論、俺だってハンターだ、角度的にはこの瓦礫の山を登ることは造作無いだろう。しかし未だにガラガラと崩れている不安定な状態だ、今登ろうとすれば間違えなく崩れること請け合いだった。
パンパンと防具に付いた埃を払い、狩猟笛を杖代わりに大義そうに立ち上がる。そして、瓦礫の向こうに向けて声を掛けた。「アマネ〜!アリーチェ!エドワード!生きてるか〜?」
本当はこんな場所で大声なんて出したくないのだが、背に腹は代えられない。三人がこれしきのことで死ぬとは思えないが、生存確認くらいしておかなくては気持ちが落ち着かないのだ。
そんな俺の声に応えたのは、他ならぬエドワードの声だった。「こっちは無事だ……!声を聞く限りそっちも無事らしいな!だがどうする?完全に分断されてしまっているようだぞ?」
「取り敢えず抜け道を探すか退かすかしておこう。というか、そうじゃないと俺がここから出れないから。」どうやらあちらも全員無事であったようだ。それを聞いて安心した俺は、早速人差し指を軽く舐めて立て、風が通っている場所が無いかを探る……が、よく考えれば目の前にある山は柱状の物体が重なって出来た瓦礫である。そのような隙間がいくら見つかっても無駄だろうと思ってすぐにやめ、地道に退かしていくことにした。
それにしても見事な鍾乳石である。手元のランプでよく照らして観察してみれば、表面がツヤツヤに輝いておりまるで鏡のようにさえ見えてしまう。鉱山が近いからか通常の鍾乳石と異なり黒っぽい色をしているのも、その鏡としての役割の一助を果たしていた。……ん?何故この部分だけ赤いんだ……?
––––––––ヴォゥッ
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175
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-08 21:21
ID:BFqht.qI
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––––––––ヴォゥッ
背後から聞こえたその鳴き声の主を、俺は瞬時に察することができた。……というか、この場所にこの状況で出てくるのは、十中八九コイツ……ドスイーオスしか居ないというのは子供でもわかることなのだが。
俺は手に持った鍾乳石をゆっくりと地面に置き、淡い光を放つランプを腰にぶら下げると、振り返ることもなくゆっくりと立ち上がって、言った。「……やれやれ、退路を塞がれた上に一対一(サシ)での勝負か、ここのところどうも運が無ぇな。もっとも、それはお前も同じなんだろうが……。」
あくまで自然体で、しかし、隙を見せることはなく。
気圧されてしまえば勝ち目は無い。焦りは死への近道だ。恐れたら負けである。常に余裕を持ち、視界が無くとも相手の一挙手一投足を肌で感じろ。
沈黙が否が応でも緊張感を高めていく。己の鼓動でさえどうしようもなく煩く感じてしまう。……隠し切れない冷や汗が額から頬を伝い、冷たい洞窟の床へと落ちる。ピチョン……
–––––––俺の発した言葉に対する返答は、鋭利な牙の急襲だった。
咄嗟の判断で僅かに左に身を逸らせば、先程まで俺の体が存在した空間をドスイーオスの牙が貫く。そのことに恐怖心や安堵を抱く間も無く、素早く半身を捻って背に背負うヘビィバグパイプを抜き放つと、その勢いのままにドスイーオスの胴体を殴打する。それによってドスイーオスに僅かな隙が生じた瞬間を逃さず、俺は素早く後ろへ跳んで体勢を立て直した。
カウンターを決めた俺を睨みつけ、低く唸るドスイーオス。
その雰囲気には、どことない焦燥感が感じて取られた。襲撃のタイミングから考えて、どうやったかは知らないが先程の大崩落を引き起こしたのはコイツなのであろう。己の巣の一部を崩壊させてまで、俺達を仕留めようとしていた……おそらく、このドスイーオスにももう余裕が無いのだ。俺達の攻撃によって傷付けられた皮膚の裂け目から、命を簡単に奪ってしまう猛毒が時を追うごとに侵入していく。いくら耐性を持っていたとしても、弱った状態ではそれに耐えられる保証など無かった。
一方で、俺にも既に余裕など存在しなかった。数時間もの間なれない泥沼に足を取られながらの戦闘、トドメにさっきの鍾乳石の雨霰……さらに悪い事に使える秘薬は残り一つで、フォローしてくれる仲間は瓦礫の向こう側。平静を装ってはみたものの、とてもじゃないが戦いなんて出来ないような最悪のコンディションである。……だが、残念ながら、両者共に既に退路は断たれている。
生き残るためには、相手を打ち倒すしか道は無いのだ。刹那、衝撃が交差する。
硬質物同士が激しく衝突する甲高い衝撃音が、暗闇の洞窟の中に反響し、オレンジ色に揺れる小さな光が両者を僅かに照らしていた。一瞬で攻勢に出た両者の位置は、瞬きの後には背を向けあうように入れ替わり、しかし余韻もないままに次なる攻撃へと紡がれていく。攻撃、防御、回避。
その応報が目まぐるしく繰り返され、静謐に包まれていた洞窟を騒がしい"戦場"へと染め上げる。片方が攻撃を繰り出せばもう片方がそれに対応し、反撃を繰り出す。それをもう片方が処理し、反撃。決して深追いはせず、まずは己の命を最優先に、両者は戦い続けた。一つの攻撃(問い)には一つの対処(答え)。そんな形式美じみた応報は、しかし極限の中で探り当てた互いにできうる最高の動きでもあった。
……だが、そんなある種の美しささえ持っていた攻防は、呆気なく終わりを迎える。「……っ!?」
原因は、たった一つの小さな鍾乳石の一部だった。中が空洞になっていたそれは、俺が踏んでしまったことにより、男一人の体重を支えきれるはずもなく脆く崩れ去る。それによって俺がバランスを崩すのを、ドスイーオスは決して見逃さなかった。
–––––––次の瞬間、俺の目の前にはドス黒い毒液がすぐそこまで迫っていた。
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176
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-10 21:30
ID:6U.LffL6
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突如、視界が暗転した。
天地がひっくり返るような感覚に、俺は思わず片膝を付いて倒れこむ。次第に激しい動悸に襲われ、呼吸は俄かに荒ぶっていった。凄まじい吐き気が大波のように押し寄せ、暫しは息をすることさえも忘れて、その場に蹲るように幾度となくえずく。アイテムポーチに手を伸ばそうと試みるが、どうやらさっきの鍾乳石崩落の時にポーチを落としてしまったようで、その手は虚しく空を切る。
業火に包まれたかのような感覚に、額から滝のような汗が噴き出した。しかしその一方で、猛烈な寒気にも襲われ、全身が鳥肌立ってブルブルと震える。ドス黒い毒液に触れた場所が、焼け付くように熱く、そして刺すように冷たい。
顔を上げて状況を確認しようとも、もはやどっちが上でどっちが前あるのかすら今の俺にはわからなかった。それでも何とか立ち上がろうと懸命に手足を動かすが、その感覚は徐々に薄れ行き、うまく力を入れることさえままならないのだ。目の前が真っ暗で何も見えず、鼻なんてとうの昔に利かなくなり、手先の感覚が失われつつあるのがひしひしと感じて取られた。……ただ一つ、耳だけがいやに研ぎ澄まされている。–––––––ヴォゥ!
その声は紛れも無い勝鬨だった。
ドスイーオスはこの瞬間、己の勝利を確信したのだ。
そして、それは同時に、俺の敗北が……"死"が決定付けられた瞬間でもあった。パチャン……パチャン……
死の足音が一歩一歩近づいてくる。
まるで時間の流れが緩やかになったかのように、周囲の動きが嫌に遅く感じられ、その歩みは酷く焦れったい。ただ、徐々に大きくなるドスイーオスの呼吸音が、俺の残りの寿命を教えているかのようだった。
……死–––––––「––––––––なせねぇぇぇええっ!」
その瞬間、けたたましい炸裂音と共に積み上がった鍾乳石の瓦礫が一斉に吹き飛んだ。直後に爆炎の中から飛び出したアマネ、アリーチェの二人はそれぞれの得物で俺にトドメを刺さんとしていたドスイーオスに肉薄する。
そしてその後方から現れたエドワードが、即座に蹲る俺に駆け寄って抱き起こした。「おいっ!大丈夫か!?」
エドワードは視線を落とすと俺がアイテムポーチを持っていないことに気が付いたのか、自分のアイテムポーチを弄って秘薬を取り出し、俺に飲ませようとする。
しかし、ドスイーオスはアマネやアリーチェすら無視して、なおも俺の命を奪わんと接近する。すると必然、俺の側にいるエドワードもドスイーオスの迎撃に加わらざるを得なくなり、三人は倒れる俺を庇って戦う形になってしまった。耳に激しく響く戦闘音に、俺は固く拳を握り締めて歯軋りをする。
プチッ……!
……何かが潰れるような音が、頭蓋骨に小さく鳴り響いた。
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177
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-10 21:31
ID:6U.LffL6
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思えば、この戦いが始まってから、俺はずっと誰かに守られて、庇われてばかりである。
もちろん、そうでもしなければ命が危険でるような過酷な戦場だったのだから、仕方ないと言えば仕方ないことではあるのだろう。だが、果たして俺は本当にそれでいいのであろうか?
俺は仲間に守られながらでないと戦えないような、情けない男になりたかったのか?俺は誰かに頼らないと生きられないような、カッコ悪い男になりたかったのか?否。断じて否である!
これまで幾度となく視線を潜り抜け、その度に強くなると誓ってきた。幾度となく危機に陥って、その度に仲間を守れる力が欲しいと願いつづけて来たんだ。
初めてハンターとなったあの日、初めて他人の命を背負ったあの日、初めて殺意を持って命を奪ったあの日……俺は強いハンターになりたいと、そう思った……。だから立て……立ち上がってくれ、俺の身体!
俺がこの手で殺めてきた数多の命のために……
俺の帰りを待っていてくれる、掛け替えのない人達のために……っ!「………ぅぅぁぁぁぁぁああああああっ!!」
腹の底から絶叫した。
歯を目一杯に食い縛り、身体を起こそうと全身に力を込める。
……だが、そんなのは幻想だ。
根性論も甚だしい。
気合いや覚悟なんかで、死の猛毒は消えてくれはしない。
気合いや覚悟なんかで、失った体力が戻ることもない。
気合いや覚悟なんかで、新たな力に目覚めるなんて、夢物語に過ぎないのだ。しかし、俺は立ち上がった。
立ち上がるだけの理由があったから……。
だけどそれは、気合いや覚悟でも無ければ、根性でもまた無い。仲間が戦っているからとか、強くなると誓ったからとか、待ってくれる人がいるからとか、そんなご立派な理由なんてありはしない。ただ、言ってみればそう–––––––奥歯を舌で弄り、砕けたカプセルを乱暴に吐き出した。
口の中に広がるなんとも言えない味に俺は顔を顰めつつも、しかし口元には確かな笑みを浮かべる。別にそれは余裕があったというわけではない。寧ろ逆だ、ピンチな時ほど笑顔を作れ、焦る時ほど不敵であれ……それが俺の思うカッコいい男の姿であったから、俺はなおも不敵に笑うのだ。「カプセルの味は要改良だろうけど、まあ礼は言っておこうか。」
そう言う俺の脳裏に浮かび上がるのは、幼い少年の姿をした長き時を生きる自称商人、ミラルパの姿。まだ会ってから1日程度しか経っていないような間柄だが、俺がこうして立ち上がれるのは彼のおかげと言えるだろう。
地面に転がるヘビィバグパイプを拾い上げ、俺は然りと前を見た。今は不気味なほどに感覚が研ぎ澄まされている。動悸も立ち眩みも吐き気も息切れも既に存在しない。では、それはいったい何故であろうか?
どうして俺は今、こうして立ち上がることができているのだろうか?
その理由は……簡単に言ってしまえば、"歯を食い縛ったから"。「しかしなぁ、奥歯にカプセル仕込んで噛み潰すとか、どこの草の者だって話だよなぁ……。」
–––––––備えあれば憂いなしという、本当にただそれだけの話である。
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178
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-11 21:06
ID:eQ8q3XjI
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仲間も合流した。ドスイーオスの体力も残り少ない。後はドスイーオスを罠に掛けて捕獲するのみ……
「つっても、それが難しいんだよなぁ。」
そう、罠を仕掛けるには地面に両手を付いて屈む必要がある。一発の毒液が生死を左右する中でそのような無防備を晒して、この狡猾なドスイーオスが見逃してくれる筈がない。たちまち猛攻にさらされることだろう。一人が罠を仕掛け、その間他の三人がドスイーオスを足止めするという作戦を取ろうとも、既に弱っているドスイーオスにこれ以上猛攻を加え続ければ捕獲という任務を果たせずに討伐してしまうかもしれないというリスクを背負うことになる。しかし一方で、大した攻撃もせずにドスイーオスの注意を引き付け続けることも不可能だ。多少の攻撃ならコイツはさして気に留めることもなくゴリ押ししてくるだろう。今回エドワードの手にあるS・アルバレストも麻痺弾や睡眠弾を装填不可能なので、状態異常弾で強引に足止めするという策もまた通用しない。ならばいかにしてドスイーオスの猛攻を掻い潜りつつ罠を仕掛けるか……
……と、そこまで考えたところで、ドスイーオスの巨体が俺を押し潰さんと跳躍する。予備動作で此方に来るだろうと予測していた俺は難なくそれを回避するが、続けざまに繰り出された噛み付きは余裕を持って回避することができない。すぐ真横を通過した毒牙に、俺の額には冷や汗が浮かぶ。だが、直後にアリーチェの刺突によってドスイーオスは怯み、奴は瞬時にその標的を俺からアリーチェに移した。振り向きざまに繰り出されるドスイーオスの攻撃を盾で防ぐアリーチェの姿を横目に見つつ、俺はドスイーオスから距離をとる。
ここまでで秘薬を3個全て消費してしまった俺には、もう後が無い。というか、次ドスイーオスの攻撃を食らってしまったらそれこそ死亡率が凄まじいことになるので、ここは即時撤退するのが妥当とさえ言えるだろう。だけど、それじゃあ俺が納得いかない。
とても自分勝手であるのは重々承知だが、このままじゃあ到底引き下がれない。苦境に立たされてなお……いや、苦境に立たされたからこそ溢れ出る戦意を胸に抱き、狩猟笛の柄を強く握りしめる。が、しかし、そこで俺は視界の隅に映るあるものに気が付いた。
そして、俺が出した結論は……「悪い、秘薬がもう無い。撤退する!」
この戦場から離脱することだった。
俺の発した声にアマネもアリーチェもエドワードも軽く頷いたのみで、そんな俺を非難することは決して無い。狩猟の第一目的はまず自分が生き残ることであるというのは、狩人として生きる誰もが前提として知っていることであったからだ。
当然逃げる俺をドスイーオスは追おうとするが、三人の猛攻がそれを許さない。俺は激しい戦闘音をバックに、大タル爆弾で爆破されたのか黒く焦げて粉々に粉砕された鍾乳石の山を越え、途中で黒い焦げ目のついたアイテムポーチを回収しつつ、戦場から離脱した。
そうして戦線から離れた俺ではあるが、それは決して逃げた訳でも諦めたわけでもなかった。しばし歩みを進め、十分に安全と思える所まで離れた岩陰で、俺は焦げ目のついたアイテムポーチの中に手を入れ、白い円盤状の物体を取り出す。
そして、その白い円盤状の物体を先程発見した薄い板のような形状をした岩に安全ピンを外して張り付けると、白い円盤状の物体……シビレ罠は、オレンジ色の雷光を煌めかせつつクルクルと回転を始める。
罠が問題なく作動したことに満足げに頷いた俺は、それを手に先程背を向けた戦場に向けて走り出す。再び砕けた鍾乳石の山を乗り越え、戦場に舞い戻ると、俺の目に映ったのは死の淵に瀕してなお暴れ狂うドスイーオスと、討伐してはならないという意識からどうしても攻めあぐねてしまう三人の姿。
それを視界に収めた俺は、深く深呼吸をした後、シビレ罠が取り付けられた岩の板を、ドスイーオスの足元に滑り込ませるように投げつけ、そして叫ぶ。「エド、捕獲用麻酔弾!」
直後、ドスイーオスは見事俺の狙い通りにシビレ罠を仕掛けた岩の板を踏み抜き、全身を痙攣させて動きを止める。そこを見計らってエドワードの銃口から放たれた二発の弾丸が白い煙を出してドスイーオスの姿を覆い隠した。
–––––––騒がしかった戦場が、突如静謐に包まれる。
捕獲用麻酔弾の白い煙に包まれてなお立ち続けるドスイーオスの姿に誰もが一瞬息を呑み……しかし直後、ドサリという重々しい音と共に、その真紅の巨体は洞窟の地に倒れ伏した。
そして、暗き洞窟の中に、動く者の姿はなくなった。
「まったく……手こずらせやがって。」
-
179
名前:血溜まりのLycoris@難亭
投稿日:2018-03-11 22:01
ID:6U.LffL6
[編集]
変異ドスイーオスの捕獲が完了したことにより、思わず気が抜けるような感覚に陥るが、しかしまだヘタリ込む訳にはいかない。ここは依然として何が起こるかわからない危険な狩場……帰るまでが狩猟である。
「……長い戦いだったな。」
エドワードがしみじみと呟いたその言葉に、誰もが一様に頷いて同意を示した。ここまで長く、過酷な戦場はいつぶりだろうか……いや、最近は結構経験しているか?はっきり言ってそれもどうかと思うのだが……。
ハンターとなってから今日という日までに経験してきた数多の過酷すぎる戦場を思い浮かべ、遠い目を浮かべていた俺のの視界の片隅に、ふと眠りについたドスイーオスの頭の傍にしゃがみ込むアマネの姿が映った。「何をしているんだ?」
気になった俺がアマネの背後から声をかけると、しかしアマネは驚いた様子もなくドス黒い液体を収めた小瓶を片手に振り返って言った。
「毒液のサンプル回収だよ。元々はそういうクエストだっただろ?」
……すっかり忘れていた。
とにかくドスイーオスのインパクトが強すぎて半ば忘れかけていたが、今回の俺たちの本当の目的はスカラグラート西部に蔓延する謎の病の原因を探ることである。このドスイーオスの狩猟も、その病の最有力原因候補としてその名が挙がっていたからであり、毒液のサンプルを回収するのも重要な任務の一つである……ということをド忘れしていた。アマネが覚えていてくれたから良かったものの、……いや、捕獲だから後から回収しても大丈夫なのか。もしかしてギムルはその可能性を見越して捕獲を要請したのであろうか……?「……とにかく、帰りましょう。不老のミラルパが、帰ったらユクモの高級入浴剤で風呂を沸かしておいてくれると言っていたわ。」
アリーチェの言葉に、異を唱える者はいない。ベテランのエドワードでさえ、一刻も早く帰りたいと思ってしまうほどの戦いだったのだ。
洞窟を出た俺達を出迎えたのは、黒いキャンパスに無数の宝石を散りばめたような、満天の星空だった。周囲に視界を遮る木が存在しないからか、いつもより空が広く感じる。予定では日没までに狩猟を終えて帰還するはずであったのだが、すっかり遅くなってしまったようだ。多分皆んな心配していることだろうな……と、まるで他人事のように考えつつも、俺の頭の片隅にはどうにも靄がかかったような不鮮明な感覚が、張り付くように残り続けていた。
「なぁ、王立古生物書士隊員として……アマネは"どう"思う?」
敢えて具体的には聞かなかった。具体的な事を聞こうにも、知りたいことがあまりにも漠然と多過ぎたのだ。俺のその質問に、アマネはしばし考え込む表情を見せ……
「今回の件が全て同じ原因を持つのなら……その中心にいる存在の持つ影響力は正直計り知れないな。それこそ……っ!」
そこまで言い終えたところで、俺達の上空を一つの影が過ぎる。闇夜に紛れてその姿をハッキリと捉えることはできないが、その特徴的すぎるシルエットを見て誰もが一瞬でその正体を察した。
「ガブラス……やはりここに来ていたか。」
俺達の姿をを視界に捉えたガブラスは、上空から毒液を吐きかけようと首を擡げ………直後、けたたましい銃撃音と共に儚く撃墜される。エドワードの容赦ない弾幕によって地面に落とされもがくガブラスに、間髪入れずにアリーチェのランスが胴体を貫き、ガブラスはあっけなくその命を散らした。
「厄介な相手なんだけど……あのイーオス達と比べると凄い雑魚に感じるな。……そうだ。せっかくだしコイツの毒液も採取しておくか。ドスイーオスの毒との比較対象として。」
俺がそう提案すると、「賛成。」という言葉と共にアマネが即座にポーチから取り出した小瓶にガブラスの毒液を収めていく。さっきも思ったのだが、よく毒液に触れずにああも素早く採取できるものである。王立古生物書士隊のエースというのは伊達ではないらしい。
そんなアマネの手腕に関心しつつも、横たわるガブラスの亡骸を見つめて訝しげな表情を浮かべる俺。ガブラスは災厄の凶兆と呼ばれるモンスターであるのは前に述べた通り……そして、その災厄というのは……。そこまで考えて、俺はその思考を振り払うように首を振った。考えることは帰ってからでも出来るはずだ。他のメンバーも俺と同じようなことを考えていたのか、ふと目が合ってしまう。それによって生まれた暫しの沈黙……それを最初に破ったのはアマネだった。
「……取り敢えず、今は帰ろう。毒液もナマモノだから鮮度があるしな。」
……美しき星空に見守られ、俺達は死の沼地を後にした。
-
180
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-11 23:11
ID:2vNnRjOI
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「スケベハンター様一同、この度は変異ドスイーオスの討伐お疲れ様でした。スカラグラートの民に代わり、このミラルパが心よりお礼申し上げます。」
漸くの帰還となった俺達を、ミラルパが優雅に出迎える。というか、なんでコイツは他のメンバーは名前で呼ぶのに、俺だけは未だに『スケベハンター』って呼んでるんだ……わざとか。わざとだな。
ともあれ、そんなミラルパの後ろにいるのは、ギムル、ライカ、イオン、エリクシルの四人。どうやら皆んな帰りの遅い俺達を心配して待っていてくれたようで、ライカやイオンが武装しているところを見るに、もう少し帰りが遅ければ救援に来るつもりであったのだろう。そんな中でも印象的なのが、今にも寝落ちしそうにコクリコクリと船を漕いでいるエリクシル。おそらく待機組の中で最も仕事をこなしたのは錬金術師でもある彼女なのであろう。ずっと働きっぱなしだったのだから、無理せず寝ていればいいのに……。
誰もがそんな風に思いつつも、しかし無事の帰還を祝して各々に喋り始める。「アリーチェさん、大丈夫ですの?」
「鎧着たまま寝たい気分になったのいつぶりかしら……?でもお風呂にも入りたい……いっそお風呂で寝たいわ。」
「それ普通に死ぬやつですわ。」
「コレ採取した毒液のサンプルで、赤いラベルがドスイーオス、青いラベルが比較対象としてガブラスから採ったやつなんだけど……明日の朝にするか。」
「……ふわぁ……おきてまふよぉ……おひれ……zzz」
「捕獲なんて無理言っちゃってゴメンね?でもおかげでボクの研究も捗るよ、ありがとう!」
「そりゃどういたしまして……ってエリクシル倒れるな!寝るなら布団で寝ろ!」
「ハハハッ!じゃああなた君がベットまで連れて行ってあげたら?」
「いやいや、そんなことしたらスケベハンターの異名が更に……ギムルが運べばいいじゃないか、女同士なんだし。」
「やだよ、重いもん。」
「いや、エリクシルは軽いだろ?」
「……へぇ、ということは前に抱いたことあるの?」
「……何が言いたい。」
「別に〜?」
「レイカ成分が圧倒的に足りない……」
「一文字違いの僕で補給するかい?」
「……野郎と乳繰り合う趣味は無ぇ。」
「奇遇だな、僕もだよ。」
「なら言うな……ツッコミを入れるのも億劫だ。」
「カフェイン……カフェインが必要なんだ。」
「今飲んだら寝れなくなりますよ?高濃度のカフェインを摂取して意識障害を引き起こすとかなら話は別ですが……。」こうして、取り留めのない会話をしていると……
"ああ、無事に帰ってこれたんだな"と、改めて実感することが出来るのだった。***
翌朝、昨夜あんなに眠そうにしていたのに早朝に目を覚ましたエリクシルの元に、俺達は毒液のサンプルを届けた。これでこの毒液の成分が西部に蔓延する謎の病の原因物質と一致すれば表面上事件は解決となるのだが……。真剣な顔をして毒液を検査するエリクシルの横顔を、固唾を呑んで見守る。そして待つこと暫し、エリクシルはふぅ、と溜息をつき、俺達に振り返ってこう言った。「ドスイーオスの毒液、確かにこの病の原因と考えて問題無さそうです。」
エリクシルのその言葉に、皆が一様に安堵し、歓喜の表情を浮かべる。どういう経路から来たのかは不明だが、これでこの謎の病の原因はドスイーオスであったと結論が出たのだ。
これで事件は解決……誰もが一瞬そう思った。「今回の病の原因物質を極限まで濃縮したような凄まじい毒性ですね。この比較対象のガブラスの毒液と比べるとその致死量が……」
そう言いつつ青いラベルの小瓶を手に取るエリクシルの表情が、突如として曇った。直後にバッ!と音が出そうなほど素早く赤いラベルの貼ってあるドスイーオスの毒液のサンプルを振り返った彼女は、まるで何かに怯えるかのようにガブラスの毒液を調べ……そして小さく震えながら呟いた。
「……この毒液、間違えなくガブラスから採取したものですよね?」
……一瞬、その質問の意図がよくわからなかった。何故エリクシルが突然こんなにも焦り出したのかさえよくわからぬままに、俺は当然の如く「当たり前だろ?」と答える。しかし、俺のそんな当たり前の返答に帰って来たのは、あまりにも衝撃的な言葉だった。
「……じゃあ、ガブラスの毒液まで……変異しているということですか……っ!?」
––––––真実は、なおも遠く……。
-
181
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-03-11 23:42
ID:2vNnRjOI
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春休み中には終わらせますから!_:(´ཀ`」 ∠):
というわけでシナリオ前半終了〜。……これから後半あるんですよ〜(白目)取り敢えず蟹氏に土下座してきますね。ジャンピングドゲザァァ!気を取り直しまして、後半は本格的に一連の事件の真の黒幕に迫って参ります!
ここまで出てきた謎を大まかに纏めていきますと、
・鉱工業の街、スカラグラート西部に蔓延した人のみが罹る謎の病。
・謎の病の発見よりもかなり早期の段階で騒ぎになっていた変異ドスイーオスの群れ。
・生き物が一切棲みつかなくなるほどの大規模な沼地の環境変化。
・そんな沼地で次々に発見される毒を持つモンスターの死骸。
・不自然に弱っていたドスイーオスの体力。
・ドスイーオス達と同様に変異したガブラスの毒液。
まさに謎が謎を呼び謎と共鳴して謎めいた旋律を奏でるケイオスですね(支離滅裂)。あなたはじっちゃんの名にかけてこれらの謎を見事に解決することが出来るのでしょうか!?ちなみに今回もタイトル変化を仕込みましたが、シナリオタイトルは『昏き沼底、死の抱擁』であり、『血溜まりのLycoris』は場面……具体的にはドスイーオス捕獲戦を表すタイトルです。後半にも同じようなものを予定しております。乞うご期待?
***追記***
オリジナルキャラクターのイメージを掲載。
『charat』で作成。『ファイルなう』でURL化。これっていつまで見れるんでしょう?↓ミラルパ
https://d.kuku.lu/2fdf76f795
↓ギムル=ジルヴァート
https://d.kuku.lu/9305fcde00 -
182
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-12 07:51
ID:fvHaSB/o
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ドス難亭さんお疲れ様です~
長く書いて身体壊さない用にしてくだせぇ
(予想もしない読者の屑) -
183
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-12 09:29
ID:lzXIoK.Y
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最近、読み始めた者です。
更新される度、毎回、ワクワクしながら、読んでいます! -
184
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-12 16:50
ID:hsQbZJeY
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>>181にギムルとミラルパのイメージを掲載。『ファイルをダウンロード』を押せば見れる筈なので、良かったら見てくださいね!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー事件はまだ、始まったばかりであった。
やっとの思いで辿り着いた真実は、しかしまだスタートラインに過ぎなかったのだ。もし仮に、このスカラグラート西部に蔓延している謎の病の原因が本当に変異ドスイーオスの毒液であったとして、しかしそいつとはまるで関わりの無い筈のガブラスの毒まで変異しているとなると、変異ドスイーオスを倒しても、変異ガブラスを倒しても、また新たな変異毒持ちのモンスターが出没する可能性があるということになる。事実としてあの沼地には毒を持つモンスターの死骸がいくつも発見された。死骸があるということは、必然的にそのモンスター達もかつてはあの沼地で生きていたということ……つまりそいつらが変異する可能性も十二分に存在する。そうなってしまえば後はイタチごっこだ。根本的な解決策を講じるには、『ドスイーオスやガブラスの毒が変異したそもそもの原因』を取り除く必要がある。
しかし……、「他者の毒を強化するような存在……少なくとも僕は聞いたこと無いね。」
そう、『謎の病の原因』や、『大規模な環境汚染の原因』、『致死性の猛毒を吐き出す存在』などならばそれこそ様々なモンスターの姿が思い浮かぶのだが、『他者の毒を強化する存在』となると途端にどのようなモンスターなのかわからなくなってしまう。
あえて『他者を強化する』という要素に限定して考えるのであれば、真っ先に思い浮かぶのは当然、狂竜ウイルスという謎物質を操ることで有名な黒蝕竜ゴア・マガラなのだが、そうであるにしてはドスイーオスが狂竜化した様子は見られなかったし、それに今回の事件には狂竜ウイルスのきの字も出ていないのが気掛かりだ。
そもそも今回の一件が太鼓の病魔の事件と同様にゴア・マガラの特殊個体が原因であったのなら、ウチケシの実を使ったり、狂竜ウイルスが火に弱いという性質を利用して各所で火を焚くなど、他に対処法はいくらでもあったはずなのだから。「……駄目だな、材料が足りなさすぎる。」
そもそも、ドスイーオスの捕獲に向かったのも真実に辿り着くための材料を集めに行った筈であったのだが、結果から言えばより一層謎が増え、さらに深まったばかりである。
これほどの大事件を、しかし決して姿を晒すことなく引き起こす存在……まるで想像が付かなかったが、もしそのような存在が本当にこの世に居たとして……果たして今の俺で勝つことが出来るだろうか?
……いや、そもそもそんなモンスターが存在するのだろうか?もし、原因がモンスターとは異なる別の何かであったのなら……俺が最初に抱いていた疑惑を、再検証する必要が出てくるかも知れないな。
「さて、何から手を付けたものか……。」
Q1.あなたの行動を指定してください。
1、隔離施設にて治療が完了した人々に話を聞く。
2、死の沼地に再び探索に赴く。
3、ヒンメルン山脈の中腹にある鉱山へ向かう。
4、その他(自由枠)Q2.行動を共にするメンバーを指定してください。
※Q1、2の回答によっては確定でついてくる人物もいます。
1、アマネ
2、アリーチェ
3、イオン
4、エドワード
5、エリクシル
6、ギムル
7、ミラルパ
8、ライカ -
185
名前:時雨
投稿日:2018-03-12 21:04
ID:gX20EMvk
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内容が、濃いッ! あらすじどうまとめるか…。
とりあえず3でアマネさん連れていこう。
なに、書士隊なら山登りもしたことあろうて。
…まぁ、書士隊兼ハンターである彼ならではの視点を聞いてみたいしな。
後は、ライカとイオンさんかな? 二人の活躍を見てみたいし。 -
186
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-12 22:19
ID:G1ur6N.c
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前に聞いた話の中にも出てきたかと思うが、元々例の変異ドスイーオスはもっと山に近い場所を縄張りとしていたらしい。それが謎の病が発見されたのとほぼ同時期に、人里に比較的近い件の沼地まで降りてきたわけだ。では、その変異ドスイーオスが最初に発見されたという場所は、そもそもどのような所であろうか?山の麓にある死の沼地から、さらに山の近く……その先には、このスカラグラートという街の発展を支えてきた心臓部とでも言うべきもの……鉱山が存在する。
俺はその鉱山の存在がどうしても気になって仕方がなかった。鉱山が発見されたのが約十年前の出来事で、一方変異ドスイーオスが発見されたのはせいぜい半年程、謎の病に至っては初症例の発見から僅か一ヶ月程度しか経っていないのだから、時間軸で考えればどれもこれもバラバラではあるのだが……縦方向の空間軸で考えると、一番上にある鉱山が最初、次にドスイーオス、最後に人里……と見事に並んでいるのが、どうにも気掛かりでならない。
勿論、ただの偶然に過ぎないのかも知れないが……もしただの偶然であったとしても、それが本当にただの偶然であることを証明しておきたかったのだ。「というわけで、その鉱山に行きたいんだが……。」
「別に構いませんが……?ただ、スケベハンター様達からもたらされた情報から考えると、依然として近辺の沼地は危険地帯には変わりないので、竜車向かうとなると多少お時間のがかかる迂回路を使うことになりますがよろしいでしょうか?向こうには飛行船が降りることができるような平地はありませんし、徒歩なんて以ての外でしょう。あ、竜車賃に関しては経費から降りるのでお気遣いなく。」ミラルパに鉱山まで行くにはどうすれば良いのかを聞いてみると、帰ってきたのはそんな返答であった。どうも、調査終了までの俺たちの移動やら道具やら食事やらは、全てミラルパが負担してくれるらしい。貧乏神にでも取り憑かれたのか常に金欠気味の俺からすれば有難い話である。
詳しく聞いてみると、竜車の移動に時間がかかるといってもそれはせいぜい半日から一日程度のことであるようで、初日にドスイーオスの件が片付いたことを考えると、そこまで痛い時間のロスというほどでもない。そういうわけで、鉱山に向かう事が決まったのだが、俺一人で行っても全く意味がないというわけではないが見落とす事も多かろうと、俺の他にアマネ、ライカ、イオンの三人が共に行動することになった。
「……のはいいんだけど、なんでお前が御者をやってるんだ?ギムル。」
「例の鉱山にはボクもある程度関わってるからね。別にいいでしょ?狩場に出るわけでもないし、足手まといにはならないさ。」俺達が乗っている竜車の手綱を握るギムルに声を掛けると、彼女は飄々とそう言ってのけた。というか、御者も出来る科学者なんて何気にかなりレアな人材である。アレか、優秀か。
詳しく話を聞いたところ、彼の鉱山から採掘された鉱石の精錬などに関する一部システムにギムルが関与しており、その説明や、更には鉱夫達との橋渡し役としても付いてきているらしい。アレだ、優秀だ。 -
187
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-15 20:05
ID:vAR5VuSY
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難亭 凝態は二日連続で掲示板に書き込み出来ないフレンズなんだね!すごーい!( ◠‿◠ )
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーガタガタ、ガタガタと単調に繰り返す音の響きに包まれながら、俺達を乗せた竜車は二頭のアプトノスに引かれて人が通行できるように均された険しい山の斜面をゆっくりと登っていった。
最初こそ外の景色の移り変わりを見て暇を潰してはいたものの、次第にそれもひどく代わり映えのないものに思えてしまい、暇つぶしに雑談を始めたのだが、やはりメンバーがメンバー、状況が状況であるだけあってか、最終的には今回の事件についてのそれぞれの考察を語り合うということになった。「不老のミラルパに連れられてた君に助けられたっていう二匹のメラルーに話を聞いたんだけどね、その二匹が近辺で目撃した現象として、"謎の閃光"、"糸のようなモノ"、"頻度が多くなった白い霧"、"不自然な岩の塊"、"地響きと動く山"があったらしいんだ。そして君達が沼地で発見した死骸が、ゲリョスとギギネブラとバサルモス。このうちギギネブラの死骸は聞いたところによると結構前の物だと考えられるから除外するとして、閃光と岩の塊の正体はゲリョスとバサルモスの二頭でほぼ間違えないだろうね。だとすると残るのは糸と霧と山……その内のどれかが真相なんじゃないかな?」
とはライカの言葉である。
糸と霧と山……それぞれで真っ先に思い浮かぶモンスターといえば、糸は影の暗殺者ことネルスキュラ、霧は古龍の一角を担うオオナズチ、山は小山に見紛う巨躯を誇るドボルベルクあたりだろうか?この内前者二つは毒の扱いに長けたモンスターであるが、後者のドボルベルクは毒など用いない……というか毒が一番の苦手と言っても過言ではないモンスターである。となると、残るはネルスキュラとオオナズチ……そしてあの沼地に痕跡らしきものが存在したのは両者の内ネルスキュラである。となるとやはり黒幕はネルスキュラか……?「……とは言え、隠密に特化しているとは言え周辺を霧に包み込むオオナズチと、巨大で複雑な巣を構築するネルスキュラと、動くたびに地面が揺れるドボルベルク。そのどれかが黒幕であったとしても、まだカケラも姿を見せていないのが気掛かりではあるよ。」
ライカはそこまで言うとそこで言葉を締めくくった。
おそらくではあるが、まだ彼の中でも情報を纏めている途中であり、ハッキリとした結論は出ていないのであろう。分かりづらい思案顔で熟孝に入ったライカに続いて、言葉を発したのはアマネであった。「俺的には今回の一連の事件の根幹を成しているのはモンスターでもなんでもなくて、もっと小さい生き物なんじゃないかな〜っていうのが正直な感想だ。」
「小さい生き物……ですか?」流石と言おうか生物に関する事柄には詳しいアマネの口から出たのは、ハンターとしては意外な仮説であった。
「例えば……ここ、ヒンメルン山脈が高緯度に存在する山脈なのは言うまでもないことだけど……そういう環境に好んで生息する生き物に毒クモリという蜘蛛の仲間がいる。更に言えば、鉱山が発見されて麓付近に火山洞がある……つまり元はこの周辺は火山地帯だったと考えると、もう一つ挙げられるのがキラービーナスという蜂だ。」
毒クモリにキラービーナスか……。うーん…何処かで聞いたことがあるような……無いような……
しかしどちらともモンスターでもなければ、普段使うようなアイテムでもない……と、思う。少なくとも俺は知らない。であるからにはハンター生活に必要不可欠なものというわけでは無いだろうな。「毒クモリは大きな種だと一部地域では所持さえはばかられるような特級危険生物、キラービーナスはその美しい容姿に惑わされた者を事実として何人も無残な死骸に変えてきた最恐の殺人バチ。どっちも一刺しで人が死ぬ。ぶっちゃけ毒性だけなら変異ドスイーオスにも負けてない。」
「うわっ……」ハンター生活に無用どころが凄まじくお近づきになりたくない連中だったようだ。確かにそいつら……或いはそいつらの毒をなんらかの経緯で摂取したモンスターがいたならば今回のような事件が起こったというのも納得である。
「ただ、どっちもすごいデリケートな生き物だからな……環境に影響を及ぼすほどの大発生なんてまず起きないし、想像したくもない。よってどちらも現実的な説とは言い難い。」
「……ってあれ?結局違うのか?」
「ああ、多分な。今俺が本当に考えてるのは、もっと小さな生き物のことさ。」……もっと小さな生き物?
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188
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-15 20:07
ID:vAR5VuSY
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「これだけの大事件を引き起こして起きながら、まだその一端も姿を現していない生物……それは凄まじく隠密能力に優れた奴か、或いは"元々見えない連中"さ。」
「つまり、細菌やバクテリアってことですの?」
「ご明察。……って偉そうに言えるほどの根拠も確証も無いんだけど、可能性としては十分にある。」アマネの言う"もっと小さな生き物"というのは、その名の通り肉眼で見ることさえ出来ないような極めて小さな存在のことであった。つまりなんらかの微生物の活動によってこれほどの事件が引き起こされたとする説か。
「微生物の力は侮っちゃいけない。見えないくらい小さな存在ではあるけど、人間に大いなる恵みをもたらすことも、反面災いを引き起こすこともある。ただ、その災いの代表例である感染症で無いとすれば……カビか?……やっぱり西部の人々にどんなルートで病の原因物質がもたらされたかを突き止めないとどの説も単なる仮説に過ぎないな。」
そう、アマネの言葉の通り、そもそも謎の病が広がったきっかけを突き止めなければ如何ともし難いのが現状だ。水でもなく、土でもなく、家畜でもなく……なおかつ感染症でも無いのに街中に蔓延するようなきっかけ……。
「それについてなんですけれど、鉱山から戻ったら一度体調を持ち直した方々に話を聞いてみません?その地域に根ざす祭りや風習……それらが深く関わっている可能性も十分に考えられますわ。自然云々以前に、私達はあの街について知らないことが多過ぎるんですわ。」
と、やはり女性と男性では目の付け所が違うのか、ここで誰もがおし黙るド正論を吐いたのはイオンだった。まさしく仰る通り、外的要因にのみ目を付けて、そこに住む人々の暮らしぶりを知らずしてどうして病の原因の探れようものだろうか。この辺我々男性陣はかなり狩人として職業病的な思考に陥ってしまっているようである。アマネの場合はそれにプラス学者脳か。
「うんうん、イオンの言うことにも百理あるよね。……と、都合の良いことにここにそれについて詳しそうな人物が一人いるわけだよ。」
イオンの言葉にうんうんと頷いたライカは、そう言いながら黙々と御者を務めるギムルの方に視線を移した。そういえば、彼女は西部に蔓延する謎の病の原因究明に一番真摯に取り組んでいたと変異ドスイーオスの捕獲から戻った時に聞いたことがあるな。あまりそういうことをするタイプには見えなかったので意外に思ったのをよく覚えている。ということは当然、俺たちよりは情報を持っているわけだ。
すると話の流れが自分に向いたことを察したのか、ギムルは振り返ることもなく話し始める。「ん〜、そうだねぇ……特にそこまで変わった風習は無かったと思うけど……強いて言うならキノコをよく食べるね。まあこれは他の沼地の民にも言えることなんだけど。ちなみにお祭りはあるけど時期的にはほぼ正反対だから多分関係ないね。細かい点を挙げていってもキリがないしなぁ〜、やっぱり自分の目で見て聞くのが一番だと思うよ。……それより、ボクはあなた君の意見に興味があるなぁ。君は今回の事件についてどう考える?何か考えてはいるんだよね?」
ギムルからのキラーパスにより、今度は竜車の中の全員の視線が俺に集中した。……うん、確かに皆んなには言わせておいて自分だけ言わないというのはずるいよな。
「……まだ情報は完全には出揃ってないし、あくまで仮説として聞いてくれ。」
「ここにいる全員そうだから別に構わないさ。」
「まあそうなんだけど念のためな……俺の考えは–––––––」Q.現時点でのあなたの考えは?
1.自由枠(不正解でも正解でも特にボーナス、ペナルティは予定していないので気軽に考えてください。"真実"を言われたら流石に展開を考え直さなくちゃですけど。) -
189
名前:蟹
投稿日:2018-03-15 22:41
ID:B8nXzJ4E
[編集]
とりあえず2つの可能性を考えてみよう
人的災害から疑うなら最近導入された鉱石精錬の技術による弊害と考える
例えばそれを導入した結果、作業効率は上がったけど有毒な=今回の成分を含んだ毒ガスが発生していて……とか
変異個体にしても偶然にその鉱石を食べたグラビモスやバサルモスの体内で毒が発生して、それがドスイーオスにも感染した?
元より自分のものじゃない毒は普通に害になるわけであって、それに汚染された毒袋なんかの器官から体外に毒が放出される
つまり、原因の物は同じだけど病気の発生と変異個体の発生は別なんじゃないかと自然生物なんかが原因だとしたら、アマネの言葉にはなかったがアマネが言った見えないものである「寄生虫」とか。
いやあの手のものは基本見えるんだけど、モンスターに寄生してるものまでハンターには見えないだろうし
宿主が毒を扱う大型モンスター、その毒を糧に成長して産卵、その過程でより強力な毒素が排出されて宿主がそれを自らの毒のように扱う、とか
そう考えればドスイーオスの謎の衰弱は寄生虫が作り出した毒に自らも毒されていたと考えられる
そうして宿主が力尽きたら今度はそれを食らった他の生物に……みたいな
人間への感染経路が不明だけど、天然物のキノコや肉(野生のモスとか)を食べていたら撒き散らした毒から来てる可能性がある -
190
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-16 08:16
ID:.cyTCQfI
[編集]
食物ピラミッドの上位にいる動物ほど毒の濃度が高まる、生物濃縮ってやつかな?
例えば、沼地のキノコはクンチュウの死体から生えてるものがあるけど、そのクンチュウが汚染されていた場合、
それを食べたモンスターや人間にはより強い毒素が溜まる……みたいな。 -
191
名前:兎
投稿日:2018-03-16 18:33
ID:h3fvt/Eg
[編集]
地質・水質が問題なくドスイーオスとガブラスが同じ変異をしていた事を考えると、有力なのは空気感染か食べ物関係だとは思いますね。
となると、やっぱりキノコ関係? 空気感染だとすれば変異したキノコの胞子、食物連鎖で考えるなら>>190さんの言うような濃縮が起きた結果か?。そう考えると現状怪しいのは『オルタロス』じゃないかなと、本来はキノコを熟成させるメカニズムが何らかの原因で狂って体内で毒素を生む様になった……と予想しておきます。
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192
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-17 21:20
ID:vAR5VuSY
[編集]
「––––––––って、感じかな。」
一通り自分の意見を披露し終えると、周囲からなんとも言えない意外そうな視線を投げかけられていることに気が付いた。
「……なんだ?」
「いや、意外に考えることは考えてるんだなぁと。」普通に失礼である。確かに俺は今回同行したメンバーの中ではエリクシルと並んで一番の若手ではあるが、寧ろそうであるからこそ思考というのには非常に重きを置いているつもりだ。豊富な経験も、化け物じみた身体能力も、天凛の才も無い俺がハンターとしてここまでやってこれた起因は、なによりもそれであると自負しているまであるのだから。
「ちなみに鉱石の精錬システムに関わった人間から言わせてもらうと、鉱毒に対する対策はしっかり施してあるよ。そのためにわざわざ高い人権費支払ってまでエルデの技術者に協力を仰いだんだからね。何者かがわざと流出するように仕組まない限りは流出なんて事態にはならないと思うよ?」
とはギムルの言葉である。
設計者がいる前でそのシステムの欠陥を疑うのは流石に無神経であっただろうか?まあ言ったおかげで詳しい人間から話を聞くことが出来たのだから良しとするか。「しっかし寄生虫かぁ〜。確かに目に見えない生き物っていったらそういうのもアリだよな。相手の体内を侵しつつゆっくりと成長して……フルフルの生態を思い出しちまった。」
フルフルの生態って言うと……麻痺させた相手に生きたまま卵を産み付けて、体内で育った幼体はやがて自らの寄生主の体を食い破って出てくるっていうアレか。奇怪竜下目のモンスターは見た目だけじゃなくて生態も不気味である。
……ああ、そうだ。寄生虫説はギギネブラとフルフルの合いの子みたいなモンスターだと丁度成立するんだよな。もし本当にそんな奴がいたら速攻で吐き気を催す気がするけど。「キノコを起点とした生物濃縮……或いはオルタロスによるものっていう説も中々に説得力があるね。通常のオルタロスがあの沼地に足を踏み入れたら一瞬で死屍累々だろうけど、変異個体ならあり得ない話じゃない……のかな?」
「ただ、それだと西武の人々に病が拡大した理由としてはイマイチじゃないかな?オルタロスにしたってこの辺で目撃されたことはないし、仮に現れたとしてもここまで被害を広げられるか……まあハンターじゃないボクには確かなことは言えないけど。それに、沼地の民とはいえども一般市民が食べるキノコって基本的に養殖物なんだよね。空気汚染だったりしたらそれこそ僕等や西部以外の地域も危ないだろうし……。」
「それならさっきの貴方の理論を借りて共通した原因はあれど変異と奇病が別のものであると考えれば……」
「聞いた話だと生物の成り立ちそのものに影響を与える鉱石があってだな……」そのまま議論に熱中する一同。なんだかんだで頭の良い人間ばかり集まったメンバーではこうなることは必然と言えた。
一瞬、ギムルはちゃんと御者の仕事を出来ているのだろうかと心配にもなったが、どうやらそれは余計な気配りであったらしく、彼女はしっかりと前を見ながらにして議論に参加していた。そうして互いに意見を交換し合って様々な予想を立てていると、何もしていない時は凄まじく冗長に感じた時間もあっという間に過ぎ去り、気付けば俺達は約半日の旅程を終えてスカラグラートの発展の心臓とも言える鉱山に到着していた。
「到着しました。こちらが東ヒンメルン鉱山です。足元に気をつけてお降りください。」
「……それ、Mr.ミラルパのマネですの?」ギムルの言葉とそれに対するイオンのツッコミを後ろに、俺は竜車から降り、スカラグラートという大きな街の発展を支えてきた鉱山に足を踏み入れた。
忙しなく動き回るガタイの良い男達。その男達が屯するやや貧相な建物の数々。大量の鉱石が限界まで積まれたトロッコがガラガラと音を立てて往き交い、買い付けに来た商人らしき人の姿も散見される。近くに製鉄所らしきものがあり、そこから放たれる熱気が絶えず頬を撫でた。
そんな熱を帯びた活気の中、ガタイの良い男達に指示を出していた厳つい顔の男が、ふと此方に気が付いたのかドスドスとガニ股歩きで近寄ってきた。そのあまりの強面っぷりと凄まじい自己主張を上げる筋肉にすわラージャンか!?と一瞬身構えそうになるが、他の面々は至って自然体な事に気付き、体が動きそうになるのをなんとか抑える。
そうしている間にも大股で近付いていた男は、その厳つい顔に笑顔を浮かべつつ、言った。「よぉギムルの嬢ちゃん、元気してたか?そっちの四人は噂のハンターってヤツだな?ナリはヒョロイが良い目をしてやがる。俺はハルドっつって、ここのまとめ役をしてる者さ。よろしく!」
-
193
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-17 23:16
ID:eQ8q3XjI
[編集]
厳つい顔のまとめ役……ハルドさんに促されるままに案内された俺達は、意外にもちゃんとした応接室に招待された。防音もしっかりとなされているのか、外の喧騒も聞こえてこない。如何にも漢臭いこの場所にもこんな部屋があったのかと少し意外に思っていると、それが表情に出ていたのか、ハルドさんは俺を見て豪快に笑い声を上げた。
「ガハハハハッ!若いハンターさん、その顔を見るにまさか鉱夫達の休憩所みたいな場所で接待されるとでも思ってたのか?残念だがここは直接買い付けに来る商人や貴族とかもよく寄るから、ちゃんと応接室を用意してあるのさ。」
なるほど、考えてみればその通りである。
そう納得している俺に、ハルドさんは爆弾を落としてきた。「ちなみにお前さんの後ろにあるリオレウス像も値打ちもんさ、壊したら弁償だぜ?」
「……え?のわっ!」"弁償"という恐ろしい単語に、常に金欠気味である俺は驚いて立ち上がる。バッと素早く振り返って見れば、そこには確かに精巧な作りをしたリオレウスの銅像が置いてあった。
ここに通されてから今まで全然気に留めていなかったので、何も言われなかったらふとした拍子にぶつかって落としていたかもしれない……そんな如何にもあり得そうな状況を空想して冷や汗をかく俺を見て、ハルドさんは腹を押さえつつからかうように笑った。「冗談だよ冗談、それは俺が趣味で作った像さ、よくできてるだろ?」
「ハルドさんはこんな見た目だけどすごい器用なんだ。冗談とは言ってるけど趣味じゃなくて商品として作ったら正真正銘の値打ちものになるから気を付けてね?」……どうやら冗談であったらしい。あー心臓に悪い。いや、後に続けられたギムルの言葉からすると強ち冗談とも言い切れないようだが。
俺が早鐘を打つ心臓を押さえつつホッと席に着くと、アマネはその銅像を眺めつつ言葉を発した。「細かい特徴も捉えてある……本じゃなくて実物を見たことのある人の作品だな……ハルドの旦那は元ハンターなのか?」
「お、よくわかったな頭の良さそうなハンターさん。まあ俺だけじゃねぇさ、ここにはハンターの炭鉱夫崩れやかつてハンター志望だった体格に恵まれた奴がいっぱいいるぜ?なんなら息抜きにハンターのアレコレを話してやるといいよ。」なるほど、ハルドさんは現役を退いたハンターだったのか。どうりでどことなく凄みがあるわけである。
因みにこの人、まだロクな自己紹介もしていないのに俺のことを『若いハンターさん』、アマネのことを『頭良さそうなハンターさん』、ライカのことを『天然そうなハンターさん』、イオンのことを『ハンターの嬢ちゃん』と呼んでいる。豪快な印象を受けるが、人を見る目があるのだろうか?まあそうでもなければ屈強な男達の中でまとめ役になんかなれないのであろうが……。「ハルドさん、コッチの若いのが『スケベハンター』ことあなた君で、コッチの頭良さそうなのが『狩場彩る舞神』ことアマネ君、天然そうなのが『闇を喚ぶ黒猫』ことライカ君で、色っぽいのが『夕刻の蝶』ことイオンさんだよ。」
「あー、確かになんか聞いたことある名前だな。じゃあ改めて、俺はハルドだ、身分でいうなら親方さ。」そう言いながらハルドさんは大きな手を差し出してそれぞれに握手を求める。俺達がそれに応えると、ハルドさんはそれぞれと握手を交わしつつ満足げに頷いた。
しかし、麓があの状態だからもう少し寂れた感じなのかと思っていたのだが、随分と活気付いているようだ。そのことを口にすると、ハルドさんはこれまでの気さくな印象から一転、仕事をする男の顔になって喋り出した。「ここはいろんな大組織がいろんなもん出し合って出来た鉱山街だからな、今回みたいな程度の出来事で操業を止めるわけにもいかねぇのさ。」
「程度って……。」実際に目の当たりにした俺達からすると、全くもって"程度"という言葉の範疇に収まる規模の出来事ではないのだが……それを言おうとして、しかしその言葉は口を出る前にハルドの手によって制される。
「俺だって"程度"なんて思っちゃいねぇよ。だがお上にとっちゃぁ操業停止による不利益の方が遥かに大きいのさ。だからって麓の件で全く支障が無ぇわけじゃねぇがな。実際数ヶ月前のヤツの襲撃ん時は死んだ奴もいるし、ここで働く鉱夫達の約4割は西部に家族を残して働きに来てる連中だ。それに、ここに一番近い市街地であるスカラグラート西部が機能停止状態で、しかも変異ドスイーオスの縄張りのせいで迂回路を使わんと鉱石を運べないっていうのもかなり痛い。こっちとしては一刻も早い解決を願ってるよ。」
……そうだよな。
程度なんて一番思ってないのは、当事者である彼等なのだ。 -
194
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-20 21:17
ID:DXCTkSc.
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その後、俺達は強面の親方ことハルドさんに案内されて鉱山を巡りつつ、その道中でこれまでの経緯などを語り合うこととなった。
「そうかい、ドスイーオスの方は決着がついたのか……。」
「ただ、その直後には同様に毒の変異を引き起こしたガブラスが発見されて、解決どころか謎はより一層深まるばかりですよ。考えうる可能性があまりにも多過ぎて、本命を特定できてない……正直ここまでの難問とは思いませんでしたね。」
「そりゃ困った事態だな……だがまあ、あのドスイーオスが居なくなったってだけでコッチとしちゃあかなり安心出来るってものさ。ありがとおよ。」
「そう言っていただけると有り難い。」どこか暗い調子で(しかも何気に珍しい敬語で)話すライカに対し、ハルドさんはまるで慰めるように礼を言った。その感謝の意を無下にする事なくあくまで自然に受け取ってみせるライカではあるが、その物憂げな表情をみると、やはりその奥底には何か……どうしても納得できない"何か"があるのだろう。俺がライカに対して抱いている印象は、"飄々とした態度でありながら潔癖で完璧主義"というものであるが、それは強ち間違いではないのかもしれない。
……いや、それにしたって今回の事件にどうにも納得できない"何か"を感じるのは、俺も…そして他のメンバーも同じか。「ところで、ハルド様は数ヶ月前の変異ドスイーオス襲撃事件の現場に居合わせたそうですが、その時何か気付いたことなどありませんでしたの?思い出せる限りでいいですわ。」
「イオン、いくらなんでもそれは……」そんなどこか暗い雰囲気を打ち払うように、イオンはそんな質問を切り出した。それは誰もが聞こうとした質問である。しかし、誰もがここまでその質問をハルドさんに投げかけることをしなかった質問でもあったのだった。
数ヶ月前の鉱山への変異ドスイーオス襲撃事件では、少なくない犠牲があった。それは凄惨な現場であったことだろう。それをわざわざ思い出させるようなことは……と、俺はすかさずイオンを咎めようとしたのだが、それは言葉として口に出る前に、分かっていると言わんばかりの彼女の言葉によって遮られる。「思い出したくないかもしれないなんて百も承知、ですが我々の目的は一刻も早い事件の解決ですわ。非情で結構、時は得難くして失い易し。ここで質問を渋って事件解決が遅れ、結果何か重大な問題が起こってから後悔しても遅いのですわ。」
「そうさ、若えハンターさんよ、ハンターのお嬢ちゃんの言う通りだ。事件解決は俺達の望むところでもあるんだ、それに僅かでも協力できるんなら、あの忌々しい夜を思い出すなんざなんの痛痒でもありはしねぇさ。」ハルドさんにまでそう言われれば、俺は押し黙るより他は無かった。
実際、俺も……誰もが聞こうかと悩んでいたことなのだから、本人がいいと言うならば聞いた方が良いというのは考えるまでもないだろう。「あの夜は、いつもと同じ夜だった。だから、いつもと同じように夜が明けることを、俺達は誰一人として疑ってはいなかったのさ。」
そんな切り口と共に、ハルドさんは忌々しい記憶を掘り返した。
今でも悪夢に見るという、その刹那の惨劇を……。***
夜とは、静謐と闇の支配する時間である。
故に、静謐を嫌い、闇を恐れる人間という種族は、日が落ちると共に眠りにつき、夢の中で明くる日を待つのだ。……だが、その日はどうにも眠れなかった。
いつもならば、日が暮れる頃には心も体も疲弊し、今頃にはとっくに夢の底であるというのに、何故か今日ばかりは体が覚醒状態を保ち続けていたのである。
だからといって、体の疲れも心の疲れも、無かったというわけではない。鉱山での労働は過酷だ、昔の犯罪奴隷を使うようなものよりは幾らかはマシとはいえ、体力を使う重労働に、有毒ガスへの警戒……それらは前線の鉱夫達に比べれば幾らかはマシとはいえ、監督責任者だって楽はさせてもらえない。それに加えて、毎週のように起こる鉱夫間のトラブルの解決もあるのだから、これで疲労しないはずがないのである。
だからこそ、"眠れない"というその起因は、単なる疲労とは全く別のベクトルの問題によるものであった。言うなればソワソワと、どうにも拭いがたい予感のようなものが、胸の奥から湧き上がるように感じられたのだ。それは、今にして考えてみれば、長い歴史の中で人間が失いかけていた"野生の勘"……その名残のようなものであったのかもしれない。……否、眠れなかった理由は、真実ではもっと単純なものである。先述した通り、夜とは静謐と闇の支配する時間だ。しかしながら……
–––––––その日はどうにも、騒がしかった。
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195
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-03-20 21:32
ID:DXCTkSc.
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そういえばテキクエって残酷な描写はどうなんでしょう?やっぱりタブーかなぁ。
もしそうならハルドさんのお話は適当に暈して飛ばす方向で行きますか、別に事細かに描写しなくちゃいけないほど重要ってわけでもないですし。……終わりが遠い。
アイデア盛んにして執筆未だ進まず。頑張らないと。>>198ご指摘ありがとうございます。確かに見直すと、胃もたれするようなくどい文体で、胃もたれするようなくどい内容……話に緩急がつけられておらず、テンポも悪い。さて、如何に改善したものか……。
ヒントは各所に相当数散りばめてあるんですが、隠しすぎて誰にも伝わらなくなってしまったでしょうか?これでは謎解きというより独演会になってしまいますね……もっとわかりやすいの設置せねば。 -
196
名前:時雨
投稿日:2018-03-20 21:39
ID:gX20EMvk
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余程残酷でなければ大丈夫かと思います。
Anotherみたいな感じならアウト判定かなぁ。 -
197
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-21 00:45
ID:fvHaSB/o
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港に禁忌のアイデア来ちゃいそう
残酷な描写って今までなんかあったっけ
紅兜のアレも直接的な表現はしてなかったから今にして思えばリアルの命のやりとりの作品だけどそういうのなかったな。 -
198
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-21 12:33
ID:yWY/Xizo
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言っちゃなんだけどさすがに重くなってきたなぁ、ずっと大盛の丼物食わされてる気分
狩猟だけでもお腹いっぱいなのにヒントらしいヒントも無いような謎解きはちょっと食傷気味になってくる -
199
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-21 14:39
ID:bWtX3JvQ
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やっと核心に迫る準備が整った段階だしこれからやろこれから
進行度をゴア編で例えたら最初の街出た辺りちゃうんか? -
200
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-21 21:06
ID:6U.LffL6
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……ふと我に返った時、自分が裸足であることに気が付いた。
足の下に感じる冷たい土と落ち葉の感触が、自分が今森の中にいるのだという事実を教えてくれる。逆説的に言えば、今自分が森の中にいるという事実を教えてくれるのは、それくらいのものであった。星明かりさえ静かな夜の森は、一寸先さえ見通すこともままならず、耳は不愉快な静謐と喧騒の狭間に揺れ、荒ぶった呼吸は嗅覚をも著しく遮断する。ただ夜風に冷えた足先に意識を集中すれば、そこには馴れ親しんだいつも通りの山の土があったのだ。しかし、そこでふと湧いてくるのは、何故今自分が裸足で森の中にいるのかという、そんな当然の疑問である。山は身近な場所でこそあれ、真夜中に裸足で来るような場所で無いことは考えるまでもなく当然の事実であった。
そうして、今この状況に至るまでの経緯を思い出そうと思考を巡らせると、まるで針金に引き絞られるような頭痛と共に、先程までの光景が記憶の中から蘇る。……悪夢を見ているかのような気分であった。
暗闇に紛れて襲い来る紅き襲撃者。
連鎖する悲鳴、伝染する恐怖、増加する犠牲、拡大する悲劇。
視界の封じられた闇夜の中で、華やかに咲いた赤い血飛沫だけが嫌にハッキリと網膜に焼き付けられる。"モンスターの襲撃だ"
そう結論付けてはいながらも、しかしその時ばかりは元ハンターとして行動しようとは思えなかった。武器もなく、防具もなく、敵の数さえわからず……暗闇。……勝てない、勝てるわけがないと、或いはハンターだからこそそう断定出来たのだ。
だが、逃げるわけにも行かなかった。逃げることさえ選べなかった。
鉱夫達のまとめ役という立場が、脅威から逃げようと今にも動き出そうとする足を、強くその場に縛り付け続けたのだ。ただ、その場に呆然と立ち尽くしていた。
何故その時奴等が自分を襲わなかったのか……それは今となってはもうわからない。とにかく、なんの因果か惨劇を目の前にして自分は生き残り続けた。"なんとかしなければ"
そんな意識が湧いてきたのは、いったい惨劇が始まってからいつ頃のことであったであろうか。一時間にも長く感じても、あるいは数十秒も無いのかもしれない。
そんな突如湧いてきた不明瞭な使命感に突き動かされて、惨状をただ一直線に走り抜けると、備品室の奥で埃をかぶっていた軽い材質の木箱を持ち出した。普段使うことはないからと、半ばその存在さえ忘れかけていた「こやし玉」のありかをこの時は不思議なほどに即座に思い出すことができたのは、古い記憶の中から命の危機への対応策を見つけようとする"走馬灯"が、その本懐を遂げた結果であったのかもしれないと、後から考えればそう思えるのだ。……そこからはよく覚えていない。
ロクに狙いも付けずに投げ続けたこやし玉はやがて底を尽き、その場をまともに前も確認せず壁やら木々にぶつかりながら逃げ出して、今に至る。自分よりも身体能力に優れた走竜相手に逃げ切ることができたということは、少なくともこやし玉を持ち出したのは無駄では無かったのだろうということぐらいしかわからなかった。"逃げ切ることができた"
その意識と共に、まるで思い出したかのように全身にどっと疲れや痛みといった苦痛が押し寄せる。だが、まだ立ち止まるわけにはいかない。残った仲間の安否もわからず、それどころか自分の安全さえも保証されていない状況……安堵するにはあまりにも早すぎたのだ。
ごくごく限られた情報の中で、自分の記憶だけを頼りに歩みを進め、いざという時の避難場所にと残していた古い坑道を目指して歩き続けた。他のみんなもそこへ向かっただろうという希望を胸に……。……ふと、見慣れた穴を見つけた。
そこは間違えようもない、あの廃坑道であった。
自らの記憶に誤りが無かったことに安堵しつつ、身を捻って狭い入り口に体を捩じ込むと、洞窟の中の雰囲気が一瞬騒めくと同時に、いくつもの光が自分の姿を照らした。「そんな怯えるなよ、俺だよ俺。」
あくまで余裕の態度を保ちつつ、安心するように鉱夫達に声を掛けた。不幸中の幸いというべきなのか、鉱夫達の殆どは難を逃れてこの廃坑道に逃げ込む事に成功していた。
ふと視界を巡らせれば、毒に侵されたのか寝かされている者もいたが、イーオスの毒はモンスターの括りで考えればそう強いものではないし、どちらにせよどんな土地にも自生している解毒草さえあれば対処は簡単である……ハンターとしての常識を持っていた俺は、そうたかをくくっていた。「解毒薬が……解毒薬が効いていない!?」
……悲劇は、終わったわけでは無いのに。
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201
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-21 21:15
ID:6U.LffL6
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「解毒薬が効いていない!?」
……一瞬、誰もがその言葉の意味を理解出来なかった。
己の智の及ぶ限りでなかったのか、あるいは理解したくなかったのか……どちらにせよ、信じられなかったという意味では同じである。
そして、信じられない…信じたくない言葉を聞いた時、人はそれを緊張した場を変えるために吐かれた冗談であるはずだと、ありもしない結論を付けるのだ。「おいおい、解毒薬が効かねえってのはいったいどういう意味だ?」
解毒薬が効いていないと叫んだ男に、誰からともなく投げかけられたその問いは、あるいは問いですらなかったのであろう。冗談だと、何かの間違いであると、ハッキリとそう否定させるための言葉であるはずだった。
「文字通りですよ!解毒薬を飲ませても毒の症状が改善しないんだ!」
……しかし、どれだけ目を逸らそうとも、現実は非情にそこにいる。
二度目にその言葉を聞いたとき、その場にいる全員が同時にその言葉の意味を理解し……そして、誰もが同時に、その結論に辿り着いた。イーオスの毒による死亡例はそこまで多くない。効果的な解毒薬があり、それを飲めば誰でも簡単に解毒可能であるからだ。数少ない死亡例と言えば、運悪く解毒できるものが近くに存在せず、適切な処置が行えなかったことによる衰弱死くらい。それだってそうそう起こり得るものではない。
だが、そもそも死亡例が少ないという根本的な原因たる"解毒の簡単さ"が、通用しなかった場合はどうであろうか?解毒薬が効かない。毒の症状が改善しない。処置ができない……即ち、その先にあるのは死……。不思議と、言葉を発する者は居なかった。
毒に侵され、今まさに命の危機に晒されている者も、もう騒ぐ気力も体力もなかったのだろう。静かに横たえられながら、黙りこくっていた。気の毒ではあるが、時には集団のために個を切り捨てる必要がある者としては、それはパニックを起こされるよりは数十倍助かることであった。
そうして、ただ不気味で沈痛な沈黙が、廃坑道の中を支配した。いや、まだ完全に処置なしと決まったわけではない以上、諦めるのはまだ早い、なんとかその沈黙を破らなくては……まとめ役としての使命感からかそう思い、一番に声を出したのは自分だった。
「……まだ、別の対処法があるかもしれない。漢方薬とか……それ以外も出来る限り試そう。一番緊急性が高いのはソイツか?」
そう言いつつ、先程解毒薬が効かないと叫んだ男の元へ行き、その目の前に横たえられている、激しく汗をかきつつ青い顔をしながら魘されている男に視線を落とす。
「え……はい。とびきりデカイやつの毒液をまともに浴びて……。」
「ドスイーオスだな。……どこかで見た顔だと思ったら医務の先生か。さっきの解毒薬はどこから?」
「咄嗟に医務室から持ち出しました……私物じゃないからひょっとして横領扱いになったりは……。」
「しねぇよ。よくやった。解毒薬以外もあるよな?」
「ええ、一通りは。」そこから、試行錯誤が始まった。
まず解毒薬が本当に効果を発揮しないことを確認して、漢方薬から始まって、回復薬や栄養剤、活力剤、元気ドリンコなど、様々なものを試した。その様子はまるで人を実験台のように扱う所業ではあったが、この時この状況でそのようなことに構っている暇は無かったし、そのことを指摘する者もいなかった。
その甲斐あって、この解毒薬では治せないこの毒へのほぼ唯一と言っていい対処法を発見した。それ自体は喜ばしいことではあったが、しかしそれとは裏腹に医務の先生は顔を顰め、他の人間には聞こえないように小さく唸った。「よりにもよって秘薬……備蓄の数に限りがあります。全員にはとても……」
そう、その唯一の対処法というのは、入手が非情に困難かつ高価である秘薬であったのだ。その数なんて数えるほどしか無い。毒に侵された全員に行き渡るには到底足りなかった。
それは単に、全員を救うことが出来ないだけという問題にとどまらない。なにせ毒に侵された者達にとっては命の危機なのだ、もし下手にこのことを話してしまえば、数少ない秘薬の奪い合いになることを想像に難くない。しかし、だからといって、このことを秘匿してしまえばそれこそ誰も助からないし、後々にそのことが知れればどんな目に遭わされるかわからない。
どちらも正しく、どちらも間違っている。そんなジレンマに陥っていた自分に声を掛けたのは、イーオスに足を噛まれたという老年の男だった。「聞こえとるさ、大体どういう状況なのかは理解した。それなら症状が重い奴から優先して飲み物とかに混ぜ込むといい。あくまで秘密裏にな……。」
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202
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-21 21:24
ID:6U.LffL6
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それは、場合によっては誰かを切り捨てることもしろというのと同義であった。それも、本人には自分が切り捨てられたことさえ知らせずに……。
「しかしだな……!」
「全員を救おうなどと思い上がるな。夜明けには救助隊も来よう、それまで持たせるのがお前さんの役目だ。」だが、老年の男の静かな迫力を湛えた瞳と声に、押し黙るより他は無かった。
結局、毒への対処法である秘薬の事は自分と医務の先生……そして老年の男の間の秘密にし、自分達は老年の男の提案通りに医務の先生のアドバイスと独断をもって急を要する者から順に、周囲にも本人にも気付かれないように秘薬を仕込んで飲ませていった。
その中で当然、誰かを切り捨てる選択を迫られもした。だが泣き言なんか言ってられなかったし、言うつもりも無かった。所詮は自分勝手な選択である、もし真実を話せば、死んだ者やその関係者からはさぞ恨まれることであろう。それだけの事をした意識が自分の中にも確かにあった。……後で考えれば、もっと上手いやり方などいくらでもあったのかも知れないが、その時はそれ以上の案を思いつくことも実行することも出来なかったのだ。「なんつうか……ありがとよ。」
「いいさ。……そうだな、代わりと言っては何だが、私の右足を切ってはくれまいか?」
「……は?」老年の男に対して感謝の辞を述べる自分の言葉に帰ってきた、あまりにも唐突で意外な一言に、思わず一瞬硬直してしまったのだが、直後に老年の男がズボンをずり上げたことにより、その言葉の真意に気が付いた。
不気味な紫色に変色した、二本の牙による痛々しい傷痕の残る足……その傷痕よりも少し上の辺りを、紐のようなものできつく縛ってあったのである。「毒をくらった割にはピンピンしとると思っておっただろ?見ての通り、足を途中で縛って毒液が全身に回るのを防いだわけよ。だがそれもずっとは持つまい……なればとっとと切っちまった方が楽だろうとね。」
真意に気付きはしたものの、その言葉はとても信じられるものでは無かった。この老年の男の立場であれば、秘薬のことを秘匿する代わりに自分に秘薬を使わせることだって容易であったはずだし、事実自分も医務の先生も、それを要求される覚悟は出来ていたのだ。
にも関わらず、この老年の男は秘薬を寄越せとは言わずに、自分の足を切ってくれと頼んできた。自分の足だってそんな軽いものでは無いはずなのに……。「……正気かよ、俺なら秘薬を要求するところだぜ?」
「様子を見て抑えていても毒が回るようならそうしただろうさ。だが、知っての通り今も毒が回った様子はなし、丁度この仕事も引退時と思っていた頃合いさ、足の一本くらいくれてやろうて。」そう言って飄々と笑う老年の男の顔は、まるで何かの境地に達した仙人か何かのようであった。
「……わかった。おい、動ける奴はこの爺さんの足を切るのを手伝ってくれ!」
足の切断と秘薬については直接関わりは無いと考えた俺は、声をあげて周囲に協力を求めた。足の切断なんて一人でできるものではない、例え麻酔があろうとも痛みが消える事は無いし、体を押さえつけるのに最低でも三人か四人、刃物で足を切断するのに一人、足を抑えるのに一人、傷口を焼いて止血するのに一人、少なくとも六人以上の人手が必要である。
毒や疲労、睡眠などで動けるものはそれほど多くは無かったが、なんとか人を集めるのには成功し、医務の先生曰く気休め程度の麻酔と、イーオスの撃退用に持っていたという鉈を借り、老年の男に布を噛ませて大の大人四人がかりで押さえ込んだ。「俺が切る。」
切断するならば一撃で行かなくてはならない。それが出来なければ余計な苦痛を与えることになる。
一直線に振り下ろされた刃越しに、右手には鈍い感触が伝わってきた。肉を引き裂く感触の後に、一瞬硬い抵抗を感じるが、それを知覚する頃には自分の腕にかかる抵抗は虚しく消えていた。
ぼとり、と素朴な音が響き渡り、生暖かい血が点々と服を染めた。
直後、横で準備をしていた医務の先生によって、生々しい断面に焼けた鉄が当てられ、ジューという音と共に、生き物の焼ける嫌な臭いが鼻腔を突いた。「……っ……がぁ!……ハァ、終わっ……たか?」
老年の男の声が、俺に向かってそう問う。
……そう、老年の男の声である。普通の人間なら気絶するような苦痛を味わっておきながらも、彼は気を保つばかりか言葉を発してみせたのだ。「あんたちょっと、我慢強過ぎるだろ……。」
「……っ必要に……迫られて、かの。」凄惨な場面であるにも関わらず、二人の間には何故か謎の笑いが込み上げてくるのであった。
***
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203
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-21 21:28
ID:6U.LffL6
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「–––––––その後、二、三時間くらい経った頃に漸く救助隊が到着して、俺達はなんとか助かったってわけよ。……勿論、それまでもたなかった奴もいたけどな。その後も人員の入れ替えとかいろいろあって……まあ本当の事を話して頭下げて、罵られたり蔑まれたり、逆に励まされたり讃えられたり、一時期はなんで生きてんだろってすげぇ思ったこともあったんだけどな、なんとか今日という日まで心身共に健康で生きてきたわけだ。まあそれはハンターさん達にとっちゃあ蛇足か。んで、どうだった?やっぱ、俺の主観で印象に残った場面しか思い出せねぇから、あんま役に立てたとは思えねぇが。」
……想像していた残酷さとは、少し違う。
当事者ならではの、残酷さ。
そして、俺達にはそれを話させてしまった責任があるのだ。「二、三時間で、もたなかった奴"も"いる……。つまりそれまでもった人間もいるということですわね。アマネさんとあなたさん、実際に戦ってみた体験と、そこのところの感覚とに違いはありますか?」
そう、丁度イオンが今言ったところに、俺は違和感を抱いていたのだ。毒に侵されながらにして二、三時間以上……いや、それ以前の時間も含めればもっとか……それほど生きたいられたというのが、俺の感覚からはすこし考えられなかったのだ。
「実際やられた俺からすると……二、三時間以上ももったってのがイマイチ信じられない。それどころか毒に侵されながら廃坑道まで辿り着けた人間がいたっていうだけで甚だ疑問だ。ハルドさんの前でこんなこと言っていいことなのかわからないけど、あのドスイーオス達が吐き出す毒はもっと酷かったと思う。」
「つまり、僅か数ヶ月間という短期間の間に元々強力だった毒がさらに強化されている可能性があるということだね。」俺の言葉にライカがそう付け足すと、イオンは何を言うでもなく頷いた。それに続くように言葉を発したのは、今ここにいるメンバーの中では俺以外では唯一ドスイーオスと対峙したアマネである。
「それと、俺が気になったのは"とびきりデカイ奴"というセリフだ。とびきりデカイ奴っていうのはイーオスの中で頭一つ抜けてデカイってことだろう?実際にアイツの姿を見て、とびきりデカイ奴なんていう印象が湧いてくるか?」
そうアマネに指摘され、俺は記憶の中から変異ドスイーオスの姿を呼び起こす。獰猛化の黒いオーラに、異常発達した筋肉、肥大化して異形を形作るトサカ……
「……いや、あのドスイーオスはイーオスと同種とは思えないほど異形だった。確かに大きくはあったが、暗がりで事前情報無しでアイツをドスイーオスと特定するのは難しいと思う。」
「そう、つまり短期間に毒だけじゃなくて体にも劇的な変化が起こったというわけだ。いくらモンスターとはいえ僅か数ヶ月でそこまでの変化が起こるというのは通常あり得ない。つまりあのドスイーオスには確実に通常自然界では起こりえない"何か"が起きてたっていうことになるな。」通常自然界では起こり得ない何か……か。
……ん?なんだろうかこの違和感は。今アマネが言った言葉が、誰かの言葉と繋がったような……しかしその肝心のその言葉が思い出せない。誰だ?いつ言った言葉だ?
喉元まで出かかっている重大なファクターがどうしても思い出せないという猛烈なもどかしさを味わい、思考の深みにのめり込みつつある俺に、一番に声を掛けたのはギムルであった。「突然百面相はじめて、どうしたんだいあなた君?何かわかったの?」
「わかりそうでわからないことがわかった。」
「……は?」
「いや、何か重要なことを思い出した気がするんだけど、それが何なのかわからないんだ。」
「……それは思い出して無いんじゃないのかな?」
「まあ、そうなんだが。」……。
……ああ、クソッ!どうしても思い出せない。それが繋がれば一気に真実に近づく気がするのに……っ!今日という日ほどお前を頼りないと思ったことはないぞ俺の記憶力っ!「……と、お喋りしているうちに着いたぜ。ここが今一番活発に使われてる坑道だ。」
そんな風に心の中で自分を叱りつけているうちに、どうやら案内が完了したようだ。実は見学者というのはたまにいるのだろうか?ハルドさんは『お客様用』と書かれた鉱夫達の被るものとは色の違うヘルメットを俺達に手渡しつつ、坑道の中に声を飛ばした。
「鳥はぁっ!?」
「異常無しです!」
「水はぁっ!?」
「問題ありません!」
「気合いはぁっ!?」
「「「「オーッス!!!」」」」……なんかの挨拶かな?
よくわからないやりとりに苦笑いを浮かべる俺達に、ハルドさんはニッと笑いながら振り返って言った。「んじゃ、行くか。」
-
204
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-03-21 21:39
ID:6U.LffL6
[編集]
あまりやり過ぎたのはダメというアドバイスと尺の都合から、回想は少しマイルドにさせていただきました。
※本文内では出せない難易度調整用の大ヒント
「いかなる形であれ、犯人は既に物語の中に登場しています。」
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205
名前:時雨
投稿日:2018-03-21 22:06
ID:gX20EMvk
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>>197
そう言えばそんな描写してたなぁと書いた本人が忘れているという()んー、犯人は物語の中にいる、ねぇ。
シナリオ読み返すか、ヒントを探しながらね。 -
206
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-22 02:11
ID:fvHaSB/o
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クッソ適当だが原因にはあまり関係なさそうだけど数ヶ月前のドスと捕獲したドスは別個体とか? 元々群れ単位で毒が変異しているイーオスのリーダーが獰猛化ドスイーオスに敗北、獰猛化ドスイーオスが変異ドスイーオスの毒を摂取して毒性が強くなったが、その際被った強化毒液で失明やトサカの肥大化し、強力な毒で弱ったが自身の毒の効きづらさで死に至らなかった?毒の摂取が空気に触れない状態で毒性が弱くないとガブラスは説明出来ず、筋肉の異常発達は獰猛化の影響じゃなさそうだからやっぱり説明できないな。
資料とか調べない(しかも根拠ない)テキトウ長文失礼 -
207
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-22 16:23
ID:vAR5VuSY
[編集]
山にそのまま横穴を掘っていったような薄暗い坑道の中、トロッコのレールの脇を歩くように俺達は真っ直ぐに奥を目指す。この先にこの事件に関わりのあるものが存在するかどうかはわからない、だが様々な憶測が入り乱れる現状、できるだけ可能性は潰しておきたいのだ。
時々すれ違う作業員の会釈を受けながらハルドさんの後ろを付いていくと、彼は手慣れた雰囲気でこの坑道の大まかな説明を始めた。「数年前に採掘を始めて以来、ここで確認された鉱石は主に鉄鉱石、燕雀石、輝竜石、霊鶴石、ごく稀に緋鳶石などが挙げられる。かつて無いほどの優良鉱山で、全て合わせれば年間千トンの操業で数十年は掘り続けられると言われているな。まあ本気で掘れば年辺りにもっと大量に採れるんだが、それは鉱山の寿命を縮める上に、鉱石資源の値崩れの原因になるってLEO《天然鉱石輸出國機構》に止められているよ。するつもりも無いけど。」
「マカライト鉱石、ドラグライト鉱石、カブレライト鉱石、エルトライト鉱石まで採れるんですの……。それならハンターズギルド含めどこもかしこも取り合ったというのも頷けますわ。」
「特に最近は優れた硬度を持つライト系鉱石類の需要が急速に拡大してるからな、エルデ地方だけじゃとても賄い切れねぇよ。革新的な飛行船技術の発展、新大陸への大規模遠征、そうでなくとも今大陸各地が強大なモンスターの襲撃に備えて防衛を強化したいって時期だ。特に近場にある東シュレイド行きの商人なんかは買い占めんばかりの勢いだぜ?そんな最中に一連の事件……連中は大いに頭を抱えただろうよ。だから今回の事件は一刻も早い解決が急がれているのさ、そう考えると、態々おやっさんがハンターさん達に依頼しなくても、どっちみちハンターさん達には別口から依頼が来たかもな。」なるほど、ハルドさんの話を聞いていると、今回の事件の早急な解決の必要性が改めてよくわかる。単に「街が危険だから助けて」というだけではなく、解決できなければその波紋が世界に波及する可能性があるわけだ。もちろんそうでないから手を抜くなんてことをするつもりはないし、どちらにせよベストを尽くすのには変わりはないのだが、改めて重大な任務を任されたというのがよく理解できた。
単に強大なモンスターを狩ればいいというものではない、時には国家、世界規模に影響を与えかねない依頼を受けなければならないのが、G級ハンターというものなのか……。「……いやいや、勘違いしちゃダメだよ?いくらG級だからって毎度毎度こんなクエスト受けてたら身も心も持たないさ、強いて言うならこのクエストと、G級昇格直後にそれに当たる君がおかしいんだよ?」
……はい、知ってました。知ってて言いました。
G級ハンターの先輩としてのライカの指摘を受け、ガックリとうなだれる俺。実は最近、引きの悪さなら不運の代名詞たるタクミにも負けてないんじゃないだろうかと思い始めている。「ははっ、若いハンターさんは若いながらに中々難儀な人生送ってるっぽいなぁ、ま、そういう奴が英雄の器ってのもよく聞く話だ。なにせおやっさんが目を付けたんだからな、ただもんで終わるとは思えねぇ。」
「……さっきから気になってたんだが、その"おやっさん"って誰の事だ?」強面のハルドさんからおやっさんと呼ばれるような条件に該当する人物にこれまで会っただろうか……?ん。いや、この凄まじいデジャヴ感はもしや……
「誰って、そりゃ当然ミラルパのおやっさんよ。俺も若え頃から世話んなったもんだぜ。」
うーん、やっぱりというか……いったい何歳なんだろうかあの人間モドキは。若めの竜人族かと思っていたが実はそうでもないのか?流石に100歳超えてるなんてことは無いだろうが。
「さあ、おやっさんの年齢なんか考えたことも無かったぜ。……さて、お喋りしてるうちに着いたぜ、ここが採掘場の最前線だ。おい、調子はどうダァッ!?」
「良い層にブチ当たってらぁ!」あいも変わらず威勢のいい大声でやりとりをするハルドさんと鉱夫達。音の響きやすい洞窟の中なのだからもう少し声を抑えても聞こえると思うんだが……習慣なんだろうなぁ、などとどうでもいいことを考えつつマカライト鉱石を山のように積まれて流れて行くトロッコを見ていると、ハルドさんがどこからか持ってきた四つの鉱石のカケラを俺に手渡した。
「ここで採れた鉱石のカケラさ、小せえから大した価値は無ぇが、サンプルぐらいには役立つだろ。鉱夫達には俺から言っておくから、好きなように調べてくれ。」
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208
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-22 22:11
ID:95PfIYuc
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「––––––結局、収穫らしい収穫は無しか。」
「いや、まだサンプルを調べてないから本当に無駄足かはわからないけどな。」
「まあ、詳しくは西部に戻ってからのお楽しみさ。そろそろエリクシルちゃんも手が空くだろうしね。……次は精錬所に行くんだよね?ならボクが案内するよ。」ハルドさんの案内の下、一、二時間ほど複雑に入れ組んだ坑道の中を粗方巡り尽くしたのだが、結局事件に関係ありそうなものを見つけることは出来なかった。取り敢えずいくつか鉱石や岩盤のサンプルを採らせてもらったのだが、これは今すぐ調べられるようなものではない。ギムルが言うには科学者だって機材が無ければただの人だそうだ。
もちろん、まだ完全な無駄足と決まった訳ではないし、そもそもダメで元々だったのではあるが、それでも中々ヒントが見つからない現状は、なんとももどかしいものであった。結局、思い出せそうだった言葉を思い出せずじまいであったし、モヤモヤした行き場の無い感情が渦巻くばかりである。
薄暗い坑道を抜け、再び太陽の下に舞い戻ると、日は既にすっかり西に傾いており、空が橙色に染まっているのに気が付いた。普通の心理状態ならば見入ってしまうような美しい夕焼けも、今は時間の流れを残酷に表しているように見えてならない。調査開始から2日目が終わろうとしていると……。
……と、そんな風に考えながらぼーっと空を見ていた俺の肩に、ドンッと誰かがぶつかった。
「……っ、すまん」
「気をつけろやオラァ!」すかさず謝ろうとした俺に対して、ぶつかった男は何やら大きな木箱を抱えながら大声で罵声を浴びせ、そのまま俺に背を向けて立ち去る。
何をそんなに急いでいるのかは知らないが、ぶつかったのはそっちも同じなのだからもう少し申し訳なさそうには出来なかったのかと……もちろん言葉には出さないが心の中で思いつつその男の姿を視線で追っていると、その先に何やら集団が出来ているのに気が付いた。数台の竜車に、先程の男が運んでいたものと同じ木箱がいくつも積まれており、その傍らには護衛と思わしき同業者がいる。どうやらこれから移動する商隊のようだ。
俺に続いてギムルもその集団に気が付いたのか、不思議そうに眉を顰める。「およ?商隊だ。感染症の噂を恐れて客足が減ってたはずなんだけど、こんな大口注文が来てたんだね。」
「いや、最近ではこんな集団は珍しいな。噂云々以前に、迂回路を使わなくちゃなんねぇ関係上、大規模な集団での行動が制限されてたからな。」
「……ちょっと興味があるね、もう少し近くに行ってみようか。」そう言って興味深々という様子で集団へと駆け寄って行くギムルと、やれやれといった感じで仕方なく彼女に付いていく俺を含めた残りのメンバー。正直先程のようなガラの悪い奴ばっかりかもしれない連中にお近付きになりたくは無いのだが……。そんな俺の意思に反して、無駄に高い行動力を持つギムルは、既に集団の中のリーダーらしき若い優男に話しかけていた。
「もし、こちらはなんという商隊かな?」
「はぁ、私共はリヴァン商会ですが……何か?」ギムルの質問に対して、リーダーらしき人物は至極丁寧な受け答えをする。どうやら誰も彼もがガラが悪いという訳ではないらしい。少しホッとした……って、当たり前か。
「聞いたことのない商会だね……東シュレイドに行くのかい?」
「商会登録証もありますよ?ほら、この通り。まだ新しい商会ですから、知られてなくても仕方ないですね。しかし、何故東シュレイド行きだとお分かりに?」
「なに、寒さ対策がしてあったからさ。……しかし結構な量の鉱石だね。」
「今東シュレイドでは鉱石類の値が高騰していますからね、一儲けしようと思いまして。」
「ふーん。」リーダーらしき男の話を聞きながら、コクコクと頷くギムル。俺達がいつまで喋っているつもりだろうと思いつつその様子を見ていると、突然彼女は何も無いところですっ転び、竜車に積まれた木箱を一つ巻き込みながら硬い地面に倒れこんだ。
ギムルがぶつかったことによって竜車から落下した木箱は、中の鉱石類を周囲に撒き散らしつつひっくり返って地面に落ちる。そのことに気が付いたリーダーらしき男は、慌てたようにギョッとした表情を見せて言った。「ちょっと、気を付けてくださいよ!?」
「ごめんごめん、イタタタ……。」リーダーらしき男の言葉を受けて、苦笑いしながら土を払って起き上がるギムル。……と、その直後、突然彼女は懐から素早く巻き尺のようなものを取り出し、ひっくり返った木箱の外側と中側の寸法をを測り始めた。
「中の方がかなり短い……典型的二重底か、やっぱりね。」
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209
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-23 16:57
ID:BFqht.qI
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「典型的二重底か、やっぱりね。こんなことだろうとは思ったよ。」
「なっ……何を!?」転んだのは一体何だったのかと問いたくなるほどに手際よく木箱の寸法を測ったギムルがそう言うと、リーダーらしき男はあからさまに血相を変え、焦燥と憤怒の入り混じったような表情で彼女に向けて走り出した。
「ハルドさん、そいつ抑えてて。」
「なんだかよくわからねぇが……こういう時のギムル嬢ちゃんの言うことは聞いといたほうが良いって経験則があるからな。ほらよっ!」しかし、その歩みは彼の前に立ち塞がったハルドさんによっていとも容易く止められる。リーダーらしき男はハルドさんを強引に振り切ってギムルの元へ向かおうと試みるが、しかし悲しきものかな力の差。次の瞬間には彼は両腕をガッチリと固定され、完全に動きを封じられていた。
「おいおい、そんな慌てる必要は無ぇんじゃないか?それとも、箱を調べられると不都合な事でもあるのかな?」
「……クソッ!こんなことしていいと思ってんのか!?おいお前達、そこの女を取り押さえろ!」ハルドさんにそう問われたリーダーらしき男は、押さえつけられながらも声と口調を荒げてそう周囲に……特に護衛をしていたハンター達に指示を出した。しかし、ハンターを含め商隊のメンバーだと思われていた人々は、戸惑うばかりで動こうとしない。
普通なら、荷物を物色されてリーダーを取り押さえられたら何らかのリアクションを起こしても不思議ではないと思うのだが……どうも様子がおかしい。本当に状況がよく理解できていないといった様子だ。「その反応を見るに、ほとんど事情を知らされていない雇われエキストラかな。商隊のフリをする為にお金で集められた連中だね。」
その様子を横目にそう言うと、ギムルは何やらゴソゴソと空の木箱の中を弄り始める。そして、あまりの急展開に一体何が起きているのかさっぱりな俺達ハンター組を手招きで呼び寄せると、木箱の中から一枚の板を取り出した。
その板自体はなんの変哲も無いただの木の板である。しかし問題は、その下に隠されていたものだ。「これは……っ!?」
「モンスターの鱗に翼爪、牙や毛皮、角や玉石なんかまである。多分裏の密猟者から買い取った品々だろうね。」木箱の底……二重底の下にギッシリと敷き詰められたモンスターの素材の数々。その中には当然、俺達に見覚えのあるものも多々あった。火竜や怪鳥などといった有名どころは勿論、中には雷狼竜や砕竜などといった発見例の少ない希少なモンスターの素材まである。
そんなモンスター達の素材が、大量の鉱石の下に隠されるようにしまわれていた……それが意味するところは俺であってもすぐに理解することができた。「つまり、密輸品ということかい?」
ライカの問いに、ギムルは無言で頷く。
密輸……つまりは裏ルートを介した運搬屋である。「別にそう珍しい話でも無いのさ。様々な組織の思惑が入り混じってできたここは、誰が治安を維持するかとかまだ明確には決められていない。その分他の地域と比べると密輸品なんかへの警備がザルなんだよ。特に東シュレイドに密輸品を運び込む時にはもっとも簡単なルートの一つに、ここの山を越えていくルートが挙がるだろうね。違うかい?」
ギムルにそう問いを投げかけられた男は、ハルドさんに押さえつけられながらガックリと項垂れた。その様子を肯定と受け取ったギムルは、騒ぎを聞きつけて集まってきた鉱夫達に指示を出す。
「念の為全員逃げられないように連行して、ただし抵抗しない限りはあんまり乱暴にしちゃダメだよ?犯罪に加担させられたとはいえ何も知らない一般人だろうからね。それから、他の木箱も改めよう。これ一つだけって訳は無いだろうから、多分他にも色々見つかるんじゃないかな?」
そうして、終始困惑したままだった商隊の他のメンバー……のフリをしていたエキストラ達も次々に拘束され、ギムルに頼まれた俺達は、三台の竜に積まれた大量の木箱の中身を一つ一つ改めることになったのであった。曰く『それがどんなものかもわからない人がやるよりは、ハンターとして知っている君達の方がいいだろうからね』だそうだ。
竜車の荷台から重い木箱を下ろし、一つ一つ大量の鉱石を取り出して二重底を取り外し、中を改める。すると出るわ出るわ、モンスター素材を筆頭として、取引が違法とされている物品の数々。
途方も無い作業になるのではという予感を覚えつつ、俺達は黙々と積み上げられた木箱を下ろしていった。 -
210
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-23 17:04
ID:BFqht.qI
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出るわ出るわのオンパレードは、その後暫くの間続いた。
「うわぁ、クックファーがこんな大量に……クック先生愛好会に知れたらエライことになるだろうな……。」
「希少な宝玉が……チクショウ、これが俺の物になれば……ん?なぁアマネ、この瓶に入ってる蜘蛛はなんだ?」
「あん?……毒クモリ、絶対にその瓶を開けるなよ。フリじゃないぞ、絶対だ。」
「あ、あぁ、わかった。」
「しかし、こうして見ると、改めて密猟を駆逐できていない現状を思い知りますわね。」
「世に盗人の、種は尽くまじ……かな。しかしあの人どうやら、もっと悪どいこともやってたみたいだよ……。」
「もっと悪どいこと?」
「……阿片だ。」***
……その後、密輸業者の男は扱うものの多くがモンスターの素材であったことを鑑みてギルドナイトに連行されていき、エキストラとして雇われていた人々は詳しい事情聴取の末、本当にほとんど情報を与えられていなかった一般人であることが明らかになったため、そのまま解放されることとなった。そして、その悪行が露見するキッカケを作った俺達にも事情聴取が行われ、漸く終わったと思った時には日は既にすっかり西の地平に消えていた。
俺達が発見した密輸品の数々も重要な証拠品として回収され、あの男にモンスターの素材の数々を卸した密猟業者を特定するのに役立てられるらしい。現在世界的に製造、所持、輸出入が禁止されている阿片が見つかったことを考えると、そこそこ大規模な組織が絡んでいるのではというのが向こうの見立てだそうだ。「しかし、あそこで偶然ギムルが転ばなければ、見逃されてた可能性もあるわけだよな……やっぱり、悪いことは出来ないものだ。」
バレなきゃいいなどという思考は、そう簡単には通じないのだろう。得てしてそういうものである。そうしみじみと考えていた俺に、しかしギムルは冷静につっこんだ。
「いや、偶然じゃないけどね。」
「……え?」
「新興商会なのに鉱石を大量に買い込めるような財力。なのに一体感のカケラもない従業員。大人数なのに用意してあった防寒具はせいぜい数人分。個体識別を避けるためだね、角や尻尾に何度も刃物で形を変えた痕の残ってしまったアプトノス。夕方に出発……つまり夜に移動しようとしていたこと。そして『今東シュレイドでは鉱石類の値が高騰していますからね』という言葉、情報一ついくらの商人世界で明らかに商売に役立つ情報を他人に無償で与える奴なんていないんだよ。そんなわけで、ここまで怪しい材料が揃ってたからほぼ確信してたさ。何かしら後ろ暗い事があるんだろうなってね。」推理ってそうやるんだなぁと、そう思った俺であった。逆に言えばこのギムルがいてなお未解決なままだったというのが今回のスカラグラート西部を中心に巻き起こった事件なのだ。そう考えると、この一件がどれだけの難問であるのかがよくわかる。
「さて、今日はもう遅いし……ハルドさんに三部屋用意してもらったから、そこで疲れを癒して明日の朝に備えよう。あ、ボクは自分の仮眠室があるから気にしなくていいよ。……って、どうしたの?」
「……ん?いや、別に大した事じゃない。ただ……」––––––ただ、また"何か"が引っかかった気がしたんだ。それが何なのかは具体的にはよくわからない。……しかし、凄く大事な事である気がしてならない。それがなんとも、もどかしい。
「ああクソ、なんなんだよ。……はぁ、いつまでも考えてても仕方がないし、今日のところはもう寝るか……って三部屋?おいギムル、俺達四人……」
そう言おうとした時には、既にギムルの姿は各々の宿舎に戻る鉱夫達の人混みに消えていた。
チラッ……とアマネに視線を送る俺と、そんな視線に対してコクリと小さく頷くことで応えるアマネ。そうだな、こうなってはこうするより他は無い、決まりだな。『?』と首を傾げるライカとイオンを横目に見つつ、俺達は認識を共有した。「……さてアマネ君、どうやら四人なのに三部屋しか無いようだ。」
「そうだなあなた君、ここはやむおえない。」
「「お二人でごゆっくり〜。」」でもちゃんと寝るんだぞ〜。
***
きらり、きらり、と星空に
ふわり、ふわり、と翳り有り
ぽとり、ぽとり、と堕ち行くは
古(いにしえ)告げる、厄の使者。ひそり、ひそり、と囁いて
こそり、こそり、と蠢いて
がらり、がらり、と何処(いずこ)まで、
闇夜を往かん、汝の血。侵し、冒して、生まれ来て
喰い、昧いて、存(ながら)えて
妄執し、意思を用いて、悪成さば––––––昏き沼底、死の抱擁。
***
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211
名前:天ノ者
投稿日:2018-03-24 15:01
ID:59nVq676
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意思を用いて悪成さばって4Gのゴアクエストのやつですかね…だとするとゴアも関係あるのかな?
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212
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-24 17:35
ID:IpgeFCM2
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>>211ゴア・マガラは"意思を『用いず』悪成さば"なんですよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー–––––––ザーーー……、
その日は朝から雨だった。
暗雲が空を覆い、陽の光を遮って大地に大きな影を落とす。「山の上だと雲が近いな……」
何をするでもなく空を見上げていると、ふとそんな感想を抱いた。いつもよりも低い雲に、思わず手を伸ばして掴み取るような仕草を行うが、当然その手はただ空を切るのみ。雲を掴むような話とはまさにこのことである。
その時俺は、今の状況が、なんだかそれに似ているなと感じたのだ。
確かに真実へと近付いてはいるはずなのに、どれほど手を伸ばしても、その本質には届かない。……一陣の風が、掌をすり抜けて虚しく消えた。
「なに一人で黄昏てるのさ?」
雨模様の空を眺め、軒先で呆然と佇んでいた俺の背後から、そんな声が掛けられた。
その声に振り返ると、そこにいたのは呆れたような表情で俺を見るギムルの姿。彼女は俺に羽織るタイプの雨具を手渡すと、溜息混じりに言葉を発した。「一人でうんうん考えてるのも別にいいけど、君一人で解決しなくちゃいけないって訳じゃないんだから、もう少しオンオフをしっかり切り替えていったら?ずっと難しく考え続けてたって頭が余計に疲れるだけさ、それじゃあわかるものもわからないよ。」
ギムルの言うこともその通りである。実際俺も、新しいヒントも無しにただ漠然と思考を続けていてもどうしようもないことはわかってはいるつもりなのだが、それでも今日が3日目であると意識すると、どうしても気が疾ってならないのだ。
「まあそれもそうなんだがな……そういえばギムルってかなり推理得意そうだが、なんかアドバイスとか無いのか?」
得意そうというか、実際にかなり鋭いことは先の密輸業者の一件で証明されている。そんな彼女からアドバイスでも貰えれば、或いはこのモヤモヤを解消できるかもしれない……そう思っての言葉だった。
俺がそう言って教えを請うと、ギムルはしばし悩んだ末に「別にボクも特別秀でてるって訳じゃ無いんだけど……」と前置きしつつ、しかし彼女なりに自信を持って言った。「ん〜。強いていうなら、自分の勘を信じろ……かな。一番最初に直感で抱いた印象が、最終的には意外と正しかったりするものだよ。」
一番最初に直感で抱いた印象……か。
俺がこの事件の事を始めて知った時、今回の一件に対して俺はいったいどのような印象を抱いていただろうか……?
まだ数日前のことだというのに、すっかり記憶から抜け落ちてしまっていた。「難しく考え過ぎた時には、一旦頭を空っぽにして、事実だけを並べていくってのもいいね。……っと、立ち話をしている場合じゃないや、他のみんなは大体準備出来てるよ、精錬所に案内するから早めに来てね。」
ギムルはそれだけ俺に言うと、パタパタと小走りでその場を立ち去る。俺はその背中を見送ると、考え過ぎるのはやめだと、両頬を叩いて立ち上がった。
***
「これはまた……凄まじい熱気だね。」
「クーラードリンクが必要という意味がよくわかりますわね。」紅く熔けた金属が流れ、激しく火花が散り、その度に熱風がチリチリと肌を炙る。外で降りしきる雨の音さえ容易く掻き消えてしまうような大きな音に包まれながら、俺、アマネ、ライカ、イオンの四人は、ギムルに連れられて鉱石の精錬所へと足を踏み入れた。因みにハルドさんは今日は別の仕事があるからと不在である。まあ、彼はここに住み込みなのであるから、ここだって飽きるほど見てきただろうし。
「1000度超えが当たり前の世界だからね。特にマカライト革命以降はどんどん凄いことになっていってるよ。」
確かに、それならば暑い……を通り越して熱いのは当然であると言えよう。言ってみれば火山と同じようなものなのだ。まあ、実際に比べてしまえば基本的に安全が確保されているし、火山よりは遥かにマシなのだが……。
「不純物を取り除く技術は年々進化しているよ。飛行船のエンジンに使われる部品なんかは相当良質なものを使ってるね。特に恩恵を受けているのは君達の身近なところでは剥ぎ取りナイフかな?あれも昔と比べると結構質が向上しているからね。」
剥ぎ取りナイフと言えば、モンスターの剥ぎ取りには欠かせないハンターの必需品の一つである。そんな身近なところでも恩恵を受けていることに驚きを覚えつつ、俺達はギムルの案内を受けて精錬所の中を半ば楽しんで見学した。
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213
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-24 17:37
ID:IpgeFCM2
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そうして、ギムルの案内に従うままに歩いていくと、彼女は『関係者意外立ち入り禁止』と書かれた扉を開け、俺達に中に入るように促した。
一瞬いいのか?と思ってしまったのだが、ギムルの話では彼女自身はシステム設計者の一人として十分過ぎるほどに関係者であるし、今回の一件は間違えなく特例が適用される範囲内にあるとのことである。
ただし当然、中で見たもののことは原則他言無用であるそうだ。「それに、ここから先の事こそが君達にとっては重要なんじゃない?」
ギムルのその言葉に、俺達は静かに頷いた。
そう、その先にあるのは、鉱石の精錬などによって出た有害物質などを処理するための施設なのである。毒に関する調査をしている俺達にとって、本命と言っていいのがこの場所なのだ。
もちろんシステムの欠陥を疑っているわけではないが、しかし完璧なシステムなどこの世には存在しないし、事故を百パーセント防止する事なんて出来ない。何かしらの原因によって有害物質が流出した可能性は決してゼロではないのだ。扉の中に入ると、周囲の雰囲気が一変したように感じられた。
肌を煽る熱気は無くなり、瞼を貫くような閃光も存在しない。ただ、無数に張り巡らされた配管や、至る所に目に付く警告マークが、先程とはまた違った種類の緊張感を醸し出していた。「ここからは重要な施設だから、絶対にボクの後ろから離れないでね。」
ギムルのその警告を、俺達は真摯に受け止めた。
その様子を確認すると、ギムルは「じゃあ時間が勿体無いから早速……」と、それぞれの設備を順番に巡り始めた。「排気の中の有害物質はここで何回にもわけて吸着されて……」
「石灰で中和処理を行うんだ……」
「ここの処理場で水と沈殿物に分離されてね……」
「金属イオンの……」
「沈殿物処理場は……」俺達に説明すると同時に、それぞれの処理システムに不備がないかを一つ一つ点検していくギムル。
当然あまり専門の知識を持たない俺にとっては、フワッとしかわからない説明もあれば、なにもかもサッパリな説明もあった。……まあ、ぶっちゃけてしまえばほとんど後者である。こちとら体力がモノを言うハンター稼業だ、そんな専門的な話を聞いてもわかるはずがない。「そして、適切に処理されて無害化された排水が最後にここに流されるわけだけど……うん、特に問題は無いね。これでもう紹介できるような場所は無いかな?」
「う〜ん……、やっぱりハズレか。いや、それで良かったんだけどな。」そんなこんなで三時間近く説明を聞いていたが、点検をしたギムルによるとどこも特に問題点は見当たらなかったらしい。やっぱり無駄足だったか……と、そう思ったところで、アマネが何かを気にしているように難しげな表情をしているのに気が付いた。
「どうしたんだ?アマネ」
「いや、この辺は妙に苔が多いなと思ってな……」ふむ……言われてみれば確かにそんな感じもするが……でもそこまで違うようには見えない。他の場所も大体こんなものでは無いだろうか?素人ながらにそう言うと、アマネは大して強く否定を発することもなく、小さく頷いた。
「まあ、多少でしか無いし、今回の件に関わりがあるようには思えないけどな。」
「じゃあ、そろそろ戻ろうか、ボクも疲れたし。」その後、一応念の為とギムルから精錬所で発生する毒物のサンプルを何種類も受け取ったが、ギムルの点検の結果から考えると、おそらくこれも望み薄だろうというのが正直な感想だ。
最初に案内された応接室でお茶を飲みながらそう考えていると、ふと西部の様子はどうなったかな〜?という思考が頭をよぎった。一泊してしまったし、そろそろ戻って方がいいのでは無いだろうか?
そう考えたのは他も同じであったのか、ギムルはテーブルにカップを置いて俺達に問う。「……で、これからどうするんだい?今日中に西部に戻りたいなら、早めに出発した方がいいけど……?」
Q.西部に戻りますか?
1、戻る
2、戻らない -
214
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-25 15:57
ID:iBaeiRKc
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1でお願いします
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215
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-03-25 21:11
ID:2vNnRjOI
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誰もいない雨の坂道を、一台の竜車がポツリと降っていく。
結局、鉱山でも核心に迫るような有力な情報を手にすることは出来なかった。勿論、まだ完全に無駄足であったと決まったわけでは無いし、様々な憶測が飛び交う現状、可能性の一つを潰せたというだけで十分に大きいのだが、それでも手放しで喜べるような結果では無かった。
調べれば調べるほど、真相が遠ざかっていくようにさえ思える。
行きの道では盛んに議論を交わしていたメンバーも、今は黙って竜車に揺られていた。……雨という生憎の天気も、暗い気分に拍車をかける。
静かな雨音しか聞こえないというその事実が、竜車の中の沈黙をより一層強調しているのだ。「ねぇ、ちょっと来てくれるかい!」
……と、突然竜車の進行が止まり、何故か無性に無力感を味わっていた俺達に、御者を務めるギムルからそんな声がかけられた。
丁度暇を持て余し、ひたすらに座っていることにも疲れ始めた頃合いである。都合が良いなと竜車の扉を開けて外を覗くと、ギムルがコッチへ来いと手招きしているのが見えた。そのなにやら慌てた様子にただ事で無いことを感じ取った俺達は、ササッと用意してあった雨具を羽織り、竜車から飛び降りる。そうしてギムルに招かれるままに竜車の前に出ると、俺達の目には衝撃的なものが飛び込んで来た。
「……これは!」
「ガブラス……か。生きてるのか?」それは、竜車が通る為に整備された道の真ん中に横たわる、ガブラスの姿であった。アマネは倒れたままピクリとも動かないガブラスに駆け寄ると、暫し間を置き……そして目を伏せて静かに首を横に振った。
「……ダメだ、死んでる。落下した時の損傷以外に目立った外傷は見られない……モンスターに攻撃されて死んだって訳じゃ無いらしいな。」
「じゃあ死因は……?」
「何らかの原因による衰弱死。出来れば持ち帰って調べたいところだが……そんなスペースは無いしな。」アマネはそう言って自分達の乗る竜車を振り返った。そこまで大きい竜車というわけではない、もちろん小さくは無いが、せいぜい俺達五人とその荷物を載せれば一杯という程度のものである。
そこに尻尾まで含めれば体長数メートルもあるガブラスの死骸を載せていくようなスペースは存在しなかった。
じゃあ、諦めるしか無い……「だから胃と毒腺だけ持ち帰ろう。調べるっつってもどうせそこだけだろうし。」
……と思ったら以外にそうでも無いようだ。毒腺があれば毒の性質……つまり変異の有無が調べられるし、胃があればその内容物から直前の行動を大体察することが出来るらしい。
そして、毒腺と胃程度の大きさのものならば十分に置いておけるスペースも確保出来るそうだ。「防毒手袋と作業用ゴーグルならボクのがあるから貸そうか?」
「ああ、有り難い。……いつもそんなもの持ち歩いてるのか?」
「乙女の嗜みさ。」
「……いや、それは違うと思うぞ。」ギムルから手袋とゴーグルを借りたアマネは、剥ぎ取りナイフによって手早くガブラスの腹を搔っ捌くと、鮮やかな色の血とグチャグチャとしたグロテスクな臓物の中から、胃に相当する部分を切り取って摘出し、その両端を紐で縛って小さな箱に納める。同じ要領で上顎の付け根を切開し、こちらはやや慎重になって毒腺を抜くと、それも小さな箱の中に静かに納めた。
「ふぅ、まあこんなもんだろ。ライカ、手伝ってくれ!」
「はいはい、了解だよ。」作業を終えたアマネはそう言いながら額に浮かんだ汗を拭うと、ライカに呼びかけて彼と共にガブラスの死骸を持ち上げ、茂みの奥に投げ捨てる。ひどく乱雑な扱いだが……このまま道の真ん中で腐られても人間としては困るのだ、これは仕方の無いことなのであろう。まさか、態々墓でも作ってやる余裕があるわけでも無いし……。
俺達はガブラスに向けて数秒目を瞑って手を合わせると、再び竜車に乗り込んで帰路に就いた。
……その道中、いくつものガブラスの死骸を、見つけながら。
***
スカラグラート西部に戻って来ると、何やら街の様子がおかしいことに気が付いた。
秘薬の力によって謎の病から持ち直し、動けるようになった人々が街の中を歩いている……それ自体はそこまで疑問に思うでも無い。
しかし今はこんな雨の中である、それに街の人たちの様子もなんだかおかしい気がしてならない……そう思っていると、俺達の竜車を発見した街の人々が、一斉に駆け寄ってきた。「ハンターさん達、秘薬を持っていないか!?」
「マンドラゴラが切れちまったんだ!」……なんだって?
-
216
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-03-26 13:55
ID:pJBQclzA
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詳しく話を聞いたところ、秘薬、いにしえの秘薬の両方で調合素材として要求されるマンドラゴラを、とうとう使い切ってしまったということらしい。ただでさえマンドラゴラは貴重品だ、しかも他の素材に比べて2倍の速度で消費するとなれば、足りなくなるのは分からないわけではない。一応ハチミツやアオキノコも両方で使うが、それらはあまり入手が難しい類のものではないからな。
しかしそれっておかしくないか?ミラルパはある程度余裕を持たせるようにかなりの量を掻き集めて来ていたはずなのに……。その疑問に答えたのは、いつの間に現れたのやら、他ならぬミラルパである。
「秘薬を飲んで回復した人の内一部が、何故か謎の病を再発したのですよ。マンドラゴラは養殖の難しい貴重品ですから、とても賄いきれず……。」
そう言って小さく首を横に振るミラルパ。その姿からは、不甲斐ないという感情がこれ以上ないほどに湧き出ている。子供の容姿でそういうことをされると、何故か見ている方が申し訳ない気持ちになって来るのでやめてほしいのだが……。
しかしギムルはそうは思わないらしく、俯くミラルパに対していつもと同じような口調で問いを投げかけた。「一部……ということは再発していない人もいるんだね。パパの事だろうから再発した人の傾向もまとめてあるんでしょ?」
「ええもちろん、具体的には我々が来る前に治療した人と、最後の方に治療した人が再発する傾向にあるようです。」えっと……簡単に言えば最初の方と最後の方に治療した人が再発して、それ以外は問題ないということか。……つまり、どういうことだってばよ?
理解不能な状況に首を捻っていると、病人達を集めている隔離施設の扉から、エリクシルが必死の形相でこちらを呼び寄せていた。「秘薬を早く!ライカさんとイオンさんとアマネさんの残り分を合わせれば7つあるはずです!早く、間に合わなくなる前にっ!」
その声に慌てて走り出し、隔離施設に飛び込んだ俺達は、早速エリクシルに持っている秘薬を手渡して……あ、俺の分はもう無いや。
ともあれ7つ分の秘薬を手にしたエリクシルは、それを持って寝かされている人達の元へ行き、一人一人に飲ませて行く。どうやら症状の酷い者、抵抗力の低い者から優先して飲ませているようだが……「こりゃ……足りねぇだろ。」
予想以上に、病人の数が多かった。
なんとか新しいマンドラゴラを補充出来なければ、彼等は助からない。しかし、周辺一帯のマンドラゴラは既に粗方ミラルパが買い占めてしまったし、遠方まで買いに行くような猶予はない。ハンターならば採取してくればとも思うが、この前ドスイーオス捕獲の際に近辺を見た限りだと、雨の中でこの全員に行き渡る量のマンドラゴラを採取してくるのも現実的ではないだろう。そこでふと、視界の隅に映るのは、横たえられて浅い呼吸を繰り返す母親らしき人と、目に涙を浮かべながらも「大丈夫だよ!」と懸命に母親を励まそうとする小さな女の子の姿。
或いは、次第に衰弱していく子供の姿を見て咽び泣く両親。
或いは、たった一人なにもかも諦めたような顔で「儂は後でええ」と治療を断り続ける老人。
或いは……或いは……或いは…………、……採取してくるのは現実的ではない。
–––––––だからなんだよ?
「俺が……「ちょっと待ってくださいハンターさん、まさかここら一帯を無作為に探し回るつもりじゃないでしょうね?」……!」
"俺が行く"……そう声に出して走り出そうとしたその瞬間、俺の目の前に現れた一人の男がそれを遮るように言葉を紡いだ。
その男の印象を一言で表すならば"平凡"。若くもないし年をとってもいない、鍛えられてはいないが非力というわけではない、そんな感じの特徴の無い男である。「マンドラゴラが採れる場所なら僕に心当たりがあります。そこは今立ち入り禁止に含まれていますが……ハンターさんなら入れるでしょう?」
そんな男が、俺達が今最も欲している情報を持って来てくれた。
しかし、この人物はいったい誰なのであろうか?「僕ですか?僕はどこにでもいる近所の薬売りのおじさんですよ。本当は教えたく無いんですが、そうも言ってられない状況ですからね。少々見つけ辛い場所にあるので知っている人はあまりいませんが……何故かマンドラゴラが大量に生える不思議な木……"御神木"と呼んでいる木があるんです。この前採ったのが一ヶ月くらい前ですから、もしかしたら新しいのが生えているかもしれません。」
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217
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-03-26 15:00
ID:qQWrnDY2
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–––––––ザーーー………、
ひたすらに雨の降りしきる中、男……薬売りのおじさんに案内され、立ち入り禁止となっている湿地を駆け抜ける途中、俺は彼に対して気になっていたことを質問した。
「なあ、その"御神木"には何でマンドラゴラが大量に生えるんだ?」
その問いに対してしかし薬売りのおじさんは首を捻るばかりである。
「さあ?周囲の環境が育成に適しているからだと思いますが。まあ、どちらにせよマンドラゴラが大量に採れるのは薬売りとしては嬉しい限りです。」
その言葉に対して、俺はふと違和感を抱いた。別に質問に対する答えがおかしかったわけではない、その後に続いた言葉が少し疑問に思ったのだ。確かにマンドラゴラは秘薬の原料として有用だが、秘薬なんてものを使うのはせいぜい大怪我をした時くらい。大量にいるというものでは無いと思うのだが……?
もちろんあるに越したことはないのは確かであるが……なんか引っかかる。「なあ、そもそもなんでマンドラゴラを大量に採取する必要があるんだ?」
俺のそんな当たり前の疑問をぶつけてみると……何故か薬売りのおじさんから変わった物を見るような目で見られた。まるで俺が言っていることの意味がわからないといった表情である。
「なんでって……風邪引いた時や怪我をした時……後は疲れた時なんかに干して粉末にしたものをよく使うでしょう?」
「……はい?」風邪引いた時や怪我をした時や疲れた時に?
……凄まじく初耳な上に、なんだその贅沢な使い方は。「いや、そんなの俺初めて聞いたぞ?」
「え?そうなんですか?じゃあひょっとしてこの辺だけに伝わる民間療法なのかな……。」ピクリ……と、俺の指摘に対する薬売りのおじさんの呟きに、俺の中の何かが引っかかった。この辺だけに伝わる民間療法……正直嫌な予感しかしない。その嫌な予感が的中しないように祈りつつ、俺は薬売りのおじさんに次なる質問を繰り出す。
「マンドラゴラを街中の人に売って回ってるのか?」
「え?まあ、それはそうでしょう。粉末の状態で買う人もいれば、生の状態で買う人もいますが、それが何か?」薬売りのおじさんがスラスラと答えるたびに、俺の中の予感は確信へと変わっていく。
「そのマンドラゴラ、今はどうなってる……?」
「そりゃあもう、秘薬の原料になってると思いますよ。」カチリ。その瞬間、俺の中の嫌な予感は、完全なる確信へと変化した。
「そ……それだぁぁぁぁあああっ!!」
もし、なんらかの理由で"御神木"のマンドラゴラが毒に汚染されていたとしたら……。
この地域一帯の人々はそれを使った民間療法によってその毒を摂取してしまう。当然民間療法というのは人間の間で行われることだ、だから水も土も異常は無いし、家畜なんかにも広がらずに、人間だけの間で謎の病が蔓延する。毒の蓄積もゆっくりだから、マンドラゴラが直接的な原因だなんて気付かない。
そして、薬売りのおじさんの口ぶりからすると、この周辺の人々はそれを誰もがやっている当たり前の事だと認識していた。ならばギムルに心当たりを聞かれたときに抜けてしまっていてもおかしくはない。マンドラゴラが毒に汚染された理由はともかく、もしそれが人間の間に謎の病が蔓延した原因であったとするならば……。
「着きました、ここに"御神木"が……っ!?」
……樹齢、何百年の木であろうか。
ドスイーオスが縄張りとしていた沼地よりは街に近いが、湿地のやや奥まったところに存在する、マンドラゴラを筆頭として無数のキノコに包まれた、直径2メートル近くある巨大な木……。
その周囲には、嫌に見慣れたドス黒い水が、雨によって流れ込んできていて……"御神木"は、そこに含まれる毒をその一身に受けていた。横に飛び出した枝を軽く握ってみれば、その枝は大した抵抗もなく折れ、ただ軽い感触だけが俺の腕に伝わってくる。
「これはいったい!?」
「……枯れてる。死滅してる。なるほど、雨の日だけに蓮沼に溜まった毒が流れ込んでくるってわけか……そりゃわかんねぇよな。」マンドラゴラは他の植物の根に寄生して成長し、ある程度まで育つとその植物を菌糸によって取り込んでしまい同化するという特殊な生態を持つキノコだ。だから毒に汚染された木に生えたマンドラゴラは、その毒をも身の内に取り込んでしまう……。
これで、謎の病が人々に広がった理由はわかった。それ自体は喜ばしいことである。
しかし……それは同時に、残された唯一の希望が途絶えた瞬間でもあった。 -
218
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-03-26 16:28
ID:qQWrnDY2
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「そんな……僕が、謎の病の原因だったなんて。」
汚染された"御神木"の前で、薬売りのおじさんは崩れ落ちた。
そんな彼を、何故責めることが出来るだろうか?雨の日のみに流れ込んでくる毒の水に汚染された木……そんなの実物を確認しない限りは常人に想像出来るはずがない。そもそも彼に悪意は無かったし、彼が絶対的に悪いわけでもなかった。
一度回復した人の病が再発した原因は、おそらくここで採れたマンドラゴラを備蓄しておいたものを秘薬の原料として使ってしまったから。つまり、汚染されていない安全なマンドラゴラを使えば再発はしない。それは確かだ、でも……「……そんなの、何処にあるんだよ。」
ここのマンドラゴラが使えないとして……では、いったいどこを探せば、あれだけの人々に行き渡るようなマンドラゴラを採取することが出来るだろうか。ここに来るまでの道中にそれらしき影を発見することはできなかった。この雨の中を虱潰しに探したとして……それで本当に間に合うのか?
薬売りのおじさんの提案が無ければ、初めからそうするつもりであった……。
しかし、改めて考えると、それがどれだけ非現実的なことなのかがよくわかってしまう。一度上げられたから落とされた分だけ……そのダメージは大きかった。–––––––ザーーー……、
……雨が、降り続いている。
夜が近いからなのか、空は暗くなり始めていた。……と、視界に映ったのは、一つの影。
大きな翼を広げて羽ばたく、細い体と長い尻尾が特徴的なその影は、跪いて嗚咽する薬売りのおじさんに接近し……「危ないっ!」
危険を感じ取った俺が、慌てて薬売りのおじさんを蹴り飛ばすと、ついさっきまで彼のいた所に、その影……ガブラスによって吐き出された毒液が降り注いだ。
俺は何が起こったのか理解が追いついていないといった様子の薬売りのおじさんを抱き起こすと、早く逃げろと伝える。直後、薬売りのおじさんもガブラスの姿に気が付いたのか、恐れをなすように来た道を逃げていった。……ガブラス。
蛇竜種に分類される小型モンスター。
毒液を吐き出す攻撃、地味に高い耐久力と、常に少し高い場所を飛び続ける習性が、ハンターから嫌われているモンスターだ。
とは言え、所詮は小型モンスター。ハンターである俺にかかればそこまで手こずるような相手ではない。「これはかなり、まずいな……。」
……ただしそれは、武器を持っていたならばの話だ。
慌てて飛び出して来た俺は……現在、刃渡りの短い剥ぎ取りナイフ以外は丸腰である。この状態でモンスターと戦おうだなんて、あまりにも無謀過ぎるだろう。ガブラスの尻尾が鞭のように振られ、俺のすぐ真横を掠める。ダメ元で反撃にと振るってみた剥ぎ取りナイフは、しかしその刃渡りの短さが災いしてガブラスの身を捉えることは出来ず、虚しく空を切り裂いた。斬れ味だけは一級品だが、武器として扱うには短過ぎる。
直後、俺が一歩身を引くと同時に、さっきまで俺がいた場所をガブラスの毒液が通過する。またもや毒液を躱されたガブラスは苛立たしげに翼を動かすと、足を前に出して俺に目掛けて猛然と飛び蹴りをかましてきた。迫り来るガブラスの巨体に対し、俺は地面を転がるようにスレスレで回避すると、すれ違いざまにガブラスの体を剥ぎ取りナイフで一直線に切り裂いた。
ガブラスの青黒い表皮に一筋の赤い線が描かれて、そこから大量の血が噴き出す。その返り血を浴びつつも、俺は悲鳴を上げて仰け反るガブラスに続けざまに剥ぎ取りナイフの刺突を食らわせた。「……なっ!?」
しかし、ナイフ術において刺突というのは本来避けるべきものである。ガブラスの体に突き刺さったナイフは、筋肉の硬直によって抜けなくなってしまった。
ナイフを引き抜こうとして硬い手応えに驚愕した俺に、ガブラスは大きく口を開いて振り向き……「うわぁぁぁぁっ!」
……しかし、そのガブラスの側頭部を、薬売りのおじさんが持った石が激しく殴打する。その拍子にガブラスの体に突き刺さっていたナイフが抜け、意識外からの攻撃に怯んだガブラスの顔面を、鋭利な刃が切り裂いた。
ブシャリ……
と、返り血が顔にかかり、しかしその側から雨水に洗い流される。
顔面を切り裂かれたガブラスは、濡れた土の上に崩れ落ち……絶命した。「……取り敢えず、戻ろう。」
今の俺には、ただそれしか言えなかった。
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219
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-03-26 17:56
ID:qQWrnDY2
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「そうですか、原因は…と言うよりは経路はマンドラゴラでしたか……。」
深夜。漸く街に戻ってきた俺は、明るい部屋の中にアマネ、アリーチェ、イオン、エドワード、エリクシル、ギムル、ミラルパ、ライカの全員を集めて"御神木"のこと、そしてマンドラゴラのことを説明した。何故か俺が助けたメラルーのシガレットとシフォンもその場にいたが、まあ邪魔にならないならばさしたる問題ではない。
問題は、人々に謎の病が蔓延した原因こそ判明したが、これでマンドラゴラを大量に入手する手段が完全に閉ざされてしまったことにある。さらに言うならば、仮にもこの街から備蓄のマンドラゴラが発見されても、それを安易に使うことさえままならなくなってしまったのだ。「蓮沼の水が雨で流れ込んで……か。どうせならそもそも毒が発生した理由も分かれば良かったが、世の中そう上手くはいかんか。」
エドワードのその言葉に、周囲の沈黙はより深まる。そう、謎の病が人間に広がった理由こそわかったが、そもそも何故毒が発生したかについては、まだ何もわかっていないのだ。いったいどこからどうやってあのような毒が発生し、何故ドスイーオスは変異して、西の沼地はあのような姿になってしまったのか……。
「その事なんですけど……」
……と、そこでエリクシルが手を挙げた。それによって、この場にいる全員の視線は彼女一点に集中する。そんな中で、彼女は手元から見覚えのあるサンプルを取り出し、そして衝撃的な言葉を発した。
「精錬所から出る有害物質の一部が、変異ドスイーオスの毒の成分と一致しました。」
「なんっ……!?」それはあまりにも意外過ぎる結果であった。
だって、あの精錬所の有害物質処理システムには異常は見られなかったし、事実俺達もそこに何か異常が起きているようには見えなかったからだ。「……でも、システムには異常は見られなかったのよね?じゃあ、その毒はいったい何処から湧いて出たの?」
「それは……。」アリーチェの指摘に、エリクシルは答えを出すことができずに口籠る。事実と、自分の鑑定結果が矛盾している。それは彼女にとって……と言うよりは学問を修める者にとって非常に辛いことであるのは想像に難くなかった。
一方で俺は、アリーチェの言った言葉が、再び誰かの言った言葉と繋がったように感じられていた。こんな感覚を前にも知っている。確かアマネの「通常自然界ではあり得ない何か」という言葉に、同じような引っかかりを覚えたのだ。
ああ、クソッ!その言葉っていったいなんなんだよ!!どれだけ思い出そうとしても思い出せないキーワードに、俺が内心激しい苛立ちを覚えていると、続いて言葉を発したのはイオンだった。
「鉱毒の成分はガブラスの毒液からも見つかりましたの?」
「はい。変異ドスイーオスのそれと比べると桁違いに低濃度ですが、確実に。アマネさんが持ち帰ったガブラスの胃袋の中に汚染された魚の残骸が残っていたことを考えると……」
「生物濃縮による毒の変異……か。」イオンの問いに対するエリクシルの回答に、アマネがそう言葉を続ける。するとエリクシルはその言葉に頷きつつも、しかしそうにしたっておかしいと訴えた。
「でもそれにしたって変異ドスイーオスの毒はあまりにも強過ぎるんですよ。あそこまでなるなんて普通考えられません。」
確かに、ドスイーオスの毒とガブラスの毒を見比べると、かなり色が違う。ガブラスの毒はまだ普通の毒液の色をしているが、ドスイーオスのそれは明らかにドス黒いのだ。
「そもそも鉱毒のルーツがわからないしね。まさか鉱毒を排出するようなモンスターが存在するとは思えないし。」
ライカの言葉に、皆は静かに頷いた。
そう、後は鉱毒のルーツさえ掴めれば……。確かにピースは揃っている筈なんだ。これまで俺達が活動してきたのは決して無駄ではなく、確実に情報は集まってきている。問題は、そのピースの嵌め方なのだ。集めたピースを正しく嵌められなければ、真実の像は見えてこない。
マンドラゴラの問題と、あと少しで届きそうな真実……それらをクリアすることができれば、この事件は見事に解決する。
考えろ……考えろ……必死に頭を捻っていると、ふとグギュルルルゥゥ〜という音が室内に鳴り響いた。
その発信源は、俺である。「あ、そういえば俺、帰ってきてから何も食べてないな。」
どうりで考えがまとまらない訳である。
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220
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-03-26 20:24
ID:Znrt97HA
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どうやら、腹が減っていたというのはなにも俺に限った話では無いらしい。他のメンバーも何も食べていないか、食べていたとしても軽く摘める軽食くらいのものであったようで、全員空腹感は感じていたようだ。
……慰められているわけではないだろうと信じたい。皆の前で盛大に腹を鳴らしたことを遅ばせながらに恥じていると、ミラルパに指示されたシガレットとシフォンが、凄まじく美味しそうな匂いを漂わせる料理を運んできた。
なんでも、皆が腹を空かずことを予め見越していたミラルパは、労いのためにもと持ち寄った高級食材を使い、態々自分の腕を振るって料理を作ってくれていたらしい。完全に子供の姿なのに料理できるとは頗る意外だが……それを口にしたら、ミラルパからこんな言葉が返ってきた。「私が何年独り身してると思っているのですか?勿論一時期は使用人に任せていた頃もありましたが、今は当時ほど忙しくはないですし、できるときには自分で料理を作るようにしています。」
独り身って……そんな年齢でも…いや、あるのか?この場合はどうなるんだろう?竜人族ってよくわからん。
ともあれ、腹が減っては戦は出来ぬし、思考も纏まらない。今は目の前の料理に集中しよう。もしかしたら空腹が治れば何かいい考えが浮かんでくるかもしれないしな。そう考えながら待機していた俺達の目の前に出されたのは……それはそれは高級感溢れる品の数々であった。マスターベーグルやシモフリトマトと思わしき高級食材が並んでいるのが目に付くし、何よりメインは……
「フォアグラのテリーヌです。スライスしたマスターベーグルに乗せて食べると美味しいですよ。」
そう、高級食材と言えば真っ先に名前が出てくるあのフォアグラである。実は意外と美味しくないと言われているが、食べてみるとそんなことはなく普通に凄く美味しいともっぱらの評判のフォアグラである。それも長く生きている竜人族ならではか、かなりクオリティの高い料理であった。
ただでさえ腹が減っていた時に、こんな美味そうな料理……俺は我慢できずに食べ始めた。「……美味い。」
それ以外の言葉が出なかった。
常時金欠気味である俺は、いつか高級食材を食べるような機会があればガッツリ食レポしてやろうと貧乏人なりの考えを抱いていたのだが、口に入れた瞬間そんなもの何処かへ吹っ飛んでいってしまった。脳の全神経が舌先に集中し、語彙力が崩壊する。多分今食レポしようとしても「なんか、こう……フワッとして口の中で溶け美味えぇぇ!」としか言えないだろう。食事とは生きる上で欠かせない事であると同時に、生物の持つ根源的な喜びであるのだとこの時改めて認識することができた。
「フォアグラってアヒルやガチョウなんかに運動もさせずに大量の餌を与え続けることで作る脂肪肝なんだけど……結局は美味けりゃ良いって考えちまうよなぁ。」
アマネの薀蓄が炸裂する。彼に言わせれば「今では割と一般常識」だそうだが、そもそもフォアグラなんてものに出会う機会さえ稀な俺には分からないことであった。
まあ確かに無理矢理食わせて育てるっていうのは中々に酷い気もするが、その分美味しいものが食べられると思うとな。……。
…………っ!?「食わせて、育てる……。」
「ん?どうかしたのか?」その瞬間、俺の中で何かが動いた。記憶が脳内を走馬灯のように駆け巡る。
同時に料理を食べ終わった俺は、スッと席を立つ。その瞬間、周りのメンバーが挙動不審な俺を訝しげな表情で見つめた。立ち上がって口元を手で覆い、ブツブツと何事か呟く俺に、一番最初に声を掛けたのはミラルパだった。「スケベハンター様、どうかしましたか?」
俺はそんな彼に、小さく声を掛ける。
「ミラルパ……十五年前の古龍襲撃記録をギルドから取り寄せることは出来るか?」
「はい、出来ますが……一体何が?」
「出来るだけ早く頼む。」もし、俺の予想が正しかったとしたら……
この事件の本質は……っ!「おい……まさか今回の事件の真相がわかったのか!?」
「まだ分からない。まだ確かなことは言えない……でもそうだな、ひょっとしたら犯人に予想がつい……た…………か。」……気付いたら俺は床を舐めていた。
激しい頭痛、眩暈、吐気、倦怠感……これらの症状…程度は違えど、変異ドスイーオスの毒液を浴びたときと同じだ。
毒に侵されている……心当たりは……あった。ガブラスの返り血を浴びたときだ。おそらく顔面を切り裂いた時、毒腺も一緒に破れたのだ。クソ……やばい、意識が遠く……っ!
「あなたさん!?」
「おいっ!大丈夫か!?」 -
221
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-03-26 20:36
ID:Znrt97HA
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なんてこったいなタイミングで倒れた主人公!
果たして、犯人とは誰なのか!?
真実はどこにあるのか!?運命のキーワードは>>192にの中にあるっ!!
そして、手に入らないマンドラゴラ。
このままでは、主人公の危険が危ない!(錯乱)実は、マンドラゴラを入手する方法は既に物語の中に伏線を張ってあります!
ヒントは「キノコ」と、「暇氏リスペクト」!はてさていったいどうやって!?
とうとう十万文字を超えてしまったこの物語も、いよいよクライマックス!もう暫しのお付き合いをお願いします!
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222
名前:時雨
投稿日:2018-03-26 20:51
ID:gX20EMvk
[編集]
暇氏リスペクトでキノコといったら…、モスか。
モスに毒素のないマンドラゴラを探させて、秘薬作って主人公やら被害あってる人に渡す感じかな。 -
223
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-26 21:16
ID:mPY46xgM
[編集]
カレー鍋作るんでしょ(適当)
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224
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-27 07:00
ID:yWY/Xizo
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キノコ積んだ貨物船が墜落するんじゃない?(すっとぼけ
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225
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-03-27 17:12
ID:hsQbZJeY
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「間違えないです。」
エリクシルの声が、隔離施設の中に嫌に大きく響いた。
その言葉が意味するところを察し、その場にいる一同は皆同じように沈黙する。外で降りしきる雨音だけが、ただただ淡々と薄暗い室内に鳴り渡っていた。ランプの光が静かに揺れ、暗闇の中にあなたの姿を映し出す。
滝のように脂汗を流し、苦しげに浅い呼吸を繰り返すその姿は、周囲の謎の病に罹った人々の様子と同じであった。「毒かよ……ックソ!」
アマネが口惜しげに地団駄を踏み、拳を強く握りしめて歯を食い縛る。自分が彼の状態の変化に気付く事が出来ていれば、こうなる前に何らかの対処は可能だったかもしれないと、己を過去を猛省しているのだ。だが、どれだけ過去を振り返っていても、今を変えることは出来ないのは、彼自身よく理解していた。
「今はとにかく、どんな手段を用いてでもマンドラゴラを確保することが先決だ。タイムリミットは?」
「症状の進行具合から見て、最悪の場合明日の……いえ、もう0時を超えているので今日ですか……今日の正午まで……。」予想以上に時間的猶予はない。
しかもメンバーが一人欠けたことにより、何をするにも効率が下がることも懸念される。誰もが強いやる気を抱いているが……反面、やはり仲間が倒れるという異常事態からか、もっと大局的な"士気"は最悪の状態にあった。
そも、彼等はいかなる形であれここ数日の活動によりかなり疲労が蓄積されており、しかも今日などは寝てすらいない。コンディションは万全とは程遠い状態にある。むしろ最悪レベルと言っていいだろう。
そして……今は大雨の真夜中。通常のケースにおいて、人間という生き物が活動する上では最悪に近い環境だ。ましてや物探しをするなんて以ての外、無謀だろう。雨と闇は否応無しに視界を遮り、雨音は聴覚も封じ、臭いでさえ雨水によって洗い流され、ぬかるんだ地面が足をとる。夜風の冷たさと雨が急速に体温を奪い、下手すれば今度は自分が倒れる事態になりかねない。考えれば考えるほど、希望的な情報が上がってこない。
誰もが諦観の念を抱いたとて仕方がないような絶望的な局面で、しかし誰一人として諦めることはない。仲間のためにも、そして街のためにも、絶対に諦めるわけにはいかないし、ここで諦めれば彼等はきっと自分が許せないだろう。だが、諦めない意思があったとして、それが事象を左右することなど極々稀なケースである。いかなる意思を抱こうとも、現実は変わらない。窮地で天才的な発想が浮かぶのは、神に選ばれた一部の賢人のみなのだから……。
だけど、もしこの世に本当に、奇跡があるとするならば……
「……オイラに、考えがあるにゃ。」
それは何とも、意外なところからやってくる。
誰もが打開策を思いつくことが出来ない絶望的な状況の中、小さく手を挙げたのは、メラルーのシガレットであった。彼は、「確証は無い、可能性の話に過ぎないにゃ」と前置きすると、その隣にいた相棒のシフォンに問いかける。「シフォン……おミャーが一ヶ月くらい前、動く山を見たっていうのは本当かにゃ?それはどっちに行ったか覚えているにゃ?」
シガレットの突拍子も無い質問に、面食らったような表情をするシフォン。しかし彼女は相棒は相棒なりに考えがあるのだろうと、その質問の意図を問うようなことはせずに、聞かれた通りの事を答える。
「ニャ、間違えないニャ。方角は目撃地点からの位置関係を考えて、動いていなければここから西北西から北北東の範囲にいるはずにゃ。目はアタイの商売道具、見間違えなんてしないのニャ。」
自信を持って断言するシフォン。その言葉を聞いて、シガレットは深く頷き、そして言い放った。
「なら、オイラの予想が正しければ、もしかしたら……マンドラゴラを"連れてくる"ことが出来るかもしれないにゃ。」
その瞳に、静かな炎を宿して。
※第2クエスト開始
〜救済のNarcissus〜
メインターゲット:マンドラゴラの納品
サブターゲット:無し
失敗条件:タイムリミット(正午) -
226
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-03-28 15:27
ID:ppizYosU
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–––––––ランプの小さな光が、暗い夜の森を僅かに照らした。
冷たい雨が絶えず小さな体を打ち付け、吹き抜ける夜風も相まって、体温が徐々に奪われていくのを感じる。しかし、その程度のことがなんであろうか?どんな場所でも、どんな状態でも、誰よりも早く走れるのが自分の唯一の取り柄であると言うのに……そんなこと程度で、どうして立ち止まることの出来ようものか。雨具など自分にとっては機動力を削ぐ邪魔者でしかない。極限まで風の抵抗を減らし、空気の隙間を突き抜けるように加速する。
……気が遠くなる。
どこまでもどこまでも景色を変えない森と、否応無しに視界を塞ぐ雨によって、方向感覚さえ徐々に失われていく。これが昼ならば……あるいは夜であっても晴れていたならば、太陽の位置や星の並びから方角を推測することなど容易かったであろう。だが、希望を述べていても意味が無い、今頼れるのは己の感覚と……そしてミラルパから受け取った小さな携帯羅針盤のみ。ただそれだけを頼りに、シガレットは一陣の風となって木々の間を縫うように駆け抜けた。
……と、刹那の浮遊感の後に、全身に鈍い衝撃が走る。
木の根か何かに躓き、ぬかるんだ地面に倒れ込んだシガレットは、しかし即座に立ち上がり……先程の衝撃で消えてしまったランプを乱暴に蹴り飛ばすと、再び前へと走り出す。光源が失われた……しかし全く何も見えないというほどではない。自分は泥棒のメラルー、闇に生きる者は、夜目が利かなければ生きてはいけないのだから。
目標は漠然としている。果たして見つかるかどうかも定かではない。なまじ見つかったとしても、上手くいく保証はどこにも無い。
正直、誰かの為に走るなんて自分らしくも無いと思う。だが、シガレットは走った。それは相棒を救われた恩返しと言うよりは、ここで何もしなければ、きっと自分が許せないと思ったから。小悪党は小悪党なりに、通すべき筋があると思ったから。
だから……
……シガレットは感じ取った。
自らが求めていたものの気配、恩人と街を救う、最後の希望を……。シガレットはその姿を確認すると、ミラルパから手渡された王立武具工匠製だという耐水ハンドライフルを取り出し、その中に角笛と同じ音を立てる鏑弾を込める。曰く、これを放つと、鏑弾はモンスターの嫌う角笛の音を立てながら飛び、結果としてモンスターを誘導することができるそうだ。
–––––––––––––ィィッ!
くぐもった発砲音と共に、モンスターにしか聞こえない特殊な波長の音が森の中に響き渡る。騒がしい雨音さえ引き裂いて響いたその音は、そこにいる主を呼び覚ますのには十分だった。
……ズシン……ズシン………
「さて、鬼ごっこの始まりにゃ。」
***
夜が……明けようとしている。
夜通し降り続けた雨足も僅かに弱まり、東の空が僅かに紫がかるのが見えた。大まかな時間で表すとAM6:00。タイムリミットまで残り約六時間。
メラルーのシフォンは物見櫓の上で自分の相棒が消えて行った森の中を見つめ、ただひたすらにその一刻も早い帰還を待った。しかし森を見つめるその顔に、不思議と心配の色は見られない。それは一見すると非情と取られるかもしれないが、実際にはその逆だ。彼女は相棒の逃げ足の速さを誰よりも知っている、その信頼からくる余裕であった。そして、そうであるからこそ彼女の目は見逃さなかった。
森の茂みから飛び出す一つの影の姿を。
その影……ボロボロに傷付いたシガレットが、弱々しくながらも確かに成功を示す赤い旗を振っていたことを。「来たニャ!」
彼女のその声と共に、周囲は一気に動き出す。
この作戦はスピードが命、悠長な行動は許されない。シフォンは既に疲弊しきって今にも倒れそうなシガレットの元に駆け寄ると、すぐに彼に肩を貸してその場から離脱する。その時、彼女はシガレットの手にあるハンドライフルにまだ一発鏑弾が残っていることに気付き、それを天に向けて撃ち放った。ミシシィ……バキバキバキバキッ!
その直後、木々という木々を薙ぎ倒しつつ、森の中から巨大な影が猛然と飛び出した。
見上げるほどに高く、地面が揺れるほどに重く、魅入られるほどに厚い……まさに"山"としか表現できないようなソレは……このクルプディオス湿地帯を中心とした地方において、"山の化身"とさえ恐れられる強大なモンスター。
全身を多種多様で無数なキノコに覆われ、"動く茸の塊"とさえ形容される、マンドラゴラを採取できる最後の希望。その名も……
「……ォォォォォォォオオオオオッ!!!!」
––––––
–––––––––––––『傘塊』。 -
227
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-03-28 20:49
ID:ppizYosU
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「……ォォォォォォォオオオオオッ!!!!」
天を貫かんばかりの咆哮が、激しく鼓膜を揺さぶった。
圧倒的な威容を誇る山の化身は、その双眸に沸々と湧き上がる苛立ちを浮かべながら、自らの眠りを妨げた塵芥がごとき矮小な存在と、その前に立ち塞がる人間共を睨み付ける。『傘塊』に対峙するのは、アマネ、アリーチェ、エドワード、エリクシルの四人。フットワークの軽いライカとイオンは、万が一作戦が失敗した時の保険としてマンドラゴラを探しに行って貰っている。……が、シガレットが無事ターゲットを発見し、ここまで誘導できた時点で作戦はほぼ成功と言えるので、ミラルパが上げた狼煙を見てすぐに戻ってくることだろう。
『傘塊』は、己が屠るべき外敵を見回すと、その中にふと見覚えのある者がいることに気が付いた。
非力な小娘である。かつては自分に対して畏怖の視線しか向けてこなかった、しかし恐怖心を抱きながらも怒れる自分に真っ向から対峙した勇敢な人間だ。それが再びこうして目の前に現れ、今となってはどうであろうか?静かに燃ゆるその目に畏怖の念は既に無く、対等な存在として己の前に立っていた。
その小娘……エリクシルは、普段の乙女といった様相から一転、ハンターとしての物々しい装備に身を包んで『傘塊』の前に対峙し、凛然と言い放つ。「お久しぶりですね、『傘塊』さん。」
人間の言葉など知らぬ。……だが、長き時を生きてきた『山塊』は間違えなく知っていた。
「この度は貴方を、『倒させてもらう』ためにお呼びしました。」
–––––––その瞳は、戦う意思のある者の目であると。
大気に緊張が張り詰める。大地を揺るがす轟槌と、智慧を纏いし狩人……両者の間を吹き抜けた一陣の風が、今まさにこれから開かれようとしている戦闘を、厳かに演出した。
直後、轟っ!という衝撃音と共に、ぬかるんだ大地に長い年月をかけて巨大化した『傘塊』の尻尾が打ち付けられる。奇しくもそれが戦闘開始の合図となり、狩人達はそれぞれの武器を構えて巨大な敵に挑み掛かった。作戦の概要は次の通りである。
まず、俊足を誇るシガレットが鏑弾を用いて『傘塊』を開けた所まで誘導する。気付かれないようコッソリと採取するという手段もないわけではなかったが、それでは時間がかかる上に万が一刺激してしまった時が怖い。『傘塊』のような巨大なモンスターに森の中で暴れられると、倒木などによってあっという間に逃げ道がなくなってしまうからだ。それではマンドラゴラの採取以前にこちらの命が危ない。
次に、誘導した『傘塊』を、すぐに帰らせないように挑発し続ける。『傘塊』はなんだかんだ温厚なモンスターであるため、中途半端に嫌がらせをして誘き出した程度ではすぐに帰ってしまう可能性がある。そうなってはこの作戦は破綻してしまうので、意地でも帰らせない気迫が必要となる。
最後に、ありとあらゆる手段を用いて『傘塊』を転ばせる。『傘塊』は巨体である故に体重が重く、なおかつ今は雨で地面がぬかるんでいるため、一度転倒すれば結構長時間背中を晒すだろう。その隙にその背中にビッシリと生えているマンドラゴラを一気にいただこうというのが、今回のあまりにも大胆すぎる作戦である。そう、まさに文字通り、『倒させてもらう』というわけだ。
エリクシルが彼女の持つ「王弩ライカン」から鬼人弾と硬化弾を放って仲間を強化すると、エドワードと共に絶え間無い通常弾の嵐を『傘塊』の足に命中させていく。貫通弾のような貫通能力も、散弾のような拡散性もない通常弾は、しかしその分一点にダメージを集中させやすく、このような一部位だけを狙い続ける場合に強い力を発揮する。
もちろん剣士組とて負けてはいない。大木に見紛うように太く強靭な『傘塊』の足に、アマネのスラッシュアックスによる一閃が一筋の線を描き、アリーチェのランスの刺突が絶え間無く穿つ。だが、その程度の攻撃で揺らぐような山の化身ではなかった。
『傘塊』は自身の足元に群がるアマネとアリーチェに対して背を向け、数歩前に歩くことで彼等をキルゾーンに落とし込むと、その尻尾を素早く振り落として地面を震わせた。当然予想していた反撃、アマネとアリーチェはその大振りの攻撃を難なく躱してみせ、再び『傘塊』に肉薄しようとする……が、直後『傘塊』の尻尾に生えていた毒テングダケが毒の胞子を撒き散らし、二人の攻撃を阻む。何の異常もない普通の毒。それに何故か安心感を覚えてしまうメンバーは、既にだいぶ毒されているのかもしれない。
Q.各メンバーの行動を指定してください。
1、その他(自由枠) -
228
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-28 23:12
ID:fvHaSB/o
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懐かし…くもないか?
しかし前に登場したモンスターが再びくると面白いな -
229
名前:千壱
投稿日:2018-03-29 00:54
ID:9HmB38Tg
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や、やっと追いつきました……
怒涛の筆量ですね……復帰早々の選択肢ですが、大回転攻撃を誘って近接組に足元へ潜り込んでもらい、遠隔班は外から情報を伝達しつつ援護射撃、という戦法でお願いします。
それにしてもエリクシルさん、成長しましたね……
-
230
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-03-30 15:51
ID:ppizYosU
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ドボルベルクを転倒させる方法はいくつか存在する。
一つは当然殆どのモンスターに共通する足を攻撃し続けるという地道な手段であるが、ドボルベルク戦で転倒と言えば誰もがまず真っ先に思い浮かぶのは、大回転攻撃中に集中攻撃を仕掛けることによる強制転倒であろう。ドボルベルクの大回転攻撃。
それは足を軸の中心として全身を素早く大きく回転させ、その巨大な尻尾によって周囲全体を薙ぎ払うという、重い攻撃を得意とするドボルベルクの数ある大技の中でも最大規模を誇る必殺技だ。何よりも恐るべきはその派生技で、最大限まで振られたドボルベルクの尻尾の遠心力を利用した滑り込み、後ろ跳び、大ジャンププレスの三種どれもが非常に高い威力を持ち、常人ならまずドボルベルクの巨体に巻き込まれて即死、熟練のハンターであってもまず大怪我は免れないような非常に危険度の高い技である。
だが、その一方で大回転攻撃中のドボルベルクは重鈍な体を高速で回転させているためか非常にバランスを崩しやすくなっており、全体を薙ぎ払う尻尾をなんとか掻い潜って足元を攻撃し続けることができれば、今度は武器となるはずの尻尾の遠心力が仇となって転倒し、非常に大きな隙を晒すことになる。
それはつまり、マンドラゴラを効率的に採取できる可能性が高まるということだ。「つーわけで、大回転攻撃を誘発させて転倒を狙う。」
「では我々ガンナーは保険のために遠距離からドボルベルクの動きを見よう。」だが、大回転攻撃中のドボルベルクの足元を攻撃し続けるということは、ドボルベルクが現在どのような動きをしているのか殆ど分からない状態で攻撃しなければならないということ……つまり転倒させ切れなかった場合に非常に危険な状況に追い込まれるハイリスクな行為だ。その分リターンは大きいが、なんの保険もなしにできるものではない。そこでエドワードとエリクシルのガンナー二人が遠距離からドボルベルクの動きを観察し、正確な状況を伝えることによって少しでもリスクを避けようというわけだ。
四人がそれを然りと確認し合うと、角を地面に突き立てて猛然と迫り来る『傘塊』の姿を認識し、それぞれに回避する。
かなり余裕を持っての回避であるはずであったそれは、しかし『傘塊』のあまりの巨体故にかなりスレスレのものになる。大きさは必ずしも強さとは限らないが、小さな人類にとり、"巨大である"というその事実はただそれだけで間違えなく動かしようのない脅威なのだ。『傘塊』が角を振り上げると、まるで津波のような泥飛沫が上がる。慣性で振られた尻尾が重々しい音を立てながら空を切った。アマネの熾烈な斬撃が、アリーチェの刺突の連続が、エドワードやエリクシルの弾丸の嵐が……しかし『傘塊』の巨体においてはほんの擦り傷でしかないのではないかと錯覚してしまう。事実、それは強ち間違いとは言えなかった。何故ならばまだ『傘塊』は狩人達に対し、苛立ちを覚えてはおれど怒ってはいない……つまり足元の人間を邪魔臭い存在程度には認識しているが、敵とさえ認めていないのだから……。
それが"大きさ"。人類には到底埋めがたい隔たりであり、生物が最も古く獲得した力である。だが、強大なモンスターに立ち向かう狩人達にとり、それは言われるまでもなく当然のことである。そして、その差を埋めるために、彼等は強靭な武具を身に纏い、信頼できる仲間を集めて戦うのだ。
『傘塊』が全身を使い、自らの側面に向けてタックルする。ドボルベルクの主な武器となるのは角と尻尾であるため、これは獣竜種共通の弱点でもあるのだが、どうしても側面が甘くなりやすい。だが当然経験豊富な『傘塊』は自身のその弱点を完全に理解しており、自らの側面に回った敵は即座にタックルで応じることでその弱点をカバーしていた。そのタックルを盾で受けたアリーチェは大きく仰け反りながらなんとか踏み止まるが、しかしその隙を突くように『傘塊』は彼女に対し次なる攻撃を繰り出し……しかしそれは彼の頭部に着弾した徹甲榴弾の炸裂によって阻止される。意識外からの攻撃に堪らず仰け反った『傘塊』に、アマネはすかさず猛攻を仕掛けた。
『傘塊』の山のような巨体と比べれば塵に等しいほど小さな一撃一撃は、しかし積み重ねれば山をも脅かす傷となる。その一方で、なかなか大回転攻撃を行わない『傘塊』に、一同は少しずつ焦燥感を抱き始めていた。
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231
名前:名無しさん
投稿日:2018-03-31 20:58
ID:nrR/I78w
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>>229
一方またしても元々PT組んでたはずのライカイオンに置いて行かれるミーシャさん
無事に帰れたとしてもこの二人の最初の仕事はヘソ曲げたミーシャのご機嫌取りになるのは想像に難くない -
232
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-04-01 20:32
ID:ppizYosU
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風邪で執筆停滞スマヌのです。
ーーーーーーーーーーーーーー山のような巨体を誇るドボルベルクの攻撃というのは、えてして大振りで回避が容易なものが多くなりがちだ。当然その分威力は非常に高く、回避が前提とならず力と耐久がモノを言うモンスター同士の戦いにおいてはかなりの戦闘能力を発揮するが、標的が極端に小さく早い場合……即ちハンターが相手である場合、彼等は十分な攻撃能力を発揮することができない。
……そのはずである。
"通常のドボルベルクならば、それが常識であった"「ハァ……ハァ……流石は"山の化身"……強いな。」
戦いが始まって、まだ十分程も経っていない。しかし、狩人達は徐々に追い詰められていた。それこそ、言葉を発する余裕があるのは既に遠距離武器かつベテランのエドワードだけであるほどに。
『傘塊』が大きく尻尾を振り下ろし、数は歩くことで軸を合わせて振り下ろす。ただそれだけの単純な攻撃の対象に選ばれたのは……メンバー中一番被ダメージの深刻なアマネであった。「……っ!」
アマネは強く歯を食い縛り、己の頭上に差した影から逃れようと回避行動を行う。彼の使うスラッシュアックスという重量級変形武器ではとてもでは無いが納刀が間に合わない。移動速度の関係で走って避けることも困難だ。アマネは武器を手にしたまま、ぬかるんだ地面の上を前転するように回避する。
一回目の回避……まだ頭上の影は濃いまま……すかさず二回目の回避……しかし十分に安全圏とは言い難い……三回めn–––––––––––––ズゥゥゥゥウウウンン……
地面を震わす重低音と共に尻尾が振り下ろされ、それによって巻き上がった泥飛沫がアマネの姿を隠す。直後、泥の中から吹き飛ばされるように飛び出したアマネは、緩やかな放物線を描いて飛び、地面に背を強かに打ち付けられ、空気が抜けるような悲鳴を上げた。
即座に立ち上がろうとしているようなので、どうやら直撃したというわけでは無いらしい。インパクトの瞬間に後ろへ飛ぶことでダメージを抑える……イーオス達も良く使っていた技だ。だが、それだって咄嗟の判断では無傷までには抑えられない。重々しい衝撃は徐々に彼の体を蝕み、動きを阻害し始める。彼等がここまで追い詰められている理由はいくつかある。
一つは……『傘塊』の巨体。ドボルベルクの攻撃というのは大振りで軌道が読みやすい……それ自体は特殊個体である『傘塊』も全く変わりないのだが、ただ一つだけ明確に違う点として、回避しようにもキルゾーンから抜けることさえ一筋縄ではいかない攻撃範囲の広さがあるのだ。しかも体表に無数に生えたキノコによって一定の確率で付随効果まで発揮するという凶悪仕様、一瞬のミスや躊躇が命取りになりかねない。
もう一つは、狩人達の疲労。『傘塊』を迎え撃つ役として選ばれたこのメンバーは、一応ある程度の仮眠をとったのだが、それでも実力を十全に発揮するには到底かなわない。アリーチェとエドワードはまだ比較的マシな方であるが、戦力としても知識としても重要であった万能型のアマネはここ数日殆ど休みが無く、狩には出ていないエリクシルにしてみても徹夜で治療にあたるなどしてその疲労は相当なものである。とてもではないが古龍級生物を相手取るようなコンディションではない。
そして最後の要因は……『傘塊』の機嫌の調整である。戦闘中に上手く転ばせて背中からマンドラゴラを採取するという作戦の関係上、疲労させたり関心を失われたりして『傘塊』を帰らせるわけには決して行かないし、かといって下手に本気で怒らせようものなら全身のニトロダケが発火性を帯びて、もはや背中からマンドラゴラを採取というレベルの話ではなくなるし、緊急に用意したこの戦場はそこまで街と離れていないため、刺激し過ぎれば最悪の事態になりかねない。自分よりも格上かもしれない相手に、最低レベルのコンディションで、相手の機嫌を見つつ怒らせることも萎えさせることもせずに戦い続ける…………なんという無茶無謀だろうか。寧ろ彼等はよくここまで健闘した、ここで引いても、誰も彼等を責めることなどできないだろう。
……本人達以外は。
「––––––––ぁぁぁぁあああっ!」
仲間の命がかかっている。その状況で引くことは、戦略戦術云々以前に、彼等は決して認めないし、選択肢として考慮にも入っていない。
戦況は悪くても、まだ戦えないわけではない。『傘塊』の足へも確実にダメージが蓄積されていっている。絶望の色が濃厚でも、希望の光はまだ手に届くところにある。
……そんな最中『傘塊』が大きく尻尾を振り上げ、見覚えのある動きをする。瞬間、狩人達は動き出した。何故ならそれは、待ちに待った……『大回転攻撃』
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233
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-04-02 20:15
ID:ppizYosU
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雨の降りしきる湿地の一角、僅かに霧がかった薄暗い朝の平地で、"山の化身"はゆっくりと回転を始める。
猛烈な勢いで振り回される槌状の尻尾は、しかしその巨体のあまりまるでスローモーションであるかのように酷くゆっくりに感じられてしまう。それほどのスケール、それほどの威容が、目の前のモンスターには存在するのだ。
その圧巻の光景に魅せられるあまり、思わずその場で呆然と立ち尽くしそうになってしまう狩人達であるが、数瞬後には各々に己の目的を思い出し、それを達成するためのこのチャンスを決して逃しはすまいとそれぞれに行動を開始する。遠心力によって伸びた尻尾のリーチ圏内から退避するように遠ざかるガンナー組と、逆に台風の目となる足下に潜り込もうとする剣士組。それぞれが自分の今すべき事を完全に理解した上での行動だった。
尻尾の振り抜ける僅かな隙をついて『傘塊』の懐に潜り込んだアマネとアリーチェは、今にも宙に浮くのではないかと不安を覚えてしまうような足に攻撃を加え始める。斬撃が一つの線を描き、刺突が分厚い表皮を穿つ。これまで幾度となく繰り返されて来た攻撃は、僅かずつではあるものの間違えなくその効果を発揮し始めていた。
大回転攻撃時のドボルベルクは非常に転倒しやすくなっている。それはドボルベルクに挑むことのできるレベルのハンターならば誰もが知っている事実であろう。だが、だからといって無心に攻撃を続ければいいというものではない、ドボルベルク程の巨体が遠心力によって倒れこむのだ、巻き込まれれば当然命の保証は無いし、ドボルベルクを転倒させるのに失敗した場合も考慮しなければならない。
全力で攻撃を行いつつも、思考の何処かでは常に『傘塊』の動きに注意を配り続ける。その思考力と咄嗟の判断力が要求される極めて精密で繊細な作業だ。エドワードとエリクシルの銃撃が、絶え間なく『傘塊』の体に突き刺さった。圧倒的な巨体を誇る『傘塊』の大回転攻撃の範囲から十分に安全圏と呼べる所まで離れるには、どうしても遠距離武器の運用上おける必須事項ともいえる適正距離圏内から外れてしまうのだが、エドワードは高速で通過する尻尾の中腹に弾丸を当てることで強引に適正距離の命中をさせるという離れ業を平然とやってのけていた。
一方でエリクシルは流石にまだそこまでの技量を持っていないので、斬裂弾の運用によって攻撃を行っていた。これならばクリティカル距離の影響はほぼ受けずに、一定のダメージを与え続ける事が出来るからだ。鈍い斬撃音と、くぐもった銃声と、尾槌が空気を切る音と、静かな雨の音……それらが奏でるハーモニーは、果たしてどれほどの時続いたのであろうか……?
狩人達の絶え間無い攻撃を受け続け、遂に『傘塊』の体が僅かに動いた。それはほんの僅かな動きの変化であった。よくよく注視していないと気付くことも出来ないような、小さな軸のズレ……近すぎても遠すぎてもわからない、本当に微妙な体勢の変化……それを、エリクシルは決して見逃さなかった。
そして、エリクシルは刹那の間にその動きを見切り、『傘塊』の次の動きを彼女持ち前の優秀な頭脳をフル回転させて予測する。倒れる……?滑り込み……?後ろ跳び……?大ジャンプ……?或いは特殊個体である『傘塊』だけが行う特殊な行動……?
自分が見切ることが出来なければ、チーム全体に危険が及ぶ。見誤るな、出来うる限り正確に、『傘塊』が動き出すよりも迅速に、指示を……!「大ジャンププレス、来ますっ……!!」
エリクシルは腹の底から叫んだ。そこには一欠片の迷いも存在していなかった。もし自分が僅かにでも迷う素振りを見せることがあれば、剣士組にも迷いが生じる、そうなってしまえばいい結末を得ることはできないだろうと、彼女は知っていたのだ。
『傘塊』の山のような巨体が、宙を舞った。
獣竜種に共通する特徴として、原則的に地面にしっかりと二本の足をつけて戦闘を行うというものがある。巨大な後脚を持つ彼等は地上における機動力、安定感ともに非常に優れており、飛竜が大空を支配する種族であると言うならば、獣竜種は地上の支配者と言っても過言ではないだろう。だが、その安定感というのは当然両脚をしっかりと地面についている時のみに発揮されるものであり、そうでないときは不安定になりがちだ。故に彼等は戦闘中に地面から離れることは滅多に無く、常に自分の支配圏である大地に立つのである。その常識を真っ先に打ち破ったのが、このドボルベルクというモンスターであった。数少ない、宙を舞う獣竜……それがこのモンスターなのである。
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234
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-04-04 14:20
ID:ppizYosU
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山のような巨体が……曇天の空へと舞い上がる。
それはあまりにも圧倒的な……ある種の絶望感さえ覚えてしまうような、いっそのこと神々しささえ感じられるような、そんな非現実じみた光景であった。
ドボルベルクの大回転攻撃の派生技の一つ、大ジャンププレス。数ある大技の中でもダントツで最大威力を発揮するそれが今、通常でも十分すぎるほどに巨大なドボルベルクと比較しても、規格外の体躯を誇る『傘塊』によって再現されようとしていた。……誰も言葉は発さなかった。
発さなかったし、発さなかった。此の期に及んでどのような言葉の出ようものか。考えて、口に出す。その一瞬でさえ現状の彼等にとっては惜しかったのだ。エリクシルの警告によって既に納刀体制に入っていたアマネとアリーチェは、それぞれ納刀の遅い武器ではあるものの、可能な限り迅速に納刀を済ませ、全速力で『傘塊』の下から逃れようとぬかるんだ地面を駆け抜ける。だが、走れども走れども依然として地面は暗いまま。『傘塊』の規格外の巨体が高速で落下するのだ、周囲に飛び跳ねる泥水も含めて考えれば、いったいどれほどの攻撃範囲を誇ることであろうか……想像するだけでも恐ろしい。
エドワードは空を舞う『傘塊』を見上げて、このままここに居てはこちらも危ないと思ったのか、エリクシルに声を掛けて退避を開始する。事実、十分に距離を取っていたはずの彼等さえ、十分に捉えうるほどに『傘塊』は巨大であった。『傘塊』の巨体がゆっくりと降下を始める。それは、まるで世界がスローモーションになってしまったかのように、狩人達には酷く遅いものに感じられた。
くぐもった銃声も、鈍い斬撃音も、尾槌が空を切る重低音も、今ではまるで聞こえない。ただ、湿地の地面に淡々と降り注ぐ雨の音が淡々と響くのみ……–––––––静かな朝である。
ッ!!!!!!!!!!!!
大地が、大気が、空が、草木までもが、弾けるように轟々と震えた。
衝撃が爆ぜ、広大な世界を容赦なく蹂躙していく。撥ねた泥水が『傘塊』を中心として一つの大波を成し、周囲を呑み込んで一掃した。震える大地は狩人達の足を掬い、巻き起こった爆風が彼等を強く煽る。暫しの沈黙を破った、いっそ"莫大"とも表現出来てしまうような衝撃音は、激しく鼓膜を劈き、周囲を囲む山々に低く反響した。
まるで爆発である。
直撃しようものなら、それこそ死体さえ残らなそうだ。地面に半分程埋もれた『傘塊』の巨体を見て、狩人達は表情を引攣らせつつそんなことを考えた。やがて激しい衝撃音は虚空へと消え去り、周囲は再びの沈黙を取り戻す。
狩人達は素早く互いの安否を確認すると、近くに隠してあった編み籠を持ち、地面に体を埋めて動きを止めている『傘塊』へと走り出すした。転ばせることこそ敵わなかったが、一番の大技である大ジャンププレスの反動によって身動きが取れなくなっている今は、間違えなくマンドラゴラを採取する絶好のチャンスである。本来なら貴重な攻撃機会でもあるのだが、今回の目標は『傘塊』の討伐ではなく、あくまで必要数分のマンドラゴラを集めることであるため、正直攻撃など二の次で良い。「マンドラゴラ、あります!」
素早く『傘塊』の体によじ登り、歓喜の声を上げたのはエリクシルだ。彼女の足元には無数のアオキノコや毒テングダケなどに混じってマンドラゴラがちらほらと生えている。やはり他のキノコ類に比べると数は少ないようだが、『傘塊』の巨体に満遍なく生えているマンドラゴラを全て採取する事が出来れば、全員に安全なマンドラゴラを行き渡らせるのには十分過ぎるほどの量が確保できることはほぼ間違えなかった。早速採取を開始する狩人達、『傘塊』が起き上がるまでの時間は有限だ、その僅かな時間を最大限に活用していかなくてはならない。全く外見が違うものは無視するとしても、同じ赤いキノコであるニトロダケを選別しているような余裕はないので、とにかくそれっぽいものは片っ端から籠の中に放り込んでいく。過酷な戦況の中、ここに来て漸く希望が明確な形として現れたことにより、ここまでずっと暗い表情のままであった狩人達に僅かな笑みが浮かんだ……まさにその瞬間だった。
ズズズ……
「っ!?予想以上に復帰が早いわっ!」
足元に僅かな揺れを感じ、慌ててその場を飛び退く狩人達。直後、泥水を大きく波立たせながら『傘塊』の体が持ち上がり、折り曲げられた脚が再び大地を強く踏みしめた。
マンドラゴラが目標数に達するまで、まだまだ足りない。ニトロダケが混ざっていることを考慮すれば尚更だ。–––––––タイムリミットまで、あと五時間。
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235
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-04-07 20:29
ID:ppizYosU
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ゆっくりと身を起こした『傘塊』は、自分に群がる小さき者達を冷静に見下ろした。彼の怒りはかつてないほどに冷たい……瞬時に燃える業火のような怒りではなく、長く静かに燻り続ける、篝火のような怒り。かつて自分の縄張りの一部であった場所で、彼の長き生涯の中でも一度も感じたことのないような、なんとも形容し難い"禍々しい者"が蠢いている。その事を本能と経験から察しった事によって生まれた小さな苛立ちは、一ヶ月も経つ頃には抑えられないほどに大きくなっていった。
その苛立ちをこの者達にぶつけたって何になるわけでもない、しかしこのどうしようもない怒りをぶつける矛先を、『傘塊』はその強大さ故に見つけることが出来ずにいたのだ。だから、狩人達とのこの一戦は、彼にとってはストレスを発散するための"適度な運動"といったところであろうか。何故かはわからないが向こうも殺しに来ているといった雰囲気は感じられないので、『傘塊』にとっても非常に都合が良かった。
もっとも、相対する存在にとっては、『傘塊』のその本気ですらない攻撃でさえ、十分過ぎるほどに脅威であるのだが……。–––––––せいぜい潰れてくれるな、狩人よ。
振り下ろされた尻尾の一撃が、大地を大きく揺るがした。最初はなだらかな平地であったこの場所も、今では『傘塊』の猛威によってデコボコで複雑な地形に生まれ変わっている。乱高下する足場が、高く積み上がった土砂が、次第に狩人達の行動をジワジワと阻害していった。
それでも、狩人達は確かな手応えを感じていた。このまま『傘塊』と戦闘を続けていれば、やがては全員を助けるのに必要な量のマンドラゴラを得ることも出来るだろうと。漠然としたものではなく、明確な成功のビジョンが漸く見えてきた……それは何かを成す上でこれ以上無いくらい重要なファクターである。
だがしかし……どれだけ精神の疲れを希望の光が癒そうとも、それ以前に絶対条件として存在する"肉体の疲労"は、決して無くなることはない。勿論流石に立っていることもままならないような危険な状態ではないのだが、この『傘塊』という古龍級生物を相手取って戦闘行為を行うのに、現在の状態が妥当なコンディションであるとは到底言い難かった。「キャッ……!」
『傘塊』の尻尾が横薙ぎに振るわれた直後、短くか細い悲鳴とともにエリクシルの体が宙を舞った。咄嗟にマンドラゴラを積んだ籠を庇うように動いた彼女の小さな体は、大木さえも易々とはへし折る『傘塊』の尻尾の一撃によって緩やかな放物線軌道を描いて飛び、雨によって濡らされた地面の上をゴロゴロと転がった。
一見するとか弱い乙女にしか見えないエリクシルも、その実は古龍との交戦経験を持つ一人前の狩人だ、幾ら強大な相手とはいえモンスターの一撃にそう容易く屈する事はなく、すぐに全身に力を込めて身を起こし……
……目の前の『傘塊』と目が合った。「あ……」
「不味いっ!」『傘塊』が角を突き出しながら大きく身を引き、呆然とするエリクシルを静かに見据える。それはイビルジョーやドボルベルクといった極めて体重の重い一部の獣竜種が繰り出す、通称デンプシー攻撃と呼ばれる頭部を使った広範囲攻撃の予備動作。
それを見た他のメンバーは当然すぐにエリクシルを助けようと行動を起こすが、しかしこの絶望的な状況からどうやったら確実に彼女を救うことができるのかの明確なプランなど、熟練の狩人である彼等でさえ容易に思い浮かぶものではなかった。……それはほんの一瞬の迷いである。時間にすれば一秒にも満たない僅かな逡巡、その僅か一瞬の間に、『傘塊』の角がエリクシルに向けて非情にも振り下ろされる。エリクシルは何もすることが出来ず、ただギュッと目を瞑って直後に来る衝撃と苦痛に耐えようとした。しかし、直後にエリクシルの体を襲ったのは、想像よりも遥かに小さな衝撃であった。まるで小さな誰かに突き飛ばされたかのような……
「––––––え?」
「おミャーがいないと秘薬の調合に手間取るのニャ。」その時、突如として聞こえたそんな言葉に薄く目を開けたエリクシルの瞳に映ったのは、自分に直撃するはずであった『傘塊』の角をモロに受けて吹き飛ぶ一つの小さな影……かつてあなたが自分の秘薬を一つ使って助けたという、メラルーのシフォンの姿であった。
––––––直後、薄暗い狩場に純白の閃光が貫いた。
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236
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-04-09 20:35
ID:ppizYosU
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いつのまにやら春休みが終わってしまっていた…(学生並感)。これは蟹氏にめり込み土下座不可避ですね。これでもカットしてるのに……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー他人の物を盗まなければ生きていけない野生のメラルーは、少しでもその成功率が上がるように、追跡者を振り払う為の道具をいくつも常備している……というのは半分嘘である。実際にはシガレットとシフォンは名前が存在することからもわかるようにただの野盗のメラルーではなく、もっと別の事情もあってそのような道具を多数所持しているのだが、そこの所を詳しく説明していると長くなるので割愛するとして、その道具の中の一つに、"強いダメージを受けるとノーモーションで非常に強い閃光を発する"というものがある。光蟲とライトクリスタルを利用して作られたそれは、任意発動こそ難しいものの攻撃を受けるという発動条件上高確率で相手の視界を直撃出来る上、狩人の用いる閃光玉と同等かそれ以上の光量を誇っている逸品であった。ただ、基本的に一発までしか所持できない、ライトクリスタルのような希少な鉱石を消費する、発動にリスクが伴うなど決して気軽に使えるものではなく、言うなれば緊急時の備えのようなものであった。
それが今回『傘塊』の角の一撃によって発動し、雨の降りしきる薄暗い狩場を一瞬白く染め上げ、『傘塊』の文字通り"目の前"で閃光を解き放ち、彼の網膜を激しく焼いた。
激しい閃光によって突如としてその視界を奪われた『傘塊』は、自らの下に集まろうとする敵を振り払うかのようにその場で我武者羅に暴れ狂い、しかしその猛威は誰にも危害を加えることなく、ただただ無意味に体力を消費するに留まった。『傘塊』の巨体とパワーで暴れられるのは確かに危険なことではあるのだが、視界を封じられている間は此方を狙って来ることも無いため、距離さえ離してしまえば安全なのである。そのことを即座に理解したアマネ、アリーチェ、エドワードは、素早く武器を背中に収納し、アリーチェとエドワードは座り込むエリクシルを抱え起こし、アマネは地面に転がったシフォンを持ち上げて、嵐のように暴れ狂う『傘塊』から離れるように走った。一定の距離を取り、『傘塊』の脅威の範囲圏外からその姿を俯瞰的に見てみると……自分達がどれだけ強大な存在と相対していたのかを改めて思い知らされるというものだ。
足踏み一つでさえ大地を震わし、渾身の打撃は小規模ながらも地形さえ変えてしまう。怒り状態になればその脅威はより一層跳ね上がり、古龍に匹敵するとさえ言われている……。本来ならば然るべき手順を踏み、十分な準備期間とバックアップ体制を整えてから戦うような相手……"山の化身"と畏怖されたモンスターだ。願わくばこのまま疲労状態に陥ってくれれば……暴れる『傘塊』を見て誰もがそんなことを考えたが、しかし現実はそう甘くは無いらしい。十秒もしないうちに視力を回復した『傘塊』は、知らぬ間に距離を離していた狩人達を憎々しげに睨みつけ……その直後に彼等に対して背を向けると、のしのしと歩いて森の中へ去ろうとしていた。
「逃げられる……!?」
採取したマンドラゴラはまだ全員に行き渡るのには不十分、そして現状最も確実にマンドラゴラを採取できるのは『傘塊』の背中のみである。それ以外はアテにするにはあまりにも頼りなさ過ぎるのだ。この状態で逃げられるのは非常にまずい、なんとか『傘塊』の注意を引いてこの場に抑え込まなければ……そう考えた狩人達は、森の中へと消えていく『傘塊』の背中を追って雨の中を走り出す。
––––––その焦りが、彼等の反応を一歩遅らせた。
……直後、『傘塊』がその場で素早く身を捻ったかと思うと、数メートルはあろうかという大木が軽々と宙を舞った。元来木をへし折るために存在している『傘塊』の尻尾によっていとも容易く吹き飛ばされた大木は、空中でゆっくりと縦に回転しながら、今まさに駆け出そうとしていた狩人達目掛けて落下を開始する。狩人達の頭上に影が差し、重力という原初の力が今まさにその猛威を振るおうとしていた。
……バキバキッ…!ズドォォォォォォオオオオ……ォォォ……
豪快に地面に激突した大木が、軋むような音を立てながら『傘塊』によって作られた大きな水溜りの上に砕け散る。舞い上がった水飛沫が、長く太い幹が、大きく広がる枝が……狩人達の姿を覆い隠した。
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237
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-04-12 15:54
ID:ppizYosU
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ォォォ……ォォ……
周囲を囲む山々に反響し、止むことなく鳴り続ける雨音の中に曇った重低音が木霊した。数メートルにもなる大木が落下した衝撃は、雨水によって緩んだ大地に大きな傷跡を残すこととなる。
数百キロの物体が天高くから落下する……もし、その下に人間がいたとして……どうしてそれが生きているなどと思うことが出来るだろうか?いくら堅牢な防具に身を包もうとも、圧死ばかりは防ぐことが出来ない。……だが、『傘塊』はこれで誰かが死んだとは思っていなかった。
なんとなく、この程度で死ぬような相手であるとは思えなかったのだ。***
「初めて会った時には、貴女に守られる日が来るなんて思いもしなかったけど……今じゃ見違えるように"狩人の顔"になったものね。」
咄嗟に地面に突き立てた大楯によって倒れかかる太い枝から身を守ったアリーチェは、頬を掠める白い煙を払いながら、目の前の少女……エリクシルにそう声を掛けた。レンキンバズーカによって大木の一角を消し飛ばしたエリクシルの立ち姿は、周囲に漂う白い煙による演出効果も相まってまさに"戦乙女"と言うに相応しい風格がある。
「いえ、アリーチェさんの盾がなければ私も危なかったでしょうし……とても胸を張れることでは……。」
自分より格上の相手(エリクシルの主観)に突然の賛辞を受け、エリクシルは嬉しいような戸惑うような表情でそう謙遜した。しかし、そんな彼女の謙虚な姿勢に対してアリーチェは迷う事なく首を横に振る。
「私も貴女が枝を吹き飛ばしてくれなきゃ到底抑えきれなかったわ、その若さで咄嗟の判断に優れるのは十分誇れることよ。」
見守るような心情だった後輩は、気付けば横に並び立つ戦友になっていた。かつて自分に狩人についてイロハを教えてくれた先輩達は、このような気持ちを抱いていたのだろうかと、アリーチェは自分の過去を振り返って……そうでも無さそうだと思うのであった。
……自分の半ば黒歴史のような若気の至りについてはさておくとして、アリーチェがエリクシルを褒めたのは紛れも無い本心から来るものであった。
初めて会った時、アリーチェがエリクシルに大して抱いた印象は……非常に失礼ではあるものの、非力で気弱なまさに"少女"といった感じで、狩人という印象は彼女の同期と比べると薄かった。しかし、今ではその時の事が懐かしく思えてしまうほどに狩人として逞しく成長したようだ。あなたやランドラットも然り、若人の成長というのは何とも早いものである……と、何とも年寄り臭い思考を抱いてしまう自分をアリーチェは自嘲しつつ、寄りかかった枝を片足で蹴飛ばしてへし折ると、他の二人の安否を確認するため幹の上に飛び乗った。するとすぐに視界に入ったのは、華麗にジャスト回避を決めたエドワードの姿。彼の実力については良く知っているつもりなので今更心配するまでも無いだろう。だが、もう一人は……「修理代ヤバそうだなぁ……こんチクショウ。」
「アマネっ!?」大木への直撃からアマネの身を守ったことの代償に、衝撃によって歪に変形してしまった剣斧と隻眼防具を眺めつつ、アマネは吐き出すようにそう呟いた。完全に修理不能なほどに損壊しているわけではないが、修理しなければとてもではないが武器としても防具としても用を成さない程に傷付いている。しかも、それだけの代償を払ってなお、衝撃を完全に消し去ることは不可能であった。胸部に走る激しい鈍痛に、アマネは何本か折れたかな〜と、いっそ乾いた笑みを浮かべてみせる。
誰がどう考えても、彼に戦闘の継続は困難であった。しかし、ここで一人……いや、付き添いを含めれば二人ものメンバー抜けるようでは、ただでさえ綱渡りであった戦況は完全に崩壊する。もしそうなればマンドラゴラの入手絶望的……「大丈夫ニャ……」
だが、そんなか細い声が、絶望を強く否定した。
ふらふらと足元の定まらない様子でアマネの下に辿り着いたシフォンは、痛む体に鞭打つように彼の体を担ぎ上げ、周囲を安心させるように言い放つ。「雨に狼煙が掻き消されても、閃光の道標は確実に見えるはずニャ。」
その具体性を持たない言葉の意味するところは、しかし不思議とこの場にいる全員に伝わった。
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238
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-04-12 15:57
ID:ppizYosU
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這い出てきた人間は全部で三人。隙の無い長身の女、見覚えのある小娘、決して深追いしない男。一見したところ三者共に目立ったダメージを負っていないようで、冷たい雨の中でも熱き戦意をその瞳に宿らせ、再び自分の前に対峙した。
残る一人は死んでこそいないものの負傷して撤退したのであろう。四人の中では最も動きに掴み所が無く、攻撃が苛烈だった厄介な相手である。もっとも、今回はそれが仇となってしまったようだが……。『傘塊』は長き時を生きてきた経験から得たある種の老獪さを発揮し、冷静に相手戦力の分析を行った。『傘塊』の山のような巨体と様々な色彩を持つキノコを無数に生やした様子は、例え森の中であっても非常に目立つがために、勿論生半可なモンスターは寄ってくる事さえしないのだが、凶暴なモンスターや縄張り意識の強いモンスターにはどうしても目をつけられがちだ。であるからこそ、その老獪さと知能は彼がこの自然界で生き延びるために必然的に身に付けざるを得なかった適応進化の一つであった。
『傘塊』が自らの縄張りを荒らす正体不明の敵に対し静かな苛立ちを覚えつつも、決して問題のヒンメルン山脈の麓の沼地に暴れ込むことをしなかったのは、その冷静さからくるものであった。戦っても勝てないとか、そのようなベクトルの話ではない。近寄ることさえ憚られるような、反吐がでるほど気色の悪い、今まで経験したことのないような敵……それがあの地で蠢いている……蠢いていた。
……そして、その存在は、どこか目の前の狩人達と似た気質を持っているのだ。……。
『傘塊』が素早く身を捻り、重鈍な尾槌をもって大木の幹を穿つと、再び巨大な柱が軽々と宙を舞い、狩人達目掛けて落下する。
直後、重低音が響き渡ると同時に、巨大な飛沫が立ち上る。しかし、完全な不意打ちであった先程とは異なり、狩人達はいとも容易くそれを回避してみせた。流石に同じ手を二度も食うほど愚かな相手ではないようだ。
素早く『傘塊』に肉薄し、もはや何度目ともつかぬ攻撃を開始する狩人達。その動きは『傘塊』の目線から見ても、最初と比べると明らかに向上していた。こちらの攻撃が届きにくい間合い、巧みな攻撃の誘導、鮮やかな回避……極限の攻防の中、まるで仲間の一人が抜けた穴を埋めるかのように闘志をより一層滾らせた狩人達は、蓄積された疲労を押し切るように究極に研ぎ澄まされた最高効率の動きを披露する。……だが、それは所詮脆弱な根性論に過ぎない。
『傘塊』の一撃に、ただ一人の前衛となったアリーチェは大きく後退した。二人だった前衛が一人になったことにより、彼女の負担はあまりにも大きくなっている。既に盾を握る手の感覚は朧気だが、それでもアリーチェは決して己の盾を手放すことをしなかった。
だが、前衛が一人になったことにより被害を受けるのは、決してアリーチェだけに留まらない。そもそも前衛の役割とは至近距離で戦闘を行うことで敵の注意を引き付け、後衛に攻撃が及ぶのを抑えること。しかし、派手な攻撃が可能なアマネが抜けてしまった結果、その抑止力は激減し、後衛にヘイトが集まるという結果になってしまった。荒々しく風を切って振り下ろされた尾槌を、エリクシルはすんでのところで回避する。防御力の低い彼女にとって『傘塊』の攻撃は一発でも致命的……なんとか回避に成功したことにエリクシルが安堵したのも束の間、『傘塊』は二連続で叩き付け攻撃を彼女に向けて振り下ろした。回避すること自体はなんとか成功したものの、広範囲の二連続攻撃にエリクシルの顔には苦渋が浮かぶ。だが、『傘塊』の攻撃はまだ終わってはいなかったのだ。絶妙に軸合わせを行っての三度目の叩き付け……寧ろ前二回は鼠を追い詰めるための袋に過ぎない。二度に渡る回避によって追い詰められたエリクシルを確実に捉えるように、尾槌は大きな影を落とした。
……ガッ!
直後、エリクシルを庇うように割って入ったアリーチェの大楯が、ギシギシと悲鳴を上げつつ折り曲がる。適切に衝撃を受け流せば大型モンスターの攻撃でもビクともしない堅牢な盾は、本来想定されていない上からの衝撃に大きく変形しながらもなんとかその役目を果たし、叩き付けの衝撃を相殺する。しかしその直後、『傘塊』は再び尻尾を大きく持ち上げ、なんと四度目の叩き付けを振り下ろさんとしていた。
今度こそ盾も耐えられない……このままでは二人とも……「いや〜、本当にギリギリの現場に到着しちゃったなぁ。」
「皆さん、お待たせ致しましたわ!」––––––その声は、絶え間無い斬撃と散弾の雨と共に訪れた。
それは、誰もが待ち望んだ、最強の助っ人達。「今日は徹夜明けでイライラしてるから、本気で刈るよ?」
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239
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-04-14 18:09
ID:ppizYosU
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後悔はしている。反省もしている。だが設定資料が少な過ぎたのだ。(ライカとイオン)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー昨夜から降り続ける雨さえも吹き飛ばすような圧倒的手数の攻撃が、一切の余分無く『傘塊』を捉え、その動きを強制的に停止させる。降り注ぐ銃弾と、回転する斬撃が織り成す破滅の暴風雨は、一見すると"数撃ちゃ当たる"といったような無造作な攻撃に見えるが、しかしその実態は全て絶妙な計算とコントロールの上に成り立っていた。
斬撃によって開いた傷口を、銃弾の嵐がこじ開ける。言葉にするのは簡単だが、動いている対象に対してそれを行うのは決して生半可なことではない。ましてやそれが『空中で行われている』などという事実には、誰もがただただ驚愕するより他はないだろう。
絶望感の包み込む戦場を切り裂いた二つの影は、方や闇夜を駆ける黒猫の如く軽やかに、方や夕刻に舞う蝶の如く優雅に美しく、退廃の大地に降り立った。「遅くなって申し訳ないね、閃光が見えたから一目散に走ってきたよ。……ところでみんな、猫が嫌いなものって知ってるかい?」
空中であれ程の動きをしていたにも関わらず、特に息を乱した様子もなくそう言葉を発したのは、死神のような不気味な姿をした男。容姿とは裏腹に口調は非常に穏やかではあるが、その内にはまるで飢えた豹のような剣呑さが渦巻いている。なにより、その手にあるのは二頭の古龍の骸より生み出されし一対の刃、"氷炎剣ヴィルマフレア"。それこそがこの男の本質を表していると言えるだろう。
「水浴び。」
『闇を喚ぶ黒猫』–––––ライカ・F・ジュヌミア
「皆さんにも分かるように要約すると、"雨に濡れて機嫌が悪い"ということですわ。」
一瞬、ここが戦場であることさえも忘れてしまうほど、その声は優雅であった。一切の乱れや揺らぎの無い美声、一見すると戦闘とは何の関係も無いように見えるその要素は、しかし卓越した"呼吸の技能"によって成り立っているものである。無駄無く効率的に酸素を取り込めるその技は、それこそ戦闘に役立つというレベルではない。勝敗を大きく左右しかねない重要な要素なのだ。
「私としては、肌荒れの方が心配ですけれど……。」
『夕刻の蝶』–––––イオン・H・ハイアーインズ
ハンターの中でも極々限られた者しか行き着くことの出来ない遥かな高み……G級。その人外魔境の領域に若くして踏み入った、二人の狩人。鬼神のような強さを持つとさえ言われた彼等は……
「だからね、」
「ですから、」「「とっとと終わらせて帰ろう(帰りましょう)」」
……実は、結構な気分屋である。
相手は"山の化身"とさえ恐れられたドボルベルクの特殊個体……『傘塊』。古龍並みの脅威を持つと言われるモンスターと相対して、しかしライカとイオンはまるで普段と変わらない自然体のままであった。『傘塊』は突如現れた新手の二人に対し、明確に警戒心を露わにする。この二人の実力は未知数だが、しかし明らかに自分を倒しうる程に強い存在であろうという事を、経験よりも先に本能が感じ取ったのだ。それでも、この二人だけなら怒り状態も含めれば戦いようは幾らでもある。それよりも問題なのは……
いつのまにか自分の攻撃範囲から抜けていたアリーチェとエリクシルを、静かに見据える『傘塊』。彼女達の雰囲気から明らかに活力が漲っているのが感じて取れる。新手に気をとられているうちに気力のみならず体力の回復も許してしまったようだ。狩人というのはモンスターのような膨大な生命力もスタミナも存在しないが、それを補って有り余る"道具"がある。故に同じ相手を連続して狙うのが一番なのだが、どうやらそうは問屋が卸さなかったらしい。
既存の三人に加え、新手の二人を合わせて計五人。戦力分析の結果は……自分が不利。だがしかし、ずっと自分の足元に張り付いていた女から盾を奪う事には最高した。必ずしも不利な要素ばかりであるというわけではない。『傘塊』は自分の体に意識を向け、残りのスタミナを確認する。スタミナ消費の激しい怒り状態を使っていないためか、予想よりは残っているが……それでも余裕があるという程ではない。––––––それでは、クライマックスと行こうか。
Q.各メンバーの行動を指定してください。
1、その他(自由枠)
※『五の凶兆』発動中。 -
240
名前:名無しさん
投稿日:2018-04-15 17:57
ID:nrR/I78w
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スマンが意味わからん
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241
名前:名無しさん
投稿日:2018-04-16 07:33
ID:BW9Kcaio
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1.さっさと目的を達成してさっさと帰る
描写じゃなくて説明ばっかなのよね、しかもモンハン二次小説だから書かなくても大抵想像付くし
状況も一見ピンチだけど倒れてるのはリレー小説の主人公だから死ぬわけないって分かっちゃう
遅筆は仕方がないにしてもちゃんとプロットした?って言いたくなるメリハリのなさでダレッダレだし正直飽きたよいいタイミングだし主人公助けたとこまでカットして街の人治した描写と原因の答え合わせしてシナリオ切っちゃえば?これ以上変に引っ張る必要ないでしょ
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242
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-04-16 21:48
ID:ppizYosU
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何時頃から雨は止んでいたのだろうか?雲の隙間から零れた日差しが、濡れた地面を優しく輝かせた。
その巨大さからは想像もつかないような速度で横薙ぎに振るわれた尻尾は、しかし闇を喚び従える黒猫には決して届かない。一瞬捉えたかに思われた影は、ただの残像に過ぎなかったのだ。お返しとばかりに一対の刃が踊り狂うように激しく旋回し、『傘塊』の体に無数の傷を刻み込む。最初は表皮を僅かに傷付ける程度の効果しかもたらさなかった斬撃は、今ではその軌道に沿うように赤い血飛沫が舞うようになっていた。
鋭利な弾頭が『傘塊』の体を頭から尻尾に至るまで一直線に貫き通す。その一発一発は『傘塊』から見ればさほど大きな傷であるとは言い難い。だが、身体中の至る所にそれを受ければ膨大な体力もやがては底を尽きる。全身の苔に薄っすらと血が滲み、赤く染め上げられていることからもわかるように、『傘塊』の出血量は既に尋常なものではなかった。たった二人の加勢。変化と言えばただそれだけである。本当にただそれだけのことで、『傘塊』はここまで追い詰められていたのだ。
それでも彼が怒り状態にならなかった……否、"なれなかった"のは、偏にここまで戦い続けてきたことによるスタミナ切れが原因である。本来『傘塊』のスタイルは極限まで戦闘を避け、どうしても避けられない場合は即座に怒り状態に移行して圧倒的な力で外敵を薙ぎ払う短期決戦特化型である。にも関わらず、苛立ちと不安から普段は行わない筈の『通常状態での長期戦闘』を行ってしまったがために、自らのコンディション管理に齟齬が生まれてしまったのだ。
疲労状態、それは『傘塊』の究極の弱点である。巨体に裏付けられた体重と圧巻の運動能力で暴れ狂う『傘塊』は、一度スタミナが底をつけば今度はその体重が仇となり、歩くのがやっとという程にまで弱体化してしまうのだ。––––––その時を、虎視眈々と待ち侘びていた者がいた。
「……撃てぇっ!」
ミラルパの幼くも猛々しい掛け声が戦場に響いた直後、『傘塊』の体に無数の鋼矢が突き刺さる。マカライト鋼を用いて作られたであろうそれには、人の腕程もある太いワイヤーが括り付けられていた。
単発式拘束弾––––––主に古龍迎撃戦などで用いられるバリスタ弾の一種である。近年スカラグラートはその世界シェアに参入し、今では大陸で使われる単発式拘束弾のおよそ3割がこの街で製造されたものになっている。曲がりなりにも古龍を拘束する兵器……いくら古龍級生物であるとはいえ、その拘束力は疲労状態の『傘塊』が簡単に抜け出せるものではない。「「「「「引けぇぇぇぇっ!!」」」」」
そのワイヤーの先に居るのは、数百人もの街の男連中と、数十頭のアプトノス。勇ましい声と共に彼等が一斉にワイヤーを引っ張り始めれば、『傘塊』の巨体がほんの僅かではあるが明確に揺れ動いた。もちろん、そのまま引き倒されるほど『傘塊』だってヤワではない。何とか姿勢を保とうと懸命に足を踏ん張るのだが、なんとも皮肉なものである、これまでの『傘塊』の攻撃によって凹んだ大地には大量の雨水が流れ込んでおり、彼の足元は非常に滑りやすいぬかるみに変じていたのだ。
通常状態ならば……あるいは足元がしっかりしていれば、何百人どころか何千人いようとも『傘塊』が人間ごときに力負けすることは決して無かったであろう。しかし、戦いに"たられば"は存在しない。人間はこうなることを予測して準備を進めていた。『傘塊』はそれを予測出来なかった。それが彼の敗因である。重々しい音が鳴り響くと同時に、『傘塊』の巨体が横向きに倒され、街の男衆がその背中にこぞって集まった。疲労状態での転倒……それも特別体重の重い『傘塊』だ。その復帰には相当な時間を要することになる。そして、その時間は、必要分以上のマンドラゴラを確保するのには十分すぎるものであった。ある程度目が慣れているハンターはもちろん、人海戦術による採取も相当な力を発揮したと言えよう。
とはいえあまり欲張る訳にはいかない。転倒時間が長いとはいえその時間が有限であることには変わりないのだ。一度『傘塊』が起き上がれば一般人にはその足踏みでさえ危険であることを考慮すれば、不要な長居などとてもできたものではない。ミラルパの合図と共に一斉に男衆が撤退した後、狩人達は『傘塊』の注意が一般市民に向かないよう、いつでも戦闘を開始できる体勢で彼の周りを囲い込んだ。『傘塊』がのそのそと起き上がり、己を取り囲む五人の狩人を睨むように一瞥する。そのあまりの威圧感に狩人達は一瞬臨戦状態に移行したが、直後には各々に武器を収めた。
……ズシン……ズシン
森の奥へと消えていく足音を聞いて、狩人達は長きに渡る戦闘の終了を悟った。
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243
名前:救済のNarcissus@難亭
投稿日:2018-04-16 21:50
ID:ppizYosU
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>>241批判できるくらいしっかり読み込んでくれている方がいらっしゃるとわかっただけでも非常に嬉しいです。批判が来なくなったらいよいよ終わりだと思っておりました。ありがとうございます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー***
–––––––夢を見ていた。
狭い世界に閉じ込められて、毒を喰らわされ続ける夢。仲間が一匹…また一匹と倒れていくのを間近で見せられて、それでもなお逃げることも死ぬことも許されず、喜びを知ることもなく飼い殺され続けるのだ。毒を喰らうことに偽りの快楽を覚えさせられ、気付けば毒の無い場所では生きられなくなっていて……まるで自分が自分で無いかのような……自分の体なのに、自分のものでは無いかのような、そんな感覚に陥って……
光を失ったのは、一体どれくらい前のことだっただろうか?
心を失ったのは……いや、そもそも最初から心などあったのだろうか?自分は"生きている"のか……、
それとも"死んでいないだけ"なのか……。それすらも知らない。わからない。
やっとの思いで得た自由さえ、ただの偽りに過ぎず……変わった事といえば目に見えない"檻"が大きくなったという、本当にそれだけのことであった。逃げられはすれど、抜け出せはしない。"檻"に依存しなければ生きていけないように作り変えられていたのだから……。
仲間の足音が日に日に数を減らしていく。その理由を自分は知っていた。仲間の骸で喰い繫ぐような劣悪な環境で、なおも生きることを強いられ続ける。それは、あまりにも報われない……あまりにも残酷な……
–––––––夢を見ていた。
そう、これはきっとただの夢に過ぎないのだろう。目が覚めれば、自由で平穏な日常が戻ってくるのだろう。そう信じて、信じて、信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて–––––––
どろり。
***
窓から射した陽射しの眩しさに、俺は思わず目を細めた。寝ぼけ眼にも、太陽が既に随分と高い位置に移動しているのがよくわかる。かなり寝過ごしてしまったようだ。
全身にのしかかるズッシリと重たい倦怠感を振り払うようにゆっくりと身を起こすと、いつの間にぶつけたのだろうか?後頭部にズキリと痛みがはしる。まあ、狩人などやっていると、知らぬ間に怪我をしていることなど別に珍しくはないのだが。「めっ…目を覚ましましたっ!!」
「うわぁっ!?」ボンヤリと思考を巡らせていた最中、突如真横から響いた大声に驚くと同時に、靄がかかったように漠然としていた俺の意識は完全に覚醒した。この声には聞き覚えがある、エリクシルだ。
「突然大声を出してどうした?」そう声をかけようと彼女の方を振り向いた直後、俺はエリクシルに思いっきり抱き締められる。胸元ですすり泣く彼女の姿に、喉まで出かかっていた言葉は時空の遥か彼方へと消し飛んだ。「よかったです……よかった」
あまりにも突然の事態にパニックに陥りかけた俺は、エリクシルの消え入るような安堵の声を聞いて、何故だかスッと落ち着きを取り戻し、彼女の頭を撫でながらこの状況に至るまでの経緯を思い出した。
単身ガブラスと対峙した俺は、奴の返り血に含まれる毒にやられ、倒れたのだ。その後どうなったかは想像に難くない。ただでさえ安全なマンドラゴラが採れないという状況で、仲間の一人が倒れたりしたら俺だって絶望しかけるだろう。こうして俺が目を覚ましているところを見るとどうやらマンドラゴラの採取に成功したようだが、一体どんな手を使ったのやら……いや、今はそんなことはどうでもいい。「目を覚ましたか!?」
「あなたさん!」
「もう起きて大丈夫なの……って、お邪魔だったかしら?」
「お邪魔って……あ、すっ、すまん!」
「い、いえ。こちらこそすいません。」勢いよくドアを開けて、一斉に雪崩れ込んでくる仲間達。まともに服装も整えずに飛び込んできた彼等は、俺の顔を見て驚愕した後、そのやや下に視線を動かし、生暖かい眼差しに早変わりした。
そういえばエリクシルに抱きつかれっぱなしであったことを今になって思い出した俺は、慌てて彼女の頭を撫でていた手を上に上げた。それに対してエリクシルは少し名残惜しげな表情を見せつつも、背に回した腕を離して素早く立ち上がった。
皆んなの顔を見回せば、程度の差はあれ皆一様に目の下にクマが浮かんでしまっている。相当な心配と苦労をかけたことは想像に難くない。迷惑をかけて本当に申し訳なく思う……いや、今言うべきことはそれではないか。もし俺が向こう側だったら、謝罪なんかより聞きたい言葉があるだろう。「–––––––ありがとう、皆んな。」
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244
名前:妄執のAconitum@難亭
投稿日:2018-04-19 21:23
ID:ppizYosU
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–––––––それから、皆を助ける為とは言え、まともな準備もせずに飛び出してしまい、あまつさえナイフ一本でガブラスと対峙したことに対して小言を言われたり……俺が助けたメラルーのシガレットの立案で『傘塊』を誘導してマンドラゴラの採取を行い、街の全員に行き渡る量を確保することに成功したことを聞いてホッと安堵しつつも、結局は何も出来なかった自分を情けなく思ったり……だけど一命を取り留めた街の人達やその家族から感謝の言葉を受け取って、ほんの少しだけ気持ちが楽になったり……過労で倒れたエリクシルを何故か俺が膝枕することになったり……しばらくして目覚めたエリクシルに事故とはいえ盛大な頭突きを貰って悶絶したり……他にもいろいろなことがあって、気付けば日は遠く西に傾いていた。
「……おや、もう歩いて大丈夫なのですか?」
「伊達に鍛えてないからな。ハンターの体力を舐めちゃいけないぞ。」静かに部屋の扉を開け、外へと出ようとしたその時、まるで俺がそうすることを前もって知っていたかのように扉の目の前に立っていたミラルパが発した問いかけに、俺は軽い口調を崩さずにそう答えた。
実際、毒によって寝込んでいたとはいえ、世にも不思議な秘薬パワーも相まってもう既に歩けないほど体の調子が悪いということもない。その気になれば余裕で走ることだって出来るだろう。流石に戦闘はまだ少しばかりキツイが、それだって数日としないうちに元どおりになるはずだ。
そんな俺の言葉を聞いて、ミラルパは軽く溜息を吐きつつ、隔離施設の窓から既に活気を取り戻し始めている街を見て、まるで独り言のように言った。「ご無理はなさらないように。……しかし、街が助かった記念に祭りですか、よくやるものです……。ですが、きっと結束の強い良い街なのでしょうね。まあ、祭りに関しては私も一枚噛んだ訳なのですが……。謎の病の原因の侵入ルートは特定され、多くの人が病状も回復した。彼等の中では今回の一件は無事解決ということになったのでしょう。」
「そうだなぁ。まあ、悪い事じゃないさ、こうしてすぐに前を向いて歩いていけるのは。」終始此方を見ずに言葉を紡ぎ終えたミラルパの隣で、俺は同じように外の様子を眺めつつ彼の言葉に同意を示した。彼等はこの街の発展に大きく貢献し、土台を作ってきた世代だ。きっとどんなことがあってもそれを乗り越えて来たのだろう。そして、今回もきっとそれと同じなのだろうと、この街に来てまだ数日の俺でもそれくらいはすぐにわかった。
「ですが……」
「……あぁ、まだ"犯人"は明らかになっていない。」……だけど、まだ事件は本当に終わったわけではない。
こんな酷い事件がこの地で巻き起こることになったそもそもの原因を突き止めなければ、数は少ないとはいえ惜しくも死んだいった人々も報われないし、今後同じような事件が起きぬよう対策することもできない。今回の依頼の目的は達成されないのだ。「"犯人"……ですか。やはりあなたも、その結論に辿り着いたのですね。」
意味深げな台詞を吐きつつ、ミラルパは俺に一冊のファイルブックを手渡した。黒塗りな上錠まで付いた如何にも"機密"的な雰囲気を漂わせるそのファイルブックを、しかしその正体を知っている俺は臆する事なく受け取ると、同じくミラルパから手渡された鍵によって錠を開け、その中身を開いた。
それは、ギルドによって保管されている、今から十五年程前の古龍種の襲撃記録。それをペラペラと適当にめくっていけば、すぐに目印の付いたページに行き着いた。そのページに書いてあるのは、他のページと大して変わりのない内容である。どんな場所で襲撃があったのかを地図で指し示され、どの古龍がどんなルートで訪れ、どのような被害が出たのか。それを無機質に端的に纏めてあるだけの簡素な一ページに過ぎなかった。
だけど、それこそが全ての疑問の答えを示す鍵であったのだ。–––––––ジルヴァート男爵領、クシャルダオラ襲撃事件
「……全て分かった。」
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245
名前:妄執のAconitum@難亭
投稿日:2018-04-19 22:52
ID:ppizYosU
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雨上がりの晴れ空は、太陽が山の向こうへと消えていくと同時に、美しい星空へと変容した。やや肌寒く湿っぽい風の吹き抜ける闇夜の下、鋭い三日月をボーッと眺めながら、少女は何をするでもなく待ち人の訪れを静かに待ち続けている。
……と、そんな彼女の下に、ゆっくりと歩み寄ってくる足音が一つ。少女はその足音の方に振り返ると、呆れたような声を出して言った。「女のコを呼び出しておいて遅刻だなんて、随分だと思わないかい?ま、ボクは心が広いから許してあげなくも無いけど……それで?ボクと話がしたいって何さ?まさか愛の告白?困るなぁ〜、ボクはまだ身を固めるつもりはないんだ、他を当たってくれるかい?エリクシルちゃんとか。」
まるで世間話でもするかのように軽く大らかな雰囲気で話す少女……ギムルの言葉を、物々しい狩人の装いに身を包んだ男はただ沈黙を以ってそれに答えた。
身の丈よりも大きな武器を背負った大の男が、皆が寝静まった夜に、 視界も不明瞭な闇の中で黙って自分の方へ歩いてきているというのに、ギムルはそれにまるで恐る様子を見せない。むしろ男が近付くほどに、彼女の雰囲気はより軽い物へと変わっていく。「あらら、ひょっとして違ったかな?いやぁ、狩人の正装は愛用の武器と防具だっていうから、てっきり勘違いしてしまったよ。ねぇ––––––そろそろ口をきいてもいいんじゃないかい?あなた君。」
突然180度雰囲気の変わったギムルの言葉に、男……あなたはゆったりとした動作で足を止め、つい先程までまるで鍵でもかかっていたかのように動かなかった口を開いて、重々しく言葉を発した。
「一つ、聞いてくれないか?俺の、今回の事件に関する考察を。」
***
毒と古龍と聞いて、あなたは一番にどんなモンスターを思い浮かべるだろうか?毒を操る古龍種というのはそこまで多くはない。というより直接的な毒を操れるのは殆どオオナズチくらいだろう。近年の研究で様々な種類の毒を様々な形で操っていることが判明したこのモンスターは、まさに毒の代名詞とも言える強大な古龍種だ。
だが、ハンターの諸氏ならば、毒と古龍と聞いて、もう一体モンスターを思い浮かぶのではないだろうか?その名も、暴風神の涙、クシャルダオラ。
鋼の甲殻を持ち、嵐のような暴風を時にはブレスに、時には鎧にと自在に操るそのモンスターは、一方で毒に対する抵抗が非常に弱いことで知られている。他のモンスターと比べると極々少量で毒状態にすることが可能であり、さらに毒状態中は一番の強みであり狩人にとっては厄介なポイントでもある風の鎧を纏えなくなるなど、毒があるのと無いのとでは戦いやすさが全く違うため、クシャルダオラ戦では一般的に毒武器を担ぐのがセオリーとされている。
そして、それこそが今回の事件の鍵なのだ。
それこそが今回の一連の事件のきっかけで、それこそが今回の一連の事件の結末なのだ。周囲の環境を変えるほどに拡散した猛毒の泥水。
かなり以前から確認されていた変異ドスイーオスの群れ。
解毒薬の通用しない異常な程の致死性を持つ毒液。
不自然に見つかる毒を持つ大型モンスターの死骸。
そして、それとほぼ同時に見つかった破損した台車や荷物。
頻繁に目撃された糸、閃光、霧……。
共喰いによって壊滅寸前まで個体数を減らしたイーオスの群れ。
それほどの環境になってなお、あの沼地を離れようとしなかったドスイーオス。
ガブラスの毒からも、ドスイーオスの毒からも、そして例の汚染されたマンドラゴラからも検出された鉱毒。
にも関わらず、まるで問題の見つからない鉱石の精錬所。『そういえば、医師団の人達が言ってましたね。この謎の病の治療と原因の究明を一番熱心に調べてくれたのはギムルさんだったって。』
『じゃ、じゃあ、せめて捕獲してくれないかい!?』
『––––––アレはもっと禍々しくて、もっと怖ろしくて、もっと混沌とした化け物にゃ。』
『今回の件が全て同じ原因を持つのなら……その中心にいる存在の持つ影響力は正直計り知れないな。』
『ガブラスの毒液まで……変異しているということですか……っ!?』
『通常自然界では起こりえない"何か"が起きてたっていうことになるな。』
『もっと悪どいこともやってたみたいだよ……阿片だ。』
『その毒はいったい何処から湧いて出たの?』
『食わせて、育てる……。』そう……
『何者かがわざと流出するように仕組まない限りは、流出するような事態にはならないと思うよ?』
今回の一連の事件の真実は……
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246
名前:妄執のAconitum@難亭
投稿日:2018-04-21 22:14
ID:ppizYosU
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ここに来てからずっと頭の中を渦巻いていた漠然とした不安や予感、苛立ち……そういった不明瞭なモヤモヤが、今では頭の中から完全に消え去っていた。思考が澄み渡り、掴めそうで掴めなかった真実が、漸く目の前にハッキリとした形で現れたのだ。ここに来てから散々味わされた幾多の苦難を乗り越え、やっとの思いで辿り着いて出したソレは、到底信じ難い内容であるにも関わらず、同時に何故か妙にストンと納得出来てしまうものでもあった。
「ずっと考えてた。閃光に、糸のようなモノに、霧……それらがなんの前触れもなくほぼ同時期に確認された理由を。」
思わず拳に力が入る。何故だか妙に肌寒く、体が強張って仕方がない。今が夜だからとか、そのような単純な理由ではなく、それはもっと根本的なものであった。……怒り、なのだろうか。それとも無力感?今の俺には、その正体をハッキリと断定することは出来ない。こんな感覚を抱いたのは、生まれて初めてのことだったのだ。
「閃光と聞いて、俺たちはゲリョスを思い浮かべた。糸と聞いて、俺たちはネルスキュラを思い浮かべた。霧と聞いて、俺たちはオオナズチを思い浮かべた。だけど、改めてよく考えてみると……閃光、糸、そして霧のような煙。それらを同時に使用する生物が、この世界には一種類だけ存在することに気付いたんだ。」
口から紡ぎ出される言葉が、徐々に早く強いものになっていくのが、自分でもハッキリと感じ取ることが出来る。どうしてこんなに息が苦しいのだろうか。どうしてこんなに胸が苦しいのだろうか。
–––––––どうしてこんなに、怖いのだろうか。「やっと思い出すことが出来たよ。ずっと心の奥に引っかかっていた言葉。『何者かがわざと流出するように仕組まない限りは、流出するような事態にはならないと思うよ?』……そう言ったのは、確かお前だったよな、ギムル。」
俺の問いかけに、しかしギムルは口を閉ざしたままであった。ただ、まるで早く続きを言えと言わんばかりに、じっと俺の顔にその無表情な視線を注ぎ続けていた。
その視線を受けて、俺は今にも溢れ出しそうになる感情を必死に抑えながら、ゆっくりと言葉を続けた。「……まさにその通り、あの鉱毒は、何者かに意図的に流出させられ、意図的に止められたものだったって訳だ。」
もし、俺の立てた仮説が真実であったのならば……、
なんて救われない……。「つまり、この一連の事件の犯人は……」
緊張でカラカラに乾いた喉から、しかしその四文字は嫌にハッキリと発せられた。
「–––––––"人間"だよ。」
……そう、この事件は人間の意思によって生み出され、人間の意思によって拡大し、そして人間の意思によって解決へと導かれた。
『今回の件が全て同じ原因を持つのなら……その中心にいる存在の持つ影響力は正直計り知れないな。』……誰かが発したその言葉は、まさに的を捉えていたのだ。強大な力と災害じみた影響力を持ち、悪意なく暴力を古龍種とはある意味対極の存在。脆弱で、非力で、ちっぽけで……しかし悪意を以って大いなる禍を生み出す生物……人間。それが、この事件の全ての元凶。
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247
名前:妄執のAconitum@難亭
投稿日:2018-04-21 23:10
ID:ppizYosU
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あのような決して広いとは言い難い辺境の沼地に、異常なほどに毒を持つモンスター達が集まっていた理由。通常自然界では到底起こりえない現象が起きた理由。それはあまりにも単純なものであった。あまりにも単純過ぎて、却って誰にもわからなかったのだ。
彼等は決して自分の意思でここに来た訳ではない、人間の手によって無理矢理この地に連れてこられたのだ。––––––餌として。そしてそれは、ドスイーオスもまた同じである。人間の手によって、あのような地獄と呼ぶにも生温い環境で、生きることを強いられ続けた。全ては、ある妄執を果たすために。
ギムルは俺のこの事件に対するそんな考察を、何を言うでもなくただ黙って聞いていた。表情一つ変えず、手足一本動かず、ただその場でじっと俺が辿り着いた結論に耳を傾け続けていた。
俺はそんなギムルに対して、強い口調で言葉を投げかける。どれだけ冷静になろうと努めても、湧き出でる激情を完全に制御しきることは出来なかった。「完敗だよギムル。俺達の完全敗北だ、お前は既に目的を達成してしまった。もう、俺達の手の届かない所まで運び出されてしまったのだろう。」
まんまと利用された。まんまと騙された。
今思えば、あの時鉱山にいた密輸人も、俺達や他の人間の目を引き付けるための陽動だったのだ。俺達が密輸人に気をとられている間に、ソレは人々の目を盗んで運び出されてしまったのだろう。「お前が、こんな大掛かりなことして"作り出した"……ドスイーオスはなぁっ!」
この事件は、全ては変異ドスイーオスを生み出すため、ただそれだけのために仕組まれたものだった。鉱毒を喰らわせてドスイーオスの毒を全く別のものに変質させ、ゲリョスやギギネブラのような毒を持つモンスターを食わせ、食料の乏しい過酷な環境に追い込んで共食いさせ、生物濃縮によってドスイーオスの毒を強化し続ける。
そうして生み出したドスイーオスを、対クシャルダオラ用の"兵器"として売りつける。それがこの一連の事件の犯人の目的だ。「そもそも、初めて出会った時お前があの場にいたことからしておかしかったんだ。スカラグラートの中心地域で俺達にドスイーオスについて説明していたはずのお前があの時あの場所にいるためには、俺達が西部に向けて出発した直後にその後を追う必要がある……その時点で違和感を抱くべきだった。その後のお前の頼み事も……まず初めに"狩場に自分を連れて行け"という無茶な要求をした後に無難に捕獲を依頼することで、俺達から"断る"という選択肢を奪うための交渉テクニックだったわけだ。流石は商人の娘を名乗っているだけある、見事に誘導されたよ。俺達が鉱山に向かう時にお前が御者を引き受けたのも、俺達の目を真実から逸らし、捕獲したドスイーオスを運び出すための計画の一部……。全ては、体が弱くハンターになることが叶わなかったお前が、十五年前自らの故郷を滅ぼした古龍、クシャルダオラに復讐を遂げるための、気が遠くなるほど壮大な計画だったわけだ。違うか?」
–––––––ギムルは、言葉を発しない。
「……違うのかと聞いているのだ。ギムル・ジルヴァートォッ!!」
燻っていた感情が燃え上がった。目の前の人間がどうしても許せない、許すべきではないと思ってしまう。ここまで本気で怒ったのはいつぶりだろうか……?人生で初めてかもしれない。それほどまでに激怒し……同時に、悲しかった。
––––––パチパチパチパチ
そんな俺に浴びせられたのは、仰々しい賞賛の拍手だった。
「いやぁ、見事だよ。元々目的を達成したら早かれ遅かれ露見する計画であったとはいえ、よくぞ自力でそこまで辿り着いた。そんなキミの熱意に敬意を表して…………全て教えてあげよう。」
「–––––––ボクの、十五年の妄執を。」
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248
名前:妄執のAconitum@難亭
投稿日:2018-04-23 21:48
ID:ppizYosU
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道化師は語り出した。
この事件の全てを。一人の少女が抱いた十五年に渡る妄執の、始まりの、始まりから……終わりの、終わりまでを。***
十五年前。
全ての発端は、災害たる古龍の代表格……風翔龍クシャルダオラの襲撃であった。彼の龍のほんの気まぐれで、平和だった街は瞬く間に血生臭い死屍累々の地獄と変じた。
……こう言ってはなんだが、それ自体はそこまで珍しい出来事ではない。もちろん、古龍の出現というのは他の大型モンスターに比べればそこまでの頻度で確認されているというわけではない。割合で言えば圧倒的に少ないとさえ言えるであろう。しかし、常軌を逸した力を持つ古龍種とて、結局はこの世界に棲む一生物種に過ぎないのだ。で、あるからには、当然彼らも種として成り立つだけの個体数がこの世界には存在するわけで、その一個一個の持つ莫大な影響力もあり、観測自体はそこまで珍しいというほどのことでもない。ましてや風翔龍クシャルダオラは数多の古龍種の中でもとりわけ活動範囲が広く個体数も多い種であると推測されているため、クシャルダオラによる人里への襲撃というのは大陸全体に目を向ければどれだけ遅くとも数年〜十数年に一度は確実に発生しうる出来事であった。では、その事件の一体何が珍しかったかと問われれば、その地に棲まう住民の中で、生き残ったのがたった一人であったことだろう。一人生き残ったことが珍しいというわけではない、たった一人しか生き残らなかったのが異常なのだ。
当時も流石に今よりはいくらか劣るとはいえ、十分に効力を発揮可能な古龍対策マニュアルは完成しており、一番オーソドックスな古龍種であるクシャルダオラが接近した場合での対処法も、当然その中には記されていた。そのマニュアル通りに気候の僅かな変動からクシャルダオラの接近を予知し、事前に付近住民の避難を完了させて、然るべき実力を持つ狩人の数人でも派遣すれば、ここまで被害が拡大することも無かっただろう。つまりは、当然行われるべき対処が、その時ばかりは適切に実行されなかったのだ。その理由は単純である。当時のハンターズギルドにとって、その街……ひいてはその地の領主であるジルヴァート男爵は目障りであったのだ。大した海も山も無く、お世辞にも資源に恵まれているとは言い難いその街は、しかし偶々重要な交易ルートの上に存在したがために、街を出入りする商品にかける関税でなんとか領地の維持に使う資金を集めているような、細々と生きる街であった。しかし当然、そのような関税をかけられれば、それだけ商品の値段は上がってしまうわけであり、ハンターズギルドは幾度となく関税の撤廃を要請し、ジルヴァート男爵は幾度となくそれを跳ね除けてきた。
……だから、ハンターズギルドはクシャルダオラの襲撃をいいことに、男爵領の壊滅を助けたのだ。時々忘れがちになるが、ハンターズギルドという組織はかなり公的側面も大きいとはいえ、突き詰めればギルドの利益を一番に追求する『営利目的の民間組織』である。つまりは、公的な機関とは異なり、ギルドの利益のために"客を選ぶ"ということも絶対にしないというわけではないのだ。それが良いか悪いかはこの際問題外で、世界というのは得てしてそういうものなのである。その結果が、生き残りがまだ5歳になったばかりの少女たった一人のみという凄惨な事態である。当然、ギルドとてここまでの事態になるとは予想もしていなかった。元々は壊滅的な被害を受けて、弱ったところに援助と引き換えに交渉を持ちかける計画であったのだから、全滅というのは面倒なばかりで旨味があまりにも少なすぎるのだ。
彼等の誤算はただ一つ、襲撃に訪れたクシャルダオラが、極めて気性の荒い脱皮寸前の『錆び』個体であったこと。たったそれだけのことである。斯くして、ジルヴァート男爵領はたった一人の少女を残して滅亡した。
それは、一つの終焉であり……
一つの、始淵であった。 -
249
名前:妄執のAconitum@難亭
投稿日:2018-04-23 21:49
ID:ppizYosU
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ギムル・ジルヴァートは優秀な子供であった。もともと、田舎の木っ端貴族とはいえ男爵令嬢であるのだから、一般人に比べれば相当に教養のある方であり、また運動こそ苦手であるものの、学業に関しては天性の才能とでもいうべきものが備わっていた。さらにクシャルダオラの襲撃以後、その優秀さに価値を見出した(と同時にギルドによる事件の隠蔽の片棒を担がされた)大商人ミラルパの養子となって育てられたことにより、彼女は十代の若さにして大人と顔を並べる学者の一人となった。
そんな優秀な彼女は12歳の時、ひょんなことから自らの故郷が滅んだ真相を知ることとなる。そしてそこから始まったのだ、彼女のあまりにも壮大かつ残酷すぎる復讐の計画が。まず自らの実力や積み上げてきた功績、里親であるミラルパのコネをフルに活用して有毒の工業廃棄物が発生する工場の責任者に近い立場を手に入れ、それと同時にイーオスの卵を大量に入手して幼体の時から少しずつ鉱毒とケシの実から採れた汁を摂取させていく。イーオスはただでさえ生命力が尋常でない上に、有毒ガスが充満することも決して珍しくない火山にも平気で生息するモンスターである。数匹、数十匹と繰り返していくうちに、金属性の毒に対して強い個体が少しずつ現れ、それらを何度も交配させることによって段階的に鉱毒に耐性を示すイーオスを作り出していくことに成功した。さらに、ケシの実……阿片の依存効果によって、そのイーオス達が自分の手元から逃げ出さないようにも改造し、計画は順調に進んでいた。
毒を持つモンスターの中で、敢えてイーオスを選んだのはある種の消去法である。ゲリョスでは閃光があまりにも目立つ為隠れて飼育するのには向かず、ギギネブラとネルスキュラはデリケートすぎて管理が面倒、バサルモスの毒は成長段階で変質してしまうし、リオス種は空を飛ぶ上凶暴だし、ナルガクルガ希少種は確認さえ稀で、イャンガルルガなど論外だ。ちなみにフロギィの存在は忘れていた。
何より、イーオスの特徴的な習性として一度主と認めた者には絶対的に服従、依存するという性質があったため、飼育する上では非常に扱いやすかったのである。ともあれ、鉱毒に耐性をつけたイーオスを生み出したギムルは、実験場を大きく広げ、次の段階として生物濃縮を行なった。ギギネブラやゲリョスなどといった毒を持つ大型モンスターを餌として食わせ、さらに食料の無い環境に追い込んでイーオス同士の共食いを誘発させ、その身に宿した毒を一つの個体に集約させていく。そうして生まれたのが、変異ドスイーオスという一匹の哀れな化け物なのである。
しかしある時、全て順調に行っていた計画……それに突然翳りが差した。流出させた鉱毒の影響が山の麓の街にまで及んでしまったのである。街に影響が出ないよう配慮して実験場を設けていたギムルの計算上、そのような事態は起こりえないはずであった。彼女とて破壊者では無いのだから、罪もなき人民を故意に巻き込むようなことはしなかった……という以前に、人間に直接影響が出てしまうと騒ぎが大きくなり計画が半ばの状態で露見してしまう可能性があったので、そのような愚を冒すことは到底考えられないのである。
ギムルはすぐに原因の調査と事態の打開に乗り出した。しかし、彼女がどれだけ調査しても、鉱毒の街への侵入経路に辿り着くことはとうとう出来なかった。結果、彼女の危惧した通り……いや、それ以上に騒ぎは大きく拡大することになり、数年越しの計画は、あと一歩というところで難局を迎える事になったのであった。***
「その後、君達が派遣されてきて、それからは知っての通りさ。」
ギムルは飄々とした様子で一連の事件の罪を認めていった。死罪でも生温い罪に対し、まるで捕まっても構わない……捕まることこそが最終目的であると言わんばかりに……。
「ギムル、一つ質問があるんだが……イーオスの卵やら毒モンスターの捕獲体やら……いったいどうやって手に入れたんだ?」
そんな俺の素朴な疑問に対し、ギムルは「別に難しいことはしてないよ。」と薄く笑みを浮かべながら、まるで舞台で誰かに語り掛けるようにこう言った。
「ねぇ……人類の進歩って恐ろしいと思わないかい?あれほど神や悪魔やと恐れられていた存在だというのに、今やモンスターでさえ……、」
一呼吸置いて放たれた言葉は……
「"–––––お金で取引できる時代になったんだよ。"」
……彼女なりの、"真理"なのであろう。
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250
名前:名無しさん
投稿日:2018-04-24 23:05
ID:fvHaSB/o
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亜ナルは…毒を使わないんやで…
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251
名前:名無しさん
投稿日:2018-04-24 23:28
ID:NakhxNcU
使うのは希少種だけだっけ?
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252
名前:妄執のAconitum@難亭
投稿日:2018-04-25 21:42
ID:ppizYosU
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「……さて、全てを知ったキミは、いったいどうするんだい?激昂して襲い掛かるも良し、ボクをお縄にするも良し、お仲間に任せるも良し、黙って回れ右するのも良しだ。それともあのドスイーオスを取り戻しに行くのかな?既に国境を越えてしまっているから、多分無駄足になると思うけどね。」
どうしてこの少女は、ずっと笑みを浮かべたままなのだろうか。
とても楽しそうな雰囲気には見えないのに、どうしてずっと偽りの笑顔をその面に貼り付けていられるのだろうか。
もう復讐は終わったはずなのに、此の期に及んで一体誰を騙すというのだろう。あるいは、数年間片時も休む事なく表情を偽り続けてきたがために、既に自分の本来の表情さえも忘れてしまったのかもしれない。
全てを語り終えた少女は、もう自分が成すべきことは何も無いと、諦観というよりは当初の目的を達成して抜け殻となった人間のように、暴れる様子も逃げる様子も無くただただその場に立ち尽くしていた。まるで、一切抵抗しないから後は煮るなり焼くなり好きにするがいいとでも言わんばかりに……。……と、丁度その時、俺の背後から数人分の足音が近付いてきていることに気が付いた。
「聞かせてもらいましたよ、全て……。」
背後から突如として掛けられた声は、一見幼く穏やかで柔和そうな声色でありながらも、しかし凍り付くように冷たく荒々しい怒りを孕んでいた。それは、目の前の少女に対する怒りというよりは、自責の念といった類のものなのであろう。起こってしまった出来事よりも、それを止められなかった自分が何よりも許せなかったのだ。
白い長髪を夜風に靡かせながら現れた人物に、ギムルはほんの一瞬僅かに表情を変え、口を小さく動かして呟くように呼び掛ける。「パパ……。」
「……出来れば、こうはならないことを望んでいました。」ギムルの育ての親にあたる元大商人、不老のミラルパ。静かにそう呟く彼の表情は、いつになく哀しげだ。そもそも、俺が今回の事件の核心に迫るキッカケを作ったのは他でもない彼であった。であるならば、もしかしたらこの男も……
「……今回の異変の原因が貴女にあるのではないかと、薄々勘付いてはいました。しかし、確証を持つことが出来なかった。……いえ、信じたく無かったのでしょうね。……だから、真偽を確かめるために私は彼等を呼びました。或いは、私の疑念は見当はずれの勘違いに過ぎないと、そう証明してくれるのではないかと期待していた……。」
「ですがそれは叶わなかった。」と、無念そうにそう語ったミラルパの後ろに目を向ければ、そこにはアマネ、アリーチェ、エドワード、エリクシル、ライカ、イオン……今回の事件の調査におけるメンバーが勢揃いしていた。
自然を愛する心は人一倍大きいのか、怒りの感情を隠しきれないアマネ、必死に感情を鎮めているアリーチェやエドワード、何故か周囲を警戒しているライカとイオン……そして、呆然として戸惑うエリクシル。俺達の中で誰が一番ギムルと関係が深いかと問われれば、まず間違えなくエリクシルの名が挙がるだろう。科学者であるギムルと、錬金術師であるエリクシル。両者の間には間違えなく通じ合うものがあった。実際、二人は共に街の人々を救う為に必死で秘薬の調合を続けた仲であり、俺達がドスイーオスの狩猟に向かっていた最中に意気投合した、エリクシルの中でも珍しい"話の合う相手"であった。
そうであるだけに、エリクシルの受けたショックは察するに余りある。当然だ、自分に向けていた表情が、全て偽りであったなんて知ってしまったら……。「……どうして?」
思考の整理が追いついていないといった様子のエリクシルの口から、絞り出すように溢れ出た疑問は、そんな具体性を帯びない曖昧なものであった。或いは曖昧なものであるからこそ、それは全てを聞いていたのだろう。聞きたいことが山ほどあって、しかしそれらを整理する精神的余裕すらもなく、全てを一言に集約したのが「どうして?」という問いなのだ。
「"どうして"?それは理由を聞いているのかい?決まってるじゃないか、全ては復讐のためだよ、故郷を滅ぼしたクシャルダオラという種族と、それを傍観したハンターズギルドという組織に対するね。ボクの研究の経過報告はこれから至る所にばら撒かれる。数年じゃ無理だろうけど、二十年後、三十年後には彼の忌々しき古龍を狩り尽くす猛毒兵器が完成することだろう。そして、ギルドは様々な組織が共同で運営するこのスカラグラートという街で自分達の管轄である"モンスター"と"密猟"に関する問題を阻止できなかった責任をこれから様々な形で負うことになる。その結末を見届けることは出来ないかもしれないけど、想像するだけで愉快痛快だよ!」
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253
名前:妄執のAconitum@難亭
投稿日:2018-04-26 21:03
ID:ppizYosU
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狂笑。
全てを嘲笑うように、ギムルは大声を出して笑った。周囲のことなどまるで顧みず、腹の底から笑い声を上げた。まるで狂人のように笑いこけるギムルの姿を見て–––––––しかし俺はまだ彼女が何かを演じているように思えてならなかったのだ。
その拭い難い違和感に俺が思わず首を横に捻っていると、その横から激情に顔を染めたアマネが、吠えるようにギムルに向けて叫ぶ。「お前……そんなことして許されると思ってるのか!?」
「許される……?くだらない。ボクは"許されて欲しい"なんて思った事はない。それは臆病者の傲慢だよ。それに……何をそんなに怒っているのさ、モンスターの命を弄んで金と名誉を手に入れ、己の新たな牙とする事を教えてくれたのは……他でもないハンター、キミ達じゃないか。」
「一緒にするんじゃ……っ「そうだね、全然違うよ。」!」
「……知ってるさ、キミ達とボクは全然違う。キミ達には生態系の管理という立派なお題目があって、片やボクのは百パーセントの私利私欲。当然だ、そんなことでくだらない問答を繰り広げようとも思わない。だけど、ボクは一番最初にハンターを目指した。それが全てだよ。……さて、そろそろいいんじゃないかい?もうこれ以上ボクのような人間を野放しにしているのは不安だろう?早く取っ捕まえて法の下に処分しちゃいなよ。」アマネの言葉さえ歯牙にも掛けず、淡々と冷酷に言葉を紡ぎ続けるギムル……。そこで漸く気付いた、彼女は俺達の手によって捕まろうとしているのだということに。俺達を煽って挑発して、公に裁かれようとしている。おそらく……裏世界の人間によって存在諸共抹消される前に。
俺がその事実に辿り着いた瞬間、ふとエリクシルが俺の真横から顔を出し、固く歯を食い縛り、強く拳を握り締め、今まで見たことがない程真剣な表情をして、唸るように声を絞り出して言った。「……街の人達を助けるために頑張ってたじゃないですか。」
「ッフフフフ、ボクの話を聞いていなかったのかい?それはあくまで騒ぎを大きくしないため……」
「私達が来てからも、少しでも多くの人を救おうと必死だったじゃないですか!」……エリクシルがそう声を張り上げたまさにその時、ギムルの表情から貼りついたような笑顔が消えた。
「私達が来てしまった段階で、それをやる意味は貴女の中から無くなっていたはずなのに……」
「…………。もしそうだとして、だからなんだっていうのさ?大したスポンサーも付けずに独学で錬金術の研究なんて金のかかることやってるんだから、かなりの資産家の家に生まれた一端のお嬢様なんだろうけどさ、流石にちょっと夢を見過ぎじゃないかい?現実を見ようよエリクシルちゃん、キミはボクという悪人に騙されていたんだよ。」
「ええ、そうです。私は貴女に騙されていました。そして、今もなお貴女は私達を騙し続けている。……さっき貴女の言ったとおり、研究というのはとてもお金がかかることです。ましてや、こんな大規模な実験何の協力も得ずに実行できる筈がない。おそらくはドスイーオスを運び出した先……人為的なモンスターの変異やモンスターを利用した兵器を欲している組織……そういったものが貴女の後ろには付いていた。」
「……。」
「そして貴女は、自らの意思で復讐を辞める方法を失った。一度でもお金を出させてしまえば、後は成果が出るまで研究者は奴隷のようになるしかない。そうしなければ、お金を出させた組織によって自分のみならず他の人々にも危害が及ぶ可能性があったから……だから「黙れっ!」……っ。」溢れ出る感情のままに紡がれ続けたエリクシルの言葉に、ギムルはこのとき初めて明確に声を荒げ、食い気味にそう叫んだ。
「……黙れ。ボクの復讐は最初から最後までボク自身の意思によるものだ。ボクが望んだからそれを成したんだ。そこに他者の意思の介入する余地は無いっ!ああそうさ、罪悪感が無かったわけじゃなかったよ。自分勝手な都合に街一つ巻き込んで、果ては死人まで出してしまった。こんなことやめたいって思ったのも一度や二度じゃ無かったさ。でもそれが復讐だよ、何度やめようと思っても、何度無意味な事だと自分に言い聞かせても……燻る怒りは簡単に消えてくれやしない!あの日の無念は無くならない!それが復讐という愚行なんだよ!だからボクだ、これはボクが成し遂げた復讐だ。執念以外に取り柄とてないたった一人の凡人が、生態系の頂点と世界最大の組織に対して成し遂げた復讐だ!それだけは誰にも、奪わせはしない!」
たった一人、復讐のためだけに生き続けて、十五年。
振り上げた腕を納める方法を、彼女はついぞ知らなかったのだ。 -
254
名前:妄執のAconitum@難亭
投稿日:2018-04-29 22:14
ID:ppizYosU
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「この事件は……この事件はボクの手によって起こされたものだ!そうでなくてはいけないんだ!ボクがボクの復讐を果たすため、ただそれだけの為に起こした利己的なものでなくてはいけないんだ!だってそうでなければ…………そうでなければ、ボクは一体何のためにここまで苦しんだんだよっ!他人に利用されるためなんて、それだけは誰が何と言おうと認められない!彼奴らを利用したのはこのボクだ!ボクが彼奴らを利用したんだよ!それが真実、不変の事実だ!……ハァ、ハァ……。」
全てを吐き出すように声を荒げて叫んだギムルは、崩れ落ちるように地面に膝を突き、胸を抑えながら苦しげに荒い呼吸を繰り返した。
それこそが他でも無い彼女がハンターになることを妨げた最大の要因……。日常生活を送る上ではなんの問題も無いが、過度に興奮すると身体に異常をきたしてしまう病気。復讐の相手を自らの手で直接殺害するという方法を彼女から奪ったそれに、ギムルは思わず苛立たしげに舌打ちをする。自らの手で抗うことが出来ないと知った時の彼女の無念は如何程か……ハンターとして十分やっていけてしまっている俺からすれば、到底想像も出来ないし、想像したいとも思えない。
きっと、今の言葉こそが彼女の本心であり、十五年の妄執の正体なのであろう。この一連の事件の全ての元凶は自分でなければならないという、狂気さえ垣間見えるほどの強烈な拘り。復讐劇であることへの異常とも言える固執。それが彼女の言動を形作る重要な要素の一つであったのだ。……と、そんな時、終始辺りを警戒していたライカとイオンが、虚空に向けて突然ピクリと反応を示した。
「–––––––後は監獄で話を聞こうか。ギムル・ジルヴァート。」
……その人物は、あまりにも唐突に現れた。
ハンターとしてある程度は経験を積み、そこそこ勘を鍛えてきたと自負する俺の目にさえも映らず、まるで意識の隙間を縫うように現れ、膝を突く少女の後頭部に一切の躊躇無く無機質な銃口を突き付けた彼を、しかし俺達は間違えなく知っていた。「クルト……アイズ?」
その人物は間違えようも無くクルトアイズであった。にも関わらず俺の言葉が疑問形になってしまったのは、普段からはあまりにも乖離した彼の異質な雰囲気を感じ取ったからに他ならなかった。
装備からしてそうだ。普段ハンターとして装備しているガルルガSシリーズやイャンクック砲の姿は影も形も見当たらず、血のように紅いギルドナイトシリーズ……それもハンターの防具として出回っているものとは所々デザインの異なる、所謂本物のギルドナイトの正装を身に纏い、その手に握られた銃が明らかに対モンスター用に作られたものではないことは素人目にも一目瞭然であった。いつもの厳格ではあれどどこか親しみやすい雰囲気は完全に消え去り、そこにいたのは一人の無慈悲なギルドナイト……既に彼が足を洗ったはずのそれである。「クルトアイズ……『隻腕』か。既に裏の世界からは抜けたと噂に聞いていたけど、その銃でボクを殺すつもりかい?」
しばらくの沈黙の後、漸く息を整えたギムルは、自らの頭に銃口が突き付けられているという状況で、しかしまるで動じた様子もなくクルトアイズに声をかける。誰しも銃を突きつけられれば多少なりとも取り乱すものだと思っていたが、ギムルに至っては寧ろそれによって却って落ち着きを取り戻したようにも見える。
それは"死を恐れない"というよりは、"生に執着していない"という言葉が何故か妙にしっくりとくる光景であった。「殺しはしない。生きて罪を償って貰おう。お前の父親がそう望んだからな。」
「……いいのかな?ボクの罪が公になれば、ギルドだって多少なりとも被害を被ることになる。それはギルドナイトとしては避けるべき事じゃないかい?」
「残念ながら、私はもう正式なギルドナイトではないんだよ。多少顔が効くとはいえ、今は一介のハンターさ。」
「へぇ、じゃあなんでギルドナイトシリーズなんて着てんのさ?」
「それは……感情を殺すための衣装だな。余計な感情を削ぎ落とす……。」
「そりゃまた随分と昔気質な人間だこと。」
「ああ、古い人間さ。」
「……いいね、気に入った。一通りブチまけてスッキリしたし、どうせ全部終わったんだ。大人しく捕まろう。抵抗はしないよ。」
「そうしてくれると助かる。流石に彼等の前で人を殺めたくは無いからな。」まるで狂気の笑みも慟哭も、全て虚構の夢幻であったかのように落ち着き払った様子でクルトアイズと対話するギムルは、ふと此方に視線を向け、全てが吹っ切れたかのような表情をしてこう言った。
「––––––さよなら。本当はボクも、そっち側に居たかったよ。」
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255
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-04-29 23:15
ID:ppizYosU
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〜妄執のEpilogue〜
あまりにも苦しく、長かった沼地の病毒事件は、全ての元凶であり主犯たるギムル・ジルヴァートの逮捕という形で幕を閉じた。恩人であるはずの彼女が実は全ての元凶であったという真実に対する街の人達の驚きはひととおりでは無かったが、そこまで記せば話が非常に長くなってしまうため、ここでは割愛させていただくこととする。
変異ドスイーオスが排除され、事件の元凶を突き止めることが出来たとはいえ、その被害の爪痕はあの地に今もなお深く影を落としている。街が一丸になったとしても復興は決して一筋縄ではいかないであろう。だが、彼等は最終的には「まあ、ボチボチやっていくさ。」と前を向いて歩き出した。強い人達だ、同じ状況に陥った時、俺は果たしてあのように前を向けるだろうかと疑問に思ってしまうほどに。
そんな彼等に対して、自分にもまだ何か手伝えることがあるのではないかと、一度はそう考えもしたのだが、しかし円陣を組んで復活を誓う彼等の姿を見て、ハンターの仕事はもう終わったのだなと、何故だか妙にはっきりと自覚してしまった。そして、帰りの飛行船の一室で、俺達はミラルパからギムルの今後についてを語られた。
結果から述べれば、ギムルに下った判決は文句無しの極刑だった。引き起こした事件の規模が規模であるため、それは当然の判断と言えるだろう。協力した犯罪組織や事件の背後関係などを精査するため、その刑が実行されるのは大分先の話ではあるのだが、短い間とはいえ話を交わした相手が死ぬというのは……なんとも言い難い感情にさせられるものであった。今の俺には、その感情を具体的に言葉で言い表すことが出来ない。それがなんとももどかしく、口惜しい。どうしても、あのような結果にならないように何か自分に出来ることは無かったのかと、そのような考えが浮かんで止まないのだが、ミラルパにそれは許し難い傲慢であると切り捨てられた。もし万が一そのような手段があったのなら、彼がそれをしない筈は無いのだから、まあ当然の反応と言うべきか。
結局ミラルパは俺達の前では一度も涙を見せることは無かったが、それは非情というよりは、人に弱みを見せられない性格なのだろうと思う。容姿が子供であるからこそ、きっと弱さを他人に晒すことは許されなかったのだ。そういえば、クルトアイズは俺に異変解決の依頼を出すと同時に、ミラルパが呼び寄せて居たんだそうだ。もし万が一あのような状況……或いはもっと最悪の事態に陥った場合の保険ということらしい。とはいえその時はまだ殆ど確証の無い状態であったがために、流石に現役のギルドナイトを呼びつけるようなことは出来ず、白羽の矢が立ったのが既にギルドナイトを引退し、なおかつ周囲からの信用も十分にあるクルトアイズであったようだ。
ギムルに警戒心を与えない為、どうしても表に出ることが出来なかったことを、クルトアイズは心から謝罪していた。それについてはあの苦難の数々を考えると思うところが無いでも無いが、彼にも彼の事情があったということで納得することにした。そして、なんといっても驚いたのが、ミラルパから支払われた報酬の量である。流石は金持ちと言おうか、一応は身内が苦労をかけた詫びというのも兼ねて、通常の依頼の報酬額の数倍もの額が支払われた。何故かいつも金欠気味である俺にとってはそれこそ度肝を抜かれるような金額で、多少なりとも高額な報酬には慣れているであろうはずのライカとイオンでさえ素直に驚愕を浮かべるような額だ。
さらにもう一つ特別報酬として、非常に高額な報酬が約束される王族や貴族からの指名依頼を橋渡ししてくれることになった。それについては他のメンバーは微妙な顔をしていたが、ともあれ金欠気味の俺にとっては有り難い限りである。ちなみにこれは余談ではあるが、俺が助けた二匹のメラルーはミラルパの下で働くこととなったらしい。泥棒のメラルーという先入観によって排斥され、結果生きるために泥棒に身を落とすしかなかった彼等は、しかし人材としてはかなり優秀であったそうだ。
……この事件は、きっと多くの者の心に残ることになるだろう。多くの者の人生に影響を与えることになるだろう。それだけ大きな事件だった。それだけ……、
「……嫌な事件だったな。」
今日の紅茶は、随分と苦い。
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256
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-04-30 10:42
ID:ppizYosU
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〜妄執のEpilogue2〜
–––––––後日。
随分と久々に帰還したように感じてしまう我が家のベットの上で、死ぬほど溜まった疲れを癒していると、突然ギルドマネージャーであるオババから呼び出しをくらった。
帰還したとはいえ直ぐに休めたかと聞かれると決してそうでは無い。事件の規模が規模であるだけに、その後始末にも相当苦労させられ、傷心のエリクシルを慰めたり、置いてけぼりのミーシャの起源を取ったり、かなり本気で死にかけたことについて仲間から説教を受けたり、とにかく語ることさえ億劫なほど様々な出来事があり、漸く落ち着けたというのが今の状況である。つまり何が言いたいのかというと、何故よりによって今呼び出すんだクソババァである。……とはいえ、ハンターである俺がギルドマネージャーの呼び出しを無視するわけにも行かず、俺は渋々といった様子でベットから身を起こし、ノロノロとした足取りでオババの元へと向かう。多少遅れたりするのは大目に見て欲しい。こっちだって尋常では無いレベルで疲れているのだ。
そんな不機嫌な表情を浮かべながらオババの元へ向かうと、彼女の隣には謎の小包……いや、大包が置かれていた。広場の中央に巨大な包みという光景に、通りすがりのハンターや研究員は一体全体何事かとヒソヒソと話し声を上げている。その気持ちは俺にもよくわかった。それは一体なんだ。
そんな俺の意思を察してか否か、オババは手元の本から視線を外し、手に持つ大きな虫眼鏡で此方を覗き込むと、隣に置かれた大包を一瞥して言った。「アンタ宛に荷物だよ。」
「俺宛に荷物……?一体誰から?」
「贈り主は不明だそうだ。」それすっごく危ない奴じゃないですか、ヤダー!
嫌な予感がした俺が疾風怒濤の勢いでその大包から距離を取ると、オババはそんな俺を見て溜息を吐き、無言で手招きする。「危険物ではないから安心しな。……いや、一応危険物ではあるが……とにかくアンタに危害を加えるようなものではないのは確かだよ。そんなものギルドは通さないからね。いいから黙って開けな。」
オババにそう言われれば俺に抗う術はなく、しかし"一応危険物"という凄まじく不吉な言葉に最大限の警戒心を抱きながら、大包の梱包を解いてその中身を確認した。
「これは……?」
大包の中身は、多種多様な容器に詰められた謎の物質の数々であった。黒い粉末状のものから、一見すると水にしか見えないのに、明らかに危険物ですという髑髏マークが瓶に描かれた謎の液体、白銀の細粒など様々である。
見たこともない物質の数々に俺が深く首を捻っていると、ふと、その並べられた容器の片隅にある、これまた謎めいた本に目が行った。『鋼龍絶殺マニュアル』
……なんだかよくわからないが誰が贈り主なのかは分かった。
俺がその本を手に取り、何気なくページを開いてみると、紙と紙の隙間から一枚の手紙が零れ落ちた。『拝啓、親愛なるあなた君へ。
キミがこの手紙を読んでいる時、ボクはもうこの世に……いや、まだいるかもしれないけど、とにかくこの手紙を読んでいるということは、全てが終わった後なのだろう。キミのお怒りは百も承知だけど、まあ話くらいは聞いていってくれると嬉しく思う。』それは間違えなく、この荷物の贈り主であるギムル・ジルヴァートから書かれた手紙であった。随分と軽い文体で書かれているそれは、しかし何故か俺の目を引き付けて止まなかった。
『この際だから教えてあげよう。キミがボクの復讐を最後の最後で阻止する方法がまだ一つだけある。それはキミがキミの手で、ハンターとしてクシャルダオラを先に討伐してしまうという方法だ。そうすれば、あの変異ドスイーオスの毒を実戦で試す機会が失われ、維持に凄まじくお金のかかる彼は処分される可能性は充分にあるだろう。それを成し遂げればキミ達の勝利だ。
だけどまあ折角だから、キミ達にボクの十五年の歴史で作り上げた対クシャルダオラに有効な作戦をいくつか教えてあげようと思う。詳しくは『鋼龍絶殺マニュアル』にて。
p.s 検閲中のギルド職員の皆様へ。裏で繋がってた組織について素直に話して欲しかったら、これを確実にあなた君の元へ届け、そしてあなた君から一筆貰ってくること。ミラルパに教育を受けたボクを筆跡で騙せるとは思わない方が良いよ。
ギムル・ジルヴァートより』 -
257
名前:昏き沼底、死の抱擁@難亭
投稿日:2018-04-30 10:47
ID:ppizYosU
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〜妄執のEpilogue〜
……抜け目ねぇっ!?
最後まで手紙を読み終わった俺は、声にこそ出さないものの心の中で思いっきりそう突っ込んだ。
まさか、最後の最後で俺をやらざるを得ない状態で利用してくるとは思わなかった。いつかクシャルダオラと対峙する時が来るのではないかという予感はしていたし、その時少しでもリスクを減らす上で散々研究された貴重な資料を無視するという手は無い。そしてそのマニュアルを読んだ俺がどんな形であれクシャルダオラを討伐したら、ギムルは間接的に復讐を果たしたことになる。
まるで、こうなることも考慮の内に入れていたかのような……。「……結局、どこまであいつの掌の上だったのかな……。」
ギムル・ジルヴァート。恐ろしい奴だった……。
***
狭い部屋のベットの上で、小さな蝋燭の灯りを頼りに『鋼龍絶殺マニュアル』に目を通す。初めはハンターでも知っているような弱点……閃光玉が有効だの、毒で風の鎧を封じられるだの、角を折れば弱体化するだの、そのような常識的なことしか書かれていなかったが、ページをめくる毎にその内容は凄まじいものになっていった。
「……っはは、凄え。やっぱお前化け物だよ。」
風の鎧を封じた後に全身の甲殻に活性炭と呼ばれる物質をブチまけ、食塩水を掛けるだの海に落とすだの……それをすると奴の体表を覆う金属甲殻が急激に錆び、化学反応によって発生する高熱によるダメージと共に甲殻の劇的な弱体化が望めると書いてあったり。
錆びた甲殻にアルミ粉末をブチまけて火を付け、テルミット反応とやらを起こして大ダメージを負わせるだの……ただしアルミ粉末を吸うと人体にも影響が出る上、テルミット反応に巻き込まれれば命の保証は出来ないと恐ろしいことも書いてあったり。
古龍の特殊な能力にはほぼ間違えなく血液が絡んでいるらしいので、硫化アリルやブラジキニンやホスホリパーゼなども有効である可能性が高いなど正直チンプンカンプンなことが書いてあったり。
毒に弱い古龍である関係上、直腸からのアルコール摂取でもさせようものなら空中での姿勢制御に甚大な被害をもたらすだろうなどと何気に下品なことが書いてあったり。
濃硫酸ブチまけるのもいいね!と少しも良くないことが書いてあったり。
本当はもっと事細かに、もっと様々なことが書いてあったのだが、専門の知識も無い俺にそこまで読み込んで理解しろというのは土台無理な話である。まあとにかく、よくここまで殺意を漲らせることが出来るなといっそ関心してしまうほど、膨大な対クシャルダオラ討伐に関する情報がそこには詰め込まれていた。
たった十五年でこれだけの事をやってのけるというのは、例え知能に優れた竜人族でさえ難しい事であろう。特に頭がいいわけでもない自分からすれば、その優れた頭脳をもっと別の事に活かせなかったのかと、惜しくさえ思えてしまう。『ここで得た知識を、生かすも殺すも全てはキミ次第。キミはキミの自由意志の下に動くといいさ。それじゃあ、健闘を祈るよハンター諸君。醜く這いずり回って彼の古龍を倒して見せるといい。風が吹いて棺屋が儲かるような事態にならないことを、ボクは地獄の底から祈っていよう。』
十五年の時を費やして作り上げられた一冊の本は、それだけの年月をかけて生み出されたとは到底思えないほどに、随分と簡潔にそう締めくくられていた。
俺は静かに本を閉じ、ふと一連の事件に想いを馳せる。今更ではあるが、G級昇格早々に随分と凄まじい事件に遭遇してしまったものである。まあ、これだけの苦労が早々連続するとは思えないし、暫くは安寧が訪れることであろう。訪れるはずだ。訪れたらいいな〜。だがなんとなく、「無理だろうなぁ〜」と思う自分もいるのであった。
〜シナリオ44〜
昏き沼底、死の抱擁 クリア!
・称号『憂鬱』を入手しました。(変異ドスイーオスを捕獲した)
・称号『哲学者』を入手しました。(事件の真相に辿り着いた)
・『対鋼龍絶殺マニュアル』を入手しました。
・猛毒のサンプルを入手しました。 -
258
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-04-30 10:52
ID:ppizYosU
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*『モンハン人名録』登場人物紹介*
不老の「ミラルパ」
性別:男 年齢:不詳 職業:商人 装備 武器:無し 防具:無し
見た目は子供、頭脳は老人。その名も、大商人ミラルパ!
非常に長い寿命を持つとされる竜人族の中でも成長が極めて遅い希少種であり殆ど特殊個体のようなもの。一代で大商会を立ち上げ、王侯貴族やギルドとも太いパイプを持つ要注意人物である。容姿は十歳程度と幼く、性格は柔和で温厚だが、決して褒められた事ではないことも平然とやってのけてきた人物でもある。今はもう商会の会頭からは引退しているため、そこまで警戒する必要は無いが、完全に気の置けない相手ではないのは確かであろう。
沼地の病毒の一件の報酬の一つとして、あなたに王侯貴族からの指名依頼の橋渡しを行うと約束した。ちゃっかり自分の利益にも繋げているところは流石と言おうか。
結局、彼は最後まで自分の本心を見せなかったのだった。大罪人「ギムル・ジルヴァート」
性別:女 年齢:19 職業:学者 装備 武器:無し 防具:無し
沼地で起きた一連の事件の全ての元凶。故郷を滅ぼした古龍、クシャルダオラとそれを放置したハンターズギルドに恨みを持ち、今回の復讐を決行した。
生まれつきの体質のせいで戦闘力こそ皆無であるものの、頭脳は非常に優秀であり、知識や技術というのもさることながら、長き時を生きた竜人族であるミラルパをも出し抜き、実は何気にクルトアイズの監視さえも突破していたりする。街の人間もハンター達も自分以外の全ての人間を騙し、計画を成就させた。とはいえ、単なる悪人というわけではない。寧ろ、単なる悪人であれば止める方法などいくらでもあったのだ。既に善悪などという曖昧な価値観など機能しないほどに歪んだ妄執を抱いた、哀れな少女である。
例えそれが、人類の触れるべきことで無かったとしても。健脚のメラルー「シガレット」
性別:♂ 年齢:青年 職業:掻っ払い→ミラルパの配下 装備 武器:無し 防具:無し
名前があるメラルー。何故名前があるのかは明かされていない。
ハンターでさえ追い付けないほどの俊足と、雨の森の中を一晩中走り続けることのできる持久力を持つ。変異ドスイーオスの毒液を浴びて死にかけていた相棒のシフォンを助けてくれたあなたに恩義を感じている。
一連の事件の後、ミラルパの配下になった。配下とはいえ、具体的に何をするのかは不明である。鋭敏のメラルー「シフォン」
性別:♀ 年齢:シガレットと同様 職業:斥候→ミラルパの配下 装備 武器:無し 防具:無し
名前があるメラルー。何故名前があるのかは明かされていない。
デタラメに鋭い感覚を持ち、実は足音からその人物の性別年齢身長体重職業がおおよそわかったり、数百メートル先から読唇術が使えたりする。完全に意識を失っていたため、あなたが命の恩人であるという感覚は薄いが、義理は果たすタイプである
一連の事件の後、ミラルパの配下になった。配下とはいえ、具体的に何をするのかは不明である。〜オマケ〜
鉱山の親方「ハルド」
性別:男 年齢:43 職業:鉱山夫 装備 武器:無し 防具:無し
鉱山で働く男達のまとめ役をしている大柄で強面の男。屈強な見た目と豪快な性格の割に手先が器用である。元はハンターであったが、自分の限界を悟り引退。大怪我を負う前に引き際を見極めたのだから、かなり考えるタイプの狩人であったようだ。薬売りのおじさん
性別:男 年齢:29 職業:薬売り 装備 武器:無し 防具:無し
普通という印象が第一に来る名前さえ無い善良な一般市民。自分が採取してきたマンドラゴラが原因で街に毒の被害が広がったことに負い目を感じている。
今はその罪滅ぼしのためにも頑張っているらしい。 -
259
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-04-30 11:00
ID:ppizYosU
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*特殊個体メモリアル*
ドスイーオス特殊個体 『原罪』 分類:鳥竜種
人間の手によって生み出された特殊個体。ある種の生物兵器である。異形に発達したトサカに顔面が侵食され、視力を失っている。触るだけで命が危ぶまれるような猛毒を大量に宿しており、体格も非常に大きい上に獰猛化していた。特殊個体最大金冠獰猛化など普通あり得ないとはまさしくその通りで、彼は多くの犠牲の中から厳選された類い稀な個体なのである。
薬物で自由を奪われ、劣悪な環境に追いやられ、共喰いまで強いられて、それでもなお死ぬことを許されなかった、ある意味では、沼地を中心とする一連の事件における一番の加害者にして、被害者。
現在はあなた達が捕獲したものを何らかの手法によって持ち出され、行方不明である。
斯くして、人類の禁忌は再び侵された。『原罪』……生まれしことの罪。生きることの罪。死ぬることの罪。
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260
名前:難亭・凝態
投稿日:2018-04-30 11:27
ID:ppizYosU
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*タイトル解説*
シナリオタイトル……昏き沼底、死の抱擁。
不吉で退廃とした雰囲気のタイトル。正直に言えば、此方にはそこまで拘りはありません。
今回の変遷タイトルの横文字部分は、すべて『毒を持つ花の名前』で統一されています。血溜まりのLycoris(対ドスイーオス戦)
Lycoris=彼岸花。花言葉は「諦め」と「悲しい思い出」。
花の様子が飛散する血液に似ており、『死人花』の異名を持つ。救済のNarcissus(対傘塊採集決戦)
Narcissus=水仙。花言葉は「自己愛」。
この物語では「自己愛」転じて「あなたを愛する者」という意味で用いられている。妄執のAconitum(事件の真実)
Aconitum=トリカブト。花言葉は「復讐」と「厭世家」。
最もポピュラーな有毒植物の一つであり、日本三大有毒植物にも名を連ねている。古くから狩猟に用いられてきた歴史がある。全体的にダークでダーティーな雰囲気を重視させていただきました。まあ扱うモノがモノであるだけに、万人ウケはしないでしょうが。
-
261
名前:時雨
投稿日:2018-04-30 13:09
ID:gX20EMvk
[編集]
シナリオ終わってたの気づかんかった。
難亭氏、>>105から>>257までの二ヶ月もの長期シナリオお疲れ様でしたー。
中々読み応えのあるシナリオありがとうございました。
さて、どうあらすじまとめるかなあ……。
>>262 名前忘れ&IDが変わっていますが時雨でございます。よーし、一通り編集完了。
蟹氏が現れないようならシナリオやろうかなぁ。追記
>>263
蟹氏の言う通り『読み物』として見るなら読み応えあるな、と思います。
ただ選択肢の有無とかシナリオ構成中に長くなるとは気付けなかったのかなぁとは思いますこどね。
自分も前の番外編シナリオでやらかした人やし()
こういう意見がでるのもやむなしかなぁ、と。 -
262
名前:名無しさん
投稿日:2018-04-30 13:23
ID:kkujzZ8o
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~登場人物紹介~
不老の「ミラルパ」
性別:男 年齢:不詳 職業:商人 装備 武器:無し 防具:無し
見た目は子供、頭脳は老人。その名も、大商人ミラルパ!
非常に長い寿命を持つとされる竜人族の中でも成長が極めて遅い希少種であり殆ど特殊個体のようなもの。一代で大商会を立ち上げ、王侯貴族やギルドとも太いパイプを持つ要注意人物である。容姿は十歳程度と幼く、性格は柔和で温厚だが、決して褒められた事ではないことも平然とやってのけてきた人物でもある。今はもう商会の会頭からは引退しているため、そこまで警戒する必要は無いが、完全に気の置けない相手ではないのは確かであろう。
沼地の病毒の一件の報酬の一つとして、あなたに王侯貴族からの指名依頼の橋渡しを行うと約束した。ちゃっかり自分の利益にも繋げているところは流石と言おうか。
結局、彼は最後まで自分の本心を見せなかったのだった。大罪人「ギムル・ジルヴァート」
性別:女 年齢:19 職業:学者 装備 武器:無し 防具:無し
沼地で起きた一連の事件の全ての元凶。故郷を滅ぼした古龍、クシャルダオラとそれを放置したハンターズギルドに恨みを持ち、今回の復讐を決行した。
生まれつきの体質のせいで戦闘力こそ皆無であるものの、頭脳は非常に優秀であり、知識や技術というのもさることながら、長き時を生きた竜人族であるミラルパをも出し抜き、実は何気にクルトアイズの監視さえも突破していたりする。街の人間もハンター達も自分以外の全ての人間を騙し、計画を成就させた。とはいえ、単なる悪人というわけではない。寧ろ、単なる悪人であれば止める方法などいくらでもあったのだ。既に善悪などという曖昧な価値観など機能しないほどに歪んだ妄執を抱いた、哀れな少女である。
例えそれが、人類の触れるべきことで無かったとしても。健脚のメラルー「シガレット」
性別:♂ 年齢:青年 職業:掻っ払い→ミラルパの配下 装備 武器:無し 防具:無し
名前があるメラルー。何故名前があるのかは明かされていない。
ハンターでさえ追い付けないほどの俊足と、雨の森の中を一晩中走り続けることのできる持久力を持つ。変異ドスイーオスの毒液を浴びて死にかけていた相棒のシフォンを助けてくれたあなたに恩義を感じている。
一連の事件の後、ミラルパの配下になった。配下とはいえ、具体的に何をするのかは不明である。鋭敏のメラルー「シフォン」
性別:♀ 年齢:シガレットと同様 職業:斥候→ミラルパの配下 装備 武器:無し 防具:無し
名前があるメラルー。何故名前があるのかは明かされていない。
デタラメに鋭い感覚を持ち、実は足音からその人物の性別年齢身長体重職業がおおよそわかったり、数百メートル先から読唇術が使えたりする。完全に意識を失っていたため、あなたが命の恩人であるという感覚は薄いが、義理は果たすタイプである
一連の事件の後、ミラルパの配下になった。配下とはいえ、具体的に何をするのかは不明である。 -
263
名前:名無しさん
投稿日:2018-05-01 00:26
ID:nrR/I78w
[編集]
読み応えっていうのかこれは
装飾過多な文章とくどい展開とそこ選択なしで進むの!?って進行ばっかりで総じてただの吟遊だった -
264
名前:名無しさん
投稿日:2018-05-01 00:49
ID:l9.7a0FM
[編集]
俺は割と好きだったけどなぁ・・・
-
265
名前:名無しさん
投稿日:2018-05-01 00:53
ID:eaQf8tXc
[編集]
私はとても楽しめましたよ。
お疲れ様でした(=´∀`)人(´∀`=) -
266
名前:名無しさん
投稿日:2018-05-01 08:01
ID:9TSV.WtE
[編集]
>>241にも書いてあるけどモンハン二次小説・リレー形式って言うのが逆に足枷だよね
冒頭で『後味の悪い事件だった』みたいに書くから正直オリキャラ二人のどっちが犯人って最初から分かっちゃってたし、この展開ならモンハン二次小説じゃなくてもいいし
加えて若干一名執筆速度・構成・伏線の使い方・他人へのパスと全部ほぼ完璧な人が居て皆目が肥えてるからね、とにかく色々惜しい人って評価に行き着いちゃうただプロットの時点で展開のくどさと長さに気付けなかったのは擁護できないかな(
>>267
読み物としてもどうだろうなぁ
推理部分に限定しても肝心のギムルの出自や癇癪持ちが最後まで明かされないから取って付けたような設定にしか見えない
都合上絶対無敵死なないマンの主人公じゃなくてエリクシル倒れさせて秘薬調合が追い付かない、とかのやり方もあったはず
本当に『リレーモンハン二次小説じゃなければな』の一言に尽きる -
267
名前:蟹
投稿日:2018-05-01 08:57
ID:RZ1TdRI6
[編集]
おはようございます、蟹です。出先からなのでID違いますがご容赦を。
>>263の言いたいことも何となく分からないではないけれど、個人的には「読み物」としては十分楽しめたかと。
ただ、事件を解くヒントが後半突然出て……って感じだったから謎を解くという点ではなんか消化不良感も残る感じがないでもない。次に関しては、マム太郎も終わるしMHXXをまた引っ張り出してちょっとだけやってることもあって、とりあえず残していたシナリオをやってみようと思います。
ただ、先のシナリオの展開が全く読めなかったので繋ぎ方が分からず、その部分のすり合わせと少々の調整がしたいのでとりあえず明日か明後日には投げてみたいと思います。
もし失踪してたら時雨姉貴兄貴、お願いします。追記
終わり方が上手いこと解決しちゃってるから、想定と異なって擦り合わせに苦労中……(勝手にやばいレベルのトラウマエンドかと思っていた)
とにかく、自分には凝ったシナリオは作れないのでシンプルな狩猟シナリオになることはお知らせしておきます。>>266
主人公がやられる分には、死にはしないにしろ調査打ち切りないし失敗やそれに伴う街の処分っていうバッドエンドは想定できた
後半部分はともかく、前半は普通に面白かったのよ -
268
名前:@蟹
投稿日:2018-05-04 17:03
ID:B8nXzJ4E
[編集]
とりあえず、趣味で書いた前回シナリオのエピローグ的なものを幕間の話として投下
おまけ兼シナリオ進行確保的なものと捉えておいてくださいな。──────────────────────────────────────
ある一人の少女が、生態系を破壊した。大陸を震撼させるべき事件ではあったが、大規模な混乱を防ぐために詳細は世間一般には非公表。
事件を知る者はミラルパによって真相が伝えられたスカラグラートの住民と、一部のギルド関係者のみとなった。
調査に赴き真相を暴いたハンター達は、ただ「元凶たるモンスターを狩猟、事態の収拾に尽力した」とのみ、当時の報告書には記載されている。
一方で事件の首謀者たる【彼女】は逮捕されたのち、もはや正式な裁判を待たずして極刑の手筈が整っていた。……のだが刑の執行を前に、ギムル・ジルヴァートは亡くなったと伝えられている。
元より病気だった彼女は、狩りほど重労働でないにしろ研究や取引でその身には合わない負荷を負って生きてきた。
加えて、多少なりとも自分も毒物に冒されていた結果、牢獄の環境とも相まって病状が悪化。
そのまま良くなることもなく、事務手続きの間に……というのが死因だと伝えられている。
彼女の素性を見るに、最後までギルドに刃向かい続けた結果じゃないかとも思われるが、その意思を知ることはもう出来ない。それとほぼ同時に、金で雇われていたドスイーオスの運搬業者を拘束、ギムルの支援組織の情報を聞き出した結果、その摘発に成功する。
研究成果にして遺品である変異ドスイーオスも即座に殺処分となった。沼地に残留していた毒物に関しても、元は対処可能だった鉱毒であることから、回復した住民達による毒物の除染が開始された。
専門の学者の協力や商人などからの寄付により、復興の流れはさらに加速。
変異したガブラスなどにしても、あまりに強すぎる毒に蝕まれた結果、さらなる被害をもたらす前に次々と死滅していく。
長い年月を要するだろうが、だとしても人々はこの地獄を抜け出す術を見つけたのだ。
【道化師】が作り上げた、「身勝手に対する、身勝手による復讐劇」を。
ギルドは極秘事項として扱っていた。しかし後年、除染の完了と生態系のある程度の回復と同時に事件はゴシップ誌から公になる。
──────────────────────────────────────以上の記載は、そのゴシップ誌の記事の内容に基づく、世間に伝えられた事件の顛末の一部である。
ライターはガセネタでっち上げでも有名な記者。故に真実ではない部分もあるだろうが、事件そのものが存在したことは間違いない。
ある別の雑誌に掲載された、当時調査隊のハンターだったと名乗る者へのインタビューの回答は以下の通りであった。「あれほど惨い夢はなかった。ハンターに根付く一種の自然信仰を覆された。自然は操作できる、という示された事実によって。
自分達は古龍を時に『天災』と呼ぶことがあるが、今や人間が天災となり得る時代になってしまった。
いつかは、生命への敬意を忘れて人間が世界と自然を支配する。そんな時代が来るのかもしれない。ただ、自分はそれを信じられない。
(※個人の特定を避けるため、解答は編集部によって内容に影響しない範囲で表現を変更しています。ご了承ください。)」 -
269
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-05 16:08
ID:B8nXzJ4E
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Scenario45(そんなに行ったんか) 〜泥も乾く戦慄〜
G級クエスト。
本来の区分けである下位と上位よりさらに屈強な個体に対してのみ与えられる特別なクエスト区分。
あるいは特に上質な鉱石や薬草などの納品依頼にも適用されるものだが、それを自分の身で体験せずに生涯を終えるハンターも多いとされている。無論これはハンターの活動区域とそこに生息するモンスターの生態にも左右される話なのだが、自分も最初はその一員だと思っていた。古代林にも最近、そのような力を蓄えた個体が現れているという。近年は報告がなかったフラヒヤ山脈やアルコリス地方、ユクモ方面などもまた同様。
そして俺は今日、新たな地に降り立つ。──────────────────────────────────────
事の発端は、俺たちが先の調査に赴いている間。
より多くのG級クエストを龍歴院で取り扱うにあたって、ギルドマネージャーはその業務をある組織に委託することに決めたそうだ。それが飛行酒場【ホーンズ】。
ミラルパ同様に民間で飛行船を所有し、その中を店として使う酒場である。
元ハンターであるマスターとバーテンダーも昔は龍歴院の所属。ハンター時代の人脈を辿ることでギルドのクエストを独自に斡旋、仲介してきたという。
古代林のような直轄の狩猟区を除く大半のクエストの取り扱いをホーンズに任せるという大胆な発想に、龍歴院の重鎮達はまたも反論を呈したという。が、2度の大きな成功の立役者でもあるギルドマネージャーの前に彼らはすっかり信用を失っていた。ゆえにあっさりと決定してしまったのだった。
補足すると一応龍歴院の集会所にもG級クエストは届くが、古代林などのものを除きホーンズ経由であるためにその「鮮度」というのは落ちるとか。
ただ、現状事務処理に手間取ってクエストとして出回る量が低迷していることを考えればそれくらいの支障は大したことではないだろう。鮮度を求めるなら直接ホーンズに出向けば良い。
とかいった噂を仕入れつつ、次なるG級クエストは衝撃の人物によって言い渡されることとなった。選ばれし騎士
【ギルドナイト】久しぶりに平常業務に復帰するというその時に、その騎士は声をかけてきたのだった。
龍歴院前集会場、青空の下の円卓での出来事である。 -
270
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-06 18:57
ID:B8nXzJ4E
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真紅の衣服に龍のエンブレム。その姿を見ればハンターの誰もが知っている存在でしかない。
一般人を取り締まるのがガーディアンなどであれば、ハンターを取り締まるのがこのギルドナイト。恐怖の存在が目の前に。まさかとは思うが、過去の痴態が明るみに出たとか?いや、それはさすがにない。
何にせよこんな所で、G級に足を踏み入れた途端ハンター生活の終焉なんて御免だ!と思っていたが、流石に別件だった。「少しよろしいですか?あなたが龍歴院のハンターさんですね?それも数々の偉業を成し遂げた刃薬のハンターさん。」
刃薬のハンター。
混沌の刃薬を作り上げたその功績を指しているのだろう。スケベと呼ばれないことが幸いだ。
その彼女は個人的な装備としてなのか、標準装備と思しきレイピアとは別に腰に和風の刀を携えている。
深く被られた羽帽子からその表情は読み取れないが、声色は柔らかく挙措も非常に丁寧。こういうのをしたたかさというのだろうか。「ホーンズがG級クエストをそちらに仲介するに当たって、所属しているハンターの腕を知りたいとのことです。
そこで私が持ち込んだとある依頼を、ここのハンターの試金石として、代表的な狩人である貴方に託すことにしました。
……申し遅れました、身分は、言わなくてもお分かりですね?ミナガルデギルド所属のイレーネ・シルヴィスといいます。」そしてイレーネは懐から依頼書を出し、机上に置く。それと同時に、背後にいた鎧のハンターにこちらにくるよう合図。
「一応断ることも出来ますが、報酬からしても断る利点はないと思いますよ?」と、暗に断るなと釘を刺された上でその紙切れを手に取った。──────────────────────────────────────
・クエストメインターゲット:ボルボロスの狩猟
・クエストサブターゲット:謎のモンスターの調査
・狩猟地:セクメーア砂漠
・クエスト依頼主:ミナガルデ緊急防衛委員会
依頼詳細:
この度、管轄の砦に大型の古龍と思しき存在が接近中との報せが入った。
しかし件の砦は現在改修中であり、十分な防衛能力を発揮できない。
そこでモンスターの素材を利用した防壁、バリケードを応急措置として整備したい。
そちらに依頼したいのは、硬い頭殻を持つという土砂竜ボルボロスの狩猟である。
同時に、狩猟地であるセクメーア砂漠では現在謎のモンスターの痕跡が確認されている。
非常に危険度の高い個体と推定されているため、狩猟中に遭遇した場合は注意せよ。
可能であればそのモンスターの特徴等を記録してもらいたい。
報酬に関しては一般報酬に加え、ミナガルデギルドが特別褒賞を約束している。
──────────────────────────────────────何の変哲も無いボルボロスの狩猟依頼、とは流石に言えないものである。
一つ、普通のクエストよりは確実に良い報酬金。先の依頼の報酬と合わせて、しばらくの活動は安泰だろう。
二つ、依頼背景のことも考えると失敗は許されない。代替品は俺が肉壁になるくらいだ。
三つ、そもそも俺はボルボロスとの戦闘経験が皆無。知っている人間に話を聞かなければ。
最後に、謎のモンスターとやらがどのようなものなのか不明で、対策のしようが無い。
……いや、本当の最後はこっちだ。
桃色と赤色の鎧を着込んだ謎の男がイレーネの背後に立っている。おそらく、同行するだろう。「今回はこちらのハンター、チャールズ・ビショップさんに同行してもらいます。詳しい説明は彼に任せてありますので、私はこれで。
……それでは、吉報を期待していますよ。ビショップさん、あとはお願いします。」極めてご丁寧にイレーネが去り、男二人。
形こそランドラットの衛士の装備と同型に近いが、多少滑稽にも見えるその色の装備。それを面白半分に茶化す余裕すらない威圧感。重い空気、そう喩えるべきだろう。
その中でビショップが口を開く。なんとなく空気の変化で察しただけで、兜のせいで実際の動作が見えなかったことは後々の語り草にしてやろう。・ビショップさんの参考画像はこちら、また後で詳しく説明します→https://i.imgur.com/Cd19hMmh.jpg
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271
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-06 19:35
ID:B8nXzJ4E
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正直自分はうまく書ける自信が全くないので、批判も罵倒も遠慮せずどうぞ。
心が折れたとしてもこのシナリオだけはやり遂げてはみますが。
──────────────────────────────────────
「刃薬のハンター、あなた殿。活躍は聞いています。チャールズ・ビショップです。
……そう固くならないでください。必要なことを説明したら、すぐに退散しますから。」意外にも拍子抜けする声だった。
声自体は年上──エドワードと同年代くらいか?──であるが、鎧姿からは想像も出来ない物腰の柔らかい態度。
年上というと少なからず先輩面をしている面々しか知らないので少々面を食らった。面だけに。
(特に年上の仲間が悪いと言いたいわけではないのだが)
それ故に、むしろどう接したらいいのか分からなくなってきた。形式的、儀礼的なやり取りを済ませてさっさと帰るべきだろうか。
いや、それも困る。彼も一緒に狩猟に向かうハンターだ。
それではいざという時に連携に齟齬が生じそうである。意見対立からの窮地、総崩れ。そんな間抜けな結末は御免だ。「多分あなたが気になっていることだと思いますが、残り2つの枠に関しては、あなたの知るハンターを呼んでいただいて構いません。
ただしミーシャ、エリザベート、ツバメ、アンキセス。この4名に関しては別任務をそれぞれ与えています。
バルファルク討伐作戦のメンバーでしたから、直々にその実力を測りたいというのが上──ホーンズのマスターの意向です。」ビショップが話すには、エリクシルにも個別にクエストが充てがわれるはずだったが、先日の任務で疲弊していることから急遽キャンセルされたとか。
俺はどうなんだと言いたいが、彼女のことを考えればその方が妥当、とも思う。
彼女はミーシャのように強くもない。大切にしてやらねば。「戦術、作戦等はあなたにお任せします。ボルボロスの狩猟経験はないようですが、私は特に口出ししません。
あなた方が無駄死にするようなことをしない限り、間違っていても従いましょう。
ちなみに、今回の私の武器は盾斧です。そこだけは伝えておきましょう。私をどう使おうと構いませんよ。
流石に自爆しろとか言われたら、ヴァルハラより牢獄を選びますがね。
あと、謎のモンスターとやらの調査は任意ですので、もし見つけたらという程度に考えておいてください。……何か質問は?」作戦立案に関する手助けは一切しない。ただ俺が立てたものにのみ従う。それはなかなかに面倒な奴だ。
……というか、俺の狩猟経験とかどこで知った?!まさかイレーネの職権で無理矢理聞き出したとか……いやいや、そこはどうでも良い。
そういうどうでも良いこと以外で、彼に聞いておきたいことは何があるだろうか。単に事務的な面で聞いておくことは特にないだろう。
となればむしろ、親睦を深める程度に彼のことを訪ねたい。気になる点はいくつかあるのだが、出来るだけ簡潔に済ませたいところである。【選択】ビショップに一番質問したいことはどれだろうか?
1.彼のハンターとしての経歴
2.彼の趣味嗜好など個人的な部分
3.盾斧における戦い方など戦術的な部分
4.それよりまず、兜を脱いでくれないか?
そのほか聞きたいことがあれば一つまでは自由に受け付けます。 -
272
名前:時雨
投稿日:2018-05-06 22:47
ID:gX20EMvk
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蟹氏のシナリオktkr
選択肢は1で、彼がどんなハンターなのか聞いておきたいな。謎のモンスターが気になる…。できるだけ確認できたらいいの、かなぁ。
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273
名前:兎
投稿日:2018-05-07 19:06
ID:h3fvt/Eg
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あ、終わってた(気付くのが遅い
難亭氏シナリオお疲れ様でした、恐らく自分の中で反省点等多々痛感していると思いますので敢えて私の方からは何も言いません、長期間お疲れ様でした。
そして蟹氏シナリオ期待してますねー。
砂漠で出るボルボロス以外の強力なモンスターと言うとやはり尻尾が敏感なあの古龍でしょうか? -
274
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-07 21:06
ID:B8nXzJ4E
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ハンターを知るには、その狩猟を知る必要がある。当たり前のようで結構忘れがちな基本だ。
ビショップがかつてどんな経験をしてきたのか、武勇伝を聞いてやろうではないか。「そうですね……ここ最近で大きい依頼といえば、森丘で火竜のつがいを相手にしたくらいですね。無論G級ではなく上位個体ですが。」
火竜夫婦を制した!なるほど、本当なら腕前は信用できる。話のきっかけとしてここはちょっと食いついてみるか。その時はどんな感じだった?
「どうと言われても、無理矢理に押し通った程度ですよ。一人で狩ると、策を講じて使うなんて暇はありませんから。」
……一人で。
チャールズ・ビショップ、なかなかの猛者だ。火竜を二匹、単独で制圧するなど並のハンターでは簡単には出来ない快挙。
俺もかつてはアンキセスの助力あってそれを成したが、単独で出来るかと言われると確固たる自信は今もない。出来たとしても、装備と道具に頼りきった情けない戦いをしそうで怖い。
ふと、彼が嘘をついて虚勢を張っているのではないかと思い立った。だが彼はギルドカードの記録を見せてその疑問を潰す。証明するギルドの印もあるから反論も出来はしない。「盾斧は最近使い始めたんですが、片手剣とは随分違うものですね。盾に頼り甲斐がある分、重量バランスは大きく違う。
そうそう、自分はいくつか武器を使い分けていたんですが、どうにもそれだけでは守備範囲?というものが狭いように感じてしまって。
確か……黒猫でしたっけ、ああいう人がいると自分もまだまだ未熟だなぁと思ってしまうんですよ。それで始めたんです。」火竜を一人で倒しておいてまだ足りないと言うか、こいつめ。
野心というか向上心というか、そういうものが意外に大きい奴だ。ある種見習うべき点だろう。
そういえば、特訓してもし足りなさそうな男が知り合いに一人いたな。そう、こいつと同じような装備を着ていた男だ。単に腕前を知るだけではなく、想定外に謙虚なビショップの人柄を知ることが出来たのは大きな収穫かもしれない。あまりにも謙虚すぎて正直恐ろしくもあるが。
ちなみに使用していた武器というのは何なのだろうか。「武器ですか?片手剣を主軸にランス、大剣、ボウガン……あとハンマーと双剣を少々。
あとは太刀が扱い方を知っている程度ですね。全くをもって中途半端な使い分けですよ、これでは。」いや、十分だろうに。ココットの英雄譚から連なる狩猟文化において、黎明期から使われている武器群をことごとく狙い撃ち。
なんて奴だ、自身で闇を喚ぶ黒猫ライカと比較していたが、これはライカに匹敵する実力をすでに持っていると言っても過言ではない。ここまでくると、何か隠しているのではないかと気になってしまう。
……例えば兜で隠して晒さない素顔もそうだが、しかしこの場でそういう話を切り出すことはついぞ無かった。
隠したい物まで無理矢理暴く必要はない。そう思ってしまったからだ。当たり前の倫理だが、こう振り返っているとはつまり時既に遅し。
道理を無視してでも見てやるべきだったのではないかと、後から後悔しないでもないのだった。 -
275
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-07 21:21
ID:B8nXzJ4E
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「すみません。すぐに退散すると言ったのに、長く引き止めてしまいましたか?」
ビショップめ、この感じはおそらくこちらを引き離そうとしている。
まあいいだろう。誰に声をかけて、どういう作戦にするか考えなければいけない以上、世間話のようなこの空間は切り上げなければ。ん?あそこにいるのは……
視界に入ったのはエドワード。見れば、ハンターたちに何か話をしているようだ。
ああ、そういうことか。彼の本分といってもいい、新米や若手ハンターへの教練だ。
そういう形で関わったことがないからか馴染みは薄いが、なかなか様になっている。今度タクミに話を聞いてみよう。などと少し気を取られていると、同じ方向を見ているビショップ。
バリスタエドの名はそこそこ知られている方だが、彼もまた知っているのだろうか。「…….あの男と、知り合いですか?」
そんな質問を投げかけられる。
あまりに何の変哲も無い質問だったのでついそうだと咄嗟に答えてしまったが、そう答えた直後には数え切れないほどの疑問が頭を過ぎる。まずは「何故エドワード【だけ】との関係性を訪ねたのか」という点。
普通に考えれば、あの若手たちとは俺が関係を持っていなさそうだと推理したからだろうか。
しかしエドワードの姿はハンター達に囲まれて半分くらい見える程度。アルバレストが無ければスルーしていたところだ。ビショップがいくら洞察力に優れた人物だったとしても、その兜を被ってエドを視界に捉えるのには難儀するはずだ。
しかも若手の連中の防具はレイア、ハプル、インゴットとそこそこに良いものが揃っている。
これらは上位版になっても外見の変化が乏しいから、俺とも面識がある上位ハンターに見えてもおかしく無い。というか、自分でも区別は付いていないのだが。
次に、物腰柔らかなビショップが「なぜ【あの男】などという表現を使うのか」ということ。
これに関してはまだビショップの全てを知れていないため確実ではないが、彼はエドワードと何か関係があるのだろうか。
いや、そうだとすれば余計におかしい。名前を呼べばいいのだから。
他にも単に視界に入っただけでそんなに注視していたわけでもないのに、何故こちらの視線に気づいたのか、などなど。
疑問は積もるほどあるが、それらを聞く余裕はなさそうだ。「では、今度こそ本当に。自分はこれで失礼させてもらいます。出発は明後日なので、その朝にはここに集合ということで。」
最後に連絡を言い残し、この場を去っていくビショップ。
さて、俺もビショップと共にボルボロスを狩るメンバーや装備をを決めなければ。
手の空いている人は確か……【選択】同行させるハンターと自分の装備を決定しよう。
・武器や防具はレア7までの狩猟済みモンスターの素材のものやとレア8までの採取系素材と小型又はドス系モンスター素材のものから。
ドス系レア8に関しては「先の任務中にエリックとウドンが他の人と狩ってきた」ものと想定して指定可能としています。
また、武器の途中派生に関するモンスターは狩猟してなくてもOKとします。
・ハンターはグループAとBから1名ずつ、計2名選出。
「グループA」
サクラ、レイカ、ニコラス、ブランシュ
「グループB」
タクミ、ランドラット、リィ、りゅ〜しか「特殊グループ」
エドワード(どちらのグループの枠にも使用可能)、エリック&ウドン(2匹セットでのみ使用可能)
──────────────────────────────────────全くどうでも良いのですが、初期のエドワードは某スレから引っ張ってきた名残でギルドナイト設定が残ってましたが、当スレでは設定削除の方針で。
クルトアイズもいるし、まあ多少はね? -
276
名前:時雨
投稿日:2018-05-07 21:44
ID:gX20EMvk
[編集]
ボルボロスなら打撃での部位破壊が可能だしレイカ、何やら意味有りげなのでエドワードを連れて行こう。
武器はスキュラフィスト、装備はバルファルクのでいいか。
あとスタイルに関して書かれていないけど、とりあえずブレイヴでお願いします。>>277
なんか意味有りげだったし…。
今度やるシナリオでタクミ君だすから……!
てかレイカの暴走スイッチのストッパーいねぇや。まぁ、蟹氏なら何とかしてくれるやろ() -
277
名前:名無しさん
投稿日:2018-05-07 22:23
ID:fvHaSB/o
[編集]
サイレントでまたもや出番が消えるタクミくん不幸っぷりがいつも通りで懐かしい
>>276タクミくんっぽいから大丈夫やな() -
278
名前:千壱
投稿日:2018-05-07 22:30
ID:9HmB38Tg
[編集]
あな、出遅れた (さらに気付くのが遅い奴
難亭氏お疲れ様でした & 蟹氏おかえりなさいです。新キャラはチャアク装備ですか! 真面目そうな人で良かったです←
砂漠の謎モンスターについては、「ホーンズ」がクエストの仲介役になっている点がヒントですかね……?
-
279
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-08 21:57
ID:B8nXzJ4E
[編集]
声をかけるメンバーは決めた。装備に関しても、ある程度候補は絞れる。とりあえず問題はないメンバーだと思う。
とりあえず、あいつにこれだけは尋ねておきたい。
俺はビショップが去ったのを確認してから、遠くにいたエドワードを叫んで呼んでみた。
あの任務以来に顔を合わせるが、彼の方は現在平常運転といったところだ。「よう、2週間近く休んでいたようだが……もう大丈夫か?なんならリハビリ程度に狩りに付き合ってやっても……
何?チャールズ・ビショップというハンターを知らないか?いきなり何を言いだすんだ。そもそも誰だ、そいつは?」エドワードに聞きたかったことは、あの桃色鎧のハンターを知っているかどうか。
答えはNOだった。となればMr.ビショップの個人的な認知であったか、ビショップは意識していてエドワードはそうでない場面で会ったとか。例えば、何らかの講演会とか。
とにかく、いきなり質問して申し訳ない。彼とクエストに行くという事情を説明して、さらに彼の情報網に期待してみる。
前に彼が指導して、今では熟練ハンターとして経験を積んだような人物も少なくない。そこから何か、情報を得られないだろうか。「なるほどそういうことか。少なくとも俺は聞いたことはないから、俺の知り合いに少し当たってみよう。
俺の手も空いてるしそのクエストについては一緒に行ってやる。あと、案外お前の知り合いで何か知ってる奴がいるかもしれんぞ?」間接的な物が多いが、人脈の広さという面では俺は大陸有数のハンターだと自負している。
何せ王立古生物書士隊のメンバーに数多のハンターを指導した名ガンナー、そして数々の凄腕ハンターが知り合いにいるのだ。加えて、貴族や商人とのパイプも先日手に入れた。
彼の言葉通りそれら伝手をうまく探れば、何かしらの情報は見つかるかもしれない。
明後日までの期間で何かを探れるかは分からないが、とにかく賭けてみるしかないだろうということは自覚している。待て待て待て待て待て、Wait!
ビショップビショップと言っているが、肝心のボルボロスの情報もどうにか聞いておきたい。
ビショップの大体はとりあえずエドワードに任せよう。自分はボルボロス、あるいは謎のモンスターの噂を聞き集めるべきだろうに。
あくまでもそのついで程度にはビショップの話も聞いておきたいのだが。【選択】ボルボロスや謎のモンスター、ビショップに関する情報を探るために、話を聞く人を見繕ってみよう。
同行するハンターには聞くのでレイカとエド、あとはどうせ聞くのでアマネと自分のオトモ以外で1人。
もちろん、仲間のハンター「以外」の人も指定できます。
仲間のハンター以外で指定できる主な選択肢は以下の通り。これ以外(例えば龍歴院の重鎮野郎とか、モブハンターとか)は要相談です。
・ギルドマネージャー
・ハーグ(主席研究員)
・マリー(雑貨屋店主)
・ミラルパ(大商人)
・ラング兄弟(狩人マシューとクレモント、セットで1人分)
・その他ベルナ村の住民等(便宜上【受付嬢と村長】【武具屋系メンバーと村人】【オトモ広場の面々】のどれかで1カウント) -
280
名前:名無しさん
投稿日:2018-05-08 22:45
ID:D1B514EI
[編集]
主人公弓ってまだ実戦で使うの2回目くらいよね?
ここはミーシャせんせー探して対ボルボロスの立ち回りと弱点でも教わっときましょ -
281
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-09 20:13
ID:B8nXzJ4E
[編集]
ビショップと会った翌日。
昨晩の内に雑誌や資料を漁って、ボルボロスについて簡単に知識を仕入れておいた。
戦うには不十分だが、戦い方を聞くには十分な情報を頭に叩き込めただろうか。砂漠地帯に生息する獣竜種の一種。乾燥から身を守るために泥を纏い、食事や外敵の襲来時以外は泥沼に潜んでいる。
戦闘においては泥を撒き散らして外敵の動きを阻害し、硬い頭殻を使った突進で攻撃する。泥が付着した場合は消散剤が有効。とりあえず、簡単なところではこんなものだ。
武器に関しては、ミーシャの弓の強化版であるネルスルペレザを持ち出してみよう。相性がいいとか悪いとかは全く分からないが。
防具は困った時のバルク装備。今のところ、一番硬い防具と言っても過言ではない。そんなこんなで、とりあえずある理由からまずはレイカを呼びたいところだ。この理由なら、本当はツバメでも良いのだが。
あと1人は決めあぐねているが、とりあえず暇なやつを誘えば良い。
といった感じだが、龍歴院前の集会所では笑わざるを得ない光景が繰り広げられていた。
真ん中にいるのは……タクミ。その周りではエリザベート、ツバメ、ミーシャが論争を繰り広げる。「だーかーら!こいつにはアタシのリオレイア狩猟に付き合ってもらう!」
「何を言うか!此奴はワシのガノトトスとの一戦に不可欠な狩人じゃ!ここは譲れん!」
「そんなこと言ってるなら、私のフルフルのクエストに連れて行きますよー。」「ちょっと待て、待ってくれって全く……一体なんなんだこれは……」
なんかやけに屈強な火竜の装備になっているタクミ。久しぶりに一緒に、と思ったが既に謎の熱烈ラブコールを一挙3人から受けている。
声をかけているメンバーは俺と共にホーンズからクエストが与えられた、バルファルク討伐作戦(第1回、第2回)の討伐隊員だ。
憐れみと羨ましさが入り混じる感情でそれを眺めていたが、結局その集まりは一気に霧散することに。「なんなら坊主、俺のヴォルガノスに付いて来い。その装備の真価を発揮できる良い相手だぞ?」
「ええと、じゃあそれで……」ホーンズから依頼を受けたハンター最後の刺客、アンキセスに全てを持っていかれた。
のちに聞いた話だが、紆余曲折を経て彼が手に入れたEXレウスS装備には、熱地での戦闘に適した構造が取り入れられているらしい。
そういう事情で、装備に適したクエストを選んだに過ぎないのだろう。
大剣も、いつの間にゴーレムブレイドがジークムントになっている。一体どういう紆余曲折とやらがあったんだか。「ああ、お爺ちゃん……そこは空気読んでくださいよ……」
ミーシャから零れた呟きは虚空に霧散していった。その虚しさから、乾いた笑いと共に珍しく涙が出ていたことには誰も気づいていない。
彼女にはあとで弓の扱いについて色々聞いて、しばらく離れていた感覚を取り戻したいところだ。
それはさておき、クエストに呼びたいレイカを探す。そういえばアマネは先の事件のあとは色々悩んでいたし、顔を見せておきたい節もある。「おー、久しぶり。アマネなら向こうに篭ってるよ。何でも、今の内から事件について本を書いておくとかなんとか言っちゃって……」
今はミソラ夫婦が共同使用している準備エリアに単身乗り込む。出迎えたのはレイカだけで、彼女の言う通りアマネは天幕の向こう。
裏から「おー」とか「よう」とか、彼が挨拶してるような声は聞こえているから少なくとも生きてはいるだろう。
とりあえず先ずはレイカをボルボロスの狩猟に誘ってみると、快く承諾。
単にボルボロスの狩猟は協力してくれるとのことだが、特殊な状況下でも同様だろうか。
彼女に、あるいはアマネも呼んで状況を説明しておくことにする。「謎のモンスター……よもや、もしかしたらという範囲だが、何らかの二つ名を持った個体か?」
アマネが最初に放った言葉であった。 -
282
名前:時雨
投稿日:2018-05-09 20:45
ID:gX20EMvk
[編集]
>謎の熱烈ラブコールを一挙3人から受けている。
三人とも女性だし、軽いハーレムじゃないかタクミくん()で、王族や貴族からの指名依頼ってところで一つシナリオが思いついた。
やるのは、エリザベート掘り下げシナリオやってからになるけど。 -
283
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-09 20:55
ID:B8nXzJ4E
[編集]
アマネは二つ名を持つ個体の脅威について淡々と説明していった。
砂漠地帯で見かけるとなると、確認されている限りではリオレイアやティガレックス、ダイミョウザザミ、ディノバルドのいずれかとのこと。
二つ名を持つ個体の数が少ないことからその生態が共有されておらず、一部では定義付けがされていても別の場所では謎のモンスター扱いになっている場合があるらしい。「痕跡の特徴が分かればある程度絞り込めるんだけどなぁ……何でそこまで情報がないんだか。」
そもそも砂漠で危険なモンスターといえば、先に挙げたような連中に加えて、角竜ディアブロスや金獅子ラージャンがいる。地底湖に巣食う水竜ガノトトスは、まあ考慮しなくて良いだろう。
そもそもの新種ならかなり厄介だが、既存種の特殊な個体でもそれはそれで面倒な存在だ。「あー!そんな面倒事、放っておけば良いでしょ!ボルボロス倒して終わり、帰る!それで十分よ。」
ああ……うん、これは確かにレイカのいう通りだ。
調査は調査の専門家に任せれば良い。そのために龍識船があるわけであって、それを助けるハンターがいる。
無論俺も龍識船の任務を受けることはやぶさかではないが、だとしても今は関係ないだろうに。
これは余計な失策だった。
まずはメインターゲットであるボルボロス戦の作戦会議から始めよう。「あたしに声をかけたのは、やっぱり鈍器が欲しかったからね?でも、それならあなたも使えるじゃない。
そもそも弓って……うろ覚えだけどボルボロスとは相性よくない方じゃなくって?」
「ああ、そうだっけか?まあでも、多分ガンナー全般は腕がないと分が悪いだろうよ。エドのおっさんもそこは分かってると思うぜ。」予習のおかげで、彼らの言いたいことにおおよその心当たりがある。
頭殻をはじめ、奴の体は全体的に硬い。弾丸や矢では動き回る奴の弱点を狙えず有効打になりにくい、故に何か策を考えろという話だろう。
エドワードなら……アルバレストなら、例えば徹甲榴弾や毒弾を攻め手として用いればその辺りの弱点をカバーできる。
あとは泥を剥がした甲殻に火炎弾を撃ち込むとか、いっそ罠や閃光玉を使うサポートに回ったり……
ならば俺も、搦め手を生かしていくしかない。弓といえば、ビンだ。強撃ビン以外の、毒や睡眠といったものを活用していくべきか。
そう考えると、かなり狡猾な狩猟を繰り広げることになる。力押しも少なくないこれまでからすればガラリと変わるわけだ。
卑怯者と罵られようと構わない。逆に、ある物を全て費やして全力で挑むこともまた自然への敬意の一つなのかもしれない。
いや、倫理面は現状そんなに気にする必要がない。戦術を定めたならそれでいいだろう。
よし、彼らの話はこの辺りまでで結構。あとは……弓について、「彼女」に色々聞いてみたい。
最後に、ビショップの名を彼らが知っているかだけ確認しよう。「チャールズ……あたしは知らないな。一緒に狩りに行くハンターは大体アマネが紹介してくれてたし。」
「俺も特に聞いたことない。というより、ギルドに関係あるから情報統制でもされてるんじゃないか?」2人からは特に収穫なし、残念。確かに情報統制の説はあり得ないでは無いが、彼自身自由に狩猟していることを考えれば束縛は受けていないのでは?
などと考えが増えたが、兎にも角にも時間は有限。「クエストの時は、レイカのこと頼んだぞ。守ってくれというか、止めてくれというか……」
「アマネ、あたしが信用できないってのかい?おばさん、っていうかお義母さんにそれ言ったらどれだけ悲しむかしら。」ああ、こりゃまた惚気だ。
大タル爆弾Gを使いたかったが、クエストで使う分をなくしては困る。
奥歯が爆発しそうな表情のまま、その場を後にした。──────────────────────────────────────
ブレイヴ弓の経験がなかったことで学習中なのと、歴戦イビルとDMCの期限が近かったので停滞中……少しだけ、お待ちください -
284
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-15 23:56
ID:B8nXzJ4E
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久しぶりに弓を握るにあたり、その道の先輩に話を聞いておきたい。弓をメインに扱う仲間といえば……今のところは1人だけ。
ミーシャ・アルティム。
近年は白髪鬼という忌むべき異名の他にも色々と二つ名を持つらしいが、いまいちどれも大衆に知れ渡ることがない。
そんな哀れな弓兵に教えを請うことで、実戦での感覚を取り戻したいのである。昼食を済ませ、彼女の準備エリアに乗り込むと──「……私じゃなかったら、人を呼んでるところですよ?」
無神経に他人の生活スペース──しかも女性のそれに立ち入ったことは不覚だった。これだからスケベハンターと呼ばれるのだ。
──しかもまた着替え中であったことは不幸だったとしか言いようがない──
誤って見てしまったことが前にもあるのだが、とにかくその柔肌を振り払い本題を切り出す。
弓の扱いの感覚を取り戻すために、色々話を聞かせてほしい。大体そんなところだろうか。
しかし彼女の表情が、肌を見られた時以上に苦い物になるとは想像しなかった。明日に向け緊張している脳が違和感に気付かず、さらに言葉を紡がせてしまう。
ボルボロス戦でどこを狙えばいいのか、何に気をつければいいのか、弓兵ならどう戦うか。
そこでいよいよ言の火は火薬に燃え移った。「そもそも、それを私に聞くのは間違ってるのでは?
私は基本的に弓で戦ってきた人間ですから、感覚を取り戻すも何も既に染み付いているんです。握り直せばまた戦えます。
あなたはどうですか?それが出来ないなら他の武器を使ったほうがいいし、あるいはまた一から訓練し直した方がマシですよ。
私が技術を教えたところで、あなたがそれを【あなたの物】とする覚悟がないなら何を教えても無駄ですから。」……返す言葉もなかった。正論だ、事実でしかない。
己の感覚は、もちろん己の脳しかそれを知らない。正直、どうすれば勝てるかを無心した自分を殴りたい。「でも、ボルボロスに関する知識なら教えられます。
……当然それをどう生かすかはあなた次第ですけど、無駄にするなら色々有る事無い事全部ギルドに話しますからね?」一度は安心しても、再び息を飲む自分。
そうだ、ビショップの話やタクミの一件で聞いたように、彼女にもフルフル狩猟という依頼がある。
その準備があるのだから、本当はこちらに構っている余裕はないはずだ。
それをわざわざ時間を割いてくれる。手短に切り上げるよう心掛けるのと、彼女の根の優しさに感謝せねば。
そして聞いた話は最大限に活用する。そうでなければ、彼女の信頼を裏切ることになる。
メンバー、場所など一通りの情報を提供すると、僅かな間の後に彼女が言葉を射った。「えーと、まずボルボロスについては多少なりとも知ってますよね?
特に弱いと言われてるのが前脚と尻尾ですけど、相手がよく動くから狙いにくくて、そのせいで素人ガンナーが苦戦しがちです。
レイカさん、確かガララアジャラの狩猟笛を持っているはずですからそれで麻痺をさせるのがまずは手堅いですかねー。
あとレイカさんとエドワードさんと…ビショップさん、でしたっけ?その人とで上手く眩暈を狙えばいいかと。
さらに睡眠ビンと爆弾を合わせる、罠や閃光玉を活用する……多少卑怯でも良ければ、ある物を全て使うだけで勝てるはずです。
泥に気を付けてさえいれば、ですけどね。狡猾なのになると背後にすら泥を飛ばすらしいですよ?」ミーシャの知識面というのも、彼女の視力と同等に優秀だ。単に量が多いというよりも、応用が出来る点が評価に値するのだろう。
今回は比較的容易に戦術が組めるメンバー構成とはいえ、軽く状況を説明しただけで戦闘プランを組み上げるとは。しかも速い。「あとは状況に上手く合わせるしかないです。別のモンスターが来ても責任は取れませんからねー。」
そこまでは流石に期待していない。いくら彼女の勘がよく当たるとはいえ、何が起こるかは分かるわけがないのだ。
最後に一応ビショップの名を知らないかだけは尋ねておく。「ああ、ライカさんがそんな名前の人と狩りに行ったって前に聞いた気がしますけど、私は知りませんねー。
それじゃもう陽も落ちますし、早めに帰った方がいいですよ。」かつてミーシャが、個人的に吐露した言葉を思い出す。
信じている、だったか。
斜陽が放つノスタルジーにあてられて、ついそんな追想に耽ってしまう。しかし彼女が求めた答えを出すことはまだ適わないだろう。
見送るミーシャを振り返ると、そこには勇敢な弓兵ではない一人の乙女がいた。
どこか寂しそうな表情が胸に刺さる。心が叫びを上げんとするが、今は噛み潰すしか出来なかった。 -
285
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-16 00:02
ID:B8nXzJ4E
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夕食の前、その感覚を思い出すために弓を手に取った。何やらひんやりとしたネルスルペレザの質感に戸惑いつつも、染み込んだ記憶が逆流して来る。
だがそれは全て自分のものであってはいけない。少なからず、ミーシャのものを交えなければならないところがまた難しい。
でなければ、あの【勇気】を体現することはできないのだから。
ここが実戦でない故に実践することはできないが、一時ミーシャに教わった感覚と合わせてその構えと型を整えていく。
放牧場の一角を借りて実際に引いた弓はしれっと手指に馴染んだものの、残ったのはどこか情けないズレや違和感であった。夕食の後にはコーヒー豆の差し入れと共にバリスタエドが来訪。コーヒーの淹れ方は詳しくないから、飲む時はシルビアにやってもらおう。
要件は分かっている。ビショップの情報だ。「チャールズ・ビショップ。あいつは実力はともかく、経歴が謎に包まれていた。って、なんとなく分かってたか?
デイビーから──知り合いのハンマー使いなんだが、そいつの話によるといろんな噂が錯綜しているらしいんだ。
ある者は、彼は極悪犯罪人でハンターとして終身契約することで恩赦を受けたと言ってるらしい。
またある者は、東西シュレイドの小競り合いにも参戦した、優れた戦術眼を持つ軍人だったとか言う。
また一方ではハンターとしての素質を買われて新大陸古龍調査団に参加していたが、何らかの事情で帰ってきたとも言われている。
とにかく、記録上のハンター歴はおおよそ10年近く。分かる限りの経歴としては、20代に空白があるのが特徴だ。
実力の方は確固たる評価がある。相手の動きを読むことに長けていて、ついた二つ名が【後の先見切る騎士】とか。
単に後の先のビショップと呼ばれることも多いらしいな。とりあえず、こんなところだろう。」なんじゃそりゃ。まるで小説や劇の主人公やキーパーソンのような経歴が並んでいる。はっきり言って、にわかには信じられない。
いわゆるメアリー・スーというやつなのだろうか。それは目の前のエドワードとて似たようなものではあるが、レベルが違いすぎる。「嘘っぱち並べてこのおっさんは何言ってんだ、と思われても仕方ないレベルの話だが、しかしこれらは全て『あり得る話』ではある。
例えば犯罪人がハンターとして生きることで恩赦を受ける例は多くもないが無いわけでもないし、
仕事のなくなった兵隊が、持ち前の身体能力を生かしてハンターとして活躍する事例も存在している。
新大陸の調査団にしても連絡船を交わすことがあって、一部のメンバーはそれに乗って帰還しているとも聞いたことはある。
とはいえそれらの例もごく少数だ。今現在では信用できる情報はありそうにないな。あくまで噂程度でしかないことを忘れるなよ。
じゃあ、とりあえずはまた明日だな。寝坊するなよ!」かくして、バリスタエドとの短い対談は終わった。もう少しすれば丸を象った月が頂点に達する刻。明日の出発も遅くはない。雑念を捨てて、体を休ませなければ。
前の任務以来しばらく休んでただろうに!とツッコミを入れたい気分にはなったが、くだらないことで気分を高揚させては余計に悪影響。とりあえず今日は、布団に沈むことにした。
──────────────────────────────────────
金曜日から今日までがやたら忙しかったのでかなり遅れました、申し訳ありませぬ
万が一継続困難になったら早めに言うので適当に切り上げてくれればと思います(無論そうならないよう尽力しますが) -
286
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-16 00:37
ID:B8nXzJ4E
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【チャールズ・ビショップ】
・年齢:40代前半 ・性別:男 ・装備:サリーレローグ限界突破済、防具は下記
・概要
イレーネに付き従う形で現れたハンター。
年上ながら非常に丁寧で謙虚な態度。
いい人ではあるのだが、それ故に印象に残りにくかったり、何か逆に闇が深そうだったりする。
武器はいろんなものを扱うらしいが、今は盾斧を練習しているとか。
彼の経歴は非常に謎。極悪犯罪人だったとか、軍の兵士だったとか、新大陸の調査団から戻ってきたとか、色々噂されている。
相手の動きを見極める力に長けており、付いた異名は【後の先見切る騎士】。名の通り、相手の攻めを見切って手堅く戦うのが特徴。
何らかの理由で兜を外さないようだが、その理由は謎に包まれている。
防具は頭と足がハイメタU、それ以外がガーディアンU。スキルは護石込みでガード性能+2、砲術師、高級耳栓。
その見た目は>>270末尾のURLを見て、どうぞ。【イレーネ・シルヴィス】
・年齢:20代後半 ・性別:女 ・装備:ニンジャソード、ギルドガード紅一式
・概要
あなたの前に現れた現役のギルドナイトの一人。ミナガルデギルド所属で、大陸のナイトの中では新人の方。
とはいえ期間は短いながら優秀なハンターであったため、その威厳は歴戦の騎士にも劣っていない。
真面目で権力を用いて威張るようなこともないが、ギルドナイト相応の闇の深さというか、黒さは抱えている。
その美貌は羽帽子の影になることが多い。かと言って、無理矢理見ようとすればお縄を頂戴するのは間違いないだろう。
現在は前線を退き、フィールドに赴くのはせいぜい環境調査程度にとどまっている。
とは言いつつも小型のモンスター程度ならスパスパと斬り伏せ、ドス個体程度なら苦戦せずに撃退するくらいには腕前は衰えていない。【今回のクエストについて】
メインターゲットはボルボロス、追加依頼は正体不明モンスターの調査です。
寄り道することは可能ですが、あまり時間を使うと何が起こるか分からないので時間はかけすぎないように。
ビショップは作戦にこそ従いますが、自発的な意見具申はないものと考えてどうぞ。(=彼の策に頼ることは出来ません)
場所は砂漠、ランダムスタート込みでのクエスト開始となります。御武運を。それでは
【選択】あなたが降り立ったエリアはどこのエリアだった?そして仲間とはどこで合流する?
スタート地点と仲間との合流地点を砂漠のエリア10個+BCの中から選択してください。自分がいた場所で、というのは不可能です。
なお、各ハンターはおおよそ最短ルートでそこに向かうものとし、1エリアの移動にかかる時間は距離の長短関係なく同じとします。
(例:エリア8→9→5とエリア2→1→5は移動距離が大分異なりますが、所要時間は同じで同時にエリア5に入場します) -
287
名前:名無しさん
投稿日:2018-05-16 17:36
ID:CkTjoryc
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む、なかなか難しい選択ぞね
じゃあ自分のスタート位置はエリア1にしてボルボロスと鉢合わせしたれ(無慈悲)
んで集合場所は安全なBCが無難なところかな(慈悲) -
288
名前:名無しさん
投稿日:2018-05-19 19:35
ID:aW2Ow2gg
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そういえば3日ルールってどうなった?
今は全盛期に比べて人が減ってるし、今回は蟹氏が遅れる宣言してるのもあるけど…… -
289
名前:時雨
投稿日:2018-05-19 21:21
ID:gX20EMvk
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>>288
あって無いようなものになってるしなぁ…。
無くした方がいいのかなぁ。なんとなーく、なんとなーくビショップさんの正体掴めたような気がする、気がするだけだけど。
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290
名前:名無しさん
投稿日:2018-05-20 06:25
ID:r9G/sj0k
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ヒャア がまんできねぇ 超高出力だ!(全員吹っ飛び)
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291
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-21 21:23
ID:Hj1ub4oY
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かくして俺たちは、いや「俺」は龍歴院を発ち中継地点レクサーラを経由して、新たなる狩猟地「セクメーア」に降り立つべくネコタクで移動している。ネコタクは隠密性と移動効率を最大限に生かす為に単独運用が常である他、非戦闘員であるアイルーの安全確保が重視されている。
──要するに「アイルーが危険だと感じたらその場でハンターを投下して離脱していい」というわけである。
一応、狩猟区までは確実に運搬するよう契約に規定されているから見ず知らずの土地に放り出されることは基本ないのだが……
念の為キャンプでとオーダーした行き先も、正確に果たされるかは全くをもって分からない。だからこそ安上がりではあるが。
あと、一番安定が取りやすいとかで乗客は丸まった状態で乗っかっていなければいけない。
これが一番の厄介者で、姿勢を工夫しないと揺れなどの影響でろくに周辺確認が出来ないのだ。
さらにはネコタク従業員の多くは人語が通じないことが多かったりするため、行き先の完全なコントロールが不可能となっている。突然、グワッと荷台が持ち上がった。うずくまっていた俺は呆気なく地面を転がる。地面が砂だから真面目にそれはやめて欲しいのだが……
さて、ここはどこだ。と言う前に暑い!熱い!ポーチを漁って、急いでクーラードリンクを喉に流し込む。まずベースキャンプでないことは明らかだ。
手がかりになるものは、あった、オアシス。砂漠には貴重な水場がある。暑くて水場がある……まさか。振り向いてみれば、そこには泥沼──わずかに見える、沈んだ甲殻を添えて。
あー……これはどうしたものか。ペイントボールを当ててさっさと逃げるか、気づかれないよう早々に退散するか。
下手に刺激して戦闘になったら逃げるのは面倒だし、かといって放置すれば行方を見失うかもしれない。
──出発する前、散らばった仲間達に命じたのは「まずはキャンプに集合」。万が一困難な状況に陥ったら信号弾を撃ち上げるようにも伝えてある。
そうも思案しているうちに、こちらを呼ぶ声が聞こえた。ここからキャンプ方面を向いた時の後ろ──エリア5の方面から、レイカの声である。
彼女はすぐにボルボロスを発見するなり、その吐息に闘志を混ぜて話した。「あら……見逃すのも癪だし、キャンプに行く前にここで一発叩いておきたいところだけど、どうする?」
ここは……もしレイカの後ろにエドワードかビショップが続いて来るなら、警戒態勢に入った奴の目に止まって戦闘に突入するだろう。
あるいは俺たちが攻撃即反転で逃げたとしても、気が立って追いかけて来るかもしれない。
そもそも個人的にはマーキングが出来れば十分なのだが、まあマーキングだけよりは何か一発くらいは嫌がらせをしてやりたいのは事実だ。
なるほど面白い、一発かましてやれ。「分かったわ。あー、こういうのでアマネは尻込みしがちだから助かるわね。その点ではあなた、好きよ。」
え?
……ん、ああ。そういうことだよな。無理に制止しない分アマネと組むよりやりやすい面もある、ということだ。間違っても間違うな。
あの書士隊員、比較的温厚そうだが怒らせたらどうなることやら……
兎に角、レイカが一撃当ててボルボロスが出てきたら俺がペイントボールでマーキング。あとは全力でベースキャンプまで逃走だ。
タイミングを合わせるため、カウントダウンを始める。そういえば、アマネのカウントダウンと共に彼女は滑り込んできたっけ。6…5…4…3…2…1…
「でぇりゃあああぁぁぁッ!」
大きく振りかぶったレイカが、デンジャラスハールを重力に従わせる。物理法則と腕力が生み出す一撃が、泥沼の潜伏者に鈍く当たった。
──────────────────────────────────────
この通り、大変遅れてしまいました、申し訳ねぇ。
これから先、もし私が進行権譲渡しますと言わなくても、我慢できなくなった人がいたら無理矢理引き継いでもどうぞ。 -
292
名前:泥も乾く戦慄@蟹
投稿日:2018-05-24 22:40
ID:B8nXzJ4E
[編集]
レイカの一撃に反応し、ボルボロスが姿を現した。
陽光の熱さと乾いた空気は泥で遮り、近寄る外敵は泥で縛る。泥の権化と言うべき相手との戦闘が……始まらない。
その泥と肉体に匂いをこびりつける。ペイントボールの強い匂いが奴をマーキング。この匂いを辿れば、行方を見失うことはないだろう。
そして、次の瞬間には反転、逃走。さっさと逃げるに限る!戦うのは後でいいのだ。今は早くベースキャンプで合流したい。「追えるなら追ってきてみなさいよ!この頭でっかち!」
レイカは逃げながら挑発しているが、ボルボロスに言葉は通じない。つまりは無駄だ。しかしこれは彼女の精神が高揚している証拠。
しっかり制動しないと後々大変なことになりそうなのは否めない。アマネの苦労が何と無く分かった。
とは言え現時点で彼女は冷静であり、さっさと戦おうとか言わなかっただけまだマシである。
ボルボロスもすぐに反転した俺たちを追撃することはなく、ただ眺めるに留まった。「あれは……なるほど、面白い。」
──────────────────────────────────────
エリア2も抜けてベースキャンプにたどり着くと、先客としてエドワードが陣取っていた。
見れば、レッドではないアルバレストに、これまた意外だがシールドを装着している。ヘビィボウガンでシールドを使うのは珍しい。「泥が身体にかからないように付けてるだけさ。それよりお前たちはあの泥を避けられるのか?」
そういえばそれもそうだった。泥に絡め取られたら、消散剤か外部からの衝撃で泥を剥がす他ない。
もし消散剤が尽き、味方の援護も頼れない状況に陥ったら……砕かれるのは泥ではなく俺たちの身体だろう。
ミーシャが言ってた中には、より狡猾に泥を扱う個体がいるとの情報も。もしアイツがそれならば、余計に厄介だ。「ああ、そうそう。そんなことよりお前たちに……信号弾だ。ビショップだろう。」
エドワードが何かを言いかけた瞬間に、彼は信号弾をその眼で捉える。
俺たちも言葉につられて空を見上げ、青色の信号弾を視認。青色はビショップの識別色だ。間違いなく彼である。
方角的にエリア1だから、後から来てボルボロスに捕まったか?よもや未確認モンスターと遭遇した、とは考えたくない。「ちょっと待ちなさい。あなた、作戦決めるためにここに集めたのに、それもしないで行くというの?」
いかん、忘れていた。飛行船やレクサーラにおいては皆書類仕事が忙しく、ろくに話し合う暇もなかった。
だからキャンプで作戦会議といこうとしたのに、ビショップめ。ボルボロスくらいなら撒けるはずでは?
あるいはまさか、俺たちを試すために敢えて戦闘を始めたか。そうすると彼が言った駒になるという約束は嘘になってしまう。
──いいやそんなことは今どうでもいい。とにかくこの3人だけにでも俺の立案した作戦を伝えなければ。【選択】ここから先の基本戦略を考えましょう。
1.ミーシャが言った状態異常の活用戦法を主体に置く
2.その他(自由枠) -
293
名前:千壱
投稿日:2018-05-24 23:45
ID:9HmB38Tg
[編集]
待ってました
では選択肢は素直に1で。ボルボロスは状態異常に対して厄介な特性もないですし。
あと、できればレイカさんにだるま無効旋律を吹いてもらえると楽になるかな〜と。戦闘狂モードに入るとどうなるか分かりませんが…… -
294
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-01 23:28
ID:gX20EMvk
[編集]
蟹氏のシナリオの構成が分からんので番外編でも…。
いつも通りの駄文ですが御付き合い下さいませ。注意
・ブラサクツバたん回
・新キャラ二人(内一人ゲストでやべーいやつ)
・※蟹氏シナリオの引き継ぎ先は>>343へ飛んでください~シナリオ46 砂漠よりも熱い戦い~
唐突かもしれないが大地と緑が広がり、風が吹き、火山が滾るこの大自然では唐突な出来事など幾らでもあり些細なことだ。
そんな些細なことですら人間にとっては時に脅威ではあるし、大自然は時に生物という形で牙を向くことだってある。
人が暮らす場所ならどこでも言えることで、ココット村やポッケ村にユクモ村、そしてこのベルナ村にもいえることである。───何が言いたいかといえば、周辺で上位の個体よりも屈強かつ狡猾な個体、『G級個体』の存在が確認されたのである。
ギルドの調査によると砂漠の土砂竜を始め、龍歴院にて確認・研究されたモンスター達のG級個体と思われるが各地に点在しているという。
いずれも長年生き延び新たな力を得た末にG級の世界へ突入しており、飽くまで目撃情報だけで詳しい調査結果は明らかになっていないが、いずれにしてもG級ハンターの助けが必要になるだろう。だがそんな中で一つ、大きな問題があった。
それは現在、各地にに滞在しているG級ハンターでは数が足りないのが現状だという事だ。
もし上位相当の雪獅子の狩猟依頼にG級相当の雪獅子が紛れ込んでいたら?大惨事は免れないだろう。
そこで龍歴院はドンドルマギルドにG級ハンター、或いはG級になりうる資格をもつハンター達を各地に派遣し配備するよう申請。
申請が通ると、ドンドルマから各地にG級ハンターが送り出された。当然ベルナ村にも、だ。───これはそのドンドルマから送り出されてきたハンター達、その一人が巻き起こした事件である。
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295
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-02 20:05
ID:gX20EMvk
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「───ふふっ、成程ね。 つまりツバメはタクマ君に振られたって訳ね。」
「別に振られた訳ではないわ。 うぅむアンキセス殿め、こうなったらブランシュ! ワシのガノトトスの狩猟を手伝え!」
「いいわよ。 丁度暇を持て余していたところだもの。」そんな会話をしているのは龍歴院前の集会場そのテーブルに陣取ったブランシュとツバメの二人の女性、…ではなく二人の男女だ。
基本的に男所帯のハンター生活の中で、このテーブルには誰もが振り返るような美女が二人(正確には美女一人と美女っぽい男一人)もいるのでかなり目立ってしまう。
自然と皆の視線が集まる中、二人はその視線も関係なしに話を続けている。「しかしあれじゃな、G級ともなるとモンスターも一筋縄ではいかん奴らばかりじゃなぁ。」
「そうね、今までよりも強力なモンスターばかりだし私も気を抜いたらやられちゃうかもね。」
「……その装備でよくそんなことをほざきよるな、お主。」呆れ返るツバメに対して、「そうかしら。」と力強いポニーテールを揺らしながらおかしそうに笑うブランシュ。
その装備は氷盤のような美しさをもつ純白な甲殻をもつ氷牙竜のもので間違いはない。
しかしその見た目はツバメが不服ながらも所持しているベリオシリーズとは違い、ベリオロスの二つ名である『零下の白騎士』を体現したような見た目になっており、騎士の甲冑のようなフォーマルなデザインに仕上がっている。
ベリオXシリーズ───G級の氷牙竜の素材を使用することによって作られるその装備を身につけるブランシュのその姿は、二つ名の白雪姫というより騎士姫というに相応しいか。「ブランシュ、お主とサクラのその適応力には毎度の事ながら感心するぞ。 よくもまぁG級個体を簡単に狩れるものじゃな。」
「そうかしらね、G級個体の装備なら貴方も着ているじゃないの。 」
「所詮ランポスX、ドスランポスの装備じゃ。 ベリオロスと比較すれば見劣りするもんじゃて。」G級のドスランポスの皮や鱗を金属板でつないでできているランポスXは同じ銘を持つ防具と比べれば最も性能の高い防具だが、飛竜や大型モンスターの防具に比べればその性能は格段に下回る。
それでも通常の上級飛竜の防具にも引けをとらない性能を有しているのは確かではあるが。
そんな互いの防具の話をしている二人に対して一人の男が話しかけてくる。「あぁ、そこのお二人さんちょっと一緒にお茶でもいいかい?」
その聞き飽きたセリフに二人は思わずため息をつく。先程も装備が下級か中級ぐらいの己の力量を理解していない愚かな連中にこのように絡まれたが二人の(主にブランシュの)口撃によって轟沈したばかりである。
あまりにもありがちな絡み方だと思いながら振り返れば、そこにはガンナー用のフルフルの装備を身につけている懐かしい顔の男性がいた。「折角ここで会ったのも何かの縁だし、お二人がよければお茶のついでに一緒に狩猟でも……って、げっ。」
「むぅ? お主、クリスではないか?」
「あらホント、リコリスじゃないのよ。 久しぶりじゃない。」
「リコリスじゃなくてクリスなッ!? いい加減名前を覚えやがれッ!」クリスと呼ばれた男性はそう言いながらブランシュの額にデコピンをし、「あいたっ」とブランシュは声を上げる。ツバメはそれを見て小さく苦笑していた。
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296
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-02 21:37
ID:gX20EMvk
[編集]
しばらく文章が続きます。選択肢までお待ち下さいませ。
~~~~~
彼の名前は『クリス・レイヴン』。ブランシュ達が訓練生時代共に組んでいたチームメイトである。
根っからのドンドルマ育ちであるため、訓練所卒業後はドンドルマでハンター業を続けていたとブランシュとツバメは聞いていたが…。「よくドンドルマから出てくる気になったわね。貴方なら一生あそこに籠るだろうと思ってたのに。」
「ギルドの連中にあそこまで無理言われちゃあなぁ、俺みたいなG級に入りたての三流ハンターでも行かなきゃいけないようになるってもんさ。」
「お主のような正確無比の安定した射撃が得意なハンターが三流とは言わぬよ。」
「褒めてもなーんも出ないぞ? まぁ、俺みたいなのが出せるものは本当に何にもないんだがな。」
「全く、ニヒリストなところは変わらないわね貴方。」悪びれた様子もなく楽しそうに笑うクリス。ブランシュとツバメもそんな彼を見て小さく苦笑いしていた。
「そういやサクラはどうしたよ? お前達また一緒に組んでるんだろ?」
クリスが思い出したように訊いて来る。それに対してツバメは「そういえば」と言いながら周りを見渡していた。
「今日はまだ出会っておらぬな。 というより最近は顔を見る事が少なくなっておる。」
「そうね、一体何処に行ったのかしら…?」ブランシュがそう呟いたその時、に全身を漆黒の鎧で纏った女性背後をちらちらと気にしながらやって来ると、クリスを見つけその後ろに隠れ、移動する。
クリスは気付いているが、振り返ることが出来ず、代わりにブランシュが訊ねていた。「あらサクラじゃない、どうしたのよそんなに焦って。」
「しーっ!二人共、あとりっくん、気付かないフリして…それと私を匿って!!」
「……なんだかワケありみたいだな。」
「じゃのう。」ナルガXシリーズを身につけたサクラの異常に気付いた三人は、空気を読んでか立ち上がって彼女を素直に匿う。
すると前方から「マイプリンセース!」と叫ぶ男性の姿。
どうやら彼に追われているのかと判断した三人はサクラを隠すように集会場に建つ柱の方に寄り、ツバメの誘導でサクラは柱にくっつくように下がる。
最終的には身長の高いクリスとブランシュが二方向を塞ぎ、残りの一方向をツバメにフォローさせることで、その場をやり過ごしていた。「マイプリンセス! 何処だー!? 私はこんなにも恋焦がれているというのに…、マイプリンセース!」
「……行ったみたい、だな。」男性が走り去り、ブランシュ達はほっと一息つきながらサクラから離れる。
サクラは助けてくれたクリス達に、何度も頭を下げていた。「ありがとう、三人共本当にありがとう……!! あとりっくんも久しぶりなのに迷惑掛けてごめんね……!」
「いや、別にいいんだが…。」
「あれは一体何かしら? サクラ、教えて頂戴。」ブランシュの質問に、多少困りながらも…
助けてくれた三人に説明しないのも悪いと思ったか、サクラは説明を始めていた。 -
297
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-03 22:27
ID:gX20EMvk
[編集]
それは、一週間ほど前のこと…
サクラが集会場を歩いていると、偶然、目の前で歩いていた男性がハンカチを落とすのを見ていた。
最初は気軽に、「落としましたよ」と声を掛けてそのまま去る予定だったサクラ。
だが…、ハンカチを落とした男性と言うのが、サクラを追っていた彼なのだという。
男性はハンカチを拾ってくれたサクラを見た瞬間、ハイテンションな様子でこう言ってきた。『おお…君こそ、俺のマイプリンセス!』
『え、えぇ?』
『お名前は、住所は、誕生日は、好きな食べ物は、それから…俺と結婚してくれないか!』
『な…なんなの!? とにかく、ハンカチ渡したんで…!』
『ああ、そんなそっけない所も素敵だ…マイプリンセス! マイプリンセスー!!』それからというもの、彼はほぼ毎日のようにサクラに付き纏っていた。
周囲のハンターから名前を聞き出したり、彼女がよくいる場所や狩猟帰りによる場所などをチェックして、いつもそこで張り込んでいる始末。
一度男性を呼び出して「もう付き纏わないで」と言い放つが、彼の返しは…『おお、これが噂のツンデレか…そんなに素直にならないフリをしなくとも、私に素直な君を見せてくれ…マイプリンセス・サクラ!』
その話を聞いたブランシュやツバメ、クリスは…
───完全にサクラのほうに同情してしまっていた。
いくらなんでも、順序を色々とすっ飛ばして「結婚してくれ」はともかく…という問題でもないのだが。
行動自体は殆どストーカーに近い、というかそのもの。
お陰で、サクラはここ何日か相当遠回りのルートを通って自分のテントに帰っている…とはいえ、いずれがサクラの現在の帰宅ルートを調べ上げて待ち伏せするだろう。
クリスは男性の事を知っているようで、三人に説明していた。「あいつは確か、『カーサル・ロマンシア』だったな。 一週間前、俺と同じベルナ村行きの飛行船に乗ってたやつだ。」
曰く、妄想癖が激しくて、これまで何人もの女子生徒に迷惑掛けているって噂があり、一度カーサルに絡まれたら付き合ってくれるまで付き纏う…
彼自体は熱しやすく冷めやすい性格なのか、また別の人間に一目惚れすることもあるのだが、どうやらサクラに対しては本気のようだ。
彼の非常識極まりない行動に、友人としてツバメとブランシュは憤る。「まったく、なんとけしからん奴じゃ。 好きな女性に対する気持ちは分からんでもないが…これじゃああまりにもサクラが可哀想過ぎるではないか。」
「それに関しては同感ね。 あの手のタイプは何かの拍子でスイッチが入ると危険だって聞くし。」
「ツバたんとシューちゃんの言うとおりだよ…。 もう、本当にどうしたらいいのか。」
「……おたくらさ、方法考えるのはいいがねぇ。 ちょっと遅かったみたいだぜ?」
「───おお! マイプリンセス・サクラ、こんな所にいたのか!!」バッドタイミングで現れたカーサルに、サクラはすかさずクリスの後ろに隠れる。
そんな二人を庇うようにして、ブランシュとツバメがカーサルに訊ねていた。「貴方、あの子のテントまでストーカー行為してるって聞いたわよ?」
「何? 馬鹿を言うな、俺はストーカーじゃない…愛の戦士! そう、愛の戦士なのだ!!」
「いや、愛の戦士って訳が分からんのじゃが…お主、何人もの女子に『マイプリンセス』なんて言ってるようではないか。 本当に好きな女子はおらんのか?」
「いるとも! マイプリンセス・サクラは間違いなく俺の運命の相手! これまでに、一週間も好きでいられた相手など存在しない…俺と彼女は結ばれる運命にあるのだ!!」
「「えぇぇ……。」」
「いやぁ、ないだろ。」
「信じられないでしょ、二人共! こんな奴なんです、ホントに!!」
「おお、マイプリンセス・サクラ相変わらず素直じゃない。 だが、そんな君だからこそ、私の伴侶に相応しい!」
「……言わせて貰うけれど相手が嫌がっているとも知らずに愛の戦士だの伴侶だの、ただのストーカーが軽々しく言うもんじゃないわよ。」
「ストーカーではないと言っているだろう!」ブランシュの言葉を受けて尚、一方的な愛の言葉を告げようとしたが…サクラは限界に達していた。というよりもヤケになっていたというのがよいか。
「───あーもう怒った! じゃあこうしましょう!! 貴方もG級ハンターよね? だったらG級個体のモンスターを一人で狩猟出来たら付き合ってもいいわよ!!」
「なんと、それでいいのか! 丁度いい、私は今から潜口竜の狩猟に向おうとしていたのだ。 G級に入りたてではあるが、見事に奴を一人で狩猟してみせようではないか!! 待っていてくれよマイプリンセス・サクラ!!」 -
298
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-03 23:18
ID:gX20EMvk
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そう言って高らかに笑い声を上げながら飛行船乗り場へと向かうカーサルを見て、ガックリと項垂れながら思わずため息をつくサクラ。
そして彼女は顔を上げると、自分に集中する三人の友の視線に気付いた。「…えーと、どうしたのみんな?」
「サクラ、貴女やっちゃったわね。」
「あの手のタイプはどんな方法を使ってでもお主を自分のものにしようとするぞ? そんな約束していいものか?」
「今の見て分かったがどうやら完全にお前のことを美化しているみたいだな。 噂だと奴さんどっかの王族の出処らしいぜ? 例え嫌がっても王族様特権の権力で絶対ものにするだろうなぁ。」それを聞いてサクラは自分がとんでもない事を言ったと分かり、一気に青ざめていた。
そして三人に「どうする」と言うような顔を向ける。「……どうしよう?」
「まさか、あんなにヤバイ奴とは思わなかったからのう…。」
「あいつが一人の女をここまで長い期間好くことなんて、聞いた噂でもなかったからな…俺にはどうしようもないなぁ。」
「相当、サクラのことを美化しているみたいだから、どうにかして諦めさせないことには…。」うーんと、頭を悩ませる四人。
その話し合いは日が暮れ、草花生える大地を紅く染め上げるまで続いていたのであった。~~~~~
ところ変わって旧砂漠。
日はすっかり暮れて空には無数の星々が煌めいていた頃、そこには一つの影があった。
中世騎士を髣髴とさせる甲冑のような姿で、緑色の鱗が重なり合って形成された雌火竜の外殻で形成されたレイアSを身につけ、砕竜の甲殻を使用した大剣ディオスブレイドを背負うハンター、カーサルだ。「待っていてくれたまえ、マイプリンセス・サクラ! 私は貴女の元へ必ず戻るからな!!」
意気揚々と高らかに声を上げながらだだっ広い砂漠を進んでいくカーサル。
だが彼は砂の中から半分だけ顔を出した『それ』が、遠くからこちらを見つめていたことを知らない。
大きさから見て自分の口に入りきれるサイズだろうから、自分にとっては獲物でしかない。
それだけ解った所で、『それ』は行動に移すべく、砂の中に身を潜める。
───カーサルの足元からゴゴゴゴゴ……と地面が揺れる音が響いた。しかもその音は…。「むぅッ!? これは……ッ!?」
───その音は彼のいる場所、その丁度真下から鳴り響いていた。
そして地中に潜んだ存在が、一際巨大な口を開け地中から飛び掛かり姿を現した。 -
299
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-04 00:26
ID:opXN/6gQ
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うあー……なんだこの勘違い野郎……
ギルドナイトに通報して龍歴院裏に連れてってもらいませう()そして下位上位G級皆勤賞のハプルさん
-
300
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-04 19:54
ID:gX20EMvk
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数日後。
サクラは龍歴院内の食堂のテーブルに突っ伏していた。
同じ席に座るブランシュとツバメは彼女を見てどうしたものかとため息しながら朝食をとる。
ブランシュはナイフで切って一口サイズにした七味ソーセージをとろけた熟成チーズに絡めて口に入れる。
ツバメも砲丸レタスや西国パセリなどの野菜を入れたサラダにスネークサーモンの切り身をトッピングして一緒に食べる。朝はサッパリ系が一番だとツバメは語る。
そんな感じで二人だけで食事をしていると、適当なテーブルに腰を下ろそうとするクリスを見つけ声をかけた。「む、クリスか。 おはよう。」
「おぉ、二人ともおはようさん。 朝から元気そう…でもない奴が一人いるか。」
「仕方ないようなきがするがのう。 どうじゃ? 一緒に飯でも食べるか?」
「あぁ、お言葉に甘えさせて貰うよ。」席を勧められてクリスはツバメ達のテーブルに腰を下ろすと給仕に注文をする。
注文を終えたクリスはふと反対側の席でテーブルに突っ伏したまま動かないサクラに視線を向けた。「あいつどうしたんだ?」
「サクラにね、ご指名の救助依頼がきたのよ。 」
「……あぁ成程な、大体分かった。」
「おや、随分と察しがいいのう。」
「あんなことがあれば嫌でも分かるってもんだよ。」聞けば伝書鳩で連絡が龍歴院に届いたらしい。
…『あの』カーサルから、サクラに対して『御指名の』依頼が。
救助を申し込んできた、という事はハプルボッカの狩猟は失敗に終わったという事であろう。サクラにとってとりあえず一安心といったところである。
元々サクラ自身嫌っている相手だ、無理をして受けなくてもいいだろうと思う方も多いだろう。
だがカーサルは王族生まれのハンター。
彼が起こしたギルドナイトを通報せざるを得ない案件を揉み消すぐらいの権力はあるのだ。
もし彼の身に何かあれば…。ギルドの王族や貴族からの信頼はガタ落ちだろう。
いくらギルドといえど、組織である以上は利権やしがらみからは逃れられないのだ。 -
301
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-04 21:06
ID:gX20EMvk
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「サクラ、どうすんだ? カーサルの奴を助けに行くのか?」
「行くしかないでしょ……? 鳩ちゃんに括りつけられてた手紙に『マイプリンセス・サクラに救助を求む!』って書かれてたらさ…。」
「そりゃそうだ。 で、二人はこれからどうすんだ? ……って、横に置いてる武器見りゃ分かるか。」
「えぇ、勿論サクラに付いていくわ。」
「同じくじゃよ。」クリスの言葉に二人はそう言葉を返す。
理由としては二つある。一つ目はカーサルに対する監視だ。
こうしてサクラへの指名の依頼を出してきた、ということは、彼女に対して裏で何かをしようとしているのかもしれない。
それは彼女の友人達として到底許すことは出来ないため、監視も兼ねて出向く必要があるのだ。
そして二つ目、それはカーサルの書いた手紙にあった。「この手紙に書かれている『規格外の大口』っていう言葉がどうも気にかかってね? 龍歴院所属のハンターとしては調べない訳にはいかないのよ。」
「この文章を読む限り、ハプルボッカの特殊個体の可能性も十分にありうる。だからこそサクラ一人には無茶をさせられんのじゃよ。」『規格外の大口』。
彼女達がサクラからこの手紙を渡された時に気になった言葉だ。
彼もハンターであるならば、ハプルボッカがどれほど巨大な口を持っているかは知っているはずである。
それなのに『規格外』とはなんなのか。
ハプルボッカとは違うモンスターではないのかと職員にも聞いたそうだが、現在旧砂漠では潜口竜以上の頭を持つモンスターは確認されていないようだ。
もしかするとツバメの言う通り、ハプルボッカその特殊個体である可能性がある。
ならばその可能性が僅かでもあるならば調査しなければならない。
そこまで聞いてクリスは何かを決めたように「…よし」と呟いた。「なら俺も付いていくかねぇ。 昔のチームメイトの交ってやつだ。」
「あら、実は素材が欲しいだけじゃないのかしら?」
「それも勿論ありますよ? 凄腕G級ハンターが三人もいるからねぇ、お零れも頂きやすいってもんさ。 …つーわけだサクラ、俺達はお前に付いていくぜ。 異論はないよな?」クリスの言葉に対してサクラは無言で頷いていた。
「決まりだな」と言うとクリスは運ばれてきた朝食を始める。頼んだのはサンドイッチとスープのセット。ヤングポテトスープはクリーミーでおいしい。季節の野菜とアプトノスの肉を挟んだサンドイッチも美味である。
ブランシュから「早く朝食を済ませなさい」と言葉をうけ、サクラもテーブルの上に置かれていたあぶりスネークサーモンの特産キノコと熟成チーズがけに手をつける。
四人がカーサル、そしてハプルボッカが待つ旧砂漠へと向かったのは朝食を取って一、二時間程してからであった。~~~~~
連絡主 カーサル・ロマンシア
『旧砂漠にて規格外の大口と遭遇! 至急マイプリンセス・サクラに救助を求む! 至急、大至急!!』 -
302
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-05 06:37
ID:9c8U57p6
規格外の大口…あっ
-
303
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-05 07:42
ID:kmhU2aMY
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マナー的にどうかと思ったけどワールドの掲示板で蟹さんのID探してみても最終投稿日の5/24以降の書き込みは見当たらんね
ID変わっただけならいいけどそうじゃないならいよいよあの人何かあったんじゃない? -
304
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-05 22:54
ID:gX20EMvk
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>>303
んー、引き継げるような文才はないからなぁ。
自分は誰かに任せるつもりです。~~~~~
灼熱光線を降り注ぐ太陽は密林や森丘と同じはずなのに、まるで別もののように殺人的暑さを放ちその熱を砂が照り返し、地面からも熱が上がる。
砂漠という狩場。昼は四十度を越える湿気ゼロの炎天下で、夜はマイナスを記録する恐るべき場所。
そんな砂漠特有の灼熱の日差しから逃れるようにして散らばっていた一行は岩場の高台に位置する拠点へと辿り着く。
砂の上を走る熱風もこれくらいの高さになると幾分か暑さも和らいだ風となって吹き抜ける為、ここは砂漠の中心にあってもクーラドリンクなしで居る事ができるようだ。「さて皆にきこう、ハプルボッカの狩猟かカーサルの捜索、どちらから済ませた方がいいと思う? まずはどちらかの事を済ませたいんじゃが…。」
ツバメは早速と言ったように提案する。この四人ではツバメが基本的に仕切役であるようだ。
「私は…カーサルを探した方がいいんだろうなぁ。 体力を消耗しているかもしれないし…でもなぁ…。」
サクラは座りながらそう語る。どうやら手紙の事で未だ彼女の中で葛藤がある様子。
「仮にもG級ハンターだ、あいつなら多少は大丈夫だろうよ。 それより先にハプルボッカを倒した方が安心して捜索できるってもんでしょうよ。」
クリスはナルガクルガの素材から誕生する弓、闇夜弓【影縫】の緩んだ弦を引き締める作業を行ないながら主張する。
「だったら、二手に分かれて捜索と狩猟をやれば良いかもしれないわね。 カーサルの捜索が終わり次第ハプルボッカの狩猟に参加する、これでいいかも知れないわ。」
その二人の意見をうまくまとめていくブランシュ。ツバメが仕切り役ならば彼女はまとめ役であるようだ。
ハプルボッカを先に探して狩猟するか、カーサルを先に探して救出するか。
あるいはそれを二手に分かれて同時に行うか。
一行が下した判断は……。Q カーサルの救出とハプルボッカの狩猟。どちらを先に行う?
1 ハプルボッカの狩猟をしてからカーサルを捜索する
2 カーサルを捜索してからハプルボッカの狩猟を行う
3 二手に別れてカーサルの狩猟とハプルボッカの狩猟を同時に行う※3の場合人員の分け方、どちらがどちらをやるかも指定してください
例1 サクラ、ツバメ→捜索 ブランシュ、クリス→狩猟
例2 サクラ→捜索 他メンバー→狩猟各メンバーの装備、スタイル
ブランシュ:ベリオX&六花垂氷丸 ブレイヴスタイル
ツバメ:ランポスX&コキュートス ストライカースタイル
サクラ:ナルガX&ナールドボッシェ エリアルスタイル
クリス:フルフルR&闇夜弓【影縫】 ギルドスタイル -
305
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-06 07:43
ID:kmhU2aMY
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助けに来て貰えただけありがたいと思え、ってことで1で
-
306
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-06 07:46
ID:9c8U57p6
>二手に別れてカーサルの狩猟
ここははたしてネタなのだろうか… -
307
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-07 21:43
ID:gX20EMvk
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カーサルはなりたてとはいえG級のハンターだ。
ならば砂漠特有の昼夜の温度差を凌げる場所くらいは把握しているだろうということで、ハプルボッカの狩猟を優先する事にした。
カーサルにとっては早く助けに来いと思うだろうが、助けに来てもらえただけありがたいと思ってほしい。
拠点を出発した一行はクーラードリンクを飲みながら潜口竜が現れる可能性が高いエリア7へと向かう。
とはいえハプルボッカは砂の中を移動するモンスターなので、砂に覆われた場所は基本的に奴が現れる可能性がある。
その為、いきなり遭遇する危険性を考えて緊張しながらエリア2へと入った四人は姿が見えないのを確認すると、一斉に入り過ぎていた力を抜く。「杞憂だったようね。 ここもハプルボッカが出没するけれど、どうやら他の場所にいるらしいわね。」
「早計じゃな。 奴は砂の中に潜んでいる可能性だって大いにある。」
「その可能性は捨て切れませんがねぇ、気配も感じないからおそらく他のエリアにいると思いますよ。」周囲を見渡し、完全に奴の気配がないのを確認すると一行は改めてエリア7へと目指す事にした。
一歩歩くたびに砂の中に足が足首辺りまで沈むのは、とてつもなく歩きづらく体力を奪われる。
玉のように流れ出る汗も厄介だ。それの原因は体で直接浴びたら串刺しにされるんじゃないかと思うような強烈な日差し。
そして、ただ呼吸をするだけで肺が焼けそうになる。
感想───猛烈に暑い。「本当に砂漠は、クーラードリンクを飲んだのに、暑いよねぇ…。」
「あれはあくまで高熱に体が耐えられるようにするだけで、体感温度は仕方なかろう。 これでもクーラードリンクで暑さもかなり和らいでいるのだから我慢せい。」
「火山なんかはこれ以上に暑いからなぁ…。 あー、行きたくねぇ。」
「そうね、火山よりかはまだ蒸し暑くない砂漠の方がマシだと思うわよ?」厳し過ぎる環境の感想が漏れるながらも前進し続ける一行。
先頭を歩くブランシュは地図を片手にコンパスなどを使って方向を確認しながら歩き、その隣にはツバメが並び、時々地図を覗き込んでは彼女に指示を仰ぐ。
双方頭はいい方なので、自然と二人で作戦の立案などの話し合いを行う。クリスとサクラはこういう事は全面的に任せているので不参加だ。~~~~~
相手が空を飛ぶのと砂の中を移動するのとでは勝手が違うので警戒しながら進むと、傾斜が激しかった砂丘が特徴的なエリア2を抜け、段差が目立つがそれでも比べると幾分か平坦なエリア7へとたどり着いた。
エリアに入った一行はすぐに辺りを見回す。このエリアは真ん中の岩以外視界を遮るものはないので、地表に奴の姿が見えない事はすぐにわかる。
だがジッと鋭い瞳でエリアを見回していると、一行はある事に気付く。「……おかしいわね。」
「うむ…、妙じゃな。」
「そうだね…。 ───水辺があるのにアプケロスがいないなんて。」エリアにはハプルボッカはおろかアプケロスの姿もない。
アプケロスは縄張り意識が強く、近づいただけで攻撃を受けるなど非常に好戦的。大型モンスターとの戦いでは一般的に先に片付けるのが常套だ。
そのアプケロスが、一匹もこの狩場にいない。単純に水を飲み終えた、という訳でもないだろう。 -
308
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-07 23:09
ID:gX20EMvk
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「それともう一つ報告があります、よっと。 奴さん、どうやらこのエリアには来てたみたいだな。 なーんか嫌な予感するんすよねぇ…。」
そう言ってクリスは砂の中からある物を引き抜く。
黒曜石のような艶やかさを持つ群青色の大剣、ディオスブレイド。カーサルが担いでいた武器だ。
狩場とは常に流動している。様々な要因が重なり、常に一つとして同じ環境が形成される事はない。つまり、狩場の雰囲気を読み解けば、自分達の目指すものがわかる。
今まで多くの狩場で、この異様な雰囲気に直に触れてきた。だからこそわかる───この違和感は、何かがこのエリアにいる証拠だ。
四人は何も言葉を発せず警戒を続け、不気味な沈黙が辺りを支配する。聞こえるのは、複雑な岩の間を通り抜ける風の音だけ。
その沈黙が、一体どれほど続いただろうか───それは、突如破られる。
突然、地面が揺れだした。「うわッ!? な、何これッ! 地震ッ!?」
「……違うッ。これは…ッ!」足から伝わる、地面の中を何かが動く感触。地震ではなく、何かが、震源が動いている───確信に、変わる。
「…来るぞッ!!」
クリスの怒号の直後、膨大な量の砂が舞い上がり、それらは風に乱れて砂塵に変わる。打ち上げられた砂の小粒が、まるで雨のように地面に叩き落される。
大きな口が舞い上がる砂と共に飛び出して来たのだ。
そしてそれは……。「…うぇえ?」
「……なんと、これは…。」
「…なぁブランシュ、 俺実物は見るのは初めて何ですがねぇ。 …ハプルボッカってのは『あれ』が普通なんですかい?」
「…いえ、そんな事はないわ。」
「そうかい。 じゃあ言わせてもらいますけどねぇ───デカすぎじゃあありませんかねぇ。」そう、余りにも大き過ぎたのだ。
砂漠に現れる轟竜や角竜を一口で呑み込んでしまいそうな程に巨大な口。成程、カーサルが『規格外の大口』というのも良くわかる。
砂上に露出する事が多い上面部は岩場や砂漠での保護色となっており、幅広く覆う甲殻は鋼のように硬くなっており、小山と見間違える程に大きい。
四人は奴の巨大さに圧倒されていた。今まで討伐してきたモンスターの中でも巨獣や鎧竜、それをはるかに凌ぐ程に巨大だ。だからこそ迫力や存在感、圧迫感などではの比ではない。
不気味な沈黙。すると、これまで背後を向けていた潜口竜がゆっくりとこちらに向き直り、大きな口を開いて威嚇の咆哮をあげる。
見た目に反して鳴き声は小さいものであったが、通常のハプルボッカより声は低い。いや、低過ぎるというのがよいか。一行を獲物だと認識したのか、大口を広げて今にも全てを食らおうと突っ込んでくるハプルボッカ。
その場から全速力で走り、飛ぶようにしてそれぞれ左右に別れて回避し、潜口竜は四人の間を突き抜ける。その速度、迫力、どれも他のモンスター達の比ではない。
四人はそれぞれの武器を引き抜き相対し、再度ハプルボッカが威嚇の咆哮をあげる。
今、旧砂漠にて『大喰らい』との死戦が始まった。~行動を選択してください。~
※戦闘での視点はサクラ視点で動きます。
1 先手を取ってその頭を斬りつける
2 驚異的な口の前を避け、側面から攻撃していく
3 クリスからの支援を受けながら乗りを狙う
4 その他 -
309
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-08 12:20
ID:ZM5dvF2c
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4、タル爆弾を食わせて隙をつくってフルボッコ
あ、勿論設置はかけ声付きで -
310
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-09 21:39
ID:gX20EMvk
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サクラ視点と言ったな、あれは嘘だ。
~~~~~
潜口竜に爆弾を喰わせると体内で爆発が起き、釣り上げることが出来る。
そうすれば奴の裏側の柔らかい腹部を攻撃出来るチャンスになる。その大きさ故に攻撃出来るかは置いておくとして。「シューちゃん、私は大樽爆弾を置いてくるから攻撃よろしく!」
「了解、それじゃあ私達は…。」
「奴の気を引きつけるとするかのうッ!!」
「俺は後方支援がむいてるんですがねぇ、まぁ仕方ねぇかッ!」掛け声を上げ挑み掛かる二人より早く、クリスは弓を引き絞り矢を放つ。
空気を切り裂き真っ直ぐに飛ぶ矢は、ハプルボッカの硬い甲殻すらも撃ち破り、その中の肉を貫く。
ブランシュは姿勢をできる限り低くして風の抵抗を最小限にし突進。そんな彼女を迎撃するようにして大口を開き噛み付いてくるが、ブランシュは瞬時に蒼の焔を纏い攻撃を受け流す。大口は虚空を喰らう。
引き抜いた立花垂氷丸で目の前の爪目掛け叩き込む。
サクラの持つ片手剣よりは重量はあるが、かといってアンキセスやタクミの大剣のように力任せの破壊力はない。大剣が叩き潰す武器なら、太刀は斬る武器。大剣と太刀は似て非なる武器なのだ。
右爪へと向かって刀を振るうと同時に太刀が放つ冷気が表面を凍てつかせる。そして刀身が触れると同時に氷は砕け、粒となって霧散する。一方、ブランシュの突撃に対しツバメも遅れて突撃する。
ブランシュに再度噛みつきを行う完全に自分に気づいていないハプルボッカの背後から突撃。
背負ったコキュートスを引き抜き、突撃の勢いと自慢の腕力を融合させて豪快に山のように巨大な頭殻に向かって叩き落す。「うおおおぉぉぉッ!」
幾多のモンスターの大打撃を与えてきたツバメの強烈な一撃。
だが、それは鉄同士をぶつけるような鋭い音と共に弾かれてしまった。「しまったッ!?」
しかも全力で振るった分その衝撃もまた大きい。手が痺れ、は思わずコキュートスを離してしまった。
さらに間が悪い事に弾かれたとはいえその衝撃は大きかったのだろう。潜口竜はヒラヒラと逃げ回るブランシュではなく一瞬動きの鈍ったツバメを標的に変えた。
ツバメはすぐに反応し、コキュートスの回収を諦めてバックステップで距離を置く。直後、一瞬前までツバメがいた場所にハプルボッカは噛みつきを行う。
攻撃を回避したツバメを追うように悠々と砂の海を泳ぐハプルボッカ。その巨体故に彼が潜口竜から離れてもすぐに追いついてしまう。
ツバメは急いで逃げ、クリスとブランシュがそれを阻止するようにハプルボッカの背後から猛攻撃を浴びせるが、それでも奴は止まらない。
その時、「たーるっ♪ よし、設置出来たよー!」
突如響いたサクラの声に唯一のガンナーであるクリスが振り返ると、彼女の傍らには大樽爆弾が一つ設置されていた。
再び潜口竜に目を移せば奴は地面に潜ろうとしている。クリスはしめたとばかりにサクラに向かって叫ぶ。「サクラ! そっから急いで離れて音爆弾使えッ! アイツには有効的、なんだろっ!?」
「OK! 任せといてッ!」サクラはその場から離脱、捜索潜口竜の身体が完全に砂の中に消えるのを確認し、音爆弾を投擲する。
丁度大樽爆弾の上で音爆弾は炸裂。キンッと甲高い音が鳴り響いたかと思うと、地面が揺れ、爆ぜる。舞いあげられた砂は重力に従い地面に落下。砂の雨となり距離を離していたサクラの元まで降り注いだ。
地面を割った大口の中に爆弾は飲まれていく。
後は体内で起こる爆発を待つだけ───なのだが、それが一向に起こる気配がない。「あれ、なんで爆発が起きないの? 確かに爆弾は食べさせたはずだけど。」
「……まさか、デカいから耐性が変わっちまってるのか?」
「だとしたら厄介ね…。 何個爆弾を飲ませればいいか分からないわ。」自分に降り掛かってきた砂を払うサクラの側に、奴を釣ろうとしたのか釣竿を持ったクリスとブランシュが立っていた。
ツバメは砂の中から愛用のハンマーを砂の中から掘り起こしたところだ。「何、あれで爆発しないんならまた置けばいいだけっすよ。 つーわけで、サクラ。 もっかい頼むわ。」
「了解!」そう掛け合いハプルボッカに視線を向けると、大口を広げて突っ込んでくる姿が見えた。
先程と同じように三人は走って距離をとって回避。
方向転換、再度突撃を試みるハプルボッカ。その狙いはブランシュだ。 -
311
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-09 22:08
ID:gX20EMvk
[編集]
「逃げろブランシュッ!」
クリスの叫び声を聞くまでもなくブランシュは全速力で走り出す。横目に見ると、ハプルボッカが走り始めていた。
その速度は通常のものとは比べ物にならない程早く、その速度で走りながら微妙にコースを曲げて逃げるブランシュを追跡する。
猛烈な勢いで迫り来る潜口竜相手に、必死になって逃げるブランシュ。砂で足がもつれそうになりながらも全速力で走る。
そして、最後の一瞬で身を投げ出すように前に突っ込んで回避。ブランシュの足のすぐ後ろを砂塵を巻き上げながらハプルボッカが突き抜けた。
まさに紙一重の距離とタイミングであった。
だがブランシュは急いで立ち上がり、体勢を整える。
奴の攻撃方法の一つだ。二回も突進をしてきたという事は三回目もこちらを狙ってくる筈。
後ろを見ればハプルボッカは方向転換している最中。狙いはやはり彼女だ。
思わず舌打ちをするブランシュであったが、サクラが大樽爆弾を仕掛けたのを見てそちらへ誘導するようにして走り出す。
ハプルボッカは大口を開けて迫り来るという色々な意味で軽く原始的な恐怖を掻き立てながらブランシュに接近する。
その大口が自分にぶつかる前にブランシュ横にダイブして、奴の体内行きを回避する。回避できず胃袋に飲まれたのは爆弾の方だ。砂煙を噴き上げながら止まるハプルボッカに対し、武器を引き抜き怒涛の勢いで突っ込むツバメ。
そして彼がコキュートスを振るおうとした時───体内で爆弾が炸裂し、巨体が跳ね上がる。「ぬおぉッ!?」
突然の出来事に思わず尻餅をつくツバメであったが、力なく下顎が垂れその口を開放している潜口竜の口に今だとばかりに釣竿のルアーを投げ入れるブランシュ達を見て、あとに続くようにして急いで立ち上がってプルボッカ釣りに参加し始めた。
正直こんな巨体を釣り上げられるのか?という疑問さえあるが、とにかくやってみないことには分からないだろう。~掛け声を選択?しましょう~
例:「おりゃあぁああああぁ!」、「引っ張れえええええぇぇ!」など(テキストスレシナリオ9参照)
※気合のない声だったら失敗する可能性があります。 -
312
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-09 23:27
ID:PtUqYKRc
[編集]
おんどりゃあああああああぁぁぁ!!
-
313
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-10 08:23
ID:r9G/sj0k
[編集]
諦めんなよ!諦めんなよお前!どうしてそこでやめるんだそこで!もう少し頑張ってみろよ!
-
314
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-10 17:15
ID:AuIHqen2
フィィィィッシュ!
-
315
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-10 19:36
ID:a4HIDusQ
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NGAAAAHHHH!!
(CV:ブランシュ)
-
316
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-10 20:24
ID:wxkgWbhI
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う○ちブリブリ(伝説の英雄キリトの言葉)
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317
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-10 21:28
ID:gX20EMvk
[編集]
釣竿が強烈な力で引っ張られる。すぐに足を踏ん張ってその力に逆らおうとするが、力の差は歴然。
一人ならば簡単に振り払われていただろうが、四人の力が加わると、力比べは何とか互角にまで並んだ。あとは気合の勝負だ。「おんどりゃあああああああぁぁぁ!!」
サクラは大声で叫びながら全力で掛かった獲物を引っ張る。乙女とは似つかわしくない掛け声であったが。
「ノリで参加しましたけど、コレ釣れるかッ!? 釣れるもんなんですかねぇッ!?」
「諦めんなよ! 諦めんなよお前! どうしてそこでやめるんだそこで! もう少し頑張ってみろよ!」
「ツバメどうしたッ!? おたくそんなキャラだったかッ!?」クリスとツバメは言葉を掛け合いながら引っ張り続ける。若干ながら巨体が砂から引きずり出された事から、四人の力の方が優っているのが分かる。
「NGAAAAHHHH!!」
「ブランシュなんだその掛け声ッ!?」ブランシュが力みすぎて奇声を上げている。サクラと同じく、女性が上げてはいけないような声である。
それぞれ掛け声を上げる三人に合わせるように掛け声を考えるクリス。何故か「う○ちブリブリ」という言葉が思い浮かんだが下品過ぎるので却下した。釣竿は今にも折れそうなくらいに撓る。それよりも糸の方が切れてしまいそうなくらいに引っ張られる。
必死になって釣竿を掴み、引っ張り上げようとする四人。釣られまいと暴れ回る海竜。
最後まで全力で引っ張り続けると───手応えが違った。
先程までの力と力の勝負である引っ張り合いではない。一瞬重かったが、それが過ぎると呆気無いくらいに力が抜ける。
一行は引っ張られる力を失い、一斉に後ろへと倒れる。その頭上を、太陽の光を遮るようにして巨大な影が跳び上がる。その光景に、狩人はニッと不敵に笑う。
直後、背後に巨大でとてつもない重量を持つ何かが叩きつけられる音と衝撃が響く。同時に砂煙が立ちこめる。
四人はすぐに起き上がり、確認するとそこには巨大な生き物がのた打ち回っていた。「「「───フィィィィッシュ!」」」
「おたくらマジでそんなキャラしてたかッ!?」ツッコミをするクリスを尻目に、うまく立ち上がれず藻掻く巨大なハプルボッカへと武器を構え突撃する三人の狩人。切り替えの速さに呆れながらもクリスは弓にビンを装填する。
やはりというかなんというか、弱点である柔らかい腹部にはブランシュとツバメの攻撃が届かない。
届くのは奴の足を踏台にして切りつけるサクラと、空気を切る矢を放つクリスだけ。仕方ないと二人は割り切るとツバメは頭を叩き潰し、ブランシュは前爪を切り裂き続ける。ジタバタと藻掻く潜口竜であったが、反動を付けるようにして一気に起き上がる。
そして逃げるようにして砂の中へ潜ると、泳ぐようにして一行を視認。鼻がみるみるうちに膨れ上がり、激情から湧き上がる怒号を放つ。「怒ったかッ! 気を引き締めて───ブレスが来やがるかッ!」
クリスの声を待たずして、砂を吸い込み始めるハプルボッカ。その射線から逃れるようにして左右に走り出す。
そして砂は放たれる。
そのブレスは巨体故にその範囲はは桁違いだ。
通常のものが激流の川なら、こちらは暴砂の竜巻。周囲に立つ柱が一瞬にして崩壊する程だ。
強力だがブレス自体は直線に立たなければ問題は無い。避けてさえしまえばあとは回り込んで攻めればいい。
そう思いながら狩人達は回り込んで攻めようとする。
───だが、それが通用するのは相対している相手が『強靭で狡猾な個体』でなければの話。「うわっとッ!?」
「なんとぉ!?」
「…くっ!」
「危ねッ! ここまで届くかよッ!?」砂を一頻り吐き終えると、ハプルボッカは周囲のハンターを一網打尽にするようにその場で一回転。 ブランシュは瞬時に受け流し、クリスはステップを行うことで回避をする事が出来たが、サクラとツバメは巻き込まれ跳ね飛ばされてしまった。
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318
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-11 23:14
ID:gX20EMvk
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悲鳴を上げて砂の上に転がる二人に、ハプルボッカは大口を開き襲いかかる。そのまま飲み込んでしまうつもりなのだろう。
引き離されたブランシュは舌打ちをすると必死になって砂漠を翔ける。
しかし怒り状態になるとモンスターの行動は素早くなる事は珍しくない。潜口竜もその例、角竜や轟竜程ではないが怒り状態での突進は脅威に値する。
ならそれが特別巨大な個体ならばどうか?一歩の幅がとてつもなく大きく、更に速くなったと感じることだろう。
現にブランシュもこのハプルボッカに追いつけず距離を離されてしまっている。
そしてその大口は地面に転がっていた狩人達を、「…あれ?」
「───なんとか、間に合ったか。」───飲み込むことは無かった。
空気の壁を貫きながら飛翔する一矢が寸分狂わず大きく開いた口に炸裂。
矢は柔らかい肉に突き刺さり、鏃に吹き付けられた麻痺毒が爆ぜる。それも、鎧などがわずかもない全てが肉の壁に覆われた口腔内で。「薬は注射より飲むのに限るぜ、風船鼻よぉ。」
刹那、潜口竜は痙攣して動きを止めた。突進の勢いはすぐには止める事が出来ず、ズザザッと砂の上を暫く滑ってその動きを止める。
巻き込まれて潰れないようにツバメとサクラはそれぞれ左右に分かれて回避していた。「感謝するぞクリス!」
「流石りっくん! 男前~!」
「無駄口叩いてないでさっさと攻撃しろ! 折角作ったチャンスが無駄になるでしょうがっ!!」強撃ビンに付け替えながら叫ぶクリスの言葉に二人は急いで立ち上がり、武器を構え突撃する。
「ツバメ・ハルカゼ、先陣を切るぞ! 皆の者、我に続け!」
「シューちゃんもう行ってるけどねー!」~行動を選択してください~
1 乗りやスタンで更に拘束を重ねつつ攻撃
2 狩技で一気に攻撃
3 アイテム使用
4 その他 -
319
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-13 01:56
ID:r9G/sj0k
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③小指にシビレ罠を置く…のは流石に外道か
ここは①にしとこうかね。エリアルとハンマーいるしそして安定のキャラ崩壊である
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320
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-13 02:28
ID:L00Tb0t6
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野暮なことを言うようだが、ビンは矢に直接付けるんじゃなく、
発射の際に鏃に中身が吹き付けられる機構じゃなかったか?(MH4Gのオープニングムービーみたいに)
今回は巨大な相手だからビンごとぶつける戦法なのかも知れないが…以上、無粋な発言でした。
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321
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-14 22:34
ID:gX20EMvk
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>>320
こういう指摘はマジで感謝でございます。
修正させていただきます。
~~~~~三人の狩人がハプルボッカへ襲い掛かる。
そんな彼等を援護するようにクリスも彼の後ろに続きながら支援射撃。矢を番えては、狙いを定め、撃ち放つ。その動作を、目にも留まらぬ早さで繰り返す。
潜口竜の前脚にブランシュが六花垂氷丸による猛烈な気刃斬りの嵐を叩き込む。
蒼の軌跡を残しながら目にも留まらぬ勢いで太刀を振るう。その斬撃はこれまでの攻撃の数々でわずかなヒビ割れを起こしていた前脚の爪を真っ二つに斬り裂いた。「乾坤一擲ッ! 目にものを言わせてくれるわッ!」
ツバメは力強く叫ぶと剛槌を勢いよく振り回す。
面を砕かんとばかりにその巨大な頭蓋を滅多打ち。回転で力が溜まった所で、気合いの乗った一撃を食らわせる。
タイフーントリガーと呼ばれる狩技によっては生み出されたその大きな衝撃が奴の脳髄に浸透し、ハプルボッカは力なく地面に倒れる。脳が衝撃によってゆれ眩暈を起こしたのだ。「ナイスよツバメ!」
ブランシュは嬉々と叫びながら彼女が生み出したチャンスにハプルボッカへ追撃を仕掛ける。ツバメは未だ脳震盪を起こし目を回しているハプルボッカの頭部へ強烈な打撃をお見舞いする。
クリスは矢を番え、弓全体を軋ませながら構え、狙いを定めて撃ち放つ。
ブランシュとサクラは懐に潜り込み、目にも留まらぬ速さで次々に繰り出される剣撃の嵐を叩き込む。
転倒よりも長い気絶状態の間に、一行は一気にダメージを与える事に成功した。
ハプルボッカはゆっくりと起き上がり、近くにいたツバメに噛みつこうとするが目が覚めたばかりか動きが全体的に遅く、ツバメが回避するのはそう難しくなかった。「ふっふっふっ…、背後がガラ空きだよっ!」
自分への注意が逸れたと同時に、背後へと回ったサクラが潜口竜の背を踏みつけ剣撃を叩き込む。
突然の衝撃に耐えられ無かったのか体勢を崩し巨躯が地に沈む。彼女は即座に飛び乗ると、背中に向けナイフを突き立てる。
極めて頑強で、生半可な武器では傷一つつけることはできないといわれている潜口竜の甲殻も、剥ぎ取りの技術を利用すれば簡単に貫くことが可能だ。
背中をナイフで斬るたびに血と共にハプルボッカの光り輝く体液が辺りに飛び散る。顔にも少しかかっているが、今は気にする暇はない。
もちろん黙ってやられるハプルボッカではない。
八の字を描く様に身体をくねらせ、背中に乗る狩人を引き剥がそうとする。
その巨体故の暴れっぷりは意図せずとも、周囲の柱を粉砕する程。援護をしようとハプルボッカに近づいた三人も返り討ち逃げ回るのがやっとである。 -
322
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-16 23:57
ID:gX20EMvk
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そして潜口竜のその暴れっぷりに一行は違和感を覚える。
「ったく、いくら何でも暴れ過ぎじゃあないですかねぇ…ッ!」
「うむ、そうじゃな…。 奴程の巨体ならワシらが乗ったところで蚊が止まったように思うだけ。 それなのに斯様な反応を見せるということは…。」
「───なにか別の要因がある、ということね。」見ている限りハプルボッカは、サクラの剥ぎ取りナイフによる攻撃に苦しげに藻掻きながら抵抗している。
だがそれはサクラの攻撃に対するものでは無いように思える。例えば『体内にいる何かに攻撃されている』、そんな風に見えるのだが…。
三人がそう思案していると潜口竜の短い悲鳴があがる。
声があがった方をみれば砂の上を滑るようにして着地するサクラと、バランスを崩し口をだらしなく開きながら横たわるハプルボッカの姿がそこにはあった。「───みんなー! ダウン取れたから倒すよー!」
「…まぁ考えていても仕方ないのぅ。今はただ奴を叩きのめさねばならぬからな。」
「えぇそうね。 とっとと終わらせてカーソルを探さなきゃ。」
「カーソルじゃなくてカーサルな? まぁ、適当にやらせてもらうとしましょうかね。 こっちも色々仕込みがいるからな。」砂の中に半身を埋めたまま横たわるハプルボッカに四人のハンターが一斉に襲いかかる。
無防備に開かれた口内にブランシュの乱舞が決まる。全身の筋力を限界まで酷使するような激しい立ち回りと暴れ回る刀捌き。砂上という不安定な足場を感じさせない鬼神の如き猛攻撃に、仲間達の士気は高まる。
ツバメはそんなブランシュの動きを見て口元に笑みを浮かべると、ハプルボッカのデカっ鼻目掛けコキュートスを振り下ろす。
少し離れた場所からクリスは矢をうち放つ。薄い皮膜は無数の矢を受けて所々に穴が空き、甲殻も砕け、確実にダメージを蓄積させている。
サクラは腹部の前に立って剣を振るう。叩きつけるように一撃し、二撃三撃と斬り続ける。
片手剣は大剣のような一撃一撃に大きなダメージは与えられない。だが、こうした積み重ねの連続は大剣にも引けを取らない。 -
323
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-17 23:28
ID:gX20EMvk
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大きく開いた口に複数の矢が突き刺さり、後方より飛んでくる矢の雨を掻い潜るようにして太刀をすさまじい速さで連続して斬り付ける───いや、叩き付ける。
ハプルボッカの口内はボロボロになって大量の血を噴き出す。そして、大きく振り上げた太刀は口内で垂れ下がるもの、口蓋垂を捉えた。「……チェストオオオオオォォォォォッ!」
サクラは腹の底から声を出して最後の一撃を叩き込む。その一撃に、ハプルボッカは思わず立ち上がる。
攻撃していた最中のサクラはいきなり立ち上がった潜口竜の脚にぶつかって後ろへ転んだ。ツバメとブランシュも一度後方に下がる。
ハプルボッカは口から血をダラダラと垂らしながら、鼻を膨らませブランシュを憎らしげに見つめる。その近くには巨大な丸々とした矢だらけの肉塊が砂漠に転がっていた。「ごめんなさいね。 ぶら下がって目障りだったからつい、ね。」
「これまた豪快に斬ったもんじゃのう。 いやぁお見事!」
「流石『神速の白雪姫』だね! 見惚れるぅ!」
「そういえばそんな二つ名でしたっけ。 やっぱり一流ハンターじゃねぇかおたく。」そうでもない、と返そうとしたブランシュだが即座に横へと跳んだ。瞬間、寸前までいた場所の地面が砕け、砂を巻き上げながらハプルボッカが姿を現す。
何も獲物を喰らうことも無く姿を現す潜口竜に、ブランシュは反転攻勢に出る。
だが、まるでそれから逃れるようにハプルボッカは再び砂中へと潜る。足を止め逃した事に舌打ちするが、その直後突然潜った同じ場所から飛び出してきた。「なっ…!?」
慌てていなそうと太刀を構えるも間に合わず、簡単に吹き飛ばされてしまった。
吹き飛ばされたブランシュと代わるようにサクラとツバメが無防備となったハプルボッカの背後から襲い掛かる。
勢い良く突き出した槌と剣の一撃は潜口竜の甲殻を砕き、刃先吸い込まれるように肉を抉る。
それを援護するように無数の矢が飛び、ハプルボッカの甲殻へと突き刺さる。
潜口竜は自らの背後にいる獲物に対しエラ蓋を開き、勢いよく砂を噴射。ツバメとサクラは既のところで逃げることが出来たが、飛んでいた矢は全て撃ち落とされてしまう。
撃ち落とされ砂の上に落ちる矢をみて舌打ちするクリスと、武器を構え何時でも攻撃できるように体制を整えるツバメとサクラ。そして自分を吹き飛ばしたハプルボッカを睨みながら、ブランシュは口の中に入った砂を唾と共に吹き出す。
目の前には何やら身体をくねらせては、何かに抵抗しているハプルボッカ。戦いはまだまだ続くようである。~行動を選択してください~
1 相手の出方を見て慎重に立ち回る
2 爆弾を更に飲み込ませる
3 罠を使って一気に攻撃
4 その他 -
324
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-17 23:33
ID:2j7eHyT.
丁度更新してた
同時がありなら1と3両方でお願いします! -
325
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-18 23:33
ID:gX20EMvk
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怒り状態ともなればその速さはより厄介なものに変わる。それに対応するには、当然より間合いを取らなければならない。
ともなればとブランシュ達剣士組は奇妙な動きをするハプルボッカを視線で捉えながら、その隙を伺っていた。
一方で唯一の遠距離武器である弓を担ぐクリスは連続して背中を狙い撃ちながら横へ走り、未だ警戒中の剣士組から潜口竜の気を逸らす。
弦を引く人差し指は次第に疲労で感覚がなくなってくる。
だが、それでも一定のリズムで繰り返される伸縮運動はやめない。この一回一回が、確実にハプルボッカのダメージとなり、仲間を救う一発には違いないのだから。
そしてクリスが生み出した隙はしっかりと生かされた。
ツバメ達ではなく、攻撃しながら横へ移動しているの方へ振り返った為に余計に旋回するハメになった潜口竜。そのわずかな角度は、同時にわずかな隙の延長と同義。時間にすれば本当に一瞬だ。
───だが、その一瞬があれば彼女は突き抜ける。
ハプルボッカの視界に、一瞬だけ影が入った。気にも留めないような一瞬の出来事。だが、それが彼女の残したわずかな軌跡。「…ふっ!」
引き抜いた六花垂氷丸は太陽の光を受けて煌びやかに輝く。その刃先は、吸い込まれるようにしてハプルボッカの下顎を斬り裂いた。
突然顎を斬り裂かれた潜口竜は悲鳴を上げて仰け反った。
ツバメも少々遅れるが、ブランシュが生み出した隙を突いてハプルボッカに襲い掛かる。「うおおおおおぉぉぉぉぉッ!」
勇ましい雄叫びを上げながらハンマーを駆けて来た勢いも乗せてコキュートスを一気に振り下ろす。
潜口竜の甲殻を削るように表面を砕く。わずかに飛び出す血が、確実なダメージの証拠だ。
ハンマーを体全体を使ってスイングするように薙ぎ払う。甲殻の表面を削る嫌な音を無視し旋回させ、続いて砂の上スレスレを撫でるように刃先を動かし、勢い良く振り上げる。打ち出された一撃はハプルボッカの脚の甲殻の一部を弾き飛ばす。さらにもう一撃入れたい所だが、欲張ってはいけない。ここがちょうど引き時だと、彼女の勘が告げている。自分の勘を信じて彼女がバックステップで距離を置くと同時に、ハプルボッカは体を旋回させる。
寸前まで彼女たちがいた場所を、空気を殴りながら巨大な尻尾が横切る。前衛二人の攻撃が一時的に止んだと同時に、遅れてサクラがハプルボッカへの攻撃を開始する。旋回攻撃を行った隙を突いて接近した彼女は目の前の巨大な大木のように太く、岩のように硬い脚に向かって臆する事なくナールドボッシェを叩き込む。
さらに縦斬りから回転斬りへと繋げて連続で剣を振るう。柄を握る手にも次第に力が入らなくなってきたがそれでも諦めずに、痛む腕を気合で動かして剣を振るい続ける。
ハプルボッカにとっては鬱陶しい事この上ない存在でしかないサクラの攻撃。潜口竜はそんな彼女に噛み付こうと、大きく口を開く。
攻撃に対しサクラは盾を構えるが、勢いは受け止めきれずに砂の上では踏ん張る事もできずに簡単に後ろに吹き飛ばされてしまう。 -
326
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-19 23:12
ID:gX20EMvk
[編集]
追撃を仕掛けるため気ハプルボッカがサクラに接近しようとするが、それはエリア全体に響く角笛の音色によって遮られる。
三人が一斉に振り返れば、その視線の先にはエリアの端で角笛を吹くクリスの姿がある。その足下に見える電撃を見てすぐに彼の策を察すると、すぐさま散開して潜口竜に道を開ける。
角笛の音色に彼を見たのは三人だけではない。鬱陶しく肉薄乱舞していたサクラに向けていた敵意を、ハプルボッカは視線と共に角笛を吹くクリスに向ける。
低い唸り声を上げ、ハプルボッカが大口を開け走り出す。巨体故の怒涛の速度で突進する潜口竜に対し、壊れた角笛を捨てたクリスはバックステップで安全な距離にまで後退しながら奴をシビレ罠へと誘導する。
すさまじい勢いで迫るハプルボッカ。その光景にクリスは身を震わせるが、自分の前にはある意味最強の盾が存在する。奴の口は、決して自分を飲むことはない。
そして、その脚がシビレ罠を踏み抜いた───その瞬間、クリスの口元に笑みが浮かぶ。
シビレ罠を踏み抜いた事で、ハプルボッカの体を電撃が縛りつけた。怒涛の突進は硬直した筋肉はそれまでの勢いを全て妨げる杭となる。当然、突進の勢いは失われ、彼を飲み込むつもりで開いていた口は、クリスの眼前で止まる。「やってくれるわねクリス!」
「小細工は得意だからなッ! んじゃやるぞッ!!」
「うむ、皆のもの畳み掛けるぞッ!」
「よーし! やっちゃうぞー!」身体が麻痺して動くことが出来ない四人は容赦のない一斉攻撃を仕掛ける。皆これまでの戦いで確かな疲労が蓄積しているはずだが、その動きや表情はそれを思わせない程に勇ましく、峻烈だ。
すっかり外気は冷え、昼間の暑さとは打って変わって凍えるように寒い。そんな中でも四人は汗を飛び散らせながら武器を振るう。むしろ体は熱いくらいだ。
そしてハプルボッカにも変化が訪れる。「むぅッ! 足を引きずっておるぞッ!」
ツバメの言葉どおり潜口竜は突如足を引きずって泳ぎ出した。それはモンスターが弱っている証拠だ。
身構える四人だったが、彼らの予想に反してハプルボッカはそのまま足を引きずって四人とは別方向に向かう。「逃げるつもりじゃッ!」
ツバメはそう叫ぶと急いで逃げるハプルボッカを追いかける。ブランシュとサクラもそれに続き、クリスもその場で弓を引き追撃。
足を引きずるハプルボッカはそれほど速くない。一番最初に走り出したツバメはなんとか潜口竜の側面に追いつくとハンマーを引き抜いて連続して斬り付けた。遅れてブランシュとサクラもハプルボッカの後部に片手剣と太刀を叩き込む。だが、二人の猛攻撃を無視してハプルボッカは足を引きずりながらも歩き続ける。
そして、「くぅッ! 皆離れてッ!」
ブランシュの声に二人が離れた刹那、ハプルボッカは砂の中へ消えて行った。一瞬でも遅れていたら奴が舞いあげた砂をもろに被っていただろう。
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327
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-19 23:33
ID:gX20EMvk
[編集]
「逃げられたぁッ!」
サクラは悔しそうにハプルボッカの消えた地面を見つめる。ツバメも「逃がしてもうたか」と残念そうにため息した。ブランシュとクリスも残念そうにハプルボッカが消えた地面を見つめながらため息する。
「うーん、惜しかったなぁっ!」
「うむ。残念じゃ。」
「空気を読まない奴だなホント。」
「コラコラ、そんなこと言わないの。」集まった四人は幸いにも誰も怪我はなく無事だった。一行は砥石を使用し斬れ味の回復や消費したビンの調合を行う。
ツバメはくんくんと、クリスが潜口竜が地面に潜る直前につけたというペイントビンの匂いをかぎながら手に持つ地図と位置を見比べている。「ふむ。どうやら巣に向かったらしいな。 今が夜であるから…うむ、エリア3にはいけるな。」
「巣か。となると寝てるかもしれないな。 爆弾でも仕掛けときますかい? 」
「そうね。 でもハプルボッカがいりエリア3はとても狭いわよ? あの巨体なら尚更ね。 討伐するならそれでいいけれど私は捕獲を推すわ。」そう言ってツバメの持つ地図のエリアを指差しながら意見を出すブランシュ。
確かにあの狭いエリアであの巨体を持つ個体と戦うとなると苦戦は必須だ。素直に眠らせた方が良いだろう。
ともかく討伐にしろ捕獲にしろ早くハプルボッカを倒してカーサルを見つけ出さねばならない。~ハプルボッカを……~
1 討伐する
2 捕獲する>>328 なんでだろうね、修正しときます
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328
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-19 23:49
ID:Ql2HZ6Ww
[編集]
ドドブラ?
なんで? -
329
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-20 07:39
ID:ZM5dvF2c
[編集]
突拍子もない誤字は時雨さんのお家芸だから(震え声
>>330
煮物アイズさんも時雨さんだったっけーとか気になって読み返しに行ったら流石に違ったw
ついでに全部読み返しとかしたら改めてここの作者さん達のチームワーク凄いなーとか印象の割には案外兎さん書いてるシナリオ数少ないんだなーとか色々発見があったわあと誰も選択肢選んでないやんけ!2の捕獲でオナシャス
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330
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-20 09:14
ID:2j7eHyT.
思い返せばブランシュさんの名前覚えられない設定も時雨氏の誤字だからなぁ…w
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331
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-20 23:46
ID:gX20EMvk
[編集]
何も言わん、お家芸あつかいされてるのは何も言わんぞ…。
~~~~~
月の光がわずかに照らし上げる巨大な空洞。昼間だった先程よりも暗いのは夜だからというのは仕方ない。だが、そんな薄暗い洞窟の中に、目的の奴はいた。
洞窟の真ん中で眠るハプルボッカ。堂々と真ん中に居座るのは外敵が少ないこの巨体だからこそだろうか。
あれほどの大ダメージを受けていたのに幾つかの傷口が塞がっているのはモンスターの驚異的な治癒能力がなせる業だろう。
そしてエリア3に入った一行が漏らした言葉は、「「「うるさい……。」」」
「こりゃ、とんでもない鼾だこって。」潜口竜がかく鼾、そして歯軋りに対してだった。
上下の歯を滑らせるように動かしギリギリギリッという不快な音を鳴らす。同時に歯の隙間から呼吸と共にやかましい雑音を響き渡らせる。
それが洞窟中で反響している。その結果、鼾や歯軋りの音が増幅させられている。
結論───とてもうるさい。正直、耳栓が欲しくなるくらいに。「んじゃま、捕獲用にシビレ罠仕掛けてきますわ。 麻酔玉は任せたぜ。」
「えぇ、任せてちょうだい。」そう言ってクリスはシビレ罠を持ちハプルボッカに近付く。足元で作業しているため起きないかと不安はあったが、奴の瞳は閉じられたまま。鼻提灯までしている為どうやら杞憂だったようだ。
そしてクリスが罠を設置し終えると即座に始動させ、ハプルボッカの身体は再び電撃によって身体を拘束させられる。
とんでもないモーニングコールだ。まぁ、まだ夜なのだが。
そしてそのまま動くことの出来ない潜口竜に対してブランシュ達が捕獲用麻酔玉を投げ、再びハプルボッカは深い眠りについた。 -
332
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-21 23:47
ID:gX20EMvk
[編集]
「ふぅ…、ようやく終わったのう……。」
麻酔玉によって眠っているハプルボッカをみて疲れ切ったようにヘルムを外し、ツバメはその場に腰を落とした。ブランシュとサクラも同様に座り込み、足を投げ出している。
「私もさすがに疲れたわね。 帰ったらしばらく寝て過ごしそう。」
「だね─。私もしばらく動きたくないかなぁ。」そういいながら二人は苦笑を浮かべる。
激戦を繰り広げた狩人達も、狩りが終わってしまえばいつもの調子に戻る。今まで生きた心地がしないような戦いの連続だったので、ようやく一息つけたという具合だろう。「けれどしばらくは落ち着けないわね。 何せこんなにも巨大なハプルボッカを狩猟したのだもの。 ギルドに呼び出される事も考慮しておかないといけないわ。」
ハンターズギルドは常にモンスターの情報を求めている。それがまだ未知と断定されるようなモンスター、はたまた特殊個体と思われる個体ならば尚更だ。ブランシュの言葉に、「前途多難じゃのう…。」とツバメは呟き思わずサクラとツバメはため息を零した。
そんな友人達の反応を見てブランシュは苦笑を浮かべる。
そんな三人にクリスは腕組みをしながら話しかける。「……おたくらさ、当初の目的忘れてないよな?」
「む?目的とは……あっ。」
「カーサルの救助! そうだった!」「そんなことだろうと思った」と言いながらとクリスは肩を竦める。
本来の目的がカーサルの捜索兼救助、旧砂漠の調査或いはハプルボッカの狩猟がサブターゲットではあったのだが、未知なる個体との狩猟ですっかり頭から抜けてしまっていた。「んじゃま、こいつのギルドへの受け渡しの作業とか済ませてからカーサルの奴を探すとしますかね。 ホットドリンクもクーラードリンクも必要ない場所っていうのは検討つくしな。」
そう言いながらクリスは眠りこけているハプルボッカの頭をパシパシ叩く。目覚める様子はない。潜口竜の方からしたら蚊に刺されたようにしか感じないだろう。
───ハプルボッカの口の中から声がする。
何が起こってるんだと思いながら、顔を近付けると潜口竜の上顎が急に持ち上がり、クリスは驚いた様子思わず尻餅をつく。
そしてハプルボッカの口の中から彼はなんとか這って出てき、新鮮な空気を吸いそして叫んだ。「───死ぬかと思ったっ!!」
「「生きてたーッ!?」」
「というか食われてたのね…。」救助を求めていたハンター、カーサル・ロマンシアがハプルボッカの体内から帰還したのであった。
-
333
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-22 23:34
ID:gX20EMvk
[編集]
何故彼がハプルボッカの体内にいたのか。それはカーサルがハプルボッカに襲われたことから始まる。
明日でエピローグサッと書いて終わりだと思います。
蟹氏シナリオの引き継ぎは任せた()
~~~~~潜口竜のその圧倒的な図体に圧倒され、カーサルは命欲しさに逃げ出したという。
ハンターにとって打ち勝つばかりが生きる道ではない。時には誇りと名誉を捨て、命と大事な者の為に逃げるという選択肢もある。
逃げるのに邪魔になると武器を投げ捨て、石柱に身を潜め救助依頼を伝書鳩に括り付け送り出した直後、自分の真下から潜口竜が飛び出してきて───。「───で、奴に食われておったということか。」
「そういうことだ! ただそう簡単に消化されまいと奴の体内で剥ぎ取りナイフを振り回していたがな!」
「あぁ、あの変な動きはそういうことだったのか…。」
「うむ、その通りだ! ……ところでマイプリンセス、君は今、幸せか…?」
「ふぇ?」先程までの威勢はどこへやら、サクラの方へ向いたカーサルがやけにしおらしい。
一体何があったのだろうか。サクラは多少戸惑いながらも、ここではっきり言うべきだと思ったのか、正直に言い始めた。「うん。 一週間ぶりに心から笑ったし、大騒ぎできた…あなたに絡まれてから、私、テントでも笑えなくなったから。」
「……」
「私、正直言って、あなたのこと好きじゃないの。 だから、もう私に付きまとうのはやめて。 ……人の迷惑も考えてよ…!」
「そう、か…そうなのか…。」カーサルはそう呟きながら、一歩サクラから引いた。
サクラから気まずそうに視線を逸らし沈黙するカーサル。クリスは小さくため息を零すと、彼の肩に手を置き耳打ちするように話しかける。「な、なんだお前は……?」
「おたくさ、前にサクラは素直じゃないって言ってたよな? それさ、そうであると思いたいから、そう言っているに過ぎないと思うんすよね。 だから何度もアタックすれば、いずれ振り向いてくれる…自分も好きだからいつか彼女も好きになってくれる…」図星だった。
口では自意識過剰なことを言いつつも、カーサルはずっとこれまでの四九九人の女性のようにサクラも自分を嫌っているのだと、薄々自覚していた。
だが、今度の恋は本気だった。
記念すべき五〇〇人目のアタックと言うこともそうだったが、一週間経っても好きでいられた相手などいなかった…
三、四日経てば好きでなくなる女性は、「その程度の恋だった」とスッパリ諦めて、別の女性に声を掛ける。
サクラだけだったのだ。
熱しやすく冷めやすい自分の中で、こんなにも恋心を抱いていられた相手は。「本当にサクラが好きならば、サクラの嫌がるようなことをしない…つまり自分から身を引くのも、選択肢の一つだと俺ぁ思いますよ。」
そう言われてカーサルは彼等がハプルボッカを捕獲し終え、何とかして脱出を図ろうとし歯の隙間から見えたサクラの姿を思い出した。
狩猟を終え三人の仲間と談笑していたサクラはどこか楽しそうに見えた。
あんな彼女は、自分が思いを寄せるようになってから一度も…見たことがない。
あんなに楽しそうなサクラは、見たことがなかったのだ。「なんということだ…」
「幸せってのは、自分勝手なものほど誰かを不幸にする…本当に彼女の幸せを願うのならば、自分は損をする結果であろうとも…その人の幸せな姿を望むべきっすよ。」
「マイプリンセスの…幸せな、姿…」そう呟いてカーサルは俯いていたが、突然大声を上げた。近くにいたクリスは驚くが、そんなこと気にせず彼は話し始める。
「分かったぞ! マイプリンセスの事はスッパリ諦めるとしよう!」
「えっ!?」
「あら潔いわね。 クリスに何か言われたのかしら?」
「いやぁ何も言ってませんよ? 恋愛についてのアドバイスとか何のことやらってやつっすよ。」
「マイプリンセスの幸せには私は不要だ! そしてロマンシア家は約束事は必ず守るのでな!」ハッハッハッと大声を上げ笑うカーサル。
───やっと分かってくれたようだ。
そう思い、すっかり安心する仮面面々だったがカーサルはある人物を見つけ指を差す。 -
334
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-23 10:06
ID:r9G/sj0k
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―さて、カーサルが指差したその相手とは?
1.ブランシュ
2.ツバメ
3.クリス -
335
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-23 10:57
ID:l9.7a0FM
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2のツバメ!
-
336
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-23 11:17
ID:2j7eHyT.
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-
337
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-23 21:06
ID:gX20EMvk
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お前らのその団結力なんだよ!やってやろうじゃねぇか!
~~~~~「時にクリスとやら、あの女性はなんという名なのだ?」
「あ? あの女性って…」カーサルの指を指す場所を辿ってみれば、そこにはランポスXシリーズ(なぜか男性用)に身を包んだ肩にさらりと掛かるくらいの黒髪に黒瞳をしたかわいらしい女性が立っていた。
それを見たクリス、そしてツバメ以外の 女性二人は───色々と悟っていた。
……またツバメが女性と勘違いされているな………と。「アイツはツバメ・ハルカゼって言うんだが、残念だったな。ありゃおとk」
「ツバメ・ハルカゼ……! いい名前ではないかッ! それに先程から見せている笑顔は本当に見ているだけでこちらが幸せになってしまうような笑顔だッ!!」
「いや話聞けよ、アイツはおt」
「あぁ、マイプリンセス・ツバメ! 住所は、誕生日は、好きな食べ物はなんだい!? 私に包み隠さず教えてくれたまえッ!」
「いやだから…って、あー…」クリスはツバメを口説こうとするカーサルの勘違いを無くそうと動いていたが、あるものが見えカーサルを止めるのを諦めていた。
クリスの視線の先、そこには俯いているツバメがいた。その身体はプルプルと震えており、握っている拳に力が入っているのが遠目から見ても分かった。
戦慄する空気にどうしたものかと思いながら二人を見るクリス。
しかし、そんな彼にサクラとオブランシュが必死で「こっちに避難してこい」と誘導。カーサルにバレないよう静かに、尚且つ素早く移動を開始する。
そしてクリスが二人の元へたどり着いたとき、ツバメがバッと顔を上げ剣のように鋭い視線でキッとカーサルを睨む。そしてツバメの瞳には薄っすらと涙が……。
ツバメは拳を握りしめ、走り出す。
カーサルはといえば、ツバメの視線にも気付かず走ってくる彼に対しても盛大な勘違いをしていた。
そして…「おぉ、マイプリンセス・ツバメ! 私に抱きついてくるつもりか! いいだろう、愛を持って抱きしめて……」
「───ワシは男じゃ馬鹿者おおおおおおおおぉぉぉぉッ!!」
「ぐあああああああああああッ!?」
「勘違い、凄いなぁ…。」
「まぁ当然の結果よね。」
「是非も無しって奴だな。」ツバメによって殴り飛ばされるカーサルを見ながら、三人は段差に静かに腰掛けて天井の隙間から見える星空を見上げる。
その日はは流れ星が多く空は神秘的に煌めいていた。どこに隠れていたのか、雷光虫までも空で踊り、辺りは神秘的な光に包まれた。
キラキラと輝く空を、同じくキラキラとした瞳で見上げるサクラ。そんな彼女の隣で腰にこっそり流れ星に何かのお願いをしているブランシュ。クリスからすれば、星の輝きなんかよりも彼女達の横顔の方がずっと輝いて見えていた。
そんな彼女達の輝きを、ずっと隣で見守っていたい。それが、彼の願いだった。───星空に、また一つ星が流れていく。
-
338
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-23 22:26
ID:gX20EMvk
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~エピローグ~
帰還してから数日間、彼等はギルドや龍歴院に呼び出され報告等でてんてこ舞いだった。
捕獲された巨大なハプルボッカは調査の結果、身体が巨大な点を除けば通常の個体であるため、特殊個体として記録される事は無かった。
だが存在しているだけで砂漠の生態系が崩れかねないのも確か。そして商隊が襲われる可能性だってあったのだ。
そしてカーサルに関してだがギルドによって救助された後、彼は旅に出たという。自分に幸せな姿を見せてくれるようなそんな女性を探す旅に。
因みにツバメがカーサルをぶん殴った事に関しては何故殴ったのか、何故止めなかったのかと少々お小言は貰ったものの、大怪我を負ったという訳でもなかったこともあり、説教と称賛の割合で言えば後者の方が多かったことを追記しておこう。
そして数日後、彼等は龍歴院内の食堂に集まっていた。「それでは皆の衆! 勝利を祝して乾杯といこうではないか!」
「「「おおおぉぉぉッ!」」」
「では乾杯じゃぁッ!」
「「「かんぱーいッ!」」」高らかに掲げられたツバメのビールジョッキに他三人のジョッキがカチャンとぶつかって心地良い音を響かせる。その際に中身が飛び散ってしまったのは仕方がない事だ。
基本的に男所帯のハンター生活の中で、このテーブルには誰もが振り返るような美少女が三人(正確には美少女二人と美少女っぽい男の子一人)もいるのでかなり目立ってしまう。自然と皆の視線が集まる。ちなみに少し前に三人はナンパされたが、ブランシュが一刀両断して牽制したおかげで絡もうなどと考えるアホはいないらしい。「ぷはぁッ! やっぱり勝利の後のビールは堪らんのぉッ!」
ジジイ言葉がこの時ほど似合うセリフもないなぁ、と思ったのはきっとサクラだけではないだろう。
「そうだねー。 私はジュースだけどおいしいよ。」
「うむ。しかしサクラは酒が苦手とは、人生を損しておるのではないか?」
「むぅ、そんな事ありませんよーだ」
「ははは、すまぬすまぬ。」アルコールが入ってほんのりと紅潮した頬で笑顔を浮かべるツバメ。そのかわいさはもはや兵器の領域に達している。その笑顔に魅了されて数人の野郎どもが気絶したのも仕方ない事かもしれない。
そんな二人を傍観者モードに徹して見ていたクリスそういえばと、料理を堪能していたブランシュに話しかけいた。「なぁブランシュ。 おたくらさ、ここではどんなハンターと御知り合いなんだ? この三人だけって訳じゃあ無いんだろう?」
「そうねぇ、貴方が組むのが嫌がるような人ばかりよ? 『沼地の魔女』とか『闇を呼ぶ黒猫』とかね。」
「うっへぇ、有名人ばかりじゃねぇかよ…。」
「あとは、貴方と気が合いそうなのが『刃薬のハンター』、かしらね?」
「『刃薬のハンター』、ねぇ。 聞いたことねぇな、誰だそいつ。」
「あら、話ぐらいは聞いたことないかしら。 バルファルクって呼ばれる古龍を討伐したハンターなのだけれど。」
「あーはいはい、聞いたことあるなぁ。 古龍と何度も遭遇し、その度に撃退したハンターだっけか?」そういいながらクリスはジョッキの中に入ったビールを一飲みする。ビールをグビグビと飲んでいくその姿は実に男らしいものであった。
二人の会話を聞いていたサクラが付け加えるようにして話す。「あとねーその人ゆーくんって言うんだけど、よく周りの人達にスケベハンターって呼ばれつるんだよー?」
「ぶっ!? マジかよそいつスケベハンターと同一人物なのかよッ!?」
「む? こちらは知っておるのか。」
「当たり前だ、水浴びしてる所を覗いたり女の水着姿をみて鼻伸ばしてるあのスケベハンターだろ? その名前ならドンドルマなら知らない人はいないくらいに話は広がってるからな。 そんなやつと知り合いなのか…マジか…。 」驚愕と困惑に支配されるクリスに、やっぱり苦笑いするサクラ達。そして全員こう思っていたという。
……この事を貴方が聞いていたらどう反応するのだろう、と。~~~~~
「───ぶぇくしっ!?」
「うわ汚っ!? どうしたのよ突然…。」
「いや、何だか噂されたような気がして…。」
「噂? そりゃあ、貴方も二つ名持ちでしょ? 噂の一つや二つくらいは…。」
「いや、なんかこう不名誉な方の…。」
「……はあ?」~~~~~
-
339
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-23 23:42
ID:gX20EMvk
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「───あら、楽しそうね貴方達。」
不意に掛けられたその声に皆の視線が一点に集中する。クリスも不思議そうに振り返ると、そこにはEXレイア一式に身を包んだ女性の姿が。
そんな女性にサクラは柔和な笑みを浮かべて声を掛ける。「あー、リーさんだー! 元気にしてましたー?」
「えぇ、元気よ。 貴女は聞かなくても良さそうね、良かった。 最近笑顔が売りの貴女が落ち込んでいるって聞いていたから心配だったのよ?」
「うぅ…、御迷惑お掛けしました…。」
「というかリーさんって…。 すみませんアリーチェさん、サクラっていっつもこうで…。」
「いいわよ、気にしてないから。」研ぎ澄まされた風格漂わせ周りの喧騒を気にすることなく堂々と会話する三人。一方、すっかり置いて行かれているクリス。それに気づいたツバメがアリーチェをクリスに紹介する。
「ふむ、クリス。 お主なら知っておるだろうが彼女はアリーチェ。 ドンドルマの【シルヴァ・バレト(銀弾)】とでも言えば、分かるかのう。」
「…あぁ、知らない訳がねぇ…!」そう呟いたクリスはガタリと勢いよく立ち上がるとアリーチェに近付き、その手を握りしめる。
「え、えーと…何かしら…?」
「ミス・ドンドルマ7回連続選出で殿堂入りを果たしたあのアリーチェさんだ、見間違える筈がねぇ…!」
「ああ……貴方もそれ、知っていたのね……はぁ。」銀色の輝きをくすませた彼女だったが、さすがにすぐ持ち直した。
一方のクリスは驚きを隠せない。何しろ銀弾と言えば結構名の知れた有名人だ。そんな人物が今目の前にいる。となると、する事はただ一つ。「サインくださいッ!」
クリスはバッとどこからか色紙と筆を取り出した。そのすさまじい勢いにアリーチェはビクッと震える。
「ちょっとりっくんッ! 女性を怖がらせるなんてダメだよッ!」
「冗談だよ。 そんなに怒るなって。」怒るサクラに、クリスは悪びれた様子もなく楽しそうに笑う。ブランシュとツバメもそんなクリスを見て小さく苦笑いしていた。どうやらこういうやり取りがいつもの光景らしい。
「まぁとりあえずこれも何かの縁、今日はみんなで飲んで食って騒ぐとしようか! アリーチェ殿もどうかのう?」
「そう? じゃあお言葉に甘えさせて貰うわ。 あとクリスくん、だったかしら? サインは書かせてもらうわよ。」
「マジか! ありがとうございますッ!」
「おー、なんて綺麗なお辞儀。」場の空気を変えようとツバメはみんなを席に座らせると料理や酒を注文し、飲んで食っての楽しいひと時が続くのであった。
───こうしてハンター達の日常は過ぎていく。~シナリオ45.5 砂漠よりも熱い戦い clear!~
・潜口竜のG級素材を入手しました。
・称号『大食らい』を入手しました(最大金冠サイズのハプルボッカを狩猟した)
・称号『愛の戦士』を入手しました(カーサル・ロマンシアの救助に成功?した)
・称号『鴉』を入手しました(クリス・レイヴンが仲間になった) -
340
名前:砂漠よりも熱い戦い@時雨
投稿日:2018-06-23 23:52
ID:gX20EMvk
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登場人物紹介
自称三流ハンター『クリス・レイヴン』
性別:男 年齢:24 装備 武器:弓(ギルド) 防具:フルフルR
軽薄な皮肉屋で毒舌家だが、根は善良。ただ生を尊重し、とにかく生き抜いて、その結果に温かいものが残ればいい、と考えている人物。
好きなものはナンパ。自称愛の戦士『カーサル・ロマンシア』
性別:男 年齢:20代 装備 武器:大剣 防具:レイアS
熱しやすく冷めやすい性格で妄想癖が激しく、これまで何人もの女性に迷惑掛けているという噂があり、一度カーサルに絡まれたら付き合ってくれるまで付き纏う…
というのは昔の話、今は自分に幸せな姿を見せてくれる女性を探す旅をしているらしい。 -
341
名前:あとがき@時雨
投稿日:2018-06-24 00:10
ID:gX20EMvk
[編集]
はいお疲れ様でしたー。
とりあえず一言、カーサル変態過ぎるw
いやまぁ、ある程度抑えたけれどそれでもヤバイ奴だわこいつ。・隠しクエスト名
『規格外の大口』です。え、隠れてない?ですよねー。
…なんでダブルクロスには最大金冠確定のハプルボッカのクエスト無かったんだろうか。・掛け声色々
蟹氏のシナリオをパク……参考にしましたが、まぁキャラ崩壊が酷い(褒め言葉)。
ツバメが修造になるわ、ブランシュはFF2のパラメキア皇帝だし、最後は三人でエミヤになるわ…
笑わせていただきました。・>>334と>>335さんへ
ツバメ弄りありがとうございます。お蔭で書きやすかったです()
いやもう二人の連携見た時腹抱えて笑ったよね。皆ツバメ弄り楽しんでるなって。さて次は誰がやるのかな? 引き継ぎ出来るような腕がないから任せますね。
よかったら、見ている誰が書いてみてもいいんだぜ? -
342
名前:兎
投稿日:2018-06-24 02:10
ID:h3fvt/Eg
[編集]
時雨氏シナリオお疲れ様でした、何がとは言わずとも凄まじく濃かった……(
新しい仲間のクリス君は是非ともミーシャと絡ませてみたいところですね。さて、それじゃあそろそろ自分も動きますかね、引継ぎシナリオでとりあえず選択肢まで進ませて貰います。
-
343
名前:泥も乾く戦慄@兎
投稿日:2018-06-24 02:14
ID:h3fvt/Eg
[編集]
・引継ぎシナリオ
・チャールズさんひょっとしてあのキャラかなー、とか思ってるけど一旦ガン無視
・お馬さんおk?
* * *
今回は搦め手を重視して狩猟をする――そう伝えると感心したような視線と面倒くさそうな視線、対極的な2つの視線に射抜かれた。
後者の視線の主は言わずもがなレイカだ、狩猟笛という攻防一体の武器の使い手ではあるのだが頭に血が昇ったあの状態を鑑みれば無理もない反応かもしれない。
とは言え、彼女にお願いする立ち回りは至ってシンプルだ。 普段通り頭部を狙い殴り続けて貰えればいい、そうすれば何れ土砂竜も麻痺なり眩暈なりに襲われる。
後は……折角デンジャラスハールという誂え向きな一品を携えて居るのだ、耐だるまの旋律を切らさないように心掛けてくれとだけ念を押しておく。「その程度なら別にいいわよ、けど他の小難しいことはあんたに任せたからね。」
きっぱりと言い切ったレイカの様子に、やれやれと言わんばかりにエドが肩を竦めてみせる。
……それでも、彼女の言い分にもそれなりに利はある。 敵と肉薄し続けるであろうレイカより、少し離れた立ち位置で戦う自分やエドが搦め手を主導するには適しているだろう。「予備弾の材料までは持ち込んでないからな、悪いがヘマをした時は笑い飛ばしてくれ。 それにコイツは初陣でもあるからな。」
初陣とはなんの事だろうか、軽口を叩きながら弾を込めているのは彼の愛弩アルバレストだ、別に変わった様子は――いや、改めて見れば違和感がある気もしてくる。
「さて、作戦も纏まったな? こんなところでぐずぐずしてないで早いところチャールズと合流するとしよう。」
……違和感の正体は拭えないままだが、確かにそれを追究している場合ではないだろう。
とりあえずの作戦会議を終えると、チャールズが信号弾を打ち上げたであろうエリア1へと向かうことにした。* * *
地理的に言えばベースキャンプからエリア1までは然程離れている訳ではない、しかしそこへ向かうにはセクメーア砂漠で最も広大なこのエリア2を抜ける必要がある。
ただでさえうんざりする様な道程だというのに、一刻も早い合流が望まれる今のような状況では、いっその事半分くらいに縮んでほしいとも思えてしまう。「……ん? あそこに居るのはチャールズじゃないか?」
並走していたエドの声に驚いて視線を向ける。
エリア1との境界近く、そこには照り付ける太陽で赤熱したと言われても信じてしまいそうな色彩の鎧に、逆さバケツの様な形状の兜――紛れもないチャールズ本人の姿があった。「ボルボロスを撒くのに少々梃子摺りました、合流が遅れ申し訳ありません。」
会話の出来る距離にまで近付くと、彼は開口一番に謝罪を述べて丁寧に頭を下げる。 ――特に異常はないようだが、先程の信号弾は何だったのだろうか。
「お恥ずかしい話なのですが、誤射です。 エリア1に踏み入れたところ目の前にボルボロスが居ましたので――」
「面食らったって訳ね、それだけ立派な兜してるのに。」レイカの一言に僅かな金属音を立たせて兜の角度が変わる、火竜の番いを制するような実力者にもミスはあるという事か……
何にせよ、ここで合流できた事は僥倖と言っていいだろう、ベースキャンプで立てた作戦を、一先ずは安全な状況でチャールズにも伝える事が出来る。「搦め手の旨肝に銘じておきます、御期待に沿える働きをしてみせましょう。」
これで事前準備は万端だろう、すぐ近くから独特な臭気が漂ってきているということは、土砂竜もエリアを離れてはいないはずだ。
「はいはい! じゃあ先にやること済ませるからね!」
話が終わるや否や、レイカがデンジャラスハールを数度振り回して旋律を奏でる。
演奏は2回、先程頼んでおいた耐だるまの旋律と――力が湧き上がるこの感覚は攻撃力強化の旋律だろうか、頭に血さえ昇っていなければ彼女もしっかりと仕事をしてくれる。「……信号弾さえ打ち上げればこちらに来ざるを得ないですからね。」
――演奏に紛れたその呟きは、誰の耳にも届くことはなかった。
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344
名前:泥も乾く戦慄@兎
投稿日:2018-06-24 02:16
ID:h3fvt/Eg
[編集]
一斉にエリア1に雪崩れ込むと、ボルボロスはもう泥沼に浸かっては居らず見失った敵を探して頻りに動き回っていた。
微かに感じる息苦しさ――どうやらチャールズは逃走の際に煙玉も併用したようだ、何とも用意のいい奴である。
各々が背にした武器を抜き放つと、こちらに気が付いた土砂竜は二度後ろ足で力強く砂を蹴り上げる。――音もなく舞う砂塵、大気を震わせる咆哮。
大抵のモンスターに共通するこのルーティンは、戦いの開始を告げるゴングのようなものだ。
真っ先にレイカはボルボロスの眼前へと躍り出て、チャールズは飽くまで冷静に正面やや右へ――『司教』の名に違わず、斜め前へと進み出る。
後方ではエドがアルバレストを構えたであろう重厚な音が聞こえ、その中間地点に立つ自分はネルスルペレザ越しに土砂竜を見据える。――布陣は整ったが何をすべきだろうか、搦め手を重視すると言えど選択肢は数多い。
手元には紫色と薄氷色をした2色のビン、毒ビンと睡眠ビンがある。 自分の出来る搦め手と言えばこの2つと手持ちの道具だ。
正確にはもう1つ手段があるのだが実行するには難易度が高い上に、それを行うのは自分よりも適任なハンターばかりが揃っている、除外していいだろう。さて、以上を踏まえてどう行動してどう指示を出すか―
* * *
自分の行動
1.睡眠を狙う(睡眠ビン消費)
2.毒を狙う(毒ビン消費)
3.スタンを狙う(アイテム消費無し・難易度高)
4.アイテムを使う(指定したアイテムを消費)
5.搦め手なんて関係ない、攻撃だ(強撃ビン消費・攻撃部位指定のこと)
6.自由枠仲間への指示
1.睡眠を狙う(エド主体)
2.麻痺を狙う(レイカ主体)
3.スタンを狙う(チャールズ主体・エド、レイカも補佐可能)
4.アイテムを使わせる(誰が何を使うか要指定)
5.とりあえず自由に攻撃して貰う(意図しない状態異常が発生する可能性あり)
6.自由枠なお明日(時間的には今日)から夜勤の為投稿が遅れる可能性があります、3日ルールは厳守するつもりですがご了承頂ければ幸いです。
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345
名前:時雨
投稿日:2018-06-24 06:50
ID:gX20EMvk
[編集]
お、引き継ぎは兎氏か、頑張って下さい!
選択は自分は2、仲間達は3でお願いします。さあて、暴走モードのレイカをどんな風に書いてくれるのか楽しみですな。
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346
名前:泥も乾く戦慄@兎
投稿日:2018-06-24 18:18
ID:h3fvt/Eg
[編集]
盾斧、狩猟笛、そして徹甲榴弾の撃てる重弩。
この面子で真っ先に狙うとしたらやはり眩暈だろう、頭部へ攻撃を集中させて一気に意識を奪ってしまえばいい。
3人へ指示を飛ばすと、ポーチから紫色のビン――毒ビンの蓋を指先で弾き飛ばし、鏃に毒液がかかるよう取り付ける。
弓にも一応曲射という選択肢はある、しかもブレイヴスタイルならそれ専用の矢を前方へ撃つと言う特殊な方法があり狙いも付けやすい。
……勿論、『手馴れた弓使いならば』という枕詞が付くが。 少なくとも今の腕でそれを狙うのは無謀だろう、大人しくこちらで援護をした方がいい。「かかって来なさいよこの頭でっかち!」
口調と同じで荒々しく振り上げられた狩猟笛が土砂竜の左顎を捉え鈍い音が鳴る。
間髪入れずに反対側へも振り上げを見舞うが、素早く飛び退ったボルボロスの鼻先を掠めるだけに留まり、レイカは忌々しげな舌打ちと共に獲物を担ぎ直す。「突進、来ますよ!」
くぐもった声色が警告を発する、その刹那頭を垂れた土砂竜が砂を掻き分けながら猛進してくる。
進路上に居たチャールズは咄嗟に盾で――正確には斧刃になる部分で――何とか一撃を受け止め、追撃しようとしていたレイカも彼の警告のおかげか寸での所で難を逃れる。「うおっと……っ!」
それでもボルボロスは勢いを止めず、延長線上に居たエドワードは咄嗟に声を上げながら間一髪で砂に身を投げた。
止まり際に頭で跳ね上げた泥塊が不規則な放物線を描き、その1つはかなり離れていた自分の傍らへも落下してくる。「――油断ならん奴だなっ。」
悪態を付きながらも着地と同時に装填を終え、振り向き際のボルボロス目掛けトリガーを引く。
周囲に誰も居ないタイミングで頭部に突き刺さった徹甲榴弾の小規模な爆発が土砂竜の脳を揺らし、毒液に塗れた矢が数本胴へと突き刺さる。
相手が完全にこちらへ向き直ったのと同時に、2人の斜線を遮らぬように再びレイカとチャールズが前に出る、何時の間に属性強化を終えたのかチャールズの盾は既に赤く発光していた。
感心するのもつかの間、ガシャン、と重たい音と共にチャールズは身を捻る。 剣と盾が結合され斧へと変化し、左右へ素早くステップを踏んでいたボルボロスの頭部を叩き切った。
その一撃にほんの一瞬土砂竜の動きが止まる、後の先を見切る騎士はそれすらも予測していたのか、全く躊躇いも見せず盾斧を二回転させ顎下へ斬撃を叩き込む。
チャージアックス特有の置き土産が爆裂する、何処となく動きが鈍ったように見えるのは、度重なる攻撃で既に眩暈を起こしつつあるからだろうか。「また来ますよ!」
再び警告を残しつつ、チャールズは大きく横へと距離を取る。
今度は飛び退らずその場で頭を垂れた土砂竜の突進が砂を巻き上げて、狩猟笛を振り被っていたレイカはそのまま尻餅を付くように倒れてしまう。「っ!!」
鈍い衝撃音、アルバレストのシールドが軋み、エドワードが大きく後退する。
またも予期せぬ攻撃に巻き込まれ、泥除けの為にと取り付けていたシールドで命拾いをした彼は愛弩を背負い直すと、冷静に後方へ下がり体勢を立て直す。――何だろうか、この違和感は。
順調にボルボロスを攻め立てている筈なのに、本能的な部分が何故か警鐘を鳴らしている気がしてならない。
「何時までも走り回るんじゃないわよ!」
怒号と共に振り下ろされたデンジャラスハールが空を切り砂塵を巻き上げる、入れ替わるように『チャールズが』頭部を狙うも飛び退られ――
「突進です!」
「また?! あー、もうっ!!」そして『発せられる警告』と『予言のように突進してくる』ボルボロス。
「全く、一体今日何度目だっ!」
――『予期せぬ攻撃に巻き込まれるエドワード』。
違和感が確信に変わる、これは偶然なんかじゃない。
この乱戦の中アイツは、後の先を見切る騎士は遺憾なく土砂竜の動きを見切り、偶然を装ってエドワードが巻き込まれるように立ち回っている――!! -
347
名前:泥も乾く戦慄@兎
投稿日:2018-06-24 18:20
ID:h3fvt/Eg
[編集]
味方の中に敵が居る、その事実に気付いた瞬間背筋に冷たいものが流れる。
ここまで既にチャールズの想定通りに事が運んでいるのだ、このまま戦えば、そう遠くない内にエドは――
仲間が潰れたシナトマトになる光景を必死に払拭し、痛いほどに脈動する心臓を落ち着かせる。
この事実に気付いた以上、このまま狩猟を続けるのは危険かもしれない。――だが、どうする?
確信はあるとは言え証拠はない、万が一に偶然だとすれば仲間から信用を失いかねないし、チャールズも不信感を抱くだろう。
とは言えこの様な芸当が出来るのならば、動かぬ証拠を出すようなボロは決してしないだろう。「このっ! 早く倒れなさいよっ!!」
幾ら動きが鈍りだしたとは言え、完全に動きを止めた訳ではない土砂竜に打撃を避けられ、レイカが苛立たし気な声を上げる。
……敢えてこのまま狩猟を続けるのも1つの手ではある。 もうじき引き起こされるだろう眩暈を皮切りに、ボルボロスの動きを止め続けられれば、或いは――「どうした、ボサっとしている暇はないぞ!」
いつの間にか隣に現れたエドワードの声で我に帰る、今ここで長々と思案しているような時間はないのだ。
弓を握る手に力が篭る、この弓を託した彼女ならどんな選択肢を取るだろうか? ……いや、その考え方はダメだ。 狩猟前に叱責されたばかりではないか。
エドの為にも腹を括ろう、今やるべきことは――* * *
1.狩猟を続行する
2.狩猟を中断する
3.自由枠>>348
すまん、流石にそれを文章に起こす自信ないわ…… -
348
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-24 18:33
ID:wxkgWbhI
[編集]
3.自分の尻を両手でバンバン叩きながら白目をむき 「びっくりするほどユートピア!びっくりするほどユートピア!」 とハイトーンで連呼しながら角笛を出し仕舞いする
(タゲ取り) -
349
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-25 00:16
ID:r9G/sj0k
[編集]
ビショップ先輩は悪霊に憑りつかれている可能性が微レ存…?
-
350
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-25 00:21
ID:HblXASv2
[編集]
角笛でタゲ取り自体はいいと思われ
あとはエドワードになんとか伝えときたいところかね -
351
名前:泥も乾く戦慄@兎
投稿日:2018-06-25 18:25
ID:h3fvt/Eg
[編集]
小難しく考えすぎていたかもしれない、そもそも自分がボルボロスの気を引いてしまえばチャールズの目論見も水の泡になる。
弓を背に戻すとアイテムポーチから角笛を取り出し、砂漠特有の熱っぽい空気を胸いっぱいに吸い込んで口を当てる。――余談だがこの瞬間、何故か『びっくりするほどユートピア!』などと叫びながら奇行に及ぶイメージが降って湧いたが、一体なんだったのだろうか。
音を遮断する物の殆んどない環境で響き渡る甲高い音色、これに勝る物があるとすればレイカが掻き鳴らすデンジャラスハールくらいだろうか。
突然の行動に3人が一斉に、そして当然の如くボルボロスもこちらに視線を注ぐ。
つい先程までチャールズとレイカを振り払うべく尻尾を振り回していた土砂竜は、脇目も振らず一直線に駆け寄ると槌の如くその頭部を振り下ろす。
足を取られている訳でもないのにそんな単調な攻撃に当たってやる義理もない、今までの意趣返しのように飛び退ってやると、何もない地面が穿たれて砂塵を巻き上げる。「あんたはずっと突っ伏しときなさい!」
よほど音色が癇に障ったのか、こちらを威嚇するボルボロスに横槍を入れたのはレイカだった。
両腕で大上段に振り被った狩猟笛が右即頭部へと力任せに叩きつけられ、不意を付かれた土砂竜の頭が激しく地面でバウンドする。
その衝撃が決め手になったのか、ボルボロスは力なく両足から崩れ落ち、呻き声と共に横倒しになる。「ざまぁ! ないわねっ! そうやってっ! 突っ伏してるのが! お似合いよっ! ほらっ! もっとっ! いい声でっ! 鳴いてみせなさいよっ!!」
――こちらもよっぽど鬱憤が溜まっていたのだろう、言葉の区切りと共に振り回される狩猟笛が土砂竜の頭部を滅多打ちにしていく。
チャンスなのだからせめて胸部を殴って欲しいものなのだが、高笑い交じりの猛攻をみせる彼女は完全に暴走モードだ、恐らくは何を言っても届かないだろう。「アマネの奴はあの嬢ちゃんをよく制御できるもんだな。」
呆れ混じりに呟くと、エドワードは片膝を着いてアルバレストの銃口をボルボロスに向ける。
しゃがみ撃ちの構えだが、対応している弾丸は確か最も威力の低い通常弾だけではなかっただろうか……?
疑念を口にしようとした瞬間、想像を倍近く上回る威力の弾が土砂竜の前足を撃ち抜いた。「言っただろ、こいつの初陣だってな。」
――次々と撃ち出される弾丸を見てベースキャンプで感じた違和感の正体に気付く。
改良されていたのは銃口だった、更なる強敵と渡り合う為にしゃがみ撃ちに対応する弾丸を増やしたのだろう。
ならばこちらも実力を見せてやらねば、前脚……は流石に狙う自信がないので、多少は的の大きい尻尾目掛け丁寧に矢を放っていく。
結合を解除したサリーレローグで切りかかるチャールズの姿を視界の端で捉えながら射り続けると、見る間に外皮が変色を始める――毒が回りきった証だろう。時間にして10秒程だろうか、されるがままだったボルボロスがようやく立ち上がる。
形勢不利と判断したのだろう、一度頭を振ると一目散に南へ走り出して姿を消した。「逃がすわけないでしょうがっ!!」
どこまでも暴走し続けるレイカをどうにか押さえ込み、各自砥石等の追撃の準備を行わせる。
――もう1つ大事なことがある、エドに事情を伝えなければ。 弓の調子が悪いとか適当な事を話してエドをチャールズから引き離すと、一連の事情を手短に説明する。「……俄かには信じがたいが、お前の勘は不思議とよく当たるからな。 十分注意しておこう。」
これで当面は安全だろうか、やり取りをチャールズ本人に勘付かれた様子は……今のところなさそうだ。
一先ずは胸を撫で下ろし、次の作戦を練るために待たせていた2人と合流する。「初手は上手く運んだようですね、次はどうしますか?」
何ともまぁ、白々しい奴だ。 内心怒りが込み上げてくるが決定的な証拠でもなければこの場で糾弾することも出来ない。
ここからはエドワードというキングを守り通せるか、はたまた奪われるか、俺とチャールズの頭脳戦になるだろう。
彼に手出しをさせない為には、やはり土砂竜を拘束し続けてしまうのが正解だろう、現状手にしたカードでそれを達成するにはどうするべきだろうか――* * *
・ボルボロスを拘束するため誰が何をするか、3手分纏めて選択してください。
一例:主人公が閃光玉→レイカが麻痺→チャールズが落とし穴 -
352
名前:時雨
投稿日:2018-06-25 22:46
ID:gX20EMvk
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三手纏めてかー
なら主人公が落とし穴→レイカのデンジャーコールで麻痺→チャールズの榴弾ビンとエドワードの徹甲榴弾でスタン、はどうかな?やっぱりチャールズは彼しかいないよなぁ。
彼だったらエドワードを『あの男』っていうのも納得いくし。
問題は彼、ライトボウガン使ってた気がするんだよなぁ。そこら辺はどうなんやろ。 -
353
名前:泥も乾く戦慄@兎
投稿日:2018-06-27 11:08
ID:h3fvt/Eg
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ちと職場で腑に落ちない事があったから一日不貞寝して投稿サボらして貰った、申し訳ない。
* * *
落とし穴に嵌めて身動きを取れなくしレイカ主体の攻撃で麻痺を、その後榴弾ビンと徹甲榴弾で再び眩暈を狙う。
泥を飛ばす程度の遠距離攻撃を持たないボルボロス相手なら仕掛けた罠にも誘導は容易、先程からデンジャラスハールで殴り続けた事で麻痺毒も浸透しつつある筈だ。
眩暈は流石に耐性を付けてしまっているだろうが、攻撃を集中させれば二度目はまだ狙える圏内ではある……そう思いたい。
G級個体との戦闘経験が少ないため確証は持てないが、今までの感覚で行けば捕獲も視野に入る頃合だろう。 可能ならば一気に勝負を仕掛けたいところだ。「細かい作戦もいいけど肝心なこと忘れてるでしょ、ほらっ!」
手筈を伝え終えるとレイカが狩猟笛を振り回し、次々と音色を奏でていく。 耐だるま、攻撃力強化、そして最後の旋律は暑さ無効――つくづく今回の狩猟にうってつけの武器である。
「万が一眩暈に陥らなかった場合は個々の判断でよろしいでしょうか?」
……恐ろしい腹の内など微塵も感じさせない自然さでチャールズが口を開く、尤も、自分でさえ何も気付いていなければ『慎重な奴』という印象だけで終わっていたのだろう。
大方さり気なく攻撃の手を緩めギリギリのところで眩暈を引き起こさせず、土砂竜の反撃にエドを巻き込む心算なのだろう。「なぁに、こいつはこう見えていい判断力をしてるんだ。 万が一の心配なんて要らないさ。」
「……そうでしたか、これは失礼を。」肩に手を置きながらエドが話に入ってきた途端、短くそう返答してチャールズは話を切り上げてしまう。
「さて、作戦会議もこれくらいでいいだろう。 手早く片を付けるとしよう、『いつも通りに』な。」
気負いすぎるな、と言外に仄めかしているのだろう。 さり気ない気遣いに頷きを返すと、逃げ出したボルボロスを追って砂漠の南端へと走り出した。
* * *
ボルボロスの姿は巨大な石柱のすぐ傍にあった。
逃げ出した後もこちらを警戒していたのか、視線が合うや否や姿勢を低くしながら鳴き声をあげ威嚇を行っている。
土砂竜からすれば堅実に様子見をしているのだろうが、罠を仕掛けるにはうってつけのチャンスだ。 ポーチから取り出した落とし穴を手早く設置すると、聞き慣れた起動音が響く。
示し合わせたわけでもないのにレイカがデンジャラスハールを出鱈目に鳴らせば、挑発に乗ったボルボロスは真っ直ぐに駆け寄り――半身が砂の中へと埋没する。「さぁ、もう一回いい声で鳴いてみせなさいよ……あっははははははははははは!!」
……突然スイッチが入るのがこの暴走列車だ、後先を考えた様子もなく、縦横無尽に狩猟笛を振り回し頭部を打ち据えていく。
その僅かなチャンスを縫うようにして、土砂竜の意識を奪おうとアルバレストの徹甲榴弾とサリーレローグの榴弾ビンの爆発を繰り返す。
懸命に前脚を動かし穴から這いずり出ようとしていたボルボロスが不意にがくりと項垂れた、時折身体を痙攣させている――どうやら麻痺毒も回ったようだ、ここまでは順調に進んでいる。
頭部に集中する猛攻、響く爆音と打撃音、そしてレイカの高笑い――それでもやはりと言うべきか、状況を動かしたのはボルボロスだった。
痙攣が治まり前脚に力が込められると、見る見るうちに埋没していた下半身が姿を現していく。 早々に眩暈を諦めたチャールズは1人素早く斜め後方へと下がり安全圏へ脱する。ここで土砂竜を自由にしてしまえば奴の思う壺だ、盤面を引っ繰り返すにはダメ押しの一手が必要になる。
あと僅かで眩暈を起こすであろうボルボロスの動きを止め続けるその一手は――* * *
1.俺の行動に掛かっている
2.レイカの行動にかかっている
3.エドの行動にかかっている
4.チャールズの行動にかかっている -
354
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-27 23:57
ID:Mur/FvWU
3でエドワードさんに任せちまいましょう
カレならかっこよく決めてくれるはず -
355
名前:泥も乾く戦慄@兎
投稿日:2018-06-28 18:17
ID:h3fvt/Eg
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――自陣のキングに相手のポーンが肉薄したならば、次に打つ手は他の駒でポーンを排除するかキングを逃がすか、それが一般的な考えだろう。
しかし彼はそれだけで策を打ち破れるような相手ではない、逆転の一手には盛大に裏をかいてやる必要がある。
本当のチェスとは違う点が2つある。 1つは敵味方共に一手で倒れる事はないこと、もう1つは……こちらのキングは、黙って守られているような大人しい奴ではないと言うことだ。「コイツはサービスだ、遠慮せず取っときな!」
埋没していた半身が完全に現れると同時に足元に滑り込んだエドワードが引き金を引くと、手にしたアルバレストの銃口が白群の輝きを放ち始める。
爆音、跳ね上がる砲身、体勢を整え反射的に威嚇を始めていたボルボロスの身体が僅かに浮いて横倒しに倒れる。「お膳立てはこんなもんだろ!」
竜撃弾――限られた一部のボウガンでのみ発射可能な弾丸は、その名の通りガンランスの竜撃砲と同等の威力と反動を誇る。
足元で砂煙を巻き上げて漸く反動を押し留めたエドは、悪戯を成功させた子供のように笑ってみせる。
比喩表現ではなく文字通りに足を掬うには十分過ぎる程であり、それにより生まれた僅か数秒の隙も彼女にとってはお釣りが来る程だ。デンジャラスハールが砂漠の日差しに翳りを齎す、小さな風切り音は『悪魔の警鐘』の名に違わぬ狂笑に掻き消され、鈍い打撃音だけが痛烈に響き渡る。
特徴的な頭部が砕けて砂上に落ち、口から撒き散らされた正体不明の体液が熱砂に焼かれる。
並みの生物や人間ならばまず落命したと確信出来る状態にも関わらず、土砂竜は眩暈を起こしただけに留まり、呻き声と共に手足を動かしてもがき続ける。――機は熟した、最早これ以上搦め手に頼る理由もない。
総攻撃の号令をかけると赤い薬液入りのビン――弓使いの決戦兵器、強撃ビンを取り付ける。
次いで放つは特殊な薬剤を結び付けた矢、頭上で飛散させた粉を浴びれば嘘のように身体が軽くなる。
自身の強化を終えると同時に、必死に何かを掴もうと前後する前脚へと矢を放つ、腰を落としもう一度、更に一歩足を引いてもう一度。
決して派手な一撃ではない、それでいて次々と突き刺さる矢は獲物に忍び寄る蜘蛛の如く、確実にその生命を追い詰めていく。「失礼致しますっ!」
この状況では傍観も出来ないのだろう、矢を射終えた僅かな間を縫ってチャールズが横切る。
結合させ下段に構えたサリーレローグから伸びた赤い刃で、分厚い泥の装甲ごと深々と胸部を切り裂いてみせると、射線に残らぬよう素早く身を翻して斜め後方へ下がる。
これだけの腕を邪な事にさえ使わなければ頼もしい仲間だったのだろう、頭の片隅でそんな事を考えながらも、再び淡々と矢を放っていく。
体に纏う泥の大半が剥がされたところで土砂竜は漸く身を起こしたが、最早戦うだけの力が残っていないのは明らかだった。「逃がすわけないでしょ……あなたの墓場はここなのよぉ!!」
片足を引き摺り北へと撤退し始めるボルボロスを、恐ろしい笑みを浮かべたレイカが追いかける。 これではどちらがモンスターなのか知れたものではない。
笛による身体強化と薬品による身体強化で自分と彼女は素早く動ける、同じように追撃する為にネルスルペレザを構えたまま走り出し――――ゴゴォ、と何かの音が耳についた。
咄嗟に辺りを見回すが特に異変はない、他の3人も至って平静だ。
……得体の知れない圧迫感、まるで心臓を鷲掴みにされているかのようなこの感覚は自分の気の所為なのだろうか。急速に口の中から水分が失われる、ノイズが走ったかのように視界がチラつきだす。
無意識の内に研ぎ澄ました五感が、ゆっくりと流れる世界の中で見つけ出した物は――* * *
1.レイカの前で不自然に巻き上がったように見えた砂塵
2.エドワードの後ろで唐突に盛り上がったように見えた地面
3.チャールズの横で徐々に色を濃くしたように見えた影 -
356
名前:時雨
投稿日:2018-06-28 21:05
ID:gX20EMvk
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これはどれ選んでもあれかなー?
…じゃあ、3で() -
357
名前:泥も乾く戦慄@兎
投稿日:2018-06-30 11:40
ID:h3fvt/Eg
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いやぁ、この大雨の影響で断水やらなんやらで書く暇なかったわ……
* * *
チャールズの横に不自然に色を濃くした影が見えた気がして咄嗟に振り返る。
唐突な行動へ逆さバケツ越しに訝しげな視線を送る彼の横には――――何も、ない。
日の翳りにでも過敏に反応しすぎただけなのだろうか……全ては杞憂だった、そういう事か。
――ゴゴォ。
いや、今度ははっきりと聞こえた、それは自分の背の方から――ボルボロスとレイカの居る方から。
振り仰いだ瞬間、砂柱が立ち昇った。
砂中から現れた者は土砂竜とレイカを簡単に吹き飛ばし、黄土一色だった大地へ鮮やかな紅い華を咲かせてみせた。見開かれた瞳に映る世界の中、糸の切れた操り人形のように四肢を垂れ下げたまま彼女の身体が砂上で跳ねる。
その剛角でボルボロスの胴体を穿ち凄惨な風穴を空けた主は煩わしげに首を振るうと、既に事切れた相手を弄ぶように尾を叩きつけ首筋を潰しにかかる。
弄ぶ、などと言う表現は間違いかもしれない。 それは執拗に、徹底的に、万が一にも生き延びることがないよう過剰なまでの殺意を込めて行われていた。汗が頬を伝うのに、全身に鳥肌が立っている。 その場に居る全員が、自然界で起こりえないだろう光景を只々恐れながら見続ける事しか出来ない。
やがて竜の挽肉を精製する作業にも満足したのか、それはゆっくりと次の標的に……砂上で不恰好に突っ伏したままのレイカへと向き直る。後ろから蹴り飛ばされたかのように身体が動いていた、全身の力を脚に集約させて砂を駆け、無我夢中で気絶している彼女を抱えあげて――すぐ背後で、何が叩きつけられる轟音。
そこから何をしたのか、覚えているのは無理矢理レイカの口に回復薬か何かを流し込んだ事と、モドリ玉を叩きつけて戦場から離脱させた事。「こいつが、例の正体不明のモンスターとやらか……」
……改めて向き直った、異様な角の生え方をしたディアブロスの形相が、とても恐ろしかったこと。
頭、翼、脚、尾――身体の端々に多量の飛沫を浴びたかのような濃紺の模様、それは繰り返しこびり付いた返り血なのだろうと容易に想像がついてしまう。
そしてこの角竜が今考えて居ることは何か、それも推し測る事もまた易い。獲物が横取りされて面白くない、と。
軽く後方へ身を引くような予備動作から突き出された、数多の命を葬り去ったであろう禍々しい剛角が脚を掠めた。
脛の辺りに走る鋭い痛みが放心しかけていた意識を引き戻し、現状を打開すべく思考回路を急速に動かし始める。
ボルボロスは――首から先がミンチになってはいるが狩猟は出来た、という認識で良いのだろうか。 そして分かりたくもなかったモンスターの正体もはっきりした。
ならば後は帰るだけではないか、問題はこのおぞましいディアブロスを何とか撒くだけだが――その問題に直面しているのも自分だけだ。チャールズとエドワードにモドリ玉を使うように指示をする、1人は何の迷いもなく、もう1人は僅かな逡巡の後に緑色の煙に包まれてその姿を消した。
微かな唸り声と共に角竜がこちらを見据えている、何の策もなく背を向ければ自分もあの染みの仲間入りだろう。手元にあるアイテムは調合書、回復薬各種、強走薬、閃光玉、音爆弾、シビレ罠、タル爆弾。
そしてまだ使っていない睡眠ビンと調合材料、こんな所だろうか。 これらで上手く相手を撒くには――* * *
・『使用するアイテム』と『逃げるエリア』を選択してください。
・別途アイディアがあれば自由枠として受け付けます。 -
358
名前:天ノ者
投稿日:2018-06-30 15:17
ID:59nVq676
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砂漠の南端っていうとエリア5ですかね?
であれば閃光玉を使ってエリア6→エリア4→エリア2→キャンプみたいな感じでお願いします。>>359
最悪チェインソーサーが使えなくても力がみなぎる的な描写されてた攻撃UP旋律重ね掛けして引っ張れば行けそうですね。 -
359
名前:名無しさん
投稿日:2018-06-30 23:03
ID:GzvLLBWM
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BCの井戸からロープ垂らしてエリア6に来た主人公引き上げるとか
チェインソーサーで巻き上げとか出来そうな気がするんだが -
360
名前:名無しさん
投稿日:2018-07-01 07:18
ID:iIqhmqwU
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>サリーレローグから伸びた赤い刃
チャールズ氏まさかのエネブレⅠ勢だった……!?>>361
エネブレはレベルで色が変わるんで。
1だと赤で、2だとオレンジ、3だと黄色。
しかし現実でも弓専属とは兎氏リアルミーシャだな…… -
361
名前:泥も乾く戦慄@兎
投稿日:2018-07-01 14:16
ID:h3fvt/Eg
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>>360 何か描写的に変なトコありましたかね? 正直ワイ弓しかまともに使えないから他の武器のことよく分かってないんや……(
( Д)゚゚……?!?! 色変わるなんて全然知らなかったぞい……* * *
すぐ左手側に地底湖のある岩屋への入り口がある、その先はどう進んだとしてもベースキャンプまで続いていた筈だ。
まずはあそこまで走り抜ける、その為に必要なアイテムも決まっている。 交戦経験がなくとも耳に入る程の、角竜に対する常套手段を全力で投擲する。
砂上を突き抜けようと力を溜めたディアブロスの前で閃光玉が破裂する、結果を確認するまでもなく完璧なタイミングに勝利を確信し、すぐさま岩屋へと駆け出す。
背中に白光が浴びせられ、背後からは目を灼かれた者の甲高い叫びが上がる。 生じた隙は岩屋辿り着くには十分すぎる時間だった。* * *
灼熱の砂漠とは一転し、肌を刺すような冷気が充満する地底湖も火照った身体には丁度いい。
項垂れながら汗を拭い、乱れた呼吸を整えた所で初めてクーラードリンクの効果が切れていたことに気付く、どれほど無我夢中になっていたのだろうか。
後方から入り込んだ絶叫が岩屋に反響しとても恐ろしい物に聞こえてくる、ぐずぐずはしていられない、ここもすぐに離れなければ――顔を上げると、奇妙な物が目に付いた。頭上から垂れ下がる一本のロープ、見るからに頑丈そうなその先端にはメモが一枚括りつけられている。
『しがみ付いたら3度引け』――間違いなくエドの字でそう書かれている、ロープは遥か頭上に見える光から降ろされているようだがその先は見えない。
……いや、エドの考えならば余程間違いはないだろう、どこに続いているのかは知らないがあの角竜を出し抜くチャンスだ。
ご丁寧に等間隔に作られた結び目に手足をかけてしがみ付くと、身体を揺らして指示通りにロープを3度引いてみる。 ――次の瞬間、冗談みたいな力でロープが引き上げられた。「よ、ご苦労さん。」
……時間にして、何秒だっただろうか。 目の前にはいつも通り飄々としたエドワードが立っている。
辿り着いた場所は暑すぎも寒すぎもせず、テントと簡易ベッドが置かれた――間違いない、ベースキャンプだ。 よく見ればベッドの上でレイカが手を振っている。
どこから引き上げられたかと言えば、キャンプ片隅にある崩れかけの古井戸からだった。
錆び付いた滑車にロープをかけ、チャールズの狩技『チェインソーサー』で一気に巻き上げたらしい……表情こそ窺えないが、ロープを解く彼は何とも言えず複雑そうだ。「嬢ちゃんの怪我も大したことはない、お前が咄嗟に助けたおかげでな。」
「あんなのは避けろって言っても無理よ! でも迷惑かけちゃったわね……」片脚は包帯が巻かれているが、いつも通りに喋る元気はあるようだ。
安心すると途端に自分の脚もズキズキと痛み出してくる、あの角が片脚の脛を掠めていたのを思い出して視線を向けると、少なくない血で防具が赤く染まっていて寒気が襲ってくる。
今回も我ながら恐ろしいことをしたものだ、こうも死線を潜り抜けて来れるのは、きっと何かの導きがあるからに違いない――信心深いほうではないが、そう思えてくる。その後、すぐに到着した飛行船で俺たちは帰路に着いた。
手当てもそこそこに、甲板から双眼鏡であの角竜の姿を探したが、もうどこにも見つけることは出来なかった。
……それでも、時折走る片脚の痛みと、未だに砂漠の南端で横たわる顔の潰れた土砂竜の死体が、あの存在が決して幻の類ではないのだと――そう告げていた。 -
362
名前:泥も乾く戦慄@兎
投稿日:2018-07-01 14:17
ID:h3fvt/Eg
[編集]
「――成程、そんな事があったとは……」
出発前とはうって変わって、深刻そうな声色でイレーネはそう答えた。 カウンターで控えるスキンヘッドの男性と、扇を手にした青いドレスの女性も沈痛そうな表情をみせている。
クエストの報告にと通されたのは龍歴院ではなく、件の『ホーンズ』とやらの本拠地、飛行酒場だった。
ドレスの女性がここの元締め――今回の依頼を自分に向けるようにと意向を示したマスターとやらで、もう1人はG級クエストの受付嬢……もとい、受付であるらしい。
正確にはもう1人、何時ぞやエリクシルの店を手伝った時に見かけた少女も居るのだが、この空気の中鼻歌混じりに落書きをしている。 今は考えなくていいだろう。「観測隊からはその後鏖魔が出現したとの報告はありません、狩猟区域の封鎖は考えなくてもいいでしょう。」
――鏖魔ディアブロス、それがあの化け物の正体らしい。
その脅威に打ち勝った『英雄』は1人として確認されておらず、そして幸せな結末を迎えた逸話もまた一つとして存在しない。
闘争ではなく脱兎の如く逃走するという選択肢ではあったが、誰1人として命を落とさないどころか、致命傷すら負わず帰ってこれたのは奇跡としか言い様がないらしい……「何にせよ、ボルボロスについてもこちらで回収する事が出来ました、ミナガルデギルドを代表してお礼申し上げます。 またチャールズ・ビショップに関しては早急に調査させて頂きます。」
謝辞と共に渡された報酬は、約束されていた特別報酬やサブターゲット達成を考慮しても遥かに多い。
本来ならば出会うようなレベルではない化け物と邂逅させてしまった迷惑料と、あの男に関する調査が終わるまでの口止め料と言ったところだろうか。
追究したい節もあるのだが、これからお世話になるであろう職場で早々に騒動も起こしたくはない。 事務的に頭を下げると、飛行酒場を後にした。* * *
「流石は刃薬のハンター、予想以上の成果を挙げてくれましたね。」
件の人物が姿を消し、イレーネが紡いだ言葉にドレスの女性は満足気に頷いた。
「本来ならばG級ハンターに対する昇格をかけた相手であるボルボロスを容易く討伐し、邂逅した鏖魔からも生還、快挙と言って差し支えないわ。」
「既にこのレベルなら踏破出来る……とんでもない逸材ですね、一体何処で眠っていたやら。」愉快そうに口の端を持ち上げながら、それでいて力強い意志を秘めた瞳で、彼が消えた甲板へ続く通路を見やる。
「彼ならきっと、私達とあの存在の宿恨も――」
* * *
「よう、大役ご苦労!」
――背後からそれなりの力で鎧を叩かれ、うんざりした様子で彼は振り返る。 こんな風に言葉をかける人物は1人しか居ない、エドワードだ。
「お前から見てアイツはどうだ? 『後の先見切る騎士』様?」
「どうもこうも、こちらの手をほぼ全て見切られたのは初めての経験ですよ。 それに依頼とは言えこんな格好、ふざけてるとしか言いようがありません。」刃薬のハンターと同行し、かつある程度手を抜き、更には仲間1人をわざと窮地に立たせながら狩猟を完遂させよ。
一切の素性を知られぬ為名も偽り、装備もこちらの指定したものを使う――何の目論見があったかは知らないが、全くもって不可解な指名依頼だった。
同行者に選びたくなるように仕向けたとは言え、見知った仲であるエドワードが居たのがせめてもの救いだ。「そう機嫌を悪くするな、何ならコーヒーの一杯でも淹れてやろうか?」
「要りませんよ、あなたのコーヒーは苦くて飲めたものじゃありません。」またお気に入りのアルバレストにこやし玉でもぶつけてやろうか――そんな事を考えながら日の落ち始めた茜空を見上げる。
大型の古龍の接近、それがもし予想通りならば、追い求めた『龍』の現れた証拠他ならない。
どれほどこの時を待ち侘びたのだろうか、永きに渡る因縁に終止符を打つ時は、いよいよ目前にまで迫っている――* * *
~シナリオ45:泥も乾く戦慄~ CLEAR!!
GET:土砂竜のG級素材
GET:称号・策士(チャールズの策を打ち破った)
GET:称号・千両役者(色んなアイテムを駆使した) -
363
名前:泥も乾く戦慄@兎
投稿日:2018-07-01 14:18
ID:h3fvt/Eg
[編集]
~後書き~
引継ぎシナリオ、蟹氏だったらどう話を考えていただろうか、兎流に纏めた結果こうなりました。
きっと蟹氏の意図していない部分もあるでしょうが色々語っていこうと思います。・シナリオ全体を通して
チャールズ・『ビショップ』との事なので全体的にチェスを意識した文体にしてみました。
他キャラはエドがキング、レイカはクイーン、ボルボロスはポーンを意識しています。
因みに二つ名ディアが登場した理由も鏖魔→お馬→ナイトというしょうもない発想からだったりします。・チャールズに関して
きっとハードリアルのあのキャラだろうなーと、ならばエドと確執があるのもおかしいような……?
その辺りを上手く纏めるためラストの展開になっています、全ては壮大な策に踊らされていたという訳です。
とは言え、チャールズ自体が仕掛けた策は全て皆様が破っています、お見事。・各選択肢について
上手くボルボロスを拘束出来なかったり、チャールズがフリーになりすぎるとエドに被害が出ます、選択ミス3回目でキャンプ送りでした。
お馬登場直前に関しては1番を選んでればレイカも負傷せず終わっています。 ……え、選んだの時雨氏だし多少の負傷はいいよね?(震え声・ちょっとした裏話
ライカとイオンに関しては自分がよく狩りに行く仲間2人がモデルになっています。
このSSも読んでくれているのですが、投稿前後で色々と誤字脱字の添削をしてくれています、この場を借りて感謝を。・もう一個感謝を
物書きの真似事を始めて十余年、思えば色々な話を書き、色々なリレーに参加してきました。
……なのですが、ここまで長く、そして上手く続いているリレーというのは兎としても初めての事です。
人も少なくなってきてる今、敢えて文に起こしておきます。共に物語を作ってきた筆者の皆様、そして主人公を常に導いてくれている読者の皆様、双方に惜しみない感謝を。 ありがとうございます。
では、今回も長々とお付き合いありがとうございました。
>>364
こちらとしては黙って親指を立てるだけですよ、フフフ… -
364
名前:休日
投稿日:2018-07-01 14:26
ID:MIk21S4I
[編集]
兎氏お疲れ様です。
今回も重厚な物語をありがとうございます。
進行というほどでもないのですが、実在のお仲間がいるというライカとイオンのスピンオフを書かせていただければと思います。
もちろん兎氏の許可が下りればですが。
内容としては2人の甘い話です。>>363
兎氏ありがとうございます。
皆様には到底及ばない内容になりますが、少しずつ投下して行きたいと思います。
まずは甘い話をひとつ始めてみます。 -
365
名前:時雨
投稿日:2018-07-01 15:10
ID:gX20EMvk
[編集]
兎氏引き継ぎお疲れ様でした
鏖魔、字面にしても恐ろしい奴ですな…。ボルボロス君は…犠牲となったのだ()
>……え、選んだの時雨氏だし多少の負傷はいいよね?(震え声
よい、赦す(ファーラーオ)さて、次は>>364様になるのかな? 執筆頑張って下さい!
書いている間に色々編集せねば…。 -
366
名前:時雨
投稿日:2018-07-01 15:26
ID:gX20EMvk
[編集]
~登場人物紹介 その2~
後の先見切る騎士 『チャールズ・ビショップ』
・年齢:40代前半 ・性別:男 ・装備:サリーレローグ限界突破済、防具:頭と足がハイメタU、それ以外がガーディアンU。
イレーネに付き従う形で現れたハンター。
年上ながら非常に丁寧で謙虚な態度。
いい人ではあるのだが、それ故に印象に残りにくかったり、何か逆に闇が深そうだったりする。
武器はいろんなものを扱うらしいが、今は盾斧を練習しているとか。
彼の経歴は非常に謎。極悪犯罪人だったとか、軍の兵士だったとか、新大陸の調査団から戻ってきたとか、色々噂されている。
相手の動きを見極める力に長けており、付いた異名は【後の先見切る騎士】。名の通り、相手の攻めを見切って手堅く戦うのが特徴。
何らかの理由で兜を外さないようだが、その理由は謎に包まれている。新人ギルドナイト 『イレーネ・シルヴィス』
・年齢:20代後半 ・性別:女 ・装備:ニンジャソード、ギルドガード紅一式
あなたの前に現れた現役のギルドナイトの一人。ミナガルデギルド所属で、大陸のナイトの中では新人の方。
とはいえ期間は短いながら優秀なハンターであったため、その威厳は歴戦の騎士にも劣っていない。
真面目で権力を用いて威張るようなこともないが、ギルドナイト相応の闇の深さというか、黒さは抱えている。
その美貌は羽帽子の影になることが多い。かと言って、無理矢理見ようとすればお縄を頂戴するのは間違いないだろう。
現在は前線を退き、フィールドに赴くのはせいぜい環境調査程度にとどまっている。
とは言いつつも小型のモンスター程度ならスパスパと斬り伏せ、ドス個体程度なら苦戦せずに撃退するくらいには腕前は衰えていない。自称三流ハンター『クリス・レイヴン』
性別:男 年齢:24 装備 武器:弓(ギルド) 防具:フルフルR
軽薄な皮肉屋で毒舌家だが、根は善良。ただ生を尊重し、とにかく生き抜いて、その結果に温かいものが残ればいい、と考えている人物。
好きなものはナンパ。自称愛の戦士『カーサル・ロマンシア』
性別:男 年齢:20代 装備 武器:大剣 防具:レイアS
由緒正しきロマンシア家からでた王族のハンターで熱しやすく冷めやすい性格で妄想癖が激しく、これまで何人もの女性に迷惑掛けているという噂があり、一度カーサルに絡まれたら付き合ってくれるまで付き纏う…
というのは昔の話、今は自分に幸せな姿を見せてくれる女性を探す旅をしているらしい。(自称)猫の魔王『ぎゅすた~ぶ』
性別:オス 年齢:大人(ネコ基準) 装備 武器:天下名剣ニザカニャー 防具:ニャント様勇シリーズ
魔王を自称するメラルー。その割に勇者っぽい格好。密かに野望を秘めており、その為に特定の主人を持たない。
野望…すなわち、「人の世の黄昏と龍の…ではなく猫の時代の幕開け」。その実現のためギルドが情報を秘匿する禁忌のモンスターの力を追っている。
芝居がかった口調ととぼけた態度で油断させ、自らの野望に積極的に他人を巻き込もうとする困ったちゃん。口癖は凡愚。座右の銘は猫に九生あり。
戦闘では笛やダンス、強化咆哮などでカリスマタイプの様な司令塔として振る舞うが、その本性は隠し持った爪の鋭さにこそある。傾向はビースト。 -
367
名前:名無しさん
投稿日:2018-07-01 21:27
ID:WGH6JFkY
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>物書きの真似事を始めて十余年
ヒエッ……
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368
名前:休日
投稿日:2018-07-02 03:57
ID:MIk21S4I
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前書きという名の注意書き
・ライカとイオンがくっつく前の話
・ただの妄想
・願望だけで成り立っている
・兎氏すみません
・後半だけ第三者視点
・文章を書くのが下手なのでお目汚し間違いない
・狩り描写があまり出てこないショートなので選択肢がろくに作れないでは、恥かきを覚悟で投下を始めさせていただきます。
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369
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-02 04:08
ID:MIk21S4I
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その日僕はイオンと集会所にいた。
昼食を取りがてら2人で行けそうな依頼がないか見に行く予定だったのだが、買い物をしたいというイオンの言葉にまずはギルドストアに寄り道をした。
半額セールだと告げられたイオンは瞳を輝かせて残弾を数え始め、カラの実や薬草なども物色し始めた。女性の買い物は長い。
僕は柱に背を預けてイオンの買い物を眺めていた。
きっと彼女の細腕で持つには見ているほうがハラハラするほど買うだろうと容易に想像がつくからだ。
僕は自宅のボックスを思い出し、特に買うべき物はないという結論を出した。
それに、もし何か足りない物があったとして僕まで買い物に参加すれば、イオンは自分のものは自分で持つと言い張って僕に買い物袋を持たせることを良しとしないだろう。「ライカ・F・ジュヌミア、『闇を喚ぶ黒猫』だね。」
唐突にかけられた声に振り向くと、先程まで何か読み物をしていたギルドマネージャーが手招きをしている。
「イオン、ギルドマネージャーと話してくるから、買い物が終わったら呼んでくれ。」
果たして買い物中のイオンにその言葉が届いたかどうか……。
しかし、ストアの店員がこちらに「伝えておきますよ。」と微笑んだので軽く会釈をして柱から背を離し、ギルドマネージャーのそばへ歩み寄った。「いい天気だね、ライカ。」
手招きしてまでの話題だろうかと思いながら「そうですね。」と返そうとした僕の唇が動く前にギルドマネージャーは肩を竦めた。
「そんな話がしたくてお前さんを呼んだんじゃないよ。」
なかなかにお茶目というか手強いというか、真意の読めないご老体を眺めおろす恰好で、では何をと白銀の髪を見遣ると、ギルドマネージャーは手元の書物に虫眼鏡を当てながらチラリと僕を、そしてイオンを見遣った。
そして集会所の入り口に目を遣って「揃ったね。」と呟く。
僕もつられてそちらを見遣ると、そこにはミーシャ・アルティムの姿。
依頼を受けるつもりなのか、既に武装している。こちらに気付いて軽快に走って来ると、そのままの勢いで抱きつこうとする軽い跳躍。
それをバックステップで距離を取りながら彼女の眼前に指を過らせて止めると、ギルドマネージャーの苦笑が聞こえる。
当のミーシャはそれを気にした風でもなく「こんなところで何してるんですー?」と首を傾げる。「こんなところで悪かったね『ドンドルマの白髪鬼』。いい天気だと話していたのさ。」
ギルドマネージャーが返事をするとミーシャは「あー、見えてませんでしたー。」と笑って誤魔化し、きょろきょろと辺りを見回してギルドストアで買い物中のイオンを見つけると「セールですー?」と僕に問いかける。
「ああ。残弾が心許ないというものだから。君は?」
「適当に依頼を探しにきたところですー。セール中なら瓶を物色するのも良いですねー。」
ミーシャに僕らの昼食を待ってくれる気があるなら3人で依頼に行くのもいいと思いながら頷き返したところで、足元からの小さな笑い声にギルドマネージャーを眺めおろす。
「ミーシャ、依頼ならお前さんの気に入りそうなのがあったはずだよ。今日中にってほど緊急じゃないがね。」
ギルドマネージャーの声にキラリと瞳を輝かせたミーシャは一度受付嬢を見遣ると、こちらに来た時と同じ軽快な足取りでギルドストアの方向へ走って行った。
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370
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-02 04:10
ID:MIk21S4I
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「お前さんがいるところには『夕刻の蝶』がいる。逆もまた然り。あの子もそう思ってるんだね。」
僕に視線を戻したギルドマネージャーの台詞は理解しづらかったが、先程の会話……。
僕がギルドマネージャーと話していたと聞いただけのはずのミーシャは周囲を見回して……そしてイオンを見つけた。
つまり、僕が単独でここにいることが彼女にとって不自然だったのだろう。鈍いと言われる僕にも何を言われているのかが分って、顎を引くようにしながら顔の下半分を覆う装備に深く埋める。
「それぞれ1人で依頼をこなすこともあるんですが……。」
せめてもの言い訳を呟くも、ご老体はそれを笑い飛ばし、ギルドストアでミーシャに話しかけられて微笑みながら商品を指差して何やら話しているイオンを眺める。
「お前さん、『蝶』を籠に入れたまま、どうする気だい?」
虫眼鏡の縁が反射する陽光の眩しさと質問の内容に眩暈を覚えながら視線を逸らす。
見るともなくギルドストアのイオンを見遣ると、ミーシャから僕がこちらに移動したことを告げられたのか、振り返って小さく手を振る。
それに片手を挙げて合図を返しながら、どう答えたものかと思考を巡らせる。「お前さん、『蝶』と所帯を持つ気はないのかい?」
追い討ちにますます返事に窮していると、ご老体は深く溜め息をついて書物と虫眼鏡を膝の上に置いた。
「お前さん達、いい年だろう。加えて『蝶』はあの見た目だ。お前さん以外にも狙う男は多いよ。その気がないなら自由にしてやりな。更に言えばお前さんだって女が放っておく男じゃない。そろそろ身の振り方を考えな。」
「お前さん以外にも」つまり僕がイオンを「狙っている」ことはこのご老体には確定事項であるという所に反論ができず、乱れてもいない前髪を直すフリで直視できないギルドマネージャーと現実から無理矢理視線を逸らすと、呆れたような溜め息が足元から聞こえた。
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371
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-02 04:12
ID:MIk21S4I
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「ね、ライカ。さっきは何話してたの?」
瓶を補充したミーシャが単独で依頼に行くと言うので、昼食がすんでいない僕らはまず荷物を置こうと、買い物袋を持ってやりながらイオンの部屋まで移動する最中、無邪気な声に返事ができない。
「いや、大したことじゃない。天気がいいとか、そんな内容だよ。」
嘘と本当を混ぜて誤魔化すと、イオンは少し黙って僕の横顔を見つめ「そう?」とあまり納得していない時の声で話を畳んだ。
イオンの部屋に着いてボックスの中に買ってきたものをしまっている後ろ姿を眺めながら、先程の会話を反芻する。――『蝶』を籠に……
――お前さん以外にも狙う男は……
――自由に……全て分っていることだ。
踏み出せないのは僕の弱さだろう。
ハンター稼業はいつどうなるか分らない危険と隣り合わせだ。
そんな状態で、彼女を幸せにできると誓えるはずがない。ではこの美しい蝶を解き放てるだろうか。
イオンが僕以外の男に……?
想像しただけで腹の底に火が点くような不快感が襲ってくる。「ライカ、お昼どうする? 依頼は夜のがあればそれで良いけど。急ぎのものがあるわけじゃなさそうだったわよね。」
ずっと君を見てきた。
僕の隣で美しく成長するのを。「ライカ? 聞いてる?」
細く白く優雅な指は引き金を引くことなど無縁に見える。
それでも彼女は僕の背中を預けるに足る、腕利きのハンター『夕刻の蝶』。……イオンはなぜハンターになったのだろう?
まさか僕がこの道に引き込んでしまったのだろうか。
僕の合図で空を舞う『蝶』にしたのは……。「……ライカ?」
美しい色の瞳、そう、この瞳に捕われたら獲物は決して逃げられない。
長い睫毛が幾度か瞬いて、僕を真っ直ぐに捕えている……。捕えて……。
「……!?」
間近に迫ったイオンの怪訝そうな瞳に驚いて、腰掛けていたベッドの上で思い切り身を引く。
「ライカ、呼んでも返事しないんだもの。何か考え事?」
軽く呆れた声に髪を直しながら「ああ。」とだけ答えて首を振り、思考を散らす。
「聞いてなかった。ごめん。」
謝罪の言葉を口にすると、イオンは肩を竦め、隣に腰掛けて僕の顔を覗き込みながら悪戯に笑う。
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372
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-02 04:13
ID:MIk21S4I
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「お昼どうする、って聞いたのよ。お外で食べてもいいし、作っても良いわ。依頼は夜のものを探せば良さそうねって。」
サラサラの長い髪がベッドについた僕の手の甲を撫でて、背筋を曖昧な痺れが駆け上がる。
「どちらでも。夜の依頼を探すなら、作るのはやめて食べに出たほうが良さそうだけど。」
イオンの手料理は魅力的だが、疲労を溜めさせては危険が増す。
調理程度で疲労するとも、正確無比なあの射撃の腕が鈍るとも思いはしないが、万一のことすら廃したい。「そうね、じゃあお昼は外食にしましょうか。お夕飯は作るわ。屋台のおかみさんにお肉をいただいたの。」
ベルナ村に逗留するようになってから屋台のおかみ達と仲良くしているらしきイオンは時折こうして食材を譲ってもらうことがあるらしく、新しい料理を覚えては振る舞ってくれる。
元々イオンは家事も器用にこなす。――お前さん以外にも狙う男は……
眩暈がするような現実を告げる声が蘇って双眸を伏せる。
この際、僕を放っておかないらしき女性についてはどうでもいい。
冗談交じりなら笑って躱せばいいし、多少のことなら告白すらさせないまま雰囲気で察してもらえばすむことだ。——お前さん達、いい年だろう……
確かに僕らは適齢期と言われる年齢だ。
狩場に散る可能性のある職業に就いていなければイオンはきっと……。
そこまで考えて、不自然な事実に気付く。——加えて『蝶』はあの見た目だ……
——狙う男は多い……これまで、僕の知る限りイオンは恋人を作ったことがない。
告白の数十されていておかしくない彼女が、なぜ……。——籠に入れたまま……
僕の、せいだろうか。
それは僕にとって有利、不利、どちらの理由も想像できて……。「ライカ? やっぱり何かあったの?」
不審気に問うイオンの声に思考を遮断して首を振ると、長い睫毛が伏せられ、何かを振り切るように美しい唇が弧を描いて告げる。
「……お昼、やっぱり作るわ。依頼は急ぎのものがあるわけじゃなさそうだったし、明日にしましょう。」
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373
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-02 04:15
ID:MIk21S4I
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ほどなくしてテーブルに二人分の昼食が準備された。
僕も最低限の料理はするが、さすがに手の込んだものを自分のためだけに作る気になれず、適当にすませることも多い。「このお肉、おいしいっておかみさんが仰ってたから、まずはグリルにしたの。せっかくだから素材の味を楽しみましょ。」
色とりどりの野菜が使われたサラダ、肉のグリル、パンを軽くトーストしたもの、一口サイズの数種類のチーズ、魚のスープ……。
どれから手を付けようか迷いながら彩り良く盛りつけられたそれらを眺める。「召し上がれ。」
食後には珍しい菓子があるのだと何か重大な秘密を打ち明けるように悪戯に笑みながら飲み物を注ぐイオンの手元を眺めて「いただきます。」と答えてカトラリーを手に取る。
丁寧に筋切りをして仕込まれた肉は厚めに切られているものの、スッとナイフの刃が通って柔らかい。
一口分に切って味わうと、肉汁をふんだんに含んでいながら噛み応えも充分だ。「おいしい…?」
僕が手を付けるのを待って少し不安げに問う瞳に「とても。」と笑んで返すと、ほっとしたように小さく笑んでイオンも自分用に盛った僕より幾分少なめの皿にナイフを入れる。
少し黙ってそれぞれの皿を堪能していると、魚のスープとパンをもらってご機嫌だったルームサービスとオトモ達がピクリと耳を立てる。「ご主人様、お客ニャ。」
ルームサービスの声に反射的にドアを見遣ると、確かに軽い足音がこちらに近付いている。
「僕が出よう。」
軽く瞠目して瞬きをしながら口元にナプキンを当てるイオンに言い置いて席を立ち、扉を開けると噂をすれば何とやら、大きな紙袋を抱えた屋台のおかみが立っている。
「あら……。」
部屋の主以外が出れば驚きもするだろうが、それにしても少々驚き過ぎているような気のする風情でおかみは僕を見上げる。
「こんにちは。イオンに用でしょうか。今、譲っていただいた肉で昼食にしていまして。とてもおいしいですね。」
挨拶と礼を述べるとおかみはにこりと笑って頷いた。
「それは良かったニャ。今日はイオンちゃんに頼まれてたチーズとハーブを持って来たのニャ。」
奥からパタパタと足音がして、少々慌てた様子のイオンが僕の背後から扉に寄って来る。
「ありがとうございます、マダム。おいくらですの?」
愛用している生成りの透かし編み飾りのある財布を持ってイオンが訊ねると、おかみは口元に手を当て、黄色い巻き毛を揺らして笑った。
「あら、イオンちゃん。良いのニャ。今回はオマケするニャ。」
「まあ、そんなわけには参りませんわ。いつもおいしい食材をお譲りいただいてるんですもの。」
イオンが外向きの口調でおかみと話し始めるのをドアに凭れて見ていると、やおらイオンが振り返って「ライカはごはん食べてて。冷めちゃうわ。」とテーブルに追い遣る言葉を投げてくる。
女性同士で話したいこともあるだろうと頷いてテーブルに戻りかけた僕の鼓膜を打ったのはおかみの声だ。「イオンちゃん、恋は叶ったのニャ? とびきりのお肉だから大事な人と食べるってはしゃいでたニャ?」
不覚にも一瞬足を止めてしまったが、聞こえなかったフリをしてテーブルに戻ると、イオンがおかみを連れてドアの外に出る気配がする。
「ご主人様、慌ててたニャ。」
ルームサービスの報告がこちらを伺うように響くが、どう返事をしたものか思いつかずに昼食を再開する。
オトモ達からも視線を感じて「早く食べたほうがいい。せっかく温かいうちに出してくれたんだから。」と皿に視線を落としたまま告げ、味の分らなくなってしまった料理を機械的に口に運ぶ。 -
374
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-02 04:16
ID:MIk21S4I
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——恋
——大事な人そう、見えるのだろう。
それにも自覚のないはずがない。できる限り依頼に同行し、僕単独に誘いのかかった依頼の日には砥石や鉱石、キノコ類や木の実メインの採集を頼んでいる。
僕の部屋のボックスは、イオンが集めてくれたアイテムで溢れそうだ。
だからストアに寄っても特に買う物がない。テーブルの上を眺める。
まだ湯気の立つ厚切りの肉、魚のスープ、彩りの良いサラダ、一口サイズに切られたチーズ、小麦の香り高いパン、よく冷やされた飲み物、食後に出るらしい菓子。
そしてまた自室のボックスを思い出す。イオンの気持ちを考える。
どんなに過酷な狩場でも決して弱音を吐かず、冷静に獲物と同行者の様子を観察して的確に弾を撃ち分け、回復や鬼人効果を一手に引き受け、そして『夕刻の蝶』の名に恥じない優雅ですらある軽やかさで空を舞って真下撃ちから乗り攻撃を仕掛ける彼女の気持ちを。——聡明な彼女が気付いていないはずはないのだ。
僕がメインに扱う双剣の切れ味がどれほど落ちやすくともイオンに砥石の採集を頼む必要があるほどではないこと、そもそも買えばすむこと。
そしてその日、僕がどんな依頼に出ているかを考えれば……。それでも彼女は黙って僕を送り出し、黙々と収集し、回復薬や元気ドリンコ、秘薬に漢方薬など、前衛に立つ僕が切らしてはならないものを作りながら待っていてくれる。
そして、僕が依頼から戻ると必ず僕の部屋にいて「おかえりなさい。」と少し泣きそうな笑みを浮かべる。
きっととても心配しながら採集をして、無事を祈りながら調合をしてくれるのだろう。
けれど彼女は決してそれを口にしない。
僕の無事を祈りながら、決してそれを疑わないのだ。
そんな時、華奢な肩がいつもよりいっそう華奢に見えて、抱き締めたい衝動を抑えるのに苦労することも思い出す。イオンのそれが愛情なのか、長く馴染みでいる仲間としての情なのか。
分らないと言えるほど僕の気持ちは小さくないし、子供でもない。
分らないと言ってやれるほど独占欲が薄いわけでもないし、大人でもない。「ただいま、ライカ。……食べてる?」
どんなに難しく苦しい依頼に挑む時よりも神経を集中して無表情を作る。
無理矢理落ち着かせた低音で「おかえり。いただいてるよ。」と応えながらいつの間にか止まっていたフォークを動かす。愛情を、感じないはずがないのだ。
この調えられた食卓からも、僕の部屋のボックスを何も不足がないように満たすアイテムからも。
僕だけに向けられる寛いだ口調も笑みも、祈るように調えられるアイテムも食事も、何もかも全てが胸を軋ませるほど愛おしい。自分達はハンターだ。
五体満足どころか、命さえいつどうなるかも分らない、過酷な稼業だ。
そんな中、幸せにできると確信もないまま気持ちを伝えるのは不誠実に思える。いや、それは言い訳だ。
不誠実なのは気持ちを伝えないことのほうだ。
それこそ、未来がいつどうなるか分らないのはハンターでなくても同じだ。
過酷な稼業だからと逃げているだけだ。
彼女を幸せにできるかどうかではない。
この手で、僕の全てで、そうすればいいだけだ。
……分って、いる。 -
375
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-02 04:21
ID:MIk21S4I
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選択肢があったほうが良さそうなので
このあと、2人が気持ちを確かめ合うためにどちらがアクションを起こすかを選んでください。1:ライカ
2:イオン
3:その他(自由枠・アイルー、他の人物など、指定してください) -
376
名前:名無しさん
投稿日:2018-07-02 12:18
ID:HzUonXHw
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ラブコメの波動を感じる…!
じゃあ2でお願いします! -
377
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-03 11:58
ID:MIk21S4I
[編集]
コメディ要素がログインしました。
シリアス要素とライカの男らしさがログアウトしました。
——————————————————————————————————————伏せ目がちに食事をしながら何度か唇を躊躇わせるイオンがきっと先程のおかみの台詞について何か言いたいのだろうと気付く。
「……デザートがあるんだっけ?」
それを遮ったのはルームサービスやオトモ達が同じ部屋で食事をしているからというのも勿論だが、レディに先を超されるのを良しとしない、僕のなけなしの意地でもある。
「……うん。行商の人が珍しいお菓子が手に入ったからって勧めてくれたの。」
礼儀正しく、立ち居振る舞いの凛として美しいイオンは何かと声をかけてもらえるらしく、屋台のおかみや行商人、ストアの店員やニャンコック、雑貨屋、武器屋に防具屋と、かなり受けがいいようだ。
僕が話を変えたことに少しの安堵と僅かに傷付いた表情を浮かべるイオンを眺めて胸が痛む。「ご主人様、ご馳走様ニャ!」
ルームサービスとオトモ達が一足先に食事を終え、皿を持ってキッチンへ向かう。
「……水を持ってくるよ。」
僕も席を立つと「飲み物ならあるわよ?」と不思議そうな声がかかるが、小さく笑みを返してそのままキッチンへ歩く。
「……どうしたニャ?」
ルームサービスが質問の形で確認をする。
「水を取りに来たんだよ。」
言いながら、分っているだろうと苦笑してオトモ達と一杯やるのには充分過ぎるチップを渡す。
賢いアイルー達は無言で頷いてさっさと洗い物をすませると、イオンのいる部屋に戻っていく。
僕は口実にした水を取りながらどう口火を切ろうか考える。「ご主人様、スープおいしかったニャ!」
「また作って欲しいニャ!口々に食事への礼を述べるアイルー達にきっと柔らかく微笑んで頷いているのだろうイオンの気配。
「ご主人様達、依頼は明日ニャ?」
「たまには一杯やりたいニャ!」
「ニャンコックが遊びに来いって言ってたニャ!」
「夜通し飲むのも悪くないニャ!」席を外すための、恐らくは架空の誘いを口にしてくれる彼らに感謝する。
「あら、そうなの? じゃあ行ってらっしゃいな。依頼は明日にすることにしたから、二日酔いになるほど飲み過ぎないでくれたら大丈夫よ。」
先程おかみから譲り受けたチーズの中に、ニャンコックのお勧めも入っていたからお礼を伝えておいて、勿論自分からも言うけれどと優しくアイルー達を送り出す声。
それに了解と応えて走り出していくアイルー達の足音を聞き終えて、水差しを持ってキッチンから部屋に戻る。 -
378
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-03 12:08
ID:MIk21S4I
[編集]
「出かけたのかい?」
無難な質問は振り返らないまま竦めた肩と、少し硬い声に報いられる。
「……ライカが出かけさせたんでしょ?」
「……どうして?」
キッチンで彼らと交わした会話は「どうしたのか。」「水を取りに来た。」それだけで、出かけるように促す言葉は一切吐いていない。
「だってあの子達、お財布持って行かなかったもの。ライカがお小遣いあげたんでしょ?」
確かに彼らはアイルー用の武器や防具、毛布などが置いてある専用スペースに立ち寄らなかった。
「どうして出かけさせたの?」
問う声は少し不安気で、堪らなくなる。
ここで逃げるほど卑怯なこともないと瞼を伏せて腹を括る。「……イオン。」
ずっと胸に飼ってきた想いで君を籠に閉じ込めよう。
そっと華奢な肩に手を伸ばした瞬間、再び近付いてくる足音に手を退いて「誰か来たみたいだ。」と想定していたものとは違う台詞を吐く。
「……そうね。」
感情の読みづらい声音のイオンを置いて玄関に向かうと、そこには先程見事なカウンターパンチをくれたギルドマネージャーの姿。
「おや、お邪魔したようだね。」
完全に面白がっている視線でニヤリと見上げられ、余計なことを口にされる前に「昼食をとっていまして。何かご用ですか?」と先を促す。
「お前さん達2人に頼みたいことができたのさ。それも今すぐ。そうさね、『蝶』が作ったその旨そうな昼飯を食べる余裕くらいはあるだろうよ。」
ギルドマネージャー直々の依頼とあってはのんびりもしていられず、昼食よりもっと大切なものをお預けにされた気分で僕らは食事を終えた。
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379
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-05 17:21
ID:Pp0tzhpI
[編集]
「ねえ、ライカ? これって急ぐほどのことかしら?」
古代林のエリア2でアイルーやメラルーを避けながらのんびりとキノコを採りつつのイオンの問いは尤もで、僕も内心首を傾げていた。
先程から出会うのはリモセトスなど、こちらが攻撃を当てさえしなければ問題ないモンスターばかりで、驕るわけではないが僕らに依頼するほどのことはないように思える。
僕らのうちどちらか単身で充分こと足りるはずで、更に駆け出しのハンターでも深入りし過ぎなければこなせるようなものだ。
しかしギルドマネージャーは敢えて「お前さん達2人に」と指名してきた。「まあ、何かしら事情があるんじゃないかな。取り敢えず頼まれたものが揃ったら帰ろう。」
依頼内容は非常にシンプルで「古代林へ行ってなるべく『多くの種類』のキノコを採ってくること」というものだ。
このままエリア4へ抜けてオルタロスから熟成キノコ、エリア8を通ってエリア9まで足を伸ばし、深層シメジ辺りも取れれば上々だろうとポーチの空きを確認しながら採集を進める。
しかし、あまりに簡単な内容に逆に引っ掛かりを覚えるからこそ何にでも対応できるようにイオンは『水天一色』を、僕は『氷炎剣ヴィルマフレア』を担いでいる。「ここは取り終わったかしら。次はエリア4ね?」
美しい、いっそ狩場に不似合いな装束の裾を払ってイオンが立ち上がる。
僕も立ち上がってエリア4に抜ける小道に目を向けた瞬間、バサリと大きな羽音がして瞬間的にイオンとアイコンタクトを交わす。
古代林に現れる「羽を持つモンスター」を脳内でリストアップする。
どのモンスターが来てもどうにでもできる自信はあるが、今までののんびりした採集気分が吹っ飛んだのは確かだ。イオンは無言で僕に鬼人弾を撃ち、すぐに通常弾を装填して頷いた。
軽く息をついて爪先に力を込めると、愛剣を抜き放って構えながらエリア4への道を走り始める。
背後からはイオンの足音、それだけで僕は無敵でいられる。「……綺麗な色ね、サイズがおかしいけど。」
イオンはそれを視た瞬間、走り寄って跳躍し、真下撃ちをしながら背後に回り込んで尾を狙い始めた。
僕は戦闘の開幕を告げる叫び声を回避して、愛剣を乱舞させながら脚を狙う。
最初に装填した分の通常弾を撃ち切ってペイント弾を撃ち、水冷弾に変え、改めて広げられた翼の先、翼爪を水冷弾で狙うイオン。
流れるような射撃の腕に僕の唇が知らず笑みを浮かべる。ほどなくして、思ったより厄介な敵とこちらを見做したのだろう、頭部の羽を逆立てて翼を広げながら威嚇するように叫ぶそれ。
界隈で『不幸せの青い鳥』と呼ばれる夜鳥、ホロロホルルは、唐突に現れた人間共を赤い目で睨みながら胸元に豊かに蓄えた黄金の羽毛を膨らませる。
ひょいと飛び上がってバフリと落ちる、その動作で撒き散らされる粉塵、翼を広げての睡眠音波攻撃。
厄介なものはそれくらいで、低空飛行や蛇行突進、体を回転させての翼の叩き付けはよく見ていれば恐れることはない。 -
380
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-05 17:25
ID:Pp0tzhpI
[編集]
青く光沢のある羽をイオンの弾丸と僕の双剣が散らしていく。
イオンが優雅に空を舞い、体勢を崩しながら落ちてきたホロロホルルの頭部を狙って氷炎剣ヴィルマフレアが乱舞する。
三者三様の舞いを続けるうちに、形勢不利を悟った夜鳥は数度目の叫び声をあげる。バサリ。
頭上からの影にチラリと目を遣ると、そこにはもう1羽の夜鳥。
「……イオン、一応聞くけれど、こやし玉は持ってるかい?」
「採集依頼に持ってくると思う?」
疑問形で否を応え、新しく来たほうと今まで戦っていたほうにペイント弾を撃ち直し、イオンは2羽を翻弄するように粉塵の充満するエリアを舞い続ける。
僕は新しく現れたほうに向かって走り、イオンにアイコンタクトを投げる。「……過保護ね。」
小さく微笑んだイオンは、心得たとばかりに弱って移動を図ったほうを追ってエリア7に走り抜けていく。
「番かい?」
新顔に問いながら回転を入れて斬り掛かる。
粉塵を避け、翼の叩き付けをかいくぐり、執拗に脚を狙う。
夜鳥は頭部と尾が一番の弱点だったはずだが、双剣のリーチでは転倒してもらわないことには頭部を狙えないのだ。夜鳥が頭部の羽を逆立てて叫んだ瞬間に聞こえた銃声。
もう1羽いる状態で剥ぎ取りなどせずにすぐにこちらに戻ってこようとしている足音。
広げられた翼。
睡眠音波攻撃の予兆。「イオン!」
まだ入ってきてはいけないと、上げた声が一瞬遅かった。
戻ってきたイオンがまともに睡眠音波攻撃の餌食となり、くたりと体をしならせ、しかし僕の足場を邪魔しないよう限界まで配慮した位置に移動を試みて倒れ込む。「……許さないよ。」
眠り姫に追い討ちをかけようとする夜鳥に正面から斬り掛かる。
夜鳥が転倒し、体勢を整えようと脚をもがかせる。—————————————————————————————————————————————
選択肢
1・イオンを起こしにいく
2・チャンスなのでダメージを稼ぐ -
381
名前:兎
投稿日:2018-07-05 18:11
ID:h3fvt/Eg
[編集]
1ですね、まず放っておかないでしょう。
ちなみにモデルにした二人と狩りに行ってこう言う事態になった時は大抵自分が『射起こす』のです(
-
382
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-06 05:13
ID:Pp0tzhpI
[編集]
兎氏直々の選択をありがとうございます。
読んでくださっていることに緊張しますが大変光栄です。
射起こすとはまた……素晴らしいエイム力ですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「イオン!」
もがく夜鳥を放って、エリア端に倒れ込んだイオンのもとへ走り寄る。
上半身を抱き上げると力の抜けた白い首が仰のいて晒される。
背後で起き上がった夜鳥が粉塵を撒き上げた気配。
バサリと翼を羽撃かせてこちらにそれを扇ぎ遣る。このまま粉塵を喰らってはイオンを守り切れない。
イオンの手から『水天一色』が滑り落ちるのも構わず、細い体を抱き上げて粉塵の範囲外に走り出る。
エリア6への小道脇に改めてそっと寝かせ、追い討ちを狙う夜鳥を一旦牽制するために立ち上がり、対峙する。
蛇行突進を見切って正面から交差するように走り、低く下げられた頭目掛けてすれ違いざまにしたたかに乱舞を入れる。ギロリとこちらを睨み据える夜鳥を挑発するようにステップしながらイオンから遠ざかる。
狙い通り僕を追って来た夜鳥の脚を再度痛めつける。
不本意そうに天を仰ぎバサリと翼を広げた夜鳥は、もう1羽が横たわるのであろうエリア7へと飛翔を始める。すぐにでも追いかけてとどめを刺してやりたいところだが、今はイオンだ。
転がっている『水天一色』を拾い、横たえた場所まで走る。
白い瞼が閉じられたその表情はまさに幼い頃に読んだことのある童話の姫君だ。
森の中でうたた寝をしているだけのような澄んだ美しさ。「イオン。」
細い肩を抱き寄せてポーチを探り、元気ドリンコを薄紅の唇に流し込むと、長い睫毛が震えて何度か瞬きを繰り返し、蕩けるような色の瞳が僕を見上げる。
「……ライカ。……怪我してない?」
まだ睡眠音波攻撃の余波が抜けないのか少し舌足らずのまま、僕の全身にざっと視線を走らせ、特に怪我がないのを確認してから状況を把握しようと周囲を見回す。
「一旦このエリアからはご退場いただいたよ。大丈夫かい?」
美しい髪に青い羽が絡まるのを手で梳いて取ってやりながら訊ねると「大丈夫。ありがとう」と不覚を詫びるように僕の手にある『水天一色』を取り、立ち上がる。
「……エリア7かしら? 8まで行ってしまってるかしら。取り敢えず追いましょう。」
先程までの力ない様子はもう微塵もなく、そこには狩場でいつも見る冷静かつ正確無比な射撃の腕を持つ『夕刻の蝶』の姿があった。
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383
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-06 12:27
ID:Pp0tzhpI
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結局エリア7で見つけた夜鳥とそこで決着し、ついでだからと青い羽や爪、昏睡袋などを剥ぎ取り、厳選キノコと特産キノコを取ってエリア4に戻る。
離れていてと言いながら散弾でオルタロス3匹を一気に四散させたイオンが熟成キノコを拾っている間に、クタビレタケやドキドキノコを取りながら先程のことを思い出す。閉じられた瞼、長く影を落とす睫毛、薄く開かれた唇、仰のいた白い首。
眠っているだけで良かったと今更になって恐怖が僕を襲う。
どんなモンスターと正面から対峙しても感じたことのない『恐怖』。それと同時に、木漏れ日の中で眠るイオンの美しさ。
僕の胸に凭れた細いのに柔らかい温もり、絡んだ青い羽が誂えた飾りのように映える艶のある長い髪、薄い薔薇色の差した頬と唇。
失えないと、改めて思う。エリア8でアオキノコがポーチに入らなくなり、エリア9に降りる。
深層シメジが少し取れたのでエリア10に抜けて更に深層シメジを取り、お互いのポーチがいっぱいになったところで西側の白い糸の束を登ってエリア3に出る。ベースキャンプで迎えを待って集会所に戻り、ギルドマネージャーにホロロホルルが2羽出たことを報告しながらキノコを渡して換金アイテムの清算と報酬の受け取りをすませる。
採集依頼の持ち物で夜鳥2羽を相手取った分、報酬が多めになるのは予想通りだったが、ギルドマネージャーが寄越してきた報酬金の袋には予め本来の夜鳥2羽狩猟分よりも多い金額が入れられていた。「……いると分っていてのことだったんですか?」
つい胡乱げな視線を向けると、ギルドマネージャーは老獪な笑みを浮かべて「さてね。年寄りの勘ってやつさ。」と嘯いた。
それはつまり何がしかが……恐らくは「夜鳥がいる、しかも2羽」ここまで判明した状態で、僕たち2人を「採集依頼」と送り出したことになる。「お人の悪いこと。危なかったんですのよ?」
イオンが冗談めいた微笑みと共に小首を傾げると、ギルドマネージャーはくつくつと喉奥で笑う。
「そうかい? その割に楽しそうじゃないか。装備も目立った汚れはないし、怪我もしていないようだ。さすがは『闇を喚ぶ黒猫』と『夕刻の蝶』だね。」
確かにイオンが睡眠音波攻撃を喰らった以外は2人とも全て避けたが、褒めても何も出ないと肩を竦め、これ以上楽しまれる前にと集会所を出る。
報酬は採集依頼とホロロホルルの2体同時狩猟依頼をバラバラに受けた場合の金額に少々色がついていて、今夜の食事を豪勢にしたとしてもかなり余る。「イオン、夕食はどうする? どこかで食べて帰ろうか。」
昼食を作ってくれたお礼をすると申し出ると、イオンは笑って頷いた。
「ありがとう。あ、でもライカ、お夕飯のあとは家に寄って? 結局お菓子食べられなかったから。」
そういえばギルドマネージャーに急かされたせいで、行商人から勧められたという菓子を食べる暇がなかったのである。
「分った。何が食べたい?」
宵闇の村を眺めながらいい香りの湯気を吐く店々の軒先を眺めて歩く。
「そうね…。あとでお菓子を食べることも考えて、少し軽めにしたいわ。でもライカがお腹空いてるならしっかりめのものも置いてあるといいんだけど。」
そうなると各種アラカルトを揃えた居酒屋が適切で、僕達はあまりうるさ過ぎない落ち着いた店を選んで、思いもかけない狩猟のあとの腹を満たすべくドアを潜った。
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384
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-07 04:33
ID:Pp0tzhpI
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食事を済ませてイオンの部屋に寄ると、ルームサービスやオトモ達はまだ帰って来ていなかった。
「本当に夜通し飲むつもりかしら、あの子達」
仕方なさげに笑って先に湯を使うことにし、順番に浴びて髪を拭っていると「お菓子取って来るわね。あの子達の分も可愛いクッキーがあるのよ」行商人から日保ちのする菓子をかなり買ったようで、イオンは軽い足取りでキッチンへ入った。
「お待たせ。見て、とってもきれい」
白い皿に花が咲いたような鮮やかな菓子がひとつ、テーブルの真ん中に置かれる。
「ケーキ、かな?」
マグカップよりも小さめの紙製のカップで焼かれたそれには、色とりどりの恐らく食べられるのであろう素材で作った小さな花がいくつも飾り付けられている。
「そう。カップケーキ。これね、クリームみたいに見えるけど、違うんですって。色んなお花の色素を使ってお砂糖とナッツのペーストに色を付けて、飾りにしてるんだって。」
キラキラと瞳を輝かせて菓子について語るイオンは『夕刻の蝶』などと二つ名を持つ腕利きのハンターというよりは、可愛らしくて美しいものの好きな普通の少女に見える。
デザート用のカトラリーを片手に「でも崩しちゃうの勿体ないわね」と眉を下げるイオン。
昼間、木漏れ日の中で眠るイオンを見て子供の頃に読んだ童話を思い出した。
それから、目の前に飾り付けられたケーキを出されてもうひとつ。
童話ではないが、言い伝えのようなものを思い出して我ながら女々しいかも知れないと苦笑する。「イオン、口を開けて。」
小さな唇におさまるサイズに切り分け、フォークを差し向けると、イオンは頬を染めて瞬いた。
「……あの……ライカ?」
「早く。落としちゃったら勿体ないだろ?」
フォークをわざとらしく揺らしてみせると慌てたように、けれど頬を染めたまま、伏し目がちに唇が開かれる。
「おいしいかい?」
白い頬の中で薔薇色の面積が増えるのを見ながら問うと「……分んない。」と消え入りそうな声が返る。
そしてイオンもフォークの先でケーキを取り、こちらに向けてくる。
きっとこの行為が何の意味を持つのか分っているのだろう。「ありがとう。」
食べさせてくれて、という意味だけではない礼を述べて咥内に甘い菓子を含む。
飾りの花が口の中で蕩け、生地に染みさせていたらしき酒の香りが仄かに広がる。席を立ち、細い肩を恥ずかしげにすぼめて俯いたまま咀嚼するイオンの横に回り込み、髪を拭ってケープのように肩にかけられたままの布をまだ少し濡れた髪に被せる。
どんなモンスターに立ち向かった時にも感じたことのない緊張と、ずっと以前からの衝動に従ってイオンを抱き締め、昼間言えなかった言葉を口にする。「……『夕刻の蝶』を、籠に閉じ込めようと思うんだ。」
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385
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-07 04:38
ID:Pp0tzhpI
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声にしてみるとそれはなぜ今まで黙っていられたのかと思うほどの奔流となり、抱き締める腕に力がこもる。
甘い香りの髪に頬を寄せると、小さく震えるイオンがカトラリーを置いて椅子の上で身を捩り、僕に向き直る。「……閉じ込められてるんじゃないわ。私が望んでここにいるの。籠から出たいなんて思ってない……。」
潤んだ声が聞こえて僕の背中に腕が回り、湯上がりのラフなシャツの胸元に当てられたイオンの目元辺りから濡れた感触。
「イオン。この職業をしながら言うのが誠実かどうか分らない。でも、言わないほうが不誠実だと思うんだ。」
なるべく冷静に話し始めると、イオンは僕の腕の中から蕩けるように潤んだ瞳でこちらを見上げている。
涙の膜が張った瞳には僕だけが映り込んで、濡れた睫毛がゆっくりと瞬く。この瞳に捕われた時点で、僕も君から逃げることなんてできなくなっていた。
いや、むしろ逃げたいなんて最初から思っていなかった。
まして君を逃がす気も、なかったんだ。形の良い耳に唇を寄せて万感を込めた言葉を囁くと、イオンの大きな双眸が伏せられて、澄んだ雫が零れ落ちた。
君が絶対に傷付かないように、万全の策を練って僕が前衛に立とう。
どんな武器でも使いこなして君を守ってみせる。誓いを込めて小さな唇に自分のそれを重ねて熱を分け合うと、眼前で長い睫毛が伏せられてまた雫が零れる。
それすら惜しい気がして唇で吸い取ると、震える唇が甘く僕の名を呼んだ。 -
386
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-07 04:39
ID:Pp0tzhpI
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「ホントに朝まで帰らないほうが良かったとはニャ……。」
ライカにもらった小遣いを使い切る勢いで飲み遊び、美しい主人とその想い人ヘの土産として名産の酒を買って帰ったルームサービスとオトモ達は、驚かせようとして音を立てずに開けた扉を、開けた時よりも慎重に閉め、鍵をかけるのも忘れてへたり込んで呟いた。
「……ライカ様が『男』に見えたニャ。」
だいぶ失礼なことを言いながら嬉しげにじわじわと頬を緩ませ、星空を肴にして土産に買った酒で最初は静かに、そのうちどんちゃん騒ぎの祝宴を始めたアイルー達は、物音に気付いたライカとイオンが扉を開けると扉の前で寝転がって酒瓶から直接飲むほどの酔いっぷりを呈しており、イオンに砂糖水を飲まされて介抱され、その間にライカがアイルー達の寝床を用意してやる羽目になった。
どうにか明日に持ち越さないよう介抱をすませ、ひと息ついて水を取って部屋に戻ると、この辺りの名産織物、気に入りのマットの上でアイルー達が野生を失って腹を出した姿勢で寝こけている。
専用の小さな毛布をかけてやって、寝台で髪を梳いているイオンを眺めながらテーブルにつく。
片手で髪を搔き上げ、水は後にしようと土産の酒が少し残った盃に唇を付けて、止まる。
捧げ合った熱、誓い合ったことを思い出して。狩猟に生き、そしてきっと狩場に散るのだろうと漠然と思っていたこの道に、同行すると躊躇いもなく頷いてくれた人。
細い身体で狩場を舞い、いつでも自分の背中を守ってくれる頼もしくも美しい人。「僕はもっと強くなるよ。君を守れるように。どんなモンスターを相手にしても、必ず君の元へ帰れるように。」
それはまだもう少し先、イオンがジュヌミアの姓を名乗ることになってからの決意でもあって。
テーブルから呟いたそれを聞いて、髪を梳きながらイオンが長い睫毛を伏せる。「ありがとう。いつでも同じ依頼を受けられるように私も強くなるわ。……でも、また元気ドリンコ飲まなくちゃいけなくなったら、お願いね?」
——眠り姫
——薔薇色の頬「起きてたのかい!?」
「起きかけてたの。でも、ライカが元気ドリンコの瓶を開けてる音がしたからたまには甘えてみようと思ったら……。」
寝ている間にするのも卑怯だとは思っていたが、あの場合は装束を汚さず、適正な量の元気ドリンコを摂取してもらう必要があって……。
ああ、したかっただけだ。
木漏れ日に眠る君があまりに綺麗で。「嫌だった?」
反撃に、少し意地悪に訊いてやる。
イオンは櫛を置いてこちらに来ると、椅子の上に座る僕の膝に横座りして首に腕を回す。「……どうだと思う?」
負けず嫌いな『夕刻の蝶』、頬がまた薔薇色だ。
「さあ、どうだろうね?」
瞳を合わせて吹き出すと、またどちらからともなく瞼を閉じた。
その後『闇を喚ぶ黒猫』はますます狩猟技術に磨きをかけ、『夕刻の蝶』は屋台のおかみやニャンコックと何やら楽しげに料理談義をするのを見かけることが多くなった。
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387
名前:指南と至難、君と僕@休日
投稿日:2018-07-07 04:41
ID:Pp0tzhpI
[編集]
後書きという名の言い訳
「こんなこともあったんじゃないか、あってくれたらテンション上がる!」程度のただの妄想ですが、兎氏のシナリオで2人が出てきた瞬間に降った話です。
筆力が伴わないので魅力的に書き込めなくて申し訳ない。
笑って流して下さると幸いです。・タイトルについて
指南しつつ至難な依頼をくれたギルドマネージャー。
その虫眼鏡の中には『不幸せの青い鳥・ホロロホルル』も『幸せの青い鳥を掴みかけているライカとイオン』も見えていたんだろうという意味を込めました。
本当は『指南と至難、虫眼鏡の中の君と僕』とつけようとして字数制限に引っ掛かったとかそんな話は(ゴホゴホ・夜という言葉をくどいほど使わせたのはホロロホルルを連想して欲しかったからです。
・『多くの種類』のキノコをという依頼は、2人なら熟成キノコを忘れることはないだろうと思ってエリア4に行って欲しかったからです。
・エリア4でホロロホルルに出会えて、2人がくっつく前ということで上位を探したら2羽狩猟になってしまいました。
・イオンが睡眠音波攻撃を喰らいましたが、モデルになっていらっしゃる兎氏のお仲間さんはきっとお避けになるのでしょう、申し訳ございません。
ホロロホルルに出会わせたのは眠り姫がやりたかったからです。深層シメジ取りに行ってティガレックスに出会ったんじゃムードが…。・元気ドリンコは寝る前に飲まないと意味ないとかその辺りはご容赦ください……。
・アイルー達がうっかり覗き見たものは皆さんのご想像にお任せしますが、別にR18を想定しているわけではありません。
……多分。・思ったより甘くなってしまいました。
ファーストバイトがやりたかっただけなのですがどうしてこうなった……。・7月7日に書き上げたかったのは七夕だからです。
我ながら糖度が過ぎる。
駄文に長々とお付き合いいただき恐縮です。
また皆様のシナリオを楽しみに筆を置かせていただきます。>>388
シナリオ番号を書いておりませんでした。
ご指摘ありがとうございます。>>389
ブラックコーヒーを甘くしてしまって申し訳ございません。
兎氏の想定なさったライカとイオンに少しでも近づけたようで何よりです。
「よけれりゅ!」ですか笑
モデルの方は随分可愛らしいのですね。
それでもミラボレアスのブレスをエリアルで回避するとは……まさに『夕刻の蝶』。
本編に参加する筆力を持ち合わせておりませんので、またしばらく皆様のシナリオを楽しませていただきます。
キャラをお借りした上、お褒めの言葉を頂戴し、大変光栄です。>>390
ペロッ……こ、これは……どこかで聞いたことあるぞ!?
シナリオ楽しみにしております。>>391
>>392
こちらにも激甘コーヒーをお配りしてしまい申し訳ございません。
シナリオ番号とまとめ、ありがとうございます。 -
388
名前:名無しさん
投稿日:2018-07-07 11:05
ID:uIF4pv72
[編集]
休日さんお疲れ様でした!
いやぁ甘い、甘いなぁアマレイもいいけどライオの二人もえぇのうところでこの話はシナリオ何になるんだろ
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389
名前:兎
投稿日:2018-07-07 11:35
ID:h3fvt/Eg
[編集]
誰か俺のブラックコーヒー知らない? え、今持ってるこれ? じゃあ誰か勝手に砂糖入れた? それもしてないって? あるぇー?(・3・)
休日氏シナリオお疲れ様でした、セリフ回しも行動も殆んどがこちらの想像しているライカとイオンそのものでwktkしながら読んでおりましたw
相当書き慣れている方だろうとお見受けしますので、次は是非本編の方も挑戦してくださいw余談
モデル2人は基本ポンポン避けるのですが、ちまっとした状態異常攻撃には結構当たったりします。(ホロロの催眠音波、ガムートの雪装甲纏い等
他にも黒猫の方は一時期潜行から飛び出す系の攻撃に直撃しまくったため軽いトラウマになっていたり、蝶の方は『飛べばよけれりゅ!』とボレアスのなぎ払いブレスを華麗に避けたりetc...毎回楽しく狩っておりますw -
391
名前:時雨
投稿日:2018-07-07 19:41
ID:gX20EMvk
[編集]
休日氏お疲れ様でしたー。
いやぁ……コーヒーが甘いんじゃが、じゃが!てかマジやシナリオ番号書いてないね、じゃあ俺のシナリオを46にしてシナリオ46.5にしようそうしよう。
お、千壱氏久々ですな。やっちゃってくだせぇ。 -
392
名前:時雨
投稿日:2018-07-07 20:10
ID:gX20EMvk
[編集]
あなたの日記十二冊目 目次に戻る(>>1)
その1(>>46) その2(ここ)
──────────────シナリオ46『砂漠よりも熱い戦い』 (>>392)
各地にG級個体が現れている事によりドンドルマから各地ギルドに様々なハンターが派遣された。
その中にはブランシュ達が訓練生時代に組んでいたチームメイトである『クリス・レイヴン』がおり、彼は偶然にも知り合いであるブランシュとサクラ、そしてツバメと出会いを果たした。
そして彼等はサクラに言いよっていた『カーサル・ロマンシア』の救助、もとい旧砂漠に潜んでいるという『潜口竜 ハプルボッカ』の狩猟を行う事になったのだが、そこに居たのは通常の個体よりも遥かに巨大なハプルボッカであった。
その巨体に苦しめられながらも何とか捕獲、そしてカーサルの救助を果たした彼等は勝利の宴を開くのであった。* * *
シナリオ46.5 『指南と至難、君と僕』(>>368)
『蝶』と所帯を持つ気はないのか。
そう問われたライカはギルドマネージャとの会話を反芻しながら、告白の一つや二つされてもおかしくはないイオンが恋人を作っていないという不自然な事実に気付く。
そんな思考を遮断しながらもギルドマネージャから「古代林へ行ってなるべく『多くの種類』のキノコを採ってくること」という直々の依頼を受け、その最中に現れた二羽の『夜鳥 ホロロホルル』を狩猟を果たす。
その後帰投し『蝶』に対して昼間言えなかった言葉を口にした『黒猫』はますます狩猟技術に磨きをかけ、『蝶』は屋台の女将やニャンコックと何やら楽しげに料理談義をするのを見かけることが多くなったという。* * *
シナリオ47 『マイナー・ソルジャー・アーチャー・ナイト』(>>428)
タクミに巻き込まれるような形でエリザベートの依頼を受ける事になってしまったあなたとクリス。
ラティオ火山での『砕竜 ブラキディオス』の狩猟。順調に進んでいたもののその最中、『鎧竜 グラビモス』が乱入し、一時狩りは中断される。
そしてあなた達は二人をグラビモスに向け、残る二人で砕竜と戦うという作戦を決行。 見事双方を捕獲することに成功した。
その後、温泉に浸かりながらエリザベートから自身が奴隷であったという過去を聞くこととなった。
自分の過去を知って、自分をどう思うのか。
そう語りかけてきたエリザベートに、元奴隷がなんだと断言すると彼女は小さく笑い自身を気さくに呼べるようにエリザと呼ぶ事を要求した。
帰投後、ベッドに寝転がったあなたは自分の居場所を得るためにハンターになったエリザを思い浮かべながらもっと強くならなければ、と呟くのであった。* * *
シナリオ47.5 『錬金術士とコーディネート』(>>548)
アトリエが好調だから、狩りにも出てない。
その事を聞いたミーシャに防具を作りに行くと押し切られるようにして、狩猟に赴くことになったエリクシル。
ミーシャの気まぐれでユクモ村に赴くと、そこに居たのはプライベートシリーズに身を包んだリィ。
レシピを教えて貰おうとするが、渓流で目撃されている不可思議な泡狐竜の調査を手伝う事になった。
サクラを交えて向かった渓流にいたのは視力だけではなく、聴力さえも失ったいわば『無明無音タマミツネ 』と言える個体であった。
ジンオウガの二つ名個体、金雷公との戦闘の末に尾に付着した自らの眼球の存在に薄々気付いており、それを取り戻すべく熾烈な戦いを続けていた泡狐竜はその眼球を取り戻し、安らかに眠りにつく。
その数日後、アトリエに訪れた『彼』に対して一歩踏み出して「絶対に追いつく」と笑顔で宣言すると、『彼』もまた晴れやかな顔で言葉を返すのであった。 -
393
名前:名無しさん
投稿日:2018-07-07 20:12
ID:jDorJ/xk
[編集]
ミラの横薙ぎブレスの首にエリアル置いとくのは近接でもやる
むしろメイン火力まである -
395
名前:名無しさん
投稿日:2018-07-08 15:06
ID:K4UiJdXs
[編集]
あらぬ誤解が生まれそうなので1で
ただし優しく揺らす感じでお願いします -
396
名前:時雨
投稿日:2018-07-09 20:33
ID:gX20EMvk
[編集]
お、リィちゃん回ですね。
リィちゃん動かしやすくて好き、というかあの装備のまま寝てるんか…。>>398
暇氏帰ってきとるやんけ!!!!!
分かったたけしあらすじ修正してくるよ!!!!! -
398
名前:暇
投稿日:2018-07-11 14:29
ID:UXUdxUJc
[編集]
J( 'ー`)し<たけし、かあちゃんお昼休みの間に(今までサボってた)前スレのあらすじまとめを(ワールド飽きたから)更新しておいたからね
J( 'ー`)し<それに伴ってあなたの日記の冊数が一つずつずれ込むから修正しておくのよ、たけし
J( 'ー`)し<そういえば関係ないけど、かあちゃんワールドの方いつの間にか書き込み規制喰らってて草はえたよ、たけし
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399
名前:時雨
投稿日:2018-07-17 21:36
ID:gX20EMvk
[編集]
更新が、ない…!
番外編じゃないけど千壱氏の書き込みが無かったら一旦取り消してやろうかな…。
導入部分やしプロットが分からないしなぁ。>>400
了解です。
でもあまり無理はなさらないでくださいね。 -
402
名前:名無しさん
投稿日:2018-07-24 15:15
ID:aIrU6AZk
[編集]
ひっそりと読んでる者です
前のシナリオ読んでからはしばらく食べるものが全部甘かったです、訴訟
千壱氏ー!早くきてくれー!ちなみにどうでもいい考察すると、多分ビショップさん、蟹氏の考えてる正体と兎氏が想定してる正体が違うような……気のせいかな?
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404
名前:名無しさん
投稿日:2018-07-24 19:41
ID:2.2/ANTA
[編集]
>>402
んなこと言っても引き継ぎシナリオなんだししょうがないでしょ
全然違うキャラだったとしても蟹さんが失踪した以上あの解釈で受け止めないと頭捻って続き書いたであろう兎さんに失礼よ -
405
名前:名無しさん
投稿日:2018-07-25 00:25
ID:ZMgBWRKE
[編集]
どんだけ齟齬があろうとあの中途半端な状態からあそこまで綺麗に纏めれるのは兎氏しか居なかっただろうけどな
仮にもし蟹氏本人が戻ってきてもその辺は何も言えないレベルだし、言い出そうものならまた蟹叩き祭りになるわな -
406
名前:名無しさん
投稿日:2018-07-26 00:31
ID:r7/Rc5fc
[編集]
解釈の違いがまた面白いよね
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408
名前:暇
投稿日:2018-07-27 16:18
ID:oIMCpCBM
[編集]
家出娘を迎えに来たじいちゃんに帰りとうないってゴネてこの人との間にはウドンちゃんと言う子供もいるのよとか嘘つかれてトバッチリ食らうパティーンかと思ったら逆だった(意味不明な供述)
ガララには笛で挑んで欲しかったが今回は引き立て役に徹しておこう
でもチャアクと連携が取れる武器ってなんや
スリープショテルか?
あとウドンちゃん -
409
名前:名無しさん
投稿日:2018-07-27 20:54
ID:ZMgBWRKE
[編集]
片手剣で後ろ足ダウン狙って降りてきた頭に高出力しかないな
あとはスリープショテルの睡眠を想定した一撃火力が欲しいからタクミ連れていけば完璧やな!
どっかで見たメンバーだが気のせいやろ! -
412
名前:名無しさん
投稿日:2018-08-08 04:07
ID:utos98N.
[編集]
おうおうこの手の遊びは更新速度が面白さの8割、時間が経つほどそもそもの興味が薄れて行くぞ
金銀出し渋ったカプコンの様に
ワイに勝手に「逆転満塁サヨナラホームランだー!終わり」とか続けられて台無しにされたくなかったらがんばれ❤がんばれ❤ -
414
名前:名無しさん
投稿日:2018-08-08 19:29
ID:9Agp0Sfs
[編集]
3の不運を顧みずタクミの元に集まるでお願いします!
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417
名前:時雨
投稿日:2018-08-12 14:01
ID:gX20EMvk
[編集]
1で隙間に飛び込みましょうかね。
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419
名前:兎
投稿日:2018-08-17 23:25
ID:h3fvt/Eg
[編集]
誰も選ばないなら選んでおきますかねー。
1・2混合で速攻で睡眠狙いでお願いします。 -
421
名前:名無しさん
投稿日:2018-08-25 05:16
ID:cC01fPRQ
[編集]
逆転満塁サヨナラホームランだー!
終わり
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422
名前:名無しさん
投稿日:2018-08-25 13:41
ID:is0LH4mk
[編集]
少しは書き手の事考えてあげたら?
趣味とは言え善意でこのクオリティの読み物を無償で提供してくれてる人達にそんなお客様気分はどうかと思うよ -
423
名前:名無しさん
投稿日:2018-08-29 19:46
ID:/C93oqEM
[編集]
蟹氏に続いて千壱氏も失踪か・・・
残ってるのって時雨氏と兎氏だけか? -
424
名前:時雨
投稿日:2018-08-29 20:24
ID:gX20EMvk
[編集]
ウチら以外の誰かが書いてもいいんやで? | 壁 |д・)
プロットが分からんし最悪取り消してシナリオ書くかなぁ
暫し待たれよ -
425
名前:レイナ
投稿日:2018-08-30 06:28
ID:ZCQDKK9o
[編集]
完全にオリジナルとかでいいなら
作れるかも知れないけど、どうします? -
426
名前:兎
投稿日:2018-08-30 08:46
ID:h3fvt/Eg
[編集]
>>425
今までの流れや設定を大幅に変えてしまう様な物でなければ大抵大丈夫ですよ。
後は1シナリオ書き切れるプロット及び時間の余裕があるかどうかですね。
どちらかに不安があるのなら時雨氏に筆を譲ってその間にしっかり構成を整えて、というのをオススメします。追記
各人が出しているオリキャラを除けば、登場キャラの設定は殆んどゲーム準拠なので大丈夫ですよ。(他世界観などは大辞典参考が良いかと
使おうとしているキャラの設定だけある程度押さえておけば問題ないかと。
TRPG経験やリプレイを読んだ事があるなら大体そんな感じの進行で良いですね。お手本欲しいそうなので時雨氏、任せた!(オイ
-
427
名前:レイナ
投稿日:2018-08-30 11:12
ID:ZCQDKK9o
[編集]
流れは二作見たけどあんまり分からないです><
設定はクロスにあるものなら平気でしょうか?
誰か教えてください!
シナリオはTRPGみたいでも構いませんか?
作られる方がいらしゃるのであれば、
それを観つつ作って行きたいです! -
428
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-08-30 20:56
ID:gX20EMvk
[編集]
はーいはいはい任されましたよー。
残念ではありますが千壱氏のシナリオを取り消して、最初の文だけ書いて進行役をいただきます。
いつもの駄文ですが御付き合いください。~シナリオ47 マイナー・ソルジャー・アーチャー・ナイト~
まだ日が上がって間もない頃、静かに目を覚ましゆっくりと起き上がると、その場で軽く体を伸ばしてしつこい眠気を追い払う。
しっかりと目が覚めるとベッドから降り、すぐ傍の窓に掛かったカーテンを開くと、途端に薄暗かった部屋いっぱいに朝のまぶしい日差しが広がる。
窓を開くと、朝の清々しい空気が入り込む。深呼吸して肺いっぱいにその空気を満たす。
───今日もいい天気になりそうだ。
そう思いつつ窓を開けたままにして着替え始めると、丁度シルビアがペットのフェニーの散歩を終えて帰ってきたところであった。「おはようございますニャ、ご主人様。 今日は随分と御早いんですニャ、何か用事があるのですかニャ?」
「そういう気分だっただけさ。 たまには早起きしてみるのもいいだろう?」
「それは否定しませんニャ。」シルビアと会話を交わしつつ着替えを済ませると、自分の部屋を出る。外へ出ると、清々しい朝日が村全体を明るく照らしているのが見え、その場で朝の空気をもう一度味わうように深呼吸。
シルビアが朝食の支度をしてくれている間、訓練所へと向かう事にする。
無論装備は着用している。…あの奇妙な角竜によって無惨な最期を迎えてしまった土砂竜の素材で出来た防具───ボロスXである。武器の方は『今日は』スリープショテルを取り出して来た「うむ、今日も来ると思っていたぞ若きハンターよ。 日々の訓練は大事だが程々にするようにな。」
カリスタ教官にそう言われつつ持った剣と盾を装備して構え一度大きく深呼吸すると、素振りを始める。
最近は狩猟などで村を空けたりする時以外はなるべくこうして自主的に鍛錬を行っている。こうした日々の努力で少しでも強いハンターになれるようがんばっているのだ。日々の努力が実践で非常に役に立つという事は十二分に熟知しているつもりだ。
日毎に武器を変え素振りや足捌きなどの動きの訓練から腕立てや村を一周する走り込みなどの基礎体力作りなども怠らない。こうした日々の努力の甲斐あって、体は結構筋肉質になってきている。
ただし最近ではアリーチェやエドワード、それにアンキセスまでが鍛錬をやり過ぎないよう注意するようになった。
彼自身は体を壊さないようにという皆の優しい心遣いだと理解しているが、これからの戦いのためにも鍛錬を欠かす事は出来ないのだ。
今日の鍛錬は集中していたせいかいつもよりも長くなった。 -
429
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-08-31 18:20
ID:gX20EMvk
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家に戻り、風呂に入って汗を流して部屋に戻ると、ちょうど朝食の準備が終わっていてシルビアがゼンマイ茶を淹れ始めていた。
席に座り朝食のサンドイッチを手に取り口に運んで「おはようさん。 ちょいとお邪魔しますよ。」
───味を堪能しようとしたところで不意に、玄関の方から声がしたので見るとそこには一人の男性がいた。
彼が潜口竜の素材で出来た防具で身を包んでいる事からハンターである事は分かるのだが、集会場や村の中でも彼のような顔は見たことがない。
突然現れた彼を不思議そうに見ていると、その心中を察したのか男性は朝食を食べながら聞いてもいいと一言言って自己紹介を始めていた。「俺はクリス・レイヴン。 最近この村に来たハンターでね、俺の友人達がおたくにお世話になってるって聞いてるんでちょいとご挨拶でも、と思いましてね。」
詳しく聞けばクリスはブランシュとサクラ、そしてツバメと訓練生の時からの知り合いで、彼女たちから俺の事を聞いた時から話をしてみたいと思っていたそうで一度家に訪れたようだ。
だがその時は土砂竜の狩猟に赴いており不在であった為、日を改めて訪れたとの事である。「で、おたく今日は暇ですかい? なら狩りにでも行きませんか? ブランシュ達が朝からどっかに行っちまってな、暇してたんすよ。 親睦を深める為の狩りってのも悪くは無いだろ?」
シルビアが淹れたゼンマイ茶を飲みながら快活な声で言うクリス。狩猟に同行できる仲間がいなかったので、彼も退屈だったのだろう。
斯く言う俺自身も特にすることが無かったため、よろしく頼むと声を掛けた。
そして特に何の依頼を受けるか決めていなかった為、集会場で探してみようという話になりクリスと共に集会場へと向かう事にした。 -
430
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-08-31 23:08
ID:gX20EMvk
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~龍歴院前集会所~
まだ朝早いというのに広場には様々な装備を身に着けたハンター達が行きかっている。
武器を携え狩場に赴く者、狩猟達成の祝杯をあげる者、疲労困憊し地べたに身を投げ出す者、クエストボードに貼られている依頼を吟味する者…
そんなハンター達の中で一際目立つ存在が二つ。「今度こそ付き合ってもらうぞッ! この前のリオレイア狩猟の件忘れたわけじゃないからなッ!」
「分かった、分かりましたから待って下さいよ…ねぇ…。」炎戈竜の装備に身を包むエリザベートと彼女に屈強な火竜の装備の首根っこを掴まれ引き摺られているタクミであった。
そう言えばタクミはこの前ミーシャとツバメ、そしてエリザベートから熱烈ラブコールを受けていたか───結果的に全部ふっていたが。
「あれ止めなくていいんですかい?」とクリスが隣で言っているが、止めに入れば巻き込まれるのがオチだ。ここは速やかに離れるのが良いだろう。
さらば、タクミ。お前の事は忘れない。「…あっ、ちょっ! あなた君、頼む助けてくれ!」
「…呼ばれてますけど?」
「あっ? おぉ、アンタかい。 知らねぇ顔もいるがまぁいいか、ちょいと付き合いな。」
「…気づかれましたけど?」……おのれ、タクミ。道連れにしてくるとは卑怯な真似を…。
こうなっては仕方ない、諦めて彼女に付き合うとしよう。俺の言葉に、クリスもまた仕方ないとばかりに了承した。
俺を含めた三人が受注してくれる事になりエリザベートは満面の笑みを浮かべ、依頼書を俺達に見せつけていた。「あんがとよ! まっ、今回の依頼はアンタらにとっても得する依頼だと思うぜ?」
「得する依頼? それってどういう…」
「その話はあのテーブルで話そうじゃねぇか。 そっちの方が話しやすいだろ?」そういうエリザベートに誘導され食事スペースのテーブルに移動すると、詳しく話を伺うことにした。
狩猟ターゲットは『砕竜 ブラキディオス』。
大きく発達した前脚が特徴的な獣竜種で、獣竜種どころか全体的にみても指折りの軽やかなフットワーク、両立されたパワーとスピードをもつ強力なモンスター。
依頼書によればラティオ活火山で新しい燃石炭が豊富に採れる鉱脈が発見されたのだが、ちょうど今そこは砕竜の縄張りになっており、今まで何度か発掘隊や調査隊がそのブラキディオスに襲われて被害が出てるので狩猟して欲しいとの事だ。
これだけならば普段行くような依頼と変わりないように思えるが本題はここかららしい。「このブラキディオスが発掘隊を襲ったり、他のモンスター共に喧嘩ふっかけてくれたお陰で火山のそこら中で滅多に取れない鉱石が取れまくってるって話があるんだよ。 その鉱石は武器や防具の強化にも役立てるし、かなりの高値で売れる。 防具やらなんやらで金使いまくってんだろ? 見逃す手はないだろう?」
確かに最近製作したボロスXのお陰で金欠気味になっているのが事実だ。不要なものを売れば大儲けできるだろうし、乗らない手は無いはずだ。
俺が快諾するとタクミとクリスも同感だったようで喜んで付き合ってくれるようだ。「んじゃ、一旦の解散だな。 適当な装備見繕ってこいな。」
クリスにそういわれて俺は装備を決めに家に戻った。
砕竜 ブラキディオス…、何れにしても強力な相手だ。何が良いだろうか…。【選択】武器と装備、スタイルと狩技を決めてください。
・武器や防具はレア7までの狩猟済みモンスターの素材のものやとレア8までの採取系素材と小型又はドス系モンスター素材のものから。 -
431
名前:レイナ
投稿日:2018-09-01 03:35
ID:ZCQDKK9o
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希望を言うなら
ミツネ双剣エリアル
exジンオウガ
ライゼクス
exジンオウガ
ジンオウガ
exジンオウガ
属会6以上できれば達人も
狩技は血風独楽3所有物をまだ把握しきっていないので私のを参照しています。ごめんなさい
なおスキルは
属性会心
力の解放1
連撃の心得
(上手くいけば)見切り
が乗ると思います。 -
432
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-01 07:50
ID:gX20EMvk
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うん、所有物を書いてなかった自分が悪かったですねこれ
一応上位から入手している素材を書いておきますね・ドスギアノスの上位素材 ・影蜘蛛の上位素材 ・岩竜の上位素材
・化け鮫の上位素材 ・凄く風化した太刀 ・大雪主の素材 ・火竜の上位素材 ・雌火竜の上位素材 ・徹甲虫の上位素材 ・重甲虫の上位素材
・鬼蛙の上位素材 ・鬼蛙の獰猛素材 ・盾蟹の上位素材 ・千刃竜の上位素材 ・ドスゲネポスの上位素材 ・氷牙竜の上位素材 ・水竜の上位素材
・紅兜の上位素材 ・溶岩竜の上位素材 ・隻眼の上位素材
・天彗龍の上位素材 ・土砂竜のG級素材以上からお選び下さいませ
てか所有している素材だけまとめ取らんやんけ、書いてこよ -
433
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-01 12:06
ID:.xKs/ouM
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ピンポイントで上位のジンオウガ倒してないんだな
ならガノス双剣でバルファルクの装備にしとくか
スタイルとかはレイナ氏のでお願いしやす -
434
名前:レイナ
投稿日:2018-09-01 14:54
ID:ZCQDKK9o
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私の使ってる防具が皆無!?
ギルドナイトセイバー(マスターセイバー)くらいはあるかな?あると良いな・・・
基本拾い物で作れます。 -
435
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-01 20:12
ID:gX20EMvk
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>>434
なくても作ればえぇんやで
今回の装備はギルドナイトセイバーとバルク装備に致します* * *
ブラキディオスの弱点は確か水だったはずだ。
ならばと手に取ったのは都市を警護する騎士たちが儀礼用に身につける二振りの細剣、『ギルドナイトセイバー』。先日ボロスXシリーズと共に製作したものだ。
儀礼用といえど工房が作った武器、その切っ先は飛竜の甲殻も穿つ事が可能なのだ。
防具は困った時のバルク装備。土砂竜の装備はランスやガンランスなど盾がある武器種に向いているため今回は見送ることにした。
アイテム等を整え家から出るとクリスとタクミが出迎えにきており、三人で集会場へと向かう事にした。
その道中、クリスが何やらエリザベートから渡された依頼書を見ながら唸っているのが気になったのかタクミがクリスに訊ねていた。「クリス、どうしたんだい? その依頼書に何か怪しいところでも?」
「…いや、そんな事はありませんよ? ……ただ気になったことがありましてね。」
「気になったこと?」
「エリザベート、だっけか? あの人確か火の国の姫様の依頼ばかり受けてるって話があるみてぇじゃねぇか。」
「確かに聞いた事があるけれど、それが?」
「その話、あながち間違って無かったんだなと思いましてね。」そう言って依頼書を俺に手渡すクリス。タクミは依頼書を横から覗く形になり結局、二人で一緒に読むこととなる。
……確かに依頼主の項目には火の国の姫と書かれている。
火の国の姫は上に立つ者の責任というものを理解しており、「火の神の怒りを鎮めるための生贄など無意味だと老人たちにわからせたい。」や「ウラガンキンの亜種の群れが暴れているせいで希望を失った民を励ましてほしい。」といったような国民を守る為にギルドに依頼を出す人物である。
エリザベートがその姫君とどのような関係であるのか、何故彼女が姫君の依頼を受け続けているのか分からないが今回の狩猟において彼女の事が分かれば良いのだが…。
そんな事を思いつつ集会場、その中にある飛行船乗り場にたどり着いた俺達は先に着いていたエリザベートに遅いとどやされながらも飛行船に乗り込み、砕竜のいる火山へと向かった。* * *
依頼人 火の国の姫
そちらの火山で新たに燃石炭が豊富に採れる鉱脈が発見されたそうだ。しかしそこは砕竜の縄張りになっており発掘隊や調査隊が襲われ、何度も被害を受けているという話を聞いている。
我々の国も砕竜に苦しめられている為とても他人とは思えぬ。ハンターよ、どうかお主力を貸してくれ…! -
436
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-02 17:39
ID:gX20EMvk
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現在、俺はネコタクの荷台に乗りつつラティオ火山の中を駆けていた。
今回のネコタク従業員は人語が話せていたとはいえ、それは必要最低限の言語ぐらいでやはりというか行き先の完全なコントロールが不可能となっていた。
頼むから前回の土砂竜の時のようにブラキディオスの目の前で降ろすのはやめてほしいものだが…。
そう思っていると荷台がグラりと持ち上がり始める。前回のように無様な真似は見せまいと投げ出され地面にぶつかる直前に受け身を取る。
ネコタクはそんな俺を見向きもせずUターンし来た道を戻っていく。言語が話せるのだからせめて謝ってくれても良いものなのだが…。さて、ここは何処だろうか。見たところブラキディオスがいるエリアではない、というか当の砕竜はおろかアプケロスやブナハブラの姿すらない。砕竜にでも追い出されたか?
そう思いつつ周りを見ればそこには煌びやかに輝を放つ無数の鉱石がそこら中にあるのが分かった。モンスターに邪魔されず鉱石を掘ることが出来る、実に良いではないか。
というか暑い!熱い!慌ててポーチを漁って、急いでクーラードリンクを喉に流し込みふと思う。…こんな場所、火山の中にあったか?
ラティオ火山には何回かしか訪れた事が無いとはいえ、エリアに関しては支給されている地図やアマネから借りた書類等で覚えているつもりだ。だが今俺がいる場所はどのエリアにも該当しない。
ネコタクの不手際かとも思ったが、狩猟区までは確実に運搬するよう契約に規定されているから見ず知らずの土地に放り出されることは基本的には無いはずであるが…。
そこまで考えたとき、ふとアマネの書類で見たある文献を思い出した。
───世の中には人が足を踏み入れたことがほとんどなく、まだ一般に知られていない地域がまだある。これはハンター達が赴く狩猟地にも言えることで、そこでは滅多に見る事がない貴重な鉱石や素材を回収することが出来るという。我々はその地域を【秘境】と名付けることにした。…まさかここが、今俺がいる場所こそがその秘境なのではないか?偶然とはいえ辿り着く事が出来るとは何とも運が良いものである。
もう一度鉱石を見れば変わらず輝き続けている鉱石がそこにはあった。
俺はポーチからピッケルを取り出すとその鉱石に向かって歩き出す。一人だけいい思いをするのは悪いだろうが元々は俺達の金欠を解消する為にもこの依頼を受けた為だ、勘弁して欲しい。
そうして俺はピッケルを構えると、体全体を使って一気に振り下ろした。一方その頃、タクミはというと…
「───やっぱりこうなるだよねええええぇぇぇッ!?」
ブラキディオスのいるエリアに降ろされてしまい、追われていたという。
-
437
名前:レイナ
投稿日:2018-09-03 00:06
ID:ZCQDKK9o
[編集]
幸運の持ち主ですね♪
たくみさんドンマイ過ぎです><
ここは地底火山なのでしょうか?火山なのでしょうか?
判別出来ない悲しみ・・・
以上ただの途中感想でした -
438
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-03 23:16
ID:gX20EMvk
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ラティオ活火山=2G火山ですねはい
困ったときのモンハン大辞典だ、みんなも見よう!* * *
結果としては上々、といったところであろうか。
真紅蓮石、エルトライト鉱石、メランジェ鉱石に明王原珠が大量に入った麻袋を覗き込み、思わず笑みを浮かべてしまう。
これだけあれば少しだけ売っても大金が手に入るため、暫くは金には困らないだろう。狩猟が終わった後にでも素材用と売却用に分けるとしようか。
そしてもうひとつ収穫がある。岩石の塊…のように見える錆に塗れた金属の塊だ。
とても貴重な物、らしいが今手に入れただけではまだ使い物にならない正体不明の錆の塊である為、龍歴院に戻ったら加工屋に錆を落としてもらうとしよう。
さて、そろそろ向かうとしようか。周りを見渡して出口らしい所を見つけ勢いよく飛び降りる。
下のエリアに近づく度に肌に感じる温度が高まっていくのが分かる。クーラードリンクを飲んでいるため、暑さに対してある程度の温度は遮断してくれてはいるがそれでも暑い。
砂漠は主に太陽の熱がすさまじかった。もちろん砂からの反射熱もすごく暑かったが、ここに比べれば優しい。火山は体全体にすさまじい熱が襲い掛かるのだ。
何故夏の暑さがまだ残る時期に火山になんて呼ぶんだ、恨むぞエリザベート…。
そう彼女に対して愚痴を漏らしつつ、深い深い穴の中を落ちていく俺であった。~information~
・風化した塊を入手しました(エピローグで鑑定結果の判定を致します)* * *
「───お、漸くのご登場かい! だったら…!」
熱せられた大地に着地した俺を真っ先に出迎えたのはクリスであった。スコルピオダートと呼ばれる弓を背負い駆け寄ってきた彼は俺の後ろに回り込み二回ほど肩を叩いて、
「タッチ! 後は任せたぜッ!」
そう言って、その場から走り出す。
いや、タッチってなんだ。というか後は任せた、とは。「何ボーッとしてるんだいッ!? 前を見なよッ!」
ジークムントを構えて立つタクミに誘導されるようにして前を見れば、そこには緑色の粘菌が付着した剛腕を振り上げる砕竜の姿が。
慌てて飛ぶように回避すると俺が先程までいた場所に剛腕が振り下ろされおり、敵を殴るつもりだった拳は地面を殴る結果となっていた。
殴り付けた地面から腕を上げるとゲル状の粘菌が糸を引いているのが分かった。
クリスが先程逃げた方向は丁度ブラキディオスに対して俺を挟むような形でまっすぐ、つまりブラキディオスがそれまで狙っていた獲物───クリスを見ると、それより近い位置に俺がいることになるのだ。「───クリスお前ええええぇぇぇッ!!」
「悪いなッ! こっちも色々仕込みあるんだわッ!」
「ハハハッ、言ってる場合かッ! ほら、前見ろ前!」エリザベートの声に前を見ると思った通り、砕竜の視線がまっすぐ俺に注がれていた。お前でもいいや、そんな幻聴が聞こえた気がした。
しかも気付いた時には、クリスだけでなくタクミやエリザベートまでもがその場から遠ざかっているのだ。「あとで報復する、絶対!」
呻きながらも、それぞれの位置関係を把握する。
もちろん、囮役を別の仲間に擦り付ける為ではない。俺が把握したのはブラキディオスと、その後ろにある誰かが設置したのであろう落とし穴との位置関係である。
何とか奴を誘導してあの罠に落としてやりたいものだが…。~行動を選択してください~
1 真正面突走って誘導する
2 攻撃しつつ誘導する
3 アイテム使用(アイテム明記)
4 その他メンバー詳細
エリザベート:アグナX&ソリッドガンバード ブレイヴ
タクミ:EXレウスS&ジークムント エリアル
クリス:ハプルX&スコルピオダート ギルドスタイル -
439
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-03 23:17
ID:q3sffsnM
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>>437
ラティオ火山やから火山やで。っと続き来とった。1でお願いいします。脚の間を抜けてやりましょう。ジャンピング土下座とかそうそう来ないでしょ(期待)
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440
名前:レイナ◆ilho.X4A
投稿日:2018-09-04 00:00
ID:ZCQDKK9o
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私的には近距離なら
怯みノックバックで落として欲しいかなとか思ったり
遠いなら上の方の手段でお願いしますね -
441
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-04 22:01
ID:gX20EMvk
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「お前ら覚えてろよ!」
ぼやきながらも、全力でその場から走り出した。
流石のブラキディオスも向かってくるとは思わなかったのであろう、奴の脇をすり抜けて罠の元へと急ぐ俺に対して動きが一歩遅れた。
砕竜は横にステップし、体の向きを変える。
牽制の意味があったのかもしれないが、ブラキディオスに突っ込んでいくつもりでは無かったため無意味である。寧ろ目的の場所に辿り着く余裕をもらっただけという形である。「…来るなら来いッ!」
落とし穴の手前に立ち気炎を掲げていると、思った通りブラキディオスはまっすぐ向き直る。やはりというか、完全に標的を俺に切り替えたようだ。
口では文句を言っているが、俺が来るまでの間クリスが手こずっていたと考えると、彼の消耗が激しくなり過ぎるだろう。そう考えれば囮役を交代する、というのはいいアイデアだろう。
とはいえ、あの擦り付けかれ方は流石に面白くはないが。
砕竜の出方を伺うとこちらを警戒するように前脚をべろりと舐めていた。
そしてこちらに近づいてくると前脚を叩きつけ、こちらの側面に回り込んできた。そして大きく腕を振りかぶる。
このまま罠にかかってくれれば良かったのだが、叩きつけられたのは落とし穴を僅かに離れた場所。
誘導する為に落とし穴を挟む位置に移動しようとする───が、今にも爆発しようと真っ赤に染まっている粘菌を見て即座に撤退。
そして粘菌は俺がその場から離れた直後に爆散。肝心のブラキディオスの視線は、俺に注がれたままであった。「モテモテだねぇ、あんた!」
「笑い事じゃない!」必死に逃げ回る俺にエリザベートは冷やかし半分の声援を送る。
そして再びそれぞれが配置につき、ブラキディオスの動きを待つ。理想的なのは、地面を走って来ることであるのだが…。
両腕をひと舐めした砕竜は身を屈め、その巨体に似合わぬ跳躍を行う。俺は慌てて潜るようにして落とし穴の上を飛び越えて回避、ブラキディオスが着地したのは罠の向こうであった。
動きの素早さで一歩間違えれば間に合わなくなってしまう危険があって、気が抜けない。
寧ろこれは盾を持つエリザベートが囮役を買って出るところであろうが、彼女が引き受けるとは思えない。「あぁもう、いい加減にしてくれッ!」
再び砕竜の視線がこちらを捉えそう唸り声をあげた瞬間、尻尾に矢が突き刺さりブラキディオスが悲鳴をあげる。
突然の出来事に驚いたが、ブラキディオスは驚いたどころの騒ぎではなく、バランスを崩すが前方に一歩踏み出して体制を立て直そうとする───その『一歩』が命取りであるのであるが。
その瞬間砕竜の下半身が地面に沈んだ。
矢が放たれた先を見やれば、先程まで追いかけ回されていた、クリスがガッツポーズをとっている様子が見えた。「…うっし、どうよ!」
「クリスナイス!」
「さっきの分のお詫びさ、これで勘弁してくれや!」次の矢をつがえるクリス軽口で褒め称えながら双剣を抜き放ち、落とし穴から半身だけ出すブラキディオスに向かって切り掛る。
一歩遅れ、エリザベート、タクミがその場に駆けつけもがき苦しむブラキディオスに対して一斉に攻撃を加えていた。 -
442
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-05 22:25
ID:gX20EMvk
[編集]
各自が狙う場所は既に決めてある。粘菌を纏う前脚と角のように突き出た頭殻だ。
どうやらブラキディオスの頭殻や腕には空洞があり、そこに粘菌を蓄えているようでそこを破壊してしまえば大きな弱体化に繋がるらしい。
俺が狙うのは右前脚。双剣特有のまるで踊っているかのような流れを重視した動きで次々に剣を振るい、呼吸と動きを正確に連動させて自分のリズムで剣撃を放つ。二つの剣から放たれる全武器最速の連撃は次々に狙う右前脚に向けて振り下ろされ、傷を生み、血が飛び散る。左前脚を狙うのはエリザベート。影蜘蛛の素材を使用したソリッドガンバードと呼ばれるガンランスを突き出す。鋭い突きの一撃。斬るのではなく、貫く事だけに特化したその一撃は砕竜の体に突き刺さると、続いて砲撃。甲殻の一部を爆砕してバックステップで位置を変えると、今度は踏み込むと同時にガンランスを豪快に振り上げる。
知らない人が見るとほぼ間違いなくランスと間違えられるような外見をしているが、充分にガンランスとしての機能は出来ているようだ。
頭殻を狙うのはタクミとクリス。顔を踏み台にして飛び上がり、タクミは武骨な見た目が特徴な大剣を頭殻目掛け振り下ろす。
彼に当たらないようにクリスは弓を限界まで引き絞り、矢を放つ。狙いは寸分狂わず顔面に命中。ブラキディオスの弾に対する弱点部位である頭を狙い撃ちしている。落とし穴の拘束時間いっぱいまで攻撃を続けるが、しかしついに落とし穴が壊れて砕竜が地面から這い出てきた。
そして、ブラキディオスの姿が変貌する。頭殻、前脚だけでなく全身の至る所が黄色く変色したのだ。
ブラキディオスとは共存関係にあるらしいこの粘菌は、大量に存在する腕と頭殻だけが目立っているが、実際は全身にこの粘菌を付着させている。
普段は視認できない程度にうっすらと纏っているのだが、砕竜が興奮すると唾液に含まれる成分が気化し、それに反応して全身の粘菌も活性化するため、身体の至るところが黄色く変色する───というのをアマネから借りた書類で見た事がある。つまり今の奴は怒り状態。危険信号である。
ブラキディオスは鋭い双眸でこちらを睨みつけ力強い怒号を放った。
強烈なバインドボイスに俺とクリスは恐怖のあまり耳を塞いでしまった。と、「しっかりしなよ、それでも男かッ!」
「大丈夫かい! しっかりしてッ!」即座に防いだおかげでバインドボイスが通じないエリザベートが俺の肩を、タクミがクリスの肩を揺らして解放する。おかげで砕竜よりも先に行動が可能になった。
あれだけ攻撃していたのにその闘志は衰える事はない。むしろ凶悪なまでに激しさを増している。
───まだ、戦いは終わりそうになかった。~行動を選択してください~
1 タクミと共に乗りを狙いながら攻撃
2 攻撃を受けぬよう堅実に慎重に攻撃
3 アイテム使用(アイテム明記)
4 その他 -
443
名前:レイナ◆ilho.X4A
投稿日:2018-09-06 01:37
ID:ZCQDKK9o
[編集]
閃光投げて怯んだら
強走(あればG)飲んで当たらないように
乗り潰しましょう
つまり3321で行動再開です♪ -
444
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-06 22:50
ID:gX20EMvk
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「クリス! 閃光玉をッ!」
「はいよ! 時間稼ぎって奴だな、任せとけッ!」砕竜が怒り状態に移行する際、クリスが咄嗟にポーチから閃光玉を取り出したのを見た俺は強走薬の入ったビンを取り出しながら叫ぶと、クリスは閃光玉を投擲した。
刹那、すさまじい閃光が迸りブラキディオスの視界を潰した。悲鳴を上げる砕竜に向かってすぐさまクリスが新たなペイントビンが染み付いた矢を撃ち込み、は突撃を開始。強走薬を飲み終えた俺も遅れて突撃。
エリザベートは側面から回って落とし穴を設置し、すぐさま砕竜に肉薄する。
見えない群がる敵にブラキディオスは体を回転させて尻尾で薙ぎ払おうとする。だがタクミはその動きを読みながら尻尾を踏み台にして跳び上がる。回転したブラキディオスの頭が寸分狂わずタクミの方へ向き、その瞬間溜めに溜めた力を一気に解放した強力な一撃が砕竜の頭に炸裂した。
悲鳴を上げるブラキディオスからタクミは一度距離を置く。すぐさまクリスの矢が砕竜の顔面に突き刺さる。悶える砕竜に容赦なく第二射が命中する。暴れるブラキディオスの足元で俺は両腕を掲げて双剣を交差させる。その瞬間───纏う気の流れが変わった。
纏うのは殺気。目の前の《敵》を殺戮する事だけを考え、唸りを上げて歯軋りをする。それはまるで、本物のモンスターのよう。人間が他の生物と違うのは理性というものがあるという点が大きいが、鬼人化はその理性という名のリミッターを解除して闘争本能だけに特化させた、まさに本物のモンスターのような状態だ。「うおおおおおおぉぉぉぉぉッ!」
遠吠えをするように怒号を辺りに轟かせ、姿勢をグッと低くしてそのままの体勢で地面を蹴り砕竜の足を利用し跳躍。跳び上がる際に三回の連撃、そして勢いつけて落下し雄叫びを上げながら無数の斬撃を繰り出す。
目にも留まらぬ速さで次々に繰り出される剣撃の嵐。我武者羅に見えて、実は正確に狙った場所に向かってひたすらに攻撃を続けている。ギリギリの所で理性で自身をコントロールする、鬼人化の最も難しい技術だ。
再び跳び上がったタクミの一撃を受けてブラキディオスの体躯が大きく沈んだ。即座にタクミが空中に躍り出、群青の甲殻にナイフを突きつける。「頼むからじっとしていてくれよッ!」
クリスがビンの調合を行っている間、俺とエリザベートで支援に向かおうとするも、砕竜は尻尾を振り回し辺りを薙ぎ払う。ハンマーの素材としても使われる尻尾だ。一撃に襲われれば大怪我は免れないだろう。
ブラキディオスは背中にいるタクミを引きずりおろそうと首を捻って噛み付こうとする。これがイビルジョーだった時にはかなりのハラハラ物であるが。
必死で振り払おうとするブラキディオスに対抗して、両手両足を使って必死にしがみつく。そして暴れ方が緩やかになった瞬間、再びナイフを突き立てていく。
何度も何度もナイフを振り下ろすタクミ。堅い甲殻の辟易し始めた頃、体重を乗せた一撃が背中の甲殻を貫いた。
思わぬ衝撃だったのか、ブラキディオスはもんどり打って地面に倒れ込む。
タクミも投げ出されたが、既に待ち構えていた俺達は一気にブラキディオスに向かって攻め込んでいき、一歩遅れ、タクミも斬り込む。 -
445
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-07 19:15
ID:gX20EMvk
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倒された砕竜は四肢をばたつかせ起き上がろうとする。なかなか起き上がれない様子だったが、その四肢の動きは同時にまとわりつく外敵達を押しのける働きもしていた。
意識してのことなのか、あるいは無意識が本能的にやってのけたことなのか、いずれにしても野生のしぶとさに舌を巻きながらひたすら斬りつけていた。
やっとのことでブラキディオスが身を起こすと同時に視界が回復、クリスを除く肉薄していた俺達はすぐさま後退する。そこへ砕竜は地面に角を突き刺す。直後、地面が光出したかと思えば、奴の周囲が爆散する。
爆風に飛ばされながらも三人はブラキディオスから距離を取った。
ブラキディオスはエリザベートに対して角を叩き付けて前方一直線を爆風で吹き飛ばすが、彼女はそれを盾で防ぎ突撃、「…あぶねッ!?」
───しようとした所で驚きの声を上げなら、彼女は盾を構え再度襲いくる爆風を防ぎきる。
次にブラキディオスはタクミに向かって突進前脚を連続で地面に叩きつける。前脚で殴った箇所がそのまま爆発を起こし、巨大な体を凶器に変えて襲い掛かる砕竜にタクミは大剣を背負い急いで退避する。
地面を数発殴ったところで巨体は停止、タクミには後一歩届かない。目の前で憎々しげに睨む砕竜の顔面に、タクミは容赦なく剣を振るう。
動きが止まったブラキディオスに俺はすぐさま斬り掛かる。足を中心に剣を振るうと返り血と共に水飛沫が迸る。
ブラキディオスは次なる敵を探して振り向く。そこへクリスの放った矢が頭に炸裂。悲鳴を上げるが容赦なくさらに一発が命中する。
弓を背負ったクリスは閃光玉を握っていた。奴が彼に攻撃を仕掛けた瞬間に閃光玉を炸裂させて動きを封じ、先制攻撃を仕掛けるつもりのようだ。
ブラキディオスはクリスを捉えると両腕をもたげて猛ダッシュを仕掛けるのだが、「…って、おいおいマジかよッ!?」
その速度が怒り状態の轟竜もかくやというスピードであり、その速度に動揺したクリスは閃光玉を投げ損ねてしまった。
そして振り下ろされた腕を横に転がるようにして直撃は避けるが、直後に襲ってきた爆風に煽られクリスは悲鳴も上げられずに吹き飛んだ。
彼の元へは行かせまいとエリザベート達と共にブラキディオスに襲いかかる。 -
446
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-07 20:11
ID:gX20EMvk
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砕竜は群がる敵を文字通り吹き飛ばそうと地面に角を突き刺す。その攻撃にエリザベートとタクミは間一髪ガードすることができたが、防ぐ手段のない俺は逃げ遅れてしまい命中、吹き飛ばされてしまう。
吹き飛ばされた俺に狙いを定めたらしいブラキディオスが腕を振り上げ、こちらに振り下ろそうとする。
万事休すか、そう思われた時砕竜の足元が蒼白い炎に染まり───爆発。エリザベートが突き付けたガンランスの穂先とブラキディオスの体表との間で、凄まじい爆裂が起こった。
あまりの威力に砕竜は怯み、そして再び下半身が地面に沈み視界が低くなるこの感覚。最初に会敵した際に敵が使った小賢しい罠だと気づいた時にはもう遅かった。「ナイスだ、エリザベート! 僕が彼等を助けるから今のうちに!」
「よし分かった、こっちは任せな!」再び脱出しようともがくブラキディオスにエリザベートは一人突貫する。
タクミは生命の粉塵を取り出し空中にばら撒くと同時に、まるで回復薬を飲んだように体に纏わりついていた疲労感や鈍痛などが和らいだ。
彼に対して「ありがとう」とクリスと共に礼を言った直後、地面が裂け、ブラキディオスの体が落とし穴から解放される。
そして奴は一吠えすると俺達がいる場所とは別方向に向かっていく。あの先はエリア5、屋内のエリアだ。
このまま追いかけても良いが、さて。~行動を選択してください~
1 急いで追い掛ける
2 態勢を整える -
447
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-07 20:15
ID:IdEofp7c
投稿お疲れ様です
選択は2でお願いします 回復とかしておきたいので -
448
名前:レイナ
投稿日:2018-09-08 09:46
ID:ZCQDKK9o
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そうですね
そろそろ強走ならとける頃合ですし、回復していきましょう -
449
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-09 20:50
ID:gX20EMvk
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狩猟は言うまでもないが体力が必要だ。モンスターを追ったりその攻撃を避けたりする為に常に動き続けなくてはならない。それに加えて常に死と隣り合わせの為にすり減る精神力、一瞬の緩みも許されない集中力。モンスターを相手にしている際には様々な力が消耗される。そしてそれらは例外なく無限ではなく、いずれどこかで限界を迎え、狩場でその瞬間死へと直結する。
だからこそ、それを避ける為にもまだ余裕があるうちに一度休憩を入れる為に態勢を整えるよう提案した。チームメイトに対するそうした気配りも必要だ。「そりゃあいい、ちょうど怪我人がいるみたいだしな。」
「怪我人だって? それはどういう…」
「あー…、やっぱバレてましたか?」半ば呆れたように言うエリザベートの言葉にクリスは苦笑する。そんな彼の反応を見て彼女は近付くと彼の左腕を軽く小突いた。
「痛って……ッ!?」
「痛いのならさっさと手当てしろってんだ。」
「容赦ないなぁ……。」激痛に悶えるクリスを呆れながら見下げるエリザベート。その隣で回復薬を飲んでいたタクミが彼女の容赦のない行動に苦笑を浮かべていた。
「わ、わかってるなら優しくしてくれませんかねぇ…!」
「優しくすると大体の人間はつけ上がるからな。」
「……この性悪女め。」皮肉をたっぷり込めながら言う彼の言葉が癇に障ったらしく、エリザベートは無言で彼の怪我している部分に強めの一撃を入れた。当然クリスはその場で崩れ落ちて悶え苦しむが、俺とタクミも彼の自業自得だとばかりに助ける事はなく、彼はしばらく激痛に悶える事になった。
「しかしあれだな。 今回のブラキディオスはデカイな。」
「そうなのか?」
「あぁ、一回り弱くらいはデカイ。」
「まぁまだ罠や爆弾があるんだ。 次の戦闘でもトラップ戦を重視して戦おうよ。 それでいいだろう?」
「否定はしないな。 深追いし過ぎれば先程のようにチームが壊滅的打撃を受ける事になるからな。 あんたも鬼人化と乱舞はあまり多用しないように。」
「分かっているさ。」
「あんたは相手を撹乱しつつ主力として遊撃に徹してくれ。 そっちの坊主は後方から援護を頼む。 いいか、常に余裕を持って行動するようにしてくれよ。」
「わかったよ。」
「……了解しましたよ。」
「良し。 そんじゃ奴が気まぐれで移動しちまう前に行くとするか。」エリザベートはそう言うと有言実行とばかりに歩き出す。残る俺達はそんな彼女を追うように歩き出す。すると、その途中でエリザベートのアイテムポーチからポロリと何かが落ちた。それを拾い上げ、彼女を呼び止めるが既に彼女はエリア6へと向かってしまっていた。
「なんだいそれは? 御守りか何かかい?」
「さっきのエリザベートが落としたんだよ。 大事な物、だと思うんだが…。」その御守り?らしき物は紅蓮石で出来ており、燃え盛る炎を龍が包み込んでいる姿を模している。それをタクミと二人でまじまじと見つめているとかクリスがそれが何か教えてくれた。
「それって確か火の国の御守り、というか勲章じゃありませんでしたかね?」
「知ってるのか?」
「まぁこう見えて情報通みたいなところはありますんで? …で、それなんですけど確か火の国の民を護る者達、いわゆる騎士様の勲章ですよ。」騎士の勲章、だって?それはつまりエリザベートは火の国を護る騎士、ということになるのか?口が悪く無頼漢の印象を受ける彼女が?
手の中で輝く龍を模した紅蓮の勲章。しばし無言でそれを見詰めた後、俺はそれをポーチに突っ込み彼女の後を追う。
今これに関して考えていても仕方ない。狩猟の後にでも聞いてみるとしようか。* * *
「おっ、やっと来たか。 早速で悪いが、御出迎えだぞッ!」
エリア5に到着した俺達を迎えるエリザベートが言い終えるより早く、砕竜はこちらに飛び込んできた。だが直線的なその攻撃を俺達はそれぞれ横に跳んで回避し、武器を構える。
当の砕竜は怒り状態が収まったらしく、地面にはべトリと鮮やかな緑色がへばりついていた。
───さぁ、第二ラウンドといこうか。~行動を選択してください~
1 再度乗りを狙いながら攻撃
2 攻撃を受けぬよう堅実に慎重に攻撃
3 アイテムを使用する(アイテム明記)
4 自由枠 -
450
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-10 19:50
ID:XfvsEw5.
また選ぼう
罠を使うって言ってたから2と3混合でお願いします -
451
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-11 19:12
ID:gX20EMvk
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宣戦布告の怒号の後、砕竜はエリザベートに向かって地面を蹴って猛烈な勢いで突進し彼女に殴り掛かる。彼女はその拳を盾で受け止め腰を落として耐え凌ぐ。
だが、その受け止めている盾にはべっとりとつく粘菌が。早くしないと粘菌が爆発してしまうだろう。「助けに行くぞタクミ!」
「分かった! クリス、罠は任せた!」
「はいはい、任されましたよっと!」クリスに罠を任せタクミと共にブラキディオスに向かって走り出す。
タクミは背負ったジークムントを引き抜くと同時に体全体を回転させるようにして横薙ぎに振るう。足元にいきなり強烈な一撃を受けたブラキディオスは自身に攻撃してきたタクミを睨み付ける。
砕竜の意識がタクミに向いたことで力が弱まったその隙にエリザベートは盾で突き返すようにして拘束から抜け出し、ブラキディオスの顔面に砲撃。上体を反らしながら怯んだ砕竜の頭部の角が砲撃によって砕け散っていた───角の部位破壊の達成である。
奴が怯んだ隙を狙い、俺はエリザベートの背後に回って、ポーチから消臭玉を取り出し地面に叩きつける。すると青白い煙が噴き出し、エリザベート、そして彼女の後ろにいた俺を包み込む。
するとどうだろう。盾についていた粘菌がドロリと溶け落ちているではないか。どうやら消臭玉には悪臭を取り除くだけでなく、殺菌にも効果があるらしい。
彼女は残った粘菌を払うようにして盾を振り、「ありがとよ」と感謝の言葉を述べていた。
直後、ブラキディオスが前脚を叩きつけてきたため俺とエリザベートは左右に別れて回避。その砕竜の背後から跳び上がったタクミが大剣の重量と彼の腕力、重力などを組み合わせた強烈な一撃を尻尾に叩き込む。狙いをこちらからタクミに変えたブラキディオスは拳を振り上げて彼に迫る。彼は回避を諦めてすぐさまジークムントを横に構えてガードの体勢を取る。
ブラキディオスは動かぬタクミに向かってその長く凶悪な鋭さの鎌を無機質に振り下ろす。鎌と剣がぶつかった瞬間、鋭い金属音が響き、タクミの身体が大きく後退した。何とかガードで耐え切ったものの、その威力は衝撃となって彼の全身を襲う。「くうッ……!」
強烈な衝撃にガクッと膝を落とすタクミ。そんな彼にブラキディオスが迫る。だが、放たれた矢が鼻先に命中した瞬間薄い水色っぽい煙を放ち、その動きは止まった。
砕竜は突如周りに放っていた殺気を消すと、そのまま崩れるようにして倒れた。そしてなんと寝息を立てて眠り始めてしまった。「これは…。」
「ようやく効いたか。 なんだい、睡眠ビンつけれたのかその弓。」
「まぁな。 おたくのそのガンランスのお陰もありましたけどね。 そら、急いで爆弾置くぞ!」弓を背負ったクリスが大タル爆弾Gを持って走る。俺はうなずくとエリザベートと共に残る大タル爆弾Gを持ち走る。クリスは起爆の用意を、タクミは回復薬を飲んだ後同じ様にして爆弾を設置しに走る。
睡眠付加による眠りは強制的に眠らせた不安定なもので、ちょっとした衝撃でさえ起きてしまう上に持続時間が短い。事は急がなければならない。「いいよッ!」
「了解ッ!」タクミの合図にクリスはスコルピオダートを構えて弦を引き絞り狙いを定める。ブラキディオスに当たらないように気をつけながら大タル爆弾Gに照準を合わせる。
そして、撃ち放たれた矢は寸分の狂いなく設置された大タル爆弾Gに命中。刹那、大タル内の信管がその衝撃で発火。カクサンデメキン入りの爆薬に引火して大爆発を起こした。
すさまじい爆発に消えるブラキディオス。俺達は襲い掛かる爆風に耐えながら砕竜を確認する。だが、黒煙に包まれた奴の安否はわからない。 -
452
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-11 23:14
ID:gX20EMvk
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はっはー、ダイスめ荒ぶりよるわ。
* * *
「やった、か?」
「……わからない、でもまだだと思うよ。」横にいるタクミもじっと鋭い隻眼で黒煙の柱を睨むばかり。
辺りには焦げ臭い匂いが漂い、大タルの破片や土がパラパラと落ちて来るだけで何の変化もない。黒煙は相変わらず天井に向かって伸び続ける。
目を凝らして黒煙を凝視する───刹那、黒煙の中で何かが動いたのを見逃さなかった。「あれはッ!」
「やっぱりそう簡単には終わらないかッ!」近くにいたエリザベートとクリスもわかっていた───奴のすさまじい殺気に。
「罠まで走るぞッ! 急げッ!」
エリザベートの掛け声に一斉に罠の下へと駆け寄る。その背後から、ブラキディオスが黒煙の中から猛スピードで追い掛けて来る。
背後から迫る砕竜の気配と圧迫感に嫌な汗を流しながらシビレ罠の上を通り過ぎる。その両側にはクリスとタクミも一緒だ。「掛かったッ! そらやるぞッ!」
エリザベートの声に足を止めて振り返ると、まんまとシビレ罠を踏み抜いて動きを封じられたブラキディオスが痙攣しながらその場で拘束されている。すぐさま反転攻勢に出る。
攻撃方法は変わらない。ひたすら前脚に向かって剣を叩き込む。その繰り返しだ。人間とモンスターの間には埋める事のできない体格や体力の差がある。だから、モンスターを相手にした狩りは相手の体力を削ぎ取るような地道な攻撃の繰り返しとなる。
若干切れ味も落ちて来たが、まだまだ問題ない。むしろ今はこの数少ない攻撃の隙を無駄にせずうまく活用する事に全力を注ぐ。
エリザベートは砲撃と突きでひたすら攻撃を続け、タクミは跳び上がって溜め斬り、クリスは矢を放ち続ける。
攻撃を叩き込んだ後、シビレ罠の拘束力を推測したクリスが全員に指示して一斉に砕竜から離れる。直後、奴はシビレ罠から脱した。
ブラキディオスは離れた敵に対し殺気みなぎる瞳でギロリと睨みつけ、すさまじい怒号を放ち牽制する。順調に進んでいる。そう確信していたが、順調に進んでいた狩りは思わぬ乱入者によって乱される。
突如として溶岩の中から熱線が放出。ブラキディオスに命中すると勢いそのままに巨体を押し返して岩盤に叩き付けた。
突然の出来事に何が起こったのか分からなかったが、真っ赤に燃える溶岩の海から浮上する『そいつ』に嫌でも理解させられる。
岩と見紛うような質感の外殻。数多く存在する飛竜の中でもとりわけ頑丈で大きく、その外見に違わぬ圧倒的な防御力を誇る。
『鎧竜 グラビモス』。一般的に知られる飛竜種の中では最大級かつ最重量級の体躯の持ち主でもあり、その威容から「火山の重鎮」や「鎧の覇者」などの異名でも知られる飛竜種だ。
その光景に呆然としている俺達の背後で、ブラキディオスも起き上がる。
前門の鎧竜、後門の砕竜。挟撃という最悪な状況の中で苦しげに、不敵な笑みを浮かべてギルドナイトセイバーを構える。「……さぁて、状況は最悪って感じか?」
引きつる口元を、一筋の汗が流れ零れた。
~行動を選択してください~
1 グラビモスのエリア移動を願ってブラキディオスと戦う
2 二頭の縄張り争いに掛けてみる
3 その他 -
453
名前:レイナ
投稿日:2018-09-12 05:47
ID:ZCQDKK9o
[編集]
3ですね
こやし玉投げてお帰り願いましょう
なければ両方にペイント付けて一時撤退ですね -
454
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-13 23:43
ID:gX20EMvk
[編集]
状況は限りなく絶望状態だ。
相手はブラキディオスとグラビモスの二頭。砕竜の方はかなりのダメージを与えたが、それでもまだ脅威に違いない。鎧竜に至ってはまだペイントボールすらも与えていないのだ。
やはりここはこやし玉で移動を…。そう思い俺達を挟み睨み合う二頭の竜を警戒しながら、ポーチの中に腕をねじ込ませる。「おっと、危ねぇぞッ!」
その途端、それを妨害するように吐きかけられた毒液を瞬時に動き出したエリザベートの大楯に炸裂。そして毒液を吐き出した一頭のイーオスの頭に数本の矢が突き刺さり動かなくなる。
…だった。このエリアには数匹のイーオスがいるのを忘れていた。毒液が飛ばされた方角を見れば、残る二匹のイーオスは仲間が倒され絶句しているのかその場から動かずに立っていた。
彼女達が助けてくれなければ毒液をモロに浴びていただろう。「助かったよクリス、エリザベート。」
「借りはつくっとくタチなんでね。 ついでにペイントビン付けときましたよっと。」
「さっきの借りを返しただけさ。 それより早く離脱するぞッ!」グラビモスはブラキディオスに対して溜まった苛立ちを吐き出すかのように熱線を発射。それぞれ横に跳んで回避し、いち早くエリア5からの脱出を狙う。
跳躍して回避したブラキディオスはそのまま鎧竜に向けて落下。硬く重いグラビモスとはいえ、砕竜が上から圧し掛かってきたら倒れざるを得ない。
重心を崩し倒れたグラビモスの上でさらに跳躍して距離を取った砕竜は、グラビモスが起き上がる前に挑発の意を込めて吼える。
やっと起き上がり、なにすんじゃわれー、と言わんばかりに咆哮するグラビモス。ブラキディオスよりも大きな音を出すため、砕竜は怯んでしまう。その隙にグラビモスはそのまま腰を落とし、砕竜に向かって突進。怒っているからか、その速度は通常よりも速めだ。
しかし体格では劣るとはいえスピードとフットワークで勝るのはブラキディオス。横に跳んで突進を回避、グラビモスはブレーキを掛けるも壁に激突。
壁に激突したからといって気絶する鎧竜ではなく、大きな尻尾を振って身を守りつつ後退。すぐさま振り向き、砕竜の位置を確認する。
ブラキディオスは圧倒的なスピードで瞬時にグラビモスの腹下に潜り込み、一撃を御見舞する。鎧竜は身体ごと尻尾を振り回すが既にブラキディオスは離れたあと、その瞬間に付着していた粘菌が爆発。岩のような外殻にヒビが入った。「走れ走れ走れッ!」
俺達は二頭の闘いに必死に逃げ回るが、そんな小物をチラリと見て、再びグラビモスとブラキディオスは互いに向き合う。彼らは今、縄張り争いに勝つことに執着しているからだ。
グラビモスは熱線を横薙ぎに放つが、そんなものはブラキディオスの跳躍によって難なく避けられる。
熱線が放たれた頃には俺達はこのエリアにはおらず、この薙ぎ払い熱線を受けたのはその争いを遠巻きに見つめていたイーオス達ぐらいだった。 -
455
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-14 23:18
ID:gX20EMvk
[編集]
現在俺達はエリア4へと移動していた。ラティオ火山の中では比較的広いエリアである。
「……ふぅ、追手はないみたいだね」
タクミはエリア5へ繋がる方を見て静かにつぶやいた。
まずは一安心と言った所か。それでもモンスターが活動するには適したエリアであるので、絶対に安心とは言えないが。
しばしの小休憩を挟んで、円陣を組んで中間作戦会議を開く。と言っても当初の予定とはずいぶん状況が変わってしまい、事態はかなり深刻化している。その為、円陣を組む全員の表情は皆一様に険しい。「状況を整理すると、俺達の本来の討伐対象はブラキディオス。 しかしこの狩場にはグラビモスも生息していて、ただでさえメンバーの熟練度的に厳しい戦いは、さらに絶望的にまで厳しさを増した───簡潔に言えば、勝ち目はほとんどないって訳。」
クリスはそう締めくくると、大きな大きなため息を吐く。そのため息一つに、今の状況がどれほどまでに絶望的かが表れているかのようだ。
「……正直、そろそろ本気で報酬金に対して割が合わなくなってきてるんだが。」
「ブラキディオスだけでも必死なのに。 そこに加えてグラビモスとなると、ちょっと厳しいねぇ。」
「ちょっと所か断崖絶壁に追い込まれるくらいに厳しいんだがなぁ。」今チームの実質的な参謀役を担うクリスの表情は特に険しい。険しいのを通り過ぎて軽くやつれているようにも見える。効率優先主義の彼女にとって、今の状況はその信念に背くかのような苦境となっており、事の重大性はかなりのレベルに達している。
エリザベートもまた、その表情は険しい。だが経験の差か、俺達よりは深刻そうではなかった。先程からずっと目を瞑って何かを思案するように無言で居続けている。「で、どうするです?」
クリスは腕を組みながら深刻そうな表情を崩さずに皆に問い掛ける。自然と、その視線はエリザベートに注がれた。
俺とタクミもエリザベートの意見を求めて彼を見詰める。皆の視線を一身に受けたエリザベートはしばらく無言を貫いていたが、ゆっくりと閉じていた瞳を開く。「作戦を変更するしかないねぇ。」
「作戦変更か?」
「あぁ、メンバー二人をグラビモスの足止めに回す。 一人相手はキツイからな。 ブラキディオス相手は残った二人で行う。」それが彼女の考えた新たな作戦であった。
鎧竜を無視して砕竜を相手にするのは極めて危険だ。奇襲などで背後を取られれば壊滅的打撃を受けるのは必至。その為、エリザベートは危険度を比べた結果、戦力の分散に至ったのだ。
だが、この作戦もまた危険である。「この状態で戦力を分散させる方が危険じゃないかい? 先にグラビモスでもいいんじゃ…。」
「確かにな。 だがアタシ達がグラビモスに構っている間にブラキディオスが被害を出すかもしれない。 奴をこの狩場に係留しておくには、逐一奴と戦闘を繰り返す必要がある。 全員でブラキディオスに構っていたらそんな余裕はなくなるからな。」彼女の説明に、意見をしたタクミは無言で聞き手に徹する。
本来の討伐対象であるブラキディオスを逃がしてしまっては本末転倒。だから二人をグラビモスに向け、残る二人で砕竜と戦う。危険だが、正論だ。「仕方ないな。 状況が状況だし、あんたの案で行きましょうや。 戦術的には危険だが、戦略的にはその方が効率がいいですしね。」
「危険だけど、元々危険な任務だからね。 もうこうなったらドンと来いだよッ。」
「縁起でもない事言んじゃないよ。 あんたの運のなさは筋金入りなんだから、本当にこれ以上ヤバイ事態になったらどうするだい。」
「す、すみません……。」エリザベートに注意されて落ち込むタクミに苦笑しつつ、再び表情を引き締め本題を切り出す。
「それで? グラビモスを相手にする役目は誰に任せる訳だ?」
「それはお前さんに任せるよ。こういうのは慣れてるだろ? 」エリザベートがこちらに丸投げすると、全員の視線がこちらに集まる。分かっていたが、チーム分けは俺に一任されたようだ……。
-
456
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-14 23:21
ID:gX20EMvk
[編集]
メンバーをどちらに担当させるかチーム分けをしてください。
内容纏め
・ブラキディオスの狩猟
・グラビモスの足止めメンバー詳細
あなた:バルク&ギルドナイトセイバー エリアルスタイル
エリザベート:アグナX&ソリッドガンバード ブレイヴ
タクミ:EXレウスS&ジークムント エリアル スタイル
クリス:ハプルX&スコルピオダート ギルドスタイル -
457
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-14 23:39
ID:NakhxNcU
物理>属性のブラキディオスにはタクミとクリス。
肉質カチカチのグラビには固定ダメ出せるエリザベートと属性稼げるあなたでお願いします。 -
458
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-16 13:03
ID:gX20EMvk
[編集]
グラビモスの岩如き硬い鎧は幼体である岩竜に劣るとはいえ分非常に頑強で、並大抵の攻撃では傷一つ付かず、むしろ攻撃を仕掛けた方が負傷、破壊される事さえある。
しかし胸部の装甲さえ破壊してしまえば胸及び腹は全く無防備。更には属性にも脆くなり、特に水属性にデタラメに弱くなる。
ならば属性を手数で押せる俺と、堅牢な装甲を砲撃によって打ち破れるエリザベートはグラビモスを担当した方が良いだろう。
となるとブラキディオスを担当するのはタクミとクリスになるだろうが、彼等の腕に関しては保証している。多少難はあるかもしれないが押し切れるだろう。
自らの口で、その采配についてを皆に告げたが、特に不満は見受けられなった。
大まかな作戦概要の相談を終え、再び出撃準備を整える。使用したアイテムの情報などを共有し、保有数の入れ替えなどを行う。「すまないな。 大変な任務をつかせることになって……。」
申し訳ないと思いながら話しかけると、タクミは気にした様子もなくニッと明るい笑みを浮かべる。
「後悔からは何も生まれないさ。 何事も前向きに考えるのが状況打破に繋がるんだよ。 まぁ、大舟に乗ったつもりでいてくれよ。」
「……そう言ってもらえると助かるよ。」タクミの言葉にほっとしたように胸を撫で下ろす。危険な任務を仲間に任せるからには、出来る限りの支援をしてやりたい。ブラキディオス戦では大きな効果を得ることが出来る閃光玉をタクミに渡すと、彼は快く受け取りポーチの中に詰め込む。
そんなやり取りがあって、全員が準備を終えた。ここからはタクミとクリスによるブラキディオス討伐隊と俺とエリザベートによるグラビモス迎撃隊の二つの部隊に分かれて行動となる。「それじゃ、ここからは別行動だ。 僕達の側面の守り、よろしく頼むよ」
「任せておけ。 俺達は期待に答えるからそっちこそ、ブラキディオスの事頼んだぞ。」
「そっちこそ任せてくれよ。」俺の返事にタクミは満足気にうなずくと、グッと拳を突き出す。それに応えるように拳を突き出し、互いに拳をぶつける。
気合充分とばかりに早歩きで去って行くタクミとクリスの背中を静かに見送ってから、エリザベートと共にグラビモスがいるというエリア7へと向かう。 -
459
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-16 13:37
ID:gX20EMvk
[編集]
エリア3を抜け辿り着いたエリア7は流れ出した溶岩が大地の至る所に溜まった溶岩の湖のような地形のエリアだ。周りを岩壁や溶岩池に覆われているので空を飛んだり、溶岩の中を行き来したり、地面を潜れる者以外にとっては脱出口を制限される。その姿はまるで危険な闘技場のようだ。
そんな場所に奴はいた。
低い唸り声を上げなら、ズシンズシンと重々しい地響きと共に歩く火山の重鎮グラビモス。その身体は砕竜との縄張り争いの影響か、全身にヒビが入っており胸部の甲殻も半分ほど砕け散っている。
長い首をもたげてキョロキョロと自らの縄張りを侵す者はいないか探す。と、その体色とはまるで違う黄色い瞳が俺達二人を捉えた。
自らの縄張りに入ってきた敵に向かって一度大きく体勢を低くすると、猛烈な勢いで突進して来た。まるで岩そのものが突進して来るようなその突進をそれぞれ左右に避けて回避。
彼等なら大丈夫。そう信じて、今の自分で相手あるグラビモスを何とかしてみせる。そう心に誓った。
ラティオ火山を舞台にした戦いは、新たな局面を迎えようとしていた。~行動を選択してください~
1 乗りを狙いながら攻撃
2 攻撃を受けぬよう堅実に慎重に攻撃
3 アイテム使用(アイテム明記)
4 その他 -
460
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-17 17:25
ID:nKRbMDjw
[編集]
うーん
-
461
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-17 17:31
ID:nKRbMDjw
[編集]
早めに背中破壊しないとガス攻撃でジリ貧になるのは間違いないので
3(強走)→1でお願いします -
462
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-18 20:48
ID:gX20EMvk
[編集]
鎧竜で気を付けなければいけないことは熱線発射後の火炎ガスだろう。苦労して露出させた弱点を思うように攻撃できないという何とも歯がゆい思いをすることになったというハンターは多いらしい。
だが背中を破壊してしまえば話は別。背中を破壊すると熱線発射後のガス噴射が全て背中から出てしまう様になり、腹下が完全に安全地帯になるようだ。
幸いにも砕竜との縄張り争いのお陰か、背中の甲殻にもヒビが生じている。一回乗ってしまえば直ぐにでも破壊出来るであろう。
ならばとポーチから強走薬グレートを取り出し一飲みし突撃。グラビモスはエリアルスタイルだと非常に相性が良いと聞く。だったら速攻で乗りを狙いにいった方が良いだろう。
エリザベートに狙いを定めたグラビモスは突進。彼女は盾で防ぐが、それでも重量級のその身体に押されズリズリッと後退する。勢いを殺さずそのままグラビモスの脚元に辿り着き、その脚を踏みつけ跳び上がり双剣で切りつける。
切りつけた時に来た衝撃。それは正しく本物の岩に斬り掛かったかのような衝撃であった。思わず腕が痺れてしまうがそれでも二つの剣を離すことは無く着地を果たす。
再度斬りかかろうとするが、グラビモスの狙いがこちらに向いた為に一先ず回避に専念する事にした。
グラビモスは熱線を横薙ぎに放つが、砕竜のように跳躍し回避をする。……その際、背中がからチリチリッと焦げたような音がしたのは気のせいと思いたいが。
そして鎧竜の腹下で砲撃を放ち続け、甲殻を破ろうとするエリザベート。順調に見えるがしかしトラブルは尽きぬもの、突如として砲撃の威力が弱まったのだ。ふとガンランスに備わっていたヒートゲージと呼ばれるものを確認した彼女は思わず舌打ちをしていた。「…チッ! オーバーヒートかッ!」
ガンランスは爆熱によって刃が加熱され、それに応じて攻撃力が上昇する武器種。
しかし一定以上の熱量になると強制的に冷やすようになっているリミッター機能があるため、余りに攻撃に夢中になっていると火力がガタ落ち、更にはガンランスの必殺技である竜撃砲すら撃てなくなるというデメリットが存在するのだ。
だが彼女はそれを見越していたようで「念の為この狩技にしておいて良かったねぇ、ホントに!」
そういうとエリザベートはガンランスを構え直す。すると砲身から青白い焔が噴き出し始める。
通称『竜の息吹』と呼ばれるこの狩技はガンランス内部の熱量を高め、ヒートゲージを限界まで上昇させた上でその状態を一定時間持続させるといったもので、言うなれば意図的にオーバーヒートを起こし、しかもそのまま冷却せずに戦い続けるというどう考えても安全基準を無視した運用を強いる技だそうだ。
素人目に見ても流石に無茶が過ぎる運用であるようにやはり本体にも多大な負荷がかかるようで、工房の職人はこの狩技に眉をひそめているらしい。 -
463
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-21 00:07
ID:gX20EMvk
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素早くグラビモスの脚元に潜り込むと勢い良くガンランスを打ち上げる。鋭い先端の刃先がグラビモスの腹に突き刺さり、そのままの状態で連続砲撃。これには鎧竜は堪らず悲鳴を上げて大きく身体を仰け反らせる。
貫くような鋭い一撃に、鎧竜の甲殻に切り傷が生まれ、隙間から血が噴き出す。連続して力強く放たれる突き攻撃に加え、砲撃でその威力を増す。
エリザベートの連続攻撃にグラビモスは煩わしげに体を回転させて蹴散らそうとするが、彼女はそれを盾で防ぎ切る。なかなか離れようとしないエリザベートにグラビモスは体当たりを仕掛けようと身を縮める。
その瞬間を狙い奴の脚を踏み台にして跳び上がり翼を切りつける。予期しない一撃にグラビモスは怯み、エリザベートへの攻撃は不発に終わる。
そしてその隙を狙ってエリーゼは容赦なく引き金を引いた。
再び砲撃加速装置が悲鳴を上げるように加熱し、圧力燃料容器内の圧力が高まる。しばしの時間のあと「───せやぁッ!」
爆発するようにして砲口から大爆発。その爆炎は容赦なくグラビモスの甲殻と隙間から見える腹部の肉を焼く。
立ち込める煙が晴れその腹を見ると、先程まであった白色の甲殻が壊れ、赤い柔らかそうな身が露になっていた───腹部の部位破壊成功だ。
グラビモスは体勢を低くすると、猛烈な勢いでエリザベートに突進して来た。どうやら今の連撃で完全に狙いをエリザベートに移したようである。
だが彼女には絶対に触れさせはしない。
一気にグラビモスとの間合いを詰めると、そのままがら空きの脚を踏みつけ跳び上がり、勢いつけて落下し雄叫びを上げながら無数の斬撃を繰り出す。
そして鎧竜の巨大な岩の如き巨体が地に沈んだのを見て、その背中に跳び乗ってヒビ割れた背中の甲殻に突き刺しまくる。 -
464
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-23 20:04
ID:gX20EMvk
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背中に乗る敵を引き摺り降ろそうと吠えながら身体を揺すった後、全身を激しく上下左右に揺さぶりつつ暴れる鎧竜。
だが離される訳にはいかないと必死にしがみつき、大人しくなったら再びナイフを突き立てていく。 鎧竜の脚元からは援護をしているらしいエリザベートが砲撃をしている音が聞こえている。
そして体重を乗せた一撃が背中の甲殻を貫き破壊。その一撃に堪らず、グラビモスは転倒した。「やるじゃないかッ!」
エリザベートはそう叫ぶと、この絶好の隙を活かそうと反転攻勢に出る。
俺もその後に続き暴れる脚を避けながら、露出された弱点である腹を狙う。それはエリザベートも同じで、結果的に横に並びながら攻撃する事になった。
ギルドナイトセイバーをグラビモスの甲殻のない腹に突き刺す。これまでと違い、その一撃は簡単に刃を通らせる。容赦なく連続して剣を叩き込む。
その隣ではエリザベートも同様にガンランスを振るう。深々と刃を突き刺し、至近距離で砲撃をブチかます。竜撃砲の絶好のチャンスではあったが、まだ冷却が終っていない。仕方なく突きと砲撃の連携攻撃を繰り返すが、そのダメージもまたかなりのものだ。
俺とエリザベートの二人の猛攻撃に晒されて身動きの取れない鎧竜。しばらく蹂躙された後にようやく起き上がるが、反撃の隙を与えないよう後退。
だがグラビモスもこれまでの戦闘でずいぶんと疲弊していたようで、俺達に背を向け突如足を引きずって歩き出した。奴が弱っている証拠だ。
移動した先はエリア6。恐らく彼等が戦闘をしているであろうエリアだ。
何事も無ければ良いが、足止めとはいったがさて…。~グラビモスをどうするか選択してください~
1 討伐する
2 捕獲する
3 このままにする -
465
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-23 20:18
ID:lL5A6WlM
捕獲しちゃいましょ
-
466
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-25 23:53
ID:gX20EMvk
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グラビモスを捕獲する為に再びエリア6に到着した俺とエリザベート。
そこには本来のターゲットであるブラキディオスの姿はなく、あるのは地面に転がる紺碧の尻尾と剥ぎ取り終え休憩をとっていた二人のハンターの姿だけだった。「…ちょ、あれってグラビモスッ!?」
「ブッ!? マジかよッ!?」脚を引き摺りながら向かってくる鎧竜に気づいた二人のハンター、タクミとクリスは急いで体勢を整え、突進してきたグラビモスをそれぞれ左右に飛んで回避する。
「奴を捕獲をするッ! 罠を仕掛けるからこっちに来なッ!」
そう叫びながらシビレ罠を設置するエリザベート。二人は互いに顔を合わせて頷き、一斉に走り出してくる。
その後を追うのはグラビモス。口から単発の火球を連射しながら二人に歩み寄ってくる。「うわわっ…、わぁッ!?」
「ちょ、おい洒落になってないんですけどッ!?」ギャーギャーと叫びながら必死に逃げ惑う二人。どうやら俺を砕竜の囮にしたツケが回ってきたようである。
グラビモスは火球を吐き出しながらゆっくりとこちらに迫り来る。だがその足下にある罠には気付くこと無く、シビレ罠を踏みつける。
瞬間、鎧竜の全身に痺れが駆け抜け、体が一瞬にして動かなくなる。自分の体なのに、自分のものではないかのように動かない。何とか必死になって体に力を込めて動こうとするが、全く歯が立たない。
完全に体の自由を奪われたグラビモスに向かって、俺は麻酔玉を二発投げる。二つの白い煙が上がり、グラビモスは深い眠りについたのであった。* * *
グラビモスの捕獲を終え、一時の休息をとった俺達はタクミとクリスからブラキディオスはどうしたのか報告を受けることにした。
「クリスの援護と君が渡してくれた閃光玉のお陰で何とか前足の破壊と尻尾を切断できたよ。 ブラキディオスに閃光玉がここまで相性がいいなんてね。」
「それとブラキディオスはなんとか瀕死にまでもっていきましたよ。 逃げたのはあっちですね。」クリスの指が指す先のエリアはエリア8、火山の頂上だ。
あそこは他のエリアと比べると比較的小さい場所となっている為、なるべく戦闘は避けたいが…。~ブラキディオスをどうするか選択してください~
1 討伐する
2 捕獲する -
467
名前:レイナ
投稿日:2018-09-26 00:22
ID:ZCQDKK9o
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罠は4人いるから4個はあるでしょうたぶん・・・
睡爆して捕獲しておきましょう -
468
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-26 06:59
ID:mMGon.EM
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いつも思うけどこの討伐か捕獲かって選択なんか意味あるの?
-
469
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-26 09:53
ID:pb1TBHaY
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レウス系なんかは捕獲しないと紅玉出ないからね
それなりにメリットデメリットはありそう -
470
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-27 23:40
ID:gX20EMvk
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そこはまぁ、レアドロップの判定だったり色々ある訳でして…
勿論討伐って言われたらちゃんと書きますよー。* * *
ラティオ火山の頂上であるエリア8。そこに奴は横たわってぐっすりと眠っていた。
自分達に殺気を嵐のように放って殺しに掛かっていたブラキディオスを見て本当に寝ているのか不安になった。だが、奴はのん気に鼻提灯までしてぐっすりだ。自然と安堵してしまう。
こうして見ると、凶悪な砕竜もちょっとだけ怖くない───まぁもちろん、すさまじく怖いのには変わりないが。「アイツが眠っている間に残ってる爆弾で爆破しましょうか。 その方が安全ですし威力もありますしね。」
クリスの発言にうなずき、大タル爆弾を掴んでブラキディオスに駆け寄る。眠っているとはいえその凶悪な顔は何度見ても慣れるものではない。
眠っている砕竜の周りに爆弾を次々に設置し、全員が安全圏にまで撤退した事を確認し、クリスが起爆の為に弓を構え、しっかりと大タル爆弾に狙いを定める。「んじゃ、やりますよっと!」
クリスは引き絞った矢を放った。
放たれた矢は寸分違わず大タル爆弾に吸い込まれ、命中。刹那、着弾の際の火花が火種となり大タル爆弾は起爆、その一撃は他七発にも誘爆し、次々に爆破。ブラキディオスは一瞬にして火炎と黒煙と粉塵の中に消え、強烈な爆風が俺達に襲い掛かる。
爆風が過ぎ、まるでやまびこのように辺りに爆音が反響しながら小さくなっていくのを耳にしながら、状況を確認する。目の前の、先程までブラキディオスがいた場所は今も黒煙と土煙が入り交じった不気味な煙が立ち込めている。「やったの……かい? あれだけの爆発なら…。」
つぶやくようにしてタクミは言う。その意見に少なからず賛成していた。確かにあれだけの爆発を、これまでの戦闘を経たあのボロボロな体で耐え切るなど考えられない。普通に考えれば、奴は倒れた───はずだ。
だが、そうは確信しなかった。無言で、再びギルドナイトセイバーを構える。
───そして、それは現実となって目の前に現れる。
煙の中から、ゆっくりと砕竜が姿を現した。不気味な煙を纏いながら、ゆっくりとこちらに前進して来るブラキディオス。爆発の威力のすさまじさが、彼の見るも無残に砕け、歪み、血に染まった体が物語っている。
血を垂らしながら、ボロボロな体でゆっくりと地面を踏みしめてこちらに迫る。その不気味で、しかしながら気高く、誇り高い竜の姿に思わず言葉を失ってその場に立ち尽くす。
それはタクミとクリスも同じで、彼等もまた砕竜の生命力の強さと圧倒的な気迫に呑まれて硬直してしまっている。
そして、ブラキディオスは最後の力を振り絞って必殺の突進。その動きはそれまでのような速さも威力もない。だが、死を覚悟したからこその気迫はこれまで以上であった。
万事休す───かと思われたその時、ブラキディオスが地面のある一点を踏み抜いた瞬間、そこに仕掛けてあったトラップが作動。強力で即効性の高い麻痺毒を受けて体の自由を奪われる───シビレ罠だ。「アンタは強いねぇ。 敵ながら良く戦ったと誉めてやるよ───けど今回は、アタシ達の勝ちだ。」
聞こえてきた声にハッとなって振り返ると、エリザベートが捕獲玉を持って立っていた。
そして二つ投げ入れて、命中。拘束されていた砕竜は麻酔によって昏倒する。
砕竜は夢さえ見れぬ深い眠りに落ちていくのであった。* * *
エピローグを明日仕上げて投稿致します。 少々お待ちを
-
471
名前:レイナ
投稿日:2018-09-28 08:18
ID:ZCQDKK9o
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大樽8個でも死なないってかなり体力回復してましたね(^_^);
爆破しといて良かった♪
報酬が今回多そうで楽しみです! -
472
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-28 15:16
ID:ytsvzLl.
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痺れ罠って麻痺じゃなくて電流だと思う…
ゲネポッポの牙も要求されなくなったし効かない連中のラインナップ的に見ても次はレイナ氏が進行するんですかな?
>>427でTRPGみたいなシナリオが書きたいとのことですがそれなら暇氏のシナリオ(特に初期)がシナリオ構成、選択肢の出し方共に一番それっぽいと思います
今更だが… -
473
名前:レイナ
投稿日:2018-09-28 16:52
ID:ZCQDKK9o
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>>472
はい♪書き手さんが他にいらっしゃらなければ私が進行させて頂きます
(といっても今まで書いてらした方々をみてると
私のが悲惨なストーリーと文法になる気しかしないです(;_;))進行法のアンケートと設定に関しての質問
・(あなた)の設定は全員共通ですか?
・時雨さんタクミさん借りても良いですか?
・アンケート(各マルチエンドに影響はありません)
1.下の二つを適応しない
2.ステータス(PSの振り方ですね)の設定を行う
3.銃弾や攻撃の振り方を一定Rごとに設定する
-
474
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-28 18:18
ID:ytsvzLl.
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主人公は書く人によって若干性格が違うくらいで特別な背景設定を共有してるって事は無かったはず
強いて言うなら設定が無い事自体が共有の設定でしょうかタクミは初出蟹氏だから時雨氏もなんとも言えないと思うけど勝手にキャラ使っちゃいけないルールも無かったと思います。リレー形式だし
余りにも勝手な後付け設定とかは流石にマナー違反だろうけどアンケートは…2か1かな
あんまり細かい数字振りを何度もこなせるほどの勢いは今のこの掲示板にはないと思うので
ただこういうの含めてプレイヤーが知恵を絞る余地のある采配は嬉しい物です -
475
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-28 23:43
ID:gX20EMvk
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やっべぇ、あとで変えとこ
あとキャラは前スレに記載されている設定さえ守ればそれでよいですよー
そしてエピローグ終わらんかった…。明日頑張って終わらせるから…!* * *
拠点に戻った俺達はそこでこの狩場を管轄するアイルーに狩猟の達成を報告し、事後処理を頼んだ。
日は既に傾き始めており、アイルーによれば迎えが来るのは明日の夜明けになるそうで、本日は火山の麓のこの拠点にて一夜を明かすこととなった。
夕食にする為に近くにいたアプトノスやケルビを狩り、剥ぎ取った生肉をクリスに引き渡した。驚いた事に彼の料理の腕はかなりのものだった。本人曰く「一人身の悲しい才能っすよ」と皮肉ったが、料理のできる男というのはポイントは高い。
夕食を食べ終え、俺達はそれぞれの時間を過ごす事にした。
クリスは食器の後片付けをしている。彼曰く、「こういう雑用は俺みたいな三流ハンターに任せなさい」だそうだが、彼のサポート力をみる限り三流とは思えないのだが。
タクミは火山に戻り鉱石を掘りにいった。彼がネコタクに降ろされた場所がよりにもよってブラキディオスが居た場所らしく、ろくに採掘も出来なかったという。
エリザベートも同じく火山に戻り、火山内の探索に出掛けていった。何を探索するのか聞いてみたが、「アタシの勝手さ、別にいいだろう?」
そうぶっきらぼうに返され、彼女は火山の中へと消えていった。
俺はというと特に何をするでもなくベッドに寝転がっていた。そのまま時間を潰していると、帰還の準備をしているクリスに声を掛けられた。「なぁ、する事がないんだったら温泉にでも入ってきたらいいんじゃないんですかい?」
「温泉があるのか?」
「ネコタクに揺られてる時に通りすがりましてね。 エリア1のすぐ近くですよ。」温泉か、久しく入っていないな。
しかしなるほど、ユクモ村の名物温泉も良いが火山で湧き上がった天然温泉も悪くは無い。
そう思い荷物の中からタオルを取り出し、意気揚々とその温泉がある場所へと向かうことにした。エリア1の岩谷、その裏に彼の言っていた温泉はあった。別に彼を疑っていた訳ではないのだが、まさかこんな秘湯があったとは。
防具とインナーを脱ぎ捨てると水面へと脚を伸ばし、ゆっくりと全身を浸かっていく。
心地良い湯に浸かりながら、体の中にあった悪いものを全て吐き出すかのように長いため息をする。全身を包む少し熱めの湯は、まるで体中の疲れを取ってくれているかのような、気持ち良さで包んでくれる。
これも今回の狩り、そのご褒美だと思えば悪くは無いだろう。
足を伸ばし、広いお風呂を独り占めにできる喜びを漫喫していると、来訪者が訪れる。「おっと…、先客がいたか。」
入口からの声に振り向くと、エリザベートの姿があった。
鉢合わせになって一瞬身構えたようだが、中に居るのが自分だと分かるや否や、安堵したように防具を外し始め───って、待て待て!「なんで防具を外すんだッ!? おかしいだろッ!?」
「うるせぇぞスケベハンター。 女の裸ぐらい見た事あんだろ。」そういいながらエリザベートは防具を外すのを止めない。そしてその手がインナーに掛けられたのをみて、俺は彼女に背を向け視線を外す。
背後から「ウブだねぇ」と声がしたが知ったことか。
そして湯に浸かる音がしたのを聴き後ろを向けば、岩に両腕を掛け湯に浸かったエリザベートは先程俺がしていたように足を伸ばし、くつろぎ始めていた。 -
476
名前:レイナ
投稿日:2018-09-29 04:13
ID:ZCQDKK9o
[編集]
>>474
なるほど確かに細かい数字こなすの結構大変ですもんね・・・
ならPSの振りも具体的なデータはこっちで管理して
大ざっぱな振り方を提示して選んで貰うようにしましょう
・・・下手な後付けしそうで怖いですからフラビィオ君でも召還しときましょ
>>475
これは伏線回収ルートですかね?それともラブコメ突入ルートですかね?
何はともあれ面白そうなイベントがありそうでwktkですね♪ -
477
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-29 21:52
ID:gX20EMvk
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今はシニヨンと呼ばれるポニーテールを後ろで丸めた結び方で纏められた長い金髪。
鎧の上からは分からなかったが、雪のように白い肌をもつその身体は無駄無く鍛えあげられている健康美。
そして───右肩に残る彼女の白い肌にはあまりにも不釣合で、禍々しい黒い蛇の様な刺繍。
自然と俺の視線はその刺繍に注がれていた。
その視線に気付いたエリザベートは岩に両腕を掛けるのを止め、左腕で隠そうとしている。「エリザベート。 それって……」
「うるせぇ。 ジロジロ見んな。」一瞬鋭い眼光でこちらを睨むが、そこには今までの無頼漢の女性の姿はなく、どこか物哀しそうな表情を浮かべた月下美人の姿があった。
そんな彼女をみて、どう声をかければいいのかわからず、黙ってしまう。
そこでふと、そういえばまだあれを返してなかったと思い出し、纏めてあった防具と共に置いていたポーチから勲章を取り出す。「おい、これお前のだろ? 狩りの途中で落としてたぞ。」
「あ? ……あッ!? お前が拾ってたのかよ、通りでさっき探索に行っても見つからねぇ訳だわ…。」投げ渡されたそれを受け取り先程の悲しげな顔は何処へやら、安堵した表情へと変わっていた。
そして再び俺の視線に気付くとこちらをジッと見詰めて来る。その彼女に視線を合わせられず、思わず目を伏せる。「……見ただろ、アタシの肩の刺青。」
そんな彼女の問い掛けに対し、こくりとうなずく。それを一瞥し、エリザベートはそっと瞳を陰らせる。普段見せる彼女の姿とは掛け離れた、暗い瞳。
「これは奴隷の印なのさ。」
「え?」
「───アタシは、元奴隷だったんだよ。」エリザベートは静かに自分の過去を語り始めた。
彼女はお世辞にも裕福とは言えない家に生まれた。
当時彼女の生まれた国では働ける男子は重宝され、働けない役立たずの女子は生きる為に人身売買される事が多々あった。
エリザベートもまた、五歳の頃に実の親に売り飛ばされてしまった。場合によっては殺されてしまう事もあるだったのだから、ある意味彼女は不幸中の幸いだったのだろう。
そしてその売られた先が、奴隷商人であった。彼女の肩の刺青は、その際に焼印された奴隷の証。もちろん、麻酔なんてものはなく、地獄の苦痛だった。
奴隷商人は子供を竜車に積み込んで別の地域へと旅をしていた。商隊が火山帯に差し掛かったとき、本当の地獄が始まった。「炎王龍、名前ぐらいは聞いたことあんだろ? そいつに襲われたのさ。」
商隊は炎王龍の襲撃を受けあっという間に壊滅。
竜車を打ち砕き、逃げ回る商人を斬り裂き、同じ竜車に乗せられていた友人達を燃やし尽くした。そんな地獄を、彼女は壊れた竜車の陰に隠れ生き延びたという。
結局、三日ほど火山の暑さに耐え忍び、その近くの国───火の国のハンター達に救助されたという。
一度医院に入れられて何とか生き長らえる事ができた。その後は施設に預けられ、平穏な日々を送る事ができるようになったが、すでに奴隷になってから三年の月日が流れており、彼女の心はすっかり壊れてしまっていた。
毎日、他の子供達と遊ぶ事もなく、孤独だった。そんな彼女の転機が訪れた。 -
478
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-29 22:39
ID:gX20EMvk
[編集]
(あっ、これエピローグ長くなるわ。 せや、なんか挟んだろ)
* * *
ある日、火の国の長とそのご令嬢が施設に訪れた。長は子供達にとっては命の恩人であり、共通の『父親』のような存在だった為、多くの子供達が歓迎する中、いつものようにエリザベートは一人部屋の片隅で小さくなって座っていた。
何もかもどうでもいい。そんな風に考えていた時、そっと目の前に手が差し伸べられた。
顔を上げると、そこにはまるで天使のような微笑みを浮かべた少女が立っていた。
元奴隷である汚らわしい自分とは違う、比喩ではなく本当に世界の汚い部分に触れずに育ったのではないかというくらいに真っ直ぐで、きれいで、澄んだ瞳をした女の子。
少女は微笑みながら、絶望の淵にいたエリザベートを救う、たった一言だけど、心から嬉しかった言葉を放つ。「───貴女、一人なの? だったら私と、友達になりましょう?」
「それから、アタシは姫様専用の使用人、そして騎士として引き取られた。 使用人と言っても、正確にはの遊び相手って事な。 アタシの生活は、本当に一変した。 毎日が幸せ過ぎて、涙が出た。 こんな、汚らしい元奴隷という身分のアタシがこんな幸せを手に入れる事ができたなんて、今でも信じられない。それでも、私はあの姫様に助けられた。」
自分の肩に刻まれた悲しい傷跡、奴隷の証をギュッと握り締めながら語るエリザベートの瞳には、薄らと涙が浮かんでいた。
「姫様は、あの人は、アタシが元奴隷だという身分にもかかわらず、対等に扱ってくれた。 学校にも行けず、学のないアタシに一から勉強を教えてくれた。 長い月日を経て、アタシ達はお互いを親友と思える存在になった。 今じゃ、この刺青なんてあの人やあの国の人達はは気にしない───だがな、この刺青と同じように、アタシが元奴隷だったって事実は変わらないんだよ。」
表情を暗くし、エリザベートは吐き捨てるように言う。悔しさと苦痛に耐えるように唇を噛み締め、握り締めた拳は白く染まる。
「普通の人間として生きていくには、普通の生き方じゃダメだ。 元奴隷でも、対等に生きていける環境が必要だった。」
「…だから、ハンターを目指した?」力こそが正義とされる実力主義のハンターの世界に希望を抱いて、ハンターを志した。
結局、ハンターの世界でも彼女の異質さは完全な平等にはできなかったが、それでも彼女はその世界で自分の居場所を求めて戦った。「……そうさ。 ハンターの世界は傭兵あがりや祖国から亡命した人、アタシのような奴隷出身や、前科持ちでも力さえあれば自分の居場所を得られる。 だから、アタシはハンターを目指した」
やっぱりか……
言葉には出さなかったが、心の中でそうつぶやいていた。
ハンターの世界で生きる者の中には彼女のように人とは違う異質さから逃れるためにハンターになったという人間は珍しくはない。この世界自体が異質だからだ。「ハンターの世界は天国みたいな所だった。 この刺青だって、アタシだけじゃなかった。 ……私はこの世界では普通でいられる。 だから、私はこの世界が好き。 ここは、アタシにとっては目に見えない故郷みたいなものだからな。 アタシを、優しく受け入れてくれる───でもな、時々思うだよ。 この刺青は人とは違う自分の証、やっぱり自分は周りとは違って、普通じゃない。 実際、これを見て私を汚らしい物を見る目で見る連中だって少なからずいる。」
ハンターの世界は本当に多種多様だ。彼女のような訳ありな者もいれば自分のように比較的普通の家に生まれる者もいるし、貴族出身の者もいる。だから、誰もが皆同じではない。
彼女の身の上を知った上で対等に接する者もいれば、蔑む相手もいる。
エリザベートは俺の手を取った。急なことに驚いている俺を、真剣な、だけど縋るような目で見詰める。「───あんたは、どっち側の人間な訳?」
「どっち側って……」
「アタシの醜い過去の印を見て、過去を知って、あんたはどう思った訳?」彼女は真剣に訊いている。自分の過去を知って、自分をどう思うのか。俺がどういう人間なのか、彼女は知りたがっている。そして同時に、答えを待っている。
だから、答えなければならない。 難しい事じゃない筈だ。~彼女にどう答える?~
1. 肯定する
2. 否定する
3. 皮肉を言う
4. 黙り込む -
479
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-29 22:42
ID:lL5A6WlM
…エリザさんの過去、重いなぁ
この流れで1はおかしいでしょう2でお願いします -
480
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-30 10:27
ID:gf683C0.
[編集]
土壇場でドSに開眼してて草
どうなっても知らんぞ… -
481
名前:名無しさん
投稿日:2018-09-30 14:34
ID:CWX9HbUg
[編集]
普通に押し間違えてたァ!
時雨さん選択1です!すみません! -
482
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-30 15:59
ID:gX20EMvk
[編集]
あっぶね、見てなかったら危なかったぞ…。
* * *
「出身が他と違うからって、その人をそんなくだらない理由で差別なんかしないさ。」
「くだ、らないってあんた……。」
「くだらない事だろ? 元奴隷が何だって言う話だ。 そんなのを気にする連中は連中の戯れ言をいちいち聞いててもキリがないだけさ。」そう断言すると、エリザベートは驚きのあまりしばし呆然とし──そして、彼女はフッと笑った。
「ふぅん……あんた、変わってんな。」
「よく言われるよ。」
「ほんと、バカがつくくらいにお人好しなんだな。」
「それもよく言われる。」
「でもまぁ、アタシはそういうの嫌いじゃねぇさ。」小さく笑うエリザベート。心なしか、その表情が明るくなったように見えホッと一安心する。
「それじゃあエリザベート。 先に上がるぞ。」
「───エリザでいい。」
「えっ?」
「だから、エリザでいいって言ってるんだよ。」
「いや、どうして…。」
「別に深い意味はないさ。 アタシの名前って呼びづらいって定評もあるし。 その方がアタシも気楽だからよ。 あの人もそう呼んでたしな、いいな?」
「そりゃ構わないが…。」
「あとアイツらにもそう呼ぶように言ってくれよ、いいな?」
「わ、分かった…。」エリザベート、いやエリザの有無を言わせぬ迫力に声を搾り出し、温泉を後にする。
「……全く、エリクシルの嬢ちゃんが惚れるのも、わかる気がするなぁ。」
肩まで湯に浸かり月を見上げながら、彼女がそう呟いていたことを俺は知らない。
~~~
数日後、俺達は日が落ちてから龍歴院へと帰還した。事後報告を済ませ、夕食を終えて一息入れたあと、取り分けていた売却用の鉱石を売り払った。
中々に質が良いものが多かったのかそれなりの金になり、今回のターゲットであるブラキディオスの素材に加えグラビモスの素材も手に入ったため、非常に大変な狩猟であったが満足のいった結果になったとも言える。
そして気になっていたこの正体不明の錆の塊であるが、加工屋の親父殿に錆を落としてもらったところ…「珍しいモンを引き当てたなぁあんちゃん! こりゃあ、『神ヶ島』だぞ!!」
聞けば構造からして銃器、特にライトボウガンに近いらしいが、各地のギルドの工房が作り出したボウガンとは設計思想が大きく異なるものだそうで、しかしその射撃性能はギルド製のボウガンに引けを取らないようだ。
神ヶ島を受け取り、その感触を確かめながら部屋に戻る。
そしてベッドに寝転がり、自分の居場所を得るためにハンターになった彼女を思い浮かべながら呟いた。───もっと強くならなければな、と。
* * *
シナリオ47 マイナー・ソルジャー・アーチャー・ナイト クリア!
・砕竜のG級素材を入手しました
・鎧竜のG級素材を入手しました
・称号 『黒曜石』を入手しました(ブラキディオスを狩猟した)
・称号『フレイム』を入手しました(グラビモスを狩猟した) -
483
名前:マイナー(ry@時雨
投稿日:2018-09-30 16:26
ID:gX20EMvk
[編集]
あとがきざっと書いていきますねー
・隠しタイトル
『岩如き硬い鎧』(MHXXイベクエ)です
乱入ロールでグラビモスだったため採用致しました
候補欄には『ボルケーノブロー』がありましたが、使い所に困っていたから助かった…。・シナリオタイトル
映画『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』が元ネタ
マイナー→採掘者(金集めの鉱石を掘った辺り)
ソルジャー→剣士(タクミ、エリザベート、あなた)
アーチャー→弓兵(クリス)
ナイト→騎士(エリザベート)
という感じですね・ブラキと乱入モンス
乱入モンスターロールは以下の通り
1 ドスイーオス
2 バサルモス
3 リオレウス
4ウラガンキン
5 グラビモス
6 燼滅刃ディノバルド
で、エリアが別れたあとの二頭の体力の減り具合なんでございますが2dで判定(100に近いほど体力が減っている)
ブラキ→86
グラビモス→91体力減りすぎだろ、どんだけ喧嘩してんだコイツらと言いたくなりました
という訳でざっくりとしたあとがきを書いてレイナ氏にバトンをお渡しします。
お疲れ様でしたー! -
484
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-01 04:26
ID:BzkkmTWE
[編集]
おつかれさまでした
そう言えばエリクシルの嬢ちゃんずっと下位ミツネ装備のままだったような
戦闘嫌いだし油断してるとまたチェーン装備に戻ってそう
いやいっそ本当に野暮ったいチェーン装備に戻ってるのを見てブチギレたミーシャに無理矢理おしゃれ装備を作らせられるシナリオを兎氏に(鈍器殴打次はいよいよレイナ氏ですな
-
485
名前:レイナ
投稿日:2018-10-01 08:23
ID:h2aFVVc2
[編集]
危なかった!!wifi落ちて日曜に買いにいったのに
設定出来なくてやっと終わったわ! -
486
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-01 11:28
ID:h2aFVVc2
[編集]
・・・隠しクエストなんて考えてなかったわ・・・
たぶん圧倒的に見劣りすると思いますが
ゆっくりしていってね!♪*今回予告*
~ユクモ受付嬢の救援要請!!~綺麗な星空の見える渓流に降り立ったあなた達
彼らの今回の依頼は二つ名として扱われる異常個体を討伐し、
渓流にとらわれてしまったハンター達を解放すること「待っててね・・・お姉様」
少女がつぶやく月下で紅い悪魔は笑い
薄暗い木陰からは白き影が飛び跳ね回るモンスターハンターテキストクエストリレー 48話
~ユクモ受付嬢の救援要請!!~
確か48話だったはず合ってるといいな・・・
色々至らないところが多いと思いますが宜しくお願い致します!以下今回の進行方針となります。
(私が覚えとく用の側面が多いですからスキップ可です!)
・あなた>半オートステ振り
・同行者>たぶん全員新キャラ
・分岐表示>簡略&怯み、一定Rでの分岐無し -
487
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-01 12:20
ID:h2aFVVc2
[編集]
*オープニングフェイズ*
エリザベート(・・・エリザと呼ぶべきか)の過去を
知ったあのクエストから3日程たった朝。
また俺はクエストを受けに龍議院に来ていた。
「今日はタクミ達もいないし、簡単なものでもやるか・・・」
クエストを受ける為入ってみるとどこかおかしい。
騒がしいのはいつもの事だが今日は同じ騒がしさでも
どこか竦然とした空気が漂っている。
疑問に思った俺はギルドマネージャーに訊いてみることにした。「何かあったのか?」
「おや、スケベハンターかい。丁度良いところに来たね。
あんた宛にギルドから指名依頼が届いてるよ。」そういって差し出された依頼書をみてみると
どうやらアオラシアとナルガクルガが渓流に現れて
ハンターが帰還出来なくなっているらしい・・・
?これくらいのモンスターと言ってしまったら失礼かも知れないが、
わざわざ俺に指定依頼を出すほどのものとは思えない。
そのことを伝えてみると納得出来る理由があった。「・・・初めはユクモの受付嬢が出した
依頼だったらしいんだけどね。
何をドジったんだか知らないけど二つ名のモンスターが
出てきたみたいでね。
狩猟に行ったグループは半壊 -
488
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-01 12:39
ID:h2aFVVc2
[編集]
うに変な所で区切れました;;
*オープニングフェイズ*
「 なんとか逃げ帰った二人が知らせてくれたって訳さ」
・・・納得は出来たが・・・
「そんなん俺でも厳しいぞ?
せめてタクミとかも連れていける明日とかがいいんだが。」そう今タクミ達というか今まで一緒に戦ったことのあるハンターは
全員なにかしらの予定で出払っている
(もし居たとしてもこんなクエスト誰も
積極的には来たいと思わないだろう)「安心おし、あんたに仲間もいない状況で
ギルドが何も考えずに一人で行ってこい
なんて言うわけないに決まってるだろう?
まあ初めて連携するだろうから安全とも言い難いけどね。
なにはともあれまずは装備を整えておいで
話はそれからだしあんたも採取がしやすい装備で
挑みたい相手でもないだろう?」 -
489
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-01 12:58
ID:h2aFVVc2
[編集]
いつの間にか3つ目です>_<
*オープニングフェイズ*
「分かった先に装備を変えてくる。
いつ頃までに何処にいればいい?」
「そうだね・・・大体半刻後くらいに
龍議船乗り場にいると助かるね。」
「・・・っ!?」あまりの時間の短さに驚いていると
見かねたのか分かりやすく説明し始めた。「それだけ今回の依頼は緊急性が高いってことだよ。
もちろん危険性もね・・・
分かったならはやくお行きあまり猶予はないからね。
ほらあんた達も動き始めな」ギルドマネージャーが大きく手を叩いたのを契機に
慌ただしく周囲のスタッフが動き始めたのを確認した俺は
急ぎ足で準備をしにいくことにした。「・・・今回は今までよりも気を引き締めて行かないとな。」
*オープニングフェイズ終了* -
490
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-01 13:20
ID:h2aFVVc2
[編集]
依頼名:ユクモ受付嬢の救援要請!!
メインターゲット:紅兜アオラシア1頭と
白疾風ナルガクルガ1頭の狩猟
サブターゲット:ハンターの身体の輸送
目的地:渓流<夜>
依頼主:ユクモの受付嬢
依頼内容:またやってしまいました>_<
かなり久々にクエストを聞きに来たので
張り切ってクエストをだしたのに!
なぜこんなことになってしまったんでしょう?
早くあの人達の助けに行ってあげてください!!
私はまたおやつ抜きです・・・*キャラクターメイキング*
!no.1攻撃と回避の比率を決定してください
!no.2使用武器や防具スキルを決定してください
!no.3スタイルと狩り技を設定してください
(*ブレイブと錬金は無理です
(動きのカウントの仕方が大変過ぎて入れられませんでした)) -
491
名前:暇
投稿日:2018-10-01 16:28
ID:11MAvlmw
[編集]
1、攻撃100:回避0
2、武器は盾付けた破岩大砲シュライアー4(貫通23装填5、散弾23装填4、徹甲榴弾、火炎弾、拡散弾2、爆破弾(内蔵)竜撃弾(内蔵)、デフォ反動やや小)
防具は頭だけ剣士用にしたガンナー用グラビX一式を腰だけブラキXに変えて攻撃1、ガ性1、盾持ち(ガ強、スタ急)、反動1にお守りと装飾品で変射、細菌学辺り
3、ストヘビィ狩りワッザ火薬、ノヴァ、杭
ライフで受けてデカい花火に掛ける漢スタイル
あれ?意外とコレ行けんじゃね(錯乱)
あと身体じゃなくて身柄って言った方が良いと思います(正気) -
492
名前:レイナ
投稿日:2018-10-01 17:05
ID:h2aFVVc2
[編集]
まさかのロマン砲が出てきたわ!?
回避多少は武器技能点で振るから平気なのかしら?
そして身柄は生きてる人にしか適用出来なさそうだったから
身体にしたのだけどやっぱり身柄の方が良かったりしますか? -
493
名前:暇
投稿日:2018-10-01 17:16
ID:11MAvlmw
[編集]
えぇ…死どるかもしれんのか
それならいっか♪(再錯乱) -
494
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-01 18:47
ID:r9G/sj0k
[編集]
こ、攻撃は最大の防御だから…(震え声
-
495
名前:時雨
投稿日:2018-10-01 19:16
ID:gX20EMvk
[編集]
お、始まってる始まってる
紅兜は二回目、そして白疾風は初登場ですな
武器はまさかのシュライアーさんか、おもしろくなりそうやね -
496
名前:兎
投稿日:2018-10-01 19:17
ID:h3fvt/Eg
[編集]
時雨氏シナリオお疲れ様でした、主人公め、またフラグを立ておって……
そしてレイナ氏、デビュー作期待していますねー。
基本的な情報として2点お伝えしておきますと、ID横の [編集] ボタンで自身の投稿を後から編集できます、>>487のように途中投稿してしまった場合等にお使い下さい。
もう1点、1レス中の書き込み制限は『2000文字以内、60行以内』です、内容はもうちょっと多くても大丈夫ということですねー。
何かあれば自分たちもフォローしますので頑張って下さいねー。 -
497
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-02 01:15
ID:h2aFVVc2
[編集]
>>496
兎さん情報提供ありがとうございます!♪武器と基本ステ、スキル構成が決定したので簡単においておきますね
破砦大砲シュライアー4
AT:300+@
DF:545+@(=15.5%)
SKILL
攻撃小、反動1、盾持、特射、回避距離命中関連(基本的中30+3D特定部位命中+-2の操作まで可)
回避関連(基本回避0+4Dガード能力50%で発動) -
498
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-02 01:38
ID:h2aFVVc2
[編集]
*ミドルフェイズ01*
「武器は・・・これにするか。」
俺が手に取ったのは破砦大砲の名で知られるシュライアー。
先日闘ったプラキディオスから作成したものだ。
といっても加工屋に言わせるとまだまだ強化できるらしいが
素材も金も不足していたから加工強度は4になっている。
それでも砦を破壊するという異名の通り圧倒的な破壊能力、
さらには紅兜と白疾風に有効な火炎弾を撃てることから持っていくことにした。「っ!?もうこんな時間か急がないとな。」
慌てて龍議船乗り場に向かう俺だったが・・・
猫飯の名で通っているニャンコックの屋台の
匂いに釣られて俺の腹がなった。
・・・腹が減っては戦は出来ぬと聞くし何か食べていくべきだろうか?
!no.1以下の中から行動を指定してください
a攻撃ご飯を食べる
b防御ご飯を食べる
c属性ご飯を食べる
d食べずに急行する -
499
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-02 07:31
ID:HZkiwmTM
[編集]
せめてネコ飯は防御よりで行こう、bで
出来ればド根性保険金なんて神飯来てもええんやで? -
500
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-02 18:34
ID:h2aFVVc2
[編集]
*ミドルフェイズ01*
幸いここの屋台は龍議船乗り場に近く、安い早い旨いを掲げている店だ。
一皿を食べていく時間くらいはあるだろう・・・
そう自分に言い聞かせながら席に座りメニューを取る。
・・・今回のターゲットは二つ名達だ・・・なるべく腹持ちのいい料理を頼むべきだ。「五穀豊穣ロックライス。主菜は4番目にあるスパイシーチキンを頼む。」
「了解しましたにゃ!!注文入りましたにゃ!!」僅か3分後俺の注文通りチャーハンのような炒飯と
バジルと唐辛子等で辛目に味付けされた鳥の肉料理が並べられた。
もちろん味の変化を楽しみたい時や辛すぎて食べにくい時にあると嬉しいチーズ付きだ。
とても食欲のそそられる香辛料のおかげか数分後にはもう俺の皿は空になっていた。「さてと行くか!お代はここに置いとくぞ。」
「毎度ありにゃ!!また来るのを待ってるにゃ!!」食事を終え満足した俺は今度こそ龍議船乗り場に走り出した。
*ミドルフェイズ01終了*
猫スキル・根性・保証金発動 -
501
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-03 06:39
ID:h2aFVVc2
[編集]
*ミドルフェイズ02*
龍議船乗り場につくとそこには既にギルドマネージャーがいた。「おや?ようやく来たのかい?
細かい説明やらは中でやるから早くお入り。」
「他のハンターが見えないんだが何処にいるんだ?」
「もう全員中に入ってるよ。つまりお前さん待ちということさ」そういわれて少しばかり慌てて中に入る。
中はいつものように数多くの船室から人が出てきたり入っていったりしている。
その中のひとつであるハンター達用の会議室に向かう。
ノックしてから扉を開けると中にいた三人のハンターと目があった。
おそらく彼らが今回依頼を共にこなすメンバーだろう。
「さてと全員揃ったわけだし説明を始めるかね。」
そういってギルドマネージャーは視線を集める。
・・・どうでもいいがいつの間に俺は抜かされたのだろうか?
そんなことを思っている間にも説明は続いている。「・・・という訳で今は一刻を争う。
なるべく早く狩猟とハンター二人の救出を行っておくれ。」
「各自の交流のためにこの部屋はしばらく貸し出しておくよ。」その台詞を最後にギルドマネージャーは退室していった。
-
502
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-03 07:15
ID:h2aFVVc2
[編集]
*ミドルフェイズ02*
さて、交流といってもまずは自己紹介からだろう。
そう思った俺は今回使う武器を見せながら名前を言うことにした。「俺の名前はあなただ。今回はヘビィボウガンのシュライアーを使う。これからよろしく頼む。」
「なるほどね。あの噂で有名なあなたなんだな。
っと俺も名前くらい言わないとな。
俺の名前はフラビィオ。南の方から来た冒険者で最近やっと認められてこの依頼に来たって訳だ。
この依頼では双剣のフルスカードを使う予定。よろしくな!
じゃあ次青目の子どうぞ!!」
「ふえ!?えっとわちきの名前は小傘っていいます!
東洋から来ました!そこのフランちゃん達と普段一緒に狩りに行っています。
わちきは今回ランスのセルケトヘティトを持ってきました!よろしくお願いします!!」
「次はフランの番かな?
私の名前はフランドール。お姉様と一緒に西の方から来たの。
この前お姉様に逃がされちゃったから今度はフランが助けてあげるの!
武器は輝皇剣リオレウスを使うよ。よろしくね!♪」 -
503
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-03 07:34
ID:/QPvhQPM
[編集]
いやいやいや、まてまてまて
まだカマキリの存在すら出てきてないのにカマキリランス出したらあかんやろ
それに思いっきり別ゲーのキャラ出すって……なんでそれやっていいって思ったの?
何かしら元にしたキャラは居るだろうけどここの人たちは全部オリジナルでやってんのよ?
そんな場でこんなことしたら作者陣にも読者にも元のゲームのファンにも失礼なのが分からないの? -
504
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-03 07:58
ID:pu3NmDvw
[編集]
小傘なら番傘の方が似合うような…
というのはさておき、まぁアウトじゃないかな?
これは作者陣の意見を聞きたいところ… -
505
名前:レイナ
投稿日:2018-10-03 08:08
ID:h2aFVVc2
[編集]
早めの忠告ありがとうございます。
各武器と名称を変更するのでしばらくお待ちください。 -
506
名前:暇
投稿日:2018-10-03 13:49
ID:11MAvlmw
[編集]
>>1のルールの原型作った者としてジャッジするならまぁまぁアウツ
以下>>1「作中の設定について]より抜粋
・登場させるキャラクターについては原作ゲーム内のキャラクターの他、オリジナルのキャラクターも可とします。
↑
キャラクターの件はこれに日大タックルかます勢いで抵触してますね
他のゲームから引っ張って来るならせめてコラボクエスト有る物か、そうでないならモンスターハンターに合わせて改変した元ネタくらいに止めてもらわないと収集付かなくなるのが容易に想像できたので敷いたルールなので、悪いけど我慢してね・登場させる装備については原作ゲーム以外のオリジナルの物はご遠慮ください。
↑
ネセトランスについて…うーんこれはセウト(曖昧)
確かにこのルール自体には触れてないけど、ラスボス素材のネタバレ装備を常識みたいにサラッと済ませてるのは「世界観の維持、共有」というルール敷いた目的自体に触れとると言う判断
ただ、「シナリオ上どうしてもネタバレ装備でなきゃいけない!」っていう作者さんなりの考えがあるなら描写次第で許容できる項目でもあると思う
(今回のケースはそういうのではなさそうだけど…)
まあ「モンスターハンターの世界観を維持、共有する事を目的に以上のルールを施行します」と明文化した事は無かったし暗黙の了解で済ませていた俺が悪い追記
良く見たら>>1に思っくそ「原作ゲームのモンスターハンターシリーズ及びハンター大全シリーズの情報を、当スレッドで共有する基本的な世界観として扱います」って書いてあるやん!(自分で書いた規則を忘れる人間の屑)
ゲーム内ストーリーではカマキリは全く未知の新モンスターかつラスボス…ここでサラッと装備だけが登場してるのはやはり共有する世界観に反する…!
ここから出される結論はつまり…
ルール記載に落ち度は無い、と言う事…!
やはり…俺は悪くねぇ…っ!俺は悪くねぇ…っ!(人間の屑) -
507
名前:レイナ
投稿日:2018-10-03 18:49
ID:h2aFVVc2
[編集]
確かに配慮に欠けていました。ごめんなさい。
とりあえずグーグルさんでトップにアニメやゲームの
キャラ名として出ていないことを確認した名前と彼らの装備品類を書いてみます。
この装備品は使えない等があったらまた教えてください。 -
508
名前:兎
投稿日:2018-10-03 20:08
ID:h3fvt/Eg
[編集]
カレーうどんって美味いよね、でもそれはカレーもうどんも好きだから美味いんだよ、カレーが好きでうどんが嫌いって人にカレーうどん出そうものなら怒られるんだよ、何てことしてくれてんだテメェって。
……失礼、これが何かというと自分自身が教訓にしているとある人の言葉です。
展開の可否については>>506で暇氏がしてくれているので自分からとやかく言うことはないのですが、1つのアドバイスとして気に留めていただければ幸いです。
それはともかくとして、キャラ名と武器の変更だけで対応可能でしょうか? プロットに大きな変更が出るのであれば、それまでの繋ぎとして何か書くことも可能ですが、レイナ氏どうですかね? -
509
名前:レイナ
投稿日:2018-10-03 23:26
ID:h2aFVVc2
[編集]
>>508
カレーもうどんも好きですが分かりやすい例えをありがとうございます!
キャラ名と武器種に関しては名前さえ考えつけば
どうにか出きるくらいには武器系統は考える時間があったのでたぶん平気なはず・・・
プロットに関しては性格の候補をいくつか作って
台詞を編んでいるのとある程度TRPGのGMをやらせてもらっていたことがあるので
(本当に経験者か!?って言いたくなるレベルですが)
たぶんこれ以上私が過ちを起こさなければ平気だと思います。
兎さんお気遣いありがとうございました!! -
510
名前:レイナ
投稿日:2018-10-03 23:32
ID:h2aFVVc2
[編集]
キャラクターシートが出来たので確認お願いします。
・ユーフォリア
ヘルフレイムダンサー
ギザミX一式・ルトリエ
雷迅剣ミカツチ
パピメルX一式・サント
レッドロードランス
プラキX一式 -
511
名前:暇
投稿日:2018-10-04 17:52
ID:11MAvlmw
[編集]
ええんちゃう
柔軟な対応ナイスぅ -
512
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-05 03:02
ID:h2aFVVc2
[編集]
色々ご迷惑をおかけしました。
改めて自己紹介からです。
*ミドルフェイズ2-2*
さて、各自の交流と言っても武器や名前から始めた方が無難だろう。
そう思った俺は自身の武器を前に出しながら名乗り始めることにした。「俺の名前はあなただ。今回の依頼ではヘビィボウガンの
シュライアー使う予定だ。これからよろしく頼む。」
「なるほど・・・貴殿が最近噂の種になっているあなたか。
さてと私も名前くらいは名乗っておくべきだな。
私の名はサントという。南に位置する国からやってきた者だ。
武器は普段から使用しているランスのレッドロードランスを使う予定だ。
貴殿ら熟練のハンターには劣るかも知れんがよろしく頼む。」
「私たちの番のようですね。まず私から・・・
私はユーフォリアと申します。東の方から隣にいるルトリエと残り二名でやってきました。
前回見た時に火に弱いモンスターが多かったので太刀のヘルフレイムダンサーを持っていきます。」
「えっと次はルトの番?
名前は・・・ユーが言ってくれたから飛ばして良いかな?」
「ダメですよ!?ちゃんと自分でも名前くらい言いなさい
ってお姉さんからも良く言われているじゃないですか!」 -
513
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-05 03:41
ID:h2aFVVc2
[編集]
*ミドルフェイズ2-2*
「ムー仕方ない・・・ルトの名前はルトリエっていうのよろしくね?
武器は・・・確か片手剣のミカツチを使うよ。」幾つか気になる事(特に噂)はあるが名前と使う武器くらいは分かったし
逃げ遅れた彼女達の仲間(一人は姉妹らしいが)の情報を知るのが先決だろう。「姉と一緒に狩猟に行ってるって言ってたがどんな感じなんだ?」
「お姉様達?・・・お姉様はいつもうるさくて、重い装備なはずなのにルトより機敏に動くの。
でもってアリネアはドジなのに距離感取るのがとても得意。」
「たぶんあなたさんが聞きたいのはそういうのじゃなくて見た目の話だと思いますよ?
ルトリエのお姉さんは水色っぽい目と薄い青色の銀髪なので分かりやすいかと。
でもってアリネアは私と同じ身長で
髪と目はそうですね・・・サントさんの髪の黒に少し茶を加えた感じですね。」
「ユー違う。アリネアの方が最近少し背が大きい。」
「いいんです!!そんなことは!!」 -
514
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-05 03:58
ID:h2aFVVc2
[編集]
*ミドルフェイズ2-2*
何やら喧嘩のようなものが始まったが元々パーティだったようだし気にすることでもないだろう。
とりあえず救助すべきハンターの姿はなんとなく分かった。
後は到着まで時間があるし
体を休めておくべきか、それとも彼らと交流を深めたり、
今までの観察記録等を探してみるべきだろうか?
!no.1下記の中から選択して下さい
aルトリエ達と話す
bサントと話す
cモンスターの情報を調べに行く
d休憩しておく
a,bの場合はその大まかな内容もお願いします。 -
515
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-05 17:49
ID:t5YyRUH.
[編集]
一応見知ったモンスやしdでええやろ(適当
-
516
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-06 01:23
ID:h2aFVVc2
[編集]
*ミドルフェイズ2-2*
簡単な自己紹介も終わりこれ以上話すことは現状ないだろう。
そう思った俺は時間のある今のうちに休息を取るべく小部屋に向かった。しばらくして着陸するという声が聞こえた俺は淡い眠りから目覚めた。
少し睡眠を取ったからか先ほどよりも意識がはっきりとしている気がする。
・・・固目のベットで寝たためか体が少し固いがしばらくすれば治るだろう。
船室から出て甲板に来てみると既に先ほど挨拶を交わした彼らが来ており、
そこには人数分のネコタクが準備されていた。「遅かったね。ボウガンの人。」
「すまなかったな、待たせてしまって。」
「いや、ルトリエも私が呼ばなかったら今いませんよね!?」
「・・・そんなことない。」
「まあまあ、私達も今し方来たのだからそうめくじらことではなかろう。
っとそろそろ着陸するようだ。準備を始めておくべきだと思うが・・・」確かに龍議船の高度は下がってきている。
今のうちにネコタクに乗っておくべきだろう。
最後に周囲を見渡すと黄昏の渓流が遠くに見えてきた・・・
*ミドルフェイズ2-2終了* -
517
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-06 01:47
ID:h2aFVVc2
[編集]
*ミドルフェイズ03*
どうやら今回のネコタクも上手く言語を操れないようで
俺達は途中から違う方向に運ばれていった。
いつものようにコロコロと転がされた俺はすぐに立ち上がって周囲を確認した。
薄暗い洞窟の中独特の音と風景が見える。
どうやらここは渓流の洞窟8番エリア主に飛龍達の休息場所だ。
そのことに気づいた俺は慌てて臨戦体勢を取るも近くには、
大型モンスターの姿はなかった。
・・・そういえば、今の時期は生息時期ではなかった気がする。
そのことに安心した俺は武器をしまって
花香岩を採りつつまず誰と合流するかを考え始めた。「どうやら拠点に着いたのは私だけのようだな。」
「ユーこれ食べられるもの?」
「それはキレアジですよ?焼いて貰わないと食べれません。
それよりも早く探しにいきましょ?」
!no.1下記の中から選んで下さい
aルトリエと合流する
bユーフォリアと合流する
cサントと合流する
d番号を指定してそこに行く -
518
名前:暇
投稿日:2018-10-06 21:02
ID:GoDFsxZ2
[編集]
d、竜の卵を抱えながら何があってもキャンプまでルンルン歩く(決意)
-
519
名前:時雨
投稿日:2018-10-06 21:21
ID:gX20EMvk
[編集]
見てなかった間に進んどる
そして暇氏、新参執筆者に容赦ねぇ選択をするぅ
-
520
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-07 02:06
ID:h2aFVVc2
[編集]
オンラインで居たら絶対撃ち抜きたい人がいる!?
*ミドルフェイズ03*94
考えていたが上手く誰と合流するか考え付かないまま採掘し終えてしまった。
他にも鉱脈が無いか辺りを見渡してみると竜の卵が目にはいった・・・
そう言えばルトリエ達のパーティは渓流に入って既に3日経っているらしい。
彼女達が生きているのであれば栄養状態がかなりの危険水域までいっているに違いない。
ここは栄養価値の高い卵を拠点に運んでおいて食べて貰うのが良いだろう。
・・・このサイズの卵を運ぶのは結構骨が折れそうだが・・・
それを思いついた俺は早速卵を抱え上げ近くの出口である
9番エリアに向かうのであった。「さて、モンスターは先ほど感知したが5,6番エリアにいるようだな。
4番エリアから行くのが一番早かろう。」
「家がいっぱいあるのに食べ物がない・・・」
「全部廃屋ですからね。食べ物は無いと思います。
確かアリネア達と別れたのは5番エリアでしたっけ?」 -
521
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-07 02:29
ID:h2aFVVc2
[編集]
*ミドルフェイズ03*92
自分で考え付いておいてなんだが非常に重い。
何故竜の卵はこんなに重いのだろうか?
卵を運び出して15分程俺はジャギィ達の群を巧くすり抜けて
3番エリアにようやくたどり着いた。
ここであれば攻撃的というか激しく動いて卵を割にくる生物はいない。
そのことに気を緩めのんびりと運んでいた俺は何かが木の影に隠れたのに気づいた。
・・・いや髪が見えてる時点で隠れてるのかというのは別としたとしてだ。
サントのような髪色なので一瞬戸惑ったがよく見ると
若干だが茶色がかっているし、よく見るとサントよりも頭一つ分は小さい。
おそらくあの影に隠れているのがアリネアだろう。
そう考えた俺はなるべく刺激しないよう小さいながらも
はっきりとした声で呼びかけることにした。 -
522
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-07 02:58
ID:h2aFVVc2
[編集]
*ミドルフェイズ04*
「救助隊のあなただ!誰かそこに隠れているなら返事をしてくれ!」
「っ!?何故ばれたんでしょー?いやそこに誰か隠れているなら
返事をうんぬん言ってましたよねー・・・つまりまだばれていない!?」
(いやばれてるし、せめて気付かれてないと思うなら小声にしろよ!?普通にさ)
そんなことを思ったがとりあえずもう一人の方の無事も確認すべきだろう。
「お前はアリネアだよな?話しはルトリエから聞いている。
とりあえずもう一人は何処にいるんだ?」
「!?なんかホントにばれてる感じがします!?
というかあなたって確かスケベハンターって呼ばれてたはずですよねー。
はっ!!まさかのこのこ出ていったらスケベなことをするんじゃ!?」
「・・・聞こえてるからな?」
「い、いつの間にそんな近くに!!私なんも悪いことしてません!!
だからそんなスゴまないで下さいー><!?」
「風評被害も甚だしいからな!?」
「・・・何ようるさいわね。アリネアどうかしたの?」俺達が騒いでいると竹藪からルトリエの人影が出てきた。
-
523
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-07 03:23
ID:h2aFVVc2
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*ミドルフェイズ04*
いや違う俺は即座にルトリエでないと判断した。
背の高さが違うしなによりルトリエは紅い瞳を持っているが、
こちらはぼんやりした感じの水色の瞳だ・・・
おそらく彼女がルトリエの姉だろう。
そんなこと思っている間にルトリエ姉は俺達の近くに来ていた。「えっと貴方はなるほど救助隊の方ね。ここまでありがとう
と言いたいところだけど・・・その卵は一体何かしら?」
「ん?あぁこの卵は食事もままならなかっただろうと思って持ってきたんだ。
今調理するから待っていてくれ。」
近くには筍もあったのでそれも食材として肉と一緒に火の中に刻んで入れる。
生憎緑で歯ごたえのある野菜は持ってきていないが一応それっぽいものは出来た。
10分後程経ち料理が一通り片づき俺は彼女達の顔色が幾分回復したのを確認した。
たぶんこのまま拠点に自力で戻れると思うがどうするべきだろうか?
!no.1下の中から選んで下さい
a自力で戻ってもらう
bちゃんと送り届けて行く
cここで待機するよう指示する -
524
名前:時雨
投稿日:2018-10-07 09:50
ID:gX20EMvk
[編集]
bでお願いしよう
現在の狩場には合計で6人のハンター、件のジンクスが発生してもおかしくない -
525
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-08 02:48
ID:h2aFVVc2
[編集]
件のジンクス・・・イビルジョーさんは出ませんよ?
私にあの高レベルな代物は無理ですからね。
(そういえば環境安定って書かなかった気がする・・・つまり?)
*ミドルフェイズ04*
顔色が良くなったとはいえこのまま送り出した結果、
氏なれてしまっては夢見がかなり悪い・・・ここはやはり最後まで面倒をみるべきだろう。「さてと動けるよな?陽が昇る前に拠点に戻るぞ。」
「ええ分かりました。深夜のうちに動けば見つかりづらいはずですしね。」
「そういうことだ。直線ルートで拠点に向かうぞ!」
「二人とも早くないですか!?少し待って下さいよー!」騒がしいハンターだなと思いつつ俺と彼女達は3番エリアから移動を始めた。
「うー三回もルトのこと狙うとかズルい・・・」
「だからといって全部被弾してどうするんですか!?」
「粉塵ありがと。やっぱり避けるの苦手・・・」
「次は私というわけか・・・その程度の攻撃食らわぬ!」
「あっ6番エリアに移動しようとしてますね。私ペイントしておきます。」 -
526
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-08 03:24
ID:h2aFVVc2
[編集]
*ミドルフェイズ04*
俺達は岩肌に多くの鉱脈が露出している2番エリアにあれから10分程かけて到着した。
やはり体力が無くなっていたのだろう、もう既に彼女達は息切れし始めている。
彼女達のペースに合わせ歩いているとペイントの臭いが微かだが感じ取れる。
おそらく既に戦端が切られて激しい攻防が始まったのだろう。
ここは一旦休憩を取りつつ進んでいくかと思い後ろを向き声を掛ける。「今モンスターは6番エリアにいると思うから辛ければ一旦休んでから進むということが出来るがどうする?」
「やったー!!私もうへとへとになっちゃてるんですよー。
休めるというなら遠慮無く休みたいですよー私は。」
「ルトリエ姉はどうだ?」
トサっ
「私もなるべくなら休みたいわね・・・というか私の名前はルトリエ姉じゃな・・・」不意に言葉を止めたことをきっかけに俺は周囲が静まり返っていることに気づく。
いつもあるモンスターの鳴き声の代わりに存在するのは、
今にも襲いかからんばかりの気配と隠しているつもりでも溢れ出てしまっている強者の威圧感だ。
先ほど聞こえた音源に俺が目を向けるのと俺達のことを敵と認識した白疾風が猛り叫ぶのはほぼ同時だった。 -
527
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-08 03:56
ID:h2aFVVc2
[編集]
!no.1下の中から選択ルートを選んでください。
a上手く隙を突いて全員で拠点に向かう
b囮となって二人を先に逃がす
cルトリエ姉達とともに戦う!no.2a隙の作り方を選択してください
a何かアイテムを使用する
b攻撃して怯んだところで逃げる
c攻撃を仕掛けさせて入れ替わりに逃げるno.2b囮の仕方を選択してください
a正面あるいは側面から攻撃する
b動き回って注意をひく
cその他!no.2c
a指示を出してください
装備品表示
アリネア
雷迅砲サンダークルス/ラギアX
ルトリエ姉
マギア=クレセント/ファルメルX -
528
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-09 05:37
ID:r9G/sj0k
[編集]
ルートはa-aで
全員で手持ちの石ブーメランペイント閃光う○こを一斉投擲でお引き取り願おうただし音爆、てめーはだめだ(フラグ
-
529
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-10 04:45
ID:4Gi8YMow
[編集]
*ミドルフェイズ05*
「まずいな・・・」
思わず口に出てしまったがこれは非常にまずい。
現状は一応ハンター3人で白疾風と相対している格好だが俺は白疾風と戦った経験が無いし、
後ろの二人は体力的に狩猟活動は厳しいものがある。
つまりこの状況としては素人ハンター一人民間人二人対白疾風の方が近い。
ならばやることはただひとつだろう・・・「ペイント玉とかの投擲物は何か持っているか?」
「ペイントが5つ石ころが4つだけね私は。」
「私は閃光玉と石3つずつもってますよー。」
戦う分には十分とはいいがたいがそれでも逃げるための隙くらいは作ることが出来るだろう。「それなら俺はこやし玉と閃光玉を持っているから
アリネアは閃光、ルトリエ姉はペイントを投げてくれ。」
「分かったわ。あと私の名前はルトリエ姉じゃなくて・・・」
「二人とも危ないですよ!?」 -
530
名前:ユクモry@レイナ
投稿日:2018-10-10 05:11
ID:4Gi8YMow
[編集]
*ミドルフェイズ05*
その声に慌てて前に注意を向けると白疾風がその場で回転をしていた。
・・・一体何をしているのだろう?幾ら二つ名個体が
大きいからといってもこの距離ならまず当たらないだろう。
その疑問に対する答えはすぐに明かされた。
尻尾の遠心力が最大になった地点から真空の刃が発生し、
その刃が俺たちのところまで飛んできたからだ。
そのことに気づいて慌てて回避しようとするも既に遅くもともと警戒していたらしいアリネアが
唯一錐もみ回転をしながら真空の刃を回避しただけだった。「ルト乗ったイェイv」
「今のうちに研いでおきましょうか。」
「それが良かろう。せっかくルト殿が時間を作ったのだ活用しない手は無い。」!no.1あなたはDM約30を受けましたこのあとの行動を選んでください
a回復せずにこやし等を投げる
b最速で回復してこやし等を投げる
c追撃が来ないことを確認してから回復する -
531
名前:暇
投稿日:2018-10-10 13:02
ID:GoDFsxZ2
[編集]
ごめんワイが文盲なだけやろけどこれ視点分割して同時進行してる?なら切り取り線なり一方その頃…なり視点切り替えのアナウンス欲しいです。
あと別働PTの動向がセリフ箇条書きだけで状況が分からんので何が起こってるのか詳しく描写が欲しい。
主人公その場に居なくてチャットだけしか流れてこないからセリフしか分からないんだよ!とか、理由があるなら今のままで。状況が分からんなりにダイスツール1d3に任せた結果3が出たので選択はcで
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532
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-10 19:49
ID:DtjphLKA
[編集]
作者陣はオブラートに包んでくれるだろうけど正直これはなぁ・・・
1レスて収まる内容を3つも4つも投稿分けてるから読みにくいし描写もないからちんぷんかんぷんだわ
>>502とか見るにアリアンロッドと東方卓遊戯動画に感化された素人さんが調子乗っちゃった感が否めない -
533
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-12 15:09
ID:ppizYosU
[編集]
誰も選ばないようならcを選択しますよっと。
私が言えたことでもないのですが、色んな作者がいることがリレー小説の醍醐味でしょうし、ちょっとした意見やアドバイス、或いはここ特有の暗黙のルールみたいなものを説明してあげるのは良いことでしょうが、あんまり悪く言わないでやってください。
読者側も参加者なのですから、その自覚を持って、なんなら「新しい作家を育ててやる!」くらいの意気込みでいましょうよ。しかしまあ、最近の流れを見ていると私の時の皆さんの態度は割と柔らかかったんだなぁとここのところよく思いますね。
本当に、私が言えた話ではないんですがねぇ。
-
534
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-12 19:43
ID:DtjphLKA
[編集]
>>533
暗黙の了解どころかちゃんと考えればやったらいかんでしょってことをやってるからこうなってるんじゃない?
一回の投稿量に関してもとっくに兎さんがアドバイスしてるのに直す様子もなかったし
それでいてちょっと批判染みた内容が来て傷付いたのか拗ねたのか知らないけど今絶賛失踪中だし・・・
こんなんじゃ毎回試行錯誤しながらもメインで引っ張って行ってくれてる時雨さんや毎回クオリティ高い作品捻出してくれる兎さんに失礼よ追記
>>536
そこまで書いといて作者の名前間違えんなよ・・・
再追記
これだけの突っ込みでレス消しって・・・えぇ~・・・ -
535
名前:時雨
投稿日:2018-10-12 20:00
ID:gX20EMvk
[編集]
自分からは敢えて何も言わないでおきますよ。反省する点は自分で分かってるでしょうしね。
まぁ、明日まで何も無いようなら何かしら考えておきますかねぇ。てかあらすじとか書いとらんやんけ、隙を見て書くか。
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537
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-12 22:41
ID:ppizYosU
[編集]
>>534すまぬ〜すまぬ〜、つい感情的になって長文書いちゃったけど、やっぱりそういうのってここには似つかわしくないと思ったんですよ。やっぱテキクエは楽しくないとね!
でも、あなたが読んでくれたことは幸いです。ちょっとキツい言い方をしてしまいましたが、でもあなたのおかげでこのテキクエがちゃんと回っているのも確かな事実なんですよ。
だからこそ言葉は選んで欲しいわけで、少なくとも推測で勝手に決めつけたことを責めるのは自分の言葉の価値を貶める行為ですからそれはやめて欲しいなぁと。あとはこれにつきますね。
やっぱテキクエは楽しくないとね!
それについてはあなたも同じであると信じています。お目汚し失礼しました。
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538
名前:レイナ
投稿日:2018-10-12 23:46
ID:4Gi8YMow
[編集]
ええと失踪の話だけは全力で否定させてください。仮にも私がその世界に生み出してしまったのですから、
ちゃんと責任持ってあの世に送るか生き残らせます。
(このシナリオが終わるまで多大な迷惑だとは思いますが宜しくお願いします)
失踪の件以外は概ね書いてある通りですが少しだけ言わせてください。
分かりにくいのかも知れませんけど、貰ったアドバイスとかはちゃんと適用するようにしてますよ!逆ギレみたいな文章になってしまいましたね・・・変更した方向が間違ってたり、合っていても微弱だから再度忠告頂いただけなんでしょうけどね。
このまま話してるとただの愚痴とかになりかねない(<-既になってる)ので、最後に連絡だけ・・・別動隊の行動が分からないという意見に便乗して閑話休題としてサント君視点で書いてみます。
そこで理解できていなそうな点等(主にマナーとか常識、常識的に考えて含みます)が存在していたらなるべく具体的に教えてください。
今までもこれからも迷惑をかけまくると思いますが、総力を挙げて訂正修正していくのでどうか宜しくお願いします。 -
539
名前:暇
投稿日:2018-10-13 00:11
ID:GoDFsxZ2
[編集]
取り敢えず現在
「あなた、ルトリエ姉、姉リア」vs白疾風
「ルトリエ、ユーフォリア、サント」vs紅兜
が同時に起こってるって事で合ってるんだよね?
俺が頭悪い訳じゃないよね?…ね?(不安) -
540
名前:ユクモry@レイナ;閑話休題
投稿日:2018-10-13 09:28
ID:4Gi8YMow
[編集]
side:サント
日々狩猟した日記を付けているがこれほどまでに書きたいことが多いのは久々な気がする。やはり今日の出来事は我にとってそれだけ新鮮かつ感嘆できる狩猟だったのだろう・・・いつも一人で狩猟し、数年前にようやくG級ハンターと呼ばれるに至った我だが、
ギルドマネージャー殿は最近新たに生まれたG級ハンターに対して我が不快とまでは行かないが少なくとも面白く思っていないことが分かっていたらしい。
・・・本来であれば20歳近辺の者がG級になったのだから褒め称えるべきなのであろう。
しかしながら我がその噂を聞いた時感じたのは
「何故我は23年もかかったのにあのハンターは数年でG級になったのだ?不公平ではないか?」という身勝手な憤りだった・・・
この埒外な憤り知っていたかどうかは分からぬが一度一緒に送ってみるべきと考えたのだろう。
いつもは来ない指定依頼の内容が我がもっとも疎ましく思っていたハンター[あなた]との合同クエストであった。共に狩猟する者と顔を合わせたのは船室で挨拶を済ませたとみるや二人は口喧嘩を始め、[あなた]はそそくさと寝室に向かいネコタク乗り場へは一番遅くやってくるほどであった。
-
541
名前:レイナ
投稿日:2018-10-13 10:13
ID:4Gi8YMow
[編集]
・・・16行で文が切られてしまってるのですがこれはスペックの問題でしょうか?
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542
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-13 13:37
ID:ppizYosU
[編集]
16行っていうのがよくわかりませんが、文が切られるっていうのは16行目以降の文が消えてしまうということでしょうか?
それの原因はわかりませんが、簡単に思い付く対策としては一度別の場所に書き貯めしてコピペで書き込むという手段がありますよ。実際私もそうしてましたし。ちなみに何で投稿してますか?
あと、>>539の暇氏の質問については沈黙は肯定と受け取るべきなのでしょうか?
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543
名前:レイナ
投稿日:2018-10-13 15:09
ID:4Gi8YMow
[編集]
>>539については
白疾風VSあなた、ルトリエ姉、アネリア
紅兜VSサント、ユーフォリア、ルトリエ
で合っています。
分かりづらいので>>540のを参照すると
・・・やってくるほどであった。
時は少し飛びあなたを除く我らは明るい月明かりの下蜂蜜を食べる紅兜と相対した。・・・
の(時は)以降がばっさり落とされている感じです。
そしてコピペがあったのですね少し試してみます。 -
544
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-14 13:02
ID:ppizYosU
[編集]
そういえば思ったんだが今って「あなた」がハンターになってからどんぐらい時間経ってるんだろうか……。
ちょっと数えてくる(変態)
追記
挫折した(早)
正確さは一切ないけど、ざっと計算してみたところ最低でも300日以上経ってるっぽい。
ちなみに「数日」は五日換算、「しばらく」は10~15日っていう曖昧な数え方な上に、途中まで数えたのを区間平均値として全体で掛けただけなのですさまじく適当。
ちゃんと数えてくれる根気のある人はいないものか……つーわけで、ハンター生活一周年のシナリオ誰か用意してちょーだい(他力本願)
追々記
もっと調べたらエドワードの年齢設定がシナリオ「英雄」時30代後半、シナリオ「真紅の重弩と白き双子」時40代になってた。
一応39歳でも30代後半とは言うし、40歳でも40代とは言うけど、実は実際のカウントよりかなり経っている可能性アリ。ちなみに皆さんの脳内だとどのくらいの年月が経過しているイメージになってますか?
追々々記
時雨氏よ、>>392のシナリオ46『砂漠よりも熱い戦い』の安価ミスってますぜ追々々々記
>>546また来てね(慈悲)
そして兎さん、私ごときが言うまでもないでしょうが引き継ぎ頑張ってください。実験の結果PCだと普通に投稿可能、スマホでも大丈夫ですが、3DSのブラウザだと異常が発生するっぽいです(変態)。ガラケーはどうなんだろう……
-
545
名前:暇
投稿日:2018-10-16 03:59
ID:GoDFsxZ2
[編集]
精々一年半くらいだけど季節はリアルタイム連動のサザエさん時空
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546
名前:レイナ
投稿日:2018-10-16 18:17
ID:4Gi8YMow
[編集]
やっぱり上手くいきません。
新しい端末を買って機会があれば書き直させてせていただきたいです。
色々と迷惑をおかけしてごめんなさい。 -
547
名前:兎
投稿日:2018-10-16 18:18
ID:h3fvt/Eg
[編集]
これは進行役取っちゃって大丈夫かねぇ。
明日の夜までに投稿なければ書き始めますか。>>544
自分はリアルタイム準拠で考えてますね、尤も1話書くのに数日かかるので『これぐらいの時期にあった印象的な狩りが話になっている』と考えています。
きっと語るに足らぬちょっとした出来事(下位素材足りねぇ! とかキラビートル足りねぇ! とかw)だってあちらの世界でも起きているでしょうから。追記
なんという投稿ニアミスwww
即効で仕上げてきまーす!! -
548
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-16 23:03
ID:h3fvt/Eg
[編集]
・やっぱり番外編
・>>484
・見切り発車おk?
シナリオ47.5:錬金術士とコーディネート
* * *
自らの身体が起こした反射的反応――震えがきっかけでエリクシルは目を覚ました。
頭上で組んだ手を思いっきり伸ばして眠気を飛ばし、やや近眼気味な眼を擦って辺りに焦点を合わせると、此処が暖かなベッドの中ではなく机の前だと気付く。――昨日は店の仕事が慌しく深夜まで調合作業を行っていたはずだ、眠気に耐えかねて机に突っ伏して寝てしまったのだろうか?
「素材っ!!」
もし調合が半端なところで止まっていれば、預かり物の素材を燃えないゴミに変えてしまっていてもおかしくはない。
音爆弾を投げつけられた砂竜の如く立ち上がると、手探りで作業用の眼鏡を引っ張り出してフラスコや大釜の中身を確認に走る。「……ふぅ。」
記憶があやふやになるまで疲労を溜め込んでいたと言うのに、調合作業は滞りなく済んでいた。
素材が無事だった安堵から小さく息を吐き出して、自らの律儀さへと自嘲気味な照れ笑いを浮かべつつ冷や汗を拭う。
このアトリエもハンター業が疎かになってしまう程度には好調だが、流石にこれではオーバーワークかもしれない、今日は完成品の受け渡しを終えたら店を休もうか――「……あれ?」
そんなことを考えながらぼんやりと部屋を見渡している内、ある違和感に気付く。
――羽ペンやインクが普段の位置にない、よくよく見れば何時も整頓し片付けてある調合器具の幾つかは、乱雑に使いかけのまま出しっぱなしにされている。
器具洗浄を翌朝に回すことがないわけではない、それでも最低限洗い物を一纏めにしておくのは昔からの癖だった、眠気に耐えかねたとしてもやっていない筈がない。――ゴトリ、と音がした。 隣の部屋からだ。
思わず息を殺して身を強張らせていると、ごそごそと何かを物色するような音が鳴り始める。(泥棒……っ?!)
幸いなことに、扉の向こうに居る相手は自分が起きたことに気付いていないようだ。
物音を立てぬよう、机横に立て掛けていたボウガンへと手を伸ばしゆっくりと抱え上げ、足音を立てぬよう恐る恐る床を踏みしめる。
張り裂けそうな程強く鳴る心臓が鈍く痛む、自らの鼓動が否に大きく聞こえ手が震える。
長い時間をかけて漸く扉のすぐ横まで辿り着くと、一度呼吸を整えて、素早く身を翻し――「おはようございますー、ご飯にします? お風呂にします? それともワ・タ・シ?」
――銃口の先であっけらかんとそう言い放ったエプロン姿のミーシャを前に、エリクシルは暫し呆然と立ち尽くすのだった。
-
549
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-16 23:04
ID:h3fvt/Eg
[編集]
沸かしたての湯船に口元までしっかりと浸かりながら、吐息と共に漏れ出した申し訳なさと気恥ずかしさが小さく泡を立てる。
冷えた身体を熱々のお湯と彼女の厚意でしっかりと温めながら、自分は何をしているのか、3つ目の選択肢を選んだらどうなっていたのか、そうとりとめのない事を考える。――事の発端はこうだ。
最近アトリエに篭りっきりなことを気にかけたミーシャが狩猟終わりに様子を見に訪れたところ、自分は戸締りも何もしていないにも関わらず机に突っ伏していたらしい。
やはり調合途中の素材もあったのだが、それらは彼女が調合書片手に作業を終わらせてくれたうえ戸締りも行い、眠る自分へ毛布をかけた後、適当な椅子で眠り翌朝を迎えた。
余程疲れていたのか起きる兆しがなかったため、勝手に朝食等の準備をしていたところ、漸く目覚めた私が銃口を突きつけて今に至る――「何してるんだろ……」
湯冷めせぬよう、ここ最近の運動不足で柔らかさが増した気がする身体を手早く拭き上げ、薬品の香が染み付いた銀髪を乾かして浴室を後にする。
焼きたてのパンから漂う香ばしさと出来たばかりの半熟ハムエッグ、そして無邪気に笑う彼女に出迎えられささやかな朝食に手を付ける。「ソースでしょー?」
「ケチャップですっ。」――少々の派閥争いと共に。
* * *
「ところで、なんでチェーンシリーズなんて着てるんですー?」
2人で食器を片付けながら、不意にミーシャはそう切り出してきた。
彼女が疑問に思うのも無理はない、かつて共にタマミツネへ挑んで以来この防具が狩場で日の目を見ることはなく、G級ハンターに認定された今となれば無用の長物でしかない。「ずっと着てきたからなんだか落ち着くし、普段着代わりには丁度良いかなって……」
愛着、そう言い換えても良いのかもしれない。
命を預ける防具と言えど、狩猟に赴く訳でもなければ頑強さは二の次になる、多少野暮ったい格好な自覚はあるが薬品類の使用が多いアトリエを動き回るには何かと都合も良い。「最近はアトリエが好調だから、狩りにも出てないし――」
皿を食器棚に戻したところで、ふとミーシャの動きが止まっていることに気付く。
洗い終えたナイフをしっかりと握り締め、笑顔のまま額に青筋を――それも怒髪天に達した轟竜もかくやと言わんばかりのものを――浮かべている。「今すぐ狩りに行きますよ、行って防具作りますよ。」
手にしていたナイフを投げ捨てるように机に置くと、部屋の隅にある閉店の看板を勝手に店先に運び始める。
「ちょっと、ミーシャちゃん! 完成品受け取りに来る人も居るからそんな急には――」
「アイルーヘアバンドとユアミスガタだけの格好で手足縛って目隠しして簀巻きにして『ご自由にお食べ下さい』って張り紙してあの人のマイルームに放置されたいですか?!」
「行くからやめて!!」何かされてもされなくても、どちらに転んだところで後々気まずくなるのに変わりはない。
ミーシャからのとんでもない脅迫に押し切られ、とりあえずは間に合わせの防具を作り、狩猟に赴くことになってしまうのであった。* * *
「狩猟がご無沙汰って言う割りに素材は結構充実してますねー。」
「お金の代わりって言って素材と交換する人が結構多いから……」アイテムボックスの中身を検めながら、柔軟な対応をしていた自分に安堵する。 後は加工屋に持ち込めば何とか防具一式くらいは作れるだろう。
どこに持ち込んでも一緒なのだろうが、さてどこへ持ち込むべきか――* * *
・素材をどこの加工屋に持ち込むかを選んで下さい(武器防具の選択は後に選択肢を出します、今は持ち込みの場所だけの選択です)
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550
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-16 23:10
ID:ppizYosU
[編集]
はてさてこれは一体選択によってどう変わるのか……うん、あれだね。
ユクモ村の加工屋でお願いします
アレやろ、盛り上がってるところでクエストから帰還したあなたと鉢合わせパターンやろ?(無茶振り)
下手な冗談だからスルーしてちょー -
551
名前:暇
投稿日:2018-10-17 04:04
ID:GoDFsxZ2
[編集]
あのさぁ…派閥争いにしてもふつう醤油vs塩コショウだよなぁ!?(第三、第四勢力)
あと何気ないレスからホントにシナリオ作り始めててスゴイとおもった(小学生並の感想)
このコンビはなんかドンドン仲の良い姉妹みたいになっていってるけどミーシャのビッチ化もドンドン進行してますね…レイナさんのシナリオ無かったことになるなら拾えそうなシナリオ没案が一個あったから久しぶりになんか作ってみっかなー俺もなー
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552
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-17 23:42
ID:h3fvt/Eg
[編集]
あ、前のシーン、ミーシャちゃんのセリフのとこ猿轡が抜けてるわ。 イヤーウッカリシテタネ。
* * *
飛行船から降り立つと同時に硫黄の匂いが鼻腔をくすぐる、この空気はユクモ村特有のものだ。
機会さえあればまたのんびりと温泉に浸かるのもいいだろうが、生憎と今の目的はこの村の加工屋である。 ……なぜここにしたかと言われれば、ミーシャの気紛れでしかないのだが。
古風な造りの石段を上り、すぐ右手にある加工屋へ――「あれ、あそこに居るのって……」
視界に飛び込んできたのは、ユクモ村の独特は雰囲気とはかけ離れた、鮮やかな赤色のメイド服を着た翠髪の少女――何故かココット村の受付嬢と同じ格好をしたリィだった。
加工屋の店主の前で楽しそうにクルクルと回転しているうちに彼女もこちらに気付いたようで、いつものマイペースさで右手を上げるとゆっくりと手を振ってくる。「リィちゃん、こんなところでどうしたの? それにその格好は?」
「頼まれた素材集めたら……貰えましたー……」
「ああ、そう言えばあのメイドさんから納品依頼が出てましたねー。」頭だけは以前サンキス村での依頼を受けた時につけていたアイルーヘアバンドのままだが、他はどこからどう見ても受付嬢そのものだ。
これでもし髪の色も一緒だったのなら遠目には見分けがつかないのではないだろうか。「あぅあぅ! 中々面白い仕事だったなぅ。 狩りにも使える一張羅、大切にするんやでぇ!」
一仕事終えたばかりの加工屋もどこか満足気に胸を張っている、確かにこれで狩猟にも耐えうるなら言うこと無しだ。
「それ、私たちにもレシピ教えて貰えますー?」
……悪戯を思いついた子供のような笑顔でミーシャが訊ねる、問いただすまでもなくこれを着せるつもりなのだろう。
露出度の高い際どい格好をさせられるよりはマシなのだろうがこれはこれで恥ずかしい、止めるべきか躊躇う自分を他所に、リィは懐からゴソゴソと羊皮紙を1枚取り出してみせた。「教えてあげてもいいけど……ちょっと手伝って欲しい……」
「えーっと……渓流調査依頼?」依頼書によれば、どうやら渓流に不可思議な泡狐竜が居座っているらしい。
大抵は泡を周囲に漂わせて眠っており、例え目を覚ましたとしても真横に居るハンターにすら気付かず素通りしてしまうことすらある。
しかし全くの無害という訳でもなく、襲い掛かった者には容赦なく反撃し、何かの拍子で突如狂ったように暴れまわるというのだ。「生態調査と……可能なら捕獲してほしいらしい……」
「特殊個体ですかねー、まぁ適当に調査しちゃいましょうかー」
「うーん……装備の事は抜きにしても、放っておけないよね。」飽くまで調査が目的なのだ、敵いそうになければ情報だけ集めて撤退すればいいだろう。
何にせよ、まずは間に合わせでも装備を用意しなければならない。 諸々の準備を考え20分後に再集合を約束すると持ち込んだ素材を見せながら加工屋と相談を始める。「あ、もし誰か手の空いてる人見つけたら誘っときますねー。」
去り際にミーシャはそういい残して街中へ消えていく。
人手が多いに越したことはない、適当なようでこの辺りがしっかりしているのは彼女の強かなところだ。
せめて準備だけは怠らないようにしなければ、念入りに話をしながら製作することにした装備は――* * *
1.エリクシルの武器、防具、スタイル、狩技を決定して下さい。(所持素材は主人公の狩猟状況に準拠、スタイルはブシドーかレンキンから選択して下さい)
2.ミーシャ、リィの武器、狩技を選択して下さい。(防具はミーシャ→いつものキメラ装備 リィ→ガムートS一式を想定しています)
3.参加人数が1枠空いているので同行させたいキャラを1人、武器、狩技も選択して下さい。(任意枠、主人公も可、誰も選ばないも可)
4.その他、何か指定したいことがあればご自由にどうぞ。 -
553
名前:時雨
投稿日:2018-10-18 05:51
ID:gX20EMvk
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これは女子会にしなければいけない
武器は瓢弾【千成】、装備は…無骨なのしかないからバルク装備、スタイルはブシドーで狩技は安全性を高める為に絶対回避【臨戦】で
ミーシャはバリエンテで身躱し射法、リィは…チャアクよく分からんしディヴァルキューレでオーバーリミット
参加者は紅兜シナリオで二つ名と戦ったサクラで
装備はナルガX、武器はペインフルレイザーで狩技はラウンドフォースでお願いします>>554
おっと、忘れてましたな
じゃあエネルギーブレイドと絶対回避【臨戦】でお願いします -
554
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-19 00:05
ID:h3fvt/Eg
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プロローグの幕間だからちょい短め、本格的な狩猟は次の次位からです。
>>553 リィちゃんはストライカースタイルなので狩技をもう2つ選択できますが希望はありますか? なければこちらで勝手にチョイスしておきます。* * *
掻き集めた素材で製作したのは銀と赤のトゲトゲとしたコントラストの鎧――天彗龍の素材から作られたバルクシリーズ、現状最高クラスの性能を誇る防具には違いない。
違いないのだが仕上がった防具を着てみても、どうにも防具に着られている印象が否めない。 選りにも選って持ってきた武器が瓢箪を加工して作られた物だから尚更の事だ。
今では屈指のハンターの一員となった『彼』は同じものを着て颯爽と各地を飛び回っていると言うのに、本格的な鎧が似合わないのは狩人として少々残念ではある。
気付けばすっかり差をつけられてしまった、自身が兼業ハンターとなってからある程度予測していたことではあったが、このまま本当に手が届かなくなるのではないだろうか……「エーリーたんっ!」
「ひゃいっ?!」勝手な想像で意気消沈していると、飛び切り明るい声色と共に後ろから抱き付かれた、しかも綺麗に鎧の突起には当たらないようにして。
「ミーちゃんから話聞いたよー! 渓流調査私も連れてってー! ね? ね!」
「ちょ、サクラちゃん、分かったから落ち着いて! そして離して! ……ミーシャちゃんも笑ってないで助けて!」振り払おうとする手をスルスルと避けてサクラはしがみ続ける、恐らく連れて行くと明言するまで離さないつもりなのだろう。
そんな様子をミーシャはニヤニヤと笑みを浮かべて、リィは掴みどころのないいつもの表情でぼんやりとこちらを眺めている。
数分にも及ぶ攻防の末何とか彼女を引き剥がす事に成功すると、乱れた呼吸を整えながら各々の装備を確認する。
上下でリムの形状が異なる特徴的な闘弓バリエンテ、シンプルなデザインながら美しい緑色に誂えられたディヴァルキューレ、鋭利な刃が白く煌くペインフルレイザー。
生半可な相手には劣らないであろうラインナップに加え、サクラの防具は見慣れぬデザインのナルガシリーズ――ナルガXシリーズと呼ばれるG級仕様の物という気合の入りっぷりだ。「私も防具新調しないと厳しくなってきましたねー。」
「次の防具も……もこもこがいい……」調査に向かうには少々気が抜けているかもしれないが戦力は十二分だ。
この面子で統率が執れるかどうかは不安だが、流石に狩猟となればしっかり戦ってくれるだろう。「弾、罠、捕獲用麻酔玉、生命の粉塵、大タル爆弾、消散剤、閃光玉……」
以前タマミツネを狩猟した時の事を思い出しながら、全員の持ち物も念入りにチェックする。
こんがり肉ばかり詰めていたリィや中途半端に回復薬が足りていないサクラのポーチの中身も正して、事前準備は完璧に整った。「それじゃ皆……お手伝いよろしくお願いします……」
一応は依頼を受注した当人であるリィが3人に頭を下げ、皆で飛行船へと乗り込んでいく。
数刻の後ユクモ村に停泊していた飛行船はゆっくりと地を離れ、目的地である渓流へと進路を取り始めた。これから暫くは船に揺られるだけの時間になる、さて、如何にして時間を潰そうか――
* * *
・会話イベントの発生するキャラを2名選んでください(ミー×サク等、エリクシルが選ばれて居ない場合、選択された2人の会話を目撃する形になります)
* * *
※レギュレーション解説※
・渓流に居座る不可思議なタマミツネを捕獲すれば無条件でシナリオクリアです。
・討伐してしまっても狩猟中に裏で兎がカウントしている『生態系ポイント』が一定値以上溜まっていれば成功です。
・『生態系ポイント』は今回登場するタマミツネの特徴を見つければ見つけるほど加算されていきます、色んな行動を誘発させましょう。
・キャラクター毎に気付きやすい特徴が違います、各キャラクターの性格等も考慮するといいかもしれません。 -
555
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-19 08:48
ID:hsQbZJeY
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普段のシナリオでの捕獲の容易さを見るに、これは捕獲を失敗させる仕掛けが何かしらあると見た(謎推理)
えーと組み合わせは4C2で6通りでっから、
エリ×ミー(いつもの)
エリ×サク(攻受が良いバランス)
エリ×リィ(すぐ話題が尽きそう)
ミー×サク(化学反応)
ミー×リィ(ミステリアス)
サク×リィ(癒し空間)
よね。(偏見&趣味全開)というわけでミー×リィでお願いします。(結局兎氏お気に入りの二人を選ぶ屑)
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556
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-20 02:02
ID:h3fvt/Eg
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>>555
ぶっちゃけるとベースにしてるのが天眼G1だから捕獲ラインがシビアってだけなのよね。* * *
不意に風の音に混じって歌声が聞こえてきた、辺りを見回しながら甲板を歩いていくと、船尾に程近い場所でミーシャの姿を見つける。
この歌を口ずさむのは彼女にとって狩猟前のおまじないのようなものなのだろう、時間を持て余しているからと言っても重要なルーティンを邪魔してしまうのも忍びない。
声をかけるべきかどうか――逡巡していると、反対側からふらりと現れたリィがのんびりとミーシャへ近付いていく。「ちょっと聞きたいことがある……」
隣に着くと歌を遮ってそう切り出し2人は話し始める、出て行くタイミングを失って死角から会話を盗み聞きするような格好になってしまう。
「これってどうやって作るの……?」
リィの手に握られていたのはアイルーヘアバンド、以前大所帯で依頼に向かった時、何を仕出かすか分からない彼女がどこに居るかを目立たせる為ミーシャが貸していた物だ。
あれ以来互いに接点もなく、返しそびれた物を返すついでに作り方を聞きに来た様子だった。
その後も脈絡と覇気のない質問が繰り返され、その度ミーシャが答えを返す――そんなやり取りが数分繰り返される。「あと……―――ってどんな相手でした……?」
聞き慣れぬ名が飛び出した瞬間、淡々と質問に答えていたミーシャの顔色が変わる。
元より感情を隠すようなタイプではないが露骨なまでに、聞きたくない名を聞いたと言わんばかりに表情を曇らせていた。「……何の話ですかー?」
「おじいちゃんが……真っ白な髪のハンターが狩ったって……」
「アリーチェさんの事じゃないです? 白髪鬼って呼ばれてたのはあっちが先みたいですしー。」
「弓で狩ったって言ってました……」いまいち話は掴み切れないが、何とかはぐらかそうとするミーシャをリィは的確に追い込んでいく。
決して意図しての行動ではなさそうだが、それ故に一層性質が悪いのだろう。 暫し視線が交錯した後、観念したようにため息をついてミーシャは口を開いた。「見上げるほどの巨体で、凄い威圧感で……卵運ばされ続けた結果がアレとは思いませんでしたねー。」
「今戦ったら勝てる……?」
「無理でしょうねー、装備も実力も足りないことだらけですよー。」不敵な言動の目立つ彼女がそう断言する程の相手、一体どんなモンスターの話をしているのか想像もつかない。
「まぁ、会うかどうか分からない相手より今すぐ戦うタマミツネですよー。 ね、エリクシルさんー。」
突然話を振られて身体が跳ねる、どうやら話を聞いていたことは気付かれていたようだ。
「ご、ごめんね? 盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど……」
「別に大した話じゃないから大丈夫ですよー、それよりそろそろ到着じゃありませんー?」日が落ちて分かり難くはあるが、既に渓流は目と鼻の先になっていた。
程なくして下船を知らせに来たサクラとも合流し、一行は夜の渓流へと降り立った。 -
557
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-20 02:03
ID:h3fvt/Eg
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飛行船から降りてネコタクで運ばれた先は運の良いことに渓流のベースキャンプだった、件のタマミツネが普段と同じ場所に居るのならば、ここから少し北へ向かうだけで済む。
近くに仲間の姿がないことは不安ではあったが、最悪は合流できるまで身を潜めていればいいだけの話だ。
月明かりと燭台の炎を頼りにやる気の感じられない瓢箪型のボウガンへ弾を込め準備を整えると、小走りにキャンプを後にして北へ向かう。
岩肌を伝い水の流れ込む地面で滑らぬよう慎重に道を抜けると、開けた視界の先には身体を丸めて動かない泡狐竜の姿があった。
そして、崩れかけ傾いた建造物の残骸近くには既に先客が居た。 双眼鏡でタマミツネの姿を観察していたサクラはこちらに気付くと、手招きして傍に寄るよう合図を送る。「ホントに寝てるみたいだよ、でもさっきから泡がグルグルしてて……身を守ってるのかな?」
自身もボウガンのスコープ越しに泡狐竜を見やると、微かながら規則的に身体が上下していた。
辺りに染み出した潤滑液は一定の間隔で泡を生み出し、螺旋を描いてはある高さで弾けを繰り返している。「ね、エリたん大タル爆弾持ってたよね? 泡に気をつけて設置できたら先制攻撃出来ないかな?」
「それは出来ると思うけど……まだ皆が揃ってないし、どうしよう?」どうせなら全員が手持ちの大タル爆弾を使用したほうが効率的ではある、その後の戦闘も考えれば先走るのは得策ではない。
かといって、タマミツネが何時までも眠っているという保証もない、貴重なチャンスをみすみす逃してしまうのも勿体無い気はしてしまう。「うーん、皆でタル爆弾置いてリィちゃんにドッカーンってして貰うのも捨てがたいけど……」
恐らくは超高出力属性開放切りの事を言っているのだろう、確かに爆弾に加えそれすらも打ち込めればいきなり大きなアドバンテージを得た状態で戦闘を始められる。
「今を逃したら……状態異常に出来る手段は誰も持ち合わせてないですよね。」
瓢弾は状態異常弾に対応していない、バリエンテも強撃ビンしか装填出来なかったはずだ。
残る2人の武器も雷属性こそ宿ってはいるが、相手を麻痺させられるような効果はない。 この次となると罠にでも嵌めなければタル爆弾を使える機会もないだろう。あまり悩んでも居られない、エリクシルが下した決断は――
* * *
・数字とアルファベットから1つずつ選択して下さい
1.合流を待たず攻撃する
2.ミーシャかリィどちらかが来るまでは待つ
3.全員揃うまで待つA.大タル爆弾Gで先制攻撃する
B.何かしらの攻撃で先制攻撃する
C.爆弾と攻撃を併用して先制攻撃する
D.自由枠(アイテムの使用等) -
558
名前:暇
投稿日:2018-10-20 06:32
ID:GoDFsxZ2
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うわぁ…これは痕跡集めクエストですね、間違いない
選択肢は1、D
寝てるのを良いことに近付いて良く調べてみる
コッチを気にせず寝てるならきっと温厚なタマミツネなんやろなぁ(すっとぼけ) -
559
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-20 17:27
ID:h3fvt/Eg
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「折角眠ってるんですし、思い切って近くで調べて見ましょう!」
「わー、エリたん可愛い顔して結構大胆! 行ってみよう!」思い切った決断だとは思うが、万が一捕獲し損ねた時の保険も必要だ。
いざ戦いになってからでは生態調査も難しい、敵を知り己を知れば百戦危うからずとも言われる位だ、先制攻撃のチャンスを潰すだけの価値はある……と、思いたい。
不用意に物音を立てぬように忍び足で辺りを漂う泡が目の前を通り過ぎる位の距離まで近付くと、月光に照らされたタマミツネの姿を注意深く眺めていく。「エリたん、この子……」
すぐさまサクラが何かに気付き、耳打ちと共に泡狐竜の顔を指差す。
その両眼には鋭利な爪で抉り取られたような――雷狼竜に傷付けられた防具でよく見られる痕と同じ――深く大きな傷跡が刻まれていた。
医学的な知識がなくても断言できる、このタマミツネは間違いなく視力を失っている。 この双眸に光が届くことは2度とありえないのだ。「モンスターとは言え、少し可哀想ですね……」
視線を胴部へと移せば、鮮やかなはずの毛並みもやや荒れており、あちこちに打撲痕や擦過傷が見られる。
光を失ってからどれ程の時を過ごしてきたのかは分からない、それでもこの泡狐竜にとっては決して短い時間ではなかっただろう。
無意識に、身体が一歩前に出ていた。 狩猟に来た相手だと言うのに憐れみや同情を抱いてしまったのかもしれない。――それが仇となった。 背後から漂ってきた泡の1つが右肘に触れ弾け、瞬く間に粘性の高い泡に塗れてしまう。
同時に熟睡していたはずのタマミツネが眼を覚まし、綺麗な弧を描いて飛び退りながら体毛を鮮やかな深紅に変える。
渓流に響き渡る咆哮、以前聞いた時のような優雅さは微塵も感じられない、どこかヒステリックな絶叫に思わず耳を押さえて蹲る。「なんでもう怒ってるの?! それにあの眼……エリたん、ちょっとヤバいよこの子!!」
咆哮が収まり顔を上げてみると、光が届かないはずの双眸が焔のように青々と輝いていた。
ただ視力を失っただけの特殊個体――そんな風に捉えていた自分の認識が甘かったことに内心毒突きながら銃口を向ける。
何かされる前にこちらから仕掛けようと引き金に指を掛けた瞬間、視力を失って居るはずの相手が躊躇いもなく一直線に走り寄ってきた。「っ!」
「わぷっ?!」そのまま身を捻って薙ぎ払われた尻尾を寸での所で潜り抜けるが、今度は予期せず発生した泡に直撃したサクラが情けない声と共に泡塗れになる。
危な気だが何とか一手は凌ぐことが出来た、反撃に転じる為に素早く狙いをつけると手にした瓢箪から軽い発射音が立て続けに鳴り響く。
頭部目掛けて放たれた3発の弾丸に合わせ、鉄砲玉のように飛び出したサクラが首筋を狙いペインフルレイザーを振り被り――双方が空を切った。「え――」
幻のように視界から消えた泡狐竜の姿を探そうとした瞬間、頭上からの強烈な衝撃が彼女の身体を弾き飛ばす。
跳躍からアクロバティックに身体を回転させて振り下ろしたタマミツネの尻尾が自身の潤滑液で激しい水飛沫を上げる音と同時に、廃屋にサクラが叩きつけられた鈍い音がした。「サクラちゃ――」
一瞬視線が反れただけだと言うのに、弾丸のように身を捻りながら突進してきたタマミツネが既に眼前に迫っていた。
回避も間に合わず撥ね飛ばされる、かなりの距離を転がるほどの衝撃で生じた激痛で息が詰まる。
咄嗟に立ち上がろうとしても身体が言うことを聞いてくれず、霞む視界の先では前後不覚になりながら辛うじて立ち上がったサクラへと泡狐竜が迫っていた。
歩みを止めたタマミツネの顔が持ち上がる、仲間に食らい付こうとしているのに、届くことのない片腕を必死に伸ばそうとすることしか出来ない。――鈍い音が響いた、間に割って入った人影がその牙を阻み、力任せに泡狐竜を押し返している。
現れたのは大振りな剣と盾を携えた少女――チャージアックスを構えたリィだ、何時になく険しい顔で必死に時間を稼いでくれている。何とか自分は身を起こしたが、サクラがまともに動けるようになるまではまだ少々かかりそうだった。 この状況を巻き返すにはどうすればいいだろうか―ー
* * *
1.タマミツネはリィに任せてまずは自分を回復する。
2.生命の粉塵、大粉塵等で全員を回復する。
3.自分の回復は二の次にして攻撃に加わりタマミツネの気を引く
4.自由枠 -
560
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-20 22:09
ID:ppizYosU
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容赦の無い暇氏による選択が女子会を襲うっ……!
ここは真面目に2+αで回復して体制を立て直しつつ隙を見てペイントしましょう。
だってほら、ヒーロー(ヒロイン)は遅れてやってくるって言うじゃないですか。ところで、遅レスだけどとうとう存在が示唆されたか産まれちゃってるミラナントカさん
-
561
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-21 18:04
ID:h3fvt/Eg
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激痛を堪えながらアイテムポーチから取り出したのは緑色の粉末、生命の大粉塵と呼ばれる薬品だ。
貴重な品ではあるのだがここまでの窮地に惜しんでいる暇などない、封を破り中身を振りまくと辺りに広がった薬効が急速に傷を癒していく。
更にダメ押しで内臓弾の1つ、広域回復弾を上空目掛け発射すると弾け飛んだ弾丸から降り注ぐ薬液が辺り一体に散布される。「ごめん、エリたんリィちゃんありがとっ!」
「間に合ってよかったー……」見る間に意識を覚醒させたサクラが急いで泡狐竜から距離を取る、どうにか窮地は脱することが出来たようだ。
そこで漸く、埒の明かない鍔迫り合いに文字通り歯噛みしたタマミツネがディヴァルキューレから口を離し、辺りを飛び跳ねながら泡を撒き散らした。
地面に残った泡でこちらの動きを制限すると、自身の尻尾を口に運んで甘噛みして毛繕いを行い、満足気にひと鳴きして地面を踏みしめる。「見えてるのか見えてないのかはっきりしてよね!」
挙動の安定しないタマミツネに業を煮やしながらサクラが正面に躍り出る、片手剣の身軽さを活かして泡の隙間を走り抜けると、桃色の球体――ペイントボールを投げつける。
眉間に直撃したそれは嗅ぎ慣れた独特の臭気を漂わせ始めた、これなら例え逃走を試みても居場所が分かる。 合流出来ていないミーシャにも場所が知れた筈だ。
突然の異臭に動揺したのか身動ぎした隙を付くように素早く切りかかると、やや遅れて泡を抜けたリィもそれに続いて剣戟を叩き込む。「痛い……」
「硬いっ!」それぞれ前脚に直撃した斬撃はいとも容易く弾き返されてしまう、体勢を崩されると同時に泡狐竜が大きく身体を縮め、お返しと言わんばかりに爪を突き出してくる。
咄嗟に盾を翳した2人だったが体重を乗せた一撃の勢いは殺しきれず、踏鞴を踏みながら派手に後退させられた。「それならっ!」
引き金を引くと銃口との摩擦で電荷した弾丸が空中で稲妻を纏う、かつての戦いで見出した弱点――電撃弾が右前脚を直撃し、呆気なく弾き返される。
「なんでまた効かないの……?!」
何故かタマミツネとの戦いは情報に踊らされているように思えてしまう、効かないと分かった以上使う必要性のなくなった電撃弾を排出し、アイテムポーチを探る。
瓢弾は見た目に反して威力こそ申し分ないが使える弾丸が限られている、その内氷結弾は効かないのが目に見えており、他の弾丸は装填数等の関係で現実的ではない。
そうなれば使える弾丸は実質的に通常弾しか残されていない、乱雑に弾倉を叩き込みながらどこを狙うべきか必死に頭を回転させる。
変異したとは言え元は同じ生物、普通のタマミツネと何も変わらない部分がある筈だ。 あの時彼女が弓で狙っていたのは――「……背ビレだったはず!」
放たれた弾丸が鮮やかな背ビレを立て続けに撃ち抜くと、その衝撃で泡狐竜の身体が一瞬硬直する。
それまで的確に攻撃を防ぎ続けていたリィはその機を逃さず刃を二度振り抜くと蓄えたエネルギーをビンへと送り、形態を斧へと変化させて脳天へと振り下ろす。「えっと……属性強化は……」
――不穏な呟きこそしたものの、再び形態変化を行い始めたので操作は思い出せたようだ。
「刃薬使いたんだけどなー、ミーちゃんまだー?!」
一方でサクラも不平を口にしながらも弾かれやすい前脚から離れ、後脚付近から地道な剣舞と跳躍攻撃を繰り返している。
ネコタクで余程遠くに降ろされたのだろうか、合流すれば戦局は一気に楽になると言うのに彼女は中々姿を見せない。どうやら攻勢を維持するには何か手を打たなければならないようだ、タマミツネを足止めする手段を講じなくては――
* * *
1.アイテムで足止めを狙う(使用アイテム選択)
2.サクラに乗りを狙ってもらう
3.リィにスタンを狙ってもらう
4.自由枠今日から夜勤に入るので次回以降の投稿ペースとタイミングが変わります、ご了承下さい。
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562
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-21 19:42
ID:tsmY3ycg
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ディヴァルキューレって強属性ビンだからスタン取れなくない?
と思ったけど兎氏が選択肢でそんな凡ミスするはずないから何かあると見た
と言うメタ読みから3で -
563
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-22 07:27
ID:eQ8q3XjI
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むじょうけんの しんらいが たやすく ひとを きずつけるんだ。 ▶︎
>>565Gルートcharaニキは じごくで もえてしまえばいい
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564
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-22 11:33
ID:h3fvt/Eg
[編集]
>>562 しなりおの ねたばれは やめてくださいますか (おろおろ
* * *
「リィちゃん、何とかして動きを止めてみて!」
「とりあえずやってみます……」どこか気の抜けた返事をしながらも着実に剣戟を重ね、属性強化が終わったばかりの盾斧へエネルギーを蓄積し直していく。
執拗なまでに泡を撒き散らして動きを阻害しつつ、不意を付いて重みのある一撃を放つタマミツネの攻撃は苛烈ではあったが、防戦になりがちながらも3人でならば対応しきれる。
尤も、それは攻撃の手を止めなければ、という枕詞があってこそだ。 何かの拍子で誰かが動けなくなれば、戦況はたちどころに瓦解するだろう。「よいしょっと……」
気だるげな声と共に機構を連結させ、身を捻りながら大上段から一撃を叩き込む。
形態を変化させたのはビンにエネルギーが溜まりきった証だ、後は如何に頭へと攻撃を集中させられるか――つまり、リィの実力次第だ。「えっと……頭が狙いにくいときは……」
突如考え込むような素振りと共に棒立ちになり、何やら不穏な言葉を口にする。
――次の瞬間、ディヴァルキューレを大きく後ろ手に振り被った。 一瞬にして斧刃がスライドし、激しい駆動音と共に火花を散らし始める。「え、ちょ……リィちゃんっ?!」
頭上からサクラの声が響く、噛み付きを避けつつ跳躍した彼女は今まさに泡狐竜の首筋目掛けペインフルレイザーを振り下ろさんとしていたところだった。
そんなこともお構い無しに、何の躊躇いもなくリィは盾斧を振り抜いた。 遠心力で斧刃が先端へと戻り、ほぼ一回転させると腕の力で強引に勢いを押し留め――「えー……いっ。」
「いやぁああああっ!!」ほぼ直角に起動を変えたチャージアックスがタマミツネの眼前に叩き付けられ、轟音と共にその身体を覆い隠す程の黒煙と幾つもの稲妻が生じる。
空中で手足をばたつかせるサクラと一撃をまともに受けた泡狐竜の悲痛な叫びが夜闇に響く、その後前者は地面へと不恰好なダイブを決め、後者はのたうつ様にして暴れまわる。、「……これ、強属性ビンだった。」
「リィちゃんっ!!」大技は不発、仲間も吹き飛ばされる、まさかの展開で想定していた最悪の状況に陥った――筈なのだが、タマミツネが一向に攻撃をしてくる兆しがない。
正確にはその場で暴れてはいるのだが、急に眼でも眩んだかのように手当たり次第周囲を攻撃をし続けている。「よ、よく分かんないけどチャンスだよね!」
顔の泥を拭ったサクラがすぐさま片手剣に刃薬を塗りつけ始める、自身もボウガンに弾を装填し直し――リィは、相手の様子をボーっと見ている。
体勢が整って尚泡狐竜の暴走は止まっていなかった、振り上げた尾が偶然にも廃屋を破壊するが、それすらも意に介した様子がない。「一体何なんだろう、やっぱり目は見えてないよね?」
「それは間違いないと思うけど……でも、さっきまでは私達の位置も分かってたみたいですし……」攻撃するタイミングを窺いながら言葉を交わしていると、不意に鳴り響いたけたたましい金属音に2人は身を竦ませる。
音の主はリィだった、まるで相手を挑発するかのように、手にした剣と盾を力強く何度も打ち鳴らしている。「……耳も聞こえてないみたい。」
「えっ?!」突然の奇行の後彼女はとんでもないことを呟いた。 確かにリィの言う通り、あれだけ激しい音を鳴らしたというのにタマミツネがこちらに向かってくる気配はない。
それどころか完全にこちらの事が分からなくなったのか、あちこちに身体をぶつけるようにして北の水辺へと走り去ってしまう。
眼でも耳でもなければ、こちらをどうやって索敵しているのだろうか。 まだ謎は残っているが、このまま泡狐竜を追撃するべきかどうか……* * *
1.ミーシャを待って情報を整理してからにする。
2.体勢だけ整えたらこのまま追撃する。 -
565
名前:暇
投稿日:2018-10-22 13:45
ID:GoDFsxZ2
[編集]
*こうげきを つづけろ
-
566
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-23 01:52
ID:bQSYSQyE
[編集]
天眼かと思ったけど二つ名ベースの特殊個体っぽい?
たった数行の書き込みからこれだけのシナリオ作れるんだからこの人はやっぱり凄いな -
567
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-23 12:28
ID:h3fvt/Eg
[編集]
おぃ? 選択肢が今のところ特殊エンドまっしぐらなんだが?
* * *
生態調査は保険に過ぎない、一番の目的はあのタマミツネを捕獲することだ。
下手な考え休むに似たりという言葉もある位だ、あれこれ悩むより相手を弱らせるほうが先決かもしれない。「体勢整えたらすぐに追いかけましょう!」
「はーい……」
「刃薬の効果も勿体無いもんね! でもミーちゃんホント何処で何やってるんだろ?」渓流を訪れてから既に5分以上は経過している、それどころかもう間もなく10分は経つだろうか。
ネコタクで不運にも一番遠い滝裏の洞穴に降ろされたのだとしても真っ直ぐに駆け抜ければ1分少々の距離だ、道に迷っているとも考え難い。
恐らくは何らかのトラブルが起きているのだろうが……信号弾も打ち上げないとなれば、1人で対処しているのだろう。「ミーシャちゃんならきっと大丈夫、私よりずっと強いし、意外としっかりしてるし……」
だからこそ不在の穴が大きく苦戦を強いられている訳なのだが、居ない人物を当てにしても仕方がない。 彼女が来た時に胸を張って文句を言えるように頑張らなければ。
自らにそう言い聞かせると、他の2人と共に走り去った泡狐竜の姿を追いかけるのだった。* * *
時間はミーシャの想定を遥かに上回っていた。 狙いが甘いわけでもないのにここまで食い下がられるとは、手負いとは言え流石は『G級』と認定されるだけの事はある。
内心舌打ちしたくて堪らなかったが、それに劣らない程気分は高揚していた。 ようやくここまで戻ってきたのだと、歓喜と共に懐かしさまでもが込み上げていた。「……ワンちゃん如きが、鬼に喧嘩を売るからこうなるんですよー。」
だがこれ以上手間をかける訳にもいかない、静かな呟きと共にほぼ垂直に放たれた最後の一射が錘によって向きを変え、急な孤を描いて降り注ぐ。
脳天に打ち下ろされた衝撃に雷狼竜の姿勢が傾ぐと、最後の支えであった前脚からも力が抜け体中の雷光虫が一斉に霧散し、誇り高き狼は終に鬼へと屈する事となった。「さてと、『アレ』だけ回収したらさっさと合流しますかー。」
何も素材が欲しかったわけではない、そもそも姿を見つけた時も一切構わず素通りしてしまうつもりだった。
想像以上に善戦した仲間たちと、夜闇の中あんな物を見つけてしまった自らの眼の良さ。 尾の付け根にこびり付いた『それ』をナイフで切り取ると、空き瓶に放り込んで密栓する。
もし狩猟の途中でも救難を求める信号弾が上がったなら即座に切り上げ合流つもりだったのだが、単独で最後まで相手を出来たのは、果たして幸か不幸か――
辺りが静まり返るや否やすぐさま戻ってきたガーグァ達の姿を尻目に、ミーシャはペイントボールの臭気をたどり始めるのだった。* * *
「ちょっと、爆発する泡なんて聞いてないんだけどー!!」
「花火みたーい……」突如吐き出された青々と揺らめく泡の爆発を、盾で凌いだ2人が対照的な感情を漏らす。
相も変わらず変則的な攻撃を繰り出してくる泡狐竜に手を焼きながらも、ここまでは一進一退の攻防を続けて来れた。
比較的安全な位置に立てる自分が回復弾や広域回復弾、生命の粉塵などを用いて前衛2人を安定させながら戦ってきたのだが、それらも底を突きだして最早ジリ貧でしかない。戦局を覆す一手が欲しい。 乗りなり狩技なり集中攻撃なり、何かで流れをこちらに引き込まなければ――
* * *
1.エリクシル:2人は囮にして防御に徹して貰い、単独で背ビレを集中攻撃。
2.サクラ:ラウンドフォースで大技へのカウンターや跳躍攻撃での乗りを狙って貰う。
3.リィ:オーバーリミットからエネルギーブレイドや超高出力属性開放切りで大ダメージを狙って貰う。
4.ミーシャ:駆けつけてくれるまでこのまま耐える。
5.自由枠 -
568
名前:暇
投稿日:2018-10-23 16:55
ID:GoDFsxZ2
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5、サクラ:刃薬とシールドバッシュで疲労を狙う
既に10分経過してて一回エリチェンするほど戦闘続いてるなら多分そろそろだと思うんですけど…
食事シーンの目撃で調査度アップ間違いなし!情報整理なんてその後でまとめてやれば十分なんだよ!(暴論)あ、自分の他に選択選ぶ人いたらそっち優先して❤
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569
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-24 11:44
ID:h3fvt/Eg
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ゴフゥ(予想外の方向からチェックメイトをかけられた作者の図
* * *
戦法を逡巡していると、偶然にもサクラが翳した盾がタマミツネの右顎を捉えた。
然したる衝撃でもなかっただろうが、それでも泡狐竜は小さく苦悶の鳴き声を漏らし、一歩後ろへと後退する。
――ほぼ休まずに戦い続けて居るのは相手も同じだ、あの程度の一撃で怯んでしまうくらいには疲弊していると言うことか。「サクラちゃん!」
「皆まで言わずとも合点承知だよっ!」リィの方へ攻撃がそれた隙に封を指先で弾き飛ばすと、塗り込むと言うよりはかけ流すと言うのがしっくりくる程豪勢に刃薬を使う。
頭部への集中攻撃が理想ではあるがこの状況では贅沢も言ってはいられない、僅かな隙を見つけては素早く斬撃と盾による殴打を繰り返す。
一撃の重みは無くとも短時間で積み重なれば話は変わる、幾度目かも分からないペインフルレイザーが振り抜かれると、遂にタマミツネの身体が一瞬揺らいだ。「もう一発――!」
気合の声と共に身を捻り痛烈な一撃を叩き込もうとした時、相手もまた身を翻して大きく距離を取った。
天を仰いで力を溜めると、丸めた身体を引き伸ばしながら吐き出されたのは鉄砲水――かつても窮地に追い込まれた経験のある嫌な攻撃だ。「皆、攻撃に備えて――」
「その必要はありませんよー。」――月光を受けて、白い髪が輝く。
軽やかな脚運びで舞うが如く飛び出した彼女は既に弓を引き絞っており、完全に脚が地から離れたアクロバティックな体勢から矢を放つ。
振り向こうとしていた先からの重い衝撃に泡狐竜の顔が揺れ、踏ん張りの利かない方向へと流れたブレスの反動を抑えきれず盛大に水飛沫を上げながらその身が横転した。「ミーシャちゃん……!」
「ミーちゃん来るのが遅いってばー!」
「皆揃ったー……」最後まで姿を見せないのではないだろうか――決して信用していない訳ではなかったが、胸中に渦巻いていた一抹の不安をものの見事に吹き飛ばしながら颯爽と彼女は現れた。
「言い訳は後でちゃんとしますよー、でも私が居なくても案外余裕だったみたいですねー。」
「そんなこと無いよ。 ……凄く、心強い。」軽はずみでいい加減な言動の裏にある底知れぬ自信と勇気、闘弓バリエンテを手に凛と立つ姿に感化され、武器を持つ手に自然と力が入る。
短いやり取りが終わると同時に、タマミツネも横たえた身体を何とか起こしていた。
その頭はだらりと垂れ下がり、口からは血混じりの涎が滴っている――先程のブレスも無茶をしていたのだろう、疲労が限界を迎えたのだ。「よし、もうちょっとだよ!」
見え始めた勝機に、サクラは嬉々としてタマミツネ目掛け走り出す。
その行動に気付いたのか頭を持ち上げた泡狐竜も涎を垂らしながら走り出し、両者は交錯――することなくあっさりとすれ違う。
予想外の動きにペインフルレイザーが空を切る、そのままリィの横を素通りし、ミーシャの目の前を横切り、自分すらも蚊帳の外にして走り抜ける――どうやら逃走したようだ。「あっち……お魚さんの居る水辺があったと思う……」
「今体力を回復されたらまずいよ、すぐに追いかけよう!」
「やれやれ、私は来たばっかりだったんですけどねー。」一斉に武器を背に戻すと、タマミツネが姿を消した瀑布へと駆け出す。
自分の物ではない足音が3つ鳴り響くのはこんなにも安堵するのか、エリクシルはそんな事を考え口元を綻ばせながら殿を務めるのだった。* * *
続きは明日の夜勤明け、選択肢まで行けずスマヌ……スマヌ……
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570
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-24 12:20
ID:pJBQclzA
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これまで見てて思ったが、暇氏の選択はミーシャちゃん以上に気まぐれよね。どうしてそうなる!?な選択をしたと思ったら、ここぞというときには最適な選択したり……そうでもなかったり。
だけどテキクエを一番楽しんでる感じがしてちゅき♡
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571
名前:暇
投稿日:2018-10-24 17:16
ID:GoDFsxZ2
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きっと書く側の拾い方が上手いんだと思います
楽しんでる感じじゃねぇよ…おめえも楽しむんだよ!!!(優しい暴言)(暗に変な選択肢選べと迫る人間の屑) -
572
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-24 22:27
ID:lQ7xToZo
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書き手を信頼してるからこそだよな、特に兎さんなら多少の無茶も飲んでくれるし
夜勤だろうがしっかり執筆する鉄人っぷりは凄いけども無理せずクオリティ維持して毎秒投稿してほしいもんだ(読み手のワガママ -
573
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-25 12:05
ID:h3fvt/Eg
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滝の流れ落ちるすぐ傍の水辺へと、タマミツネは口を付けていた。
失った体力を少しでも取り戻すため、一心不乱に餌となる魚を探す――その場所に、魚影の1つすらも存在していないとも知らずに。「なんだか……ホントに可哀想になってきちゃったな。」
目も見えず耳も聞こえぬ泡狐竜の真横まで来てもこちらに気付く様子はまるで無かった。
どれだけ口を動かしても、流れ込んでくるのは水ばかり。 改めて注視してみれば体格も以前邂逅したタマミツネより一回りほど小さい、満足に食事も取れていないのだろう。
持たざる物、喪った者が自然の中で生きる事、それを過酷という二文字で片付けてしまうにはあまりにも痛々し過ぎる光景だった。「どうしてこんな状態で戦おうとするんだろ、そこまでして縄張りを守りたいのかな?」
「多分……違うと思う……」サクラの疑問を否定すると、武器も構えずにリィはふらりと前に出る。
「リィちゃん?!」
あまりに無防備な行動を制止しようと手を伸ばすより早く、彼女の手がタマミツネの首筋に触れた。
急な刺激に身体を跳ねさせ、餌を探ることも止め姿勢を低くして威嚇するように唸り声を上げても、ただ静かに首筋を撫で続ける。
突飛過ぎた事をするリィをすぐにでも引き剥がしたかったが、泡狐竜は徐々に唸り声を弱めていき、やがて当惑を隠せない様子ながらもゆっくりとその身を丸め動きを止める。「この子……ずっと怯えてたから……」
首筋に抱き付くような格好になっても、タマミツネは暴れようとはしなかった。
信じられない光景だったが、こちらの姿が見えず、こちらの言葉が分からないが故に、無垢な彼女が伝えようとした敵意の無さが分かったのだろう。「怯えてたって……何に? それにどうして怯えてるのに渓流に残ってたの?」
「ああ、そういうことですかー。」疑問を口にした直後、次はミーシャが納得したように声を上げる。
アイテムポーチへと手を伸ばした彼女は、本来ならばニトロダケを詰め込んでおくはずの空き瓶を――今は何か別のものが入っている瓶を――取り出し、泡狐竜へと近付く。「ずっと探してたんですねー、でも見つからなかった。 宿敵の尻尾なんかにくっ付いてたら無理もない話ですけどー。」
栓を開けて、中身を地面へと置く。 夜闇の中幽かに見ることが出来たそれの正体は、血と潤滑液がこびり付いた眼球だった。
存在しないはずの目を見開いておずおずと顔を近づける、身体から滴った真新しい潤滑液が触れた瞬間、タマミツネは痛々しげな――何処か歓喜も入り混じった複雑な声で鳴いた。
もし正常な眼をしていたのならば涙すら流していたのではないだろうか、嗚咽にも似た短い鳴き声を数度繰り返すと、自らの眼球を咥えて覚束無い足取りで歩き出す。「ミーちゃん、今のって……」
「丁度いいですし、追いかけながら話しますよー。」泡狐竜の背を追いながら、ミーシャは事の顛末を語りだした。
ネコタクで降ろされた場所がこの滝の前であり、彼女はすぐさまタマミツネが居るであろう場所を目指し東へ進んだ。
その先――よく青熊獣が蜂蜜を貪っているエリアに居たのはジンオウガ、それも『金雷公』と名付けられた二つ名持ち個体の姿。
一瞬肝を冷やしたが、相手もどう言う訳かかなりの重傷を負っており、手出しさえしなければ後背を付かれる事もないだろうと踏んだ彼女はその横を走り抜ける事に決めた。
そして気付いてしまう、その尻尾の付け根に明らかな異物が付着していること、それがタマミツネの潤滑液と血が混じってこびり付いた物だと言うことに。「予想外に時間がかかっちゃいましたよー、もし信号弾でも上がればすぐに駆けつけようとかは考えてたんですけどねー。」
「私たちも頑張ったから……」異物を剥ぎ取り月明かりに照らしてみてその異物の核が眼球だと分かった時、彼女は渓流の状況を知った。
あのジンオウガはタマミツネに何度目かの返り討ちにあったに違いない、しかしそのタマミツネも決して浅くはない傷を負っている――そして、遅まきながら駆けつけ今に至る。「結果的に殆んどタマミツネとの戦いサボったみたいになっちゃいましたねー、肝心の依頼だって……」
満月が照らす中、一行は泡狐竜が眠っていた場所まで戻ってきていた。
喪った物を漸く取り戻したタマミツネは身を丸め、泡を巻き起こすことも無く静かに眠りに付いている。「……捕獲、出来なくなっちゃいましたからねー。」
――泡狐竜の胸は、全く動かなくなっていた。
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574
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-25 12:06
ID:h3fvt/Eg
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60行フルに書き切って投稿するときは毎回文字数制限に引っかかってないかドキドキです。
読者様の中に制限を取っ払える方はいらっしゃいませんかー?!* * *
光を喪って尚戦い続けた理由は分からない。
音を失って尚生き続けた理由も分からない。
こうなる予感があったのかもしれないし、負けっぱなしはプライドが許さなかっただけかもしれない。何れにせよ、復讐劇の幕は下ろされた。
眠れぬ宵に星空の下、小さな居城を転げ回ることはもうない。
夢から覚めた現実が、それでも尚も悪夢の中であることもない。痩せた体躯、傷だらけの身体、残された命の使い方など考えるまでもない。
最後に、見えぬはずの星空を仰ぐ。
薄れ逝く意識の中、愛した渓流のあの美しい星空が、確かにもう一度見えた――そんな、気がした。
* * *
「ふぅ……」
ユクモ村へと戻る飛行船の中、今日の一部始終を報告書に纏め上げたエリクシルは小さくため息をついた。
捕獲こそ出来なかったが生態調査としては十分な情報を得られている、依頼は達成したといって差し支えないだろう。……単に捕獲して依頼を終えていたならば、これほどまでに物思いに耽ることもないのだろう。
自らの命と引き換えてまで手にしたいものを掴み取った泡狐竜は、とても安らかで満足気だった。
それに比べて、自分の体たらくといえば一体なんだと言うのか、ちょっと位遠くに行ってしまっただけで簡単に諦めかけ、店がどうだとそれらしい言い訳を並べ立てて――「……あーっ、もうっ。」
ブンブンと頭を振って思考を追い出し、やや乱暴に羽ペンを仕舞いこむと席を立つ。
今はとにかく気分を変えたかった、1人で居ると気が滅入ってしまって仕方がない。大きな足音と共に階段を駆け上がって、冷たい風の吹き付ける甲板へと飛び出す。
誰でもいい、話相手が欲しい、そんな時視界に飛び込んできたのは――* * *
1.サクラ
2.リィ
3.ミーシャ -
575
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-25 17:28
ID:ppizYosU
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3でお願いできます?(今回選び過ぎてる気がするので自分が選びたいよー言う人がいたらそっちを優先で)
出来れば原案者には出来るだけ設定を掘り下げてほしいですからね。(ミーシャちゃん古参なのに未だに謎多いですし)
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576
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-26 12:28
ID:h3fvt/Eg
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視界に飛び込んできたのは見知った白髪の彼女だった。
狩場で見る不敵な表情は何処へやら、物憂げな顔で雲と共に流れ行く星空を眺めている。「……報告書、纏め終わったんですー?」
「うん、とりあえず不備はないと思うんだけど……」
「大丈夫ですよー、リィちゃんが書くより絶対マシですからー。」――比較対象に出された相手の書いていた報告書の内容をオブラートに包んで言うならば、非常に独創的な文書だった。
彼女らしいと言えばそれまでなのだが、そのまま提出させるにはどちらにとっても忍びなく、自分が手直しを買って出たのだった。
その結果、今日の出来事をまざまざと思い返す羽目になり、悶々としながら部屋を飛び出してくる事になったわけだが……「ミーシャちゃん、今日は誘ってくれてありがとう。」
「急にどうしたんですー?」
「あのタマミツネの姿見てたら、私はずっと逃げてたんだなって……そう思っちゃって。」強くなるモンスターを恐れて、狩場から逃げていた。
想いが届かないことを恐れて、答えから逃げていた。
逃げて逃げて、逃げ続けて――もう少しで、本当に何もかも失くしてしまうところだった。「温泉で約束したもんね、どっちが先でも恨みっこなしって!」
今はもう彼女に敵わないとは思わない。 信頼している、あの日そう言ってくれたのは他ならぬ彼自身なのだから。
一歩踏み出す『勇気』――それを手に入れるのがほんの少し遅かった、それだけの話。「……逃げてるのは、私も一緒なんですよねー。」
決意の固まった自分とは対照的に、ミーシャはしおらしげに溜息を漏らす。
不意にごそごそとアイテムポーチを漁り始めると、皺になりやや草臥れた封筒を取り出して視線を落とす。「行かなきゃいけない場所があるんですよねー、行かないと、私自身の抱えてるものが解決しなくてー……でも、もしかしたら立ち直れない位に打ちのめされるかもしれなくてー。」
封筒を握る手に力が篭る、無意識のうちにこうして何度も握り潰してしまい、これほど草臥れてしまったのだろう。
「いっそここで投げ捨てちゃおうかとか思ってたんですよー……でも、エリクシルさんがそうやって覚悟決めたなら、私も覚悟決めないとズルいじゃないですかー。」
「……付き合うよ、私も。 いつも背中を押してくれてるんだから、今度は私が助けないと。」戸惑いに曇る瞳には、対照的なまでに真っ直ぐな眼をした自分の姿が映りこんでいた。
彼女は鏡だ、ほんの少し前までの自分を映す鏡だった。 その曇りを取り除けるのは、きっと自分しか居ない。「……それじゃ、その時が来たら付き合って貰いますよー。」
視線を外した彼女が空を仰ぐ、釣られて同じ方向を見ると、星々の間を一羽の鷹が悠然と飛んでいくのが見えた。
「きっと禄でもない、自分のルーツ探しに――」
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577
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-26 12:29
ID:h3fvt/Eg
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泡狐竜を狩猟して数日、リィから教えて貰ったレシピで作成した防具――プライベートXシリーズに身を包んだエリクシルは調合作業に精を出していた。
逃げはしないと誓った手前ではあるが、開業したこのアトリエも疎かにして良い訳ではない、唐突な休業をしてしまった為スケジュールも少々押しているのだ。
それでも、今日さえ乗り切れば忙しさも峠を越える。 受け付ける注文の量を幾分か減らした効果がやっと現れ始めるのだ。「……意外と動きやすいなぁ、これ。」
ゆったりとした見た目とは裏腹に、それなりに激しい動きをしても作業性を損なわない柔軟さを併せ持っていた。
あの受付嬢達が着ている服がデザインなのだから、考えてみれば当然ではあるのだが――そんな事を思っていると、アトリエのドアが開かれる音がする。「いらっしゃいま――しぇっ?!」
唐突に訪れた『彼』の姿を見た瞬間、盛大に言葉を噛んでしまう。
今の自分の姿を始めてみたであろう彼もまた、予想外の格好をした自分に目を見開いていた。「きゅ、急にどうしましたっ?! 調合の依頼でしゅか?!」
挙動不審にながらも対応する姿を見て苦笑いを浮かべながら、最近アトリエに篭りきりだから様子を見に来たと、ミーシャと同じ理由を答える。
――今回に限っては彼女の差し金という訳でもなさそうだ、純粋に心配してくれたのだと思うと口元が綻んで来る。「大丈夫ですよ、少しは狩猟にも出てますし、ちょっとアトリエが忙しかっただけで。」
そうか、と、少しぶっきらぼうな返事をすると、店内に視線を彷徨わせる。
何かしら動揺している時の彼の癖だ、十中八九この格好が原因なのだろう。「あのっ!」
別れの挨拶と共に早々と踵を返そうとした彼を呼び止めて、胸の高鳴りを抑え込んで真っ直ぐに見つめる。
「私、絶対追いつきますから! 隣で一緒に戦えるように頑張りますから! ……だから、また一緒に狩りに行きましょうね!」
飛び切りの笑顔と共にそう宣言する、照れたように俯いて頭を掻いた後、顔を上げた彼もまた晴れやかな顔で短く「ああ。」と返すのだった。
* * *
飛行酒場の一角、清涼感のある色使いのドレスに身を包んだ女性――酒場のマスターは届けられた5枚の報告書に目を通し、静かに息をついた。
古代森に現れた自在に姿を消す夜鳥、以前遺群嶺でも報告の上がった鎌蟹、森丘に降り立った真っ青な電竜、山そのものが動きだしたかのような巨獣、視力を失くした泡狐竜――
砂漠で遂に姿を見せたあのディアブロスに呼応するかのように現れた特殊個体の数々――否、これは最早彼らは個として存在を確立している。「厄介なことになるわね……」
暫し思考を巡らせた後、手に取った羽ペンを走らせて報告書に文字を書き足していく。
朧隠、鎧裂、青電主、銀嶺、天眼、と――。
この数日後、生態調査の報酬として改めてエリクシルの元に二つ名を与えられたタマミツネの素材と狩猟の証が届くのだが、今の彼女はそれを知る由もなかった。
~シナリオ47.5:錬金術士とコーディネート~ CLEAR!!
GET:タマミツネのG級素材及び、天眼タマミツネの素材
GET:ジンオウガのG級素材及び、金雷公のG級素材
GET:一歩踏み出す勇気(エリクシルにブレイヴスタイルが解禁されました)
GET:防具色々(エリクシルの装備にバルクシリーズ、プライベートXシリーズ、天眼シリーズが追加) -
578
名前:錬金術士とコーディネート@兎
投稿日:2018-10-26 12:30
ID:h3fvt/Eg
[編集]
後書き
特殊エンド一直線だったのは大体暇氏のせいです、オ・ノーレ!
いまいち筆の乗り切らない中での執筆だったので普段よりクオリティ低めかとは思いますがお付き合い下さりありがとうございました、今回も色々書き殴らせて貰います。・最初の選択肢
何処の加工屋に持ち込んだかによって同行メンバーと教えて貰えるレシピが変わります、レシピに関しては3DS下画面の表示位置をクロスさせそれぞれ受付嬢系列のレシピが貰えます。
龍識船、龍歴院、集会酒場が選ばれた場合のみ表示位置から半時計周りに1つずれた場所のものが対応になります。
メンバー対応はユクモ:リィ ポッケ:ニコラス ココット:アマネ ベルナ:ランドラット 龍識船:エドワード 龍歴院:アンキセス 集会酒場:アリーチェ となっていました。・会話イベント
各組み合わせ毎に色々考えていましたがミー×リィは4G繋がりの会話へと発展します。
話している内容は卵運搬し続けた結果戦えるようになるアイツです、一体何バルカンなんだ……?
兎の脳内では生まれた直後とか逆に死ぬ一歩手前だったとかで弱った個体という勝手な設定。 あんなにあっさりと倒せるミラ系統も他に居ませんよね。・シナリオ本筋とエンディング分岐
目、眼、瞳、微妙なニュアンスの違いを感じ取って貰えれば幸いです、天眼(正確にはその特殊個体ですが)と戦う以上書き分けは頑張りました。
エンディングはクエスト失敗エンド(調査も禄にせず倒してしまう)、調査成功エンド(調査はしたが倒してしまう)、捕獲エンド(捕獲に成功)、特殊エンドとなっています。
特殊エンドの条件は以下の通りです。 誰がキーとなる選択肢を選んだかも合わせてどうぞ。
・タマミツネの顔の傷を発見する(暇氏)
・リィが聴力を失っていることに気付く(>>562さん)
・ミーシャが金雷公を狩猟するまで耐える(暇氏から始まり皆さんの連携プレー)
・タマミツネの食事シーンを見る(暇氏)ほ ぼ 暇 氏 !
・タマミツネの独白(>>574の上半分)
Sound Horizonより『見えざる腕』の歌詞を引用しております。
今回のタマミツネ戦を執筆するにあたり色々と参考にした曲でもあります、興味があればご視聴を!(ダイマ)・最後の会話
今回の複線を回収するならば『鬼ガ狩ル鬼蛙』以来となるミーシャ回、そしてミーシャちゃんの根幹にも関わるシナリオになるかと思います。
とは言っても構成が出来ているのはエンディング部分だけです、予定は未定、どうぞご了承下さい。最後に特殊個体情報を載せてお別れです、お疲れ様でしたー。
特殊個体:無明無音タマミツネ
仇敵ジンオウガとの戦いの末、視力だけでなく聴力も失った天眼タマミツネの特殊個体。
潤滑液や泡を用いた索敵方法により依存しており、近付く者には容赦ない攻撃を加える。 反面強力な衝撃等で一気に泡が弾け飛ぶと周りの状況が掴めなくなりパニックに陥る。
その生態ゆえに食事も儘ならず残された命も風前の灯だったが、金雷公の尾に付着した自らの眼球の存在に薄々気付いており、それを取り戻すべく熾烈な戦いを続けていた。
何の因果かエリクシル達との邂逅を機に奪われた眼を取り戻し、渓流で安らかに眠りにつく。 -
579
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-26 15:46
ID:ppizYosU
[編集]
兎氏お疲れ様でしたぁ。
天眼さんもお疲れ様でしたぁ。弱っていたとはいえ初登場の癖に大した見せ場もなくミーシャちゃんにボコられてナレ死した金ワンワンオは恥ずかしく無いの?
いつか活躍できる日を期待(なお他の二つ名に枠を奪われて無理な模様)。そして産まれちゃってるミラナントカさんは果たして今後出演することがあるのか!?……ていうかエリクシルたんボレアスの方は名前知ってるはずだよね。
「仮にそんな存在の脅威にさらされたとして、その時私は…」
「私たちは、かつてのココットの英雄のように諦めずに戦うことが出来るのでしょうか…」まあバルカンやラース呼びならわからんかもだけど。
そして暇氏の暴れっぷりに笑うしかないw最大の敵はモンスターではなく創世神だったかww
>>580名乗りを上げるわけじゃないけど暇氏の後に一発描こうかなとプロット製作中。あれ?でもそういえば今回のシナリオと被りがあるならもしかして自分とも被る可能性が微レ存?(これ自体原案は結構前のもの)
下手すると三回連続でW二つ名ってことですかい(先にゲロってしまう意思の弱さ)
まあゲームでも特殊許可G4G5はW二つ名ラッシュだし別にええやろ(人間の屑)まあコッチの事情なんで暇氏は気にせず久々のシナリオ執筆頑張ってください。
>>581
マジか取り敢えずたけのこの里買ってくる -
580
名前:暇
投稿日:2018-10-26 17:46
ID:GoDFsxZ2
[編集]
シナリオ47.5お疲れ様でした
多くの無茶ぶりに対応してくれて感謝します
安牌な選択肢が罠な気がしてひねくれてみたけど今回はそれで正解だった…のか?
なんなら先に釣り場の魚を乱獲して餌を奪いつくしてから起こすとかも考えてたけど、そっちやってたら完全な無駄行動だったのだろうか(発想が屑)
あ、あと弓使いなら多分眼良いだろ(適当)みたいなノリで勝手に後付けしたミーシャ視力◎設定を未だに大事にしてくれてそれも感謝シナリオ48進行しようと思ってたけど47.5と絶妙にネタ被りしてんだよなーこれなー
…ま、いっか(屑)
あでも明日あたりまで誰か名乗りを上げる方が居たらお譲りします -
581
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-26 22:19
ID:8fvGIxBg
[編集]
この内容でクオリティ低めとかプロか(誉め言葉
色々吹っ切った感じのエリたんもええなぁ、兎ニキが書くキャラ、皆活き活きしてて好きやわーおすすめされた曲とミーシャちゃんのテーマソング聞いてきたけど紅蓮の弓矢の人なのね
歌詞がいちいち素敵やし韻の踏みかたも凄いし、これが好きな兎ニキが文章力凄いの納得
Sound Horizon聞きまくってタケノコの里食べまくれば皆文章力上がる可能性が微レ存・・・?! -
582
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-27 20:49
ID:GoDFsxZ2
[編集]
じゃあ立候補が無いならそろそろ始めます
※このシナリオの注意
・世界観について独自の解釈と若干のファンタジー要素が含まれています。
本シナリオに限った解釈ですので後のシナリオに差し障りがあれば無視して下さって構いません。
・見切り発車
・調整不足
・描写不足
・誤字脱字
・失踪
他にも色々あるかと思いますがお気づきの際はその都度ご指摘ください。
以下本文彼らは、悪夢のただなかに居た。
周囲はおびただし程に赤黒く染まり、その中心には元は生きたハンターだったであろう“モノ”が横たわっている。
それから幾人かの“まだ”生きているハンターと、白い毛の所々が血と肉で赤黒く汚れた悪魔のような「白疾風」。
モノはまだ生きているハンター達の仲間だったのだろう。
ハンター達は動かなくなった仲間だったモノを目にして恐慌状態に陥りながらも辛うじて武器を構えている。その様子を、俺はどこか離れた所からボンヤリと眺めていた。
ふと気が付く。
まだ生きているハンター達の顔と名前を俺は知っている。
アリネア、ルトリエ姉…。
そうだ、俺は彼女達を助けるために渓流に来たんだった。
そこで白疾風ナルガクルガに襲われて、それから…どうなった?一歩、悪夢の中心へ踏み出す。
確か俺はアリネア、ルトリエ姉の三人で行動していたはずだ。
そしてアリネア、ルトリエ姉はまだ生きている。
ではあのハンターだったモノは、 誰 だ ?一歩、もう一歩と足を進める度、周囲の色が赤黒さを増す。
粘つく液体のフィルターに阻まれるように風と水の音が遠ざかる。
心臓が早鐘を打つ音だけが大きくなって聴覚に届く。モノに手をかけ
(よせ)
力をこめる
(やめろ)
そしてモノをひっくり返して顔を確かめると(だからいったのに)
悪夢の中心に転がっていたモノは 俺 だった。
-
583
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-27 21:01
ID:GoDFsxZ2
[編集]
~龍歴院・広場~
「…なた。おいあなた!聴いているのか!?」
強い呼び掛けの声でハッと目が覚めた。
状況が掴めずに周囲を見渡すと、目の前にはギルドマネージャーとクルトアイズの二人組。
それから自らの手には鏡の様に磨かれた盾があった。「全く…お前に直々に使いを頼もうと説明している最中に立ったまま居眠りとは良い度胸だ」
「まあ、今回はこちらが急に呼び出した形になる訳だから多少は目を瞑るが、あまり気が緩んでいると今に死ぬ目に…」
クルトアイズが信じられんといった面持で切々と説教をたれるのを聞き流しながら、まだどこかボンヤリした頭で考える。そうだ、俺は急用とかでギルドマネージャーとクルトアイズの二人に呼び出されたのだ。
で、説明の最中に寝ていたらしい…。ではさっきまでの光景は何だったのか。
ペタペタと自身の身体を触ってみる。どこにもケガはない。
するとさっきまでの悪夢は文字通り、全部…夢?
そう実感するとボーっとした頭にも冷たく痺れた指先にも急速に血の気が戻って行き…ホッ…と大きく一つ安堵の息を付いてから、改めて目の前の二人の説明に耳を傾けることにした。「まあ、使いと言っても大したことは無い。ただおばばの為にドンドルマの街である物を手に入れてきて欲しいのだ」
「そのある物というのがその…まあ少々厄介な物で、な」
珍しくクルトアイズが言いよどむ。
そこで俺の脳裏に一つの予感が走った。また碌でも目に遭う、と。
そもそもこの二人から言い渡されたクエストが今まで普通のクエストだったことがあるか?…関わらない方が良い。
自身の予感に従い、忙しいから…と適当な言い訳を付いてから踵を返しかけた所で今度はギルドマネージャーから言葉が掛かった。
「まぁまぁ、そう急くでないよお若いの」
「オヌシは観光感覚でドンドルマの街を廻って、そのついでにお土産を買ってきてほしいのじゃ」
「う、うむ。その通り。今なら経費として10万z支給しよう」
10万。
…意外と悪くない条件かも知れない。
いや、遊びにいって10万貰えるってコレ破格だろ!?
当てにならん自身の予感なんぞかなぐり捨てるべきだ!
そんな思考の末、目先の金に釣られて二つ返事で使いを受ける旨を伝えると、二人は心底ほっとした顔をして「行動」にかかった。「助かったよお若いの。じゃ早速出発しておくれ」
え、今から!?
「今回の任務は極秘裏に完遂されねばならない。お前は観光客を装うためレザーX一式装備で行ってもらう」
は、極秘裏!?
「それから念の為、今お前が手に持っている剣と盾…祀導器【不門外】を持って行け。近い死の未来を予見すると言う伝説がある」
念の為って何の…?ていうか死の未来って何!?
「ああ、それからお土産だけどね…世界三大宝玉とうたわれる大宝石「宝玉眼」が良いねぇ。じゃ頼んだよ!」
お土産、重!!!やんややんやと怒涛の押し問答のどさくさに紛れ、装備を変えられ金を押し付けられ…良く分からんままドンドルマ行きの飛行船に押し込まれる。
そうして俺の意志を無視して空へ浮き立つ飛行船へ向かってクルトアイズが最後の一言を言い放つ。
「悪いが緊急事態なんだ!宝玉眼を確保するまで帰ってくるなーーー!」覚えてろー!
宝玉眼…そんな聞いた事のないアイテムの為に知らない街を駆けまわる羽目になった哀れな俺に出来る事は、眼下で俺を見送る二人に対して小物丸出しの捨て台詞を吐くくらいであった。
-
584
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-27 21:06
ID:GoDFsxZ2
[編集]
~龍歴院・あなたが旅立った後~
「おばばよ、流石に今回は強引すぎて心苦しいのですが…」
あなたを乗せた飛行船が見えなくなったのを確認してから、クルトアイズがポツリとこぼす。
ギルドマネージャーもどういう意図を含んでか、一つため息を吐くと答えた。
「仕方あるまい、クルトアイズや。事が急な上に、こんな仕事を任せられそうな連中が皆出払っておる」
「ライカやイオンはともかく、ミーシャまで二つ名の調査に出かけておるとは思わなんだ」
「ともなれば龍歴院が今すぐ動かせる駒と言えばあのお若いのしか残っておるまい」
「確かに…。宝玉眼…かの災厄の宝石があのお方の手に渡る事だけは、阻止せねばなりませんからね」
「そして後の火種にならぬよう、その阻止に龍歴院が関わった事を気取られてもイカン、と…ふむ」言葉を交わし終えた二人が依頼書の山(正確には依頼要項を満たしていない依頼書未満の書類の山)を探る。
~砦の代わりに巨龍のチャージに耐えるだけの簡単なお仕事!報酬100万z!~(※死亡時は支払われませんと小さく書いてある)
~詳細は現地にて。口が堅く対人戦に長けたアサシn…ハンター求む~(どう考えてもヤバい仕事だ)そんなクエストの体すら成していない棄却された依頼書の中から一枚の依頼書を取り出し、眺めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
依頼主:わがまま第三王女
今度、姉上と宝石のコレクションの見せ合いっこで勝負するのじゃ!
わらわとて乙女の端くれ。姉上に負ける訳には行かぬ!
この世で最も珍しい三大宝石の一つ、「宝玉眼」が今ドンドルマの市場に流れておると噂に聞いたぞ。
さあ龍歴院のハンター達よ、わらわの為に取って参れ!
え、ダメ?
フン!それならばハンターズギルドのハンターを使うまでじゃ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~そして、頭痛に耐えるように頭を抑えながら二人は叫ぶのだ。
「「このお方にだけは宝玉眼をお渡しするわけにはイカン!!」」シナリオ48~宝玉眼~
成功条件:「宝玉眼」の確保。
失敗条件:「宝玉眼」を他勢力に確保される。
やる気をなくして死ぬ。 -
585
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-27 21:10
ID:GoDFsxZ2
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※このシナリオの特殊ルール
このシナリオではドンドルマの街のどこかにある世界三大宝玉が一つ「宝玉眼」を求めて探索します。
ドンドルマの各所を巡れば情報が集まっていきますが、その度に時間が経過します。
一定時間の経過で「宝玉眼」はその所在を移す他、行動次第ではあなた以外の宝玉眼を求める者の手に渡る事もあるかも知れません。
行動に迷った時は、今回あなたが装備している「祀導器」の盾に映し出される直近の未来(大抵は死や災難)を追えば何かしらイベントが起こるでしょう。(ただし良い効果とは限りません)
あとやる気が無くなると帰ります。お金が無くなるとお買い物が出来ません。~ドンドルマの街・入口~
結局流されるまま、ドンドルマの街まで来てしまった。
まあ来てしまったからにはしょうがない。
幸い金はたっぷりと貰えたし、サッサとその宝玉眼?とやらを買って帰るとしよう。想い新たにドンドルマの門へと一歩を踏み出と観光パンフレットが立てかけられている事に気が付いた。
手に取り、中を開いてみる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コンガでも分かる
必見!
ドンドル☆マップ!
□□□□🙆□□□□
□□□□□□□💥♪
👮□□□□□□□□
🎪🍚□□□□□□□
□□□□□□🏠🏠□
■🐟🐈□□□□□□
■■🏥□💃□□□□💃:この街の「入り口」。ドンドルマの街が君を待っている!
🏥:かつてギルドを騒がせた狂竜症の「研究所」。貴重な薬も売っている。
🐟:この街の「川」では魚釣りが出来るぞ。珍しい魚がいっぱいだ!
🐈:たまに魚を狙ってネコや暇なハンターがたむろしているよ。
🏠:この街の「露店通り」だよ。色んなお店を見て回ろう。
🎪:旅のキャラバンが良く来るぞ。珍しい品を交易してるかも?
🍚:旅のキャラバンの食事場だ。一般開放もされてるぞ!
👮:ここは対モンスター用区画「戦闘街」!目玉スポットは巨龍砲だ!
♪:ご休憩ならアリーナの「劇場」へ。歌姫の声にゆっくり癒されよう。
💥:こっちはアリーナの「闘技場」だ!熱い声援の中、ハンターとモンスターが腕を競うぞ!
🙆:この街の中心、大長老様のいる「大老殿」だ!この先は君の目で確かめてくれ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
…なんか一昔前の攻略本のようなノリの観光パンフだな。
ともかく土地勘もないし、分からなかったらこのパンフレットに従って移動して聞き込みでもすれば良いだろう。改めて門から一歩を踏み出す。
場所柄か大型モンスターの襲撃を受けやすく、何度破壊されてもより強くなって再建される不屈の狩猟街「ドンドルマ」。
そんな狩人達の為の街で今、未知のアイテムを追う観光…もとい冒険が始まろうとしていた。
ふと手にした盾を見やると、その磨かれた鏡面に今にも崩れそうな商品の山が写ってるのが見えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あなたの状態
武器:祀導器【不門外】 防具:レザーX一式
やる気:100 お金:10万
道具
なし
スキル
神の気まぐれ、採取+1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
選択:とりあえず最初は近場から回るか?(移動距離に応じた時間が経過します)経過時間:0
1、狂竜症研究所
2、釣りが出来る川
3、露店通り
4、その他(お好きな場所や人物の元へ。地図にない物でもある程度は可) -
586
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-27 21:16
ID:GoDFsxZ2
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あ、地図には環境依存の絵文字を使っていますので正常に表示されないばあいはご指摘いただければ直した物を用意します。(行数オーバーで仕方なくこの一行を分割)
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587
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-27 23:21
ID:ppizYosU
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おおう、これはいつもとはかなり雰囲気が違う気がするぜ……。
いくら暇氏とはいえ最初はチュートリアルだと信じたいのでここは無難に3を選択させていただきます(信じるだけ無駄な模様)
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588
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-28 18:36
ID:GoDFsxZ2
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うふふ、どう思うかね?
~ドンドルマ・露店通り~
一瞬盾に写り込んだ荷物の山が気になったからと言う訳では無いが、やはり物探しなら店を覗いて廻るのが一番だろう。
そんな考えの元、整備された石畳の上を少し歩いてやって来たのはここ、露店通り。
谷合いの狩猟街だけあって行きかう人々も重厚な鎧に身を包んだ狩人が多く、店の内容もハンター向けの武器屋や道具屋などが目立つ。
G級規格とはいえどレザー一式なんて貧弱な格好でうろついてるハンターなど俺くらいのものである。
しかし、中には食べ物の屋台やお土産屋さんなども見られ、丁度目の前のお土産屋さんの中には宝石類を扱っている店もあるようだ。
目的のブツである「宝玉眼」とやらがどんな物なのか見当もつかないが、とりあえず名前からして宝石であることは間違いないだろう。
「宝玉眼」を扱っていれば良し、そうでなくとも話しだけでも聞く価値はあるだろうと店に声を掛けると、今にも崩れそうな程に高く積まれた鉱石入りの箱の影から店の主人が顔を出した。「はいよ、いらっしゃい!お客さんはどんな石をお求めだい?」
「お客さん、なんだか万年金欠の癖にあぶく銭が転がり込んできたお上りさんハンターって顔してるね」
正にその通りだが余計なお世話である。
「そんなお客さんにはコレがピッタリだ!ラティオ活火山…旧火山って言った方が馴染みがあるかな?」
「そこで採れたクズい…上質な宝石の内、ドンドルマが認可した品質の物が名乗れる…その名もドンドルマリン!」
「青く透き通ってて綺麗だろう?気になるお相手へのプレゼント用にでもどうだい?」
今この店の主人クズ石って言いかけたぞ…。
だがそのものズバリ、商人が手に取るドンドルマリンとやらは内部に亀裂が生じており、お世辞にも品質が高いとは言えそうにない。
しかしその亀裂は見ようによっては「眼」のようにも見える…。これはある意味「宝玉眼」と言えるのではないだろうか。我が推理ながら中々冴えている気がする。
念のために店の主人にこれは宝玉眼か?と聞いてみると、店の主人は呆れた顔をして答えを返してきた。「お客さん…そんな幻の宝石がこんなお土産屋なんかにある訳ないだろ?」
違ったらしい。
「知らないなら教えてやるけどね、宝玉眼ってのは混じり気の無い最高級のライトクリスタル…ピュアクリスタルって言えば分かるか?それの事だ」
「しかも、ただのピュアクリスタルじゃあない。ピュアクリスタルでありながら中心に瞳のような縦縞が入っている物が特別にそう呼ばれるのさ!」
そう得意げに店の主人は語る。
クズ石売りなりに宝石には詳しいとみえるが、そうなると矛盾も出て来る。
つまりは、混じり気のない水晶に瞳の模様が入った…それって混じり気あるじゃん!ピュアじゃないじゃん!という矛盾だ。
「だからこそ幻なんだ!今まで宝玉眼では無いか?と目されて来た宝石もいざ鑑定すると大抵はピュアクリスタルのなり損ないだった」
「本物の宝玉眼ってのはな、まるで本当に“何か生物の眼だったかのように”自然で綺麗な瞳模様が入るらしい」
「ま、ツチノコみてぇなもんだな!宝石商の間じゃ関わるだけ無駄って意味で、“災厄の宝石”呼ばわりされてるぜ」…なるほど。
どうやら宝玉眼とか言う宝石は思った以上に厄介なブツらしい。
そんな実在するかどうかも怪しい宝石を確保してくるまで帰って来るなとは、ギルドマネージャーもクルトアイズもどういうつもりだろうか?
ま、金はいっぱい貰ってるから別にいいけど。そんな物思いに耽る事しばし。
「おおっと、申し訳ございません。ですニャ」
「お、お客さん!危ねぇ!」アイルーがわざとらしく謝る声と店の主人の切迫した叫び。
そして何かが崩れる音が響いた。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
盾が予見した死の運命があなたを襲う!
うずたかく積まれた宝石入りの木箱が崩れて来た!
あなたに5d3(5個の3面ダイスを振った値)のやる気ダメージ!
5D3=3+1+3+2+1=10!
あなたの残りやる気:90
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― -
589
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-28 18:37
ID:GoDFsxZ2
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店の主人の声にとっさに振り向くと、そこには今まさにこちらに崩れ掛かって来る木箱の山があった。
もはや支える事も避ける事も無駄であろう。
俺はただとっさに足を踏ん張り、襲い来る木箱の波に絶える他無かった。
・
・
・
1秒か3秒か5秒か…ともかく耐える方からしたら決して短くはない時間の後、店の主人がハッと声を上げた。「コラー!このイタズラ猫が!ああ、お客さんすまねぇ、俺が荷を整理しなかったばっかりに…」
店の主人が申し訳なさそうに俺を気遣っている。
確かに災難には違いないが店の主人だけが悪い訳じゃあない。
ここは一つ寛大な心で許してやる代わりに、一つ情報を求めるてみる事にした。即ち、この街で仮に本物の宝玉眼があるとしたらどこか、と。
「え、えぇ…。やっぱりこの街に良く来るキャラバンの交易商の旦那の所かなぁ。この大量のクズい…宝石だってあの旦那から買い付けたんだ」
「それから…そうだ!大老殿の大長老様ならなにか知っていてもおかしくないと思うぜ!なんたってあの人、メチャクチャ長生きだしな」
「それから…あーほれ。ここにもあるじゃねぇか、眼の様に見えなくもないヒビの入ったクズい…宝石がさ。お詫びに安くしとくぜ?」この期に及んでまだヒビ入りのクズ宝石を売りつけようとは商魂たくましい主人である。
だが有力な情報も得られた。
宝玉眼を扱っているかもしれないキャラバンの交易商。そして宝玉眼に付いて詳しく知っているかも知れない大長老。
特に目的が無いのなら次は彼らの内のどちらかに会いに行ってみるのもいいかもしれない。
なんなら出発前にお買い物でもして行こうか?俺は10万という大金の入った財布の紐を緩めながら、これからの行動を思案する。
何となく視界に入った盾の鏡面には、旅のキャラバンの飯屋台とそこで幸せそうな顔で倒れている人間が一瞬だけ写った気がした。選択:何かお土産でも買って行こうか?(なにか買った場合は一律でお金が1万z減ります)
1、ドンドルマリン1箱(ヒビ入り)
2、木刀【ドンドルマ湖】
3、閃光玉3個
4、秘薬1個
5、その他(お好きなアイテムやフレーバー要素など)
6、なにも買わない!選択:ここからどこへ向かおうか?(時間が経過します)現在の経過時間:1
a、旅のキャラバン
b、大老殿
c、釣りの出来る川
d、アリーナ
e、その他(お好きな場所や人物の元へ。地図にない物でもある程度は可)※選択:何かお土産でも買って行こうか?と 選択:ここからどこへ向かおうか?の両方を選択して下さい。
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590
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-29 00:22
ID:LBemxso6
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どうも、酔払いです。
まず6で無駄金はつかわない、(木刀は欲しいが)cに行こう。アイルーと戯れながら暇なハンターから情報が得られれば、近いし。
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591
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-29 04:50
ID:GoDFsxZ2
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おおっと、面白い選択をしますな。このルートだとあれがここにあってこれもここに居るから…って最短ルートやんけ!
酒の力こわっ!落ち着け…まだそうと決まった訳じゃない…(震え)はやければお昼頃にこのレスを編集して続きを上げます
やっぱり時間には勝てなかったよ…よ、夜までには必ず…
すいませんこのレスを編集してとか言っておいて普通に新しく投稿しちゃいました。ゆるして❤
>>592
/ ̄ ̄\←ギルドナイト
/ _ノ \
| ( ●)(●)<おっと、その名を言うんじゃない
. | (__人__)____
| ` ⌒/ \
. | /( ○) (○)\
. ヽ / ⌒(n_人__)⌒ \
ヽ |、 ( ヨ |
/ `ー─- 厂 /
| 、 _ __,,/, \ ドス
| /  ̄ i;;三三ラ´ |
| | | ・i;j: | | -
592
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-29 13:14
ID:Xs3i7M5k
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いや宝玉眼って.……モンハン世界的には一番あかんやつやんけ……
願わくば偽物であって欲しいところ -
593
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-29 16:31
ID:6U.LffL6
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ところで、今更だけど近い死(災厄)の未来を予測する祀導器【不門外】を持っている時に冒頭の悪夢を見たってことは、とても不吉な予感がビンビンするんだが……
よーし誰か己が死の未来を乗り越えるシナリオを用意しろ。(他力本願&無茶振りという屑)>>592だ、大丈夫さ、天と地を埋め尽くすデンセツとはきっと関係無いハズ……だよね?うん。
ピュアクリスタルなら光に反応するから閃光玉を持っててもアリだった可能性?(無いです)>>594()の中が既に不吉なんだよなぁ
というかデンセツの前座って……ペラッ(大辞典)
「位置的な関係で古龍やシェンガオレンの襲撃に遭い易く、場合によっては浮岳龍ヤマツカミすらも接近する。」
あ、ふーん(察し) -
594
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-29 20:44
ID:GoDFsxZ2
[編集]
>>593
ここまでやっといて関係ないはずないだろ!いい加減にしろ!(避けられぬ死)
シナリオボスはちょこっと片鱗があるだけで本体ではないしここまで有利ルート通ってるから大丈夫だって安心しろよ~(宿命の戦い)
以下続き財布を握りしめながらキョロキョロとお上りさん丸出しで露店を見渡していると非常に魅惑的で抗いがたい物が視界に入った。
そう…男の子にとってお土産といえば永遠の定番とも言えるマストアイテム、 木 刀 !!!!
ご当地特有の銘が入ったその美しい曲線を描く棒っきれは、いつだって忘れちまった少年の心を刺激し、握れば勇気が湧いてくる。
まさかこのドンドルマにもそんな小粋なお土産が置いてあったとは…。
感動に浸り、財布を開きかけながら気になるお値段を見てみると…なんと1万z。
ハンターナイフすら1000zもしないのに高すぎる!
しかも入ってる銘は【ドンドルマ湖】。そんな湖ねえだろ!
木刀にかける情熱以上にボッタクリなのでは?という警戒心が膨れ上がる。…仕方ない、今日のところは諦めよう。
俺としても後ろ髪が引かれる思いではあったが、強い意志を持って財布の紐を締め直し、我が胸の内の少年の心を慰めるために川へ向かったのであった…。無駄遣い、ダメ!
~ドンドルマ・川沿い~
と言う訳で次にやってきたのは街の喧騒から少し離れ、穏やかにこの街の外れを流れる川。
パンフレットによればこの川では釣りができ、アイルーや暇なハンターがダラダラしてる事もあるらしい。
まあ、日夜めぐるましく狩人が行きかうこの街で、そんな暇を持て余しているダメ人間がそうそう居る訳が…「はあ~ぁ、釣れねっすねぇ~」
「手掛かりも見つからないし、このままじゃリーダーに会わす顔がねっすよ…」…居た。
オレンジ色の髪をパイナップルみたいな形に刈り込んで、ハンター一式の防具を着た如何にもチャラそうな男が一人、釣り糸を垂れている。
独り言から察するに彼も何かを探しているらしいが、どうやら芳しくないらしい。
奇妙な親近感を覚えて声を掛けるとパイナップル頭は渋い顔をしながらも対応してくれた。「何?アンタ。ジブン、今忙しいんっすけど…」
いやめっちゃ暇そうだが。
「実はさぁ…ジブン、今リーダーと一緒にこの街である物を探してるんすけどこれがさっぱり手がかりが掴めなくて」
「キャラバンの受付やってる子ならモンスターに詳しいから何か知ってるかと思ったんだけどさ、あの子基本ブラキディオスの話ししかしないから…」
「あ!でもジブン、あの子カワイイと思うんすよ。いつも口説いてみるんだけど振り向いてもらえなくてさ、でもそこがまた良いっていうか…へへへ」
「ジブンももっとブラキディオス見たいにハジケた髪型にすれば良かったかな~。今度カリスマ美容ネコさんにもで頼もうかな」
…すごい一方的に話されまくった。
何だコイツ、やっぱり暇なんじゃないか?
しかも目の前のチャラそうな男は話している内に機嫌が良くなってきたらしく、さらに口を開く。
「え~と…で、何の話しだったっけ?あ、そうだ!ジブンが『宝玉眼』を探してるって話なんすけど…」
宝玉眼。
その単語を出した途端、男はしまった!と顔を歪めて口をつぐむ。
そして一瞬気まずそうに周囲を見渡した後で、こちらにコッソリ耳打ちしてきた。
「…今の、聞かなかった事にしてくれねっすか?アンタみたいなレザー一式の一般人には分かんないと思うっすけど、一応内緒の任務なんすよ」自分だってハンター一式の癖に…。いや、それよりも…。
目の前の男も俺…というか龍歴院と同じく宝玉眼を探しているようだ。
…つまりライバルと言う訳だ。
だが目の前の男はまだその事実に気付いていない。
排除するなら今しかない無いが…しかしどうやって?いっそ協力し合うべきか?
これからの身の振り方について思案を巡らせていると、不意に後ろから聞き覚えのある言葉が飛んできた。「おおっと、申し訳ございません。ですニャ」
-
595
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-29 20:49
ID:GoDFsxZ2
[編集]
反射的に身を躱す!
ドン!と身体がぶつかる音。次いで激しい着水音。
さっきまで隣でペラペラと話していたチャラそうな男は川に落ち…
「あ~~~~!ジブンまだ任務が残ってるっす~…ルッス~ルッス~…」
ライバル退場。
あっけない幕切れであった。底は浅そうだから死にはしないだろう。
男の無事を軽く祈ってやってから背後を振り返ると、そこには青い厚手の生地のマントと帽子を身に着け魚の形の鉱石を研いだ剣を背負ったメラルーが一匹、悪びれもせずに立っていた。「おや?」
「おやおや、これはこれは」
「よもや一人しか仕留められぬとは、流石に同じ手に二度も引っかかりはしませんでしたなぁ。ですニャ」
どこか芝居掛かったわざとらしいセリフ。とぼけた態度に隠しながらもこちらに向けられた悪意。
状況からして先ほどの土産屋で木箱を崩して来たのもコイツの仕業だろう。
恐らくはこのメラルーも宝玉眼を狙っている。
しかもやり口からしてライバルなんて生易しい物ではない。
…敵だ。
メラルーはこちらの警戒を意に介さずに語りを続ける。
「申し遅れました。ワタクシ、いずれ猫の魔王の称号とともに人の世に混沌をもたらす為に日々頑張っているしがないメラルー」
「名を『ぎゅすた~ぶ』と申します。」
ぎゅすた~ぶと名乗ったメラルーは恭しくお辞儀をし、こちらを値踏みするように眺めながら饒舌に続けた。
「かの災厄の宝玉は、凡愚なる人の手には余る呪いの至宝。ワタクシは既にその所在を掴み、後は手に入れる準備を済ますのみ」
「悪いようには致しません。どうか後はワタクシに任せてお引き取りを…ですニャ。」
いや絶対悪いようにするつもりだろ。自己紹介する時思いっきり人の世に混沌を~とか言ってた気がするし。こちらが警戒を解かず、退く意志を見せなかった事でぎゅすた~ぶは焦れたのだろう。
一つ息を吐くと向こうから提案を持ちかけて来た。
「ふぅ…それではいっそどちらが宝玉眼を手にするに相応しいか、勝負して決めると言うのはいかがでしょう?」
「勝負の内容はズバリ!お金儲け!ですニャ」
…急にほのぼのとした展開になった。あるいは身も蓋もないと言うべきか。
しかし、これにも理由があるらしい。
ぎゅすた~ぶが言うにはこうである。「実は件の宝玉眼、確かに旅のキャラバンの交易商が秘蔵してはいたのですが既に転売の当てがあるとの事」
「しかし、この街を発つ時刻までに指定した金額を用意できれば譲っても良い、と言うのです」
「具体的には『経過時間6までに20万z相当のお金かアイテム』を用意できれば売ってもいいワナ、ワーッハッハッハ。と!」
なるほど、死ぬほど具体的な条件だ。
「でもワタクシ、凡愚なる人間共のお金なんて持ち合わせがございませんのニャ!」
「だからここでお魚さんを釣ってお金を稼ごうと考えたのでございますが、これは流石に骨が折れる」
「よって!経過時間6までにより多くのお金を稼ぎ、ここに戻って来た者が勝者として全てを手に入れるという勝負を申し込みますニャ!」思わぬ新手、ぎゅすた~ぶによって持ちかけられたお金儲け勝負。
これに打ち勝てばついに宝玉眼に辿り着ける。その上向こうは文無し、こちらは既に10万z持っている!
この申し出を受けない理由はない!
俺は勝負を受ける意志をぎゅすた~ぶに伝えると、その戦略について考えた。※この選択では経過時間6まで時間いっぱい行動する前提でお金儲けで勝負します
各選択肢はいくら稼げたかの値を決めるダイス値が設定されています。
選ぶ際は合わせて良いアイディアがあれば更にダイス値が+されます。
ただし、ぎゅすた~ぶと合わせて20万zに届かなかった場合、宝玉眼は予定通り転売されてしまいます。
選択:どのようにしてお金を稼ぐ? 現在の経過時間:2
1、流されてた男を助けて金を要求する (儲け中、成否判定一回きり、成功時おまけあり?)
2、ぎゅすた~ぶと一緒に魚釣りをする (儲け小、判定回数が多い)
3、露天商のお手伝い (儲け中、判定回数中)
4、劇場でバイト (儲けやや大、判定回数少ない)
5、闘技場で一攫千金! (儲け特大、判定回数一回きり、消耗あり)
6、その他 (お好きな行動。儲け、判定回数とも内容次第) -
596
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-29 20:55
ID:GoDFsxZ2
[編集]
あ、一応あなたの現在の状態とぎゅすた~ぶのキャラクター情報
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あなたの状態
武器:祀導器【不門外】 防具:レザーX一式
やる気:90 お金:10万
道具
なし
スキル
神の気まぐれ、採取+1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(自称)猫の魔王「ぎゅすた~ぶ」
性別:オス 年齢:大人(ネコ基準) 装備 武器:天下名剣ニザカニャー 防具:ニャント様勇シリーズ
魔王を自称するメラルー。その割に勇者っぽい格好。密かに野望を秘めており、その為に特定の主人を持たない。
野望…すなわち、「人の世の黄昏と龍の…ではなく猫の時代の幕開け」。その実現のためギルドが情報を秘匿する禁忌のモンスターの力を追っている。
芝居がかった口調ととぼけた態度で油断させ、自らの野望に積極的に他人を巻き込もうとする困ったちゃん。口癖は凡愚。座右の銘は猫に九生あり。
戦闘では笛やダンス、強化咆哮などでカリスマタイプの様な司令塔として振る舞うが、その本性は隠し持った爪の鋭さにこそある。傾向はビースト。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― -
597
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-29 21:26
ID:ppizYosU
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ま さ か の ぎゅすた〜ぶさんww
正確には元はぎゅすた〜ヴだけど1スレ目の>>539から約一年半の時を経て本編に登場ですかw(わざわざ調べた変態)
でも「ユータ」が主人というわけでは無いっぽいし色々と設定も変わったのだろーなー。
あと、王立古生物書士隊のギュスターヴ・ロン氏とは無関係……だよね?選択は6「ドンドルマ近郊にダレンモーランが襲撃!採掘で一攫千金のチャンス到来!?さあ、祭りの始まりダァ!!」(今世紀最大級の無茶振り)
無理なら他の人の選択に任せよう。
>>598あ、あれ……?何故かドンドルマの割と近くに砂漠があると思ってたんだけど、地図で確認したら別にそんなこともなかったぜ(確認もしない馬鹿)
まあ土地に関してはテキクエ初期から割と適当だし別にええやろ(至上の屑)あと、今から変えられるなら>>600に変えてもええやで。
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598
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-29 21:54
ID:GoDFsxZ2
[編集]
ほげ!?
い、いや行ける!流石にドンドルマまでダレンは来ないだろうけどこっちから行くなら話は別…!
ゲーム内でもどんなクエストでも行って帰って来る時間同じだし4gのワールドマップじゃドンドルマとバルバレ結構近かった気がするし…
でも多少のペナルティくらいは覚悟してもらうやで~(笑顔)念のため検索して公式の世界地図と4gのワールドマップ見比べてみたけどバルバレの停泊地はドンドルマ東のゴルドラ地方?に広がる砂漠の南端って事で良いんだろうか?
コレだとジエンがゴルドラ砂漠外縁部ギリギリを回遊するコースを取ったらドンドルマ近郊と言うには遠いけど出撃の理由にはなりそう。
1単位時間を3時間で換算すれば残り4単位時間だから12時間…。行って帰って…来れるか?まあ行けるだろう。
とりあえずそう言う体で進めます。もし間違ってたらご指摘いただければあなたが地図を読み間違えたと言う事にしてゴリ押しますのでよろしくお願いします。(直す気ない宣言する人間の屑)あ、だめだこれよく見たら山脈やんけ。
今更無理でしたなんて言えないしもういっそ適当に誤魔化すか。(屑)>>597
ぎゅすた~ぶの名前の由来は長靴を履いた猫で検索したwikiの端っこに乗ってるイラストの作者から適当にとった物です。(は?)
書士隊のロン氏とは一切関係ないのでご安心ください。 -
599
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-29 23:43
ID:LBemxso6
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しょーもない酔払いの選択からダレンまでいくなんて皆さん凄いなー。
ぎゅすた~ぶさんや他の競合ハンターとパーティーになるんだろうが、足の引っ張り合いを凌いで最大限の報酬を獲られるのか楽しみです。
最終兵器の木刀買っとけば良かったかなー。
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600
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-30 09:08
ID:9efFEBok
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あ、もしダレンが確実に不可能そうなら、今更だけど1かなあ
金は要求せずにこっちの情報を少し開示した上で、助けた恩で向こうのクライアントを教えてもらい、利益が相反しないようなら協力したい
筆頭r……陽気な推薦組だから非合法な仕事ではないと思いたいけど、万が一王女から直接依頼受けてたりしたら依頼は破棄させよう。非合法ならなおさら破棄だけど
ちなみに1の成否判定って救出について?それとも金の要求? -
601
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-30 18:06
ID:GoDFsxZ2
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うう、折角その他選んで貰ったのにシナリオ内時間との兼ね合いが…最初から1経過時間が何時間かハッキリさせればこんな事には…。力が…俺にもっと力があれば…(葛藤)
いや、待てよ?元はと言えば世界地図を曖昧にしてるカプコンが悪いんじゃあないのか?
なぜ藤岡と辻本のためにオロオロ検索しながら「お願い、tri系列の公式世界地図出てきてっ」て感じに探し回らなくっちゃあならないんだ?
どうして「ここから無事に選択回収できるならシナリオ抱えながら公式設定探してる方がずっと幸せ」なんて願わなくっちゃあならないんだ?
ちがうんじゃあないか!?(一転攻勢)
と言う訳でやっぱり公式なんぞかなぐり捨てて今まで通り強引かつ曖昧に解釈する方向で行きます!文句はカプコンに言え!(クズ)
あとお騒がせしたお詫びに>>600も拾わせて頂きます。判定は救出の方ね。
以下続きさて、10万zのアドバンテージはあるがいつまでもボヤボヤしては居られない。
金の匂いを求めて再びドンドルマの喧噪へと歩みを進めようとした…その時、街の衛士が慌ただしく駆けまわっている様子が目に入った。「古龍観測局より、号外!号外~~~~!現在、ドンドルマ管轄内の砂漠地帯にてダレン・モーランが出現中ーーー!!!」
「現在ダレン・モーランは砂漠地帯外縁部を回遊中!数時間後にドンドルマに最接近し、出撃射程圏内に入る見通し!」
「所属は問わん!今この街に居る全てのハンター達よ!死を恐れぬならばその背に飛び乗り、ピッケルを振るってその勇気を証明せよ!」
「ハンターズギルドドンドルマ支部より、ここにダレン・モーラン採掘依頼をーーー!発注ーーする!!!!」
「参加希望のハンターは戦闘街入り口の衛兵よりピッケルを受け取った後、高速飛行船に乗り込むように!即時出発ゆえ急がれたし!」オオオオオオオオオオオオ!!!!!
にわかに町中が熱気にあふれる。
何の事やら分からずに付いて行けてない俺に対し、ぎゅすた~ぶがいそいそと釣り竿を伸ばしながら口を開いた。
「おや、凡愚さんはご存じないのでございますか?砂漠を泳ぐ超巨大古龍、ダレン・モーランが見つかったのでございますよ。」
誰が凡愚だ。
「砂で磨かれた外殻には長い年月の間に集積された希少な鉱石が山ほど眠っております故、管轄内に現れたギルドはそれは目の色を変えて追うのでございます」
「それはさながら生きた鉱山。モンスターの襲撃が日常茶飯事のこのドンドルマにおいてはゴールドラッシュのような物でしょう」
なるほど、要するにハンターなら誰でも一山当てるチャンスってわけだ。
このチャンスを逃す手はないだろうと、俺は受付を行っていると言う戦闘街へ走り出す。ぎゅすた~ぶは、そんな俺の姿を見送り終えた後で改めて釣り竿を振るった。
「…ま、キョダイリュウノゼツメイニヨリデンゼツハヨミガエル…とも言いますからニャ」
「そんな事より目の前のお魚さんでございますニャ!あのドスゼニマスなどとても美味しそ…じゃなく高く売れそうでございますニャ」
その呟きが、誰かの耳に届く事は無かった。
・
・
・
戦闘街へ向かう途中、川の流れの端っこで奇妙な物が浮かんでいるのが見えた。
足を止め、目を凝らす。
「あ~~~。ジブンには任務が~~…」
パイナップル頭だ!
ぎゅすた~ぶに突き落とされてからまだ流されていたのか。
底も浅い川で未だに必死にもがく彼がなんだか哀れに思えてきた俺は、ポーチからロープを一本取り出して投げてやる事にした。
なに?道具欄にそんなもの無かったって?この程度はハンターとして標準装備がたしなみだ。
投擲に有利でも不利でもない現状では届く確率は半々と言ったところだろう。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あなたのロープ投擲!溺れる筆頭ルーキーに向かってロープが伸びてゆく。
1d100(一個の百面ダイス)の出目が50以下で成功。
1d100=77
失敗!ルーキーは無情にも川下に流されていった…
あなたは気にせずに再び歩きだした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― -
602
名前:兎
投稿日:2018-10-30 20:57
ID:h3fvt/Eg
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夜勤→土曜休→日曜夜勤→月曜休→今日から昼勤←イマココ 急遽こんな変則シフトになって死んでたらスゲェ進んでて草。
しかも内容凄そう(粉蜜柑) 暇氏、筆頭ルーキー並のドロップ運もってる奴が続きwktkしながら待ってますぜーちょろっと返信
>>579
ミラさんの件は悩んだところ、最終的に『一回伝承聞いただけだし聞き慣れない名前とかでいっかー』に落ち着きましたとさw>>580
食料の恨みは恐ろしいので止めて差し上げろ、あとシナリオプロット投げ捨てることになるからやめて差し上げろ(真顔
ミーシャちゃんの視力設定に関してはこれからもバンバンに活かしていくつもりですぜ、フフフ...>>581
セリフ回しはかなり気を使ってる、所謂『死んだセリフ』にならないように、かつ個性を考えてやっとります。
タケノコの里はともかくサンホラは語彙力上がる、マジで。(語彙力の欠片もない勧め方) -
603
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-30 21:10
ID:ppizYosU
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>>601こうして筆頭ルーキーは新大陸へと流れ着くのであった……。
(半ば冗談だったことは口が裂けても言えない)今世紀最大級の無茶振りを拾ってくれるとか流石暇氏作者の鏡やわ。
……うん、正直済まんかったと思っている。 -
604
名前:時雨
投稿日:2018-10-30 21:18
ID:gX20EMvk
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暇氏のシナリオ始まってたか…ジエンまで行くってエライ事なっとるなこれ。
というか第三王女出とる…。ま、まぁ依頼文だけだしまだシナリオ出せるな、うん、いけるはず -
605
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-30 23:53
ID:GoDFsxZ2
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~ドンドルマ付近の砂漠地帯・ダレンモーラン回遊予定地点~
…と言う事があったがさして気にせず、俺は当初の予定通りにドンドルマ近くの砂漠で撃龍船に乗り込んでいた。
正確には撃龍船のサポートをするために周囲を散開しながら航行する小型砂上船の一つに、だが。
この小型船はバリスタが一基と巻き取り式の拘束弾が一発だけという最低限の武装しかなく、船倉の広さもハンター4人がギリギリ座れる程度である。
中央に陣取る大型撃龍船が撃った拘束弾を合図に追加の拘束弾を撃つという、その目的のみに特化した作りになっているのだ。
そんな狭い船倉で俺を含めたハンターが4人、特に言葉を交わすことなく座り合っていた。
俯いて目を閉じ、ただ静かに待つ者。
鋭い眼差しで外の様子を伺う者。
体に括り付けた命綱の点検を行う者。
そんな如何にも玄人っぽい三人に囲まれてソワソワしながらも、ダレン・モーランの出現を待つのであった。正直熱いし気まずいし、ダレン・モーランも現れないしで何だかもう帰りたくなってきた…そんな頃。
「見つけたぞーーーー!右翼後方、距離およそ2000!ダレン・モーランだーーー!」
散開している小型船の内の一隻から声が上がる!
声のした方に目をやると、はるか後方から砂の波を掻き分けながら近付いてくる、太い螺旋状の角をそなえ山ほどに巨大な魚のような生物が見えた。
古龍という言葉から想像していた姿からはいささか離れてはいるが、そのスケールは遠目からでも超自然級であると断ずるに余りある迫力がある。
…というか本当にアレの背中から採掘するのか?悪い冗談にしか思えない。
あんなもん近付いただけで砂の波に飲まれて終わるが。そんな俺の戸惑いをよそに他の三人は一斉に立ち上がり、命綱一本で甲板へと出て行く。
彼らの姿にドンドルマのハンター達のタフさを実感しつつ自分も後に付いて行くと、既に現場は作戦開始に向けて最終調整の段階に入っていた。
「撃龍船砲手!拘束弾ミスんなよ!」
「だまれ右翼中央!テメーらこそもっと陣形を詰めろ!轢かれて終るぞ!」
「ダレン・モーラン進路変わらず、速度上昇!距離およそ1900!」
様々な指示と怒号が飛び交う砂の海の漢の世界。
そのほとばしる熱気と活力に気圧されながら、今回の作戦の概要を思い出す。まずダレンモーランがバリスタの有効射程内に入った瞬間、中央の大型撃龍船が拘束弾を発射。次いで周囲の小型砂上船が拘束弾を一斉発射し確実に拘束。
ダレンモーランが拘束を振り切る前に拘束弾の巻き取りにより小型船で接近し、各自の判断で背に飛び乗って採掘。
しかる後にそのまま飛び降りて砂の波に耐えながら命綱を伝って小型船へ帰還し、反撃を受ける前に撤退せよ。…頭がどうかしてるとしか思えないが、恐ろしい事にこれがいつもの事らしい。
ミーシャもドンドルマ出身らしいがいつもこんな事をしてたのだろうか?してたんだろうな...。
リィの奴もバルバレに居た頃はインナー一丁でダレンモーランを追っ払ったとか言ってような言ってなかったような。
ドンドルマに付いてから一日と経っていないのに何故だか懐かしく思える仲間達の顔を思い浮かべながら現実逃避に耽っていると、突然辺りに銅鑼の音が響き渡った。「射程圏内だ!作戦…開始ー!!!」
いつの間にかダレン・モーランがすぐ側まで接近していたらしい。
ときおり降り掛かる砂の波の向こうに、巨大な砂の魚…「豪山龍ダレン・モーラン」が船団に並走しているのが見える。
ダレン・モーランが身をよじり、一際大きな砂の波が起こると同時に、大型撃龍船から拘束弾が放たれた!接近から撤退まで、全てがイカレたダレン・モーラン採掘作戦がついに始まってしまった!
※この選択では背中への侵入経路と採掘時にどこまで粘るかの両方を選択して下さい。
選択で決まった方針によってやる気へのダメージロールと鉱石の取れ高ロールのダイスが変化します。
他に良いアイディアがある場合、合わせて書き込む事でダイスにボーナスが付くかもしれません。
なお、現在は神の気まぐれと採取+1のスキルにより取れ高ダイスにボーナスが入っています。選択:背中への侵入経路は!?
1、前足!
2、後ヒレ!
3、大角!
4、その他(お好きな行動!)選択:採掘はどこまで粘る!?
a、サっと掘って帰る!
b、ほどほどに掘って帰る!!
c、限界まで掘って帰る!!!
d、その他!(お好きな行動!) -
606
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-31 04:17
ID:.dam2VvA
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いつの間にダレンとジエンがすり替わったんだ?
マ似たようなもんだしイイカ上の選択肢は2で
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607
名前:名無しさん
投稿日:2018-10-31 06:31
ID:NoBTyIXM
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では私は下を
d.爆弾で爆破して拾って帰りましょ
持ってなかったら安全策で周りと同調して帰りましょ
2の時代の農場鉱石がたまに欲しくなります・・・
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609
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-10-31 21:24
ID:GoDFsxZ2
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>>606
あ、ホンマ。そんな…それではわたしは一体何のために康一くんの名セリフを改変してまで言い訳を…
ジエンをダレンに、牙は角に描写を修正しておきます…あれ?これ似たモンスター無駄に増やすカプコンが悪いんじゃね?(責任転嫁)
こんな間違いするヤツ俺以外に誰んもおら…あやっぱ何でもないです
以下続き。撃龍船から放たれた拘束弾が砂の波を突き破り、豪山龍ダレン・モーランの腹に刺さる。
弾頭から繋がった極太のロープが張り詰めてダレンモーランの動きを僅かに鈍らせたのを合図に、周囲の小型船からも一斉に拘束弾が放たれた。
岩を砕く螺旋状の角、砂を掻き分ける太い前足、砂の波を受け流す後ヒレ…十を超える拘束弾がダレン・モーランの全身に突き刺さり、あるいは絡まってその動きを制限していく。
そうして巻き起こされる砂の波が一際小さくなった瞬間、全ての小型船が素早く舵を切り、波をいなしながらダレン・モーランに次々接舷していった。角や前足付近に接舷したパーティーはロープを伝って登ったり、武器で表面の甲殻を削ったりして無理矢理道を作っている。
ずいぶん強引な登り方だ。
なんでも後頭部にある噴気孔に近いほど固有の上質な岩石が取れるため、手馴れた者はわざわざ危険な前足や角から登りたがるんだとか。
幸いにして俺の乗っている船はそんな無茶なルートはとらず、もっとも安全な後ヒレ付近に接舷してくれた。
他のハンター達がそうするように俺も船からヒレへ飛び移り、比較的平坦な足場を選んで背中まで登っていく事が出来た。
・
・
・
~ダレンモーランの背中~
本当にここまでやってきてしまった…、豪山龍ダレンモーランの背中。
目の前には赤錆びた岩の様な質感の甲殻が広がり、その中から所々に鉱物の結晶が露出している。
しかし、目のつくポイントではすでに他のハンター達が採掘を始めており、このまま出遅れてしまっては俺の分け前が減ってしまう。
そこで一つの作戦を思いついた。
こんなに大きな古龍の背中を人の手でチマチマ掘ってたって埒が明かない。
ここは一つ、大規模な鉱脈に対してそうするように、爆破による採掘をしてしまおう、と。
と言う訳で甲殻で覆われた背ビレの比較的脆そうな箇所に、船から降りる前に取っておいた支給品の「対巨竜爆弾」を設置する。
超大型古龍専用に開発されたこの爆弾ならば、ピッケルを千回打ち付けても掘れない様な岩盤も一発でキメてくれるだろう。
手馴れたベテランほど軽視して手を付けない支給品だが、今回はそれを逆手にとって利用してやるのだ!必死にピッケルを振るいながら駆けまわる他のハンター達を尻目に余裕の笑みを浮かべる俺。
少しづつ導火線を縮めて行く巨竜爆弾。
そしていよいよ導火線が無くなり火と爆弾の距離がゼロになり…発破!!!!!
その衝撃たるや凄まじく、一瞬とはいえダレンモーランを怯ませ、脆くなっていたとはいえ背ビレの一部に風穴をあけ…
そして、中に眠っていた大量の鉱石を空に打ち上げ、それは砂漠の日差しでキラキラと輝きながら文字通り宝の雨として降り注いだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
巨龍に近付くあなたに砂の波が降り掛かる!
比較的安全な後ヒレのため、波の威力が軽減された!
5d6-3(5個の6面ダイスの出目から3を引いた値)のやる気ダメージ!
5d6-3=1+3+4+5+6-3=16
あなたの残りやる気:74
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あなたの発破採掘!
スキル:採取+1の効果で効率よく鉱石を拾えた。(ピッケルによる採掘ではないので神の気まぐれの補正はなし)
10d30+30(10個の30面ダイスの出目に30を足した値)の価値の鉱石が手に入る!
10d30+30=(長いので略)=159
達成値159相当の鉱石を拾い集めました。帰還後に達成値1につき500zで換金されます。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― -
610
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-01 00:10
ID:GoDFsxZ2
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幾度もピッケルを打ち付けられ、その上爆破までされたダレンモーランがうっとおしそうに身をよじる。
巨大な古龍からしたら、たったそれだけの動作。
しかし、たったそれだけでも噴気孔から岩が飛び散り、立っていられないほど足場が揺れる。
それらは体中に括りつけられた拘束弾を振りほどくには十分な威力をも持っていたようだ。
ブチブチと嫌な音を立てながら専用のロープが千切れていき、そうならなかった弾も表皮から弾かれて砂の海に飲まれていく。
そうしてダレンモーランはある程度の自由を取り戻すと、少しずつ砂の海に身体を沈めていくのだ。「ヤバい!潜行されるぞ!撃龍船を襲う気だ!」
「そろそろ潮時か…皆船に戻れー!」
周りのハンター達が口々に言い残し、躊躇なく砂の激流に身を投じて行く。
確かにこのままここに居た方が危険かもしれないが、だからと言ってああも簡単に跳べるなんて…。
それに今誰かが撃龍船を襲う気だ、と言った。
それが本当なら、もっとギリギリまで俺達も背中で戦うべきなのではないだろうか?
そんな思いが跳ぶのを躊躇わせる。「俺達の仕事は古龍からぶんどった鉱石を持ち帰る事だ!あとは撃龍船に任せて撤退しろ!」
いよいよ背中に残る最後の一人となったところでそう言葉が掛けられる。
意を決して命綱を掴みダレンモーランの背中から飛び降りると、容赦ない砂の奔流と鉱石袋の重さが俺の体力を奪っていくのを感じた。
少し採りすぎたかもしれない…。
そう後悔しながら綱を手繰り寄せている最中、やはり気になって撃龍船の方を振り返る。
砂の波の合間から見えた撃龍船は、噴気孔から飛び散った岩の一部が直撃したらしく、撃龍槍の起動スイッチが塞がれてしまっているようだった。
撃龍船の前方には既にジエンモーランが回り込み、角を振り立てて撃龍船目掛けて加速を付けている。
これって結構ヤバいんじゃないだろうか?
しかし、俺が内心肝を冷やしながら見守っているのに、周りのハンター達の呑気なものであった。
「さあ、始まるぞ…」
「今回はどっちが勝つと思う?」
「ダレンかな」
「じゃあ俺は撃龍船」
彼らは勝手な事を言いながら涼しい顔で命綱を手繰る。
もしかしてこれも「いつもの事」なのか?そんな状況の中、撃龍船の状況も動いた!
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611
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-01 00:13
ID:GoDFsxZ2
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「除去班、前へ!竜撃砲で岩を砕け!」
白い長髪を後ろに流し、水晶の双剣と青い鎧を身に着けた男が指示を出す。
あの男が撃龍船の指揮官だろうか?
指揮官と思しきハンターが合図をすると、ガンランスを構えたハンターが3名、スイッチを塞ぐ岩の前まで進み出る。
3名のガンランス使いが腰を落として数秒…その溜めの後に渾身の竜撃砲を放つ。
武器への負担を度外視したその大砲撃が同時に3発、ジエンモーランの放った岩にぶつかると、それらは対巨竜爆弾にも劣らない威力で岩を砕き飛ばした。しかし、岩が砕かれて開けた視界の向こうには、さらに加速を付けて向かってくるジエンモーランがいる!
「まだだ…」
指揮官の男は白い長髪が風に乱れるのも気に留めず、まんじりともせずに構えている。
どうやら彼自身が撃龍槍を起動する気のようだ。ジエンモーランが一度跳ねた
「まだ…」
男の背負った水晶の双剣が、いつの間にか沈みかけている砂漠の夕日を吸って赤く輝いている。
男が何を思っているのか、この距離からではうかがい知れない。ジエンモーランが二度跳ねた
「撃龍槍、起動!」
男が青い鎧を閃かせ、スイッチを叩く。
船首に取り付けられた撃龍船の主武装…蒸気で撃ち出される超大型の鋼鉄槍「撃龍槍」。
スイッチが押されたことにより徐々に機関部に蒸気がたまり、回転が始まり…ジエンモーランが三度跳ね、目触りであろう撃龍船にその巨体全てを使って飛び掛かっていく!
「発射ぁ!!!」
その横っ面を、出鼻を挫くように撃龍槍が盛大に貫き…と言うよりは殴り飛ばし、ジエンモーランを横たえさせた!
必殺の対巨龍用兵器の直撃!
自らの敗北を悟ったジエンモーランは横たえたままの巨体を捻って砂に半身を捻じ込む。
そして悔しそうにヒレだけ地表に出して砂の海を一度叩くと、沈む夕日を追いかけるように地平の向こうへ泳いでいった。
「また来いよ~」
「今度は負けんなよ~」
そんなドンドルマのハンター達のタフなんだか能天気なんだか分からない言葉に送られながら徐々に小さくなっていくジエンモーランの姿を見ていると、案外むこうも本気で襲って来た訳ではないのかも…などと考えてしまう。まあ、考えてもモンスターの気持ちなど分かる訳ない。
頭を振って馬鹿な考えを追い払うと、徐々に弱くなってきた砂の波を掻き分けて俺も元居た小舟を目指した。
膨らみ過ぎた鉱石袋の重量に苛まれながら…ではあるが。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
鉱石袋の重さで採掘達成値の1/10のやる気ダメージ!
あなたの残りやる気:59
豪山龍採掘作戦は無事終了しました!
採掘の達成値159を換金します。
159×500=79500z
あなたのお金:179500z
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――あれこれもうシナリオクリアっぽい空気じゃない?タイトル豪山龍採掘依頼とかに変えてもう終わりでよくない?(意志薄弱)
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612
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-01 01:31
ID:GoDFsxZ2
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~ドンドルマ・戦闘街入り口~
軽いバイト感覚で行くにはあまりに過酷だったジエンモーラン採掘依頼。
息絶え々えながらもなんとか帰還して多額の報酬金を得た俺は、ぎゅすた~ぶとの勝負に挑むべく再び川沿いへと歩きだす。
辺りはもう暗い。はやく向かわねば約束の時間を過ぎてしまう。
しかし、そんな俺の焦りを知ってか知らずか…足を速めながら歩く俺を後ろから呼び止める声があった。「君、待ってくれ」
呼び止めた声の主は男にしては長い白髪を後ろに流し、青い鎧と水晶の双剣を身に着けた、気難しそうなしかめっ面をしたハンター。
撃龍船の指揮官だった男だ。
「ああ、すまない。人を探してるんだ。オレンジ色の髪をパイナップルの様に刈り込んだ軽薄そうな男なのだが…」
「彼にはとある仕事を任せていて、ここで落ち合う事になっていたのだが見あたらなくてね」
「豪山龍採掘作戦には立場上参加しない訳には行かなかったので急遽指揮を執ったが、ルーキーめ…それにも参加せず一体どこに…」
「…以上だが、何か知らないか?」
目の前の男はそれだけを伝えるとこちらの答えを待った。オレンジ髪のパイナップル頭…十中八九ぎゅすた~ぶに川に突き落とされたあげく俺のロープを掴み損ねて流されていったあの男だろう。
そう言えばあのパイナップル頭は『リーダー』と一緒に任務に当たっていると言っていた。
そして自分たちも『宝玉眼』を探している、とも。
つまり目の前で今、俺に質問をしているこの男こそパイナップル頭の言う『リーダー』であり、同じように『宝玉眼』を探していると言う事。大敵を退け、多額の報酬を得て半ば忘れかけていたが俺も元々は龍歴院の指示で宝玉眼を探しにこの街にやってきたのだ。
目の前の男の質問に素直に答えて良い物か…。
あるいはこちらの持つ情報を明かし、協力し合うべきか…。明かすにしてもどこまで話す?
あのぎゅすた~ぶとかいうクソ猫もイマイチ信用ならん以上、ここでの身の振り方は考えねばならない。
しかし、奴を出し抜いて単独で宝玉眼を手に入れるにはまだお金が足りない。かと言ってもうひと稼ぎする時間はない。夜の明かりに揺らめいて、手にした盾に映った景色が一瞬だけ変わる。
それは青い鎧の男に剣を突きつけられて動けなくなっている自分の姿…に、見えた気がした。選択:青い鎧の男にどう答える?
1、ルーキーの行方だけ教える
2、宝玉眼の所在だけを教え、ぎゅすた~ぶを放って青鎧の男と一緒に買いに行く
3、自身の所属と目的を明かし、ぎゅすた~ぶを放って青鎧の男と一緒に買いに行く
4、質問に答えずに、ぎゅすた~ぶと合流する
5、質問に答えずに、装備を売って足りないお金を補い一人で宝玉眼を手に入れる(剣、盾、防具のどれを売るかも選んでね)
6、その他(お好きな行動)―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あなたの状態
武器:祀導器【不門外】 防具:レザーX一式
やる気:59 お金:179500z
道具 :ピッケル スキル :神の気まぐれ、採取+1
明かせる情報
自身の所属(龍歴院)、宝玉眼の所在と値段、宝玉眼の正体1(幻のピュアクリスタル?)、???(未入手の情報)、ルーキーの行方、
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― -
613
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-01 08:28
ID:NoBTyIXM
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死亡ルートがありそうですね・・・
ルーキー君がにゃんこと話してて、いきなりにゃんこが川に突き落としたのをみたということにしましょう。
でもって助けようとロープを投げたけど敢えなく流されちゃって、落とした理由を聞こうと振り返ったら、
もうにゃんこはいなかったという体にしましょう。
ついでにあなたは宝玉眼についてなんて知らない設定にしたいから名前も当然知らないでごり押しましょ。
そして売って資金を集めときましょそしてこの選択なかなか怖いので別案ある人お願いします><
(選択肢が怖すぎて長くなりましたね・・・) -
614
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-01 16:59
ID:ppizYosU
[編集]
ちょっと待ちな、その嘘はルーキーが見つかるとすぐにバレそうだ。
ここはまず「悪いが今忙いでるんだ、世間では専ら"時は金なり"と言うしなぁ」みたいな感じで遠回しに金銭を要求した後、それでも聞いてくるようなら青い鎧の男(リーダー)にルーキーが川に流されて行くのを見たこと、助けようと思ったが失敗したことを伝え、今はもっと下流にいるかも知れないとさりげなく合流地点から遠ざけよう。(嘘は一つも言ってない)
もし案内を頼まれたら一度見ただけで今頃どこにいるのかはわからないと言い、「悪いがこれ以上は協力できない、仲間の尻拭いは自分でしてくれ」的な感じで会話を打ち切り、"ルーキーを探させる"ことで時間を稼ぐ。(悪いことは一つもしてない)
最後にぎゅすた〜ぶと合流したら取り敢えず一度勝負結果を見た後でルーキーの仲間と会ったことを伝え、リーダーの容姿と今ルーキーを探して下流にいることを教える。(嘘は一つも言ってない)
当然ぎゅすた〜ぶもあなたと同様にルーキーの仲間ということは宝玉眼を狙うライバルだと考えるだろうし、何より自分がルーキーを突き落としたことがバレたら厄介だからリーダーをなんとかしようとする。(自分は一つも悪いことをしていない)後は高みの見物を決め込み、形勢を見てどちらかに協力を取り付けるか、あるいは全てを自己負担するかを決める。(一度も嘘は吐いていないし、何も悪いことはしていない)(だが外道)
もちろん相手の目的がわからない以上リーダーに宝玉眼のことを言うのは以ての外だろうね。
つまり選択は1と4の複合型だ!わかりやすく三行でまとめると
1.リーダーにルーキーの居場所だけ教えます
2.ぎゅすた〜ぶと合流してリーダーの存在を教えます
3.高みの見物を決め込みます(上の人よりもビビリなので上の人よりも長くなってしまうという情けなさ。流石にここまで細かい指定は無理か、上の人の選択でええで。)
-
615
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-01 21:46
ID:GoDFsxZ2
[編集]
げへへ、かなり深く考えてくれたようで光栄ですなぁ
あと今ゲーム内テキストをまとめているサイトを見たらルーキーはリーダーを単にリーダーと呼んでる様だったので該当箇所を修正しておきます
センパイ呼びはランサーに対してでした、えへ。
選択肢の処理について意に沿う形になるかは分からないけど、どちらも拾えるだけは拾っていこうと思います。
以下続き青い鎧の男にどう答えようか、一瞬の間だけ考える。
この男も宝玉眼を狙っている事はほぼ確定、その上ぎゅすた~ぶと違って只者ではなさそうだ。
敵対するのはマズイ。かと言って宝玉眼に近付ける訳にも行かない。
その上でこちらが出すべき答え…それは「一切の事情を知らない振りをして、パイナップル頭の行方だけを教える事」であろう。
それにこちとら金も時間もない身なのだ。多少の見返りを要求してもバチは当たらないだろう。そう結論を出して青い鎧の男に黙って手を出すと、男も少し考えてから黙って俺の手にお金の入った袋を置いた。
重さからして5000zは入っているだろう。
意外な金払いの良さに驚きつつも、パイナップル頭…ルーキーとやらが「ネコの悪戯で川に落ちて助けも虚しくそのまま流されていった事実」だけを伝える。
事実を伝え終えた後、青い鎧の男は心底呆れたように額を抑えて呟いた。「ルーキー…あいつは何かやらせる度に予想の斜め上をこえてそのまま地平の彼方まで飛んでいく奴だったが、それがまさかこのような街中でまでそんな事になるとは…。私の教育が悪かったのか…?」
「ともかく、助かった。こうなっては任務も中断せざるを得まい。私は彼を迎えに行くとするよ、ありがとう」
「…以上だが、他に何か?」唐突な「…以上だが、他に何か?」に対して、いえ別に…と返すと男はそのまま川下へと走って去って行った。
これでひとまず難は去った。
男の後姿が夜の闇に隠れて見えなくなったのを確認してから俺もぎゅすた~ぶの待つ川上へと歩きだす。これは余談だが、どうせもう使わないだろうし少しでも金に換えておこうと思い立ち、装備していたレザーX一式を脱いで売り払っておいた。
採掘依頼での無茶が祟ってか相当痛んでいたらしく、一式で売却相場の半分…1万z程度にしかならなかったがないよりマシだ。
道中、夜の街をインナー一丁で歩く俺に対し視線とヒソヒソ声が突き刺さったが、普段から不本意ながらスケベハンター呼ばわりされて鍛えられた精神力の前にはそんなものは涼風も同然であった。~ドンドルマ・川沿い~
街のはずれの川沿い、その約束の場所でぎゅすた~ぶは割とくつろぎながら待っていた。
金になりそうな魚を釣っていたようだが、我慢できなかったのか、辺りにはキレイに食べられて骨と化した物も数匹転がっている。
コイツはコイツで本当に宝玉眼を手に入れる気があるんだろうか…?
「あ、遅いでございますよ凡愚さん!もう交易商さんとの約束の刻限も迫っております故、手早く集計を済ませて欲しく存じますニャ!」
相変わらずの凡愚呼び。しかも集計するのは俺らしい。さては人間の金を数えられないな、コイツ。そんな俺の指摘も余所に、ぎゅすた~ぶはドチャッと稼いだお金を目の前に置く。
価値の大小を無視してまぜこぜにされたゼニー通貨の山にため息を吐きながらも、大人しく金を数え始める俺なのであった…。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ぎゅすた~ぶとのお金持ち勝負!
ぎゅすた~ぶは4経過時間で68匹の魚を釣り、3匹食べて残り65匹を一匹300zで売り払ったようです。
65×300=合計19500z!
あなたは財布の中のお金179500zに筆頭リーダーから貰ったお金5000zと防具売却代金10000zを足しました。
合計194500z!
おめでとう!目標額20万zに届いた上でのあなたの勝利です!
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616
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-02 00:08
ID:GoDFsxZ2
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~ドンドルマ・キャラバンの竜人問屋~
そんな訳で金の力でぎゅすた~ぶを打倒した俺は、宝玉眼を持っていると言う交易商の元へ案内させている。
あまりの大差にぎゅすた~ぶは納得がいかないらしく「さてはずるっこしましたニャ」とか「再集計を要求しますニャ」とか色々こざかしい事をほざいていたが、そもそも体を張って鉱石を掘りに行った俺とノンビリ釣りをしてたお前とで勝負になる訳ないだろう!とピシャリと言ってやるとそれきり黙って素直になった。「ここでございますニャ」
足を止めたぎゅすた~ぶが指し示した先には、カラクリ仕掛けの変形する巨大な箱の店舗とそれに座って柔和な笑みを浮かべる老人…。
竜人問屋の姿があった。
「ワーッハッハッハ、よろしく300万ゼニー!アンタさんかい、ワシから例の宝石を買いたいと言う命知らずは」
…またコイツか。
この竜人問屋とは以前原生林の調査任務の際に竜車を融通して貰った縁があるが、まさかこんな所で再開しようとは。
向こうもこちらに気付いたようで馴れ馴れしく挨拶をしてきた。
「おや?そっちのアンタさんは会った事があるね。噂は聞いとるよ。その後もヨロシクやっとるようでワシも鼻が高いワナ!」
やかましいわ。
どういう噂を聞いて何をヨロシクやっとるのかは置いておくとして、こちらの本命は宝玉眼だ!
ぎゅすた~ぶと俺の集めたお金20万z。
それが入った袋を示すとそれを受け取り、柔和な笑みで細められた目が僅かに見開かれてこちらを見据えた。「…確かに、ヨロシク20万ゼニー、と」
そして懐から小箱を取り出すと、中を開いて見せる。
そこには純水の様な透明を湛えながらも周囲の光を吸ってその色に輝く、真球に整えられた美しい水晶玉があった。
その純粋な玉の中心には生き物の瞳の様な金色の結晶が浮いており、それは透明な輝きと一切混じることなくどこか禍々しくも思える存在感を放っている。
純粋であるが故に恐ろしい…そんなある種の無慈悲ささえ感じる美しさに、思わず一歩後ずさる。「ニャ゛ーー!これこそ本物の宝玉眼!このワタクシが頂きましたニャ゛ーーー!!!」
目の色を変えて竜人問屋に飛び掛かるぎゅすた~ぶ。
…まあ、こんな事だろうとは思っていた。
コイツの場合は初めから汚れきってるのが分かってるから恐ろしくもなんともない。
丁度良い高さまで飛びあがってきたぎゅすた~ぶを盾で裏拳一発!と小突いてやると「凡愚さんの凡愚~~~」と捨て台詞を吐きながら夜の街の雑踏へと消えて行った。
街中が豪山龍採掘作戦の余韻でにぎわう乱痴気騒ぎの中、メラルーの小さな体ではここまで戻って来る事は出来まい。「ワッハッハ、アンタさんにも色々あるみたいだワナ!ワシとて商人。余計な事情は聞かんでおくが、これだけは聞いておくれ」
「幻の純水晶にして災厄の宝石。そうまで言われるこの宝玉眼の出所といわくに付いて、じゃ…」
これでやっと帰れる…と宝玉眼を受け取りかけた姿勢のまま、竜人問屋の話しは始まった。彼が言う出所といわく、とはこうである。
~~~
今から数年前、ドンドルマの街には真っ白な髪と鬼人の如き戦いぶりで「白髪鬼」の名を取る弓使いがいた。
弓使いの戦いぶりはガンナーでありながら自らの身を顧みない苛烈な物で彼女の身を案じる者も多かった。
あと隠れファンも多かった。(知るか)
そんな彼女だったが、ある日を境に卵運びのクエストに従事するようになった。
彼女を良く知る者達はそれを良い兆候と思っていたが、彼女は一通りの卵運びの仕事を終えるとフッツリと消息を絶ってしまったのだ。
そうして行方を眩ませてから三日が経ち、五日が経ち、ついに一週間にもなろうかという頃…彼女は帰って来た。
かつての「白髪鬼」の凄惨なる様相そのままに、見た事もないモンスターの鱗や角を持ち帰って。
その際に一緒に彼女が持ち帰り、また何か思う所があったのか手放した物…それこそがこの「宝玉眼」なのだと。
唯一「白髪鬼」に何があったかを知っているとされる、アリーナの癒されハンター(通称)は「何よ!生まれちゃってるじゃないの!もう知らない!」と頑として口を閉ざし、また「宝玉眼」を手にした者の中には謎の発狂をする者もいたとかいないとか。
こうした曖昧な話は、いつしか「宝玉眼」について一つの噂を形作るようになった。「宝玉眼」とはギルドが情報を秘匿するほどに凶悪なモンスターの「眼」だったのではないか。
それは未だに邪悪な意志を宿し、人類に災厄をもたらそうとしているのではないか。
それ故の幻の水晶。それ故の災厄の宝石。
「白髪鬼」だからこそ射落せた、これこそ真なる「宝玉眼」。
~~~ -
617
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-02 02:18
ID:GoDFsxZ2
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ちょっと日に日に投稿速度おちてんよ~(疲労)。
「とまあ、こんな噂もある程度には不気味な経歴に包まれておる品故、取り扱いには要注意、と言いたかったんだワナ!」
そこまで話すと竜人問屋は、再びワッハッハ!笑い飛ばした。「宝玉眼」の出所といわく。
その所々に心当たりのある単語や不穏な語句が混じっていた気がする、...が!
この際そんなもんは些末事だ!!!
ギルドマネージャーのおばばとクルトアイズのいつもの無茶振り…それを無事に果たしてまた龍歴院に帰れるのなら多少の災厄なんぞどうでもいいわ!
そんなヤケクソ染みた心境で宝玉眼を収めた小箱を受け取り、大事に大事にポーチへしまう。
ここまで紆余曲折あったが、ついに…ついに宝玉眼を手に入れた!!!!…さて帰ろ帰ろーっと。
一気に力が抜けてもう帰って寝る事しか考えられなくなった俺は別れの挨拶もそこそこに街の入り口へ向かって踵を返す。
しかしながら。さっそく宝玉眼の災厄が降り掛かったのだろうか。その時。俺が今一番聞きたくない言葉が町中に響き渡った。「敵襲ー!!敵襲ーーー!!!」
「現在、アリーナの闘技場よりG級相当の迅竜ナルガクルガが一頭脱走中!」
「迅竜は建物の上を飛び移りながら真っすぐに戦闘街へと向かっている模様」
「守衛隊の部隊編成が済むまでの間、狩猟許可を持つハンターは迅竜を戦闘街で足止めせよ!繰り返す!アリーナ闘技場より…」…聞かなかったことにしよう。
俺がやらなくてもこの街のハンター達なら何とかするだろう。
そう思い回りを見渡す。
「う~~い、じんりゅうぅ~~~?そんなもん毎日ひゃっぴきはぶっこぉしてるぜえ~~…うぃ!」
「嘘つけよおめー、一日何回クエスト行く気だよ~。ぎゃははははおおおろろろろ…おえ…」
ほ、ほら…こんなに頼もしい事言ってる酔っ払いが今この街には沢山いる!
そう…今この街にいる多くの人間は、ハンターも民間人も隔てなく豪山龍採掘依頼の打ち上げで盛大に酔っぱらっていた…。呆れて呆然としつつも、やはり帰ろうと歩を進める俺に竜人問屋が言葉を掛ける。
「…アンタさん、行く気じゃな?」
いや、行かんが?
「ワシには分かる。アンタさんを見ているとキャラバンの皆で天廻龍を追っていた頃を思い出すワナ」
聞いちゃいない。
「決戦前には準備準備。ワシもあの頃の様に、一つ本気を出すとしようかね。ワーッハッハッハ!」
竜人問屋がシャン、と杖を一つ鳴らすと座っている箱が変形を始め、中からこの街にある様々なアイテムが飛び出した。
持って行けと言う事だろうか。
そう言う事ならやぶさかではない…と思って手を伸ばすと【どれでも一律10000ゼニー!】と値札が付いていた。
どうやら金はとられる様だ。しかも高い。こうなりゃヤケだ!やるだけやってサッサと帰ろう!
意を決したその時、パチッ!っと…盾を持った右手に僅かに電気が弾けた様な傷みが走った。
不審に思い盾を見るが、磨かれた鏡面は特に何を写すともなくただ夜闇の黒のみに染まっている。その奥に赤と金色の残光が見えた気がした。選択:ナルガクルガとの戦闘に何か持っていく?(選択肢一つにつき1万z減ります)
1、ドンドルマリン(ヒビ)1箱
2、木刀【ドンドルマ湖】
3、秘薬1個
4、閃光玉3個
5、要塞防衛式弩砲弾3発
6、高密度滅龍炭
7、生命の大粉塵1個
8、その他(お好きなアイテム、フレーバー要素等)
9、やっぱり帰る
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あなたの状態
武器:祀導器【不門外】 防具:なし
やる気:59 お金:14.000z
道具 :ピッケル、宝玉眼 スキル :なし
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618
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-02 05:56
ID:NoBTyIXM
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戦闘区域なら単発式拘束弾撃てないかな・・・(願望)
あれなら多分一番安全なのだけど・・・オストとかですら拘束できるし
撃てると良いな♪撃てなそうなら他の方のでお願いします。 -
619
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-02 15:40
ID:ppizYosU
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ああ、これは冒頭の悪夢回収ルートですねぇ……(諦観)
やる気がなさすぎて死ぬの意味が漸くわかったゼ、これは不味い(←あなたのやる気にダメージを与えまくった人)
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620
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-02 22:41
ID:GoDFsxZ2
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むむむ、拘束弾を忘れていた。(なにがむむむだ!)以下続き。
竜人問屋の広げる品はどれも高く、今一つ食指が動くものが無い…。
やはりこのまま出発しようかと立ち上がりかけた時、積まれた品の下に見覚えのある弾を見つけた。
重く鋭い弾頭とそこから伸びる極太のロープ…豪山龍採掘依頼でも使った特殊なバリスタ弾「拘束弾」。
巨大な古龍の動きすら止めてしまうこの弾なら飛竜の捕縛くらい訳ないだろう。
迷わずに拘束弾をひっつかみ、代わりに1万zを押し付ける。
「おっとこれはお目が高いワナ!ありがと300万ゼニー!」
他人事だと思って…。
そんな竜人問屋の景気の良い声に送り出されて、俺は戦闘街の奥へと走り出した。~戦闘街・砦(エリア3)~
…警笛だろうか?
何処からか甲高い笛の音が響く街中を、脱走したと言うナルガクルガを探して駆け抜ける。
この夜闇のなかでナルガクルガを見つけ出すのは困難かと思われたが、それは杞憂に終わった。
戦闘街最奥、街に侵攻するモンスターに対する最終防衛ライン…砦区画。そこにたなびく赤光が見えたのだ。
赤く輝く目から残光の尾を引きながら疾走する黒い獣のような飛竜、迅竜ナルガクルガはそこにいた。
目が赤光を帯びる…つまり怒り状態にある訳だが、闘技場が保有していた個体だからだろうか…頭部は既に部位破壊されており、その光の筋は一本少ない。
潰れた片目の傷跡は新しくはないため、過去の戦いで負った傷である事が見て取れる。
片目を失うほどの戦闘経験を積んだ、怒り状態のナルガクルガ…あまり歓迎したい相手じゃあないが、状況を考えれば仕方がない。
腰にさした剣に手を掛けようとした…その時、もはや聞きなれてしまったセリフが背後から飛んできた。「おおっと、申し訳ございません。ですにゃ」
…この不意打ちにはもう慣れた。
アイテムポーチ目掛けて飛んできた小さな毛玉を余裕を持ってかわす。
勢いあまってベシャッっと地面に転がった毛玉…もといぎゅすた~ぶは何事も無かったかのように立ち上がり埃を払って不敵に笑った。
「遅いお着きでございましたにゃ、凡愚さん。ここで騒ぎを起こせばきっと来ると思っておりましたにゃ」
いや来たくなかったが?
「凡愚さんにぶっ飛ばされた時は我が計画も失敗かと思いましたが、街中がお祭り騒ぎの余韻に浸る今、闘技場に忍び込みナルガクルガをここに誘い出す事は実に容易な事でありましたにゃ」
聞いちゃいない。
と言うか逃がした犯人はコイツらしい。
「我が目的は人の世の黄昏。我が悲願は猫の時代の幕開け。しかし、何もワタクシが宝玉眼を手にする必要は無かったのかもしれませんですにゃ」
「この…「超音波笛の術」があれば!!!」ぎゅすた~ぶは白い角笛を取り出し、そして思い切り吹き込んだ。
笛からキンキンと甲高い音が谷あいに反射し警笛の様に周囲に反響し…その音は夜闇を走るナルガクルガの注意を引いた。
闇の中に赤い線が走り…直後、残光を帯びた一閃が地面をえぐる!
ぎゅすた~ぶはその場でクルリと宙返りしてナルガクルガが叩きつけた刃翼をかわす。
俺もとっさに大きく体を投げ出し、辛うじてその一撃をかわすも起き上がるのにもたついてしまった。
そして気付いた。
ポーチから転がり落ちてしまった「宝玉眼」。それに近付くぎゅすた~ぶ。
サッと血の気が引く。
ぎゅすた~ぶに「宝玉眼」を奪われてしまうから…ではない。(怨)
「声」が聞こえるのだ。
いや、それは「声」と言うには余りに原始的なエネルギーの奔流(滅 呪 憎 殺 壊 焼 潰 砕)
(死)
純粋にして圧倒的な負の感情、とでも言うべきか。
それらが俺でも分かるような形となって強引に心に流し込まれる「錯覚」。
それほどまでの重圧が「宝玉眼」から放たれている事に、気づいてしまった。
ギルドが情報を秘匿するモンスター…人の世に災厄をもたらす邪悪な意志…真なる「宝玉眼」。「宝玉眼」は…あの「眼」は本物だ!まだ「生きている」!
-
621
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-02 22:45
ID:GoDFsxZ2
[編集]
よせ、取るな!!!声を張り上げる。
ぎゅすた~ぶは気にせずに「眼」を拾い上げ、片目を失ったナルガクルガに近付いて…
「さあ!我が同胞、ナルガクルガさん。この宝玉眼の力で共に人の世に黄昏を…」
ナルガクルガの傷跡に、はめ込んだ。
「ーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!」
突如、声にもならない鳴き声を発してナルガクルガが暴れ出した。
傷跡から「眼」を掻き出そうとしているのか、腕をやたらに振り回して転げまわる…それでも何故か取れない。
暴れるナルガクルガに巻き込まれ、こちらまで弾き飛ばされてきたぎゅすた~ぶは酷く狼狽えながら言った。
「ブニャっへ!…な、なぜでございますにゃ!?なぜ同じメラルーのワタクシを攻撃するのですにゃ!?」
は?同じメラルー?
その言葉に答えるように、ナルガクルガはピタリと動きを止めこちらへ向き直る。
バチッっと何かが弾ける音。立ち上る黒い蒸気。
それと同時にぎゅすた~ぶの首目掛けて鋭くしならせた尻尾が打ち付けられた。
咄嗟に飛びつき、ぎゅすた~ぶを抱えながら転がって距離を取る!ナルガクルガはメラルーじゃない!!
そう教えてやると、ぎゅすた~ぶは目をまんまるにして驚いていた。
「そんなバカにゃ…、ではワタクシは最初から間違って…」
この驚きようだと、本当にナルガクルガを大きなメラルーくらい思っていたようだ。
自分勝手な奴だと思ってたが、勘違いとは言えそれなりに仲間想いの奴でもあるのかも知れない。
「同胞だと思ったのに…よくも騙しましたニャ、ナルガクルガさん!その宝玉眼は返してしてもらいますニャ!凡愚さんも手伝いなさいですニャ!」
やっぱり自分勝手なやつだ。極度の興奮状態に陥って黒い毛の所々から「獰猛な赤黒い蒸気」を発し、双眸に赤と金の残光を宿す悪魔の様な「迅竜」。
その禍々しい蒸気は見上げるような巨体を連想させ、その射殺すような眼差しは心が握りつぶされそうな威圧感を覚える。
この場にいるだけでどうにかなってしまいそうな緊張。
しかし、「眼」の影響でこのような特異な姿を得たのなら、その「眼」を取り除けば今ならまだ無力化できるかも知れない。改めて一人と一匹、ナルガクルガと対峙する。
手にした盾は目の前の「獲物」のみを写している。
なんの事はない…、いつも通りの狩りの始まりだ! -
622
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-02 22:47
ID:GoDFsxZ2
[編集]
※宝玉眼を手に入れてその意志に触れたあなたは、直感的に「勝利条件」と「シナリオボスの情報」を悟りました。
~シナリオボス~
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迅竜特殊個体 獰猛化「宝玉眼」ナルガクルガ
分類:飛竜種(竜盤目 竜脚亜目 前翼脚竜上科 ナルガ科)
ハンターに捕獲され、ドンドルマの闘技場に捕らえられていた頭部が部位破壊済みのナルガクルガ。
潰れた片目にギルドが秘匿する謎のモンスターの眼「宝玉眼」が差し込まれ、眼に残る邪悪な意志に感化され獰猛化している。
通常の獰猛化モンスターの特徴に加えて宝玉眼により至近で睨みつけた相手を威圧し発狂させる眼力を得ている。
ただし、この個体は宝玉眼の影響で頭部の龍耐性が極端に落ちているようだ。
眼だけとなってなお残るドラゴンの力の一端。これに立ち向かうには宝玉眼の視線を跳ね返し、強烈な龍属性を宿した攻撃で再び頭部を部位破壊する他ない。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
勝利条件
・頭部の部位破壊
・宝玉眼ナルガクルガの討伐
・守衛隊の到着
のいずれか一つの達成
※この戦闘では一手ごとに「宝玉眼」から「6d6+6」(6個の6面ダイスの出目に6を足した値)のやる気ダメージを受けます。
やる気が底をつく前に勝利条件を満たしましょう。
また特定の選択肢は成否判定が定められておりますが、合わせてアイディアを書き込むことで上方修正が付くかも知れません。選択:「宝玉眼」ナルガクルガを倒せ!
1、突撃!(20%の成否判定あり。特定の行動があれば確定成功)
2、助けを呼びに行く(あなたとぎゅすた~ぶどちらが行くかも選んでね)
3、前線をぎゅすた~ぶに任せて拘束弾を使う(50%の成否判定あり)
4、その他(お好きな行動)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あなたの状態
武器:祀導器【不門外】 防具:なし
やる気:59 お金:4.000z
道具 :ピッケル スキル :なし
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― -
623
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-03 15:01
ID:NoBTyIXM
[編集]
ぎゅんたぶー君に拘束は任せましょう。拘束させたら助けに行かせます。
そしてSANチェックは相手にやらせるもの!!盾で相手の視線を反射させつつ突撃ー!
(鏡面みたいならきっと行けるはず(願望))
他の人の意見も組み合わせて戦いたい・・・ -
624
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-03 22:33
ID:NakhxNcU
他の人の意見も組み合わせてくれるなら。
その構えてる盾で頭をしばいてスタンを取り、ついでに目ん玉ももぎ取りましょう。 -
625
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-03 22:46
ID:GoDFsxZ2
[編集]
アヒン(会心の一撃)…そう言えばぎゅすた~ぶにリーダーの存在を伝えておくって選択を反映させておくのも忘れてた。まあ適当にゴリ押せばいいか。
以下続き「おや?流石は凡愚さん。これは良い物をお持ちでいらっしゃいますにゃ」
ぴょん、とポーチに飛びついたぎゅすた~ぶの手の中には拘束弾が握られている。
このクソメラルー、また勝手に他人の物を!
「小さきネコの身では大した役にも立てますまい。これを撃ったら助けを呼びに行って差し上げます故、あとは何とかして下さいまし。ですニャ」
何とかって何だ!そもそも俺防具すらないんだけど!?
そんな俺の訴えなぞどこ吹く風で、スルスルとバリスタの設置された高台まで登っていくぎゅすた~ぶ。
どこまでも勝手な奴だ!「凡愚さん!前見て前!」
ぎゅすた~ぶに言われて振り返る。
目の前には二色の光の尾を引きながら刃翼を振りかぶるナルガクルガが迫る。
防具なしの今の状態では盾で受け流しても耐えられないであろうその一撃がくりだされ、避けられぬ「死」を宿命づけるように暗い激情のみを叩きつける金色の視線がこちらを射貫く。
視線に足が竦み、蒸気が弾ける音がして、両断される…瞬間。
視線…鏡。
ある種の閃きで盾をかざす。盾の鏡面が金色に輝く瞳を湛えた「宝玉眼」を捉え、ナルガクルガの視界にそれを跳ね返した。
「!!!!!!!!!!!!」
ナルガクルガが苦悶の声を上げて一瞬、後ずさる。
「凡愚さん、ナイスでございますにゃ!」
その隙を見逃さず、ぎゅすた~ぶが放った拘束弾がナルガクルガを中心で捉え、地に縫い付けた。
藻掻きながらもなおこちらを睨む宝玉眼を盾で遮り、剣を…祀導器【不門外】を振り上げる。
後ろで「待って」とか「壊すな」とか喚いているぎゅすた~ぶを意識の外へ追いやって、宝玉眼へ狙いを定め…振り下ろす。
剣は意外なほどあっさりと宝玉眼を食い進み、その真球を二つに割った。(----------------------------------------------------)
辺りに形容しがたい断末魔が響き渡った。気がした。
それがナルガクルガの咆哮か、あるいは宝玉眼の最後の思念だったのか、俺には分からなかったが。ナルガクルガは拘束弾に縛られたまま、深く気絶しているようだ。
罠と麻酔で捕獲した状態にも似ているこの状態ならば、もうこの街の守衛隊だけで何とかなるだろう。
ぎゅすた~ぶはいつの間のにか影も姿も無くなっていた。助けを呼びに行くとか言っていたが…逃げたな。
そして…
足元の宝玉眼だったモノを拾い上げる。
いまや二つに割れて禍々しい輝きを失ったそれは、ただ純水晶の透明さだけでその存在を主張している。
仕事は終わりだ。
その実感とともにそれをポーチへ仕舞いこみ、俺は今度こそ龍歴院へ帰るべく街の入り口を目指した。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ぎゅすた~ぶは拘束バリスタ弾を発射した!50以下で命中。
1d100=21
命中!拘束弾がナルガクルガを地に縫い付ける!あなたの突撃!
特定の行動(盾を使った行動)が含まれていたため自動成功。
邪悪な視線を跳ね返し、龍殺しの剣を眼に突き立てた!おめでとう!あなた達は宝玉眼を砕く事に成功した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― -
626
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-03 22:48
ID:GoDFsxZ2
[編集]
あ、やべ。更新されたレス見ずに投稿しちゃった。まあ展開的には眼とれとるからええやろ。(震え)
~エンディング・筆頭ハンター~
ずぶ濡れのオレンジ頭の男…筆頭ルーキーと青い鎧の男…筆頭リーダーは共に川の上流を目指して駆けていた。
リーダーが川べりに引っかかっていたルーキーを引っ張り上げてやった後、街の異変を察知したのだ。「しっかし、この後ジブン達どうなるんすかねー。あのわがまま王女様の直々のご依頼に失敗しちゃったとなると」
「どうもなるまい。あのお方の事だ、すぐに忘れて次の遊びを思いつくよ。そもそも、本当に『眼』がこの街にあったかどうかも確証が無かったのだ」
「そうっすよね~。多分、ジブンの見立てでは最初からそんな物なかったと思うんすよ。えへ。」二人は夜闇を駆けながらそんな言葉を交わし合う。
(もっとも、しばらくは我々がご機嫌取りをする羽目になるだろうが)
そんな言葉を口に含みながら、リーダーはただでさえ皺の寄った眉根をさらに寄せた。
あの王女様の大好きなラージャンを10や20は狩らされるかも知れない。
そんな突飛な予想に苦笑を漏らしつつ、戦闘街への門を潜る。そこで彼らを待っていたものはーーー「おお、この街の救い主殿!」
「クシャルダオラ来襲事件のみならず、今回も解決に協力して頂けるとは!」
「流石、筆頭ハンターともなるとナルガクルガでは相手にもならなかったようですな!」ーーー守衛隊が口々に称える、身に覚えのない名誉であった。
実際にナルガクルガを止めたあなたやぎゅすた~ぶがその場からさっさと姿を消したため、彼らの手柄だと勘違いされたのだが…
「え?えへへ。まーね!やっぱ分かっちゃいます!?ジブンほどの実力があれば戦わずして事件解決くらい訳ないっす!」
(ルーキー…!)筆頭リーダーは限界まで皺の寄った眉間に指を当てて、どう収拾を付けようかと苦悩した。
…リーダーの苦労が絶える事は、当分は無さそうである。・
・
・~エンディング・ぎゅすた~ぶ~
「やれやれ、今回は色々と失敗でございましたニャ」
青いマントを引っ掻けた黒い毛並みを闇に溶かし、街から遠ざかるようにひた走る一匹のメラルー…ぎゅすた~ぶはそう呟いた。ドンドルマの闘技場で見かけた同胞…だと勝手に思っていた隻眼のナルガクルガ。
彼を開放し、あの「眼」を与えればなんかめちゃくちゃ強くなって凡愚なる人間共をビビらせてやれるニャ!
そんな考えで始まった今回の計画(と言うにはあまりに杜撰だが)は、一人の「凡愚さん」のせいで水泡に帰した。とは言え一度失敗したくらいで偉大なるネコの時代の幕開けを諦める訳には行かない。
まだまだ人間の脅威になる未知のモンスター達はたくさんいる。これからもそれらを追い、人間にけしかけてやるだけだ。
ぎゅすた~ぶはにっくき「凡愚さん」の顔を強く胸に刻み付けると、一際高く飛び跳ねて叫んだ。「これで勝ったと思うなよ~~~!でございますニャ」
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627
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-03 22:49
ID:GoDFsxZ2
[編集]
~エンディング・あなた~
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月刊狩りに生きる!特別号!
~ドンドルマ迅竜脱走事件!筆頭ハンター活躍の裏で謎のヒーローの暗躍!?~
先日、ドンドルマの街中で闘技場に捕らえられていたナルガクルガ一頭が脱走する事件が発生した。
守衛隊の発表では「筆頭ハンター」により再び捕らえられたとの事だが一方で注目を集めているのが「謎のヒーロー」暗躍の噂。
街の住人たちの証言によると「謎のヒーロー」は「龍殺しの剣を操る凄腕」「レザー一式の駆け出し」「インナー一丁の変態」「ネコ」など様々だが、実はこのハンターが脱走したナルガクルガを捕まえたのでは?と言うのだ。
姿なき「謎のヒーロー」…その中でも特に信憑性があるとされる「インナー一丁の変態」説と「ネコ」説にスポットを当てて噂を検証…
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そこまで読んで雑誌を閉じる。
仕事の疲れを癒すという名目で今日くらいは自室で雑誌でも読みながらゴロゴロしてようと思ったが、存外に記事が下らなすぎて読む気が失せた。
宝玉眼を破壊したその後、俺はこれ以上の面倒はゴメンだとさっさと街を後にしたのだが、それはそれでいらん憶測を呼んでいるようだった。
ベッドに寝転がったまま、一連の事件に想いを馳せる。
…
何が何やら分からぬまま幻の宝石の回収に行かされ、自称魔王のクソネコや筆頭ハンターを出し抜いて、やっと見つけたそれは思ってたよりずっとヤバい代物で。
せめて宝玉眼とは結局何だったのか、それだけでも教えて貰わんと割に合わん!とギルドマネージャーを問い詰めはした物の…「焦らずとも、時が来れば嫌でも思い知る事になるかもねぇ…」
そうはぐらかされ、結局詳しい事は分からなかった。
報酬代わりに押し付けられた宝玉眼も、二つに割れた今では只の「ピュアクリスタルの出来損ない」と変わらない。
これが本当に何者かの眼だったとして、その正体を知るための手掛かりは良くも悪くも失われたのだ。…分からない事を考えても仕方がない。
たまには気晴らしも兼ねて仲間の顔でも見に行こう。
差し当たりまずはエリクシルの所にでも。
そう決めて手の中の宝石をベッドに放り投げ、家を出る。宝石はベッドの上で何度か転がると、陽の光の色にチラチラと輝いた。
シナリオ48~宝玉眼~ クリア!
素材:迅竜のG級素材
素材:迅竜のG級獰猛化素材
称号:「謎のヒーロー」(ドンドルマの影で暗躍した!)
勲章:「割れた純水晶」(幻の宝石を入手した証。今ではただのクズ水晶) -
628
名前:宝玉眼@暇
投稿日:2018-11-03 23:39
ID:GoDFsxZ2
[編集]
以上でシナリオ48を終了します。
読み手の皆様のご協力もあって、自分にしては早いペースで投稿できました。ありとうございました!
次に柄じゃないけど後書きというかシナリオ解説。
…色々ありすぎて何解説していいか分かんないや(池沼)とりあえず各陣営の街中での行動パターン
ぎゅすた~ぶ:闘技場スタートで露店通り→キャラバン→川→キャラバン。
ただし、宝玉眼を探している事に気付かれるとすれ違いざまに攻撃してきます。
筆頭ハンター:戦闘街スタートでリーダーは待機→ルーキーだけ川→露店→大老殿→戦闘街かキャラバン。
ルーキーと同行していない状態でリーダーに宝玉眼の名前だけを出すと敵対されます。
没イベント
キャラバンの飯屋台:天にも昇るほど美味しいご飯で本当に天に昇って死亡。あの世で守護霊という名のネコの防御術を授かって蘇生する(は?)
アリーナの劇場:なによ!生まれちゃってるじゃないの!もう知らない!と言う話を聞ける
アリーナの闘技場:宝玉眼が入手できなかった場合は戦場がコッチになってました。
大老殿:身元を証明する称号名乗りイベントをクリアしたら大長老に会い、宝玉眼の詳しい情報を聞ける。その状態で竜人問屋にあうと値切り可能。あ、あと宝玉眼は黒い方の眼であってうまれちゃったほうは紅いじゃん!というご指摘もあるかと思いますが大体似たような物って事で許してね。
あ、ついでに想定外だったのがルーキーが流されたままついに復帰しなかった事。
ホントはぎゅすた~ぶとルーキーとあなたの三人で仲良くお魚釣り対決とか考えてたんや。
じゃあなんで確立半々のダイスなんかに丸投げしたのかと言われればすいませんでしたとしか言えませんが…。
ダレンはもう選択自体が想定外だったので殿堂入りって事で、ここで語る事は出来ますまい。それから時系列とかネタ被り要素ついて。
これは47・5で女子会の皆さんがタマミツネ調査に行ってるのと同時期って設定でやってました。
冒頭のギルドマネージャーが「まさかミーシャもいないなんて」発言と最後のあなたのエリクシルのとこでも行くかって行動がそれに繋がってます。
ネタ被りについては47・5にて「眼」というキーワードと「ミラぴー」の存在を示唆する描写があるってだけです。
でもせっかくだから今回の宝玉眼はドンドルマにいた頃にミーシャが「ぴーボレアス」から射落とした物ってことにしたろ!って形で拾わせてもらいました。
冒頭の悪夢のシーンについては特に時系列なんかは考えておらず、頓挫して無かった事にしちゃうなら強引にでも拾っておこうくらいの感覚でやりました(犯行供述)
アリネア一行は今もどこかで元気に狩りをしてると思います。シナリオ中のダイス処理については線で仕切って本文中に載せたので割愛。
色々矛盾や言いたい事も多いシナリオだと思いますが、途中からっていうか割と最初から思い付きだけでやってたので(は?)都合の悪い部分はまるっと無視して構いませんのでこの後も好きにやっちゃってください。
それではお疲れ様でした!ありがとうございました! -
629
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-03 23:42
ID:ppizYosU
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暇氏久々のシナリオ進行お疲れさんしたぁ。
文章力が高いだけじゃなく、ゲーム的な面白さもあってホンマに良いなぁ。尊敬しちゃいますわ……。というかどうしてテキクエにはこんなにレベルの高い作者陣が集まるのか……謎や、ミステリーや!さて、サラッと予告してたけど自分みたいなド素人が本当に次のシナリオ書いていいのか今更ながらに不安になってきたぞえ……まあ、明日の昼ぐらいまでに何も言われなかったら始めてみましょかね〜。
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630
名前:兎
投稿日:2018-11-04 01:09
ID:h3fvt/Eg
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暇氏シナリオ48お疲れ様でしたー。 世界観の描写とかは敵いませんなぁ、自分4Gデビュー勢なので...
謎解きシナリオはやはり暇氏の十八番ですなー、プロットお疲れ様でした。 そして女子回のアレをこんな風に拾ってくれるとはニヤけざるをえない。>>629
何か失敗したとしても『なんてこったい』ぐらいで済ませればいいんですよ。
もし頓挫してしまっても自分たちが全力でフォローします、なので安心して書き始めてくださいな。 -
631
名前:時雨
投稿日:2018-11-04 08:42
ID:gX20EMvk
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あなたの日記十三冊目 目次に戻る(>>1)
その1(>>46) その2(>>392) その3(ここ)シナリオ48 『宝玉眼』(>>582)
世界三大宝玉とうたわれる『宝玉眼』を確保してきてほしい。
そういわれ半ば押しつけられるようにしてギルドマネージャとクルトアイズに飛行船に押し込まれ、宝玉眼があるというドンドルマへと向かう事になったあなた。
宝玉眼の捜索中、魔王を自称するメラルー『ぎゅすた~ぶ』に金儲け勝負を持ちかけられたり、リーダーと呼ばれていた青い鎧の男に質問されたりと紆余曲折あったが何とか宝玉眼を入手することに成功する。
帰投しようとすると闘技場よりナルガクルガが脱走、止むを得ず戦闘街で迎撃することとなったのだが、ぎゅすた~ぶに宝玉眼を奪われそしてナルガクルガの傷跡にそれを埋め込んでしまう。
その結果『眼』の性質のせいかナルガクルガは暴走。『獰猛化宝玉眼ナルガクルガ 』へと変貌した特異な個体との激闘の末、埋め込まれた宝玉眼を砕く事に成功した。
報酬代わりに押し付けられた割れた宝玉眼の事をしばらく考えていたが、分からない事を考えても仕方ないと割り切り、気晴らしも兼ねて仲間の顔でも見に行こうと、まずはエリクシルの所に向かうのであった。 -
632
名前:時雨
投稿日:2018-11-04 08:49
ID:gX20EMvk
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特殊個体図鑑その2 目次に戻る(>>1)
その1(>>49) その2(ここ)迅竜特殊個体 獰猛化「宝玉眼」ナルガクルガ
分類:飛竜種(竜盤目 竜脚亜目 前翼脚竜上科 ナルガ科)
ハンターに捕獲され、ドンドルマの闘技場に捕らえられていた頭部が部位破壊済みのナルガクルガ。
潰れた片目にギルドが秘匿する謎のモンスターの眼「宝玉眼」が差し込まれ、眼に残る邪悪な意志に感化され獰猛化している。
通常の獰猛化モンスターの特徴に加えて宝玉眼により至近で睨みつけた相手を威圧し発狂させる眼力を得ている。
ただし、この個体は宝玉眼の影響で頭部の龍耐性が極端に落ちているようだ。
眼だけとなってなお残るドラゴンの力の一端。これに立ち向かうには宝玉眼の視線を跳ね返し、強烈な龍属性を宿した攻撃で再び頭部を部位破壊する他ない。
シナリオ48にてあなたとぎゅすた~ぶと戦闘。激闘の末、あなたに宝玉眼を砕かれ迅竜は拘束弾に縛られたまま、深く気絶した。 -
633
名前:時雨
投稿日:2018-11-04 08:57
ID:gX20EMvk
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色々追加しつつ暇氏お疲れ様でしたー!
久々のシナリオ進行にも関わらず、文章力の高さと暇氏の十八番ともいうべき謎解き要素、とても面白かったです!さて、お次は>>629氏がやられるのかな? 期待しておりますよ!
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634
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-04 09:56
ID:NoBTyIXM
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暇さんお疲れ様でした!
後半の爆破やら拘束やらたぶん予想してなかった選択肢も拾ってくださりありがとうございます!♪
>>629
たぶん100くらい前の私のを反面教師にしてもらえばたぶん平気なはず・・・
(兎さんと暇さんのを読んだ後私のを看ると色々やらかしたのが良く分かります・・・)(...PCさん買ったら冒頭の夢をレギュレーションに組み込みたいとか思っている人)
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635
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-04 11:22
ID:ppizYosU
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では予告通り進行を頂くとしましょうか。他の作者様に比べると随分と見苦しいでしょうがどうかしばしお付き合いください。
※レギューション解説
本シナリオではダイスロールを採用していません。代わりに各選択に1〜5点の評価点が設定されており、最終的な評価点の平均点によってエンディングが変化する仕様となっております。(つまり、結末にまるで関係の無い選択でもエンディングに影響することがあります)
各選択肢に一応は正解(5点)を設定していますが、自由枠解答が私の予想を上回るものであったり、正解ではない選択でも筋の通った根拠が存在した場合は5点、作者の驚き度によっては6点や7点が付くことがあります。もちろん、逆に得点が下がる場合もあります。でわどうぞ。
───────────────────────────────
閉ざされた空間で、
───素晴らしい、通常とは全く異なる成長をしている自分の存在理由を考えていた。
───特殊個体の変化過程を間近で観れる日が来ようとは何故今自分という存在はここにいて、
───なんという成長力だここで何を成すべきなのか、それを考えていた。
───高い学習能力を示しているそれは或いは意味の無い問いだった。
───いったい何があったらこのような変化がそうだ、自分の存在理由は此処にはない。
───おい、飼育係は何処へ行った!?自分が成すべきことは此処にはない。
───あり得ない、檻が破壊されているならばそれを探しに行こう。
───逃げろ!早く逃げるんだ!例えその先にどんな未来が待とうとも、
───嫌だぁぁぁあ!助け…甘んじて受け入れる覚悟があった。
───奴が脱走した!早く取り押さえろ!この広い広い無限の世界で、
───なんなんだ、いったいなんなんだ!この狭い狭い夢幻の世界で、
───なんという成長力、なんという学習能力自分の在るべき場所を、
───よもやこれほどとは……自分の成すべきことを、
───人間に飼育された経験が恐ろしい怪物を生み出してしまったんだ!見つけようと、思ったのだ。
───こんな大事になるなんて……見つけたいと、願ったのだ。
─
──
───
────プロジェクトは失敗だ─── -
636
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-04 11:32
ID:ppizYosU
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"事故"は……人知れず起きていた。
それは防ぎようもない、抗いようのない、まさしく"事故"に他ならなかった。……いや、あるいは防ぐことも、抗うことも、もしかしたら出来たのかもしれない。しかし、予測出来ない事態に対して、咄嗟にそれを講じることが出来るほど、人間は強く賢い生き物では無かったのだ。それだけの、話である。
そうして、とうの昔に起きていた"それ"を、しかし事実として知ることができた者は、極々限られた一部の人間のみに留まった。それも当然であろう、"あるはずのない場所"で、"いるはずのないモンスター"が、どうして脱走など起こすことが出来ようものか。
逃げ出したモンスターは計四匹。その内一匹は既に死亡を確認しており、もう一匹はつい先日ハンターの手によって捕獲されたことを秘密裏に確認したばかりであるが、残す二匹は未だ完全にその行方を眩ませていた。
世界的に影響力を持ち、多数の調査員やハンターを抱え、高速飛行船などの最新の技術力も有するハンターズギルドの力を持ってして、しかしその二匹の所在を完全に特定することができなかったのには、れっきとした理由がある。
一つは、逃げ出した四匹の内その二匹は、他の二匹とは一線を画する高い知能を有していたこと。特に脱走の原因と思われるモンスターは人間さえ容易く出し抜くような高い知性と狡猾さを持ち、特異な個体という存在の恐ろしさと可能性をまざまざと見せ付けられた。
そしてもう一つは、表向きに堂々と捜索するわけにもいかなかったからである。ギルドの持つモンスターの位置情報は、そもそもハンターや一般人による目撃情報を元に調査員を派遣して学術的な調査を行うことによって割り出されるものである。だからこそ、表向きにできないモンスターの捜索は前提条件であるハンターや一般人の協力を取り付けにくく、そして派遣できる調査員も限られてくるので、結果的に捜索を遅らせるのだ。ギルド側の事情を鑑みれば、公表するわけにもいかなかったのだろう。そもそも"事故"が発生した施設は、その存在すら一般には秘匿されており、そこで行われていたことは、必要なこととはいえ決して褒められた行為では無かったのだから。
だが、それでも──
もし公表していれば、或いはもっと違う結果が待っていたかも知れない。それはありうべからざる「たられば」に過ぎないが、しかしその特殊個体の捜索がもう少し早く、大規模に行われていれば、あのような化け物が生まれるには至らなかっただろう。
しかし、今更何を言おうとも、最早どうしようもないことである。
そう、それは"どうしようもないこと"なのだ。仮に未来を見ることが出来る力があったとして、明日雨が降ることを知ったところで、人間の身にはどうすることも出来はしない。変わるのはせいぜい、雨に降られた時の自身の感情ぐらいなものだろう。
どうやっても人智の及ぶところに無い、ある種の決定された運命。そのぐらい、理不尽で……
──
───それは紛れもなく『災害』であった。 -
637
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-04 11:36
ID:ppizYosU
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深く心地よい意識の海から、ゆっくりと浮かび上がっていく感覚……端的に言えば、目覚め。
明確なキッカケがあったわけではない。しかし根源的に備わった本能とでも言うべきものが静かに、しかしだからこそ確実に、俺の意識を新たな目覚めへと導いていく。何故、朝というのはこうも毎日毎日飽きることもなくやってくるのだろうか。一日ぐらい休んでも誰も文句は言わないのに……。そんな哲学的(?)な思考を抱きつつも、しかしそれがどれだけ無意味な行為であるかを思い出して、掃き捨てるように考えを打ち切る。
そうして、心の中でとはいえ能動的な行為を意図的に行ったことにより、未だ半分ほどが休眠状態にあった俺の意識は急速に覚醒へと導かれていった。いつもならなんだかんだ言いながらもここですぐに目を開けて行動を始めるのだが、連日の狩猟の疲れが溜まったのか、というかぶっちゃけ先日の事件の疲れの所為か、どうにも眠くてかなわない。
いつもの朝のように窓から射し込む日差しが無いことが、より一層それを増長していた。
顔を撫でる空気が妙に冷たい。どうにも今日はいつもより気温が低いようだ。こういう日は一日中布団に包まって過ごすというのもたまにはオツではあるまいか。うむ、それがいい。などと適当な理由をつけて、やや厚手の布団を顔まで覆い被せながら、魅惑の布団へと倒れ込む。そうして再び夢の世界へと旅立とうとすると、しかしどうしても俺の旅立ちを引き留めるものがあった。頼む、どうか止めないでくれ、男には旅立たなければならない時があるんだ。などというつまらない冗談はさておき、外が妙に騒がしいのである。
一体この長閑なベルナ村で、この寒い日に、何を朝からこうも忙しなく動き回っているのだろうか。それこそもう少し遅くからでも…………うん?
"いつもの朝のように窓から射し込む日差しが無いことが、より一層それを増長していた"?
……そこまで思考が至ったところで、俺は未だ夢の世界への誘惑を続ける布団からガバッと飛び起き、枕元に備え付けられているカラクリ式の時計に視線を送り、そして驚愕する。
その時計が示していたのは、そろそろ昼飯時かというぐらいの真昼間であった。…………。
オーケー相棒、理解したぜ。これは即ち──「寝過ごした……」
シルビアたーん、、どーして起こしてくれなかったんだよー。。
などと嘆いていても仕方がない。昼になってまで寝ているのは流石にまずかろう……いや、でも、今の今まで誰も起こさなかったんだし、今日は特に予定があるわけでもなし。何故かあまり腹も減っていないようなので、いっそのことこのまま布団に包まっていても大丈夫なのではあるまいか?
というか、こんな寒い日に布団から出歩きたくないというのが正直なところ……いやいや待て、流石に昼過ぎまでグータラしているのは不味くはあるまいか。一度体に染み付いた怠惰は絶対に抜けないと言うしなぁ……。うーむ、悩ましいところだ。
Q.どうしますか?
1.このまま寝ている
2.布団から出て起きる
3.布団に包まったまま起きる
4.その他 -
638
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-04 12:55
ID:w0pYpYJA
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主人公の持論と言えば「お布団は装備」という事で3でお願いします。
どことなくインドミナス感漂う冒頭ですな
-
639
名前:暇
投稿日:2018-11-04 13:00
ID:GoDFsxZ2
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わあ、初めてあらすじとかまとめられちゃった。うれp
選択肢はどっかで見た事がある3で
きっと+5ポイントは固いやろなぁ… -
640
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-04 14:22
ID:ppizYosU
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チュートリアル……5ポイントゲット!
ラング(村長)があなたを見つけやすくなった!
──────────既に日は高く登っており、朝どころかそろそろ昼飯時になろうかという時間だ。いい加減起きない訳にも行かない。しかしこのクソ寒いのに、布団から出るのもなかなかに勇気がいる行為である。
そんなジレンマの中で、俺は革新的な発見をした。即ち、布団に包まったまま起きちゃえばいいじゃないか……と。そうと決まれば話は早い。俺は早速と言わんばかりに体にふかふかの布団を巻きつけ、緩慢な動作で起き上がる。うむ、かなり壊滅的なファンションだが、ワンチャン装備ということで誤魔化せるだろう。何故だか妙に既視感のある光景だが、多分気の所為だ。
そうして、『ふとんシリーズ』のマイセットを装備した俺がマイハウスのドアに手を掛けると、一枚の張り紙の存在が目に付いた。『今夜から明日までルームサービスが集まる定期報告会があるから、しっかり起きてご飯食べてくださいにゃ byシルビア』
……あー、そういえば昨日そんなことを言っていたような気がしないでもない。寝ぼけていたので話半分に聞いていたが……。
うん、取り敢えずすまないシルビア、俺は自分が思っているよりダメな人間だったみたいだ。定期報告会とやらにいるであろうしっかり者のアイルーに心の中で謝罪をしながら、出来るだけ布団から手を出さずに済むようにゆっくりと扉を開け、マイハウスから出る。顔に吹き付ける冷たい風が急速に俺のやる気を削いで来るが、ついさっき己の自堕落を反省したばかりなので心情的に戻ろうにも戻れなかった。
そうして、この日初めて外に出てみると、やはり太陽は天高く昇り、往来には村人達が溢れていた。そのことで改めて今は昼時なのだとさながら他人事のように実感させられ、なんとも摩訶不思議な感情を覚えている自分がいる。
わかりやすく言えば、時間感覚が狂うから寝坊は良くないなということである。未だボンヤリしている頭でそんなとりとめもないことを考えながら、周囲から妙な視線を注がれていることにも気付かず、俺は取り敢えず飯でも食うかとそのままの格好で屋台のおかみの場所まで歩き出した。つい先程まで微塵も感じなかったのに、いざこうして動き出すと途端に腹が減るのだから、体というのはなんとも現金なものである。
「おお、ハンター殿、探しましたぞ!」
そんな風にモゾモゾと歩いていた俺に、突如そんな声が掛けられた。やや高めの身長に立派な髭を蓄えた壮年の人物、言わずと知れたベルナ村の村長その人である。どうやら俺を探していたようだが、何故真っ先にマイハウスを探さなかったのだろうか?
という疑問はそもそも何故自分がずっとマイハウスにいたのかという藪蛇になりそうなので引っ込めた。「ハハハ、またぞろ珍妙な格好をしておられますな。話によると確か装備の一種だとか……まあどちらでもよろしい。姉上がお呼びですから、早めに行ってやってください。あの人も中々に短気ですからな、ハッハッハ!」
お、おう……。ふとんを装備ということで誤魔化そうなどと考えていたのは他でもない先程の俺自身だが、村長の口振りから察するにまさか本当に『ふとんシリーズ』というのは実在する装備なのか?
いやしかし、加工屋の目録を見てもそれらしきものは……強いて言うならユアミシリーズが一番近いか……。ならば『ふとんシリーズ』もあり得ない話ではないのかもしれない。中々に興味深い話だが、本題はそこではない。村長の姉……即ちギルドマネージャーからの呼び出しである。未だ嘗てギルドマネージャーから呼び出されて厄介ごとに巻き込まれなかったことがあっただろうか?いや無い(反語表現)
しかし行かなかったら行かなかったで余計に面倒になることは目に見えてるんだよなぁ……あぁ、束の間の爽やかな朝よ……って、今は真っ昼間だわ。仕方あるまい、とっとと飯食って行くとしよう。
-
641
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-04 14:53
ID:ppizYosU
[編集]
※ここで出てくるハンター三人組はモブであり、本シナリオないし今後の登場予定はほぼありません。
─────────────────────────────今日も今日とて屋台のおかみの美味い飯を胃に流し込み(妙におかみの視線が冷たかった気もするが多分気の所為だろう)、そして呼び出しを食らったことを思い出して憂鬱な気分になりながらオババのいる集会所まで向かっている途中、数人のハンター達が何やら噂話をしているのが耳に入った。
「本当だってば、一瞬しか見えなかったけど、確かに見たんだよ!」
おそらく上位ハンターだろうか、レイアSシリーズに身を纏った中年のハンターが、彼のお仲間であろう二人組になにやら力説している。少し気になって耳を傾けていたところ、どうやら彼は遺群嶺でイャンクックの狩猟を行なっている最中に、チラリとボロボロの布切れを羽織った10代前半と見られる謎の少女を見かけそうだ。
「ウチの三番目の娘と同じくらいの歳の子だよ。見間違える筈がない!」
「しっかしよぉ、普通に考えたらあり得ないだろ、どうやったらあんな場所にそんな女の子が入り込めるって言うんだよ。」しかし、そんな彼の力説も虚しく、彼の仲間であろうホロロSシリーズの男は懐疑的だ。それも仕方ないだろう、遺群嶺は飛行船の技術の発展によりつい最近行けるようになったばかりの、言うなれば未だ人類には未知の領域であり、ハンターや調査員以外の一般人が容易く入り込める場所ではない。
もしかしたら何らかの理由で迷い込んでしまった可能性もないわけではないが、移動手段が小さな飛行船しか無い以上、その可能性も低いと言わざるを得なかった。「わからないよ?もしかしたら幽霊かも……」
と、そこで突拍子も無いことを言い出したのは、未だに疑わしげな表情の男と同じく、鮮やかな紺色が特徴のホロロSシリーズに身を包んだ女ハンターである。
ペアルックとはさてはリア充だな?ブラキディオス案件だろう?
というのはまあ冗談として、この三人はどうやらパーティーのようである。武器もそれぞれヘビィボウガン、大剣、操虫棍と隙がない編成だ。「はあ?それこそあるわけ無えだろ。子供だましじゃあるまいし…」
「いやいや、君がニブイだけで意外といるもんだよ、ほら、君のすぐ後ろにも……」ホロロS女の突拍子もない発言に対し、呆れるようにそう言い放つホロロS男。しかしそんな彼の反応を見越していたのか、ホロロS女は即座にその言葉を遮り、まるで怪談を語るような口調で彼の背後を指差した。
しかしながら、なんという古典的な煽り文句であろうか。浜の真砂も尽きるほど聞いたようなセリフである。「ふん、そんなこと言ったって、どうせ何も居ねえんだろ?」
奇遇にも彼も俺と同じようなことを思ったらしく、そう言って嘲笑うように後ろを見た男と、偶然にも目が合ってしまった。
だからと言って特にどうというわけではないのだが、妙に気不味い気分になってしまうのは最早仕方のないことなのだろう。どうして見ず知らずの人間と突然目が合うとこうも気不味くなるのだろうか。こればかりは人類の永遠の謎である。
しかし気になるのは、目が合ったオトコがまるで奇妙な生き物でも見つけてしまったかのような顔で俺を見ていたことだ。甚だ心当たりが無いが……まあどうでもいい。「……ナンダアイツ。ってほら、なんもいねぇ……」
──と、我に返った男が仲間達の方を振り返ると、確かに彼の言葉通り、そこには"何も居なかった"。
-
642
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-04 14:55
ID:ppizYosU
[編集]
「……ナンダアイツ。ってほら、なんもいねぇ……」
──と、我に返った男が仲間達の方を振り返ると、確かに彼の言葉通り、そこには"何も居なかった"。
つい先程まで会話していたはずの仲間達が、忽然と姿を消していたのだ。
などと、大仰に言っては見たものの、遠くから眺めている俺からすれば何が起こっているのかは一目瞭然だ。これこそまさに使い古された古典的な手法ではあるが、ようは足元に小さくしゃがみこんで男の死角に入ったというだけである。子供じみた悪戯である。「わっ!」
「ゥォワア!?」不意を突かれて一瞬、本気で仲間が消えたかと勘違いした男の足元から、脅かすように女が飛び出す。単純な悪戯だがどうやら効果は覿面であったらしく、男はビクッと肩を震わせ、情けない声を上げながら大きく後ろに飛び退いた。上位ハンターというだけあって、なかなかいい動きである。
その様子を見届けて、ホロロS装備の女とレイアS装備の男は心底楽しそうな表情で男をからかうように笑う。「っははははは!「ゥォワア!?」だって、、ひひひ」
「まさかこんな古典的な手法に引っかかるとは……プクク」
「お〜ま〜え〜ら〜なぁ〜っ!」そんな二人の反応に対し、顔を真っ赤にして怒りを露わにする男。しかし二人はそんな彼の怒りなど何処吹く風とでも言うかのように笑っている。案外、こういうのは彼等にとってはわりといつものことなのかも知れない。
「……ったく、そんなことより物量に任せてハンターを砂の崖から突き落とす悪質ゲネポス達の対策だ、対策!」
いつまでも笑い続けている仲間二人に対し、ホロロS男は怒りとはまた違った意味で顔を赤く染めながら、強引に話題を変えた。このまま同じ話を続けてもからかわれるだけだと思ったのだろう。
「クスス……はいはい、そういう真面目なところも好きだよ」
「ヒューヒュー、若いっていいねぇ、これぞ青春!」ポッ…と頬を赤らめながら上目遣いで男を見つめる女と、そんな二人を茶化すレイア装備の男。俺なら目の前でこんなことされたら砂糖を吐くか大タル爆弾でも投げつけてやるところだが、これぞ既婚者の余裕なのであろう(さっき娘がいるとか言ってたし)。
「あのなぁ……。というかベリーさんはそんなキャラじゃねぇだろ。」
そんな風にガヤガヤと喧しく騒ぎながら旧砂漠の地図や『狩りに生きる』を広げて唸る三人。流石にこれ以上聞き耳を立てるのは無粋かと思い、彼等から意識を離す。
最初の遺群嶺で謎の少女の姿を見たという話は少し気になったのだが、あるいはそれもホロロS装備の男を揶揄うための伏線に過ぎなかったのかも知れない。
まあ別に嘘でも本当でも俺には関係のない話ではあるが……──この時は、そう思っていた。
-
643
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-04 15:35
ID:ppizYosU
[編集]
爽やかな風の吹き抜ける高原を歩いてしばらく、俺は龍歴院本部の集会所に到着した。思い返せば、ここに来るのも何気に久々かも知れな……いや、実はそうでもないのか、どうにも最近は色々と日常が濃すぎるせいで、日付感覚が曖昧だ。今度カレンダーでも買ってみようか。
そんな他愛もないことを考えていると、開けた場所の中央に二人分の人影を発見した。最早言うまでもなくわかるであろう、ギルドマネージャーとクルトアイズの二人組である。厄介ごとの到来を告げる破滅の宣告者だ。恐ろしや……恐ろしや……。
などと言う考えは当然口になど出せるはずもないが、今までの経験を鑑みれば思わず逃げ出したくなってしまう俺の心情というのもわかってもらえるのではあるまいか。誰にとは言わんが。と、ちょうどその時向こうもこちらの存在に気付いたらしく、早くこっちへ来いと手招きをする。ああ、今度はどんな面倒な仕事を押し付けられるのか……戦々恐々としながら二人に近付いていくと、いつも大して表情を動かさない二人が今日は揃って変な顔をしているのに気が付いた。さっきから薄々勘付いてはいたが、どうして俺を見る人が見る人みんな奇妙な物体でも発見したかのような顔をするのだろうか。
そんな俺の疑問は、次の瞬間にはオババの言葉によって解消された。「……取り敢えず、いい加減布団から出たらどうだい?」
───あ。
「なんか……今の今まで忘れていたとでも言わんばかりの表情だな」
可哀想なものでも見るかのようなクルトアイズの視線が、妙に印象的であった。
◇◆◇◆◇
「やれやれ、とうとうインナー一丁の格好が自然に思えてきてしまったよ。スケベハンターも中々板に付いてきたじゃないか。」
『ふとんシリーズ』があまりにもしっくり来たものですっかり存在を忘れてしまっていた。そりゃ変な物を見るような表情になるはずである。そして今の俺はと言うと、信頼と実績のインナー一丁だ。すこぶる寒いが一々装備を取りに戻るのも面倒なので我慢するしかあるまい。オババの盛大な皮肉については最早慣れっこである。
「まあ、最早正装と言っても過言ではないか……何はともあれ、あなたにギルドから直接の依頼だ。」
なのにクルトアイズの言葉に心を抉られている自分がいる。インナー一丁は俺の正装ではない、どちらかと言えばリィの専売特許だ。なんなら快く譲らせていただこう……と口にすれば目の前のギルドナイトさんに逮捕されそうなので止めるが、しかしやっぱりいつものパターンだったか。なんというか、俺よりもっと頼りになるハンターはいないのだろうか、俺が知っている限りでも両方の指が折り畳まれる程度にはいるはずなのだが。
「チョロイからね……」ボソッ
「モノを頼みやすい顔なんだ」ボソッおい今なんつった!?ボンヤリだけどちょっと聞こえてたぞ!?
「とにかく、アンタに依頼だよ。大丈夫、今回はお宝探しだの人命救助だの厄介な依頼じゃないさ。極々普通の狩猟依頼だよ。」
なるほど、なら良……くはないだろ。何故狩猟依頼が一番簡単みたいな流れになってるんだ、たしかに"それ以外"にはロクな思い出がないけれども。
……まあ、どうせ拒否権なんて形式上ですらあって無いようなものだし、素直に受けるしかないか……。「それじゃあ頼むよ、ターゲットは遺群嶺に現れた紫毒姫リオレイアと通常リオレウスの狩猟だ。」
……それを普通の狩猟依頼と言いなさるか。
*狩猟クエスト「天の紫露に抱かれて」*
メインターゲット:紫毒姫リオレイアと通常リオレウスの狩猟
サブターゲット:リオレウスの頭部破壊
失敗条件:報酬金額ゼロ、タイムアップ -
644
名前:時雨
投稿日:2018-11-04 16:07
ID:gX20EMvk
[編集]
わぁお、紫毒姫来たか…
メンバー的には出てきたその謎の少女なんだろうが、厄介な奴だぞ…さて、シナリオ改変せねば…致命的な被りが生じてしまった…
-
645
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-04 16:13
ID:ppizYosU
[編集]
>>644例の王女様は金レイアにも前科あるから頑張って(屑)
─────────────────────────────紫毒姫リオレイア。
俗に言う"二つ名持ちモンスター"の中でも最初期に発見されたリオレイアの特殊個体である。
通常のリオレイアを遥かに上回る体格を持ち、更にその毒は『劇毒』と呼ばれる非常に強力なものに変化しているそうだ。もちろんただ体が大きくて毒が強いというだけの相手ではない、行動面でも非常に強化されており、毒を含む尻尾の扱いが非常に器用になっていたり、毒に隠れて目立たないがリオレイアのもう一つの大きな武器である炎のブレスも通常種から比べて格段に強化されている。また、肥大化した翼爪による空中での姿勢制御能力も上がっているため、通常時では閃光玉で撃墜することができないという報告も上がっているそうだ。「……まあ合格だな。しかし今回の相手はG級個体、しかも番であるリオレウスとの同時狩猟だ。その知識をしっかりと反復しつつ、しかし知識に足元を掬われないように戦う必要があるぞ。」
クルトアイズの言葉ももっともだ。たしかにモンスターと戦う時は知識があることが大前提だが、その知識に囚われすぎていれば容易く足元を掬われる。特に何故だか特殊個体と多く戦う羽目になっている俺からすれば、それは嫌という程に実感させられている言葉である。クソが。
まあしかし、どんな相手であれいたって普通の狩猟依頼なのだからそこまで面倒なことにはならないだろう。ならないと思う。ならないでくれ。ならないといいなぁ。
そんな俺の希望も虚しく、オババの口から嫌〜な予感のする追加条件が飛び出した。「ついでに、これは強制じゃないが最近遺群嶺に行ったハンター達の間で広まっているある噂についても調べてくれると嬉しいところだね。」
ある噂……?
そのオババの言葉に、俺は確かに覚えがあった。遺群嶺での噂話といえばつい先程聞いたばかりである。確か、本来いるはずのない少女の姿を見たとか……「おや、知っていたのかい?まあ女か子供が知らないが、人影を見たっていう目撃報告が相次いでいるのさ。ハンター達の間ではやれギルドが表沙汰にできない特別調査員だの、やれハンターを監視するためのギルドナイトだの、終いにゃ遺群嶺で死んだハンターの霊だのと、それはもうさまざまな憶測が飛び交っている。所詮は都市伝説的な噂話に過ぎないが、どうにも気掛かりでね。」
「オババの直感ですか、これは何かありそうですね。」をいクルトアイズ、不吉な事を言うんじゃない。
俺は知ってるぞ、勉強したぞ、そういうのを"フラグ"って言うんだ。「まあ、明確に問題が発生しているわけでも無いし、強制はしないさ。心の隅にとどめておいてくれ。……さて、以上だが、何か質問はあるかい?」
まあ、強制されていないならばワンチャン無視してしまえばいいのだし、きっとなんとかなるだろう。今から、今さら、グチグチ言っても仕方がないのである。
オババが何処かから取り出した依頼書を受け取りながら、俺は深く考え込む。ふむ、何か聞くべきことは……Q.どんな質問をしますか?
1、遺群嶺の近況について詳しく
2、ハンター達の噂について詳しく
3、紫毒姫リオレイアについて詳しく
4、その他(自由枠) -
646
名前:時雨
投稿日:2018-11-04 16:25
ID:gX20EMvk
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うん、モンスターさえ変えればいける、いけるよな?
選択は2で もう少しその子の情報が欲しい -
647
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-04 18:06
ID:ppizYosU
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第2選択、3ポイントゲット!
意地の悪い出題が猛威を振るう、全ての情報を獲得し損ねた!
──────────紫毒姫リオレイアについてはこちらもある程度知ってはいるし、他に特に聞くべきこともなさそうだ。となるとやはり気になるのは、現状一番の不確定要素であり不安要素でもある件の噂についてであろう。
ハンターの中で広がっている遺群嶺に出没する謎の人影の噂……もしそれが本当に単なる噂に過ぎず、何も起こらぬままクエストを終えることが出来たのならばまだいい。しかし、もし万が一その噂が真実であり、それが原因で何か面倒な事態に発展した時に、情報不足でより厄介な事になるようなことだけはどうしても避けたかった。というわけで、その噂についてもう少し詳しく聞かせて貰おうと思う。
「ふむ……ギルドとしてもそこまで詳しく情報を集めることが出来ているわけではないが……私が個人的に聞いた話ではどうやら傾向としてはその人影というのは『エリア8付近』でよく見られるそうだな。背丈はせいぜい『120〜130センチ程度の子供』だと言われているが、いずれも遠目に一瞬見ただけの情報なので正確とは言い難い。『最古の目撃例は約半年ほど前』だが、当時はハンター達の間でも見間違え程度にしか思われていなかったようだ。」
流石はギルドナイトと言ったところか、ハンター達の間に広がる噂話についてスラスラと語っていくクルトアイズ。いや、単にギルドナイトというだけならばここまで情報を集めるには至らなかっただろう、寧ろ適当な事を言ってしまえば後が怖いと、思うように情報が集められなかったかもしれない。ともすればクルトアイズがこれだけ情報を集められているのは、偏に彼の人徳のなせるところだろう。
美味いもんな、クルトアイズの煮物。しかし、半年前ともなるとそれこそ遺群嶺の調査は比較的初期段階に分類される筈である。今よりも人の制限は厳しく、ギルドから認可された一部の人間しか立ち入ることが出来なかった筈だ。それこそ、人一人迷い込んだともなれば数十人単位で首を切られかねないドエラいヘマでもやらかさない限りあり得る事では無い筈である。
あるいはだからこそ、この話は"噂"に過ぎないのであろう。目撃情報はあるのに、あり得るはずが無いという前提がそれを事実として認めさせないのだ。その証拠に、俺でさえそんな人物が本当にいるのか疑っている。
さらに言えば、よく目撃されるというエリア8付近というのは、様々なモンスターが出没する遺群嶺有数の危険地帯である。そんな環境で、子供ないしそれに近い体格の者が、半年間生存し続けるなど不可能に近い。
……というか、あの超高層域にずっと暮らしているとか色々と変になりそうではある。厳しい直射日光に薄い空気、気温は常に肌寒く雲が被っているかによって湿度が乱高下するのだ。おまけに、植物も鉱山地帯特有の背丈の低いものしか無く、隠れる場所も多くはない。その上で闊歩するモンスター達を避け続けるなど、ハンターである俺でも正直お断りである。やはり、単なる噂に過ぎないのだろうか……?
そう結論付けようとしていた俺に、しかしオババがこう言った。「確かに、聞けば聞くほど可能性はゼロに近い。だがこの世は時に凄まじく数奇な運命を提示する。アンタも知ってるだろう?」
……知らないわけ、無い。
つい最近、あの邪悪な宝玉に、それを思い知らされたばかりである。
あるはずのない事が実現する、それには、人智を超えた存在が関わっているのかもしれない。……とにかく、だ。
───とにかく、心底楽しそうに不吉なフラグを立てるのはやめてくれよ、オババ。
-
648
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-04 19:48
ID:ppizYosU
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さて、そんなこんなで紫毒姫リオレイアの狩猟依頼を受ける事になったが、なんといっても相手はG級飛竜、しかも非常に強力な二つ名個体だ。一人で狩るというのはいささか厳しかろう。
ましてや今回は(今回に限った話ではないが)、ハンター達の間に広がる奇妙な噂というよくわからない不確定要素までおまけに付いているのだ、いざという時の対応の幅を広げるためにも、最低一人は同行者がいて欲しいところである。とはいえまず必要なのは自身の準備だ。勢い余って集会所まで持ってきてしまった布団を片手にインナー一丁でマイハウスまで戻っていく。途中周囲の視線と共にヒソヒソと話し声が聞こえたが、先日のドンドルマの件もあって完全に開き直っているのでさして気にはならない。気にならなくなったら末期とか言わない。
なけなしの自尊心で人目につく場所を避けつつマイハウスまで戻ってきた俺は、まず一番にとアイテムポーチの中身を確認した。今までアイテムの力で救われた場面は数知れず、最近になってようやくアイテムを安定入手出来るようになったので、確認は怠らないようにしているのだ。それでもついうっかり忘れることはあるが……これはもはや人の性である。
さて、今アイテムポーチに入っているのは……
〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜
あなたのアイテムポーチの中身・回復薬×10・回復薬G×5・強走薬×5・こんがり肉×10・秘薬×1・力の爪×1・砥石×10・ペイントボール×10・閃光玉×5・落とし穴×1・シビレ罠×1・捕獲用麻酔玉×8・大タル爆弾×3・モドリ玉×1・解毒薬×10・ロープ×1・変なネット×1
〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜
と、こんなものか。一時期に比べればかなり改善されたが、必要最低限は揃っているとはいえやはり中々にシケてやがる。やはり俺は貧乏神に取り憑かれているのではあるまいか……
そういえば、いつだったか同じような事を愚痴ったとき、俺の華麗なるオトモであるエリックから辛辣なツッコミが帰ってきたのを今でもよく覚えている。なんだったか、えーっと確か……『不運を呪うよりも先に己の習慣を見直すといいニャ、ロクに整理もされていないアイテムボックスを見て精々悔い改めるニャ。』
だっただろうか。うん、返す言葉もありません。
何より心に刺さったのはルームサービスであるシルビアの「元々期待してませんから」とでも言わんばかりの諦めたような視線である。あれは流石に堪えた。
しかしまあ、新たなモンスターを狩猟する度に装備を新調していたらそりゃあ赤字にもなるってものである。とはいえその装備に救われた場面も多かったので、反省はしていても後悔はしていないが。さて、そんな昔の話はさておくとして、今はこれからの話をすべき場面であろう。適当に誤魔化したとか言わない。
聞いたところによると、今回の相手も中々に厄介そうである。G級の二つ名個体ともなれば、下手な防具だと一撃で地面を舐める事になるだろう。装備選びも慎重にならねばならない。あとは、頼りになる協力者も必要だ。どうか今回のクエストが恙無く終わる事を願いながら、俺は万全の準備を進めていった。
──その最中、乱雑にアイテムボックスに放り込まれた祀導器【不門外】の鏡のような盾が、血のような赤色に染まっていることなど、知らぬままに。
Q1.あなたの装備を選択してください
※この選択は評点されません。Q2.同行するメンバーを選択してください
装備を指定することも可能です、指定が無い場合はこちらで適当に選びます。
※この選択は評点されません。 -
649
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-04 21:18
ID:vcRYahAE
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なら選ぼうかね
装備はブラキXで武器は祀導器【不門外】、スタイルはエリアルで狩技はラウンドフォースでいいかなー?
メンバーはミソラ夫婦とクルトアイズの劇毒を使ってた隻眼と交戦経験のある面子でお願いします -
650
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-05 18:21
ID:ppizYosU
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全体安定性1前半強化1後半特殊補正2全体特殊要素1中盤不安要素1……か。ぼちぼちだな(評点はしない)(結末に無関係とは言ってない)
──────────相手はG級飛竜の二つ名個体、下手な防具を選択すれば痛い目を見ることは文字通りの意味で火を見るよりも明らかであろう。
そこで俺が選んだのは、先日エリザベート達と狩猟したブラキディオスの素材から作ったブラキXシリーズだ。
G級と呼ばれる領域にまで至った彼の竜の長き生涯の中で、幾度となく傷つき、その度により厚く、より硬く洗練されていった青黒い黒曜石の甲殻より削り出された堅牢なる鎧は、強大なモンスターの一撃をも阻み、さながら砕竜そのもののように自身の闘魂を引き出していくと言われている。
なによりも魅力的なのはその高い火耐性だろう。特殊な個体とはいえ今回の相手は紛れも無い火竜種、その強力なブレスに耐えられなければ話にならない。ついでに、詳しい理屈はわからないがこやし玉を強化する効果もあるそうだ。
また性懲りも無く防具を新調しやがったなとか言わない。さて、となると武器は何が良いだろうか?今回は相手が相手なので、あまり冒険は出来ない、慣れない武器を扱えば容易く足元を掬われるだろう。
そう考えながらアイテムボックスを探っていると、視界の隅につい先日ドンドルマでお世話になったばかりの祀導器【不門外】の存在がチラついた。近い死の運命を映し出すと言われている曰く付きの武器だが、こうして見ると普通の片手剣にしか見えない。──妙だな、さっき何か映っていたように見えたんだが……。
ふと気になり、手に取って見てみても、そこにはただ鏡のように磨かれた盾の面が、さして変わったところもなく俺の顔を写しているばかりであった。
気の所為だろうか?ちゃんと見ていたわけではないので、その可能性も捨てきれないが……。
……ふむ、そうだな。当然ではあるが、祀導器【不門外】は武器としても使うことが出来る。攻撃力はやや心許ないが、強力な龍を封じる力が籠っているので、リオス種にもそこそこ有効な筈だ。それは先日の宝玉眼を埋め込まれたナルガクルガでも十分に実証されている。
ならば丁度目に付いた事だし、今回はこの武器を持っていくとするか。ちなみに、狩猟スタイルは颯爽と空を舞う飛竜種を大地へと叩き落とすためにエリアルスタイル、狩技は十分な威力と使い勝手を誇るラウンドフォースと堅実に行くつもりだ。さて、装備を選択し終わったとなると、後は頼りになる同行人が必要だ。
取り敢えずその辺に出てみて知り合いがいたら声をかけるつもりだが、たった一人現在の所在が判明していてかつ紫毒姫狩猟でも不足ない実力を持つハンターを知っている。◇◆◇◆◇
「……なるほど、そう来たか。」
御察しの通り、我らがギルドナイトのクルトアイズである。俺の記憶が正しければクルトアイズは確か俺が例の生徒三人組の救助に行っている間、ミソラ夫婦と共に隻眼イャンガルルガと呼ばれる黒狼鳥の二つ名個体の狩猟を行なっていたはずだ。
話を聞いたところによると隻眼イャンガルルガは紫毒姫リオレイア同様『劇毒』を用いるらしく、その経験が役に立つのではと考えての抜擢である。
間違ってもいつもいつも厄介ごとばっかり持ち込みやがって、たまには自分も巻き込まれてみろなんて思ってはいない。ないったらない。「そういう事ならミソラ夫婦にも声をかけるべきじゃないか?まして相手はリオスの番、目には目を、歯には歯をと言うじゃないか。」
む……確かに、クルトアイズの言葉も一理ある。一般的に高い連携力を発揮すると言われているリオス種の番を打ち倒すには、それ以上の絆を持つ二人の協力が不可欠だ。レイカの暴走は少し心配だが、それも旦那が付いていればそこまで悪化はしないだろう。
ついでに、アマネの探索者(ウォーカー)としての能力にも期待したいところである。「確か二人とも、早朝から足りない素材を補うために採取ツアーに出ていた筈だが、そろそろ戻ってくる頃合いだろう。」
なるほど、そこを頼んでみるか、連続のクエストになってしまうが、採取ツアーと言う事ならばそこまで体力を使うわけでも無いだろうし、なんとなく快諾してくれそうな予感がしていた。
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651
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-05 18:26
ID:ppizYosU
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採取ツアーを終えたばかりで流石に断られるのではないかとも案じたが、結果から言えば、ミソラ夫妻は二人とも丁度気分転換でもしたかったところだと言って、同行を快諾してくれた。
気分転換と言うには紫毒姫リオレイアはかなり強力な相手だが、まあやってくれると言うからにはこちらとしても文句は無い。
一応、詳しく話を聞いたところ、単に気分転換のためだけという訳ではなく、別の目的もあるらしかった。「というのも、実を言うと例の人影の噂についてはこっちも独自で調べてたんだ。あくまで趣味の範囲だがな。」
G級のダイミョウザザミの素材から製作したと言う、まさにダイミョウザザミの鋏そのもののような形をしたスラッシュアックス、『巨爪ダイカイタイ』の手入れをしながら、アマネがそう言った。
もともとミソラ夫妻(当時は夫婦ではなかったが)はダイミョウザザミの特殊個体、『黒鬼』を追っていたので、G級個体とはいえ狩り慣れたダイミョウザザミなどそこまで手こずるような相手ではなかったのだろう。しかしながら、アマネもハンター達の間に広がる噂を調べているとは少し意外だった。これはこちらの勝手な想像だが、王立古生物書士隊の隊員というのはいずれも学者肌のエリート集団で、現実主義的な人物ばかりだというイメージがあり、今回の噂のような半ば迷信に近い話には興味を示さないのではないかと思っていたのだ。
「アマネは意外と面倒見がいいからね、他のハンター達の輪にも自然と入れるし、案外そういう噂には敏感なのよ」
そう言って、以前見た時と同様ガララアジャラの素材を使った狩猟、『デンジャラスハール』の調律(チューニング)をしているレイカが俺の疑問に答えた。言われてみればなるほど確かに、アマネには兄貴肌で馴染みやすい面があるからな。……レイカの存在を考えると面倒見がいいというのはそれほど意外でもないが……まあ言わぬが花だろう。
なお、レイカの武器については本当はもっと紫毒姫と戦うのに適した狩猟笛があるそうなのだが、作製方法がわからなかった上に本人曰く「攻撃力の低い笛は体に馴染まないわ」だそうである。これはレイカの戦闘スタイル(頭を滅多打ちにする)を考えれば自然なことか。
因みに、二人の防具はというと夫婦仲良く揃って隻眼シリーズである。さっき見かけたハンター達といい、巷では装備のペアルックでも流行っているのだろうか?どうでもいいが。
何はともあれ、この二人ならば紫毒姫を相手取っても不足はないだろう。元々心配などしてはいないが。「その噂が果たして真実なのか嘘なのか……それが吉と出るのかはたまた凶と出るか……全ての答えは遥か上空の果てにある。ところであなたよ、今その盾には何か映っているか?」
クックXシリーズにイャンクック大砲と怪鳥仕立てのクルトアイズの指摘を受け、俺は改めて祀導器【不門外】の盾を覗き込む。しかしそこにはあいも変わらず、ただ美しく磨き上げられた鏡面があるばかりであった。
これから狩猟に向かうというのに、災厄の運命を映し出すはずの鏡は何も映さない。それは狩猟が恙無く終わることを意味しているのか……或いは───、
◇◆◇◆◇
それから飛行船に揺られてしばらく、俺たちはそれぞれに遺群嶺へと放り出された。どうやら俺は運良くベースキャンプまで運ばれたようだが、他のメンバーはバラバラの位置からスタートとなるようだ。
支給品ボックスに収められた地図を取り出し、方角を合わせるように開く。さて、どこへ向かうべきだろうか?
Q.あなたが向かうエリアを指定してください。
エリア1〜エリア9まで、0はBC待機となります。※評点あり -
652
名前:暇
投稿日:2018-11-06 01:14
ID:GoDFsxZ2
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そら8よ。
子供の人影?う~んこれはコンガ(適当)バイオドクターでオナラも怖くないから見つけたら切り伏せよう。 -
653
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-06 16:59
ID:95PfIYuc
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リオス種巡回ルートに向かった!4ポイントゲット!(シビアな採点)
出先から投稿中
──────────……やはり、噂の人影というのがどうしても気になってしょうがない。クエストの本来の目的は紫毒姫リオレイアとリオレウスの狩猟だが、気がかりなことがあるままでは狩に本腰を入れることなど出来ないだろう。
そう考えた俺は、まずその謎の人影とやらが目撃されているというエリア8に向かう事にした。少々遠いエリアだが、ハンターとして鍛えている俺にとってはさして苦労するような距離でもない。それこそ、砂に足を取られて歩きにくい上に、地平線が見えるほどにだだっ広い砂漠などに比べれば遥かにマシだと断言できるだろう。ひとまずの行き先を決めた俺は、地図を畳んでアイテムポーチの中に乱雑に突っ込み、早足でベースキャンプを出た。
途端に現れたのは、遺群嶺の切り立った崖の中に突如として拓かれたかのような、小さな平原だ。
背の低い高山植物が山肌を駆け抜ける冷たい風に小さく揺られている。平原の中ほどには草食竜のアプトノスも数匹ほどいるようで、危険な飛竜種など本当にいるのだろうかと思わず疑ってしまうほどに、牧歌的に草を食んでいた。──エリア2には何もいないのか。
長閑な雰囲気のアプトノス達の様子を見て、俺はふとそんな感想を抱いた。一般的に弱者として知られている彼等は、そうであるが故に警戒心が非常に強く、隣接するエリアに強大な大型モンスターが存在した場合、そわそわと落ち着きが無くなるのである。
それが無いということは、飛竜種が良く出没するエリア2には今は何もいないと考えていいだろう。まだ誰とも合流していない状況で大型モンスターとは遭遇したくないが、そうと分かれば崖を登ってスタミナが磨り減った状態でいきなりモンスターの目の前に出てしまうような可能性のあるエリア6よりは、少々距離があるがエリア2を経由していった方が幾分か良さそうだ。
大型モンスターとの遭遇という意味では、相手がエリア7に居た場合はどうやっても避けられないのだが、まあそれは仕方がないか。◇◆◇◆◇
何か特筆すべき出来事もないまま平和なエリア1を通り過ぎ、エリア2に出ると、そこには謎の人影……ではなく、見慣れた人影が数匹分ほどあることを発見した。
いや、はたしてそれを本当に"人影"と形容していいのかは甚だ疑問ではあるが……。他のモンスターと比べればいくらか人間らしいシルエットをしている牙獣種のモンスター、コンガ。
桃毛獣ババコンガの手下的存在である彼等は、小型モンスターにしてはかなり強いタフネスと、無駄に破壊力の高い飛びかかり攻撃、さらには放屁による悪臭攻撃により、ハンター達の間では嫌われ者として非常に悪名高いモンスターである。しかしなるほど、こうして遠くから見た分には人影にも見えなくもない。かなり無理のある理論だが、もしかしたらハンター達は彼等のことを"謎の人影"と見間違えたのではあるまいか?
一瞬そんなことを考え付いたが、しかしその考えを俺は即座に首を振って否定する。
小型モンスターとはいえコンガの平均体長は確か4メートル60センチほどあったはずだ。オマケにいくら人間に近い体型をしているとはいえ彼等は基本的には四足歩行、その噂がとんでもない大男というならともかく、1メートルちょっとの子供に見えるというのはいくらなんでも無理があるだろう。まあ、その真偽はどうであれ、そんな厄介なモンスターに狩猟の邪魔でもされたらこちらとしてもたまったものではないため、そうなる前に掃除しておくとしよう。幸いにも、俺が今装備しているブラキXシリーズには奴らの悪臭を防ぐ効果があるので、危なげなく倒せるだろう。
俺の姿を発見して警戒の声を上げるコンガ達に斬りかかり、その腹部にある分厚い皮に一筋の傷を描く。堪らず怯むコンガに容赦なく畳み掛け、その命を刈り取らんと刃を叩き込んでいく。
……が、なかなか倒れない。それは単にコンガがタフだというだけではなく、俺が今持っている武器にも問題があるのだろう。祀導器【不門外】は非常に高い龍を封じる力──龍属性があるが、その半面攻撃力は低いという弱点がある。そしてもちろん龍でも何でもないコンガには当然龍属性などまともに通用せず、ただひたすらに攻撃力の低い無属性武器で戦っているのと同然という状況が発生してしまっているのだ。
とはいえ所詮相手は小型モンスター。いくらか面倒ではあったものの最終的には大して手こずることもなく斬り伏せることに成功したのだった。
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654
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-06 17:00
ID:95PfIYuc
[編集]
一応の礼儀としてコンガの剥ぎ取りを終えた俺は、改めて地図を見る。
さて、それでは気をとりなおしてエリア8に向かうとしようか。その地形の関係上どうしても大型モンスターが出現しやすいエリア7を経由する必要があるが、まあそこは祈るしか無いだろう。ケムリ玉でもあれば話は別だが、もしあったとしてもこんな場面で使うのは流石に憚られる。
そう考えながら、コンガの亡骸から剥ぎ取った素材をアイテムポーチに詰め込みつつ、エリア7へと歩き出したまさにその瞬間、後ろから聞き慣れた声がかけられた。
「おお、あなたか。遅れてすまない、少し気になることがあったものでな……」
全身を桃色の鎧に包んだクルトアイズは、そう言って小さく謝罪した。微妙に色合いが似ていたので一瞬コンガの残党かとも考えたが、あまりにも体格が違うのでその失礼な勘違いはすぐに霧散した。本人が聞いたらどんな顔をするのか……少々気になるものの俺も命知らずではないため何も言わない。
さて、クルトアイズとの合流にも成功したので、これで二人だ。あとはミソラ夫妻の合流を待つばかりだが、二人いれば彼等が合流するまでの時間を持ちこたえるのは容易いはずだ。なおも、この先のエリア7に必ずしもモンスターがいるとは限らないが……しかし、狩人の勘が何かしらいるだろうと告げていた。
◇◆◇◆◇
なぜそのような形になったのかまるでわからない、赤茶けた石柱がさながらオブジェのように立ち並ぶ遺群嶺のエリア7に、それはいた。
滴り落ちる毒液が、背の低い草を枯らしていく。一歩足を踏みしめるごとに、大地が静かに震えるのを感じた。通常のリオレイアを遥かに超える体格。
毒々しい紫色に変色した翼は、色のみにとどまらずその形状も大きく変容している。数えきれないほどの戦いの中で傷付き、極度に肥大化した翼爪は、女王の印象をより一層刺々しいものへと演出していた。何よりも特徴的なのは、溢れんばかりの毒液を滴らせる、大木の幹のように太く強靭な尻尾だろう。僅かに滲む赤紫色の毒液は、ただ見ただけで本能が警鐘を鳴らすほどの美しさと恐ろしさを両立しており、その存在がまさに"女王の中の女王"であるのだと、否が応でも実感させられた。
──アイツは……
その姿に、一瞬謎の既視感を感じた俺だが、空を駆け抜けた一つの影が、その思考を中断させる。
……赤い甲殻に身を包む、空の王者。優雅に空を舞うその姿は、しかし女王の前ではいくらか見劣りするようにも感じてしまう。翼をはためかせて滞空するリオレウスが、紫毒姫にまるで語りかけるように吠えた。目を凝らしてよく見れば、その足には小さなアプトノスが握られているようだ。
「求愛か、まだ番にはなっていなかったのだな……」
その光景を目の当たりにして、クルトアイズは小さくそう呟く。なんでもリオレイアはリオレウスが獲った獲物の大きさや量を見て番となる個体を決めるらしく、つまりはあのリオレウスは紫毒姫のお眼鏡に叶うかの試験中なのだという。
そもそも番になっている場合は基本的に食料は巣へと運ぶため、このようにそれ以外のエリアで落ち合うことはほとんど見られないらしい。さて、そんなリオレウスの求愛だが、果たしてその結果はと言うと……
必死に求愛するリオレウスに対して、紫毒姫が軽く振り払うように尻尾を振るうと、大きく撓った尻尾がリオレウスの横腹を打ち据えた。幸いにも当たったのは毒針の無い表側であるためリオレウスが毒にやられるようなことは無かったが、そのあまりの衝撃にリオレウスは情けなく地面へと落下する。
痛みとショックに悶えるリオレウスだが、当の紫毒姫はそんなリオレウスなど一瞥もくれることもせず、大きく翼を広げて何処かへと飛び去っていってしまった。「「……。」」
俺とクルトアイズは暫く絶句していた。それが具体的にどれほどの時間であったかはわからないが、とにかく沈黙が支配していたのは確かであろう。
そのなんとも言えない沈黙が漸く終わろうかという丁度その時、トボトボと起き上がるリオレウスの顔が、ふとこちらを向いた。その瞬間、彼の口元からは紅蓮の焔が漏れ出し、大気を引き裂くような咆哮が遺群嶺の空に木霊する。言わずと知れた怒り状態……完全なる八つ当たりである。
Q.あなたの行動を選択してください
1、弱点を狙って強気に攻める
2、アイテムを使って攻める
3、慎重に行動を観察する
4、無視してエリア移動
5、その他(自由枠) -
655
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-06 21:06
ID:EZjTF/Mc
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4
直接的原因がこちらにない以上余計に刺激しなければ難なくスルーできるはず
何なら劇毒で動きが鈍ってもおかしくないし -
656
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-06 22:37
ID:ppizYosU
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デデドン(絶望)
小者の八つ当たりは予想以上にしつこい!
さらに、逃げようとしたことでリオレウスが強気になった!
あと、リオレウスも狩猟対象だ!忘れてあげるな!
エリアの指定も無いので、自動的にエリア8へ突っ切るぞ!
1ポイントゲット!(隙あらば減点する鬼畜)
※進行役を言い負かせればここからでも点は上がる可能性があります(流石に今更内容は変えられませんが内部処理として)
──────────いくら憤怒しているとはいえ所詮は八つ当たり、こちらに直接的な非がない以上は、下手に刺激しなければ難なくスルーできるはずである。もしかしたら、運悪く劇毒の影響を受けて動きが鈍っている可能性さえ考えられるだろう。
そう結論付けた俺がこのまま無視してしまおうとクルトアイズに伝えると、彼は渋い顔をしてこう言った。
「しかし敵の注意は既にこちらを向いているぞ?大丈夫か?」
言われてみれば一度敵と認識した相手を容易く見逃すほどリオレウスも甘い相手ではないはずだが……しかしこのリオレウスならば何故か行けそうな気がする。というのもコイツ、空の王者の癖にどことなくヘタレというか小者臭が漂っているのだ。
「まあ、あなたがそう言うならばその判断に委ねるが……来るぞ」
クルトアイズが小さく警告を発した次の瞬間、大きく首を擡げたリオレウスの火球が煌々と燃え盛りながら迫ってきた。
いくら今装備しているブラキXシリーズの防御力が高く火に対する耐性も強いとはいえ、曲がりなりにもG級飛竜種のブレスが直撃してしまえばひとたまりもないだろう。とはいえ、単発ブレスはこれまでの狩猟経験の中で幾度となく遭遇してきた攻撃。直線にしか飛ばない上に連続で撃ってくるわけでもないそれを回避するなど、俺にとってはもはや造作もないことであった。ましてやクルトアイズなど考えるまでもないだろう。
迫り来る業火の球を俺たちはそれぞれ二手に分かれて回避すると、ブレス後の隙をついてエリア8へ向けて走り出す。
しかし、数歩分の距離を稼いだところでリオレウスのブレスの動作が終わり、リオレウスは俺のいる方向へ軸を合わせて突進した。エリア2からエリア8へと向かう俺たちと、エリア7の中央付近にいたリオレウス。結果として両者は向かい合う形になり、俺はその突進に対して回避を余儀なくされた。もちろん、それ自体は危なげなく成功する。モンスターが使う攻撃の中で最もオーソドックスかつ危険なのがその圧倒的な巨躯を用いた突進だ。これが安定して回避できないようではお話にならない。
……一部のモンスターの使う突進攻撃は位置取りをミスれば熟練者でも避けるのが難しいというのもあるが……基本的にリオス種の突進にはそのような厄介な性質など無い。そうして、一度目の突進を回避されたリオレウスは、しかし一発で懲りることもなく再び強く地面を蹴って俺に向けて走り出す。だが、何度やろうとも無駄だ。その突進が俺に届くことは無い。それは決して自信過剰というわけではなく、これまで積み重ねてきた経験から導き出された単純な事実だった。
或いは、だからこその油断だ。
これまで幾度となく回避に成功してきた攻撃であるからこそ、どうせ今回も上手くいくだろうと、無意識のうちに思ってしまっていたのかも知れない。再び迫るリオレウス巨体、それを回避しようとしたその瞬間、リオレウスの足が突如として止まり、一瞬で口元に爆炎を漲らせる。その動作は、リオレウスの攻撃の中でも最も警戒すべきと言われている行動……その名も、バックジャンプブレス。
刹那、激しい爆発音と共に、赤く燃え盛る火炎が地面を一瞬で焼き潰す。幸いにも直撃こそ免れたものの、それによって巻き起こった爆風に煽られ、俺は一瞬その動きを拘束されてしまった。
──まずっ!
そう思った瞬間にはもう遅い。爆風に煽られた体は言うことを聞かず、己の本来の領域──空へと飛び上がったリオレウスは畳み掛けるようにブレスの予備動作を行う。クルトアイズの助けは……?だめだ、俺とは逆方向に逃げていたから流石に遠い。他の二人は……?可能性はなくもないが、そう都合のいい時に現れてくれるものではないだろう。
飛び上がった火竜、動かない体、ブレスの予備動作……それらが意味するところはつまり──
──確定被弾。
自らの至近距離で、爆発音が木霊した。
-
657
名前:暇
投稿日:2018-11-07 12:21
ID:GoDFsxZ2
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💥←デスボール
🙋<5点にしないとこのスレごと消し飛ばしますよ(力づくで説得でするフリーザ様の鑑) -
658
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-07 15:53
ID:ppizYosU
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直後、凄まじい衝撃が、焼け付くような熱風が、同時にこの身に襲い掛かり、刹那の浮遊感に支配される。
いくら堅牢な装備を纏おうとも、爆発の衝撃が全て無くなるわけではない。無論多少は軽減されるだろうが、G級飛竜のブレスはそれで相殺しきるにはあまりにも強大すぎた。
そして、いくら火や熱に強かろうとも、全身をくまなく覆い尽くせるわけではない。僅かな隙間から入り込む熱風が肌を焦がし、肺が焼け付くような錯覚を覚える。「───!」
誰かの叫び声が聞こえた気がした。
だが、それが誰の声なのかも、なんと言っているのかも、今の俺にはわからない。ブレスによる衝撃音に間近で晒された俺の耳は、キン…─と不快な高音を鳴らしながら、これ以上音を拾うことを拒否していた。──しばしの浮遊感は、そこで終わりを告げる。
重力によって乱暴に地面に叩きつけられた俺は、その衝撃によって肺から無理矢理空気を追い出され、激しく噎せ返った。
そんな状態でなお、それでも顔を上げようとしたのは……単に直接的なダメージがそこまで大きなものではなかったというのもあるが、如何なる時にも敵から目を離してはならないという狩人の矜持故の行為であろう。そうして目に入ってきたのは……今にもこの身を引き裂かんと迫る、リオレウスの鉤爪……。
……これはちょっと、まずいかもしれない。ここからの回避は無理かと、諦めかけた刹那、激しい閃光が俺の視界を真っ白に染め上げる。直後、地面に響く重苦しい衝撃音と共に、情け無い呻き声が聞こえてきた。
何が起こった……とは思わない。それは狩人としてひどく見慣れた光景だった。ここで何が起きたかわからないほど、俺も未熟ではない。それは、リオレウスを狩猟する上では必需品と言っても過言ではないアイテム、閃光玉の光だ。おそらくだが、クルトアイズの応援が間に合ったのだろう。
──否、それだけではない。「いつまでそこで寝てるんだ?遺群嶺の地面はそんなに美味いのか?」
そう、まるでニコラスのような皮肉を言ったのは、もちろんニコラス本人ではない。地面に倒れ臥すリオレウスに対し、僅かな赤い光の迸る斬撃を次々と繰り出しながら、舞神は颯爽と舞い降りた。──一人の悪魔を伴って。
「ほらっ!もっと!惨めに!鳴きなさいよ!ハッ…ハッ…アッハハハハハッ!──いいじゃない、もっと真っ赤に染めてあげる!」
鈍い衝撃音を拍子として奏でられるのは、血の惨状を報せる"危険信号(デンジャーコール)"。もう少し小洒落た言い方をすれば、"悪魔の警鐘(デビルサイレン)"とでもいったところだろうか?
クルトアイズの援護に加え、ミソラ夫婦の加勢によって戦況は完全に逆転した。俺もいい加減動かないわけにも行くまい。そう己を奮い立たせ、片手を突いて起き上がり、回復薬を一本煽ると、祀導器【不門外】を引き抜いた。
妖しい刃先からは黒い稲妻が迸り、美しく磨かれた鏡面が僅かに揺らぐ。リオレウスの弱点属性は龍属性、漸く己の真価を発揮できる時が来たと、それはさながら武器自身も歓喜しているかのようであった。時を同じくして、リオレウスもまた身を起こす。閃光玉に視界を奪われ、なすがままだった彼も、大人しくこのままやられてくれる筈がない。群がる狩人達を蹴散らさんとばかりに大地を駆り、三度(みたび)の突進を行う。だが、油断さえしなければ先述した通りリオレウスの突進は容易に回避できる程度のものでしかない。アマネやクルトアイズはもちろん、戦線復帰したばかりの俺や、暴走状態から覚めた直後のレイカ(いつのまにかアマネが戻していたらしい)でさえ軽々と回避に成功し、その突進は誰をも捉えることなく虚空を駆け抜けるにとどまった。
結果としてこちらに背を向ける形となるリオレウス。このチャンスを活かせば背後から攻撃出来るだろうが、しかし先程のこともあって油断せずに次なる行動を見極めようとする俺たちに対し、直後に彼がとった行動はあまりにも意外なものだった。
大きく翼を広げ、走る勢いをそのままに大空へと飛び立つ飛竜。空中とはすなわち王の領域、そこから繰り出されるであろう次なる攻撃に、俺は次こそは油断しないとばかりに身構える。緊張の時間は連続する……
…………。
-
659
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-07 15:54
ID:ppizYosU
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…………。
……あれ?しかし、いつまでその時を待とうとも、燃え盛る火球が落ちることも、毒を含んだ鉤爪が迫ることもなく、静けさを取り戻した遺群嶺には、ただ岩肌を撫でる風の音だけが虚しく響くばかりであった。
飛び立った火竜。いつまで経っても来ない攻撃。それが意味するところはつまり……「……逃げたな」
「逃げたわね」クルトアイズとレイカの言葉が、俺の考えを肯定する。増援が駆けつけて不利になったと見るや否や、開戦早々に逃げ出したのだろう。それを賢いと言うべきか臆病と言うべきかはわからないが……しかし、それでいいのか空の王者よ。
しかも厄介なことに元々素通りするつもりだった上にすぐに逃げてしまった関係上、ペイントボールを当てていないため現在地を追うことができない。かなり鮮やかな逃走劇だったため、他のメンバーもどこへ飛んで行ったのか見ていないそうだ。まあ、なんとも締まらない結果となったが、ともあれこれで全員が合流することに成功した。それだけは喜ぶべき事だろう。これで色々と作戦も組みやすくなるというものだ。
「逃げられちまったものは仕方ないが……しかし、あなたがやられてるなんて中々珍しいじゃないか、そんな厄介そうな相手には見えなかったが?」
そんなアマネの疑問は……まあなんだ、そこは誰にでも油断はあるということで納得してくれ。しかしそういうアマネは一体今まで何をしていたんだ?まさかとは思うがこの期に及んでレイカとイチャついていたわけでもあるまい。
そう問いを投げかけると、彼は思い出したかのようにこれまでの経緯を説明し始める。「あー、それはな。色んなところにちょくちょくハンターや研究員のものとは到底思えない子供の足跡があったんだよ。それを調べてたからちょっくら遅れちまった」
そう言って彼が取り出したのは、ギルドから支給されるものとはまた異なった簡素な地図のようなものだ。よく見ると、赤い点のようなものがいくつも書き込まれている。
しかし、子供の足跡だと……?それは例の噂と関連しているのか?「十中八九ってとこだな。何せこの遺群嶺に裸足だ。そしてどの足跡もエリア8近辺から行ったり来たりしてる。これで関連性が無かったらそれこそ大問題だぞ」
そう言うアマネの言葉には、十分に賛同できた。まあ確かに、これ以上面倒ごとが増えるような事態にはなって欲しくないな。万が一別件ともなれば不確定要素が単純計算で二倍になるのだ、そんな面倒なのはごめんである。
普通に考えればほぼ間違えなくその足跡の主=謎の人影なのだから、わざわざ難しく考える必要もないだろう。……とにかく、アマネから齎された情報によって件の噂が真実である可能性がグッと高まったことだけは確かだ。
「なるほど言われてみれば確かに、このエリアにも相当数の足跡があるな」
「おお、やっぱ旦那にはわかるのか。その足跡が一番密集しているのが、あそこ。エリア8ってわけだ。」クルトアイズとアマネが何か言い合っているが、俺にはさっぱりわからない。いつも通りの地面があるようにしか見えないのだが……?
ガサツそうなレイカならばこの感覚を共有できるのではと期待したが、しかし彼女も流石はアマネの妻といったところか、二人ほどではないものの多少はわかるようである。
となると、さっぱりわからないのは俺だけか。なんだか疎外感……まあ、頼りになる仲間だということで納得しよう。その方が精神衛生上よろしい。さて、リオレウスがどこに逃げたのかもわからないし、紫毒姫の居場所も依然不明だ。となると、何処へ行こうとも遭遇できるかは運次第。さて、どのエリアに向かおうか?
Q.次に向かうエリアを指定してください。
1、エリア8だ!
2、エリア6だ!
3、エリア5だ!
4、ベースキャンプだ!
5、その他(自由枠)だ! -
660
名前:暇
投稿日:2018-11-08 08:11
ID:GoDFsxZ2
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ん?これまだ8に行っとらんのか?
それでまた同じ選択出すって事は何らかの警告か誘導だと思っておこう。と言う訳で選択は4、ベースキャンプ。ターゲットを追うために皆で千里眼の薬を拾いに戻りまひょ。戻り玉でね。
…
とでも言うと思ったか!
選択は5!あなただけ急に戻り玉が惜しくなったので使うフリして一人エリア8に突撃じゃ!
オラッ!謎の実験所から抜け出した幼女先輩保護させろオラッ!(決めつけ) -
661
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-08 18:12
ID:ppizYosU
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ウボァー(断末魔)
ぐぬぬぬぬぅ……やりおるなぁ。選択評点は6点!その代わりに強制単騎戦闘じゃぁ!>>660描写がわかりにくかったようなら申し訳ないぜ……エリア2からエリア7に侵入→直後にレウスにタゲられる→無視してエリア8へ行こうとする(エリア7を対角線状に突っ切る形になる)→失敗っていう流れだからまだエリア7にいるんや。
あと、実験施設から逃げ出したのは違うそうじゃない(ネタバレ)────────
そういえば、と。俺はふとある事実を思い出した。
ちゃんと調べたわけではないしうろ覚えの記憶ではあるものの、遺群嶺のベースキャンプには確か千里眼の薬が落ちていたような気がする。千里眼の薬とは言うまでもなく飲むだけで大型モンスターの気配を感じることができるようになる劇薬(スグレモノ)だ。それを拾えばリオレウスはもちろん紫毒姫の居場所もわかるのではあるまいか?
幸いにも全員モドリ玉を一つづつ携帯しているし、ここは思い切ってみんなでベースキャンプまで戻って千里眼の薬を回収するべきではないだろうか?そのことを周りに伝えると、みんなはその手があったかとでも言うような顔をして俺の意見に賛同してくれた。そこまで画期的なアイデアというわけでもないので正直こそばゆいが、褒められて悪い気はしない。
そうと決まれば実行あるのみだ。
そこまで急ぐわけではないが、今回は一応連続狩猟という形になるわけだし、リオレウスはともかく紫毒姫を倒すのにどれだけの時間を要するのかは未知数である。万万が一にでも時間切れでクエスト失敗などという事態にはなりたくない。それぞれがモドリ玉を取り出し、同時に地面に叩きつけられるよう準備をする。別に帰還のタイミングを揃える必要は全くないのだが、なんとなくそうしたい気分だったのだ。モドリ玉を取り出すのに手間取って取り残されるなんて事態は流石に起きないとは思うが、念には念を……である。
それじゃあ、せーの……で叩きつけるぞ。
せーのっ!掛け声を上げながら、独特の緑色の手投げ玉を強く握りしめ、大きく手を振りかぶる。しかし、今まさにモドリ玉を地面に叩きつけんという丁度その時、俺の思考にある考えが浮かんできた。
──あれ、あそこって本当に千里眼の薬あったっけ?
というのも、アイテムについてはあまり詳しくない俺である。その辺の記憶も曖昧であり、何かが落ちていることは覚えているのだが、それが何なのかについては完全にうろ覚えだったのだ。
となると……だ。もしあそこに千里眼の薬が無かった場合、俺はモドリ玉一個を完全に無駄にすることになる。高々モドリ玉一個程度……と嘲笑うことなかれ、1ゼニーを笑う者は1ゼニーに泣くのだ。ましてや今の俺はまたぞろ懲りることもなくブラキXシリーズを一式で制作したばかりであり、その資金力にはかなりの不安があった。……どうしよう。本当にいいのか?
モドリ玉を使うことに躊躇いが入る。それはほんの一瞬の逡巡だったが、その一瞬は俺が他三人に取り残されるには十分な時間であった。
直後、緑色の煙が立ち登り、アマネ、レイカ、クルトアイズの姿を完全に覆い隠す。しばらくして煙が晴れた頃には、三人は忽然と姿を消していた。……。
一人取り残された俺は、改めて思考を巡らせる。今モドリ玉を使ったら、相手がどこにいるにせよまたベースキャンプから歩いて行かなくてはならない。別にそれが苦というわけではないが、面倒だというのが正直なところである。しかも、よく考えれば別に俺が今戻らなくても、戻った誰かが千里眼の薬を飲んでモンスターを発見し、ペイントボールでも投げつけてくれればすぐに合流することができるではないか。だとするとこんなところで貴重なモドリ玉を消費してしまうのは勿体なさすぎる。
さらに言えば、俺はさっきからどうしても、エリア8のことが気掛かりでならなかった。それは明確な根拠があってというわけではないが、奇妙な直感があの坂を越えた先に"何かがいる"と告げているのだ。とすれば、他のメンバーが千里眼の薬を回収してモンスターのいるエリアに向かっている間に俺がそっちを調べてしまうのが一番効率的ではあるまいか?うむ、間違えない。
そう、適当に理由をつけて自らを正当化した俺は、早速と言わんばかりにエリア8へと足を向ける。
乾いた草を踏みしめ、エリア8へと続く坂の前まで来た俺は、ふとその先の空に違和感を抱いた。それは先程の直感とは違い、"なんとなく"といったような不明瞭なものではなく、そこを知っている者ならば誰でも抱くような、確かな違和感。珍しく晴天のエリア8を目指し、俺は直感が示すその方角へと歩みを進めた。
-
662
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-08 18:19
ID:ppizYosU
突き抜けるような青い空が広がり、雨に磨かれた地面が地上より数段違い太陽の光を反射してキラキラと輝くという、滅多に見れない絶景が広がっているエリア8。
ここに写実画の得意な画家でも連れてきて『狩に生きる』にでも載せればそこそこ人気記事になりそうだが、当然今はそんな者はいないし、仮に今から連れてきたとしてもその頃には普段通りの大嵐になってしまっているだろうと容易に想像できる。標高が高いだけあって風こそ普段通りかなり強いものの、視界が明るく明瞭なのも相まって不快さはまるで感じない。それどころか、吹き抜ける風すら風情に思えてしまうような絶景だった。
しかし、ここも晴れることはあるのか。いつ見ても大嵐だからてっきり一年中そうなのかと思っていたが、別にそんなわけでもないらしい。
いや待てよ、普段とは違う天候……まさかとは思うが古龍の仕業ではあるまいな?……って、いやいや、ちょっとして天気の違いすら一々古龍の仕業だったら今ごろ古龍は大忙しか。そもそも雨を降らせるならともかく晴れさせる古龍なんて聞いたこともないし、おそらくはただの自然現象だろう。そんな突拍子も無い考えは早々に打ち切り、俺は改めてここに来た目的を思い出す。
噂の人影が多く目撃されているのはこのエリアの付近。アマネが見つけたという足跡も辿っていけばここへと繋がるらしい。そして、俺の直感がここに何かあると告げている。
それが何なのかはわからないが、これまでに得た情報を総合すれば、噂の人影の核心に迫る何かがあるはずだ……。
さぁ、ここからが正念場だ。気合いを入れてとっとと噂の謎を解き明かすぞ……。両の掌で頬を打ち、改めて気合いを入れ直す。できることならば他のメンバーがモンスターと対峙する前に決定的な証拠を掴みたいが、世の中そう上手くはいかないだろう。
……そう上手くは……。
そこまで考えたところで、俺は視界の隅──丁度リオスが寝床としているところ──で何かが小さく動いたことに気が付いた。一瞬さてはリオス種の雛ではあるまいなとも思ったが、そうであるならばどちらか片親は巣に張り付いているはずだし、何よりクルトアイズの分析によるとあの紫毒姫とリオレウスは番いにはなっていないそうなので、その可能性はゼロである。
となると、一体何が────っ!?それは、当初から当然予測されていたことだった。
しかし、そうであるにも関わらず、それでもなおその事実は、俺に驚愕を抱かせるには十分過ぎるインパクトを持っていたのだ。薄汚れた……と言うことすら憚られるくらい汚くボロボロになった布切れから覗く、小さな手足。まともに手入れされていないであろう髪の毛はボサボサに乱れ、栄養状態が悪いのか、皮膚が所々荒れているのが見える。そんな酷い状態だったが、一つだけ決定的に、核心的に言えることがあるとすれば……
────それは、"人"だった。
まさに噂とそのままに、なんの捻りもあったもんじゃない、小さな人間の少女そのものだったのだ。
何故──!?
何故、こんな少女が"本当にここにいる"のかと、そう驚いた瞬間、静かに眠っていたボロボロの少女は素早く飛び起き、信じられないものでも見るかのような目でこちらを見つめた。
その視線を受けて、ハッと我に返った俺は、とにかく何かコミュニケーションを図らねばと考え、出来る限り穏やかな調子で少女に問いを投げかけた。──君は誰だい?
不必要な警戒心を煽らぬよう、不安や恐怖を抱かせぬよう、そのつもりで言ってはみたのだが、しかし俺が声をかけたその瞬間、少女の目には確かな恐怖が宿り、さながら怯える獣のように身を引いて、キュっと唇を噛みしめるように固く閉ざした。
反応から察するに、言葉が通じていないというわけでもなさそうだ。しかし、この少女は確実に何かを恐れている。それが何かなのかはわからないが、そうでなければ初対面の俺にまでここまで恐怖心を向けることはないだろう。
しかし、なるほどな、理解したぜ。
────こりゃ、厄介な案件になりそうだ。
Q.謎の少女と邂逅した!なんとか警戒を解いてコミュニケーションを図れ!※評点はかなり甘め
1、その他(何をやっても許されrあれクルトアイズさんベースキャンプにいるはずじゃ) -
663
名前:@
投稿日:2018-11-08 18:21
ID:ppizYosU
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名前とパスワードミスったww
ちょっと死んできますね -
664
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-08 18:30
ID:NoBTyIXM
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とりあえず空腹でしょうしこんがり肉をあげてみましょ
-
665
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-08 23:13
ID:ppizYosU
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周りに誰もいない場所で屈強な男が幼女に餌付けをする事案が発生!5ポイントゲット!
────────小さく縮こまり、警戒と恐怖の視線を向け続ける少女。
このままいくら話しかけたところで埒が明かないどころか、下手に口を滑らせればより一層警戒心を高めてしまいそうだ。言葉だけでなんとか出来ると思うほど俺は自分の言語能力に自信を持ってはいない。
といっても、人並みに友誼は結べるし、コミュ力だって決してないわけではないだろう。
交友関係は割と広いし、初対面の人とでも普通に話すくらいは簡単にできる。だが、それはあくまで相手にコミュニケーションを取る意思が存在する場合のみの話だ。こと今の状況に至ってはそれは全くと言っていいほど役には立たなそうである。さて、となると少女の頑なな警戒を解くのは一筋縄ではいかなそうだが……俺に子供の心理だの心の開き方だのといった小難しい話はまったくわからない。ここはハンターなりの流儀でいかせてもらおう。
念のため少女から目を離さないようにしておきながら、俺は片手でアイテムポーチの中を弄り、一本の骨つき肉を取り出す。それは一般に『こんがり肉』の名称で親しまれる、ムッシュ=シエロの手によって生み出された長期保存の効く焼き肉だ。ハンター生活始まりの象徴とも言われ、一度に大量に、しかも簡単に焼く方法が確立されてなお、手焼きにこだわるハンターもいるとかなんとか……
と、話は逸れたが、ともあれそれはハンターにとっては単なる保存の効く食料というだけではない、重要な意味を持つアイテムなのである。だからこそ、それを手渡すことは一部のハンターの間では『友情の証』とも呼ばれているそうだ。もちろん、これはハンターの間での話であり、どう考えてもハンターには見えない少女にこの意味が伝わることは決してないだろう。それはもちろん俺もわかっている。
でもとりあえず腹は空かしていることだろうし、渡して損は無いはずだ。俺がこんがり肉を目の前に差し出すと、少女の視線が一瞬だけそちらを向き……しかし直後にはまた警戒を込めた視線で俺を見つめる。だが、俺もここで引き下がるわけにはいかない。誠意を持って少女を見つめ返し、受け取らないならこのまま置いてくぐらいの勢いでこんがり肉を突き付けた。
両者の視線が交錯し、しばしの硬直。その間に少女がどんな思考を抱いたのかは俺には到底想像しかねるが、心情はどうであれ体は正直だったようだぜヘッヘッヘ。
───グギュゥゥゥ……
冗談はさておき、しばしこの空間を支配していた沈黙を破ったのは、そんな小さな音であった。もちろん、俺の腹が鳴った音ではない。だとするならば、この場でこの音を鳴らす可能性があるのはたった一人だ。
小さく腹を鳴らした少女は、しかし別段それを恥じた様子もなく、まさにオズオズといった擬音語が似合いそうな態度でゆっくりとこんがり肉に手を伸ばす。よく見れば、まだ警戒は完全に解けていないのかその指先は小さく震えているが、一切動こうともしなかった先程に比べれば遥かな進歩と言えよう。
だが、ここで下手に焦れば全てが水の泡となりかねない。ゆっくりとした少女の動作を、俺はその間何もせずにただ見守っていた。そして、こんがり肉の一端に少女の指が触れたその瞬間、少女は奪い取るように俺からこんがり肉を受け取り、一心不乱に食べ始める。その姿に遠慮や迷いといったものは見られず、食べる時のマナーや所作を気にする様子も見られない。たったそれだけで、彼女がどのような育ちなのかは、おおよそ察することができた。
もちろん、これで彼女が心を開いてくれるとは思っていない。だが、必要以上の警戒は解いてくれるのではないかと思う。少なくても、こちらには決して害意がないこと、それを理解してもらえればいいのだ。
こんな美味しいもの食べたことない!とでも思っているのだろうか?随分と読みやすい表情で目をキラキラとさせながら肉を口いっぱいに頬張る少女。とても微笑ましいその光景を見守りながら、俺は昔どこかで又聞きに聞いた程度の噂話を思い出していた。
左右で色の違う目──
それを"イビルアイ"と呼び、忌み嫌う地方があるらしい。 -
666
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-08 23:18
ID:ppizYosU
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左右の目の色が違う少女。片方は黒で片方は薄茶色という地味な配色だが、両者は確かに明らかに異なる輝きを宿していた。
その少女がこれまでどんな人生を送ってきて、どんな経緯でこの天上の世界に辿り着いたのか。それを想像することは、俺の拙い頭では到底できない。だが、昔聞いたイビルアイという迫害対象と、まともな教育を受けることが出来ていないことが素人目にもわかるその立ち振る舞いが、嫌な想像をどうしようもないくらいに掻き立てるのだ。
……なんだか少し意外だった。自分のことでもない、それどころかたった今出会ったばかりの他人の、しかも「そうかも知れない」という想像だけで、ここまで気分が悪くなるなんて……。
自分の意外な一面を知りつつ、これ以上考えても悪い結果にしかならないだろうと考えた俺は、半ば無理矢理に想像を打ち切り、目の前の少女へと意識を戻す。こんがり肉を食べ終えた少女は、ハッと思い出したように俺の方を振り向き、再び警戒の視線を向けた。だが、そこから先程まではあった"恐怖"が、幾分か減っているように見て取れた。自分を警戒している相手とは話ができるが、自分を恐怖している相手とではまともに会話が成立しない。そう考えれば、少女の恐怖が薄れたことは大きな進歩といって過言ではないだろう。
しかし、だ。今の状況、割と困った状態である。
というのも、俺が遺群嶺に来た本来の理由はあくまでも紫毒姫リオレイアと通常リオレウスの狩猟であって、噂の検証はあくまでそのついででしかないし、ましてやその噂の原因たる少女の保護など誰にも頼まれてすらいない。保護するとしたら完全なる自己責任なのである。
いや、それ自体にはさしたる問題はない、問題は、この少女がまだ完全に心を開いてはいないということだ。この状態で無理に保護しようとすれば相当に面倒なことになるのは想像に難くないし、場合によっては俺の称号にまた一つ不名誉な単語が並ぶことになりかねない。
だが、だからと言ってこのままこの場に放置というわけにもいかない。敵の行動次第では、ここは容易く戦場になり得るのだ。そんな場所にこんな少女を放置することがどうして許されようものか。下手に目を離して見失ってる間にリオレウスのお腹の中ですなんて事態になったらそれこそ目も当てられない。
とはいえ、いつまでもここに付きっ切りでいられるわけでもなし。確かな成果があったとはいえ、独断で仲間を待たせている以上そちらを放っておくわけにもいかないのだ。見事な三竦みのジレンマに、俺はなんとかいいアイデアはないものかと必死に考えを巡らせるも、しかしそんなに都合よく浮かんでくるはずもなく、ただ徒らに時間だけが過ぎていった。
だが、そこで俺は思い直す。下手な考え休むに似たり、全てをなんとかするアイデアを考えるよりも先に、自分ができることからやっていこうと。まずはやはり最善手、なんとか少女に心を開いてもらえないか試みなければならない。そんな考えのもと、下手に警戒心を煽らないようある程度距離をとって少女に話しかけようとした────その瞬間だった。
俺と少女との間を通り抜けるように灼熱の弾丸が飛来し、赤き業火を伴って爆ぜ、焼け付くような熱風が吹き荒れる。直後、絶えず降り注いでいた日光が突如として遮られ、一瞬間を置いた後、重々しい衝撃音と共にさながら地震のように地面が激しく揺れた。
突然の事態に、慌ててその音がした方を振り返ると、その時には既に深緑色の巨体がすぐ目の前まで迫っており、俺は咄嗟の判断で飛び込むように回避を行う。その回避行動が功を奏してか突然の奇襲はなんとか凌ぐことに成功したが、回避を行った方向の関係上丁度俺と少女の間にソイツが位置するような結果となってしまった。
その瞬間から俺はそれまでとは比べ物にならないほど急速に思考を回転させ、現状を打破する方法を導き出そうと考えを巡らせる。だが、考えれば考えるほどまずい状況になっていることに気付き、思わず頬には冷や汗が伝う。
よりにもよってこのタイミングで、よりにもよってコイツが──
──グォァァァァァァァァアアアアアアッ!!
大気をも撼わす紫毒姫の咆哮が、珍しい晴天のエリア8の絶景を、血塗られた戦場へと塗り替えた。
Q.あなたの行動を指定してください。
1、強気に攻める
2、すぐさま一人で撤退する
3、アイテムを使う
4、慎重に行動を観察する
5、少女を連れて逃げる
6、乗りを狙う
7、その他(自由枠) -
667
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-08 23:49
ID:w0pYpYJA
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これまで猫飯のスキルの描写が無いという事は、今決めてしまっても構わんという事だろう?(暴論)
選択肢は5、猫の着地術を信じて少女を抱えてエリア5へと飛び降りる、でお願いします(返答を待たずに押し付ける屑)。
-
668
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-09 21:41
ID:ppizYosU
[編集]
おー、これは……基礎点3点に工夫点(ネコの着地術)で+1して4点評価ですね……。しかーしっ!あなたと少女の間に位置する紫毒姫を掻い潜って、こともあろうに運搬を行うという危険行為に及ぶまでのプロセス(なんらかの手段で拘束するなど)が無いのでまことに残念ながら失敗じゃぁ!
おう、変なシステム仕込んだせいで評点は高いのに失敗するという奇妙な状態が発生したぜ、どうしてくれるんだ過去の自分はよぉ……。
───────そのモンスターの登場に伴って、急速に悪い方へと傾きだす状況。
アクセスの悪いエリア8という場所、戦闘要員は現状自分一人、対して小型モンスターにさえ容易くやられそうな非戦闘要員を一人抱え、目の前に現れたのはG級飛竜の二つ名個体である紫毒姫リオレイア。しばらくは増援を望めず、格上とも言える相手にたった一人で非力な少女を守り通すという無理難題を突如として突き付けられた俺は、思わず頬に冷や汗を流した。
何より最悪なのはその位置関係。紫毒姫の奇襲突進を無理矢理に回避した関係上、俺と少女との間に紫毒姫が位置するという、少女を守り通す上では最も厄介な位置どりになってしまっていた。逃げられる手段があるとすれば……そこまで考えたところで、俺はこのクエストに赴く前に食べた食事のことを思い出す。体力やスタミナ、場合によっては攻撃力や防御力、各種属性耐性が増し、さらにはスキルと呼ばれる不思議な効果まで付随するというアイルーによる特性メニュー、通称ネコ飯。
今回は特に魅力的な効果が無かったので特に意識することもなくソースを選んでいたが……俺の記憶が正しければ今俺の体には『ネコの着地術』というスキルが備わっているはずだ。この『ネコの着地術』というのはどういう原理かはわからないが体幹の安定性を強化する力があり、高い所から飛び降りても手をつかずに着地できるという効果がある。一見するととても地味な効果のようだが、ある種類のクエストではこのスキルは必須と言っていいくらいに重宝されている。
そのクエストとは、俗に言う運搬クエスト。飛竜の卵や巨大な化石の塊など、非常に重く壊れやすい大型のアイテムを納品するという採取クエストの一種であり、時間がかかり面倒な上に報酬も美味しくはないと多くのハンターから敬遠されているクエストだ。
通常、運搬クエストの対象に選ばれるようなアイテムを持ったまま高所から飛び降りると、その重さから生まれる運動エネルギーを殺しきれずに取りこぼし、アイテムを破損してしまうということがままあるが、この着地術を付けた状態だと体幹の安定性が劇的に向上するため、高所から飛び降りることによる運搬ルートの劇的なショートカットが可能になるのだ。説明は長くなったが、今のこの着地術を付けた状態ならば、おそらくは……少女を抱えたまま崖を降りたエリア5まで飛び降りることができるはずだ。
中々に危険な賭けだが、紫毒姫の前に放り出されたままというよりは百倍マシである。しかし、言うは易いが行うはなんとやら……そもそも少女を抱えるには目の前の紫毒姫という障壁を乗り越える必要があるし、その障壁を乗り越えたところで少女が素直に抱えられてくれるのかも疑問だ。そしてなにより、とてつもない攻撃範囲の広さを誇る紫毒姫の目の前で運搬状態になるというリスキーさ……それでもやらねばならぬほど、現状は切迫している。
小さな少女を背に俺に向けて低く唸る紫毒姫。その竜と目を合わせた途端、圧倒的強者の宿す眼光に貫かれるが、その程度で萎縮するほど俺もピカピカの新人ではない。寧ろその眼光の宿す迫力はより一層俺の闘志と集中力を高め、思考をクリアにする時間を与えるだけだった。
せっかく敵が迷っていたんだ、さっさと攻撃すればいいものを……ナリはこんな若造だが、曲がりなりにも俺はG級ハンター、世間一般の感覚では、大ベテランだ。もちろん慢心するつもりはないが、俺はただやられてやるほど弱くはない。
端的に言えば、だ。───あんまり俺をナメるんじゃないぜ、女王さんよ
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669
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-09 22:29
ID:ppizYosU
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────あんまり俺をナメるんじゃないぜ、女王さんよ。
間違っても紫毒姫の意識が少女に向かないように……俺は口元をニヤリと歪め、ハッキリとした声で竜を挑発した。
そんな俺の挑発の意味を理解してから否か、紫毒姫はその口元にリオレウスのそれを遥かに上回る膨大で高密度の炎を宿し、大きく首を擡げた直後、全てを焼き尽くす灼熱の息吹を吐き出す。
もちろん、そんな見え透いた攻撃は喰らわない。ブレスを回避するときの鉄則、正面を避けて懐に飛び込んだ俺は、そのままの勢いで紫毒姫の下を抜け、少女を拾い上げようと試みる──が、それはすぐに阻止された。大きくしなりながら振るわれた尻尾が、自らのすぐ目の前を掠める。幸いにも直撃はしなかったものの、触れるだけで命の危機に陥ると言われている劇毒が大量に滴り、地面に落ちた毒棘がさながら茨のように地面に咲く。それは俺の歩みを止めさせるには十分すぎるほどの脅威だった。
行く手を塞がれた俺は、ブレーキを効かせて足を止め、僅かに逡巡する。その一瞬の隙すら見逃さず、紫毒姫は即座にこちらを振り向き、酷く見慣れたツーステップを踏んだ。その予備動作を、見間違えるはずがない。それはリオレイアの代名詞にして最大級の威力を誇る必殺技──サマーソルトだ。再び少女から距離を離される。それがわかっていても、俺は迷いなく跳んだ。それは紫毒姫と戦闘する上では絶対に当たってはいけない攻撃。G級ブラキディオスの装甲すら容易く貫き、なけなしの体力さえ容赦のない劇毒によって奪い取る、特に一人でターゲットが自分に集中している場合は、被弾=死と言われるほどに恐れられている攻撃だ。
全神経を注いでその文字通りの"必殺技"を回避した俺は、サマーソルトによって浮き上がった紫毒姫の下を掻い潜って少女の元に辿り着けるかと目算し……しかしすぐに思考を中断する。紫毒姫はまるで俺が少女に近付くことを拒むかのように、矢継ぎ早に攻撃してきた。
まるで俺が少女に近付くことを拒むかのように───
流れ去るように一瞬浮かんだその考えに、俺は奇妙な感覚を抱いた。或いはそれは俺が意識すらいしてない僅かに散りばめられた情報と、そのキーワードとが無意識の中で整合性が取れたときの特有の違和感であった。
その違和感の正体を探ろうと……する暇もなく、飛び蹴りによって地上へと舞い降りた紫毒姫の次なる攻撃が繰り出される。
リオレイアの戦闘スタイルの基本は炎と毒のスリップダメージをより加速させる怒涛の連続攻撃。この紫毒姫は特にその傾向が強いようで、あまり隙の大きな技は使用せず小技によって俺を追い立てていく。その間、一度もあの少女が狙われていないのは奇跡なのか……或いは──口元に炎を滾らせながら噛み付く攻撃……火炎噛み付きを回避した俺は、紫毒姫の翼を踏み台にして飛び上がることで、流れるように繰り出される尻尾による薙ぎ払いを再び軽々と回避する。
或いは時間を稼ぐことで少女が自発的に逃げてくれることを期待したが……僅かな隙をついて視線を送っても、未だ火竜の巣の上に座り込んでいる少女が動き出そうとする気配は見られない。まあ、子供が突然こんな巨大なモンスターを目の前にしたら萎縮して動けなくなってしまうのは仕方がないか……絶妙に軸をずらして紫毒姫の三連続突進を回避しながら、俺はままならない現状に深い溜息をつく。世の中そうそう思う通りには行ってくれないものだが、さて……──いい加減、疑問に思ってもいいだろう。
一体何故俺は、紫毒姫の攻撃を徐々にエリア7へと追いやられているとはいえここまで回避し続けることが出来ているのだろうか?
別に被弾したいというわけではない。それは純粋な疑問形であった。回避に徹しているから?紫毒姫が手心を加えている?単純に運がいい?それとも──この攻撃を、"既に知っている"?
その答えに至った時、俺はゆっくりと視線を上げ、紫毒姫の翼を見た。
絶え間ない戦いの中で幾度となく傷つき、その度により強靭に成長し、肥大化した翼爪を、見た。
そして、納得した。思えば、初めにその姿を見たときから、そうではないかという予感はしていたのだ。だけど、"そんなことはあり得ない"という思考が、その答えに至るのを阻止していた。
だが、俺はこの場所で、いるはずのない少女を、確かに発見した。
ならば、"あり得ない"など、"あり得ない"
──ああ、そうだ、俺はお前を、既に知っているのだ。
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670
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-09 23:33
ID:ppizYosU
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俺は、この紫毒姫のことを、既に知っている。
それはなんら根拠のない不明瞭な感覚から導き出された暴論に他ならなかったが、俺はそれが間違えではないことを、何故だか確信的に感じ取ることが出来た。
本来であれば絶対にあり得ない……あり得てはならないこと。
そうであるにも関わらず、目の前の紫毒姫の僅かな攻撃のクセが、予備動作の動きが、視線の配り方が、呼吸の配分が、俺に紫毒姫の次の行動を教え、完全な回避を可能としている。そのことこそが、単純な事実として、その暴論を肯定していた。とはいえ、いくら完全な回避が可能でも、それは回避に全力を注いだ状態でのみの話であり、それ以外は自分の望む方向に進むことすらままならない。気付けば、俺と少女の間は最初の十倍以上離れてしまっており、背後にはすぐにエリア7が見えようかというくらい追い詰められている。ようは、被弾することはないが、救出という目的の上では、どんどん不利になっているのである。
しかし、下手に欲を出して少女との間を詰めようとしようものなら、たちどころに紙一重の回避の限界が訪れ、助けのない状態で怒涛の連続攻撃を浴びかねない。だが……時間が経つほど不利になるのは、逆もまた然り。俺の予想では、そろそろ仲間が来るはずである。
紫毒姫はこれまで一度も少女を狙っていない。それはここまでくると最早偶然とは言い切れないだろう。奇襲を仕掛けた時には確かに少女の姿を認識していたはずなので、気付いていないというわけでもない。コイツが何を考えているのかはわからないが……もし少女が攻撃されないのならば、先にコイツをエリア7おびき出して、全員で叩いて仕舞えばいい。そうすれば、後は安全な道を帰るだけだ。
矢継ぎ早に繰り出される小技に回避を重ね、ゆっくりとだが確実にエリア7へと後退していく。狭くなる通路に翼の端を引っ掛けながら、それでもなお紫毒姫は容赦なく攻撃を続けていた。
────さて、もう少し広い所へ行こうか。話はそれからだ。
仲間の中には"彼"もいる。そこで、"あの時"の再戦をしよう。
お前がなんでここにいるのか、その理由を、今は問うまい。後で事情に詳しそうな誰かさんにでも、教えてもらおう。俺は、"あの時"と比べて、見違えるほどに強くなった。いろんな経験をして、いろんな人と出会って、強くなってきた。そう、胸を張って断言できるくらいの、自信を積み重ねてきた。
お前は、どうなんだ……?"あの時"から、どれくらい成長した?───なぁ、
俺が人生で初めて戦った、大型モンスターよ。
俺が人生で初めて出会った、特殊個体よ。久し振りだと、旧友のような挨拶は、俺たちの間柄には必要あるまい。奇妙な因縁だが、改めて決着を付けよう。今回も、お前の完全敗北という形でな。
狭い通路を埋め尽くさんばかりの巨体によって繰り出された突進を、俺は広い空間に出ることで回避する。エリア8から坂を下った先、奇妙な形状の石柱の立ち並ぶエリア7。紫毒姫は俺を巣から追い出すことに成功し、逆に俺は紫毒姫をおびき出すことに成功した。
──そして、ここからが本番だ。
もうお互いに、容赦する理由は無くなった。ここからは、正真正銘全力同士のぶつかり合いだ。
後ろから数人分の足音が近付いてくるのを背中で感じながら、スイッチを切り替えるように一呼吸置いた紫毒姫と、改めて対峙する。合流した仲間達と共有したい情報は多々あるが、そんな時間を目の前のモンスターは決して許してはくれないだろう。
──さあ、失望させてくれるなよ?何せお前は、俺の始まりの象徴でもあるのだから……。
〜〜〜〜〜〜特殊個体図鑑〜〜〜〜〜〜
雌火竜特殊個体「Re:翼爪が肥大したリオレイア」
分類:飛竜種(竜盤目 竜脚亜目 甲殻竜下目 飛竜上科 リオス科)Q.エリア7に移動、仲間と合流しました。あなたの行動を選択してください。
1、弱点を狙って攻める
2、慎重に行動を観察する
3、アイテムを使う
4、乗りを狙う
5、その他(自由枠) -
671
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-10 02:12
ID:NoBTyIXM
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サマーソルトに閃光で落ちたらバックステップ溜め攻撃(<-名称が分からない表現があってるかも分からない・・・)
投薬は心眼乗せて何処でも良いから叩き斬りましょ乗りは毒が怖いし閃光あるから後回しで投薬書いたけど持ってなかった!?(<-今更気づいた愚か者)
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672
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-10 11:15
ID:ppizYosU
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デデドン(絶望)おぉっとそれは悪手だ。翼を破壊していない紫毒姫に閃光玉は通用しないぜ……ましてやコイツは……
1ポイントゲット!(容赦ない減点)
─────────一年ぶり……くらいだろうか?或いはそれ以上かも知れない。
過ぎ行く年月なんて容易く忘れてしまうほど、濃密な日々を過ごしてきた。お前との一戦から始まって、ディノバルド、オストガロア、バルファルク……下位、上位、そして、G級。幾度となく続く戦いの中で、幾度となく迫る死線の中で、お前との戦いは常に俺の基礎にあった。
初めて戦った大型モンスターで、初めて出会った特殊個体。
お前のことを、忘れるはずもない。翼爪が肥大したリオレイア──
この奇妙な因縁に、完全かつ不可逆的なケリを付けよう。
紫毒の口元に炎が宿り、息は急激に荒くなり、視線はかつてないくらいに血走る。怒り状態──という表現はこの場合果たして正しいのだろうか?それは激情に身を任せるというよりは、より神経を尖らせ、容赦なく相手の命を刈り取るための、わかりやすく言えば一種の"本気モード"だった。
ならばこちらも、本気で行こう。集団戦法は人類の狩猟の基本、4対1、まさか卑怯とは言うまい。
「一人で随分厄介なことになってるみたいだな、独断専行のお小言は後だ。まずはこの女王陛下にお還り願おう。」
「旦那の言う通りだ、後でたっぷり絞ってやるから今は心置きなく戦えよ。」
「私達を差し置いて勝手に戦ってるなんて羨ま……危険なマネは控えなさい、男衆の肝っ玉は意外と小さいのよ?」…………。
うん、いや、正直すまなかったと思っている。
合流した心強き仲間からそれぞれありがたい言葉を頂きつつ、俺はこの狩猟が終わった後のことを想像して冷や汗を流した。アマネは怒らせると結構怖いし、クルトアイズはお説教が長いし……そしてレイカよ、今サラッと危ない本音が漏れていたぞ?
まあ、それはこの際さておくとして……怒り時の確定行動で空へと飛び上がった紫毒姫。リオレウスを遥かに上回る巨体が軽々と宙を舞う姿は、一種非現実的ですらあった。大きく広げられた翼はその体をより一層大きく見せ、地上を見下ろす眼光は否応なしに本能的恐怖に訴えかける。
怒り時のモンスターが発する独特の怒気も相まって、先程とは比べ物にならないほどの迫力は、しかしそれでも、仲間がいるという心強さの前ではほんの誤差でしかない。俺を恐怖させるには、あまりにも足りない。──この後の予定もできてしまったことだし、さっさと終わらせるか。
身を捻るように滑空しながら突進してきた紫毒姫を俺たちは四方に散開して躱し、それぞれの獲物を抜き放って着地に僅かな隙を見せる紫毒姫に一斉に攻撃を開始する。龍炎、剣閃、銃撃、打撃。多様にして苛烈な攻撃の嵐は、しかし紫毒姫の堅牢な甲殻と莫大な体力を前には大した痛痒にもなりえない。だがそれでもいい、少しずつでもダメージを与えていけば、やがてはその体力も底を尽きるのだ。
もちろん、紫毒姫もただ黙ってやられるがままにしているはずがない。大きく尻尾を振り上げ、僅かに体を傾けながら、再び見慣れたツーステップを踏む。少々形は違うが、それはサマーソルトの予備動作……話に聞いたところの『スピンサマーソルト』だ。
一撃で狩人を戦闘不能に陥らせる必殺の対象に選ばれたのは、アマネだ。通常のサマーソルトに横スピンが加わることで攻撃範囲が劇的に増したそれを、しかし彼は『狩場彩る舞神』の異名の通り舞うように回避してみせる。
そして、俺はこの瞬間を待っていた。リオレイアのサマーソルトの直後には、必ず滞空時間が発生する。味方が狙われている間にそのタイミングに合わせて閃光玉を投げるのは、リオレイア攻略の基本だ。御誂え向きに俺の今の装備は片手剣、片手剣の最大の利点は、抜刀中にアイテムを使用できると言うものである。
直後、浮き上がった紫毒姫の眼前で、眩い閃光が弾けた。
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673
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-10 11:37
ID:YqajN9Ac
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加点に繋がるかもしれないゴネを入れようッ!!
この二つ名はかつてのシナリオで戦った事のある個体ッ!!
つまり、『もう既に翼は部位破壊されている』個体だッ!!
しかもあの時主人公は発想の転換で『地上閃光』と言う抜け道に既に気付いていたッ!! こんなヘマをするとは考えにくいッ!!
そしてかつてのガルルガやディアブロスに然り、開幕から部位破壊されている個体はなんら問題ではないッ!!
この事実から導き出される結論それはつまりッ!!
『このリオレイアはッ!!』『既に翼の部位破壊が終わっていてッ!!』『主人公もそれを見抜いているッ!!』どうだぁッ!!
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674
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-10 13:01
ID:ppizYosU
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>>673イイネ、そう言うのを待っていた。基礎点に+2して特別に3ポイントゲットだ!昔の傷はとっくに再生していたが、"ある理由"で破壊が完了していた。そう言うことも当然あり得る。
しかし、覚えているのはこちらだけではない!結果は相打ちだ!
────────通常、紫毒姫リオレイアや黒炎王リオレウスといった飛竜種の二つ名個体は、極度に発達した翼爪によってもたらされる空中での高い姿勢制御能力により、閃光玉によって撃墜することができない。
だが、逆に言えばそれは、大きく発達した翼爪さえ破壊できていれば、通常の飛竜種同様、閃光玉による撃墜が可能であることを意味している。現に、かつて俺がコイツと戦った時、俺は地上で閃光玉を使うことでその動きを封じ、先に翼爪の破壊を成功させることでなんとか勝利に導いたのだ。
では今回はどうだろうか?
最初から回避に徹しており、先ほどの一斉攻撃以外は未だにまともに攻撃することができていない。もちろん、その程度の攻撃で破壊できるほど、ヤツの翼爪は脆弱ではないのだ。
ならば、この閃光玉で、紫毒姫を撃墜することはできないか?────答えは否だ。
今更俺が、そんな凡ミスをやらかすはずがない。最初に目にしたその時から、俺は気付いていた。"紫毒姫の翼爪は、既になんらかの鋭利な刃物によって半ばから切断されている"。それが意味するところはつまり……
……閃光が瞬いた直後、小さな呻き声と共に紫毒姫の巨体が大地を震わせながら墜落する。それはまぎれもない、紫毒姫に閃光玉が通用した証に他ならなかった。
「よくやった、ナイスだ!」
仲間からの賞賛を受けながら、俺は即座に祀導器【不門外】を引き抜き、大地に落ちた紫毒姫に斬りかかる。レイカの攻撃力強化旋律によってより一層威力を高められた鋭い斬れ味を持つその斬撃は、しかし紫毒姫の甲殻の前では大した傷を与えるには至らない。しかし、甲殻を斬りつけるその度に迸る赤黒い龍の雷が、紫毒姫に着実にダメージを与えていった。
もちろん、俺だけではない。アマネの苛烈な斬撃は容易く傷を刻み込み、レイカの暴走した打撃は容赦なく頭部を穿ち、クルトアイズの精巧な射撃は確実に弱点へと吸い込まれていく。そんな苛烈な攻撃を浴びる中、墜落のショックから抜け出し、ようやく起き上がった紫毒姫。しかしその焦点は未だ定まらず、閃光玉の影響から完全には抜けきっていない。
かつて俺が地上で閃光玉を使ったことからもわかるように、墜落に比べると目立たないが、閃光の影響下にあるリオス種は地上でも動きが少なくなるという特徴がある。おそらくは下手に暴れ回って余計な傷を負うことを避けようという本能からの判断なのだろうが、こと狩人にとってはその時間もまた一つの重要な隙であった。
地面に棒立ちする紫毒姫に対し、俺は閃光玉の有効な時間を最大限に活かしてダメージを与えようと懸命に斬りかかる。唯一尻尾回転は厄介な攻撃だが、うまく足元に潜り込むことができれば、それは大した脅威にはなり得ない。通常種を遥かに上回る圧倒的な巨体が仇となって、紫毒姫の懐に潜り込むのはひどく容易であった。
──まるで、誘い込まれたかのように、簡単だったのだ。
直後、紫毒姫が大きく息を吸いながら後退し、口元にこれまでとは比較にならないほど膨大な火炎を蓄える。一瞬で危険だと判断した俺は、即座にその場を飛びのこうとして……しかし、体が動かないことに気が付いた。紫毒姫の肺活量によって生み出された気流は一つの暴風となって俺の体を拘束し、否応無しに危険領域へと止まらせる。
何故──っ!?
何故閃光の影響下にありながらここまで動くことができるのか……いや、"何故動こうとするのか?"というのが正しい表現なのかも知れない。安全を取れば、視界が封じられた状態で無闇に動き回るのは愚行でしかないはずなのに……
──いや、理由は知れていた。
お前は一度、それで痛い目に遭っている。だからこそ、視界が封じられた状態でなお、リスクを承知で動くのだ。
ああなるほど、よく考えれば、当たり前の話だよな……俺がお前を忘れていないように……
お前もまた、俺を忘れてなどいなかったというわけか。リオレウスのそれを遥かに上回る爆炎が、間近で炸裂した。
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675
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-10 14:39
ID:ppizYosU
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紅蓮の業火に取り巻かれ、灼熱が身を焦がす。
全身を焼き尽くすかのような火炎の奔流の中で、俺は声にもならない悲鳴をあげる。吸い込んだ息さえ熱く、肺が焼け付くような感覚に、しかし咳き込むことさえ許されない。
視界が赤く塗り潰された。生存本能がかつてないほどに警鐘を鳴らしている。直後、衝撃が貫いた──。
圧倒的な破壊現象が全身を駆け抜け、弾けるように広がる爆炎はより一層その火力を増し、この命を焼き尽くさんと燃え盛る。それでもこの命が尽きなかったのは、偏に俺の全身を覆う砕竜の鎧の力があってこそのものだろう。
幾度となく大地に叩きつけられる衝撃は、しかしその爆裂の前では蚊に刺されたかのような小さなものにしかなり得なかった。逆に言えば、爆発の衝撃はそう断言できるほどの圧倒的な破壊力を有していたのだ。そうして、醜く地面を二転三転し、一瞬にも千秋にも感じた衝撃が終わってなお、引火した炎は消えていない。地獄の業火の残り火は、かろうじて持ちこたえられ俺のなけなしの体力を容赦なく奪っていった。
このままではまずい……頭ではそう理解していたのに、体が思ったように動いてくれない。それがどうしようもなくもどかしく、俺は思わず唇を噛み締めた。だが、ここで終わるわけにはいかないのだ。
こんな終わり方では、納得できないのだ。そんな俺の足掻きを助けるかのように、風に乗って舞い降りた粉塵が削れた体力を回復していく。それによって余裕が生まれた俺は、即座に地面から起き上がり、全身を駆け抜ける痛みを気合いで堪えながら二転三転と大地を転がり、鬱陶しくまとわりつく炎を無理矢理に消し去った。
──クルトアイズ、助かった。
ガンナーであるが故に紫毒姫から距離を取っていたのが幸いしてか、余裕を持って爆炎を回避し、生命の粉塵を使って俺の体力を回復してくれたクルトアイズに短く礼を言うと、彼は気にするなと言わんばかりにハンドサインを送る。
あの時の狩猟でも、彼の援護には助けられたものだと、俺は古い記憶を思い出して懐かしんだ。だが、いつまでも懐かしんでいる場合ではない。俺が戦線へ復帰するとほぼ同時に紫毒姫もまた閃光玉の影響下から完全に脱していた。お互いに痛い目にあったので、今回は痛み分けといったところだろうか?
そうして、改めて視線を交錯させた"俺達"は、互いに即座に次の行動へと移る。紫毒は爆炎を回避し攻撃に移っていたアマネとレイカを振り払うように尻尾を薙ぎ、地面に猛毒の花を咲かせたかと思うと、矢継ぎ早に俺を目掛けて突進を繰り出した。だが、俺はその攻撃を回避するばかりか、エア回避による跳躍を用いて紫毒姫の巨体さえも飛び越え、すれ違いざまに一撃を叩き込む。続いて繰り出された折り返しの突進も危なげなく回避し、当たれば容易く死にかねない極限の緊張の中で、しかしお互いに強い喜びと充足感を抱いていた。
攻撃、回避、反撃。そのどれもがあの時とは比べものにならない程に高レベルな戦い。それは俺が、"俺達"が成長したことを、何よりも強く証明していたのだ。相手が一筋縄ではいかないことは、本来であれば自分にとっては不利な要素にしかなり得ないのに、それがどうにも、嬉しかったのだ。
きっと刹那にしか続かない、しかしだからこそ何にも代え難い価値を持つその時間は、お互いの闘志の高まりと共に、いよいよもってクライマックスを迎えようとしてい────────ゾクリ、と。
全身の身の毛がよだつような感覚に、あまりにも唐突に襲われる。俺だけではない、アマネも、レイカも、クルトアイズも……そして、紫毒姫でさえも、同じような戦慄を味わっていた。
「キャァァァァァァァァァァァッッ!!」
直後、耳を劈くような甲高い悲鳴が、エリア8から響き渡る。それは間違えなく、先ほどの少女の悲鳴に他ならなかった。迂闊だった、紫毒姫あまりにも意外な再会に気を取られて、彼女のことを放置してしまっていた。他の三人は少女のことをまだ知らない。この場で一番早く動けるのは俺だけ───
───そんな俺よりも早く、動いた影があった。
先程とは表情を一変させた紫毒姫が、外敵たる俺達にさえ目もくれず、その場にいた誰よりも早く、一目散に悲鳴のした方向へと駆けて行った。
──やはり、アイツ……。
Q.あなたの行動を選択してください。
1、すぐに後を追って少女の下に駆け付ける
2、仲間に事情を説明してから駆け付ける
3、その他(自由枠)
※次回、評価点の途中集計を行います。 -
676
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-11 09:36
ID:Lk8OWmjw
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じゃあ2で
紫毒姫が女の子を守ってるのかね? -
677
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-11 14:31
ID:ppizYosU
[編集]
特に言うことは無し!5ポイントゲット!
途中集計!5点3点4点1点6点5点4点3点5点
平均評価点、4.0点!片腕一本さよーならー(鬼畜難易度)!
────────少女の悲鳴は、確実な恐怖による悲鳴だった。
すぐに駆け付けなければ……と否応無しに焦る思考を、俺の冷静な部分はなんとか踏みとどまらせることに成功する。俺とは別行動になっていた他の三人は少女のことを知らない。となると、もし一目散に駆け付けたとしても、情報の過不足から咄嗟の判断が効かない可能性がある。そのせいで少女が救えない……それだけならばまだいい。いや、決して良くはないが、最悪の場合、仲間達さえ重傷を負うような結果となりかねないのだ。それだけは、この中で唯一事情を知っている他ならぬ俺自身が、なんとしても避けなければならなかった。
──この先には、確実に危険なモノが待っているのだから。
走りながらでも説明はできる。未だ状況を把握できていない三人に、俺は取り敢えず付いて来いと呼びかけてエリア8へと走り出した。
この三人でも戸惑うことはあるのか……いや、よく考えれば彼等からすればあるはずのない人間の悲鳴を聞かされたに等しいのだから、それも仕方ないのだろう。俺だって少女を発見した時は呼吸さえ忘れるほどに驚いた。本来あり得ないことが実現するというのは、人間にとっては予想以上に衝撃的なことなのだ。まあ、戸惑うとは言っても、そこは流石はベテランと言ったところか、次の瞬間には俺の言葉を信じて迷うことなく走り出す。この辺の咄嗟の判断力の強さは、見習いたいと思うと同時に、自分の言葉が多少は信頼されているのだと、少し嬉しくも思えた。
四人で走りながら、俺は仲間達に簡潔に事情を説明する。エリア8で少女と出会ったこと、紫毒姫が現れたこと、少女が一切攻撃されなかったこと、その他にもとにかく他三人が知らないで、俺が知っていることを、早口言葉も真っ青なくらいの早さで、息継ぎをする時間すらも惜しみながら話していった。
そして、あらかたの説明(と言っても大した量ではないが)を終えると、俺はアマネに対して問いを投げかける。「火竜種が単発ブレスの狙いを外すことがあるかだって?」
そう、それは一見すると他愛のない質問のようでもあったが、俺の中ではある仮説を成立させる重要な根拠の根幹にあたるものだった。
そして、俺の中ではその答えはほぼ予測されていた。アマネに対して行ったのは、言うなれば一種の確認作業だったのだと思う。「……無いな、障害物でも無い限り、動いてない相手には必中だよ。」
アマネの口から返ってきた答えは、やはり俺の予想通りのものだった。ということは、紫毒姫も同様に、こちらが避けさえしなければ、ブレスの狙いを外すことはあり得ない。
──だとすれば、邂逅時のアレはなんだったのだろうか?
俺と少女の間を引き裂くように飛来した火球。見事に中心を貫いたそれは、当然ながら俺にも少女にも命中することは無かった。
もちろん、俺も少女も回避行動など微塵も取ってなどいない。つまり、あの時点では紫毒姫はどちらに対しても殺意が無いということになる。自らの休憩エリアに、人間という異物がいるにも関わらず、彼女は威嚇射撃を行っただけなのだ。
そして、同じエリアに降り立って初めて、リオレイアは俺だけを狙って襲いかかった。しかしそれすらも、まるで誰かに気でも使うかのように、攻撃範囲の広い大技を控え、小技のみで追い出そうとしていた。
さっきもそうだ、自らの目の前に外敵がいるというのに、少女の悲鳴を聞いた途端、その場の誰よりも早くにそちらへと向かった。まるで、泣く子を見つけた母親のように……。そもそも、どうして少女はあそこにいた?どうして少女は今日まで生きてこれた?どうして少女は、紫毒姫を前に逃げるどころか悲鳴さえ上げようともしなかった?
何故だ?わからないことだらけだ。
それらを全て合理的に解釈する方法はただ一つ。──あの紫毒姫は、少女のことを自分の子供だと思っているのだ。
俺の頭の中でその仮説が確信へと変わったのと同時に、俺達はエリア8へと到着する。その瞬間、俺達は目の前の地面に何か……"人の腕のような何か"が転がっているのを発見した。
────シャッコン、シャッコン……
珍しく晴れ渡った絶景の中に転がるソレのあまりの異物感に、一瞬完全に視線を奪われていた俺達は、しかし直後に響いた耳障りな研磨音に、その視線をゆっくりと前へと運ぶ。
(よせ)
憤怒に染まる紫毒姫の、そのまた向こう側。
(やめろ)
その先にいた、もう一匹のモンスター。
(見てはダメだ)────────あ。
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678
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-11 14:47
ID:ppizYosU
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晴天のエリア8。
地面に転がる人の腕。
憤怒に染まる紫毒姫の顔。
その先にいるモンスターは……「……!?あなた、大丈夫か!?」
「おい、いったいどうしちまったんだ!?」
「なによアイツ……っ!?」俺を案じる仲間の声さえ、酷く遠く小さく感じた。
否、それだけではない。世界の全てが、切り離されてしまったかのように遠く、ただソイツと、俺だけが……ここにいた。忘れない。
忘れるはずもない。
その姿を、一体何度、悪夢に見たことだろうか。
その姿に、一体何度、恐怖を抱いたことだろうか。
僅かに霞んだ青い甲殻。錆び付いたように変色し、異形に変形した禍々しい鋏。大地を貫く四本の豪脚。そして何より、その背中に背負われた、既に亡き彼の竜の頭骨。
初めてその姿を見たとき、俺はそれを、自分の心的外傷が、拭い難い恐怖の記憶が生み出した幻影の怪物だと、きっとそうであると、思っていた。──そうであってほしいと、願っていた。
だが、その恐怖は幻影ではないのだと……
確かにこの世に存在する、倶に天を戴く生命体なのだと、その事実を今、いっそ残酷な程に淡々と、ハッキリと突き付けられて───駄目だ、ダメだ、考えるな。
辞めろ、ヤメロ、思い出すな。
どれだけ心がそう訴えても、どれだけ理性が拒否しようとも、脳裏に焼き付いた記憶が、心に深く刻み込まれた心的外傷を掘り起こす。月明かりを跳ね返す鋭い尻尾── ──躊躇いが入る
──経験したことのないピンチ 赤く、紅く、研ぎ澄まされた刃──── 両断 鮮血 ──
戻ら
な
けれ
ば
──ランドラッドの顔岩竜の鎧さえ斬り裂かんとする鋭利な刃── フラッシュバック
────ってる!こっちだ!
幻だったのか── ──火傷のように脳裏にこびりつく悪夢
──研ぎ澄まされた刃が振り下ろされる鎧を貫く(嫌だ)
肉を引き裂く(嫌だ嫌だ)
骨を断ち切る(嫌だ嫌だ嫌だ)── 斬り裂かれた誇り ──
──紅く燃え上がる甲殻
命を預かっている ──爆発。血溜まりに斃れる──
(だからいったのに)
突如として俺の前に再び姿を表した死の化身に、俺は恐怖に震える赤子のように、小さくその場に蹲る。そうしか出来なかった。出来る限り動かず、出来る限り目立たず、災厄(サイアク)が過ぎるのを、ただ震えて待つことしか出来なかった。
────いつの日か見た、異形のショウグンギザミ。
サイアクのトラウマが今、今日まで逃げ続けた俺の命を、とうとう奪いに来たのだ。
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679
名前:時雨
投稿日:2018-11-11 15:23
ID:gX20EMvk
[編集]
わーお、『因縁を断つ剣光』ってそういう…
あとこの流れはレイカさんに吹っ飛ばされてアマネやクルトアイズに説得されて覚醒、って流れを期待しておこう
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680
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-11 15:50
ID:ppizYosU
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ここからは一度三人称視点に切り替わります。何故かって?主人公がメチャクチャテンパってて支離滅裂だからだよ。
>>679それはちょっと後やね(無いとは言ってない)
────────エリア8の坂の先で、憤怒に染まる紫毒姫と睨み合う異形のショウグンギザミ。通常のショウグンギザミを遥かに上回る体格と、異常なまでに刺々しく発達した鋏、そして、その背中に背負われているのは、色褪せてなお迫力を失わないディノバルドの頭骨、全てがそれまでの前例を無視した、それは恐ろしい化け物だった。
「しっかりしろ!クソっ、いったいどうしたんだ!?」
そのショウグンギザミを見た途端、突如まるで子供のように蹲って震えだしたあなたを、クルトアイズはなんとか立ち上がらせようと引き上げる。しかし、若いとはいえ重い鎧を纏った成人男性一人分の重さは、狩人として幾分か力はあるものの、隻腕の彼にはあまりにも重すぎた。
「……っ!?見て、あそこ!」
そんな最中、そう言って叫ぶレイカの指差す先には、ボロボロになって肩から血を流した小さな少女が倒れていた。時を追うごとに流れ出す赤き命の潮、その緊急性はどう考えてもあなたより遥かに高く、レイカとアマネは蹲るあなたをクルトアイズに任せて、少女の元へと駆け寄る。
「これは……酷いな。一撃でやられてるぜ」
少女の腕は、いっそ見事なまでの綺麗な断面を晒して切られていた。
上腕部の硬い骨でさえ、さながら熱したナイフでバターを切るかのように、いとも簡単に切り飛ばされていたのだ。それを行った刃物の斬れ味を想像して、アマネは思わず冷や汗を流す。
もちろん、そう考えている間に彼等は何もしていなかったわけではない。少女の体にかろうじて残った腕を持ち合わせていた紐で強く縛り、切断面に布を当てて応急的な止血を開始する。出来れば安全な場所に運びたいが、この状態で下手に動かせば事態は悪化しかねず、そもそも狩場において完全に安全な場所など存在しないのだ。ベースキャンプという例外はあるが、そこまで運ぶのにも時間はかかる。ことは一刻を争うのだ。一方のクルトアイズ、なんとかあなたを正気に戻そうと必死に声をかける彼の姿は、普段の落ち着いた様子からは想像も出来ないほどに焦り、その顔には僅かに苛立ちが浮かんでいた。
「鎧裂ショウグンギザミ……迂闊だった、まさか本当に存在するとは……」
紫毒姫と同じく、鎌蟹の二つ名個体、鎧裂ショウグンギザミ。元ギルドナイトであり未だなおギルドに対して影響力を残している彼は、伝聞ではあるものの当然その存在を知っていた。そして同時に、あなたがディノバルドとショウグンギザミに強いトラウマを抱いていることも理解していた。
しかし、まさかこれほどに強いトラウマだったとは……と、クルトアイズは己の思慮の浅さを自責する。しかし、反省は後だ。今はなんとしてもこの状況を脱しなければならない。クルトアイズは即座に思考を切り替え、己が今為すべきことを模索した。恐怖で動けなくなってしまっているあなた、詳しく見たわけではないが重傷を負っているらしい少女と、その応急処置に拘束されているミソラ夫妻。同一エリアに二頭現れたG級二つ名個体、状況は考えうる限りで最悪だった。
「せめてあと一人動ければ……っ!」
ある程度腕を積んできたという自負はあるものの、ガンナーの自分一人で他四人を庇いつつ二頭のモンスターを足止めというのはいくらなんでも不可能だ。相応の経験を積んできたからこそ、出来ないことは出来ないとハッキリとわかってしまう。
そんな、絶望的な状況で────爆炎が迸り、灼熱に包まれる。
それは狩人達に向けて放たれたものではなかった。
鎧裂ショウグンギザミに向けてチャージブレスを放った紫毒姫リオレイアの咆哮が、遥か天空に響き渡る。
紅く燃え盛る業火の中、鎧裂ショウグンギザミの姿がユラリと揺れた。──紫毒姫リオレイアVS鎧裂ショウグンギザミ──
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681
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-11 16:05
ID:ppizYosU
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口元から漏れ出す炎をこれまでよりもさらに数段増やし、背中や尻尾にびっしりと生えた毒棘を一斉に逆立たせる紫毒姫。
燃え盛る業火の中で両の鋏を交差させ、僅かに赤いオーラを揺らめかせながら誇示するように己の武器を天に掲げる鎧裂。大気が俄かに騒めき立ち、本能が激しく警鐘を鳴らす。僅かに生えた草木でさえまるで息を潜めるように静まり返り、満天に広がる星空が僅かに揺らいだようにも錯覚させられた。
紫毒姫リオレイアと、謎のショウグンギザミの睨み合い。人智を超越した怪物同士の対峙は、周囲の雰囲気を目に見えて一変させる。通常個体であれば本来はほぼ同格とされている両者だが、今回は互いに特殊個体同士。片方が完全に新規の特殊個体であることも相まって、その実力差は全くの未知数である。
しかし、片や飛竜、片や甲殻種という絶対的な種族の壁があり、さらには実に倍近い圧倒的な体格差。そして何より、圧倒的な破壊力を誇る爆熱と劇毒の力を思えば、紫毒姫が勝利するのが妥当であるようにも思えた。──ガァァァァァァァアアアアアアアアアアッッ!!!
通常種を遥かに超える声量を誇る咆哮が沈黙を引き裂き、周囲を彼女の戦場へと染め上げる。それはさながら女王が己の領域を誇示するように、誇り高く威厳に満ちた──『剣光が閃いた』──叫びだった。
直後、紫毒姫の口から煌々と紅蓮に輝く炎が漏れ出し、大きく顔を擡げたかと思うと、巨大な火球が一切を焼き尽くす──『剣光が閃いた』──爆熱となって大地を蹂躙した。チャージブレス、圧倒的な火力を誇る攻撃を初手から繰り出した女王の攻撃は、しかしそれのみにとどまらなかった。炎の燻る大地を諸共に、大木の幹のように太い靭尾が──『剣光が閃いた』──容易く命を奪う劇毒を撒き散らしつつ縦に薙ぎ払われ、地面に一条の破砕痕を刻み込む──『剣光が閃いた』──。
陸の女王は宙に舞って──『剣光が閃いた』──なお強い。それを証明するかのように紫毒姫はサマーソルトによって浮き上がった体を翻し、蛇行するように飛翔して地面へと飛び降りる。通常種でも見られた──『剣光が閃いた』──その滑空突進攻撃は、しかし紫毒姫の巨体によって威力、範囲共に──『剣光が閃いた』──桁違いに上がっており、捲き上る風圧さえ脅威に思えるほど──『剣光が閃いた』──であった。
女王の猛攻はなおも続く──『剣光が閃いた』──。大きく息を吸い、口元に明るい炎を滾らせ、力を溜めるような動作をする。それは──『剣光が閃いた』──あなたもつい先程煮え湯を飲まされたばかりの火炎噛み付き。ハンターとは違い──『剣光が閃いた』──モンスターには風圧による拘束は効かないだろうが、それでもその攻撃は十分脅威となり得るほどの破壊力を持っていた。爆炎──『剣光が閃いた』──
甲殻種というのは総じて打撃などの衝撃に弱いという特徴を持つ。いくら特殊個体とはいえ──『剣光が閃いた』──外見上は甲殻種としての姿を強く残している鎧裂ショウグンギザミもそれは変わらない。であるならば──『剣光が閃いた』──あれほどの火力を誇る紫毒姫の起こした爆発が直撃すれば、いくら鎧裂でもひとたまりもない──『剣光が閃いた』──だろう。直後、紫毒姫が傷を負いながらも──『剣光が閃いた』──大きく飛翔したかと思うと、太い尻尾から──『剣光が閃いた』──毒々しい赤紫色の劇毒を滴らせつつ──『剣光が閃いた』──全身を大きく広げ、鎧裂ショウグンギザミを目掛けて──『剣光が閃いた』──一直線に急降下する。──『剣光が閃いた』──かの電竜ライゼクスの大放電にも似たその技は──『剣光が閃いた』──、紫毒姫が用いる攻撃の中でも──『剣光が閃いた』──最大級の威力を誇る──『剣光が閃いた』──文字通りの"必殺技"であった──『剣光が閃いた』──
紫毒姫の着地と共に──『剣光が閃いた』──激しい衝撃音と共に大地が大きく震え、毒々しい劇毒と──『剣光が閃いた』──生々しい鮮血が──『剣光が閃いた』──無差別にばら撒かれる──『剣光が閃いた』──。残酷なまでに紅い鮮血の沼──『剣光が閃いた』──に立つ女王の姿は、──『剣光が閃いた』──この場にいる──『剣光が閃いた』──誰よりも──『剣光が閃いた』──気高く──『剣光が閃いた』──美しい──『剣光が閃いた』──……。──『剣光が閃いた』──『剣光が閃いた』──『剣光が閃いた』──『剣光が閃い──『剣光が──『剣光──『剣光─剣光─剣光─剣光─剣光剣光剣光剣光剣光剣光剣光───。 -
682
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-11 16:24
ID:uqOxJq6o
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うわぁ・・・(ドン引き
ちょっとは読み返しとかしないのかね
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683
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-11 17:33
ID:NoBTyIXM
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・・・エラー?なのでしょうか?
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684
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-11 21:59
ID:ppizYosU
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文章が切り裂かれるみたいな演出は理解されないかぁ(溜息)
いや、ちゃんと『読めなくなってる』からある意味理想の反応でもあるのか?読めなくしてるんだし。
追記:この度は不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。読者様のありがたいご意見が我々の原動力です。とりあえず溜息吐いてる奴は殺しておきますね。
────────「────え?」
アマネも、レイカも、クルトアイズでさえも、目の前の光景にただ呆然とするより他無かった。
全身に無数の切り傷を刻み込まれ、赤黒い血を流しながら低く唸る紫毒姫。その姿に先程のような迫力や美しさは感じられず、それが本当にあの気高き飛竜種なのかと疑ってしまうほどに、弱々しかった。別に、紫毒姫が圧勝すると、思っていたわけでは無かった。異形のショウグンギザミもまた紫毒姫と同じ領域に立つモンスターだということは、長年の経験から来る狩人の勘がなんとなくではあるものの告げていたし、そうであるからこそこの戦いは長引きそうだと感じていたのだ。
──しかし、その結果はどうであろうか?
一切の慈悲無き斬撃の嵐に、紫毒姫は一方的に蹂躙された。あれほどに強く、気高い、飛竜種の二つ名個体が、なす術なくやられていたのだ。
────シャッコン、シャッコン……
不気味なほどに静まり返った遺群嶺の空に、不快な研磨音がただ一つ響く。それは、この時点でこの領域は彼の支配するところとなったという、ある種の宣言に他ならなかった。
あるいは、クルトアイズの当初の予測よりも、状況はさらに悪い。二頭の二つ名個体に狙われるという絶望的な状況よりも、たった一頭の"怪物"がいることが、ただそれだけで最悪だった。────斬り殺す為に生まれた怪物が、その場にいる全ての生物を、品定めでもするかのように見回した。
◇◆◇◆◇
──無理だよ。
俺はここまでの一部始終を、全てこの目に捉えていた。俺の何がそれをさせたのかはわからない。しかし、目の前に繰り広げられる光景を、見なければならないと、何故か強くそう思ったのだ。
恐怖が一通り過ぎ去ると、その後に訪れたのは突き放すように冷たい諦観の感情だった。
当たり前の話だ。
その化け物に勝てるはずがない。紫毒姫でさえ、一方的に蹂躙されたんだ。それを、俺達が勝てる道理なんてあるものだろうか?
もうわかったはずだ、アマネも、レイカも、クルトアイズも。
この世には、どうにもならないことだってある。その当然の事実を、俺たちは何故今の今まで忘れていたのだろう……。祀導器【不門外】は正しい未来を示していた。
何も映していないということはそのまま、俺の行く先に未来が無いことを表していたのだ。考えてみれば、単純な話だった。───だから、無理なんだ。
無理なんだよ。……なのに、
何故お前らは、まだそうして立つことができるんだ?
何故お前らは、まだそうして前を向くことができるんだ?わからない、俺は、コイツと同じ世界にいたくない。
仮にこの場で逃げられたとしても、同じ世界にいる限り、俺はずっとコイツの影に怯えて生きなければいけないのだ。そんなのは、ごめんだ。……申し訳ないとは、思う。どれだけ蔑まれ、嘲笑を受けても、否定は出来ないだろう。──でも俺は、俺はコイツが怖いんだ。
だからどうか、俺のことは放っておいてく──「どっせぇぇぇえええいっ!!」──ぐほぁっ!?
直後、背中から受けた激しい衝撃に、俺は前のめりに倒れ込み、激しく咳き込んだ。先程の精神的なものとは違う、物理的な息苦しさに、俺は思わず低徊する思考を打ち切る。
しばらくして、なんとか息を整えた俺は、人の心も考えず思いっきり後ろからぶっ叩いてくれくさったレイカに抗議の視線を送ると、しかし逆に彼女の鋭い眼光に射竦められ、硬直を余儀なくされる。ふと気付けば、自身の周りにはレイカだけでなくアマネもクルトアイズも集まっていた。「とりあえず立て、話はそれからだ。」
そう言って見下ろすクルトアイズの表情は、いつになく怖かった。
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685
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-11 22:00
ID:ppizYosU
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「とりあえず立て、話はそれからだ。」
クルトアイズの普段とは一味違った迫力に、俺は思わず言われるがままに従った。温厚な人物ほど怒らせると怖いというが、クルトアイズの場合はただそれだけでは説明できないほど、有無を言わさぬ迫力があったのだ。
「グダグダ話している時間が惜しいから簡潔に言う。お前はバカだ。」
…………はい?
クルトアイズの言葉とは到底思えぬ暴言に、俺は自分の耳を疑った。恐怖のあまりとうとう幻聴でも聞こえるようになってしまったかと案じたが、別に耳がどうこうなってしまったというわけではないらしい。良かった……いやいや、良くない。
一体どうしたんだよクルトアイズ?いつもと全然──「その言葉、そのままお前に返してやろう。」
────────。
「いつものお前なら、"この程度の"ピンチは日常茶飯事だと突拍子もない作戦で切り抜け、次の日にはケロッとしてるだろう。それがなんだ、今のお前は、誰よりもお前らしくない。」
「旦那、来るぜ」警戒を続けていたアマネの警告を受け、クルトアイズはその背中から重砲を引き抜きながら振り返ると、重厚な剣斧を構えて深呼吸をするアマネと共に、焦れったい動作で迫る異形のショウグンギザミと臆することなく対峙する。
「預けるわ、戦えなくても荷物持ちくらいは出来るでしょ?落としたらシバく。」
そう言ってレイカが押し付けてきたのは、片腕をほぼ丸ごと切り落とされ、気を失っている小さな少女だった。傷口を押さえつけるように充てがわれた布からは真っ赤な血が滲み、その呼吸は辛うじて感じ取れるほどに弱々しい。
そんな状態の少女を半ば無理矢理に俺に押し付けると、レイカもまた狩猟笛を構え、異形のショウグンギザミに果敢に立ち向かっていく。剣光が閃く。飛竜の甲殻さえも容易く斬り裂く斬撃の嵐を、しかし彼等は紙一重で回避し続けた。決して深追いせず、互いの立ち位置を意識し、絶妙にフォローし合って、あの化け物と戦っていた。
「いいか、耳の穴かっぽじってよーく聞けっ!」
そんなギリギリの戦いの中で、クルトアイズは俺に向けてそう呼びかけた。その視線は依然謎のショウグンギザミの方を向いていたが、その言葉は間違えなく、俺に向けて発されたものだった。
怒られると、思った。彼にとって狩場はある種神聖なものですらあるのだろう。そこに立ちながら、こんな醜態を晒す俺を、きっと彼は許さない。そう、思っていた。「──俺はお前を、結構気に入っている。」
────だが彼は、俺のそんな予想を裏切った。
「俺だけじゃない、アマネも、レイカも、この場にはいない、オババや他の仲間達も、みんなお前のことを、大切な仲間だと思っている。知ってるだろう?」
なんと言い返せばいいのか、わからなかった。そんなこと、知らないはずがない。自惚れと言われるかも知れないが、確かに存在する温もりを、否定する冒涜を俺自身が許せなかった。
「お前がいなくなったら、キレるぞ。──っ!俺も、他の仲間も、全員な。仲間全員の怒りよりも、コイツは怖いか?」
「コイツは怖いか?」と、改めてそう問われて、俺はゆっくりと視線を上げ、三人と戦う謎のショウグンギザミを視界に収める。
……怖い。トラウマが呼び起こされる。死のイメージが頭の中を過ぎった。なんと言われようとも、怖いものは怖い、言葉だけでどうにかなるほど、その感情は薄っぺらいものではなかった。──だけど、幻想は消えた。
紫毒姫の容赦ない攻撃を受けて、ところどころ焦げ付き、ヒビ割れた甲殻。研ぐ暇もなく振るわれ続けた刃は当然の如く鈍り、その斬れ味を落としている。
謎のショウグンギザミもまた、無傷ではなかったのだ。そして───
──ァァァァァァァアアアアアアアアッ!
紫毒姫リオレイアもまだ、負けたわけではなかったのだ。
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686
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-11 22:27
ID:ppizYosU
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──ァァァァァァァアアアアアアアアッ!
紫毒姫の鋭利な牙が、謎のショウグンギザミの背負う斬竜の頭骨に喰らいつく。突如入ったあまりにも大きな横槍に、謎のショウグンギザミは大きくバランスを崩し、転倒を余儀なくされた。
紫毒姫が作り出したその隙を利用するかのように、アマネ、レイカ、クルトアイズの三人は謎のショウグンギザミから一旦距離を取り、息を整える。飛竜の甲殻さえも斬り裂く一撃が、乱舞のように繰り出されるのだ。回避するだけでもその肉体的疲労は計り知れず、なによりも当たってはいけないという緊張から来る精神的疲労が、ハンターとしてはベテランである三人をも徐々に追い詰めていた。そんな状況を目の前にして、それでもまだ、俺は動き出すことができずにいた。確かに、謎のショウグンギザミに対する異常なまでの恐怖の幻想は晴れた。奴は確かにこの世に住む生き物なのだろう。
だがそれでも、心の奥底に刻まれた恐怖がどうしようもなく足を止める。それはもはやどうやっても外しようのない、魂の呪縛だった。何故、どうして……仲間が戦っているのに、なんで俺は──
いくら自問を繰り返しても、震える足は動き出そうとしてはくれない。もし動き出せば、あの化け物と戦うことになる。その心理が、動き出そうとする体を押しとどめるのだ。
動いたところで、俺に何ができる?アイツと戦うなんて、本当に俺にできるのだろうか?いくら多少の傷を負ったとはいえ、アイツが紫毒姫を圧倒したのは変えようのない事実だ。それを、どうやったら倒せるというのだ?「──いやーなんかさ、難しい顔してるところ悪いんだけど……っぶねぇ!正直コッチもかなーりキツいんだわ、"早いとこ済ましてくれ"。」
……?
アマネの言い方が、妙に心に引っかかった。こんな過酷な状況で、足手まといの俺に対し、その言い方はまるで……
まるでまだ、俺のことを、待っていてくれているかのように──
こんな醜態を晒す俺を、それでもなお、直ぐに戻ってくると、信じて疑わないかのように──……いや、"ように"では、ない。
彼等はその気になれば、いつでも俺を置いて逃げられた。生き延びる上では寧ろそれこそが正しい選択だったはずだ。
それでも彼等が戦うのは、それでも彼等が抗うのは……「まあ、"もうちょっと"ぐらいなら足止めできるけどなっ!」
俺がすぐに、当たり前のように戻ってくることを、信じているから。
自惚れかも知れない。勘違いかも知れない。だが、それでもいい、今は、今だけは、自分の都合のいいように解釈しよう。
僅かに体が軽くなる。足の震えが、弱まったように感じた。気の所為でもいい、切り裂かれたわけでもあるまいに、足が動かない道理は無いのだ。寧ろ、それこそが"気の所為"だ。大丈夫、きっとなんとかなるだろう。
楽観とも取られかねないそれは、しかし俺の根底を成す理論だった。事実、どんなに悪い状況でも、どんなに強い敵でも、最終的にはなんとかなった……"なんとかしてきた"のだ。だからきっと、今回も……。
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687
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-11 22:29
ID:ppizYosU
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思考が澄み渡っていく。グチャグチャとしていた考えが一つにまとまり、視界がクリアになった。
先程まで迷っていた自分が馬鹿に思えてしまうほど、心が落ち着いていた。
だからといって、恐怖が無くなったわけではない、恐怖と共に、歩もうと思ったのだ。このトラウマは、きっと簡単にはなくならない。
もし無くなったとしても、やがては新たなトラウマを刻み込まれることになるだろう。それは、狩人として当然背負うべき業なのだ。自分よりも遥かに強大なモンスターと対峙することが、怖くないわけがない。当たり前だ、どんな敵だって、状況次第では容易に自分を殺しうる。きっとそれが誰であっても、恐怖を感じないなどということはあり得ないのだろう。
──でも、それは一旦置いとこう。
一旦置いといて、もっと大事なことを考えよう。
そう決意を新たにする中、俺の腕の中で、少女の体が小さく動く。気絶している人間は重いと言うが、それでもなお意識の外に追いやられてしまうほどに軽いその体重は、少女という存在の儚さを物語っていた。
意識を取り戻した少女は、半ばから切り落とされた腕を抑え、苦痛に表情を歪ませる。しばらく見ていると、その苦痛さえも感じなくなったのか、額に脂汗を滲ませながら、少女は左右で色の違う目で周囲を見渡した。
俺と少女の目が合った瞬間、少女は一瞬驚いたような表情をするが、意外にもすぐにその視線を外し、ゆっくりと首を回して謎のショウグンギザミの方に視線を向けた。瞬間、少女の小さな体が強張ったのが、腕を覆う鎧越しに伝わってきた。その視線は初めて俺と会ったとき……いや、それ以上の強い恐怖に染まり、少女は声にならない悲鳴をあげながら、小さく震える。
──そうだよな、君が一番、怖いよな。
「……っ!あなた、逃げなさいっ!」
レイカの警告が、澄み渡る頭に強く響く。徐々に近付く謎のショウグンギザミの足音に、俺は決して少女を手放さぬよう、決して少女を怖がらせぬよう、強く優しく抱き締め、小さく足を上げた。
きっとこの一歩は、広い広い世界の中では、チリにも等しい程に、小さな小さなものであろう。その程度の存在でしかない、たった一歩の歩み。
でも、俺の人生の中では、それはきっと何にも変えがたい、とても大きな一歩になると思う。何故だかそう、確信した。
謎のショウグンギザミの巨体が、俺と少女に影を落とす。異形の鎌が、沈みかけた夕日の光に反射して赤く輝きながら、弧を描くように振り下ろされる。
腕の中で震える少女諸共俺を引き裂かんと迫る死神の鎌を、俺は素早く剣を引き抜きながら、回転するように回避する。────────『ラウンドフォース』────────
直後、死神の鎌が大地に突き刺さると同時に、回転とともに薙ぎ払われた剣撃が、謎のショウグンギザミを転倒させた。
片手で少女の身体をしっかりと支えながら、謎のショウグンギザミの足を潜るように剣を振り抜く。片手のみで攻撃ができるという片手剣の特性が、こんなところで役に立った。脚を払われ、無様にもがく謎のショウグンギザミを背に、俺はゆっくりと剣を収める。見てもいないのに、俺の背中に視線が突き刺さっているのを、妙に強く感じ取ることができた。
俺が迷っている間にここまで足止めしてくれていた三人に、俺は笑いながら振り返る。なんとなく、謝罪は求められていないような気がした。──悪りぃ、遅刻したわ。
「寝坊の上に遅刻とは、随分と時間にルーズな狩人様だな。」
クルトアイズの皮肉さえ、心地よく感じている自分がいた。
Q.あなたの行動を決定してください。
1、思い切って攻勢に出る
2、安全を取って退却する
3、アイテムを使って打破する
4、その他(自由枠) -
688
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-11 22:52
ID:IkOff6fY
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頭がおかしくなってる演出すきだわ
武器としての相性は最悪だし、少女抱えてるとなると戦闘では役に立てなさそうだから、まずは安全地帯に少女を置いていきたい
つまりとりあえずは2、戦闘の意思が完全に固まった訳でもなさそうだから、いきなり戦うのは無理がありそうだし -
689
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-12 21:51
ID:ppizYosU
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評点はインビジブルだ!
────────とても心が落ち着いていた。
乱高下していたバイオリズムが、一本の線へと集約する。
だからこそ、冷静な判断が出来た。──撤退だ!
仲間にそう呼びかけ、地面をもがく謎のショウグンギザミの横をそのまま通り過ぎ、小走りで坂道を下りていく。
俺が導き出した次なる行動は、撤退と言えば聞こえはいいが、ようは"勝てないから逃げる"という、一つの山場を乗り越えた人間にしては、ひどく後ろ向きで弱腰なものであった。
しかし、そこに存在する心情は、先程とは明らかに違う。それは恐怖から来る逃げではなく、むしろ"果敢な撤退"だった。非戦闘要員を連れた中で、ショウグンギザミ相手には最悪と言って過言ではないレベルに相性が悪い龍属性特化武器。度重なる戦闘による心身の疲労。ここで戦う理由なんて存在しなかったし、戦っても勝ち目なんて想像も出来なかった。
この謎のショウグンギザミは間違えなく、俺が今まで出会ったモンスターの中でも"サイアク"レベルの強敵である。そんな奴を相手に、臆することなく立ち向かうだけの覚悟はまだ俺には無い。最低限安全を取るならば、とにかくこの少女を安全な場所に移動させ、適切な治療を施さなければならない。なにせ片腕を切り落とされるという重症だ、応急処置だけでは最悪出血性ショックで命を失いかねないという危険な状態は、依然続いている。
そうなると、このクエストは時間切れで失敗ということになる可能性が高いが……それは仕方がないだろう。いつこの謎のショウグンギザミの乱入が入るかわからない中で、紫毒姫リオレイアと通常リオレウスを狩猟するというのはあまりにも危険が大き過ぎる。
大丈夫だ、たった一回のクエスト失敗が、どれほどのものだというのだろうか?
命を失うことに比べれば、それは大したことではない。──だから、今は逃げよう。
この後どれだけ悪魔に魘されることになろうとも……
今勝てないなら、逃げてしまえ。逃げて、強くなってまた挑め。それでも勝てないなら、また逃げろ。逃げて、勝てるようになるまで生き延びればいい。生きてさえいれば、何度でも戦える。死にさえしなければ、諦めさえしなければ、きっといつかは勝てるだろう。
そして、いつかはこの悪夢も消えるだろう。きっとそれは、間違った判断ではなかったと思う。
いつの日か、この日の判断を悔やむ日が来ようとも、俺はこの時自分に選べる最善を尽くしたと、胸を張って言おう。地平の彼方で沈みゆく夕日が、時の流れを報せる。昼過ぎに出発したクエスト……夜は、もうそこまで迫っていた。
────さて、大人しく行かせてはくれないよな。
少女を抱えて撤退を始めた俺たちの前に立ちはだかったのは、全身に傷を負った飛竜の女王だった。それはある意味当然予想されていた行動だった。
俺の仮説が正しいとするならば、少なくとも半年以上前から、何らかの原因でこの地を訪れた少女が今日まで生き残ったのは、きっと彼女のおかげなのだろう。彼女は、少女を自分の子供だと思っている。
だからこそ、それを傷つけた謎のショウグンギザミを容赦なく攻撃した。そして次は、少女を今まさに連れ去ろうとしている俺たちに、その標的が向いたのだ。だが多分、紫毒姫はすぐには攻撃してこない。
今俺たちに攻撃すれば、少女を巻き込んでしまうことをわかっているからだ。体のいい人質みたいだが、俺たちはここに少女を置いていくことは断固として良しとしない。
ゆっくりと歩み寄る紫毒姫の顔が、目と鼻の先まで迫った。思わず武器を引き抜こうとする仲間を俺は視線で制し、真っ直ぐに紫毒姫と目を合わせる。──グルルルル……
地鳴りのように低い紫毒姫の唸り声に、俺の腕の中にいた少女は素早くそちらを振り返る。紫毒姫を見る少女の表情に恐怖や警戒はなく、むしろ強い信頼と安堵の念が側からでも伝わってきた。
その表情に、俺は一瞬紫毒姫と共にいることが少女の幸せなのかもしれないとも思ったが、すぐにその思考を振り払う。両者の生き方はあまりにも遠く、決して相入れるものではない。まして、この傷を放置すれば遠からず少女は死んでしまうのだ。どれほど傲慢と謗られようとも、人が死ぬところを俺は見過ごせない。それは、俺にとって妥協できない境界線の一つだった。だからどうか、今だけは、届いてくれ。
例え種族が違っても、通じ合えるところがあるのなら……──俺はこの子を、救いたい。
紫毒姫の琥珀色の双眸が、静かにこちらを見つめていた。
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690
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-12 21:53
ID:ppizYosU
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お互いに決して目を逸らさず、どれほどの時が経っただろうか?それは現実時間にすれば5秒にも満たない睨み合いだが、しかし俺からすれば一時間にも長く感じた。
そうして、先に目を逸らした紫毒姫は、直後何かを訴えかけるように小さく吠える。それが意味するところを、俺たちは理解することができなかったが、ただ一つ、彼女の視線から敵意が消えたことだけは、狩人として判断することができた。あるいはそれは少女自身の意思を無視するような最低な行いだったのかもしれない。だが、俺たちにはそれを問う程の時間が残されていなかった。こうしている間にも、あの謎のショウグンギザミがいつ起き上がって襲いかかってくるか──っ!?
──先程まで倒れていた謎のショウグンギザミが、居なくなっていた。
慌ててヤツの姿を見つけようと、必死に視線を巡らせると、他の仲間たちもヤツが居なくなっていることに気がついたのか、警戒を始める。その中で、一番に謎のショウグンギザミの居所を掴んだのは、クルトアイズだった。
「そこだっ!」
そう言って、クルトアイズが指差した先。紫毒姫の丁度真後ろの地面が大きくヒビ割れ、盛り上がる。目を離すべきでは無かった、ショウグンギザミは真正面からの連続攻撃の他に、天井や地中からの奇襲を得意としているのだ。
──避けろ!紫毒姫!
思わず叫んでしまったその声の意味を、知ってか知らずか、紫毒姫は地中からの奇襲を受ける直前、大きくその場から飛び退く。
しかし、足りない。通常種を遥かに上回る巨体が、こんなところで仇となり、紫毒姫は謎のショウグンギザミの奇襲を回避しきることが出来ず、翼に大きな傷跡を刻まれた。だが、紫毒姫もなにもやられっぱなしというわけではない。傷口から血が吹き出すのも構わず、地中から僅かに顔をのぞかせた謎のショウグンギザミの異形の鋏に食らい付き、圧倒的な膂力を以って強引にヤツを引きずり出す。ハンターには到底真似できない対処法だが、巨体故に攻撃を回避し難い彼等にとっては俺たちのように攻撃を避け続けるという方があり得ないのかもしれない。
などと呑気なことを考えているが、この位置関係はかなりまずい。エリアの外へ向かった俺たち、それに立ち塞がった紫毒姫、その背後から奇襲した謎のショウグンギザミ。つまり、エリア5に逃げるにせよエリア8に逃げるにせよ大型モンスターという障壁を乗り越える必要がある。今日はどうにも、位置関係に悩まされることが多いようだ。
厄日か……そうでない日の方が珍しいよな。楽観するわけではない、しかし、過度な悲観はかえって思考を鈍らせる。やってできないことなど、きっとほとんどないのだ。
しかし今回は、俺が考えるまでも無かったようだ。
謎のショウグンギザミを引きずり上げた紫毒姫は、そのままの勢いを利用してヤツをエリアの端まで放り投げる。それによってひっくり返ったヤツの体に、紫毒姫は追い討ちをかけるように飛びかかった。その間紫毒姫も何度も攻撃を受けていたが、不安定な体制から放たれるそれは紫毒姫の膨大な体力を前には致命的な被害を与えるには至らない。それでも、相当深い傷を刻み込んでいるというのだから恐ろしいというか……とにかく、わざとかどうかはわからないが、紫毒姫の奮闘によりエリア7への道が開けた。とはいえそれもいつまで持つかはわからない、俺たちは出来うる限り迅速に坂を下りていく。
そうして、なんとか今回最も過酷な場所だったエリア8を抜け出した俺たちは、しかし警戒を緩めない。少女を抱えている俺を囲むように先頭をクルトアイズ、左右をそれぞれミソラ夫婦が守る。
なにも危険なのはあのショウグンギザミだけではない、ただでさえ非力であり、重症によって体力を失っている少女にとってはコンガどころかオルタロス一匹でさえ危険なのだ。現に、こちらを発見するやいなや襲いかかってきたマッカォ達をクルトアイズが的確な射撃で撃ち抜いていく。今一番警戒すべきは、所在の知れないリオレウスである。紫毒姫は少女を大切にしていたようだが、あのリオレウスがそうだとは限らない。むしろ求愛中となると、最も敵視すべき存在ですらあるのだ。
「あー、それなら一応場所はわかってる。」
「言う暇がなかったけど、あなたと合流する前に一回遭遇してペイントボール投げつけておいたのよ。こっちの姿見るや否や逃げ出したけど。」と、そんな俺の心配は、どうやら杞憂だったようだ。いや、完全に心配無用というわけではないが、襲撃を事前に察知できるのならば対応の幅は遥かに広がる。となると、あとは小型モンスターにさえ警戒していれば……と、安堵の溜息を吐いたその時、
────悪寒。
本能が警鐘を鳴らした。
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691
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-12 21:57
ID:ppizYosU
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↑が文字数限界ギリギリすぎてワロタw
そしてすまない、今日は事情があってこれ以上書けないから選択肢まで行けなかった。本当は毎日選択肢出すくらいの意気込みだったんだけど……マジですまない。あ、名前入れ忘れたけどわっちは@ですぜ。
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692
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-13 19:53
ID:ppizYosU
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全身を駆け巡るような、本能的恐怖。
現状俺たちにそれを感じさせうる存在を、俺たちはたった一匹しか知らない。あれほどの化け物が、早々いてたまるだろうか。
それを感じた瞬間、俺はほぼ直感だけを頼りに横へと跳んだ。それは決して確証があったわけでもなく、最適な行動とも言い難かった。だが間違えなく、その行動こそが次の瞬間俺の命を救うこととなる。直後、ついさっきまで俺が立っていた場所に、突如として地面から異形の刃が生え、その空間を切り裂いた。直前に俺が回避行動を行ったことにより虚空を断つにとどまったそれは、しかしもし少しでも判断が遅れていれば、この身に纏う鎧諸共、俺の体を真っ二つに引き裂いていたであろうことは、決して想像に難くは無かった。
何故もう──などという疑問を抱く暇すらも無く、ソレは地面を食い破って姿を現わす。
謎のショウグンギザミ……つい先程出会ったばかりのソレは、しかし一目見ただけでもハッキリと違いがわかるほどに、豹変していた。青黒い甲殻は鮮血を浴びて真っ赤に染まり、僅かに付いた生傷は寧ろより一層その存在の恐ろしさを演出する。何よりの特徴である大きく発達し変形していた鋏は、先程とは打って変わってより小さく、より細く、よりスリムに、それこそ鞘から抜き放たれた太刀のように、直視しただけで己が身を切り裂かれるような錯覚を覚えるほどに、鋭く研ぎ澄まされた姿に変化していた。
しかし、それほどの違いがあってなお、先程との一番の相違点を上げるとすれば、それは単なる外見ではない。なによりもその身に纏うオーラが、段違いに恐ろしいものになっていたのだ。
顔から上半身にかけてを覆い尽くすように、獰猛化のソレとはまた種類の違った禍々しいオーラを纏う。その姿はまるで──────『獣宿し【餓狼】』────
そう、今の謎のショウグンギザミの姿は、双剣使いの用いる狩技『獣宿し【餓狼】』を発動したハンターのそれに酷似していた。
あり得ない……とは、言い切れなかった。それがどれだけ珍しいことなのか、モンスターについても狩技についても決して詳しいわけではない俺には到底わからなかったが、人間が使うことのできるソレを、モンスターが使うことが出来ないという道理は……ない。
──しかしそれは、あまりにも異質だ。
"モンスター"と呼ばれる領域からすら、逸脱している。土を掻き分け、地上へと姿を現した異質なる怪物は、刀のように変質した両の鋏を擦り合わせながら、舐め回すようにこちらを見つめる。
ある意味その視線には、殺意や敵意といったものは感じることが出来なかった。戯れで蟻の群れを踏み殺す子供に、敵意が無いのと同じように……多分それは悪意なき故の所業なのだ。謎のショウグンギザミがここに来た。
それが意味するのはつまり、紫毒姫が負けたという、単純にして残酷な事実に他ならなかった。だがそれも、今のコイツの姿を見れば、納得せざるを得ない。
"あそこ"から、まだ上があったというのか、化け物め──あまりにも理不尽なその存在に、俺が吐き捨てるように小さく呟くと、それを聞きつけたかのようにヤツの標的がこちらを向いた。その瞬間、俺の額からは滝のように冷や汗が噴き出し、俄かに鼓動が早まっていく。頭を鈍器で殴られたようなショックと、首を絞められたような息苦しさに、俺はほんの僅かな時とはいえ足を止められた。
その恐怖は、もはや過去の心的外傷によるものではなかった。それよりもはるかに、目の前のたった一匹の怪物が恐ろしい。「行けっ!早く!」
───それでも足を動かしたのは、きっと仲間がいたからだろう。
もしこの場に誰も居なかったら、俺は動けた自信がない。だけど、俺が信じ、俺を信じる相手がいるからこそ、俺はこの恐怖を前にも動くことができた。だがそれすらも、この怪物を前には、足りない。
完全に避けたと思っていた、クルトアイズの警告を受けて、謎のショウグンギザミの攻撃から逃れることが出来たと思っていた。或いはそれほどまでに、その攻撃は鋭かったのだ。
瞬間、俺の足に突如激痛が走り、大きくバランスを崩す。それでも転ばなかったのは、多分背後から感じる多大なるプレッシャーと、腕の中にある責任感がそうさせたのであろう。足を斬られた。
後からそう気付くほどに、それは見事な斬撃だった。
せいぜい薄皮一枚、だが、軽いはずの少女の体が、急に重くなったように感じた。Q.状況を打開せよ!(あなた以外の行動も指定できます)
1、フォーメーションを変える
2、なんらかの手段で拘束する
3、拘束系以外のアイテムを使う
4、狩技を交えて攻撃する
5、その他(自由枠) -
693
名前:@
投稿日:2018-11-13 20:11
ID:ppizYosU
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今回の選択における詳細解説!
わかりにくいかもしれませんが今は、
ギザミが追ってきて再びピンチ!しかもあなたは脚に攻撃を受けて移動速度ダウン!というかギザミさん当たり前のように狩技使いやがるぜHAHAHA!
という状態です。達成するべき目的は、
少女を連れて全員でベースキャンプまで戻る。それが出来なくてもギザミだけは振り切る。
です。そして選択ですが、
1、フォーメーションを変える
は、例えば現在のフォーメーションは「あなた」が少女を抱えて、他三人がそれを守るという形だけど、少女を抱える人間を入れ替えたり、ギザミの足止めをする人数を変えることができる。采配力が試されるぞ!
(できれば変える理由とかを説明してくれると書く側としては有難いです。)2、なんらかの手段で拘束する
は、文字通り乗りや罠、状態異常、脚ダウンなどを狙うということだぞ!しかし、単純に狙っただけだと成功はしないかも知れない!工夫を凝らして動きを封じろ!3、拘束系以外のアイテムを使う
は、回復薬や角笛、その他いろんなアイテムを使うぞ!ただし、当然ながら少女を抱えている人は当然アイテムを使うことは出来ない(というか運搬扱い)ので要注意だ!
あと、ある特定の人物がある特定のアイテムを使うと状況が更に悪くなるぞ!4、狩技を交えて攻撃する
は、あなた以外のハンターに狩技を使わせるぞ。最初に指定されていなかったので、狩技を使う場合はこの場で指定してくれ!一見悪手だが実は場合によってはそうでもなかったりするぞ!5、その他(自由枠)
は、自分で考えてくれぃ!ちなみに、「3で角笛を吹いて注意を引き付けている間に、2でシビレ罠を仕掛けて拘束する」のように選択肢を組み合わせることもできるぞ!
寧ろそうしないと評点が(ボソッ -
694
名前:兎
投稿日:2018-11-13 21:57
ID:h3fvt/Eg
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選択肢は5で
1手目:クルトアイズに少女を預け、ミソラ夫妻は全力でギザミを脚止め。
2手目:持ち物内の『ロープ』と『変なネット』で即席の背負子を作成、クルトアイズから少女を再び預かり背負う。
3手目:おててが自由になるので主人公はさっき使いそびれたモドリ玉を使用し少女と共にベースキャンプへ撤退成功。
4手目:イャンクック大砲のこやし弾を置き土産に残る三人も全力撤退、もし効果がなかったりして攻撃されたら狩技『絶対回避』で避ける。(撤退途中でニアミスしても同じ手段で逃走)こんな感じで上手くいきますかねっと。
追記>>698
よし、どうやら『自分の予想通り上手くいった』みたいですな。
最悪の展開にしろ意表を突く逆転劇にしろ、盛大に盛り上げて下さいよ? フフフ……上手くいきますかねっと(読者目線でとは言ってない
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695
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-14 14:40
ID:3xBhWYQ2
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あっおい待てい
モドリ玉の原理の説明をどうするか分からないけど場合によってはモドリ玉で1人しか戻れないとかあり得そうだから怖いゾ
あと変なネットが十分な強度あるかもよく分からないゾ(減点項目を並べようとする読者の屑) -
696
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-14 15:16
ID:cxRJfWlg
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>>695
流石にモドリ玉は一人限定ならそうアナウンスあるだろうし(と言うかレギュレーションに関わるんだからそれで無条件減点して話進行させたら理不尽
ネットの強度はともかくとしてもロープだけで子ども一人くらいは固定出来るでしょ(楽観 -
697
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-14 18:42
ID:NoBTyIXM
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撤退拘束を少し細かくしたらなんとかならないかな?
狩技空いてる人が金剛身からのトラップ貼りかかったところを
レイカさんとクルトアイズさんで毒・スタン・減気させる。ミソラさんは乗りを狙う方向で
(餓狼してるし気力はエグい速度で削れてるはず、紫毒姫が戦ってたし毒は入りやすいよね?)
スタンか乗りダウン取れたら速攻逃げる!!・・・これで加点してポイント欲しいとか思う人
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698
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-14 18:51
ID:ppizYosU
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評点はインビジブル……あ(絶望)。
普通なら文句の付けようもないような作戦なのに……よりにもよって特定の人物が特定のアイテム使っちゃったじゃん。しかし皆んながこんなに真面目に考えてくれたのに減点は……そやな、内部的な得点は高くしたろ。だけど初めから仕込んでた今作の目玉ギミックは流石に無視できへんのや、許して……許して……
ご安心を、こちらも特に明言はしていませんし、公式でこうだという解釈があるわけでもないので、モドリ玉で二人戻れないからアウト!とは致しません。ええ、原因は別にあります。相手はショウグンギザミ、一人でキャンプに戻ろうとする、仲間はモドリ玉を使えない……そんな状況に心当たりがありますよね?
────────突如足に走った痛みに、俺は転びこそしなかったものの大きくバランスを崩す。それでもなんとか踏み留まるために足に力を込めた途端、裂けるような痛みと共に生暖かい液体の感触が肌を伝い、そこで漸く俺は「足を斬られたのだ」と気が付いた。
避けたと思ったのに、避けきれなかった。
何という剣速だろうか。しかし幸いにも、竜の甲殻すら容易く斬り裂く破滅の斬撃は、砕竜の鎧によって辛うじてその威力を削がれ、少女のように骨諸共ぶった切られるようなことはなく、薄皮を撫でるに留まった。
大事には至らなかった。最悪は回避できた。しかし、それでも状況が劇的に悪化したのは最早隠しようのない事実であった。いくら少女の体が軽かろうと、抱えているのは人間一人の体重だ。それを負担しつつ、足を怪我しながら全力で逃走をするのはいくらなんでも難しい。
謎のショウグンギザミのスピードを考えれば、怪我が無い状態で全速力で走ってもなお足りないぐらいだ、現状の速力を削がれた状態はあまりにも不味い。────剣光が閃いた────。
今度は事前に来るであろうことが予測出来ていたこともあって、ギリギリで回避することに成功する。直近を撫でる刃によって鎧に使われている砕竜の甲殻の一部が削り取られたのはこの際無視するとしよう。体に当たらなかったというだけで最早万々歳なのだ。
だが、こんなことをいつまでも続けられる筈がない。フリーの状態でも攻撃を避け続けるのは至難の業なのだ。ましてや今の俺では遅かれ早かれ避けきれない攻撃が出てくる。このままでは──謎のショウグンギザミが刃を振り上げる。美しく磨き上げられたかのような刃紋は、いつのまにか降り注いでいた月光を反射して妖しく輝いた。
「それ以上好き勝手されてたまるかよっ!と」
「コッチを無視だなんていい度胸じゃない、泣かせてあげるわ。」しかし、その刃が俺に向かって振り下ろされる直前、アマネとレイカがヤツの真後ろから痛烈な一撃を叩き込み、その行動を止めてみせた。さしものヤツもそのダメージは無視できなかったのか、俺から視線を外し、アマネとレイカを振り返る。
そうして、謎のショウグンギザミのターゲットが外れて漸く、俺は思考する余裕を取り戻し、畳み掛けるように自信に言い聞かせる。考えろ、いつも考えてきたはずだ。どんな状況でも思考を止めず、時には定石通りに、時には奇策も用いて逆境を打破してきた。程度の差こそあれ、それは今回もきっと変わらないはずだ。
ランドラッドほど力があるわけでもない。ツバメほど機転が利くわけでもない。タクミほど忍耐強くもないし、ミーシャのような軽やかさも無ければ、ベテラン組ほど知識があるわけでもない。だがそれでも、積み上げてきた経験はきっと、嘘を吐かない。
……。
「クルトアイズ!何も聞かずに一旦この子を預かってくれ!」
それは随分と突拍子もない頼みだった。悪いとは思うが、現状説明している暇は無いのだ。この中では一番付き合いが長く、老獪なクルトアイズならば、その辺は飲み込んでくれるだろうと思っての人選だった。
「……?やれやれ、またぞろ何か思い付いたか。期待しているぞ。」
そして、そんな俺の思惑通り、適度に距離を取りつつ謎のショウグンギザミに攻撃を行っていたクルトアイズは、ただそう言うだけで俺の頼みを引き受けてくれた。
かなり体力を失っているのか朦朧としている少女を、慎重に彼に引き渡した俺は、少女に向かって「大丈夫、必ず助けるから」と声を掛けつつ、行動を開始した。──必ず、助ける。
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699
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-14 19:16
ID:aIkh7//E
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あー、兎氏やらかしたかw
って思ったら見抜いてやがったわ、パネェ
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700
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-14 20:01
ID:ppizYosU
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>>694だよね〜、これほど過去作ネタ弄り回してるのにこのギミックが無いわけないですからぁ……わざとかな?と思ったらマジでわざとだったよ……(呆然)
そしてこのプレッシャーよ(ガクブル)
────────俺の作戦を端的に説明すれば、"少女と一緒にモドリ玉で強引に帰還する"と言うものになる。それは当然仲間を置いていくということになるが、俺がこの場に残ったところで少女を抱えている限りは足手まといにしかならないのだ。それならば、先に俺たちが戻ってしまった方が、仲間達も安心してより早く帰還に全力を注ぐことができるだろうという判断である。
しかし、それを実行するに至っては、まず俺の両手をフリーにしなければならない。少女を抱えたままでは、アイテムを使うどころかポーチに手を掛けることすらままならないからだ。
そこで俺は、少女を安全に運びかつ両手をフリーにするために、簡易的な背負子を作ろうと思い至った。当初は多少不安定でも手持ちのロープを使って即席に……と思っていたが、天は我に味方した。
アイテムポーチを弄っていた俺の手に伝わってきた、柔らかい感触。一番奥で他のアイテムに埋もれていたそれを引っ張り出してみれば、そこにあったのは歪な形をしたネットであった。大して器用でもなく、ロクに経験も積んでいない人間が、即席で作り上げたような拙いネット。エリクシルが見たら悲鳴でも上げそうなそれは、しかし俺にとってはこれ以上ないくらいに信用のおけるものであった。何故ってそれは……
──いや、自分でも整理整頓が出来るほどだとは思っていなかったが、まさかこれほどとは思わなんだ。しかし、それこそが今の俺を助けているのだと思うと、人生というのはなんと数奇なものである。
……それは、全てが始まったあの日、飛行船の乗組員を助けるためにまだハンターですら無かった俺が必死で作り出したネット。成人男性一人を引き上げることができたそれは、強度という意味でも申し分なかった。
それが何故ここにあるのかはこの際置いておくとして、簡易的な背負子を作るにはこれ以上ないくらいに御誂え向きだ。そんな天の助けも相まって、俺は最初の予定よりも遥かに早く、そしてしっかりとした作りの背負子を作ることに成功した。これでまずは第一の関門は突破である。
「悪い、助かった。」
俺はクルトアイズに礼を言いつつ彼から少女を受け取ると、背負子に乗せてしっかりと固定した上で立ち上がった。この状態で長距離を普通にモンスターを避けつつ走るならば話は別だが、現状安定性に問題はないようだ。そのことを確認した上で、俺はクルトアイズに少女と共にモドリ玉で撤退する旨を伝え、未だ謎のショウグンギザミとギリギリの攻防を行なっている他の二人にも伝えてくれるよう頼んだ。
悪く言えば仲間を置いて俺だけ逃げようという案だが、それが合理的であることを彼もまた理解したのか、二つ返事で承諾してくれた。後は簡単だ、空いた両手でモドリ玉をポーチから取り出し、叩きつけるだけ。俺はポーチの中から先程使いそびれた緑色の手投げ玉を取り出し、いざ叩きつけんと大きく手を振り上げ──
────躊躇いが入る
急いでベースキャンプに戻ら
な
けれ
ば「──をしている!あなた!」
ハッ……と、その声に意識を呼び戻される。それはいつだったかの悪夢の再現だった。
だが、もうあの時と同じようには……と、そこまで考えたところで、俺は自分の手にモドリ玉が握られていないことに気が付く。慌てて視線を巡らせると、特徴的な緑色の手投げ玉は1メートルほど離れたところまで転がり落ちていた。まったく、此の期に及んで一体何をやっているんだ俺は、急いで拾──『剣光が閃いた』──
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701
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-14 21:12
ID:ppizYosU
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地面に落ちたモドリ玉を拾うために、一歩踏み出しながら前へと屈む。或いはもうすぐ安全地帯に戻れるという安心感が、俺に致命的な油断を生んでいた。
──両断──
───されていたかも知れなかった。
意識外の領域から、矢の如く降り注いだ斬撃を、しかし俺が紙一重で回避することができたのは、直前に祀導器【不門外】の鏡のように磨かれた盾に、僅かにその姿が映ったからに他ならなかった。もし他の武器を持っていれば……俺は自分の身に何が起きたのかもわからぬままに、首を切り落とされていただろう。そう考えると、背筋どころか全身が凍りつくような思いだった。
だが、安心はできない。
目の前に振り下ろされた斬撃を回避した関係上、俺とモドリ玉との距離は引き離されてしまった。それだけならば、まだいい。問題は、奴の注意が今俺を向いているということだ。ミソラ夫婦に加えクルトアイズが足止めをしていたとはいえ、油断するべきではなかった。どんなに頑張ろうとも、モンスターの注意を常に引き付け続けるのは難しい。そして、自分達よりも遥かに強大な相手を力で押し留める手段などありはしない。
何よりも、俺が過去の記憶に囚われ、棒立ちしていたのが問題だった。時を追うごとに誘導は難しくなるというのに、必要以上に彼等に負担をかけてしまったのだ。しかし、どれだけ後悔しようとも、現状は変わらない。
かくなる上は、謎のショウグンギザミの注意逸れるまで少女を背負った状態でその猛攻を回避し続けるか、虎穴に入らずんば虎子を得ずと攻撃を掻い潜りつつモドリ玉を拾い上げるしかないのだ。それは、どちらにせよ簡単なことではない。というかぶっちゃけ、コンディションが最高の時でも難しいだろうと言わざるを得ない。
それでも、やるしかないのだ。
やらないわけには、いかないのだ。そんな俺の決心は、しかし次の瞬間、残酷に踏み躙られることとなる。
回避行動をとった俺に対して正面を合わせるように、謎のショウグンギザミの脚がわしゃわしゃと動く。それはなんら変わりのない、普段通りの動きだったが、如何なる運命の悪戯か、ヤツの豪脚の一本が丁度モドリ玉の真上に振り下ろされ、容赦なく大地を貫いた。
ショウグンギザミは先端の細いたった4本の脚であれほどの巨体を支えている。そこにかかる力がどれほどのものなのかなどもはや想像もしたくない。少なくともそれは、小さな手投げ玉を圧し潰すには十分すぎるエネルギーだった。そしてその瞬間、他ならぬ謎のショウグンギザミによって、最後の希望が文字通りの意味で踏み躙られた。
─────あ、
随分と、間抜けな声だったと思う。
それはあまりにも突然だった。モドリ玉の存在は、俺の立てた作戦における最大にして最後のキーだった。逆に言えば、それが潰えるということは、この作戦が根底から破壊されることを意味していた。
そして、やっとの思いで絞り出したこの作戦が壊れたということは、もう俺にはどうすることもできないということを意味していた。ああ、もう、打つ手がないよ──
───"俺には"ね。
謎のショウグンギザミは欲張り過ぎた。
おそらくだが、アイツは目に付いた全ての生き物を殺そうとしている。だからこそこれまで、逃げようとしている奴を優先的に襲ってきたのだろう。それこそ、既に下した相手のトドメを刺すことすらも惜しんで……。……だが、お前はナメ過ぎなんだよ。
三度も戦ったことがある、俺だからこそ言える。"ソイツ"は、結構しつこい性格だぜ?まして───
灼熱の炎が直近で炸裂し、爆風が頬を撫でる。狩人として当然脅威に感じるべきであろうそれは、しかし今に至ってはこれ以上ないほどに頼もしく感じた。爆炎と共に現れたのは、闇夜を深める紫毒の姫君。
全身を引き裂かれ、自らの血に赤く染まり、さらには右耳と、尻尾と、左の翼の先端をも切り落とされ、酷く痛々しい外見になってなお、しかしその姿は決して誇りを失わなかった。遊びのように生き物を殺す、お前は知らないだろう。
とっととトドメを刺しておくべきだったな、この授業料はきっと、高く付くぜ。──この世で最強の生き物は、"母"である。
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702
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-14 22:41
ID:ppizYosU
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???視点
────────自らの血の沼に沈み、竜は考える。
我がことながら、なかなかに数奇な運命だったように思う。何にも顧みずにただ愚直に生きて、過去を振り返るのはきっと死の瞬間ぐらいなものであろうと考えてはいたが、いざこうしてみると、全くもってその通りなのだからおかしくなってしまう。
その竜は、決して生まれた時から恵まれた力を持つ存在というわけでは無かった。
火竜種、本来ならば生態系の絶対上位者として君臨するであろう種族に生まれながら、しかし竜は一度としてそうなることが出来なかった。それは力が無かったというよりは、恐らくは周囲の環境が悪かったのだろう。
地上戦においては遥か格上に位置する、斬竜ディノバルト。それが竜に初めて敗北を味わせた相手であった。美しく磨き上げられた青い尻尾に、己の翼爪を切り落とされる。圧倒的な実力差に、竜は逃走を余儀なくされたのだった。そして、縄張りを追い出されて彷徨っている時に、竜はその狩人と出会った。
当時は微塵も覇気など感じられず、技術も力もあまりにも未熟で、端的に言えば弱そうだった。
生憎その時分は竜自身も疲労と飢えによってかなり弱っていたため、遥か格下の相手に予想外に梃子摺り、最後には逃げられる羽目となったのは、ある意味竜にとっての一生の不覚であろう。縄張りを追い出され、プライドをへし折られた竜は、それでも厳しい自然界を必死に生き延び、やがて強くなった。
同種を圧倒する体格を手に入れ、幾度となく傷つけられた翼爪は再生に伴って大きく発達し、空中での姿勢制御能力を遥かに高める。ブレスの威力も幾分か強まり、これならばあの忌々しき斬竜にも勝てるのではと思っていた矢先、あの狩人が再び竜の前に姿を現した。
そして、竜は負けた。
それは初めて会った時とは違う、明確な敗北だった。逃げたわけでも、逃したわけでもなく、当時の自分に出せる全力同士のぶつかり合いで、敗北した。正確にはあの時あの場所には、あの狩人と加えてもう一人狩人がいたのだが、それでも竜にとって負けたということは揺るぎない事実だった。
死ぬのだろうと思った。勝てば生き残り、負けたならば死ぬというのは、この世界における絶対の理だと思っていたから……。しかし、竜は檻の中で目を覚ました。
竜は捕獲されていた。世にも珍しい二つ名の『成り掛け』個体。通常種が二つ名へと至るメカニズムを解明するする上で、その存在は非常に重要なサンプルであったのだ。
或いはだからこそ、竜は長く生き延びた。二度とは得られないかも知れない貴重なサンプルであればこそ、丁重に扱われ、飼い殺されたのだ。そうして、ただ人間に管理されながら飼育される日々を過ごしていた、ある日。
ふと目を覚ました瞬間、周囲の様子が妙に騒がしいことに気が付いた。耳障りだと思いながら体を動かし、視線を上げると、なんと竜が入れられていた檻が、大きく開いていたのだ。
なんの前触れもなく起こったそれを、しかし千載一遇のチャンスと見た竜は、迷う事なく大空へと飛び出した。それは久々の、自由な空だった。
今ならば、どこまでも飛んでいけそうな気がしていた。──そして竜は飛び立った。
遥か天空の領域へそれが今から、約半年前。
-
703
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-14 22:42
ID:ppizYosU
[編集]
半年前のあの日、竜は雲さえも下に見る天空を飛びながら、ある事を考えていた。それは随分と突拍子も無い考えで、竜の種族を思えば、本来ならばあり得ないことだった。
竜は人間に管理され、飼育されていた。その経験から……
──自らが人間を管理し、飼育することはできないか、と最初は全くの興味本意だった。
可能なのか、不可能なのか、それを試してみようと思っただけであったし、竜自身も具体的に実行する方法を考えていたわけでもなく、ただ漠然と頭の中に浮かんでいるだけのような状態だった。しかし、如何なる運命の悪戯か……
天空を旅する小山の上に、偶然少女の姿を見つけたのが、恐らくは全ての始まりだった。漠然としていた計画が、突如目の前で実行可能になる。竜の体を突き動かすのは、ただそれだけで十分だった。
小山から素早く少女を連れ去り、手頃な平地へと降り立つ。そして、人間達が自分に食料を与えていたのを見よう見まねで、少女に手頃な草食竜を与えてみた。
人間が何を食べるのかを竜は知らなかったが、食べられなくて死ぬならば所詮それまでだろうと思っていた。自分に人間の飼育は無理だし、少女はどちらにせよ死んでいただろうと、アッサリと諦めが付く程度のことでしか無かった。だが、少女は生きようとした。非力な身の上で、生に執着せんと必死に足掻いていた。
今思えば竜は、その姿を過去の自分と重ねて、親近感を抱いていたのかも知れない。どちらにせよ、その時から少女と竜の奇妙な共同生活が始まった。多くの夜を共に超え、多くの朝を共に迎えた。
その間ずっと、少女は竜から逃げようとするそぶりすら見せなかったし、竜もまた少女に単なる興味本意以上の情を抱いていた。
時間にすれば半年、自らの生涯の中では極々短い期間でしかないその日々は、しかし確かに今の竜を形作る上で大きな意味を持っていた。自らに縋るようにしがみつく、小さな腕。
──いつしか竜は、少女を己の本当の子供のように思うようになっていたのだ。そして、今。
かつての狩人が、遥かに強くなって己の目の前に姿を現した。因縁の宿敵に出会えたことを、竜は歓喜すると同時に、訝しく思う。人間は人間のあるべき領域へ……狩人は少女を連れ去ってしまうのではないかと思ったのだ。
それは本来であれば正しいことなのだろう。自分の方がおかしいということを、竜は当然知っていた。そして、狩人と三度目の戦いを繰り広げている最中、ソイツは現れた。
──完敗。いや、勝負にすらならなかった。斬竜に追い出された時も、狩人に敗北された時も、感じたことの無いような絶望的な隔たりがそこにはあった。
コイツだけは不味いと思った。目が正気じゃ無いと、直感で感じ取る。このままでは少女が殺されてしまう。それだけは、絶対に許せなかった。
だから竜は少女を狩人に託し、その化け物の足止めをした。人間は人間のあるべき領域へ、例え手が届かなくなろうとも、生きてさえいてくれれば、それでいいのだ。
あんなにか弱い存在が、あんなに必死に足掻いているというのに、その命を理不尽に奪われるなんてことが、あっていいはずがないのだから。だが、その足止めすらも、本気を出した化け物を前には、容易く切り裂かれた。勝ち目なんて、考えることもできない、後はただあの狩人達に、祈ることしか出来ない。この時竜は、或いは生まれて初めて、己の非力を本気で恨んだ。
自らの血の沼に沈み、竜は考える。
───それが望んだ結末なのか───
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704
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-15 23:14
ID:ppizYosU
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威嚇さえも、必要としない。
優雅に舞うことすら、とうにやめていた。謎のショウグンギザミの刃に貫かれ、ボタボタと鮮血を流しながら、紫毒姫は強引に奴の体に組み付き、己が身を諸共焼き尽くさんばかりに紅蓮の業火を叩きつける。パワー、スピード、テクニック、タフネス……全てにおいて劣る紫毒姫が最後に選んだ戦術は、超至近距離での体重のぶつけ合いだった。
謎のショウグンギザミが刃を振るう。刀のように研ぎ澄まされた刃が紫毒姫の甲殻を容易く引き裂き、肉を削ぎ落とす。紫毒姫はあまりの苦痛に様々な不協和音が混じり合ったような悲痛な呻き声を上げながらも、しかし決して謎のショウグンギザミの背負うヤドから牙を離すことはなく、寧ろより一層そのアギトに力を込めてより強く喰らいついた。
──それは、酷く醜い戦いだった。
天を舞って地上に這い蹲る生き物を蹂躙するでもなく、
容易く生き物の命を奪う火と毒の華で大地を彩るでもなく、
荒々しくも美しく全力で相手を仕留めるでもなく、
陸の女王の名の通り猛然と大地を駆けるでもなく、
飛竜の王種として相手を問わず誇り高く堂々と戦うでもなく、醜く地面を這い蹲り、美しさや誇りなど殴り捨てて、全身から血を流しながら、彼女は戦うのだ。
女王としてではなく、母として、勝てるはずもない相手と戦うのだ。紫毒姫の介入により、絶望的な戦況に幾ばくかの余裕が生まれる。だが、それもいつまで持つかはわからない。あれほどの傷、いくら強大な生命力を持つ飛竜種の二つ名個体であってもとっくに死んでいてもおかしくないのだ。少なくとも、この戦いが終わった後に、彼女が生き延びる可能性は、限りなくゼロだった。
だから、動け。
動かなくちゃいけないんだ。だってそうだろう、あれほど強くて、あれほど美しくて、あれほどカッコよくて、あれほど気高いアイツが……
強くあることを辞め、美しくあることを辞め、カッコよくあることを辞め、気高くあることを辞め……
命懸けで、俺に託したと言うならば──。それに応えられないような人間に、俺はなりたくないっ!
だがそれでも、現実は常に非常だ。足の傷は予想以上に開いており、あまりにも鋭利な断面に、血が止まる気配は無い。同時に、ここまでの肉体的疲労が急激に押し寄せてくる。体力の限界はもうすぐそこまで迫っていた。
瞬間、眩暈がすると同時に、急速に意識が遠退く。視界が闇夜に呑まれるように消えていき、頭に直接響くような耳鳴りが周囲の音を掻き消していく。耐えなければと、どれだけ思考が訴えかけようとも、体は応えてくれなかった。──ああクソ、こんなことなら、もう少し鍛えておくべきだった
──────
「──おっと、確かに今は夜だがおねむの時間にはまだ早いぜ?」
「一発食らえばシャキッと目覚めるかしらね?…なんて冗談。肩貸すわよ?」ふと、そんな二人の声に、消えかけていた意識が呼び覚まされる。気が付けば、二人は肩を組むようにして俺の体を支えていた。
直後、俺の口に回復薬が押し付けられる。正直吞み下すのさえ億劫だったが、それでもなんとか嫌な味のする液体を無理やり胃へと流し込むと、いくらか気分が楽になった。左右を向けば、アマネとレイカの顔があり、後ろを振り返れば、クルトアイズが俺達を守るように殿を務めている。紫毒姫に足止めを任せた彼等が、ここに来て合流したのだ。
しかし、俺を支える二人だって、決して楽では無いはずだ。謎のショウグンギザミの猛攻を、一番近くで凌ぎ続けていたのが彼等である。いくらベテランハンターとはいえその目に疲労の色はなおも濃く、足取りもお世辞にもしっかりしているとは言い難い。ガンナーであるクルトアイズも、その疲労は相当なものであろう。本来ならば、俺が支えてやるくらいでなければいけないのに、それが出来ない自分がどうしようもなく悔しかった。
そうして、二人の肩を借り、一人に背中を守られてながら、俺は歩く。
仲間の想いを、紫毒姫の願いを、無駄にしたくないから……。──ハハハ、さて、かなり痛いだろうが、ここを飛び降りるのが最短かな。
エリア7からエリア6へと至る崖を見下ろしながら、俺は半ばヤケクソ気味にそう考えた。着地術がどのくらい生きていてくれるのかはわからないが、仮に着地が失敗しても死にはしないだろう。
……とも思ったが、やっぱり危ないからロープの余りで降りよう。そうしよう。アマネとレイカにロープを固定してもらい、俺はエリア6へと降り立った。
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705
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-15 23:15
ID:ppizYosU
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四方を岸壁に囲まれたエリア6は、非常に静かだった。
地獄のような戦場と化している上のことなどまるで知らぬかのように、そこは静かで平和な空間だった。全身を苛む倦怠感と足に走る激痛を耐えつつ、地面へと降り立った俺は、合図としてロープを三回ほど引っ張る。すると、固定を失ったロープは重力に従って落ちていき、俺の手元へと戻ってきた。
この後の予定では、アマネとレイカがすぐ後を追って降り、一番経験豊富なクルトアイズが殿として降りてくるはずだ。別に待つ必要など無いが、現状の俺の機動力だと先に進んでいてもメリットが殆ど無く、寧ろ夜行性の小型モンスターに狙われるというデメリットが大きかった。そして、少しばかり待っていると、予定通りアマネとレイカが同時に降りてきた。後はクルトアイズの合流を待つばかり……だが、しばらく待っても彼が降りてくる様子は無かった。
もしかして彼の身に何かあったのでは──?と、心配した刹那、崖の上からクルトアイズが飛び降りてくる。特に怪我をした様子もなく、五体満足な彼に対し、「遅かったじゃないか」と俺が皮肉げに言うと、クルトアイズは少しバツの悪そうな顔をしながらこう言った。
「罠を仕掛けてきた。ヤツが俺達を追ってきたらかかるような位置にな。──それと、紫毒姫は死んだと思う。体の各所から骨が見え、腹を切り裂かれて内臓が溢れ出していた。アレで生きているのは……無理だ。」
どうやらクルトアイズはなおも謎のショウグンギザミが追ってくる可能性を見越して、罠を仕掛けていたそうだ。紫毒姫が稼いだ時間を最大限に活かそうというわけである。確かに、時間にすれば十数分ほど向き合っただけだが、アイツは自分が侵入できる限りどこまでも追ってきそうなほどの異常性を垣間見せていた。
──しかし、そうか。死んだか。
元より命を投げ捨てるような戦いだった。あの傷ではいずれにせよ死んでいただろう。
なのに、それをハッキリと突き付けられると、何故か動揺している自分がいた。もともと謎のショウグンギザミがやらなければ俺達が彼女を殺すはずだったのに、俺の中にある何かが紫毒姫の死を残念に思っていたのだ。とはいえ、俺達に彼女の弔いが出来るわけでもない。
ここで話していても何にもならないし、仮に謎のショウグンギザミが罠に掛かってくれていたとしても、罠を解除した後に追ってこないという可能性は決して高くはない。というか十中八九追ってくるだろう。エリアを跨いだことである程度の余裕が生まれたが、いつまでも悠長にはしていられない。少女を無事に安全な場所まで送り届けることだけが、俺達が彼女に出来る最初で最期の手向けなのだ。
死んでいったと思われる紫毒姫のことを思いつつ、空を見上げる。
どれだけ高い場所にいようとも、星空だけはいつもと変わらない輝きを放っ──────逃げろ皆んな!
星空が遮られた。空から何かが降ってくる。
ここにいては危ないと、本能が激しく警鐘を鳴らし、俺は足の怪我を顧みずに後ろへと跳んだ。直後、すさまじい衝撃に大地が揺れる。
それと同時に、俺の頬に何か生暖かい液体が飛び散った。……いや、頬だけではない、不快な刺激臭を放つベタつく液体は、柔らかい肉片とともに、雨のように俺の全身に降り注いだ。顔にかかった液体を拭いつつ、顔を上げる。すぐに仲間の安否を確認しなければ……という思考は、しかし目の前にあるソレを見た途端に何処かへ吹き飛んでしまった。
──エリア7から降ってきたのは、紫毒姫の体だった。
顔の半分を削がれ、肉を裂かれ、骨を刻まれ、翼をもぎ取られ、腹を割かれ、内臓を引きずり出され……芋虫のようになった、"紫毒姫だったもの"の体だった。
既に自分の意思で動くとは思えないそれが、落ちてきたということは、誰かが投げ捨てたということ以外に考えられない。そして、それが可能な存在は、俺たちが知る限りではたった一匹しかいなかった。──ふざけるなよ、化け物が。
俺はこの時始めて、謎のショウグンギザミに明確な敵意を抱いた。
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706
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-15 23:23
ID:ppizYosU
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う〜、文が荒くなってる。時間が足りない〜…。ハイペースであんなクオリティ維持するとかここの人達やっぱ超人やろ……
────────エリア7から降ってきたのは、過剰なまでに切り刻まれた、紫毒姫の体だった。
既に動かなくなっているそれは、しかし元来の圧倒的な質量によって、ただ落下するというその現象だけで十分な威力を持っていた。幸い俺と少女は無事だったが、横たわる紫毒姫の亡骸と夜の闇が邪魔をして他の仲間の姿を確認することが出来ない。彼等のことだから大丈夫だろうとは思うが、それでも万が一ということもあるのだ。
「皆んな無事か!」
「こっちは大丈夫だ!レイカもいる!」しかし、やはりと言おうかそんな俺の心配は杞憂に終わったようである。お互いに声を掛け合って無事を確認した俺達は、紫毒姫の体が邪魔にならない位置まで移動し、改めて細かい安否を確認する。
突然のことだったが幸いにも全員大きな怪我はしていないようで、移動に支障をきたすような事態にはならなかった。狙ってなのかどうなのかはわからないが、ここで誰かが行動不能にでもなれば、謎のショウグンギザミが追ってきた場合相当厳しいことになっていたであろう。とはいえ、いつまでも無事を喜んでいるわけにもいかない。こうしている間にも、謎のショウグンギザミが現れる可能性は十二分にあるのだ。幸いにもエリア6を出れば後はエリア1の平原を突っ切るだけである。
ゴールはもうすぐだと、俺たちは勇んで進み始め──「いや……いやぁぁぁぁぁあああああっ!!」
──しかし、その歩みは突如俺の耳元で響いた悲鳴によって中断された。
先ほどの衝撃か何かが原因でいつのまにか再び目を覚ましたのか、少女は芋虫のように切り刻まれた紫毒姫を見て悲鳴を上げながら絶望に顔を歪め、俺が作った即席の背負子の上で暴れる。
迂闊だった、この子にこの光景を見せるべきではなかった。紫毒姫が少女のことを子供のように思っているとするならば、それは逆もまた然りなのだ。いくら少女が非力とはいえ、古いネットを使った即席の背負子はそこまで丈夫というわけではない。もちろんすぐに破損したというわけではないが、少女が暴れるごとに徐々に固定に綻びが生じる。
慌てて仲間たちが少女を抑えようとするも、僅かに遅かった。細い体で固定から抜け出した少女は狩人達の間を掻い潜り、覚束ない足取りで紫毒姫だったものに駆け寄る。──だが、いくら触れても呼び掛けても、その体はもう動かない。
「……ぅあ」
そんな少女の姿を、見ていられなくて。
そんな少女の声を、聞いていられなくて。
俺は少女に駆け寄り、その顔を覗き込んだ。絶望に打ちひしがれ、全てを諦めたかのようなその顔に、俺は何をすればいいのかわからなかった。こんな時、どんなことを言ってやればいいのか、どんなことをしてやればいいのか、わからなかった。──だから、もちろん感謝なんて絶対にしてやらないし、嬉しくなんてこれっぽっちも思ってなどいないが、その襲撃はある意味では有り難かった。
謎のショウグンギザミが、空から降りてくる。よりにもよって紫毒姫を踏みつけるように落ちてきたソイツは、目の前にいる俺たち少女を背筋が凍るような視線で睨み付けた。
瞬間、俺は強引に少女を抱き上げ、なけなしの体力で謎のショウグンギザミに背を向けて走り出す。絶望した人間を立ち直らせるよりはまだ、ただ走るだけでいいという意味では、謎のショウグンギザミから逃げる方が単純でわかりやすかった。とは言え、状況は決していいとは言い難い。
俺が少女を抱えて走るよりも、謎のショウグンギザミがそれを追う速度の方が早く、仲間達のフォローが間に合う前に、背後から切り裂かれる可能性が高かった。───ああ、愚直に逃げるというただそれだけのことすら、こんなにも難しいのに……。
だが、謎のショウグンギザミの足は止まっていた。
死にかけの竜の牙に捉えられて、止まっていた。
それはほんの一瞬の足止めにしかならなかったが、それでも、俺がヤツの間合いから外れるには十分な時間だった。──剣光が閃いた──
最後の足掻きを見せた母なる竜は、極限に研ぎ澄まされた刃によって念入りに首を切り落とされて、ようやくその生涯に幕を閉じた。
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707
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-16 18:29
ID:ppizYosU
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最後の最期で紫毒姫が稼いだなけなしの時間を使って、俺たちは逃げ出した。
崖から落ちてきた紫毒姫は、誰がどう見ても完全に死んでいた。致命傷と呼ぶにも深過ぎる傷、それを全身の至る所に刻まれ、体液という体液は溢れ出し、殆どの臓器はその機能を失っていただろう。実際、モンスターについて詳しいアマネでさえも、あの状態の紫毒姫が生きていると思ってはいなかった。
だが、それでも彼女は、動いたのだ。
それは、固意地と言うにも足りない、圧倒的なまでの執念。なんとしても謎のショウグンギザミを止めるのだという、"母の愛"が、彼女にそれを可能とさせたのだろうか……。紫毒姫が死んだ今となっては、その答えは永久にわからない。
ただ、ひとつだけ言えることがあるとすれば、その執念は決して無駄ではなかったということだ。背を向けて逃げ出す俺たちに対し、しかし謎のショウグンギザミはすぐに俺たちを追うことはせず、入念に紫毒姫の体を切り刻んでいた。
首を落としてもなお足りないと言わんばかりに、もう二度と起き上がることの無いように、もう二度と動き出すことの無いように、四肢を捥ぎ取り、胴体を引き裂き、最早竜の原型すらも留めない形にして、打ち棄てる。───あるいはそれは、謎のショウグンギザミなりの賞賛なのかも知れない。
全てを斬り殺そうとする怪物が、今まさに逃げ出そうという相手を捨て置いてでも、既に逃げることはおろか、動くことすらないはずの相手を、しかし確実に殺害するという行為は……
自分にそれをさせるだけの価値を証明した相手への、怪物なりの賛辞なのかも知れない。だが、今はそんなことはどうでもいい。
どれだけ考えたって、俺は謎のショウグンギザミの心の内を理解することは出来ないし、理解したいとも思わない。……俺はコイツが、嫌いだった。
それは、ある意味では生まれて初めて抱いた感情……これまでどんなモンスターと対峙した時であっても、そこに自分の私的な感情などは存在せず、いつだって俺はただ戦わなければという義務感、使命感のみによって動いてきた。
例えモンスターの所業を憎んだことはあっても、モンスターの存在そのものを憎いと思ったことなど、一度もなかった。これまでもずっとそうであったし、これからもずっとそうだろうと思っていた。なのに、今の俺は怒っている。
それは激情と呼ぶにはあまりにも静かで、義憤と言うにはあまりにも曖昧な怒りだった。ただ、俺はこの生き物の存在が、ひたすらに不快だった。
俺がこれまで会ってきたどんなモンスターであっても、ただ純粋に生きるというその目的の為、あるいは自分の大切な何かを守る為に、必死に足掻いていたというのに……
コイツからだけは、それを感じることが出来ないのだ。コイツだけは、生きる為に殺しているのではなく、殺す為に生きているのではないかと、そう思えてならないのだ。
だけど、その怒りは今は置いておこう。
今はまだ、"その時"ではないから。
なんとしてでも生き延びて、次に繋ごう。いつか己の刃が、アイツに届くその時まで……。──
────視界が開ける。群青色の星空が、地平の果てまで続いていた。
遮るものも、隠れる場所も、一つたりとも存在しない、そこは遺群嶺のエリア1。この静かな平原を抜ければ、その先にはモンスターが絶対に侵入できない狩場における唯一の安全地帯、ベースキャンプがある。いつもは大した距離でもないと思えるそこが、今だけはどうしようもないくらいに広く感じた。
紫毒姫の解体を終えたのか、後ろから徐々に近付いて来る謎のショウグンギザミの武骨な足音。一陣の冷たい風が、緊張感を演出する。────遺群嶺最後の攻防が、始まる。
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708
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-16 18:32
ID:ppizYosU
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???視点
────────むせ返るような血の匂いが、切り立った崖に阻まれて充満していた。
執拗なまでに切り刻まれた死体が散乱し、周囲の岩壁を見れば小さな肉片が無数にこびり付いている。彼女の体から溢れ出した命の潮は小さな沼を形作り、足の裏からはいかようにも形容しがたい不快感が絶えることなく伝わってきた。僅かに残った温もりが、ソレがついさっきまで生きていたことを教えてくれる。
……だがそれすらも、冷たい夜風に晒されて、いずれは消えて無くなってしまうのだろう。そう考えると、どうしようもない寂しさと無常感を抱かずにはいられなかった。醜い断面を晒して地面に転がる彼女の頭を、拾い上げる。
その琥珀色の目はもう二度と開くことはなく、その口はもう二度と息をすることなどあり得ない。死別とは、つまりはそういうものなのだ。
自分に、もう少し勇気があれば……自分が、もう少し強ければ……いくらそう考えようとも、既に起こってしまった現実は誰にも変えようが無い。時間の流れとはこの世で最も非情なものだ。誰にでも平等に訪れるのに、やがては全てを取り零す。ああ、愛しき者よ。
どうして貴女が死ななければならなかったのか。
如何なる理由があって、貴女はその生存の権利を否定されなければならなかったのか。────許せない。
それは酷く一方的で、独り善がりな怒りだった。
自分でも、わかっていたはずなのに。彼女が己の命を代価にしてでも、守るべき者を、守りたい者を守って死んでいったことくらい、わかっていたはずなのに……。
それでも、湧き出す怒りを抑えきることが出来なかった。だから、彼女の為に怒っているとか、そんな冒涜的なことは言わない。彼女の覚悟を穢す権利は、きっと自分には無いから。
この怒りは、自分のものだ。他の誰でもない、自分の、自分による、自分の為の怒りなのだ。願わくば、このどこまでも続く星空よ、見ていてくれ。
いつもと同じように、空の王者と呼ばれる自分すらも見下ろして、遥か天の高みから、愚か者の激情を。勇気と言うにはあまりにも無謀で、覚悟と言うにはあまりにも後ろ向きで、仇討ちというにはあまりにも独善的な、弱者の慟哭を聞くがいい。ショウグンギザミ、許すまじ。
───ショウグンギザミ、許すまじっ!
◇◆◇◆◇
──剣光が閃いた──
自らの体を鎧諸共寸断せんと振るわれた死の鎌を、俺はスレスレで回避する。それによって僅かに生まれた隙を突いて、アマネとレイカが謎のショウグンギザミの足元へと斬り込んだ。
一発でも被弾すれば、途端に死傷者モノのピンチに陥りかねない極限の攻防。邂逅時から続いていたそれは、しかしここに来て今までよりも遥かに安定するようになっていた。狩人達の疲労の色はなおも濃い。昼過ぎから始まって、すっかり夜になった今の今まで、ずっと戦闘と移動を繰り返していたのだ。いくら細かい休憩を挟もうとも、体に蓄積された疲労は決して容易く消えてくれたりはしない。
だがそれでも、こうして安定した回避ができるようになっているのは、勿論ある程度ヤツの攻撃に慣れてきたというのもあるが……端的に言えば、疲れるのは決して俺たちだけではなかったということである。獣宿し【餓狼】の効果が切れ、謎のショウグンギザミの動きは劇的に鈍くなった。それでもなお普通のショウグンギザミを遥かに上回るキレがあるが、あの恐ろしいまでの連続攻撃を繰り出してくることはほとんど無くなり、攻撃の後に明確な隙が生まれるようになった。
まだ完全に疲労状態になったわけではないらしいが、よく見れば鎌の色も少し変わっている。さっきまではほんのりと赤っぽいオーラを纏っていたのだが、今はそれが消えていたのだ。
──もしかしてコイツさっきまで鬼人化……鬼蟹化してた?いやいやそんなまさか……あ、でも記憶を探ってみると確かに最初の方に鋏をクロスさせてそれっぽい動作してたな。そう考えると逆によく今までスタミナが持っていたものだなとも思うが、仮にコイツがロアルドロスを食っていたとしても俺はもう驚かない。
ともあれ、ここに来て謎のショウグンギザミは大幅に弱体化した。それでもとても油断はできないのだが、上手く立ち回れば逃げるだけではなくもっと能動的な足止めも出来るだろう。
そうだな……二回ほど拘束できれば、この無駄に広いエリアでも安全に渡ることが出来そうだ。
Q.選択を組み合わせて、ショウグンギザミを二回拘束せよ!(+α要素によって評点が上がります)
1、罠による拘束
2、状態異常による拘束
3、乗りによる拘束
4、スタンによる拘束
5、脚ダウンによる拘束 -
709
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-17 10:27
ID:S8qDo72s
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ちょっと一回ステータス画面開いてもらってええかの?
どんな装備とスタイルだったか全然思い出せねぇ… -
710
名前:@
投稿日:2018-11-17 11:49
ID:ppizYosU
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あなた
状態:足の怪我+出血(小)
肉体的疲労◾︎◾︎◾︎◾︎◽︎◽︎
精神的疲労◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◽︎
ブラキXシリーズ・祀導器【不門外】
エリアルスタイル・ラウンドフォースクルトアイズ
状態:目立った外傷無し
肉体的疲労◾︎◾︎◾︎◾︎◽︎◽︎
精神的疲労◾︎◾︎◾︎◽︎◽︎◽︎
クックXシリーズ・イャンクック大砲
ブシドースタイル(?)・狩技未設定アマネ・ミソラ
状態:目立った外傷無し
肉体的疲労◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◽︎
精神的疲労◾︎◾︎◾︎◾︎◽︎◽︎
隻眼シリーズ(多分真は未発動)・巨爪ダイカイタイ
エリアルスタイル・狩技未設定レイカ・ミソラ
状態:鏖魔邂逅時の負傷
肉体的疲労◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◽︎
精神的疲労◾︎◾︎◾︎◾︎◽︎◽︎
隻眼シリーズ(多分真は未発動)・デンジャラスハール
ギルドスタイル(?)・狩技未設定謎の少女
状態:片腕欠損+出血(大)
肉体的疲労◾︎◾︎◾︎◽︎
精神的疲労◾︎◾︎◾︎
無し謎のショウグンギザミ
状態:火傷打撲数知れず
肉体的疲労◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◽︎
精神的疲労◾︎◾︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎◽︎
獣宿し【餓狼】&血風独楽こんな感じやったと思います(ちゃんと覚えていない屑)
え?最後に変なステータスが混ざってる? -
711
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-17 14:05
ID:KVRkK3dM
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レイカの負傷ってそんな何シナリオも影響残るような負傷だったっけ?
包帯で処置の終わる位の描写しかされてないはずだけど -
712
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-17 15:19
ID:NoBTyIXM
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とりあえず投下しておきましょ
レイカさんが金剛身トラップ設置かかったところをクルトアイズさんが鉄甲溜弾でスタンあなた逃走終了
ミソラさんが気絶してるところに後ろから乗り一回目その間にレイカさん撤退クルトアイズさんは全足に攻撃
乗り落としたら血風独楽で撤退しつつ片側の足を切っていくクルトアイズさんは消滅距離近くまでBCに近づいてミソラさんに当たらないよう拡散を残った足に発射後BCへ緊急回避
これでこの二人も撤退出来る・・・とてつもなく長い5回拘束してるし・・・ダメだったら(細かすぎるし)他の方のでお願いします
-
713
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-17 17:24
ID:ppizYosU
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評点はインビジブルだ!
>>711レイカさんの負傷は選択ルート次第ではかなり厳しくなってた『裏ステータス』やで(というか分岐ルートも書いてたから勘違いしてたけどこのルートはレイカさんの負傷スルーしてるな……)
どうしても腕を酷使するレイカさんの戦闘スタイル(狩猟笛でメッタ打ち)と、戦闘中はアドレナリンドバドバになってしまう性格(つりまり痛みに気付けない)=「これって過去の怪我の影響受けてピンチになるテンプレパターンじゃね?(外道)」という考えだったんやけど、使い損ねたなぁ(無能)
>>712ええやん、ジャンジャン拘束して♡そして、血風独楽はギザミが使うんだよぉ!じゃけん乗りが終わったら発動しましょうねー(鬼畜)
─────────謎のショウグンギザミの動きが鈍った。
安全地帯はほど近い。それでもなお決して油断できる相手ではないが、ここで勝負を仕掛けるべきだと判断した。いや、ここで勝負を仕掛けなければ、エリア全体が広く障害物も何もないこの場所ではおそらく逃げ切ることか難しい。そして、下手に時間をかけてしまえば、もしかしたらアイツが疲労から回復してしまう可能性も十分にあり得る。そうなる前に、逃げ切ってしまわなければならない。
もちろん、勝負に出るといってもそれは今の状態で攻勢に出るというわけではない。いくら隙が生まれたとはいえ、トップスピードの時には逃げることに全力を注いでなおギリギリだった相手だ。狩人達も相当に消耗している今の状態で下手に攻勢に出ようものなら、それこそ返り討ちに遭うだろう。
ここで言う"勝負"とは、わかりやすく言えば『一か八かっ!』である。つまり、狩人のとり得る手段を用いて動きを拘束してしまおうということだ。……少なくとも、二回。
二回分の拘束時間があれば、少女を抱えていてもなんとか逃げられる。ヤツを何とかして二回ほど拘束してくれ!……と、そう言葉を発する前に、仲間達は既に動いていた。どうやら、彼等も俺と同じように考えていたらしい。アマネとクルトアイズが謎のショウグンギザミの注意を引くように攻撃と離脱を続け、その間にレイカが狩技【金剛身】を発動し、地面に罠を設置する。
【金剛身】とは全身が鋼のように硬くなり、さらには怯むことも無くなるどころか通常であれば吹っ飛ばされる攻撃でも耐えられるようになるという、痩せ我慢の究極のような狩技だ。これを使うことで万が一ショウグンギザミから攻撃を受けた時でも罠の設置だけは強引に成功させるらしい。男らしいなぁオイ。とはいえそれはあくまで保険。そもそもどれだけ防御が上がったところでヤツの剣撃に耐えられるという確証は無いので、その間にアマネとクルトアイズはなんとか謎のショウグンギザミを抑えている。
そんな二人の努力が功を奏したのか、レイカが無事に罠を仕掛け終えると、謎のショウグンギザミに張り付いていたアマネとクルトアイズは一転してヤツの間合いから離脱し、罠への誘導を開始する。
誘導は見事に成功した。謎のショウグンギザミがトラップを踏み抜いた瞬間、オレンジ色の火花が迸ると共に強制的にヤツを感電させ、その動きを封じ込める。いくら特殊な個体であろうとも所詮相手は生き物に過ぎない。これが落とし穴だったら微妙なところだったが、電流によって動きを封じるシビレ罠はヤツにも普通に通用したようで、謎のショウグンギザミは体を痙攣させながらその場に棒立ち状態になった。
これで一回……拘束時間はわからないが、結構距離を稼げるはずだ。しかし罠なかかった謎のショウグンギザミに対しても彼等は容赦しない。まああそこまでされて容赦しろと言う方が無理な相談だろうが、それ以上にヤツの性質上一回の拘束では十分に安全が確保できないのだ。
紫毒姫という例外こそあったものの、ヤツは基本的に一番逃げようとしている相手を優先的に攻撃するという癖がある。つまり、一回の拘束で逃げ切れなかった場合ヤツは真っ先に俺を狙ってくる可能性が高いのだ。だからこそ、二回の拘束で確実に逃げなければならない。そして、二回目の拘束の手段に選ばれたのは……クルトアイズの徹甲榴弾によるスタンだ。ショウグンギザミに限らず甲殻種というのは頭の部分が大きいのでスタンを狙いやすいという特徴がある。だからこその採用だろう。
シビレ罠に拘束されている謎のショウグンギザミの頭に、いくつもの小さな爆弾が突き刺さって爆ぜた。
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714
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-17 18:33
ID:ppizYosU
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独特の黄色い電流が謎のショウグンギザミを感電させている間に、ヤツの頭にいくつもの小さな爆弾──徹甲榴弾が突き刺さる。
一時は張り付くだけかに思われたそれらは、しかし直後には大きな衝撃を伴いながら炸裂し、謎のショウグンギザミの頭を激しく揺さぶった。いくら常識外れな戦闘力を持つ謎のショウグンギザミも、流石に脳に直接衝撃を受ければたまったものではない。いや、むしろこれまでの事を総合的に考えると、攻撃能力こそ異常ではあるものの、ヤツの防御能力は──並だ。
たしかに普通のショウグンギザミに比べればいくらか頑丈で、なおかつ大きなダメージを受けてもなお攻撃を続けるという残虐性はあるものの、紫毒姫の猛攻に対し、謎のショウグンギザミはかなりガッツリダメージを受けていた。そう、ヤツは決して無敵というわけではないのだ。どれだけ恐ろしい存在でも、やはり生き物の理からは逃れられない。
徹甲榴弾の爆発が絶え間無く謎のショウグンギザミの頭部を襲う。普通ならば、シビレ罠の拘束時間中にたった一人のガンナーだけでスタンを取るというのはそう簡単ではないのだが……今回ばかりは事情が違った。
というのも、知っての通りリオレイアの攻撃はかなり……気絶しやすい。ましてやヤツはその二つ名個体の攻撃を何度も食らっていたのだ、その間に謎のショウグンギザミに蓄積された衝撃は、決して並大抵のものではない。やがてシビレ罠の強度が限界に達したのか、黄色い電流がプツリと途切れ、謎のショウグンギザミは拘束から解放される。
しかし、直後再三の爆発の衝撃がヤツの頭を貫き、短時間に連続で叩き込まれた衝撃に謎のショウグンギザミはフラフラと地面に倒れ込んだ。
モンスターの眩暈状態、俗に言う『スタン』だ。厳密に言えば衝撃によって平衡感覚を失っている状態であり"スタン(気絶)"ではないらしい(ってアマネが言ってた)が、今はそんなことはどうでもいい。しかし、狙ってなのかはわからないがかなり上手いタイミングでスタンを取ってくれたものだ。罠の拘束時間中にスタンを取ってしまうと却って全体の拘束が短くなるのだが、罠の拘束時間が終わった直後にスタン状態にしたので、出来うる限りの最大限の拘束が可能になった。
そして、これで二回目の拘束となる。
これまでの時間で、俺は既にエリアのほとんどを渡り終えている。あと1回分の拘束時間があれば、十分にベースキャンプに戻ることができるだろう。仲間を置いていくのは多少心苦しさも感じなくもないが、俺が逃げ切りさえすれば誘導も不要になるので、今の状態の謎のショウグンギザミ相手ならば、彼等の実力があれば余程のことが無い限り十分に逃げ切ることが出来るはずだ。眩暈を起こして地面をもがく謎のショウグンギザミに対し、アマネはエア回避を使ってその体を踏み付け、まるで空中を舞うかのように攻撃を繰り出す。
シビレ罠に掛かっている最中も同じようにしていたが、ここに来てその頻度が劇的に上がった。どうやら彼もスタンの解除ギリギリを狙って乗りに移行するつもりらしい。三回目の拘束は、恐らくは仲間の撤退用だろう。だからといって手を抜くわけではないが、そうとわかれば俺も安心して逃げ切ることが出来る。
俺は自らの背後で謎のショウグンギザミと闘う仲間達から視線を外し、自らの進む先へと視線を送った。────遺群嶺、ベースキャンプ。
狩場における唯一の安全地帯であり、俺たちが目指していた終着点。
最後の一歩を踏み出したその瞬間、一陣の風が俺を賞賛するかのように頬を撫でた。
思い返せば、なんとも長く、苦しい戦いだった。過去のトラウマ、それすらも塗り潰す圧倒的実力差と狂気、度重なる危機を紙一重で切り抜けてなお、まだ決着が付いたわけではない。
ヤツを完全にこの世から葬り去らない限り、この勝負は、きっと終わらないのだろう。この恐怖は、きっと消えてはくれないのだろう。でも、今は勝負はお預けだ。
それがいつになるのかは、わからない。
それでもいつか、俺はお前とぶつかり合う日が来るだろう。
嫌な話だが、その予感だけはこれまで一度たりとも外したことがないから……。だから、再び相見えるその日まで、俺は強くなろう。
だから、再び相見えるその日まで、首を洗って待っていろ。──お前を倒して、この長き呪い(トラウマ)に終止符を。
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715
名前:暇
投稿日:2018-11-17 21:07
ID:kd6LywvQ
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モドリ玉の原理は煙でキマッて隠しルート見付けてる説と、煙で目眩まししつつそれ自体を合図としてネコタクが迎えに来てくれる説がある
ワールドのモドリ玉見る限りでは多分後者 -
716
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-17 21:27
ID:ppizYosU
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あなた不在につき三人称視点。
>>715個人的には消臭玉を極限まで強化した物だと思っています。この辺の解釈は自由と言うべきか曖昧と言うべきか……
────────あなたの撤退が完了した。
レイカからそう報告を受けた瞬間、クルトアイズは即座に撤退に向けた準備を開始する。とは言っても、すぐに逃げるわけではない。今二人が逃げてしまうと位置の関係上どうしてもアマネが取り残される形になってしまうし、なによりもこのまま大人しく引き下がるのは癪だったからだ。
それは普段冷静沈着なクルトアイズにしては随分と珍しい感情だったが、ここまでの鎧裂ショウグンギザミの所業は、彼を多少なりとも怒らせるには十分すぎるものであった。
食べるでもなく、守るでもなく、殺すために殺すというその行為を……自然の理に反した行いを、彼は看過しきれない。とはいえ、今の状態で戦うのはかなり分が悪い。最高のコンディションで、万全の準備をした上で、ようやく互角に戦えるだろうと自信を持って言える相手である。せいぜい、置き土産に手痛い攻撃を食らわすのがやっとだろう。それ以上の深追いは、却って仲間を危険に晒す行為だ。
いくら嫌いな相手でも、それで不要なリスクを負うような愚を、彼は決して冒さない。と、丁度その時、アマネが鎧裂ショウグンギザミに乗ることに成功する。上方からの衝撃に鎧裂ショウグンギザミが思わずバランスを崩したその瞬間、アマネは大きくジャンプすることでその巨体に飛び乗り、腰に携えたナイフによって攻撃を開始した。
そんなアマネに対し、見事にスタンによる拘束時間の終わり際に合わせたな……とクルトアイズは感心するが、もちろんその間に乗りの支援をすることも忘れてはいない。暴れまわる鎧裂ショウグンギザミの細い脚に正確な射撃を行い、そのバランスを打ち崩さんと攻撃を仕掛ける。もちろん、鎧裂ショウグンギザミもただ黙ってやられてくれるほど甘い相手ではない。見上げるほどの巨体でありながら、その体重を感じさせないかのように軽々と跳ね回り、頭部に張り付くアマネを振り落さんと暴れ狂う。
圧倒的なサイズも相まってその力は通常種の比ではなく、全力でしがみついてなお尋常ではない力がアマネの腕にのしかかった。しかし、クルトアイズの援護とアマネの的確な行動分析により、最後には鎧裂ショウグンギザミの方が先に根を上げ、大きくバランスを崩して地面へと倒れ伏すこととなる。鎧裂ショウグンギザミがすぐに立ち上がらないことを確認すると、アマネとクルトアイズは置き土産と言わんばかりに攻撃を繰り出しつつベースキャンプへと向かう。レイカはあなたと少女の治療のため先にベースキャンプへ戻っており、既にエリア1に残っているのはこの二人のみとなった。
強力な相手の劇的な弱体化。度重なる拘束の成功。護るべき相手は既に逃げ延び、ここから負ける要素はほとんど存在しなかった。それは確かな事実であり、長きに渡る遺群嶺の攻防は、既に終了を目前に控えていた。
或いは、その事を冷静に分析できる彼等だからこそ、不意を打たれたのかも知れない。経験を積んでいたが故に、ここから逆転することはあり得ないだろうと"常識的"に考えてしまった。油断していたわけではなかった。
長く苦しい戦いであればこそ、その終わり際は最も慎重にならねばならないことを、彼等は確かに知っていた。──ただ、『あと一発』を欲張ってしまった。
乗りによるダウンから解放され、足元に拡散弾による爆炎が立ち上る中で、鎧裂ショウグンギザミはゆっくりと起き上がる。
この時既に、アマネとクルトアイズはエリア1の殆どを渡りきっていた。これまでの鎧裂ショウグンギザミの機動力を鑑みれば、ここからヤツの攻撃が届くことはない。そう結論付けられるくらい、ゴールは目前に迫っていたのだ。鎧裂ショウグンギザミが刀のように磨き上げられた自らの鎌を背中へと回し、今は亡き斬竜の牙へと挟み込む。その動作はまるで、斬竜の用いる大回転斬りそのもののようで……しかし、その本質は明らかに違っていた。
────『血風独楽』────
遠くにあったはずの鎧裂ショウグンギザミの鎌が、気付けば二人のすぐ目の前まで迫っていた。
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717
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-17 22:04
ID:s4tSuPmM
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その時運悪く脚の一本が遺群嶺の荒れた地面の窪みに引っ掛かる!
なんたる不運か、謎のショウグンギザミは脚を挫いて転倒してしまった、南無 -
718
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-17 22:29
ID:pOHHOVXc
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シナリオ進行は難亭さんですよね。
あえてお名前を隠されるのはなぜですか?
評点がインビジブルなのはご自身だけです。 -
719
名前:暇
投稿日:2018-11-17 22:38
ID:kd6LywvQ
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あ、あと手持ちの端末が全てイカれてしばらく書き込めないので感想諸々も投げておこう
一部反響のあったあなたの錯乱について、真意が伝わらないと溜め息吐くより先に貴重な意見と受け止めて欲しかったです(荒れる原因ってのもそうだし書き手だけで持ってる物語でもないので)
実際文章が裂かれる演出で錯乱する思考を表現するのに『剣光が閃いた』だけでは読み手と錯乱状態にあるあなたの思考の解離を埋めるには臨場感が足りなかったとも思うので個人的な好みを申しますと「あ?あ、あ...!あああああああ!!!」みたいな段階を踏んで
『剣光が閃いた』(地の文)『閃く光に心が掻き乱され』(地の文)『上手く思考が纏まらない』(地の文)『胸が苦しい、目が回る』(地の文)『捕まった。心的外傷、トラウマに』
(地の文)『そんな俺の心ごと切り裂く様に』(地の文)『剣光が閃いた』(地の文)『剣光が閃いた』(地の文)以下剣光ラッシュ
て感じだと俺レベルのアホにも分かる。
でも万人受けをかなぐり捨てて芸術点取りに行く前のめりな姿勢が素敵だとと思います!(小学生並みの知能と感想)しかし少女先輩腕ポロするわ紫毒姫殺されるわで散々ですな
これはあなたを逆恨みしていつか殺してやるって感じで側に居つつ生きる理由が他に無くて歪んだ依存をしていくんやろなあ(歪んだ願望)
まだまだ謎も強敵も残ってるけどどんな結末になるにせよ後書きで全貌が明らかになるのを楽しみに待ってます!>>717
草生えた -
720
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-17 23:49
ID:ppizYosU
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──嫌な予感がした。
彼等が振り返った理由は、ただそれだけだった。
それはなんとも具体性に欠ける感覚で、そうであるからこそ彼等が狩場において最も大事にしているものであった。知識は、あって当然だ。力は、無ければ話にならない。運も、多少なりとも絡むところはあるだろう。だが、最後の最後、生か死かというその間際で、その者の明暗を分かつのは──勘だ。
それは、人間という生き物が、長き長き時を経て身に付けた危機察知能力。この世においては数多いる天敵から、身を守るための本能の警告だった。
だからこそ、そこに具体性や論理性は存在しない。
これこれこうだから危険、などという考察は、実際の生死の間際にはまるで役に立たないのだ。理由などなくとも、危険なものはとにかく危険なのである。そう割り切って、目の前の危機に対処できるかどうか。問題はそこにあるのだ。故に、"勝負勘"というのは大成する狩人とそうでないと狩人を分ける大きな違いの一つであった。
そして、この二人に当然それが備わっていない道理など無い。振り返る。
直後、迫り来る斬撃。美しく尾を引く残光。
ゴールは目前。距離は近い。想定を上回る速度。防御は不可能。被弾は死。迫り来る危機。一定の軌道を描く。剣光が閃いた。斬り裂かれる。回復は間に合わない。たった二人。援護も望めない。──避けるしかない。一瞬の内に目まぐるしく移り変わった思考は、しかし最終的には二人とも全く同じものへと落ち着いた。目前に迫り来る攻撃に対し、最も原始的かつ合理的な対処法……即ち、"回避"へと。
かなり厳しいタイミングだった。
連続で繰り出される斬撃、リーチの長さ故の攻撃範囲、そして、完全に初見の行動。それを咄嗟に判断して回避するなど、並大抵のことではない。アマネも、クルトアイズも、もう一度同じことをやれと言われたって無理だと断言するだろう。だが、この瞬間だけは、それは成功する。
まさに紙一重、アマネは前髪を少し切り落とされ、クルトアイズは防具に付いた凹凸がなくなるほどギリギリだった。極僅かにでもズレていたら、その瞬間に体を斬り裂かれていただろうそれを、しかし二人はなんとか無傷でやり過ごすことに成功した。──だが、鎧裂の攻撃はそれで終わらなかった。
二人が避けたことを確認した瞬間、鎧裂ショウグンギザミは素早く方向を転換し、再び彼等に斬りかからんと力を溜める。その一連の動作はあまりにも早く、あれほどの巨体を誇りながら目で追うことすらやっとであった。
回避直後の安定しない姿勢。先程よりも鎧裂ショウグンギザミは近い。ここからあの攻撃を再び回避しきるのは……ほぼ無理だった。『不可能』というよりは、それは『無理』なのだ。それでも、やらないわけにはいかないのが、狩人稼業の辛いところである。神経を極限まで研ぎ澄ませ、鎧裂ショウグンギザミの一挙手一投足を観察し、次なる攻撃に最大限の備えをする。
──『剣光が閃──『紅蓮が爆ぜた』──。
しかし、二人が警戒していた攻撃は、突如天から降り注いだ紅蓮の光球が爆ぜると同時に、強引に中断させられた。
アマネ、クルトアイズ、そして鎧裂ショウグンギザミにとっても予想外の、上空からの攻撃。その瞬間、その場にいる全員が上を向いた。
雲の少ない高所だからこそ見られる、満天の星空。生憎ここにいる中でその美しさに魅せられるような余裕があるものはいなかったが、空が近い場所で見える星というのは、地上のそれとはまた違った輝きを放っていた。
その無数の星々の中で一つだけ、異色の輝きを放って赤き星。徐々に地上へと迫り来るそれに、三者の視線は完全に奪われていた。ブレス……ではない。それよりも遥かに大きく、速い。
そこにいたのは、炎を身に纏いながら超高高度キックを繰り出さんとする火竜の姿だった。
言うなればそれは、ブレスとキック……リオレウスの持つ最強の必殺技同士の融合。それも、単なる足し算ではない。1+1を、彼はもっと大きなものへと昇華していた。己が身を焼き尽くさんばかりの、怒りと共に……。──『紅蓮が爆ぜた』──
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721
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-17 23:50
ID:ppizYosU
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そのリオレウスは、端的に言えば馬鹿だ。
愚かで、ヘタレで、臆病で、油断しがちで、調子に乗りやすく、大した特技があるわけでもなく、気高さなど全く感じられなくて、狩は下手クソ、巣作りも下手クソ、相手を見かけで判断し、強そうな相手からはそそくさと逃げ、弱そうな相手には積極的に襲い掛かり、足元を掬われて反撃にあえばやっぱりアッサリと逃げ、そのくせ大して学習もせずに同じことを繰り返し、何度負けてもあっけらかんとしていて、その上女には全くモテない。ただ種族柄の能力だけでこれまでなんとかやってこれたような奴だった。
そもそも火竜種というのは基本的に……普通に強い。
モンスターの代表格と言われるほどの知名度は、その生き物が人間に対して最も頻繁に、最も大きな被害を与えているという証左に他ならず、今でもハンターにとっての大きな壁、あるいは目標として立ちはだかっている。リオレウスを討伐できるというのは、今でも一流ハンターの指標として世界中で通用しているのだ。空を飛ばせればトップクラスの戦闘力を発揮し、高威力の爆裂と延焼という凶悪な性能の火球ブレスや、猛毒と気絶という悪夢のようなコンボを決める後脚によるキックなど、真っ正面からの攻撃と絡め手を見事に融合させた、一種の完成された戦いを行う。
それは本能レベルで染み付いていることであり、彼等は特に考えることなく攻撃しているだけで、相手を効率的に狩ることが出来るようになっていた。故に火竜種は大型モンスターの中でも個体数が多く、彼等は生き物としては"勝ち組"であった。そして、そうであるが故に、このリオレウスは大して悩むことも苦しむこともなく今日まで生きてきた。それはある意味では運が良かったのだろう。彼は最初から最後まで"普通のリオレウス"だったのだ。
ただ一時の気の迷いのような激情で、それが覆ることはあり得ない。
どれだけ怒ろうとも、どれだけ恨もうとも、どれだけ悲しもうとも、それだけで生き物が変わることはできない。生き物が変わるには、もっとずっと長い間、救われず、報われず、悩み、苦しみ、絶望と失意の中で、それでも足掻き、抗い、這い蹲って生き延びる覚悟が必要なのだ。
だから────
リオレウスの降下と共に鎧裂を中心として広がった爆炎が風に攫われ、視界が開けていく。
凄まじい攻撃だった。己が身諸共焼き尽くさんばかりの火球ブレスの炎に、リオレウスの急降下による超加速と全体重を乗せ、駄目押しに毒爪で攻撃する。もし自分に使われたらと狩人達がゾッとする程度には危険な、それは捨て身の必殺技だった。
その直撃を受けたのだ。いくら鎧裂ショウグンギザミと言えども無事では済まない。度重なる戦闘のダメージも相まっていよいよその甲殻は破砕され、内から覗いた肉は灼熱の炎に焼かれて嫌な臭いを出しながら焦げ付いていた。……だが、所詮はその程度だった。
鎧裂ショウグンギザミの刃に右胸を貫かれているリオレウスに比べれば、それはほんの擦り傷に過ぎなかった。
相打ち覚悟の、捨て身の特攻。奇襲まで使って、結果はたったこれだけ。なんと情けなく、愚鈍で、矮小なのだろうか。────お前のような雑魚のつまらぬ悋気で、煩わすな。
鎧裂ショウグンギザミは、酷くつまらなそうにリオレウスの右胸に突き刺さった刃を振るう。それと同時に、まるで豆腐でも切るかのようにリオレウスの肉が裂けていき、傷口からはその甲殻よりもさらに赤い鮮血が吹き出した。それだけにとどまらず、その刃はリオレウスの象徴たる翼さえも斬り裂き、その誇りを完全にへし折った。
リオレウスが崩れ落ちる。それは随分と呆気ない最期であった。
トドメと言わんばかりに鎧裂が腕を払い除けると、それに伴ってリオレウスの体は放物線状に飛び、空の王者は遥か崖下へと堕ちていき、やがては分厚い雲に飲まれて、消えた。リオレウスが失せたことを確認すると、鎧裂ショウグンギザミは再びその視線を巡らせるも、しかしその視界に生き物が入ってくることはなかった。アマネもクルトアイズも、先程のやり取りの間にとっくに逃げていたようである。
それがわかった途端、鎧裂ショウグンギザミはまるで興が醒めたかのように殺意を散らし、硬い地面を掘って地中へと去っていった。──遺群嶺での戦いは、結果だけを見れば紫毒姫リオレイアと通常種リオレウスの討伐という形で、幕を閉じた。
Q.このクエストは?
1、成功だ!
2、失敗だ。 -
722
名前:@難亭
投稿日:2018-11-18 00:01
ID:ppizYosU
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>>719ちょっとおっしゃる通りすぎて過去の自分ブン殴ってきますね。つまらぬ悋気が命取りなのはお前じゃぁ!
……ていうか、読みやすさと演出を両立する才能も無いのに無理に手を出してあまつさえそれを好意的に受け取られなかったら溜息とか何様のつもりだよ。
前のめりどころか足元覚束なくてとっくに転倒してんだよなぁ。お前の人生選択は文句なしの2(失敗)だな。評点ならばオール1だ。っての冗談としてももう少し上手く出来んかったのか……出来んかったんやろなぁ。
まあ、もう少しで終わりですし、最後までしっかりやり通すんでちょっとばかし待っててくださいな。(クソのような図太さ)
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723
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-18 00:26
ID:r9G/sj0k
[編集]
──そして難亭の首筋に『剣光が閃いた』──
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724
名前:兎
投稿日:2018-11-18 00:34
ID:h3fvt/Eg
[編集]
>>723
流石にそれは洒落にならないので間に弓挟んで弾かせてもらいますよっと。
選択肢は1・2複合で『報酬は全て少女の治療等にかかる経費として使ってもらう』なんて可能ですかね? -
725
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 10:36
ID:ppizYosU
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兎氏のガードが無ければデュラハンに改名するところだったぜ。デュラハンに改名……それもアリっちゃアリだな(謎の感性)
────────リオレウスと紫毒姫リオレイア、その双方が死亡したことを俺が知ったのは、帰りの飛行船の中でのことだった。というのも、俺はつい今の今まで眠っていたのである。
「無理もあるまい、それだけ過酷だったのさ。」
そう、同じく過酷な戦場にいたはずのクルトアイズは俺に声をかける。もちろん、彼はこれまで一睡もしていない。G級ハンターになって狩猟における実力ではだいぶ追い付けるようになってきたと思っていたが、こういう面ではまだまだ敵いそうになかった。
狩人になって一年とそこらの若造と、何十年も狩人として現役を続けている老兵の経験の差……言ってしまえばそれだけだが、それを言い訳にするつもりは無かった。どれだけ年季が違っても、その差を埋められるようにならなくてはならない。
多分、そうしないと、あのショウグンギザミには勝てない。ベットからゆっくりと身を起こし、頭の中に彼の怪物の姿を想起する。
思い返せば、あれもリオレウスとリオレイアの狩猟だったか……アンキセスと共に狩に行き、初めてその存在を目にしたとき、俺は過去の幻影に囚われ、悪夢の顕現を前にただひたすらに立ち尽くすことしか出来なかった。
未熟故に、彼我の実力差さえ測ることも出来ず、ただ記憶の中にある恐怖に怯えていただけだった。そして、
あれから、俺は多くの仲間と出会い、多くのモンスターと戦い、多くの危機を駆け抜けて、強くなってきた。それは自惚れでも自信過剰でも無く、少なくともあの時よりは遥かに強くなることができただろうと、そう断言できる程度には力を付けてきたという強い自負があった。
そして、だからこそ。相応の実力をつけ、敵の力を冷静に分析することが出来るようになったからこそ……あのショウグンギザミを見て、改めてこう思うのだ。────勝てる気がしない。
少なくとも、今の俺のままでは、アイツに勝てるビジョンが全く浮かばなかった。ヤツは俺たちと同じようにただの生き物だ、倒せない道理はない、それがわかっていてなお、遥かに高い壁。
なんなのだろうか、この感情は。
怒りにも、悲しみにも似て、しかしそのどちらとも異なる感情。──これは……"悔しさ"
その結論に至った瞬間、俺はどうしようもないくらいに自分がおかしくなり、思わず口元を歪ませて小さく笑った。
……そうか、悔しがっているのか、俺は。
あのショウグンギザミに敵わないという現状をもどかしく思い、力のない己を悔いている……つまり、いつかは勝とうと、そう思っているのだ。ただ恐怖に震えることしか出来なかった相手を、それでも乗り越えようと、そう思っているのだ。ああ、自分だけは裏切れねぇや。
いつになるのかは、わからない。どれだけ強くなればいいのか、想像もできない。だけど、いつかは勝てると信じて、強くなろう。
仇討ちなんてガラでもないことをするつもりは無いが、リオレウスと紫毒姫リオレイア、お前らを倒したアイツを倒して、それでようやくこのクエストは本当の意味で完遂する。この因縁は、本当の意味で決着する。だから今は、クエスト成功(仮)だ。
少なくとも俺は、このクエストで報酬金を受け取る気にはなれなかった。それは俺個人の心情的な問題であり、過程はどうであれ狩猟対象が確かに討伐された以上、記録的にはこのクエストは目標達成となり、報酬金は支払われるのだろう。
だけど、今回のクエストの報酬金は少なくとも俺の分は全て少女の治療やアフターケアにかかる費用に使ってもらおうと思う。金欠は加速するが、この金を受け取ると、なんだか負けた気分になるから。お前を倒すその日まで、このクエストは終わらない。
*狩猟クエスト「天の紫露に抱かれて」*
〜Never Clear〜 -
726
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 10:41
ID:ppizYosU
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「……アンタも、知ってはいたが随分とお人好しなこって……と思ってたら、なんだいアンタらもかい。」
あれから、少女の身柄は一応ギルドの療養所の元に届けられ、最先端の医療技術による治療が行われたそうだ。もちろん、それで失われた腕を取り戻すことは出来ないが、少なくとも命に別状は無い程度に容体は安定したらしい。
そして、俺達はというと、今回のクエストの報酬金を彼女の治療費等に当ててもらえるよう、龍歴院のギルドマネージャーたるオババに頼み込んでいるところであった。そう、"俺"ではない、"俺達"だ。
というのも、今回のクエストの報酬金を受け取らないというのは、あくまでも俺の個人的な感情によるものであるにも関わらず、アマネも、レイカも、クルトアイズも、俺と同じように報酬金を受け取ろうとはしなかったのである。「おいおい、同じクエストに行ってあなただけ報酬金を受け取らないなんてダセェ真似は出来ねぇだろ?」
「ほんとよ、持ち逃げだなんて思われたらたまったもんじゃないわ。」
「腕を失えば彼女も隻腕、他人事とは思えなくてな。」ということらしい。なんというか……巻き込んでしまって申し訳ないと思いつつも、少し嬉しいというか……。なんとなくむず痒く思っている中で、そんな俺の気持ちをぶち壊すようにオババがこう言った。
「しかしあなたよ、とうとう誘拐にまで手を染めたのかい?」
──ちゃうわぁっ!!
というかオババも報告書に目を通してことのあらましは知ってるはずだろ!「本人の意思確認はできなかったわけだ?」
まあそれは仕方あるまい。状況が状況だ、そんなことに時間を取っていたら容易く切り刻まれていただろう。
「親元に確認も取れなかったわけだ?」
そりゃあそうだ。こちとらリオレイアと会話するような器用な真似はできないし、実の両親なんてそれこそ世界中を探し回るくらいでなくてはならない。むしろ本人の意思確認により百倍難しいまである。
「そして強引に連れ去ったわけだね?」
多少強引に行かないとどうしようもない場面も多かったからなぁ……少女の状態を見るに放置もできなかったし、下手に優しくしていたら謎のショウグンギザミに即刻切り裂かれかねないくらい切羽詰まっていたのだ。
「誘拐じゃないか。」
……………………あれ?
言われてみればそんな気が……いやいや、そんなはずは……アレは緊急事態だったし……でも待てよ?もしかしたらってことも……ウソだろ、そんなことって……ハンザイシャヨビグン×→ハンザイシャ⚪︎……ギルドナイトに逮捕される……やややややややばい「オババよ、あまりいじめてやるな。」
「全く、相変わらず揶揄い甲斐がある奴さね。まあとにかく、アンタらのお望みどおり報酬金は全額あの子のために使わせてもらうよ。……ところで、あなたの足の怪我は大丈夫なのかい?」……逃げる?逃げ切れるか?……否、そんなことは出来ない……こんなところで逮捕……終わった……
「……代わりに報告しておくと、傷口が綺麗なため出血の割に治りは早いそうだ。それでも無理は出来んがな。」
「そうかい。…………アンタもいつまでオロオロしてんだい!全く冗談の通じないヤツだね。」俺が逮捕された後、牢屋越しに仲間から冷ややかな視線を浴びせかけられる妄想までしたところで、俺はオババの一喝に無理やり現実世界へと引き戻される。後で話を聞いたところ、どうやら狩場における遭難者の救出、あるいはそれが難しい場合でも最低限報告は狩人としての義務であり、それが原因で罪に問われることは原則ないらしい。よかったよかった。
「狩人のルールぐらい覚えていなよ……。しかし、あの子はかなり困った状態だね、もう意識は取り戻しているそうだが、何も話そうとしないらしい。身元はおろか出身地を示すものも何も身につけていないから、正直なところ手も足も出ないんだよ。なんならアンタ、ちょっと様子を見に行ってくれないかい?」
なんと、自分がいない間にそんなことになっていたらしい。……いや、なんとなくそうなるのではないかと思ってはいたが……。
ふむ……自分に何か出来るとは思えないが、行くだけ行ってみるか。 -
727
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 14:28
ID:ppizYosU
[編集]
少女視点
────────生まれてこの方一度として感じたことのないような柔らかい感触に包まれながらも、しかし私はどうにも落ち着くことが出来ず、いつまでも寝付けずにいた。
──未だに、自分の身に起こったことが、酷く虚構的で、現実味に欠いているように思えてならない。
ここで眠ってしまったが最後、この夢から覚め、あの地獄のような日々に引き戻されるのではないかと、そんな恐怖心が私の心を蝕んでいた。私にとってそれは、今この瞬間死ぬよりも恐ろしいことだったのだ。
──やはり、どうにも寝付けない。
なにぶん暖かく柔らかい感触に慣れていない身の上である。突然そんなところで寝ろと言われても土台無理な話だった。気付けば私は硬く冷たい床の上に寝転がり、ボーッと天井を見つめていた。
こうして、ただ何をするでもなくボーッとしていると、否が応でも過去の記憶が蘇ってくる。なんとも忌々しいその記憶を、しかし今日ばかりは拒むことなく受け入れていった。──
───物心に目覚めた時から、闘争は始まっていた。
借金で身を持ち崩した者、初めからここで生まれ育った者、逃げ出して流れ着いた者、捨てられた者、そして前科者や爪弾き者、或いは現在進行形の犯罪者、そういったならず者達が集う貧民街(スラム)に、恐らくはこの自我に目覚めたその瞬間から、私はいた。家を持たぬ浮浪者で溢れ、明日どころか今日の食事にも困る生活、その中でも極め付きの弱者である私のような子供は、他者から奪うことでしか命を繋ぐことが出来なかった。
そこは非常に、非情に単純なルールのみによって成り立っていた。それは即ち、強い者が生き残り、弱い者が淘汰されるという、この世界では数え切れないほど繰り返されてきた、ただ当たり前のルールだった。
だから私は、他者を害することになんら忌避感を抱いてはいなかった。それは当然のことだと思っていたし、事実その場所においてそれを咎める者など、誰一人としていなかったのだ。
ひたすらに、奪って生きた。人のものだろうがなんだろうが、構うことは無かった。生きる為に仕方がないことだと思っていた。そうでなければ、生きてはいけない世界だった。私はその生活を、不幸だと思ったことは無かった。そもそも幸というモノを知らない私には、現状を不幸と判断するための比較対象が存在しなかったし、当時はそのようなことを考えられるような余裕など無かったのだ。
だから、ただ当たり前のことだと思っていた。それは実際、私の中の人間という動物としての本能が納得していたのだろう。酷く凶暴で狡猾で執念深い人間という種族は、争うことこそ自然なのだと。そう自分を納得させて、ただ奪って、奪って、生きていた。
でも、それもそう長くは続かなかった。
いつまでも自分が奪う側にいられるとは限らない。その考えるまでもないような当然の事実を、私は失念していた。それは皮肉のように鮮やかな青空の広がる、爽やかな朝のことだった。過去に私に食料を奪われたという男達が、こぞって私に襲い掛かり、私は呆気なく捕らえられた。子供で、女で、一人。大人で、男で、大勢である向こうに敵うはずもなかった。
殺されると思った。殺されても仕方がないと思った。自分がこれまでそうしてきたのだから、今度は自分がそれをされる番になっただけ。ただそれだけだと思った。
……だけど私は殺されなかった。その代わりに、思い出したくもない忌々しい記憶を、心と体に刻まれた。そしていつしか、私は声を喪っていた。理由はわからない、叫びすぎたせいで喉がイカれたのか、それとも心が声を出すことを拒否したのか。そんなことはもはやどうでもよかった。
それよりも、こんな場所にいたら次は声よりも恐ろしいものを喪うのではないかと思った。それは何故だか、命を失うことよりも私にとってはずっと恐ろしいことのように思えた。
だから私は逃げ出した。行く当てもなく、ただ男達がいないところへ、ここじゃないどこかへ、それだけを目指して逃げ出した。とにかく逃げた。貧民街を抜け、郊外を抜け、森まで逃げた。
だが男達は追ってきた。貧民街を抜け、郊外を抜け、森まで追ってきた。
そして、哀しきかな、初めて捕まった時とまるで同じように、私はあっさりと取り押さえられ、無様に捕まった。悲鳴をあげることも、助けを呼ぶことも出来なかった。そんな状況でなお、私は声も出なかったのだ。ああ、私はどうしてこんなにも、無力なのか……。
「…………。」
──突然、赤い雨が降り注いだ。
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728
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 14:39
ID:ppizYosU
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──突然、赤い雨が降り注いだ。
酷く生温かく、べっとりとしていて、鉄ともつかないような嫌な臭いを漂わせる、赤い雨が私の体に降り注いだ。理由はすぐに知れた。
私では到底敵わないような男達をあっさりと殺した赤いトサカの青い化け物は、歓喜するように天に向けて吠え、物言わぬ肉塊となった男達を貪り始めた。
……それはひどく見慣れた光景だった。
見慣れた光景だったのに、何故だか強い衝撃を受けた。
他者を害することは……殺してでも奪い、命を繋ぐのは、その化け物にとっては特別なことでも何でも無かったのだ。ただ、当たり前の日常の一部に過ぎなかったのだ。その事実に、不思議と強い衝撃を受けている自分がいた。男達の死体の数が減っていくのを眺めながら、私はここで死ぬのだなと、まるで他人事のように考えていた。どうせならば、眠るように死にたいと、最後の一人が青い化け物の胃の中に収まるのを見届けながら、私は静かに意識を閉ざした。
──
───目が覚めたとき、皮肉のように鮮やかな青色の空が、見渡す限りに広がっていた。それは貧民街から見たそれとも、森の中から見たそれとも、比べようもないくらい、どこまでも透き通った雄大な空だった。
周囲に視線を巡らせれば、その視界を遮るものなど一切なく、ただ私の足下に苔むした生温かい地面が僅かばかりあるだけで、それ以外はどこまでも果てしなく見渡すことができた。──私は空飛ぶ小山の上に乗っていた。
雲さえも下に見るような天上……
そこは清浄な空間だった。穢れに塗れ、血のこびり付いたこの身が、ひどく醜く思えてしまうほどに……。清浄で、美しく、さながらに残酷な世界であった。
冷たい大気は蝕むように体から自由を奪い、薄い空気は眠るように意識を闇へと誘っていく。まるで自身が消えていくかのような感覚に、しかし私はただ何をするでもなく身を任せていた。今度こそ、このままここで消えてしまおうと思ったのだ。これほどに清らかで安らかで美しい死に方があるならば、それもいいだろうと、そう思ったのだ。そうして、ゆっくりと消えていく意識の中で、私は突如として私の乗っている空飛ぶ小山が大きく揺らいだのを感じた。それはあまりにも突然の出来事だった。
直後にこの身を包み込むのは、不思議な浮遊感。そして、絶えず降り注いでいた日光が遮られる感覚。急速に変化する五感に半ば無理矢理に引き戻された意識は、自分が空飛ぶ小山から落ちたのだという事実を、即座に察知した。下は見なかった。ただ上だけを見て落ちていった。下を見てしまえば、死ぬのが怖くなってしまうかもしれないと思ったから。
遠ざかる山の影を見つめながら、私は今度こそ消えるのだろうかと、そんなとりとめもないことを考えていた。しかし、そんな私の予想に反して、その瞬間はいつまで経っても訪れなかった。
その代わりに私を襲ったのは、凄まじいとしか表現のしようのない風圧と重力、そして全身を何かに挟まれるような、しかし不思議と心地いい圧迫感、それだけだった。目が乾いていて、瞼を開けるのすら億劫だ。その感覚の正体が気にならないわけではなかったが、私にとってそれはもはやどうでもいいことであった。
──
───────何故か、再び目が覚めた。
それはなんとも奇っ怪な感覚だった。
どのような形であれ、とうに死んだものと思っていたこの命が、未だに続いているのだという、奇妙な確信。ようやく現状把握に動き出した脳の指令に伴い瞼を開ければ、目の前には7メートルほどもある大きな草食竜の死骸が、グロテスクな肉面を晒して転がっていた。
生々しい鮮血と肉片。鼻を劈くような死臭。それを見た途端、私の体に根源的に備わっていた生存本能が瞬く間にその息を吹き返し、強い飢餓感と渇きがこの身を襲った。──とにかく、生きなければ。
栄養不足と酸素不足によって朦朧とする意識の中、気付けば私は先程とはまるで正反対の考えを抱いていた。どうにも一貫性の無い思考は、それだけ私が薄っぺらい存在なのだということの証左に他ならなかった。
だが、どうでもよかった。自分がどれだけ薄っぺらい存在だろうと、その時ばかりは関係なかった。とにかく久方に目覚めた生存本能に従い、飢えを満たす食料を、渇きを癒す水分を、探す。どれだけ絶望の渦中にいようとも、変わらず食料を求め続ける己の胃が、この時は酷く鬱陶しく感じた。
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729
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 14:43
ID:ppizYosU
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それは拍子抜けするほどにあっさりと見つかった。
そう、丁度今私の目の前に草食竜の死骸が転がっているのである。死骸とはいえ、それはつい先程まで生きていたのでは無いかと思えるほどに新鮮で、未だに濡れた血が僅かばかり肉面から滴っていた。後先の事など考えず、ただ本能の赴くままに草食竜の死肉に噛り付いた。滲み出す血液を啜り、肉を食い千切らんと顎に力を込める。
しかし、噛みきれない。噛み切るための力を入れることすら、この非力な身には出来ない。
こんなに飢えているのに、食べることができない。どうしようもなくもどかしい、地獄のような時間は、しかしすぐに終わりを迎えた。重苦しい音が大気に響き、地面が揺れる。
そこにいたのは『竜』だった。深い緑色の鎧を纏った、天を翔ける竜だった。自分のような小さな体なら一口で飲み込めてしまえそうなほどに大きな口、容易くこの身を引き裂くであろう鋭利な牙、どうあがいても逃げる事は出来ないだろうと確信させる強靭な脚。そして、その種族を雄弁に語る、巨大な翼。
それは、ずっと遠い世界の存在だと思っていた、飛竜だった。男達も、青い化け物も、この生き物の前ではひどくちっぽけで、弱々しい存在に思えてしまう。ただ数秒視線が交差しただけでそう確信できるほどに、その竜の宿す生命の力は強大だった。
文字通り、格の違う生き物。
竜はその琥珀色の瞳で私を見つめ、一歩ずつ近付いてくる。その動きは随分と緩慢で、焦れったい。やがて竜が私の眼前に迫ると、そのアギトを大きく開き、残酷なほどに美しい鋭利な牙を覗かせた。
──お前が、私の死か。
どうしようもないほどに強大な存在に、私は問う。それは声にならない、あるいは声になったとしても通じるはずのない問いだった。……いや、もしかしたらそれは問いですらなかったのかもしれない。薄っぺらい人間の願望であり、自分に対する確認作業だった。
──鋭利な牙が肉に食い込み、鮮血が舞う。
……。
………?予期していた苦痛は、しかしいつまで経っても訪れることはなかった。
不思議に思った私が、恐る恐ると目を開けると、そこには草食竜の屍肉を喰い千切る飛竜の姿……鋭利な牙で易々と引き裂かれ、小さく切り分けられた肉を、しかし飛竜は食べるでもなく私の前に放り出し、その琥珀色の瞳で私をしばし見つめると、唸るように小さく鳴いた。──。
暫く、理解が追い付かなかった。この飛竜の、意図が読めなかった。この飛竜は一体何をしているのか、何故私を見て鳴くのか、まるで理解することが出来なかった。
私が混乱と困惑の中で呆然としていると、飛竜はその顎先に付いた棘で肉切れを拾い上げ、押し付けるように私の目の前に突き出し、また小さく鳴いた。
それはまるで……──まるで、食えとでも言うかのように。
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730
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 15:09
ID:ppizYosU
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「……っ!」
その可能性に気付いた瞬間、私は先程の比ではないほどの混乱と困惑に襲われた。この飛竜のことがより一層理解出来なくなった。何故、どうして、何のために……
飛竜の顎に引っかかっていた肉が、ポトリと私の手の上に落ちた。無理をすれば飲み込めないことはない程度に引き裂かれたそれを、私は恐る恐る口にした。それは、汚く、血生臭く、硬くて、食べにくく、不味い、褒め言葉なんて一つも見つからないような、酷い肉であった。ネズミや野良猫や虫のそれと比べれば幾分かはマシとは言え、人から奪ったものの方が数段美味しいと断言出来るほど、辛うじて食料の体をなしているだけの肉片だった。
なのに……
……なのにどうして私は、泣いているのだろう。
とうに枯らしたはずの涙を、何故此の期に及んで流すというのだろうか。ああ、そうだ。
そういえば、そうだった。
今の今まで、意識したことなんて無かったけど。地獄のような世界で自我に目覚めて、今日まで。
──私にとって、他者から何かを分け与えられたのは、これが初めての経験だった。
そこにどんな意図があったのかなんて、わからない。飛竜の考えていることを、私は理解出来ない。肥えさせて食おうというのか、何かに利用しようとしているのか、あるいは強者故の憐れみか、それとも私には到底及びつかないような、もっと別の目的があるのか、それを私は、察することすらできない。
……でも、どうでもよかった。
どんな意図があったって構わない。この直後に自分が殺されることになろうとも、どうでもいい。なんであろうと、私は確かに──
「…………ぁ、」
───確かに今この瞬間、救われたのだ。
──
───私は貴女に、救われたのだ。◇◆◇◆◇
そこまでで、目が覚めた。
そう、それはまるで夢の中の出来事のように、非現実的なものだった。いや、もし本当にそれが夢であるならば、いっそのことそれでも良かったのだろう。全ては、己の妄想が作り出した一炊の夢……寧ろ、そうであって欲しかった。思い返せば、それはなんとも奇妙な関係で……
大した時間を一緒にいたわけでも無いのに、彼女の下はなんだかとても心地が良くて……──それこそが幸せなのかもしれないと、そう思っていた。
だけど、それも今はもうどこにもない。彼女は死んでしまった。
私が、悪いのかも知れない。
私がいたから、彼女は死んだのかもしれない。もし私がいなければ、きっと彼女はすぐに逃げ出すことが出来ていたはずだから……。許せない。自分が。目の前の悪意を、容易く跳ね除ける力が無い自分が、許せない。
私は貴女に救われたのに、私は貴女を救えなかった……。──力が、欲しい。
それは長い長い間、ずっと抱き続けていた願望だった。いつだって、どんな時だって、それを望まない日は一日としてありはしなかった。
だけど、今はそれが酷く明確で、具体的なものになっている。漠然とした概念ではなく、ハッキリとした力を望んでいた。もう、苦しまなくていいくらい、強くなりたい。
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731
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 15:21
ID:ppizYosU
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こんな時、どうすればいいのか、わからない。
泣けばいいのか、笑えばいいのか、なにかを言うことが正しいのか、沈黙こそが正解なのか、俺には全く、わからなかった。──少女は、たった一人で泣いていた。
……いや、泣いているというよりは、涙を流していた。その違いを俺はハッキリと説明することはできないが、表情の無い虚ろな顔で涙を流すその姿は、ただ泣いているよりもずっと痛々しく、とても見ていられなかった。
一体どうして、あの子はあの天上の地へと至ったのか。一体どんな経緯で、紫毒姫と絆を結ぶに至ったのか。俺には想像もできないし、その気持ちがわかるなんて口が裂けても言えない。ただ、その涙を見ただけで、俺なんかじゃ到底及びつかないような深い深い悲しみの片鱗が、垣間見えた気がした。拳を握り締める。
何に怒っているのか、自分でもわからない。いや、そもそも自分は怒っているのかすら定かではなく、ただひたすらにやり場のない感情が、心の中で燻っていた。「………っ!?」
そんな時、何が原因で気付かれたのか、少女が突如として地面から飛び起き、俺の方を振り返る。左右で色の違う瞳が、俺の姿を捉えた。
暫くの沈黙……俺は何をすればいいのかは分からなかったが、しかしこのまま永遠に黙っているわけにもいかないと考え、若干ぎこちなくはあるものの、少女に声を掛けてみようと試みた。なんでもいいから、とにかくコミュニケーションを図るべきだと思ったのだ。──や、やあ、調子はどうだ?
……沈黙。
──君は誰なんだ?
……沈黙。
──名前はあるのか?
………………否定。
──こ、こんがり肉食べるか?
……否定。
──言葉は分かるんだよな?
……肯定。なるほど、どうやら否定と肯定は出来るらしい。こちらの言葉もわかってはいるようだ。となると手探りではあるがなんとか意思の伝達は可能かもしれない。
──喋れないのか?
………………否定。
──喋れはするのか。
……肯定。意外だな……何も言わないって聞いたからてっきり喋れないものだと思っていたのに、どうもそういうわけでは無いらしい。となるとあそこに至るまでの経緯の説明も……いや、今の彼女にそこまで求めるのは流石に酷か。多分だが、仮に喋ることができても、今はそれをしたく無いのだろう。
──何か欲しいものとかあるか?
……沈黙。
──えーっと…俺は居ない方がいいか?
……沈黙。
──あ、そうそう、今更だけど俺は『あなた』って言うんだ。
……沈黙。
──えーっと、君はなんて呼べばいい?
…………。うーん、また沈黙か。否定か肯定はしてくれると助かるのだが、まさか無理矢理答えさせるわけにもいかないし……まあ、ここは気長に待つしか無いのだろうか。でも、せめて呼び名くらいは安定させたい、いつまでも少女呼びじゃ通用しないしなぁ。
──なら、俺が勝手に名前付けちゃうぞ?いいのか?俺のセンスを舐めるなよ?
………………肯定。場の雰囲気を紛らわすようにおちゃらけて言った俺の言葉に、少女は小さく、しかしはっきりと肯定の意思を示した。
……オイオイマジかよ。冗談のつもりだったのに……。Q.新キャラの名前を、設定せよ!
1、その他(自由枠) -
732
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-18 15:48
ID:aDn3xqIk
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ならメイレーとかどうですかね?
リトアニア語で『愛』を意味しますし、どんな形であれ母の愛情を受けて生きてきたこの子には相応しいかと -
733
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 17:36
ID:ppizYosU
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コゲ肉みたいな名前が来ても容赦なく採用してやるつもりだったのに真面目に考えてくれたし……ありがとう。
────────えーっと、今の状況を簡単に説明させていただきますと……どうやらこの少女に俺が名前を付けることになったみたいです。
ええ、何故そんなことになったかと言いますと、これがなんとも巫山戯たお話で、冗談のつもりで名前を付けてやると言ったらこの子に受け入れられちゃったんですよ。面白いでしょう、あは、あはははははは……。うん、なにも面白くないな。
現実逃避している場合ではない。真意はどうであれ確かに口に出してしまった以上、まさか今ここで冗談だったなどと言おうものなら永遠に信頼を失いかねない。となると、それを避けるためにはこの少女の名前を本気で考える以外に道は無いだろう。しかし、残念ながら俺に名付けのセンスがあるとは思えない。一般的にオトモアイルーには雇い主が名前を付けることが多いそうだが、俺が名前を付けてもとても残念なことになる未来しか見えなかったので、今の今まで避けてきたほどである。
それがこんな形で仇となるとは……クッ、こんなことなら自由度の高いアイルーでちゃんと練習しておくべきだった。──いや、エリックやウドンをそれ以外の名前で呼んでいる自分を想像できないので、やっぱりエリックはエリックでウドンはウドンがいいとは思うが。とにかく、どんなにセンスがなかろうとも、一度引き受けた以上「やっぱり無しで」は通用しない。難しく考えるな。下手に凝らずに普通の名前を付ければいいのだ。
そう思いつつも、名前を決めるということはその人の人生を左右する一大事である。予想外のタイミングで予想外の方向から入った重責に、俺は必死に頭を捻った。
何がいい?どんな名前が普通だ?リーシャ?エーシャ?タクマ?アンドレッド……ってブランシュさん邪魔しないでください。いやいや、誰に向かって言っているんだ俺は、ここには俺と少女しかいないだろうが。余計な方向に脱線するな、考えろ、考えろ。しかし、どれだけ深く考え込もうとも、これだ!という名前が降りてくることは決して無かった。途中で"コゲ肉"とか"マッカォ"とか出てきたからな……自分のセンスの無さに脱帽である。
──少し、落ち着こうか。
変に考えすぎてはダメだと、ついさっき自分で思ったばかりである。たまには、自身の直感に従ってみるのも一つの手だ。深呼吸をして思考を落ち着かせ、少女に視線を合わせる。先天的に忌避される体質。深い悲しみを背負って天空に現れ、竜の王妃に愛された少女。あれほどに気高き者が、全てを賭けて守り抜こうと戦い、全てを賭けて愛し抜いた少女。
これまで君が、どれだけの苦しみの中にいたのかは、俺にはわからない。だから、その痛みを肩代わりすることは出来ないし、その傷を癒すことも、できないのかもしれない。
でも、こんなに小さく弱々しい君が、ここまで苦しんで来たのなら。
後はきっと、救われるだけの物語でいい。
救われるだけの物語でなければ、いけないんだ。
過去と離別しろとは、言わない。それを忘れるのも、忘れないのも、君の自由だろう。でも君には、出来れば未来に生きて欲しい。いつまでも苦しんで、いつまでも傷付いて、そんな一生で、いいはずがないから。だから、これから救われるべき君に、これから救われる君としての、名前を贈ろう。
だから、これから愛されるべき君に、これからも愛される君としての、名前を贈ろう。
──君の名前は、メイレー。そう、メイレーだ。
なんだか、とても不思議な感覚だった。
さっきまで悩んでいたのが嘘であるかのように、その名前はすんなりと俺の口を突いて出た。それはもはや運命的なまでに、自分の中ではしっくり来る名前だったのだ。
メイレー……遠い異国の言葉で『愛』を意味するというそれが、今日から生まれ変わる君の名前。──よろしくな、メイレー。
「……メイ……レー…………」
絞り出すような小さな声は、しかしはっきりとこの耳まで届いた。
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734
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-18 17:57
ID:vU/qciFE
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名前だけだと世間的には色々面倒だろうから名字も考えなきゃ
「ロザリオ」でどうだろう
語源はリオレイアを喩えるバラの冠、濁音も入って語感もいいし、何より悲しく呪われた彼女の人生のこれからに対する祈り、祝福あれということで捧げたいメイレー・ロザリオ
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735
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 19:02
ID:ppizYosU
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それからはもう、色々とあった。
それはもう心底大変だったのを今でもよく覚えている。ところどころごっそり削られた鎧を修理に出して、工房の親方にどやされたり。いつのまにか欠けていた祀導器【不門外】の盾を修理に出して工房の親方にどやされたり。それぞれの修理代と報酬金を受け取らなかったことのダブルパンチでかなりの金欠に陥ったり。遺群嶺で邂逅した謎のショウグンギザミ──鎧裂ショウグンギザミと言うらしい──についての報告書を書かされたり。都市伝説に近かった遺群嶺の人影の噂を解決したことで『狩に生きる』の暇ネタ部門の人達から取材を受けたり。メイレーが俺以外とまともに話そうとしないので彼女の身元の確認に協力させられたり。結局どうやっても特定できないことがわかると今度は身柄の移転先を探すのに協力させられたり。頻繁にメイレーを連れ歩いていたことが原因で『ロ◯コンハンター』の称号が付きかけたり。お陰でギルドナイトによく声を掛けられるようになったり。誤解を解くために奔走してまた一悶着あったり。全てを言葉にするにはあまりにも時間が足りなさすぎるくらい、色んな出来事が巻き起こった。
──本当に、色々なことがあった。
だが、しかしだからと言って、何故にこうなったのだ……。「メイレーちゃん、アイテムボックスの裏の掃除できるかにゃ?」
「……任せて……くださいにゃ?」
「"にゃ"は付けなくていいのにゃ。」シルビアの指示を受けながら、俺の部屋の掃除をしている隻腕少女。片腕という状態が慣れないのか、それとも掃除そのものが慣れないのか、或いはその両方か、その動きは随分とぎこちなく、見ていてハラハラしてしまう。
しかし、こんな状態でも、俺が手を出そうとすると彼女は……ショボンとする。怒るのではなく悲しそうな顔をするだけなので、寧ろ余計に手が出せないのは果たして天然なのか計算の上なのか……。端的に言うと、メイレーは俺の部屋のルームサービス見習いになっていた。
どこにも身寄りがないどころか、生来すらもはっきりとは分からず、オマケに俺以外にはなかなか心を開いてくれないので、最後はなし崩し的にこういう形になったのだが……いや、困っているとか迷惑だとかそういうわけではないんだ。でも、なんというか、こう……わかってほしい、この気持ち。
ちなみに、そんなメイレーだが、つい最近苗字がついた。
というのも、これは本人たっての希望で、何かあの紫毒姫と自分との繋がりを示すものが欲しいということで、必死に考え抜いた末に辿り着いたのが苗字だったのだ。
俺は勿論、アマネやレイカ、クルトアイズも一緒に考え、最後には"ロザリオ"という苗字で落ち着いた。それはリオレイアを喩える薔薇の冠であり、同時に祈りという意味も持つ。メイレー・ロザリオ。なかなかに悪くないのではないかと思う。ちなみに、母親代わりである紫毒姫に付けられた名前はヴィオラ・ロザリオ。モンスターに名前なんて……と一瞬思いはしたものの、その響きを口の中で反芻しながら静かに笑うメイレーの顔を見て、その思考は一瞬で消し飛んだ。
今でも俺のマイハウスの裏手には、平たい木切れに不慣れな文字によって「ヴィオラ・ロザリオ」と刻まれた小さなお墓が、人知れず立っている。
さて、そんなメイレーだが、実は困ったところもある。
まず第一に、さっきの会話を見ても分かると思うのだが、彼女はどうにも人の口調が移りやすいのだ。アイルーと話せば語尾が「〜にゃ」になるし、俺と話せば一人称が「俺」になる。多分必死に正しい言葉を覚えようとした結果迷走しているのだと思うが……断じて俺の趣味ではないことだけはハッキリと言わせてもらいたい。
第二に、なんと彼女、ハンターになりたいと言い出しおるのだ。そんな甘い道じゃないと言っても、こればかりは聞いてくれない。クルトアイズに教示を仰いでいるあたりかなり本気だ。人と交流するキッカケにもなり得るので強く反対も出来ないジレンマである。
そして最後に、俺の呼び方。「おにい、ぎるどまねーじゃーが呼んでる言ってたにゃ」
いつのまに妹が出来ていたんだよ、俺は。
俺の趣味じゃねぇんだ、俺の趣味じゃ……。まあ、そんな風に色々と問題はあるものの、メイレーが少しずつでもこっちの世界に慣れていっているということは、俺にとってはただ嬉しい出来事なのは間違えようがない事実であった。
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736
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 20:38
ID:ppizYosU
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シルビアとメイレーに見送られながら、俺はマイハウスを出る。気付けば足の怪我はすっかり治っており、問題なく歩くどころか、クエストに出ることも十分できる程度には回復していた。
とは言っても、今回は別にクエストに出かけるというわけではない。大きな一仕事を終え、さらには色々なゴタゴタがあってようやく落ち着けるようになった今日この頃、いきなりまたクエストに出るほど俺はマゾではないのだ。正直財布はちょっぴり心許ないが、それでも明日の生活に困るというほどではないので、急いでクエストを受ける必要があるというほど切羽詰まってなどいないのである。
今回出かけたのは、それとは全く別の要件だ。ギルドマネージャーに、呼び出された。
正確に言えば、俺がギルドマネージャーに、呼び出させた。そう、今回用件があるのは、俺の方なのだ。
そうして案内されたのは、いつもの広場とは違う、密閉された個室。周囲に音が漏れにくいよう設計されている上に、入口が小さいので武器を持って入ることも出来ないようになっているそこは、上手く説明することはできないが、えもいわれぬ独特の雰囲気を纏っており、どうにも居心地が悪かった。
「いつからワタシを呼び出せるほど偉くなったつもりだ……と、言いたいところだが、G級ハンターの頼みを無下にはできない。全く、時が経つのは早いもんさね。」
ギルドマネージャーはそう言いながら、背の高い椅子に腰掛ける。きっと長き時を生きる竜人族にとって、俺のような若造はいつまでたっても未熟者に見えるものなのであろう。
とはいえ、今はそんなことはどうでもいい。俺の個人的な用件であまりオババの時間を取るのは良くないし、手短に済ませるべきだろう。「用件はなんとなくわかってるさね……あの、リオレイアのことだろう?」
しかし、俺が話を切り出す前に、オババは見事に俺の用件を言い当ててきた。まさにその言葉の通りで、俺はあの狩場で出会った紫毒姫リオレイアについてオババが何か事情を知っているのではないかと思って、ここを訪ねたのである。
メイレーに気をとられがちだが、あの時あの遺群嶺において、本来であればそこにいるはずのない存在は、一つだけではなかった。
もう一つ、あそこにいるべきでない存在がいた。──ヴィオラは…あのリオレイアは、過去に俺が捕獲した個体だ。
もちろん確定的な証拠があるわけではない。でも、俺の中で積み上がった状況証拠の数々が、それを疑う心を既に無くしていた。
そして、オババがその用件を予測できたということは、あのリオレイアは間違えなく過去に俺が捕獲したものと同一の個体であり、オババは彼女があそこにいた理由を、知っているということの証明に他ならなかった。「いいかい、これから聞くことは他言無用だ。例えワタシに聞かれても、二度と口にするんじゃない。」
オババはいつになく真剣な表情で、俺にそう忠告する。
とうの昔に捕獲したはずのモンスターが、外にいるという、異常事態。その経緯は俺には想像もつかなかったが、少なくともそれは迂闊に口に出していいことではないのは、十分に理解することができた。正直、秘密を背負うのはあまり得意ではない。
しかし、俺は知らなければならない。最もヴィオラを知るものとしての、それは一つの義務なのだ。
オババの忠告に対し、俺が黙って頷くと、彼女はゆっくりとした口調で、ことのあらましを語り始めた。──その事故が起きたのは、今から約半年前。
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737
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 21:34
ID:ppizYosU
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人々の生活から隔絶されたある場所に、一つの研究施設があった。
深い自然の中に突如現れる巨大な人工物は、ギルドの技術を結集して極秘に築き上げられた、決して世間に知られてはいけない秘密の飼育施設。そこで行われていたのは、ギルドの発展ひいては人類のより良い安全を得るためには必要なことだったが、決して褒められた行為ではなかったのだ。
モンスターの成長と進化の秘密を解き明かす。
そこで研究されていたのは、言葉にしてしまえばただそれだけのことだった。元々は同じ種族であるにも関わらず、稀に発生する異常なまでに強力な個体。その成長過程、変化過程を紐解くことが出来れば、危険度の高い特殊個体の早期発見及び討伐、ひいては特殊個体の発生そのものを封じることができるようになる可能性があった。
最後の例は流石に現段階では机上の空論に過ぎないが、少なくとも前者二つは確実に実行できるようになるはずの重要な研究。それは下手をすれば人類の未来にも関わる大きなミッションだった。ただ、それを研究するためには、特殊個体というのはサンプルがあまりにも少なく、そして危険も大きかった。
そもそも現れることすら稀な強大な大型モンスターの、その中でもとびきり希少な特殊個体。特に優先すべき危険度の高い存在であればあるほど、その出現率、そして観察における安全性は劇的に下がっていき、もし現れたとしても研究よりも先に討伐が優先されることが常であるために、どうしても研究は足踏みにならざるを得なかった。そんな現状を憂慮して作られたのが、この施設だ。
ようは単純な話だ、危険な特殊個体のサンプルが見つからないのならば、自分達の手の届く範囲で作り出すしかない。それは果てしなく気の遠い作業だったが、少なくともいつ現れるかもわからない危険な特殊個体の発生を待ち続け、わざわざ虎穴に入るようなマネをしてまで観察するよりは遥かに安全で効率的だった。
何せ、発生さえしてくれればあとは討伐される心配もなく観察することができるのである。そう考えれば、その施設は間違えなく必要なものだと言えるであろう。そうした考えの下で造られた施設が、世界中にいくつもあった。
事故があったのは、その内の一つ。特殊個体や異常個体、成熟個体への『成り掛け』を飼育し、その過程を観察するための施設だった。
ある一匹のモンスターを中心として、合計四体のモンスターが、逃げられないようにされていたはずのそこから脱走した。それは見回りの者を眠らせ、人間が極端に減る時間帯を見計らった、明らかに計画的な脱走だった。
……普通ならばここで、人間の仕業であることを考えるかもしれない。なんらかの悪意を持った人間が、モンスター達を逃したという可能性も、十分にあり得る話であった。しかし、その事故があった当初から、人間が疑われることは一度もなかった。理由は簡単だ、脱走を巻き起こした犯人……そのモンスターの正体は、とっくにわかっていたのである。
おそらくそれは……世界にたった一匹だけの──◇◆◇◆◇
「その時に脱走したモンスターの内の一匹が、アンタが捕獲した『紫毒姫に成り掛けのリオレイア』だよ」
オババの口から語られた話は、俺には想像もつかないほどに、スケールの大きなものであった。何故そうまでして隠す必要があるのかはわからないが、とにかく大っぴらに出来ない事情があるのだろうと、察することしか出来ない。
「さっきも言った通り、脱走したモンスターは全部で四匹。一匹は件のリオレイアで、真っ先に空へと飛んでいき、遺群嶺で死亡が確認された。もう一匹は飢餓個体に成り掛けのイビルジョーで、真っ直ぐに海へと逃げていき、古代林で死亡が確認された。三匹目は成熟個体に成り掛けのバサルモスで、火山でブラキディオスと戦っているところをハンターに捕獲された。」
……おい、リオレイアだけじゃなくて他の奴らも凄え身に覚えがあるんだけど……まさかとは思うが四匹目まで俺が知っている奴なんてことはあるまいな。
そう疑念を抱きながら話を聞いていると、オババはそこで一旦一呼吸置き、そして吐き出すように最後の名前を言い始めた。「そして、四匹目……脱走の主犯たるモンスターの名は──」
俺はその名を、知っていた。
-
738
名前:因縁を断つ剣光@
投稿日:2018-11-18 21:40
ID:ppizYosU
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人間が、狩人が、
戦いの中で成長し、新たな業を生み出すように。
人間が、狩人が、
苦境の中で成長し、新たな志に目覚めるように。モンスターもまた、果てしない闘争の中で、耐え難い絶望の中で、足掻き、抗い、何度も打ちのめされ、しかし何度でも立ち上がり、成長する。
──なんと皮肉な話であろうか。
人は、生き物は、誰しも安らぎと安寧を求め、日々足掻き続けるというのに……闘争と絶望こそが、何より彼等を成長させるなど。非力であるが故に、奮い。
無力であるが故に、猛る。そう、彼等は決して生まれた時から恵まれた存在というわけではなかった。非力で、無力で、脆弱で、矮小な……この世界に生きる小さな命の一つに過ぎなかったのだ。
しかし、世界は彼等に残酷な問いを投げかけた。
【このまま、ただ当たり前の無辜の命として、ここで斃れ、朽ち果てるか。それとも
──化け物に成り下がってでも、地獄を生きるか。】それは非情なほどに突然で、防ぎようの無い、災厄。
なんら意図の存在しない、悪意による試練。
それを乗り越えた時、生き物は次の段階へと昇華する。
弱者を脱し、強者へと成り上がる。果たして──
───果たしてそれは、本当に『良いこと』なのだろうか。……。
『彼の病魔は老衰により自身の力の制御が効かなくなっていた、ならばあの影蜘蛛も遠からず同じ状態になりうる可能性がある。 』
『──それならば、まだいい。 最悪の結果は自らの老衰すらを理解し、それに対応し、更なる特異性を手にすることだ。 』
『僅かに交戦しただけではあるが、あの影蜘蛛からはそれをこなしてしまいそうな──『才覚』のようなものが感じ取れたのだ。』
『影蜘蛛特殊個体捕獲の一報を入れると、龍歴院はすぐに回収班を寄越してくれた。 黒蝕竜の時とは違い、今回は捕獲。 貴重なサンプルが手に入ったと何度も謝辞を述べていた。』
『
───人間に飼育された経験が
恐ろしい怪物を生み出してしまったんだ!
』……………
狩人は静かに闇(ヤミ)を征く、あてどもなく彷徨い、その先へ。
狩人は静かに病(ヤミ)を征く、どこまでも真っ直ぐ、その先へ。体に満ちるは、残虐なイド
心に満ちるは、冷徹なエゴするり、するりと、巡るは視線。
するり、するりと、廻るは死線。────運命を引き上げるのは、まだ……早い。
─────────
シナリオ49〜因縁を断つ剣光〜完。
称号、「誘拐犯」を入手しました(少女を救出した)
称号、「倶に天を頂かず」を入手しました(鎧裂ショウグンギザミと邂逅した)
勲章、「ヴィオラのお墓」を入手しました(紫毒姫の死を目撃した) -
739
名前:@
投稿日:2018-11-18 22:11
ID:ppizYosU
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ふぅ〜、やらかしたやらかした。盛大にやらかしてやったぜ☆(大満足)
ぶっちゃけ最後のやるためにシナリオ書いたまであるくらいですからね。あんなフラグビンビンな終わり方で放置なんて勿体ない!あれなんか体からむっちゃ矢が(死亡)というわけで、特殊個体と登場人物紹介です。
Re:翼爪が肥大化したリオレイア(ヴィオラ・ロザリオ)
過去にあなたが捕獲したリオレイアの特殊個体。あなたが戦った初めての大型モンスターであり、あなたが目にした初めての特殊個体である。基本的には通常の紫毒姫と同様だが、閃光玉で暴れる、乗りに強い、シビレ罠を避けるといった特徴的な行動を見せる。
モンスターの進化の過程を観察する研究施設から脱走し、人間に飼育された経験から人間を飼育してみたいと考えるようになった。初めは単なる興味本位から来る行動だったが、それはいつしか本物の愛に変わっていた。
現在はショウグンギザミに殺害されて、死亡。鎧裂ショウグンギザミ???
ショウグンギザミの特殊個体。生きることよりも殺すことを優先する残虐な性格をしており、紫毒姫とリオレウスを殺害した。
途中から鋏が刀のように変形したことと、ハンターのように狩技を使うこと以外は、詳しいことはよくわかっていない。ジゴクから来た天空少女「メイレー・ロザリオ」
性別:女 年齢:13歳(外見では10歳程度、ちなみにあなたもそのくらいだと思っている)
スラムで生まれ育った少女。ヤマツカミに乗って遺群嶺まで辿り着いてしまった。
紫毒姫に愛を受け、鎧裂に親と片腕を奪われたため、モンスターに対する見方は結構独特である。
自己の定義があまりにも希薄であるために、どんな環境にも適応してしまう。もちろんそれは、決していいこととは限らない。
現在はあなたのルームサービス見習いであり、ハンター志望。人の口調がすぐに移ってしまうという癖がある。 -
740
名前:時雨
投稿日:2018-11-18 22:37
ID:gX20EMvk
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難亭氏お疲れ様でし…称号に悪意あるぞオイwww
メイレーちゃんがあなたのマイルームに加わり、あのネルスキュラとの再戦フラグが立ち、さてさてどうなるやら…
ところでバサル君、特殊個体でその体たらくは恥ずかしくないのかい?誰も居なければ明日から書いていこうかなー
皆が待ち望んだ『あの王女』のシナリオです -
741
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-18 22:57
ID:ppizYosU
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おっしゃ時雨氏のシナリオきたぁ!
評価点リザルト
選択1…布団に包まったまま起きる(5点)
※チュートリアルなので簡単です。選択2…ハンター達の謎の噂について詳しく(3点)
※二つ聞くと4点、三つ聞くと5点という点を取らせる気が全くない出題でした。
ちなみに、クエストの形式の違和感を指摘すると6点が発生しました。選択3…エリア8へ向かう(4点)
※リオス種の初期エリア(2や7)だと5点でした。この時の目標はまだ狩猟だけなので。選択4…無視してエリア移動(1点)
※弱点を狙って強気に攻めるが5点でした。サブターゲットに気付けるかの要。選択5…仲間BCあなたエリア8(6点)
※エリア8が5点、ただベースキャンプに戻るだけならば1点でしたが『千里眼の薬を取りに行く』で6点、サブターゲットを達成した上で支給品を取りに行くで6点、その両方に気付くと7点でした。選択6…こんがり肉を渡す(5点)
※選択式ではないので甘めの採点、とはいえドストライクな判断でした。選択7…少女を連れて逃げる+着地術(3+1点)
※角笛等でヘイトを集めてから慎重に行動を観察するや、なんらかの手段で動きを封じた後に少女を連れて逃げるなどの複合選択で5点になる鬼畜問題です。選択8…閃光玉で撃墜する(1+2点)
※そもそもリオレイアは過去シナリオの影響で閃光玉、シビレ罠、乗りに特殊耐性アリというドS仕様でした。
仲間も合流していたので、強気に攻めるが5点です。選択9…仲間に事情を説明してから駆け付ける(5点)
※すぐに向かっているとあなたがフリーズして何も知らない3人が残されることになりました。(この場合は3点)選択10…安全を取って退却する(5点)
※冷静な判断でした。攻撃すると返り討ち(2点)アイテムではモドリ玉(1点)が危険なやつです。選択11…フォーメーション+背負子のアイデア+モドリ玉(4点)
※モドリ玉を使った時点で1点にするつもりだったんですが、アイデアとしてはメチャクチャ優秀だったので得点だけ高くなりました。選択12…五段階拘束(3点)
※3回目に血風独楽を使われました。1回目だと1点、2回目だと2点という仕様です。 -
742
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-18 23:14
ID:ppizYosU
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あとがき
今回はとにかく過去作ネタを詰め込んでみましたが皆様は一体どれだけ気付くことができたでしょうか?
布団に包まったまま起きる
子沢山ハンターのベリーさん
集団戦で崖から突き落とすゲネポス
お久しぶりのリオレイア
閃光玉で暴れるよ
不倶戴天の鎧裂
モドリ玉は危ないよ
使えなかったレイカさんの腕の怪我
あの日追われたイビルジョー
ハーミットロックはそれでいいのか
まさかの老獪さんじゃないですか?他にもチラチラと散りばめてある(と思うので)よろしければ探してみてください。
え?このクソ長い話を読み返したくない?それは一理ある。結局当初の予定より遥かに文字数オーバーしてるし……。しっかし兎氏には書き始める前から正体バレてたなぁ……。
まあその前に自分で示唆してたんですけどね。反省すべきところも多々ありましたが、次に活かすとしましょう(電柱のような神経)
では皆様、れっつみーとあげいん(また来るつもりかよコイツ)
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743
名前:兎
投稿日:2018-11-18 23:29
ID:h3fvt/Eg
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難亭さんシナリオお疲れさまでしたー、ネルスキュラとんでもない拾われ方してんな...
因みにID照合して確信したのが数日前なだけで、難亭さんなんだろうなとは>>533読んだ時点で感付いてましたよー。(だからこそシナリオ前に牽制球染みた事書いたわけでw同じ奴が執筆するのもなんですし、老獪さんは他の人に料理してもらいますかね。 あわよくば自分は鎧裂を……(ォィ
時雨氏のシナリオは……まぁ、ほぼ確実にラで始まるアイツ出るでしょうな、圧倒的火力の阿鼻叫喚を期待してますー。
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744
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-19 19:37
ID:gX20EMvk
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んじゃ宣言通りいかせてもらいますかね
いつも通りの駄文ですがお付き合い下さいませ
シナリオタイトル元ネタは『ジョニーは戦場に行った』です>>743
と思うじゃん?牙獣種違いなんだよ~シナリオ50 王女は雪山へ行った~
───一歩進めば大地が揺れ、地響きが鳴る。
───一歩進めば白く降り積もった雪が舞う。
───一歩進めばギアノスやブランゴといった小さく脆弱なモンスターが逃げ惑う。名は体を表すとはよく言ったものである。
名付けとは人間が勝手にやっている事だが、名は個別を差す単語として非常に解りやすく、そして後世の為に役立っている。
特にモンスターに関していえば見た目や特徴を表す事で、初心者から熟練者まで解りやすく伝えられる。
例えばこの『巨獣 ガムート』がいい例だ。
並の飛竜を圧倒する程の山の如き巨体。これこそ解りやすいステータスは無いだろう。
轟竜ティガレックスの歯牙ですら及ばないとされるこのガムートには邪魔する者は全て薙ぎ倒す、そう語るに相応しい圧倒的重量感を宿していた。
───現に今しがた、彼を獲物として襲いかかってきたベリオロスを雪山の大地に叩き付け、その身体を純白の甲殻ごと踏み砕いたところだ。
彼は白い大地に咲いた紅い花の中心にいる動かなくなった小物を見下し、再び歩みを進める。
彼は進む。障害となるものを全て踏み潰しながら。
『世界最強峰』の巨獣は進む。永きに渡り自らが過ごしたこの山を。───古龍観測隊の気球船から巨獣ガムート、その二つ名個体『銀嶺』が雪山にて確認されたとの報告が龍歴院及びハンターズギルドに入り、各地に雪山への特別許可を得たハンター以外の立ち入り禁止礼が出されるのにそう時間は掛からなかった。
そしてそれは風の噂となり、とある王国へと伝わった…いや、伝わってしまったというべきか。
兎に角この話はその王国に住まう『ある王女』から始まるのである…。* * *
「なんと…、いかん…これはいかんぞ…」
衛兵達の話を聞きつけ、眉間に皺を寄せる一人の男。
彼は白い髪に白い髭を生やしている初老だが、その体は未だ老人という枠に収まらないほどに逞しい。
それもそのはず、この『セバス・チヤ』と呼ばれるこの男性(御歳58歳 妻子持ち 近々孫が産まれる予定)、今でこそ執事という職についているが、かつてはハンターを務めていた。
彼は代々王国に仕える、言わば『王宮専属ハンター兼執事』という大層な人物なのである。
そんな彼が誰に仕えているのかといえば……いや、これは後にわかることなので、伏せておくとしよう。
「この情報が姫様に届けば、またワガママを申し出るに違い無い……!」
かつてはハンターとして多くの修羅場を体験し精神的にも逞しくなった彼だが、今はそれどころではない。
『ある情報』を聞いた途端、慌てて衛兵に守秘義務を与え、己が仕えている姫の下へと向かう。
姫の性格上、興味を沸くような内容だったのだ。
情報が伝わっていないことを祈りつつ、セバスは静かな足取りで、しかし急ぎ足で姫の部屋へと向かう。 -
745
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-20 22:21
ID:gX20EMvk
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「時に爺よ、雪山に銀嶺と呼ばれるガムートが出たそうじゃな?」
───時既に遅しとはこの事だと、セバスは深い溜息を吐きながら思った。
与えられた広い個室の中央に置かれたキングサイズベットの隣には、机と椅子が置かれており、声を上げた者はそこに座っていた。
強気そうな青い目と広いデコ、そして金髪の縦ロールを一対垂らした髪型が特徴的な、典型的なお嬢様タイプといったような少女。
この少女こそがセバスが仕える姫であり、ハンター達にとって悪名高いとされる『わがままな第三王女』である。表は冷静を保っているが、内心はかなり焦っており、一筋の汗を額から垂らすセバス。溜息を零すのを懸命に堪え、まずは落ち着いた口調で王女に問う。
「失礼ですが、その話をどこでお聞きになられたのでしょうか?」
「なに、見張りの者がざわざわ騒いでおってな? つい耳にしてしまったのじゃ」姫の個室前には見張りが二名おり、その者達が騒いでいたのを聞いてしまったのだろう。
とりあえずその者達の制裁を考えるとして、今はこの姫の対処をどうにかせねばとセバスは王女に対応する。「で、どうなのじゃ? 銀嶺は出たのか?」
「左様でございます。 現在は雪山をうろついているだけで被害はございませんが……」
「爺よ、さっそく銀嶺討伐の依頼を発注するのじゃ!」解かっていたとはいえ、ここまで単刀直入に言われるとさすがに感慨深いものを感じるセバスであった。
いつだって姫はワガママなのは知っていたが、相手の苦労を全く考えていないのだから恐ろしい。
仮にも相手は『不動の山神』と呼ばれる巨獣、その二つ名個体だ。もし討伐して持って帰れと言われたら、どれだけの被害が出ることやら。「何、心配するでない」
悩んでいたセバスを前に、王女は自分がするわけでもないのに自信満々に頷いてみせた。「───ハンターに任せておけば、万事解決なのじゃからな!」
これこそが、ある意味で王女の一番困った所なのだ。
王女は幼少の頃より、専属ハンター・セバスの昔話を聞いて育ってきた。
心踊るような冒険、モンスターとの激戦、仲間との出会いや別れ、突然の死、神秘溢れる古龍種の恐怖……。
経験豊富なセバスの昔話を誰よりも楽しみにしていたのは、他でもないこの第三王女だった。
王女はハンターが誇り高い者だと知った。だからこそ王女は無理難題な望みを発注してきた。ハンターならできると信じて。ハンターならどんなモンスターでも狩れると信じて。
結果的に依頼は達成されるのだから、余計にハンターへの信頼が高まってしまう。中には死んでしまった者も居るが、それが王女に伝わることは無い。
王女にとってハンターとは、依頼を必ず果たし、どんなモンスターにも打ち勝つヒーローなのだ。
そんな王女になってしまったからこそ、セバスは王女の執事に任命されてしまったのだ。
だからこそ、そんな王女だからこそ、あえて渇を入れるのがセバスである。 -
746
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-20 22:38
ID:gX20EMvk
[編集]
「なりませんぞ姫!」
「な、なんでじゃ!?」
「銀嶺は、並みいる飛竜すら圧倒するという大物です。 ハンターはよくてもギルドがそれを認めはいたしません」
「……秘密裏に」
「ネコート殿を困らせなさるな。 相手が大物過ぎますぞ」何せ彼女は、過去に「老山龍の全長を自分の手で測ってみたいから捕獲するよう依頼するのじゃ」と言ってのけた強者。
下手に出れば押し切られること間違い無しと、確固たる姿勢で挑まなければならない、と思っていた。「……ぬぅ、仕方あるまい。 先程の依頼は取り下げるとしよう」
「…誠でございますか?」
「うむ、そのような者が相手となれば仕方あるまいて。 時には静観するのも悪くなかろうて 」
「…畏まりました」───珍しい事もあるものだ。
そう思いながら第三王女の部屋から出るセバス。
トップクラスに君臨するであろう破天荒っぷりをもつあの姫が依頼を取り下げると言い出した時は、明日は槍でも降るのかと思ったという。
とはいえ、彼女が脱走する可能性がないとも言えないためひとまずは精鋭を集め、姫の監視をさせておくとしよう……そう思い、セバスは頷き歩き出す。───その翌日、わがままな第三王女は脱走した。
『銀嶺に逢いに行く。 心配するでない!』と書き置きを残して。 -
747
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-20 22:39
ID:y6mgKFuQ
[編集]
正直なところを言えばキャラ増えすぎてうまく追いきれないです
1シナリオ1人追加みたいなペースだとそのうち訳分からなくなりますわ -
748
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-21 08:40
ID:Jay.hPvc
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今のハンターハンターよりは少ないからへーきへーき
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749
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-21 14:53
ID:ppizYosU
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第三王女は既存キャラやしな。
ちなみにこの娘、聞いたところによると一個師団(曲がりなりにも正統な訓練を受けた成人男性数千人)をいつものように出し抜く化け物だという説もあるそうで……。ぅゎょぅι゛ょっょぃ第三王女に危険なモンスターの情報が伝わるのってきっとギルドなりの節約術なんだろうなぁと思う今日この頃。
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750
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-21 20:07
ID:gX20EMvk
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>>747
このスレももう3スレ目、更にいえばシナリオ50個目(番外編含めたらもっとあるけれど)ですからね
そんだけシナリオがあるってことはそれだけキャラも多い訳でしてね…。活躍したキャラを突然消すわけにもいかないし、そこら辺は長い目で見ていただければ、と思います。─────────────────────
「銀嶺の位置はまだ掴めぬのか!?」
「現在探索隊は猛烈な吹雪に襲われており、捜索は難航しているとのこと! 」
「そんなことよりも銀嶺の対策を整えるのだ! ありったけの兵を向かわせろ!」
「何を言う! 王女の無事が最優先であるぞ!」第三王女の王国、その城内の周囲の騒々しさと慌しさに、セバスは眉間を揉む。
過去にも何度か第三王女は脱走することはあり、その度にギルドに対し先回りしてモンスターの狩猟、及び王女の救助の依頼を届け出ていた。
しかし今回のモンスターは並のハンターでは手出しが出来ない二つ名個体の巨獣。その対応だけでも慌てる要因になるのに、さらに追い討ちをかけるようにして王女が失踪。
騒動という騒動に拍車をかけ、今のように城内が慌しくなっている。致し方ないことだろう。
とりあえずその要因を一つでも解消しようと、同僚達を落ち着かせるべく、セバスは大声を発する。「静かにせぬか!姫様の捜索ならワシが行くから」
「お待ちください」
その落ち着いた声に、セバスが大声を上げたにも関わらず周囲の人々は声の主を探す。
声のした方角、すなわちセバスの方へ部下や将軍の視線が向かうが、セバスは違うといわんばかりに首を振る。「ここです、ここ。 セバス殿の足元です」
先ほどと同じ声がするが、周囲は何故足元なのかと困惑し、全員が視線を下に落とす。
そこにはコートのようなものを着込んだ一匹のアイルーが居た。周囲の殆どが「誰?」と首を傾げる中、セバスは強張った顔を崩す。「おお、ネコート殿、よく来てくださいましたな」
「王女様の失踪という国の一大事となれば黙ってはいられませんからな」セバスはネコートにあわせるようにして屈み、言葉を交わしつつ握手をする。
一方で周囲の人々は、ネコートという名に小さな衝撃を受け、小さく声を交し合う。
ネコートはこの国との関わりも深く、現在絶賛行方不明中の第三王女との繋がりもそれなりにあるという。
いわば第三王女のワガママの原因の一つとも言えなくもないが……ハンターズギルドとしても国相手には迂闊に逆らえない、ということなのだろう。「現在銀嶺は雪山を移動中、その進路方向にはポッケ村が存在しております。 急いで防衛線を張らねばなりませんが本腰の為の時間稼ぎはできるはずです」
そういってネコートは椅子から机へと跳び移り、失礼と理解しつつも、机の上に広がる周辺を記した地図を凝視する。
銀嶺が出没しているという雪山に手をあて、皆の注目を集める。 -
751
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-21 21:15
ID:r9G/sj0k
[編集]
初期メンバーなのにランドラットさんのクエ参加率おかしい…おかしくない?
-
752
名前:蟹
投稿日:2018-11-21 21:29
ID:B8nXzJ4E
[編集]
とりあえずまずは申し訳ありません、めちゃくちゃ時間が空きましたが存在を思い出してここに来ました。
前に場を繋いでくださった時雨氏とシナリオの引き継ぎしてくださった兎氏には全く頭も上がりません……ありがとうございます……申し訳ありません……
申し訳ありませんが理由に関してはそもそも言い訳してもどうしようもないし個人的な事情なので多忙とくらいにしかお答えできません……多分当面は新しく何かを書くつもりは無いと思います。また設定かき乱しても悪いしそもそもあれ以来のシナリオをまだ追えてないものですし。
せっかく来ては見たので、久しぶりに読者として追っていこうとは思いますが……>>754
シナリオを離れたのが多忙で、それ以降は完全にこちらの存在を忘れてました、その辺は釈明しても仕切れないけど…… -
753
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-21 23:34
ID:NakhxNcU
蟹氏お久しぶりです。
また蟹氏のシナリオが読める事を楽しみに待っています。 -
754
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-22 19:47
ID:QiLbCC8E
[編集]
495 名無しさん 2018-10-14 18:57 ID:B8nXzJ4E [編集]
牙竜バウンティなんかドスジャグラスボコボコにすればええんやで多忙とは一体・・・ウゴゴゴゴ・・・
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755
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-22 23:35
ID:gX20EMvk
[編集]
>>751 ネタバレするとランドさん出るよー。ダイスロールで見事にクリティカル出してくれましたんで
─────────────────────
「ハンターズギルドにはまず雪山周辺の情報収集をしてもらい、ついでに銀嶺を狩猟するようお願いしています」
「ついでで銀嶺の狩猟を、ですか?」
「王女様は銀嶺に逢いに行くとあったので、必然的に雪山に足を運んだことになります。 あの王女様のことですから、銀嶺に接近する恐れもある。 なら銀嶺の狩猟と王女様の姿を発見次第調査団に伝えるようにしておくべきです」
「そして王女捜索隊の包囲網も広げておく、と…」
「なるほど、銀嶺の狩猟だけでなく、自由に動ける視点も用意しておくわけですな」捜索隊は捜索活動に専念しているとはいえ、モンスターに対する自衛能力が無い他、団体行動故に自由度は低い。
ハンターならフィールド外に出ない限り自由に行動できる為、ひょんなことから王女を見つけられる可能性も高い。戦う力もある為、下手をすれば捜索隊以上に期待が持てる。
とはいえ、ハンターは己の命を守る為に全力を尽くして戦うのだ。王女を見つけたからといって救出に手を回せるかといったら怪しいだろう。
だからこそ、王女の救出ではなく、周囲の情報収集に力を貸してもらう。これだけでもハンターと捜索隊に対する難易度はグッと下がるだろう。
両者の肝となるのは『銀嶺と王女の情報収集』。それを理解できるだけの判断力を求めることになるだろう。「既にハンターには目星をつけておりますが、腕と経験は確かです。 問題は無いでしょう」
「ありがたい。では私達は銀嶺狩猟の依頼を発注しましょう」
「承りますニャ…いえ、承ります」
気恥ずかしそうに言い直すネコートに和んだのか、先ほどの慌てぶりが嘘のように朗らかに笑う人々。
というのも、人は具体的な案が纏まればすんなりと行くものだ。率先する内容が一つ減れば、次の案を進めることができる。「ところで、その目星のつけたハンターとは何処に…?」
「なに、恐らく龍歴院のギルドマネージャ殿にに呼び出されているところでしょう。 やる時はやる、彼はそんなハンターですよ」* * *
「───で、それに俺が呼び出された、と?」
「そうなるね」
「まぁ、そうなるな」そう尋ねてみるとギルドマネージャとクルトアイズは頷きながらそう返す。
今日も今日とて朝の訓練を終わらせ部屋でゴロゴロと寛いでいたところ、ルームサービス見習いとなったメイレーに「ギルドマネージャが呼んでいる」と告げられ、また厄介事を押し付けられるのかと思いながら来てみれば案の定であった。
というかネコートさんといい、ギルドマネージャ達といい、何故俺ばかりこういった訳アリの依頼ばかり押し付けてくるのか…。「チョロイからね……」
「モノを頼みやすい顔なんだ」
「おい今なんつっ……この下り前もやった覚えあるぞ!?」
「兎に角、ネコートさん経由のギルドからの直々の依頼だ。 あなたは続けてになるが相手は二つ名個体だ、後ろにいるお前達も知識をしっかりと反復しつつ、しかし知識に足元を掬われないように気を引き締めて掛かるように!」…そして拒否権すらないんですね。煮物が。
そう心の中で悪態をつき、紫毒姫リオレイア、もといヴィオラとの激闘の前に受けた彼の言葉を改めて反復させる。
今回の依頼には雪山周辺の件の王女様の情報収集が含まれているとはいえ、銀嶺ガムートが相手だ。
そこまで面倒な事には……ならないはずがないんだろうなぁ。噂の悪名名高い王女様だからろくな事にならない筈がないよなぁ。
…そういえばクルトアイズの言葉で思い出した。今回の依頼には巻き添えをくらってしまった哀れな同行者がいるんだった。
よし、その同行者達に挨拶をしようではないか。……同情的な視線を向けながら。 -
756
名前:兎
投稿日:2018-11-23 08:29
ID:h3fvt/Eg
[編集]
>>752
蟹氏お帰りなさいー、引き継ぎシナリオあんな感じにしましたけど致命的にマズイ部分がなければ幸いですー。
シナリオ追いついて時間に余裕が出来たら是非執筆してくださいねー、楽しみにまってますからー。 -
757
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-23 20:52
ID:gX20EMvk
[編集]
「なんで私達巻き込まれたのかしら…」
「勘弁してくださいよ…。 俺達リオレウスの狩猟から帰ってきたばかりなんすけど…」
「恨むんなら私達の前を通ったあんた達自身を恨むんだね。 ろくな事にならないっていうのは分かったろうに」
「…そうね、そうしておくわ…」まぁ、その同行者達は知り合いであるのだが。
運悪く巻き込まれたのは、現在がくりとうな垂れているクリスと、頭を抱えているブランシュ。
というかブランシュのやつ、エリザとランドラットの言い争いに巻き込まれたり、水着が弾け飛んだりとタクミ程とは無いとはいえ運が悪いよな…。
そしてその二人に加えて、もう一人。「まぁ俺は強いモンスターと戦えればそれでいいけどな! だがその捜索は手伝わない! それでも良いなら付いて行ってやる! いや絶対行く! もう決めた!」
「……やる気満々だな、おたく」
「まぁ、ランドラットだし…」ランドラットだ。
いや、こいつの場合は通りがかった際にギルドマネージャの話、その中から『二つ名個体の巨獣の狩猟』という言葉だけを聞き、捜索なんてそっちのけでモンスターと戦いにいくつもりで同行しに来たのだ。
下手にモンスターを刺激して救助が困難にならなければいいが…。「そこはまぁ、アンドレッドが銀嶺の足止めをしてくれれば私達がその分周辺の情報収集が出来ると考えたらいいんじゃないかしら」 ガシャガシャガシャ
「あぁ、そりゃあいいかもな。 けどよブランシュ、あいつはランドラットじゃなかったか?」ガシャガシャガシャ
「まぁ、ブランシュが名前を間違えるのはいつもの事だろ。 それよりも…」ガシャガシャガシャ
「あぁ、それよりも…」ガシャガシャガシャ
「「ランドラット五月蝿い!」」
「あ!? なんだよ!!」
「聞こえてなかったのね…」
「ランドラット、ここで武器を出すのはやめておきな。 兎に角銀嶺ガムートの狩猟と王女の情報収集、いずれも大変だろうが頼んだよ」背中の槍を出したりしまったりガチャガチャ言わせて張り切っていた猪騎士を黙らせ、俺達に雪山へ向かうよう急かすギルドマネージャ。
何はともあれ、狩猟に臨むのだから準備は万全にしなければ。
自分の部屋に戻った俺は、銀嶺相手に持っていく武器を考える。
確かガムートの弱点は火属性だったはずだ。なら火属性の武器を持っていくか?いやしかし、あの図体なら貫通弾の撃てるボウガン、或いは貫通矢を放てる弓でも良いか…?~武器、装備、スタイルを選択して下さい~
・装備と武器は今まで倒したモンスターの素材から現状作れるものを選んでください>>758 >>759
んー、どうしようか…
じゃあダイス振って奇数が出たら>>758で、偶数が出たら>>759で…>>760
あー、じゃあまだ調整効くしそれで…
狩技だけ抽選で -
758
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-23 21:07
ID:uLGfT17o
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ガムに貫通とか悪手過ぎるよー
ミーシャちゃんのところ寄って灼炎のヴァルスター借りてきましょ、ついでに弱点も教えて貰いましょ
スタイルはブシドー&アクセルレインの鉄板型で
>>759
肉質見てみ?特に胴体 -
759
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-23 22:14
ID:Ue9c9FLk
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ガムートに貫通弾っていうほど悪手かな…相性いい方だと思うけど
一応こっちからは夜行弩【梟ノ眼】選んどきます
装備はブラキXとスタイルと狩技はブシドーと絶対回避臨戦の安全型で -
760
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-24 02:21
ID:82d66M2k
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思いっきり胴体狙いの心理描写出てるから>>758の言う通り貫通は悪手やな
そして時雨氏、その選択肢の決め方でどっちか完全に切っちゃうのはどうだろうか?
丁度よく>>758は防具指定してないわけだから武器と展開は>>758、防具は>>759、スタイルはブシドーで狩技だけダイスで抽選なんて素敵な案を出しておくぞい -
761
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-24 20:09
ID:gX20EMvk
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ハンターになりたいというメイレーの視線をその身に感じながら、シルビアやウドンに手伝ってもらいつつ狩猟への準備を進める。
うーむ、防具は現状防御力のあるブラキXでいいとして武器、そこが悩みどころだろう。
やはりここは新調した迅竜ナルガクルガのライトボウガン、夜行弩【梟ノ眼】で蜂の巣にしてやった方がいいか…。「───何かお困りみたいですねー?」
そう思考を張り巡らせていた時、マイハウスの玄関から後ろから聞き慣れた声が届いた。
振り返れば、いつもの目のやり場に困る防具に身を包んだミーシャの姿がそこにはあった。
……正直、メイレーの教育に悪いのでやめてほしいのだが、やめないんだろうなぁ…。
そのメイレーはと言えば、俺の後ろに隠れミーシャと距離を置いており、ウドンやシルビア達に彼女は悪い人ではないと言うことを説明されていた。「おにいがぎんれい、がむーと?のしゅりょーに行くんだけど、その武器選びに悩んでいるんだにゃ」
「そうなんですねー。 しかし『おにい』ですか、あなたも中々良い趣味してますねー」
「ねー」歩み寄ってきたメイレーの説明を受けたミーシャからニヤついた視線を受ける。
いや、あれは俺の趣味じゃない。ないったらない。メイレーがそう呼んでるだけだ。「まぁそれはおいておくとして、要するにガムートに対する武器を選んでる最中って事ですよねー? 見た感じ貫通弾で攻めようとしてるみたいですねー」
「あぁ、一度目にしたことがあるがあの巨体だ。 貫通弾の方がいいかと思ったんだが…」
「そうですねー、なら一つヒントでも上げましょうか」ヒントって…いきなりなんだ? いや、狩猟に関する知識ならヒントでも教えて貰って損はないだろう。彼女の根の優しさに感謝せねば。
そして聞いた話は最大限に活用する。そうでなければ、彼女の信頼を裏切ることになる。「あぁ見えて彼女って胴体ってガッチガチなんですよ。 狙うなら頭の甲殻部分と長いお鼻ですかねー。 ここまで言えば分かりますよね?」
「つまり…弱点をピンポイントに狙える通常弾、或いは通常矢がいいってことか」
「そうですねー。 あとは火炎弾、もしくは火属性の弓なんかがあればいいんですけどー」
「それなら火炎弾と通常弾の両方が撃てるアルバレッドがある。 よし、ならばそれを今回は持っていって…」
「んー、そのヘビィボウガンでもいいんですけど、ちょっといいですか?」意気揚々とアルバレッドを取り出したところで、ミーシャに呼び止められる。
「あなたさん最近弓は使ってますか?」
「使ってるぞ? 訓練の時にいつも…」
「狩猟の時は?」
「……ボルボロスの狩猟の時以来、使ってません」そこまで言った時、彼女は「あー…」と一言呟く。その表情には悲しさと寂しさが入り混じっている。凄く申し訳ない気持ちになってしまい、どうしようか考えていたところ、ミーシャはこちらに提案をしてきた。
「なら今回は弓を使ったらどうです? 訓練をしたおかげで少しは狙えるようにはなってるでしょうし」
「確かにな。 でも使えそうなのはお前に貰ったネルスキュラの弓しかなくて…」
「なら私が貸し出しますよ、少し待っていてください」そういってマイハウスから飛び出していくミーシャの迅竜の如き速さに、俺達は目を丸くして呆然とその場に立ち尽くす。
暫くして戻ってきたミーシャの手には折り畳まれた一つの弓が存在していた。「この子を使ってください。 お望みの火属性の弓ですよ」
「あぁ、これはどうも…」彼女から受け取った弓の名は灼炎のヴァルスター。斬竜ディノバルドの素材で作られた弓で、斬竜の甲殻を模したデザインが特徴的な弓であり非常に高い水準で纏まった性能に仕上がっているようだ。
なるほど、これなら銀嶺にも有効であろう。「ミーシャ、ありがたく使わせてもらうよ」
「今度私の狩猟に付き合って下さいよー。 それで貸し借りなしですからねー。」分かったよ、とそう言ったあと使用出来るビン、それと調合素材等をポーチに詰め込み急いで飛行船乗場へと向かう。
さて、雪山ではどんな困難が待ち受けているのやら…。 -
762
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-24 22:01
ID:gUpgEd.I
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指定があるってのは置いておいて、なんでそこで弓を強制させられるんやろか
普通にアルバレッドなら適切だろうからミーシャがそこでわざわざ弓にしろってのは何となくおかしいと思わないでもない読み込みの浅い新参なので、何かちゃんとした理由があるのならすまない
-
763
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-24 23:26
ID:llwyy1Ng
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>>672 指定に合わせようとしたらこうなっちゃってな… いや、ちょいと修正しますわ
─────────────────────「───しかし、おかしなもんだよなぁ」
飛行船に乗り込みアイテム等の最終チェックを行っていた時、ふとそう切り出すと全員の視線が集まってきた。
「おかしいって…何がですかい?」
「王女様の事だよ。 あんなわがままな依頼ばかりなのにギルドはなんで引き受けるんだろうなって…」この第三王女の噂はよく聞いている。
思いついたことは即実行という思考回路が特徴で、その思いつきというのが大抵モンスター絡みであるため、彼女がわがままを言い出すたびに狩猟依頼が出されると言っても過言ではない状態になっている。
常人なら「こんな理由で狩猟依頼なんて馬鹿げてる」と思うような些細な事情でも一切躊躇ナシ。
更に今回のように頻繁に脱走し、関係者が依頼を出さざるを得なくなる等、城でおとなしくしていようが自由にしていようが狩猟依頼が出されるのである。
この騒動を巻き起こす天災……失礼、天才であるが故にわがままに任せてモンスターを狩るような行為を許すことは、生態系を保護するギルドの風紀を乱すのではなかろうか…と疑問に思ったのだ。
俺の疑問に、「あぁ」と声を上げたブランシュとクリスの二人は苦笑する。「まぁ、そこら辺はね…」
「世の中は上手く回ってるもんなんすよ」
「どういう事だ?」ランドラットの問いに、二人は詳しく教えてくれた。
まず、国難クラスのモンスターすら始末する猛者を多数抱えているハンターズギルドの戦闘力と影響力を考えると、王女はおろか、国王でも圧力をかけるといったうかつな事は出来ないだろう。
そのギルドが認めている以上、依頼が出されている個体は『狩っても問題ない個体』であるので、生態系の面に関しては心配しなくて良いだろう。
また、わがままでモンスターを狩るのは良くないのでは…と言っても、モンスターの狩猟は、武具の素材や研究サンプル、食料に日用品や建築物の材料、そして人間の生活圏の安全確保等々の需要によって人間社会に深く根付いているのも事実である。
とすれば、依頼人の私的な目的と社会的な需要を抱合せにして両立してしまえば、風紀の乱れという問題は回避できるのだ。例えば、垢すりに使うために水獣ロアルドロスのタテガミを取ってこいという依頼を出すとする。
ハンターは人里近くに居座ってしまった水獣を狩猟しつつ、そのタテガミの一部を第三王女に納品して報酬を受け取り、残った素材を研究サンプルにしたり、売却して市場の活性化を図る…といった具合である。
これならギルド側は民草の救援や生態研究など本来の狩猟目的を済ませられるし、王女のワガママを叶えた名目で経費や報酬を受け取れる。
さらに、第三王女側も私的な目的でありながら「むやみに生態系を乱さない」という条件をクリアでき、業務の効率化という点から見ても、またモンスターの命を無駄にしないという点からしても、ギルドがなるべくそのような一石二ガーグァを狙っているのであろう。 -
764
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-26 23:24
ID:gX20EMvk
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「下手に依頼を突っぱねて、密猟者に付け入られちゃ困るっていう打算もあるかもしれないけどね…」
「まぁ、ギルドからしたらいいスポンサーかも知らんがなぁ。 依頼を受ける側からしたらなぁ」
「「溜まったものじゃないですよね(わね)」」二人は声を揃えてそう語り、深く溜息をつく。
……あぁ、この二人は…。「第三王女の、被害者か…」
「快適に目覚まししたいからティガレックス、それも亜種を捕獲してこいって依頼寄越しやがりましてね…! しかも狂竜化した個体をですよ…!?」
「私は確か…、泥パックに使いたいからボルボロスの泥を取ってこいって依頼ばかりだったかしらね…」
「なんか知らねぇが、大変だったんだなお前ら」───やっぱりな、とものすごく納得すると同時に、完全に同情していた。
というのも宝玉眼のことについてギルドマネージャから聞いたが、その時に依頼人が当の第三王女であったことを聞いていたのだ。
だからこそだろうか、二人に同情心からくる仲間意識が湧いてきたのは。
ランドラットに関しては、モンスターばかりに気を取られて依頼文なんて読んでいないんだろうなぁ。
あぁ、なんか第三王女に対して怒りがフツフツ湧き上がってきたぞ…!「手を出そうなんて考えない方がいいっすよ。 王族を殴ったって知られたら首はねもんっすからね」
「分かってる、分かってるけどな…!」
「そうこうしている間に見えてきたわよ」ブランシュにそういわれ、目的地である雪山をみる。麓付近は晴れているものの、山の頂は鉛色の厚い雲に覆い隠されていて見る事はできない。
果たしてあの王女様は雪山のどこにいるんだろうか…。
……まさかだが、王女様は今頃銀嶺に遭遇してたり……しないよな。どんだけタイミング悪いんだよって話だよ、流石にな…。 -
765
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-27 21:59
ID:gX20EMvk
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一方、その第三王女はというと…。
「…うー、銀嶺よー! どこじゃー!!」
絶賛遭難中であった。
第三王女は小柄な体でありながら多くの荷物が入っている巨大なリュックを背負い、寒さから身を守る為に金獅子の毛皮で出来た外套を纏っている。
手には空になったホットドリンクの瓶がもたれているが、現在の雪山の頂上付近はホットドリンクを飲んでいたとしてもどうしようもない冷たさが襲う。
更には視界が悪くなっており、動きを制限される程強い訳ではないが、横風が吹き荒れ、空から降る雪もその風に流されてゴォゴォと音を立てて横殴りに地面に落ちる。所謂吹雪と言うに相応しい悪天候だった。
現在の雪山は一人の少女が赴くにはあまりにも厳し過ぎる環境であった。「も、もうダメじゃ…」
ここに来るまで、相当な苦労をしたのだろう。こんな広く寒い雪山を練り歩いていたのだから当たり前だが。
やがて、降り積もった雪の小山に登った第三王女は糸が切れた操り人形のように降り積もった雪の上に倒れこむ。「妾はここで死ぬのか…。 ふっ…、それも悪くは無いかのう…。 しかし、雪というものは温かいもんじゃな、まるで毛皮のようじゃ…」
まるで、体全体を優しく抱き締めてもらっているかのように心地良い温かさが、氷のように冷えた自分の体を優しく温めてくれる。
その心地良さに、ずっとこのままでいたいと願ってしまう。
もう少し、この温かさに包まれていたい。もっと、優しく包まれたい。
そう思いながら、彼女は寝息を立てて寝ていた。
それから暫くしたあと、彼女の寝ている丁度その真下が激しく揺れ出す。
そして───小山が割れる。
膨大な量の雪が舞い上がり、それらは風に乱れて暴雪に変わる。打ち上げられた雪の塊が、まるで雨のように地面に叩き落される。
丘と見まごうばかりの体躯、四肢を覆う黄土色の甲殻、鮮やかな赤色は色褪せ、白銀色に染まった体毛。その割れた小山の中から、第三王女が捜し求めていた銀嶺ガムートが姿を現した。
巨大な脚でしっかりと不安定な雪の上に巨体を支え、体に纏わり付いた雪を払うように身を震わせ、再び進行を始める。
そして、第三王女はというと…。「ぐぅー…」
───絶賛爆睡中であった。
そんな彼女を背中に乗せているとは知らず、銀嶺は雪山を進行し続ける。
───自らが安寧できる地を求めて。* * *
飛行船に揺られて雪山に降り立った俺達は、雪山担当のネコタクを経由しそれぞれに各地へと放り出された。見たところ俺はエリア4、雪山の洞窟の中に降ろされたようだ。
さーて、ここからどうしようか。一先ずホットドリンクを飲みつつ考える。
今回は雪山周辺の情報収集を行い、ついでに銀嶺を狩猟するといった依頼だ。出来るだけ多くのエリアを足を運び、第三王女を探し出せればよいのだが…。~エリアを選択してください~
※経由エリアも含めて選択して下さい
例 エリア1→エリア4→エリア5
主人公の現在地:エリア4 -
766
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-27 22:10
ID:qRBEFdpI
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あなたがフラグを建築するから^^;ここはとりあえず4>5>6で良いかな?
戦闘脳いるみたいだし戦闘ありそうなところ行けば合流出来そう・・・ -
767
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-28 20:47
ID:gX20EMvk
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ふむ、エリア5か
ならばイベント戦だ─────────────────────
さてと、まずはここを調べてみるか。もしかしたら岩陰とかに隠れているかもしれないしな。
そう思いエリア4をぐるりと見て回ったが、やはりというか王女様の姿は見当たらなかった。
いつもなら山菜爺さんがこのエリアにいるはずなのだが、雪山の入山規制がかかっているからか姿が見当たらない。
うーむ、第三王女を見かけたか聞こうとも思っていたのだが仕方ない。別のエリアを調べてみるとしよう。* * *
段差を登り、穴を抜けてエリア5に踏み入れた俺を出迎えたのは二匹のギアノス、の死体であった。
見ればその体には鋭い切口が存在しており、白いその身を赤く染めあげていた。「───あら、案外早い合流ね? 色々話をしたいけれどちょっと手伝ってもらえるかし、らッ!」
声をする方を見れば、ブランシュが火竜と雌火竜の素材を使用した太刀、飛竜刀【双紅蓮】で一匹のギアノスを斬り捨てていた。
彼女の元へ急いで駆け寄り、弓を構えて状況を確かめる。
現在俺とブランシュの前には三匹のギアノスは仲間をやられて怒号を発している。
三匹位なら余裕。そう思っていた時、目の前の敵を睨み付けながら、ギアノスは一際大きな声を上げる。「なっ…!?」
「嘘でしょ…!?」思わず我が目を疑った。
仲間意識の声に呼応して岩壁の上から次々にギアノスが飛び降りて来たのだ。
互いの背後を守り合うように背中を合わせて自分達の前にいるギアノスの数を数える。
非常に狭いエリアだというのにあっという間に増え、俺の前には六匹。ブランシュも同じく六匹。合計でこの場にいるギアノスの数は十二匹もいる。「十二匹ッ…!? 二つ、三つの群れが一緒に動いてるのかッ…!?」
「…可能性として考えられるのは外の吹雪が相当厳しいって事と…」掛け声を合図に前方の六匹のギアノスが突っ込んで来る。
突っ込んでくるギアノス達に対してブランシュは太刀を構え、「───銀嶺から逃げ出してきたって事よねッ!」
一番目に飛び込んで来たギアノスを飛竜刀【双紅蓮】で思いっ切り斬り飛ばした。彼女の勢いと剣の威力が重なり、その一撃でギアノスは沈黙した。
怒り狂った一匹が再び彼女の正面から来るが、透かさず矢を放ち、ギアノスの顔面に突き刺さり、地面に倒れ沈黙した。
転がっている同胞の亡骸を見た残った十匹は研ぎ澄まされた刃のような鋭い眼光で仲間を殺した敵を睨む。
この様子だと奴らは俺達がこの場を抜け出しても、自分達が銀嶺から逃げ出してきた事も忘れて何処までも追いかけてきそうだ。
…どうやらこの場でコイツらを倒さないといけないようだ。~行動を選択してください~
1 ブランシュと連携しつつ一匹ずつ確実に倒していく
2 アイテムを使用してギアノス達を倒す(アイテム明記)
3 その他あなたの所持アイテム
・回復薬×10・回復薬G×5・強走薬×5・こんがり肉×10・秘薬×1・ホットドリンク×4・力の爪×1・砥石×20・ペイントボール×10・閃光玉×5・落とし穴×1・シビレ罠×1・捕獲用麻酔玉×8・大タル爆弾×3・モドリ玉×1・消散剤×10 -
768
名前:名無しさん
投稿日:2018-11-29 07:44
ID:W.6Bg8Oo
[編集]
2.閃光玉で視界奪ってから一網打尽
銀ガム相手なら閃光の出番もほぼないし一個くらい問題ないはず
-
769
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-30 20:17
ID:gX20EMvk
[編集]
「目を瞑れ!」
ポーチから閃光玉を取り出しピンを抜いて勢い良く投擲し、すぐに目を閉じる。
ブランシュも俺の声に反射的に目を閉じる。直後、すさまじい閃光が辺りを包み込む。その光は目を閉じていても感じられるほどすさまじい光量だ。
ギアノス達の悲鳴を合図に目を開けると、そこには先程と何も変わらない洞窟の光景が広がっている。ただ違う事といえば、ギアノス達の阿鼻叫喚の光景が広がっている事だ。
閃光玉という道具などギアノス達にはわからない。わかるのは目の前で起きたすさまじい光に目が針を刺されたような痛みを発しながらまわりが見えないというパニック。
仲間が前に立っていたせいで影になってしまい、目を潰されなかった三匹ほどのギアノスがこちらに殺意を向けているが構わずブランシュは飛び込んでいく。音もなく洞窟を駆け抜け、視界を封じられた一匹のギアノスに背負った飛竜刀を振り抜く。煌めく刃先が吸い込まれるようにギアノスの白い体を斬り裂く。
横薙ぎ一閃。振るわれた太刀は猛烈な炎と風を纏いながらギアノスを後ろにいた二匹纏めて一瞬で吹き飛ばす。
俺も矢を引き絞り、ブランシュの上に跳び掛かろうとしていたギアノスに向け放つ。空中で頭を撃ち抜かれて悲鳴も上げる事もできずに吹き飛ばされた一匹は、深い谷底へと落ちていった。
怒号を上げながら背後から突撃して来るギアノスの一撃を避けつつ、さらにもう一匹の吐き出した氷液を回避。
突撃して来た方のギアノスに矢切による一撃を入れ、再び距離を取り体勢を立て直す。そしてブランシュが入れ替わるようにして、一気に地面を蹴って前にいるギアノスに横一線で剣を薙ぎ払う。ギアノスの体が吹き飛び、岩壁に音を立てて叩き付けられ、動かなくなった。もう一匹を彼女が斬り捨てている間に、ブランシュが残した一匹に向け矢を数本発射。その内の一本が首筋突き刺さり、その一撃にギアノスは声帯をやられたのかくぐもった悲鳴と共に血を吐き出した。
その隙に弓を畳み、矢を構えながら接近し顔面へと突き刺す。ギアノスは悲鳴を上げる事もできずに崩れ落ちた。
振り返ってブランシュを見れば、視界を奪われているギアノス達は反撃する術もなくその猛烈な剣撃の嵐に蹴散らされていく。
そして閃光玉の効き目が切れ、残った一匹は目の前の光景に動揺し、その場から動けずにいた。
だがそれがいけなかった。ブランシュは地面を蹴って鋭い突きの一撃を決める。体を串刺しにされ、ギアノスは絶命した。
ブランシュは一度息を吐くと、ギアノスから剣を引き抜き、剣を振って血を落として背中の鞘に収める。 -
770
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-11-30 21:47
ID:gX20EMvk
[編集]
「…一段落、か。 ブランシュお疲れ様」
「えぇ、お疲れ様」ブランシュはは小さく微笑みながらこちらに近付いてくる。そしてギアノスの邪魔が入らないか警戒しながら、互いの情報交換を行う事にした。
「俺が降ろされたエリア4だ。 一回りして調べてみたけどあのエリアには姿が見当たらなかったよ」
「そう、私が降ろされたのはここよ。 調べようとしたらあそこからギアノスがやって来てね。 それの対処をしていたのよ」入った時にあったギアノスの死体はそういうことであったか。
しかし、今の騒ぎでも出てこない辺り…。「王女様はこのエリアにはいないみたい、だな…」
「そうみたいね…。 で、これからどうするの? 」
「一緒に行動しよう。 向かう先は、あっちだ 」俺は洞窟の外であるエリア6へと通じる穴を指差す。
第三王女には誰が流しているか分からないが、モンスターに対する広い情報網を所有している。ならばガムートがこの雪山の中のどこで活動出来るかという情報も仕入れている筈だ。
第三王女は銀嶺に逢いに行くといった。だったらその銀嶺が通常個体のガムートと同じエリアで活動が可能ならば、そのエリアに赴いてる可能性が高い、という訳だ。「なるほどね。 いいわ、一緒に行きましょうか」
俺の提案を受けたブランシュと共にエリア5を抜け、エリア6へと出る。
* * *
エリア6へと足を踏み入れた先で、出迎えてきた吹き荒れる風に一瞬動きを止めるが、目を凝らして辺りを調査する。風はいつにも増して冷たく、ホットドリンクを飲んでいるはずなのに体中の血が凍ってしまいそうな程に寒い。
腕を風上に向けながら顔を守るようにして風下を見回す。足元はいつにも増して積雪しており、正直かなり歩きづらい。それでも足場をしっかり確認し歩きながら周囲を調査し続ける。「……何もいない」
そうポツリと呟くと、ブランシュは頷く。
「天気は飛行船に乗っていた時から見えていたから分かってはいたけど、別段変わった点はないわね」
「モンスターがいないのは銀嶺から逃げ出したから、だよな? 」
「そうね。 兎に角ここにも王女様はいない、ということは…」吹雪の中話し合いを続けるが、現状の情報だけでは判別できないとの結論に至る。確かに山に異変が起きている事は何となくわかるが、明確な原因は不明だった。明らかにする為には、
「……山頂を目指す他はない、か」
山頂を見上げ、ブランシュはため息を零す。山頂手前でこれほど荒れているなら、山頂の天候は最悪だ。風や雪もさる事ながら、普段よりもグッと寒い風が体温を奪う為、気力も削がれる。ホットドリンクを飲んでこれなのだから、もしもなかったらたちまち凍え死んでしまうかもしれない。冬の山を舐めていた訳ではないが、予想以上に厳しい。
すると山頂、エリア8の方から黄色の信号弾があがる。あれは確か、クリスの識別色だったはずだ。
信号弾があがったという事は第三王女を発見したのか、或いは銀嶺と遭遇した、という事だろう。「行きましょう」
ブランシュの掛け声と共に、進撃が再開される。目的地は山頂のあるエリア8。気を引き締めてゆっくりとした足取りで雪を踏み締めて歩みを続ける。
その時、何か光る物を見つけた。
「ちょっと待て」と言い残してその光った物を目指して彼女から離れる。どうしたのかと怪訝そうな顔でこちらを見やるブランシュの視線を背に、俺は目的の物を拾い上げた。「……何だこれ?」
それは、見た事もない異物だった。原型を留めない程にまでサビついた鉄片。腐食が激しく、全体がサビてしまっていて中を窺い知る事はできない。明らかにスクラップと言っていい品だった。 -
771
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-01 21:09
ID:gX20EMvk
[編集]
「何か見つけたの?」
「あぁ、これ何だか分かるか?」近付いてきたブランシュにも見せてみる。
ここは輸送ルートからも外れた山である為、普段商隊が入る事は少ない。竜車の部品の一部、商品の一部といった線は薄いだろう。
そしてここは山の上、風で飛ばされて来たという説は成り立たない。だとすれば、これは一体どこから来たのか。全く想像がつかなかった。
俺が持つ謎の朽ちた鉄片を凝視していたブランシュは、難しい表情を浮かべていた。それに気づき声を掛けると、ブランシュは険しい顔のままつぶやいた。「……昔、これに似たような物を見た記憶があるのだけど、思い出せないのよ」
「そうなのか? だったら、何か思い出したら教えてくれ。 手がかりになるかもしれないから」
「善処するわ」アイテムポーチの中へ朽ちた破片を入れ、クリスが待つ雪山の頂上へと向かう。
───その背後を、謎の影がゆっくりと通過した事に気づく事もなく……* * *
頂上の天気はさらに悪化し、視界はかなり制限される暴風雪。
それでも腕で顔を守り目と耳を総動員しながら、足の裏から伝わるわずかな振動も見逃さないゆっくりとした足取りで突き進む。
そんないつになく警戒態勢のまま二人は歩き進めていたところ、突如何かが頭に当たった感触がした。
それが飛んできた方角を見れば、岩壁には人が一人通れる程度の小さな横穴からクリスがこちらを見ており、こっちに来いと右手で手招きをしていた。
左手には手頃なサイズの石があるため、先程当たったのは彼が投げた石だったのだろう。「クリス、どうしてこんな所に? 銀嶺はどうしたのよ?」
「それは来てみたらわかりますよ。 とりあえず着いてきてくださいよ」クリスに促されるままに彼のあとをついて行く俺とブランシュ。
岩壁の裏側を登っていくとさらに山頂部に近付き、そこから覗くよう促される。何故だ、と訝しんだがなにか理由があるのだろうと割り切り、下を覗いてみる。
───そこにいたのは山であった。
その姿は、雄大な白銀の山麓と見紛うほどに古く重厚であり、山に住まう神ではなく、まるで山そのもの。
まさに『銀嶺』という二つ名に相応しいだろう。
………ん? 何か今見えたような……。「ちょっと、あれって…」
「な? 信じらんねぇだろ?」…あぁ、二人もあぁして反応しているあたり見間違いではないみたいだ…。
目を丸くしている様子からして、信じられない、と言っているようだ。「やべーよ! なんであんな所に居るんだよ!?」
「俺が知りたいですよ…! 見つけた時は思わず声を上げそうになりましたよ…!」
「王女様の偉業は体験したこともあるし、噂でも聞いていたけど、あそこまで行くと馬鹿にできないわね…」冗談のつもりでいっていたのだが、まさか本当に銀嶺と共に行動していたとは。
驚愕の事実を前に、逆に第三王女に感服すらしてしまう。 -
772
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-01 22:59
ID:gX20EMvk
[編集]
「……で、マジでどーするよこれ? 下手に手出ししたら王女様が危ねぇですよ?」
クリスは銀嶺の背ですやすやと眠っている第三王女を指差して問い掛けてくる。
彼の言う通り万が一でも第三王女が巻き込まれてしまっては一大事になる。
だからといって銀嶺狩猟の任を解くわけにも行かない。さてどうすべきか、と考えていた所へブランシュが提案してきた。「とりあえず、この中の誰かが捜索隊に報告しに行かない? 王女様の情報が手に入り次第、伝えて欲しいとも言われていたし」
「あ、それもそうだな」
「そういやそっか」彼女の提案に、思わず手打ちするぐらいに納得する俺とクリス。ならばと報告に向かうのは誰か話し合おう───としたところで、新たな問題が発生する。
「───見つけたぜ…! 銀嶺さんよぉッ!!」
猛烈な吹雪にも構わず大声上げて銀嶺に突撃しにきたのはガーディアンXシリーズに身を包んだランドラット。
ミレニアムを構え姿勢を低くして全力突撃をする。全速力の突撃は銀嶺の脚の甲殻に衝突、銀嶺がゆっくりとランドラットに向き直り、その
瞳に明確な敵意の炎が燃え盛った。
小さな敵を睨みながら脚を踏み鳴らし、沸き起こる激昂を怒号と共に敵に撃ち放つ。「…はっ! いいぜ、かかってこいよッ!!」
「「……ランドラットのアホーーー!!」」
「ちょっと二人共、あまり叫ばないでッ! 気付かれるわよ……ッ!?」思わず叫んでしまった俺達をブランシュは止めようとするが、銀嶺は高所にいる俺達を見つけており、長い鼻で巨大な雪玉を作り上げ上空に放り投げる。
俺達のいる高台より高く飛んだ雪玉は空中で複数に分離、破片として現れた氷塊が此方に向かって落ちてきていた。
「飛び降りろ!」と叫んで、二人と共に高台から飛ぶと氷塊は先程まで俺達がいた場所へ落下していた。
着地し素早くランドラットの元へ駆け寄ると、それぞれ武器を構え銀嶺と対峙する。
吹雪の中、再度怒号と共に放たれた暴風が、ク俺達に叩き付けられる。しかし、誰も一歩も引くことはない。
それは彼女からの宣戦布告。
雪山を舞台に、銀嶺ガムートとの戦いが始まった瞬間であった。~行動を選択してください~
1 雪を纏った銀嶺の脚目掛け攻撃する
2 特徴的な銀嶺の頭部目掛け攻撃
3 怪力を持つ銀嶺の鼻目掛け攻撃する
4 アイテム使用(アイテム名明記)
5 その他メンバー詳細
ランドラット ランス:ミレニアム 防具:ガーディアンX スタイル:ストライカー(ガードレイジ、スクリュートラスト、シールドアサルト)
ブランシュ 太刀:飛竜刀【双紅蓮】 防具:ベリオX スタイル:ブレイヴ(鏡花の構え)
クリス 弓:クイーンエテルノク 防具:ハプルX スタイル:ギルド(トリニティレイヴン、絶対回避) -
773
名前:蟹
投稿日:2018-12-02 00:01
ID:B8nXzJ4E
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5→部位は気にせず、巨体の攻撃範囲に注意しながら隙のある部分を攻撃
万が一女王が振り落とされた場合は閃光玉や罠総出で足止めして救出を -
774
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-03 20:20
ID:gX20EMvk
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「くっそ、計画が全部台無しだよ! 脳筋野郎ッ!」
「あッ!? なんかいったか!!?」
「無駄口叩いてないで前を見なさい! 来るわよ!!」狙いを定め、銀嶺は鼻でスゥと息を吸い込む──その動作を見て、ランドラットを除いた俺達はとっさに二手に分かれて走る。
刹那、鼻から氷の弾丸が撃ち出され先程まで俺達がいた場所へまっすぐ飛んでいく。
ランドラットは盾を構え、難なく防ぐと再び槍を構え、再度銀嶺に突撃。ブランシュも彼のあとに続くようにして走り出す。「とりあえず俺達は隙を見ながら攻撃するぞ!」
「了解、援護は任せてくださいよ! 」強撃ビンを取り付け、銀嶺の姿を眼で捉えながら弓を構える。
こうして正面からその姿を改めて見てみると、高台から見た時よりも通常個体の巨獣との違いが明確に分かる。
まず脚部に纏う氷雪が甲殻の突起の影響で、丸みを帯びておらず鋭利なトゲを思わせる形状になっている。
そしてあの特徴的な長い鼻にも氷を纏うようになった。こちらも刺々しい形状であり、普通のガムートとは印象が異なってみえる。
そしてやはり、違うのは見た目だけではないようである。
右前脚へとたどり着いたランドラットとブランシュは即座に攻撃に移るも、脚部の氷雪のせいで表面が削れるだけで肉には到達せず、ランドラットは思わず「くそっ!」と悪態をついていた。
そんな脚にまとわりつく小さな敵に対して、銀嶺は右前脚を振り上げる。それを見た二人はそれぞれいなしの体勢と、盾を構える。
少々の溜めのあと、勢いよく巨木のような前脚が振り下ろされ、あまりの衝撃に地面がめくれ上がる。
踏み付けたその脚をみると本来の巨獣ならばに纏っていた氷を同時に踏み砕いていたが、銀嶺の場合は氷は砕かれず、纏った状態が保たれてる。「…ちぃ、まともに刃が通らねぇ!」
「そうね。 これは思ったよりも厳しそうよ」並び立った二人の頬を嫌な汗が流れる。
道具が効かないとか罠が効かないとか以上に、武器がうまく入らないというのは一番辛い。何せ主力がそれなのだから、他の道具類でいくら小細工はできても、肝心の武器がそれでは問題だ。「うまく刃が入るような場所を探すしかねぇか…!」
「そうね───っと、来るわよッ!」話し合えたのは一瞬。すぐに銀嶺がそれを邪魔するように鼻で巨大な氷塊を地面から掘り出し、空中へ放り投げる。
周囲に破片、という名の巨大な氷塊を降らせ二人は先程と同じようにいなしによる回避と盾による防御を余儀なくされていた。 -
775
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-04 20:57
ID:oVCT.y.k
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短いけど投稿します
─────────────────────
一方で俺とクリスは銀嶺を挟むようにして攻勢に出ていた。
奴が近接武器の二人に気を取られている間に少しでもダメージを稼げたらよいのだが…。
そう思いながら矢筒から取り出した矢三本を一斉に放つ。放った矢は銀嶺の牙に命中し、装填された強撃ビンの中の液体が爆ぜる。
クリスは背後から五本の矢を引き抜き、構えた弓の弦に番える。銀嶺に狙いをつけ、番えた五本の矢を一斉に撃ち放ち命中。突き刺さった矢から紫色の液体が滴り落ちる。
確か彼が今使用している弓、クイーンエテルノクは雌火竜の素材を使用しているからか毒ビンの毒性を強化できるのであったか。後方支援が主としている彼らしい選択だろう。
だが、銀嶺の意識はそんな彼の方へ向いたようで自らの背後を振り返りつつ、鼻で吸い込んでクリスを引き寄せてきた。「マジかよッ!!」
クリスは叫びながら弓を背負いながら必死に走るがそれでも適わず、銀嶺の懐まで引き寄せられてしまった。
これは危険だと彼は急いで走りだし後ろ目で見た後、銀嶺を目の当たりにし───巨体が持ち上がり、前脚を自分に踏みつけようとしたのを目撃した。
クリスは身を投げだすようにして飛び、直後轟音からの地鳴りが響く。圧倒的な巨体による踏みつけで雪が吹き飛び、降り積もった雪に飛び込んだクリスの上に降り掛かる。
あの状態で追撃を受けてはいけない。ブランシュとランドラットは急いで接近、銀嶺の背後に突撃。俺はその二人の援護をする為に矢を番え、銀嶺の姿を捉える。
銀嶺は再び前脚を持ち上げ立ち上がる。追撃を仕掛けるつもりか、と思ったその時、正面を向いていた顔が背後にいるこちらを捉えているのが分かった───それを見て、全てを悟った。「そこから離れろッ!」
俺の叫びに二人は直上を確認。そしてすぐに状況を理解して離脱が不可能とみたのかそれぞれの防御手段で対処する。そこへ一瞬遅れてやってくる轟音と地鳴り。
前方への押し潰しだけでなく、後方にいる敵にも対処できるようにヒップドロップを繰り出せるようになっていたか…!
だが今の攻撃の隙にクリスは体勢を整えたのが確認でき、一安心しながら鼻を振り回しながらこちらへ振り向く銀嶺の頭部目がけ矢を放つが、怯まずお返しとばかりに雪玉を撃ち放つ。「…ッ!?」
間髪入れない反撃に慌てて横へ跳んで回避。壁にぶつかり、炸裂する音を背に立ち上がると、再び銀嶺がこちらに向かってブレスを撃とうと鼻で吸い込んでいるのが見え、慌ててその一撃を回避する。
俺が結果的に囮役になったのを見てブランシュとランドラットが同時に左右から、背後からはクリスが銀嶺に襲い掛かる。思わぬ左右からの一撃を喰らい、追撃を仕掛けようとしてきた銀嶺は怯み脚を止めた。 -
776
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-06 23:05
ID:jTWY9JtE
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銀嶺が怯んだことを確認し、弓を構え直す。そこで一つの疑問が頭をよぎる。
……第三王女はどうなった?
現在の銀嶺はまるで周りから群がってくる敵に嫌気が差したかのように、鼻を左右に大きく振り回しその場で回転する。あそこまで派手に暴れているのだ。振り落とされている可能性だってある。
そう思い周りを見てみるが、この吹雪では確認すら難しい。
ならばとランドラット達が銀嶺を惹き付けている間に、先程クリスが隠れていた横穴へと入り裏側を登り、山頂部を目指す。「───オラァッ!」
「ナイスダウンだランドラット!」
「今のうちに畳み掛けるわよ!」彼らの声が岩壁越しに聞こえる。彼らも頑張ってくれている。早めに確認を済ませねばなるまい。
岩壁を登りきり山頂部に辿り着くと同時に下を見てみるが第三王女の姿はない。続けて鼻を振り回している銀嶺の背中を見てみると「…ぐぅー」
……いた、というかまだ寝ていた。
いやはや、派手に暴れている銀嶺の背中でよく落ちないものだ。あそこ迄いくと最早関心してしまう。
まぁそれはおいておくとして、第三王女が銀嶺の背中から振り落とされてしまわないよう立ち回らなければならないだろう。
山頂部から飛び降りながら思考を張り巡らせる。さて、どう立ち回るべきか…。~行動を選択してください~
1 相手の出方を見て慎重に立ち回る
2 クリスに罠を使用してもらう(罠の指定可能)
3 脚を攻撃して転倒を狙う
4 その他 -
777
名前:名無しさん
投稿日:2018-12-09 08:56
ID:MlwJ9bQg
更新ないな、と思っていたら選択肢あったのね
じゃあ2と3併用でシビレ罠を設置してもらいましょ -
778
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-09 21:36
ID:gX20EMvk
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ともかく第三王女を救出するには奴の動きを止めなければならないだろう。その手段はこちらには山ほどあり、そして援護と拘束のスペシャリストが此方にいる。
「クリス! シビレ罠を頼むッ!」
叫びながら彼に呼びかける。
激しい吹雪によって音が掻き消されないか不安になったが、無事に彼には届いたようで腕を高く上げかえしてくる。それを確認した俺は罠を設置しに向かうクリスと、銀嶺に張り付いている二人の援護を行う。
銀嶺に対し、怒涛の勢いで突っ込むブランシュ。振り返る銀嶺の顔面目掛けて跳躍すると、振り抜いた刀を閃かせる。
牙を狙って振り下ろされた飛竜刀【双紅蓮】は弾かれた。だがブランシュはその反動を利用して加速。右側を通り抜けるように翔け、脚に向かって刀を一閃。硬い感触を無視して刃を立て、雪塊をわずかながら斬り裂いた。
雪の上に降り立ち、反転して再び突っ込むブランシュ。その攻撃を遮るように鼻が振るわれるが、わずかな隙間に体を捩じ込んで止まらずに回避すると軸となる巨大な脚に刀を叩き込む。
ランドラットは体勢を低くして槍を前方に構え砂煙を上げながら全速力で突き進み、銀嶺に突っ込んだ。強力な槍の先端が身体を削るが、わずかに角度がずれた。
彼は舌打ちして一旦そのまま走り抜けて急停止すると方向転換。再度銀嶺に向かって突貫する。
怒涛の攻撃の嵐を行う二人。紙一重の回避の連続に二人の表情にも疲労で苦悶に歪み、頬を汗が流れる。だが、その苦しみをねじ伏せて振るわれる一撃一撃は、着実にヒットしてダメージになる。こちらの攻撃など効いていない。そのような様子で銀嶺は援護射撃を行う俺に向き直ると、こちらに鼻を叩き付けてくる。弓をしまって全速力で走るが、距離は足りず吹き飛ばされた。
悲鳴を上げて砂の上に転がる。寸前で正面は何とか避けたようだが、わずかに触れて跳ね飛ばされてしまったようだ。
ガンナーの防御力のせいかほんのちょっと接触しただけで吹き飛ばされ、起き上がる際の表情苦悶に歪む。そんな俺を一瞥しながら、引き離されたブランシュは必死になって雪山を翔ける。
ブランシュは戦風となって暴れ狂い、ランドラットは力強い一突で銀嶺の鎧を砕く。
群がる二人のうち、最も鬱陶しいブランシュを狙って銀嶺は前脚を高く上げる。が、ブランシュはそれを簡単に回避し、銀嶺は何もない空間に前脚を振り下ろす。が、当然その脚の先は何も踏み潰す事はなかった。
振り返った銀嶺は今度はランドラットを狙って突進を仕掛ける。彼はその一撃に対し盾でガードしてやり過ごす。が、当然大きく後退を余儀なくされた。
ランドラットを吹き飛ばし、銀嶺は振り返ると再びブランシュに向かって鼻を振り回すが、当然彼女はそれを簡単に避ける。その間、回復薬グレートを飲み回復しきった俺は暴れ回る銀嶺に確実な射撃を行い続ける。 -
779
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-11 22:35
ID:gX20EMvk
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流れるように刀を振るい、旋回斬りとバックステップを同時に放つ回避攻撃で距離を開けた瞬間、銀嶺は振り返って彼女に向かって雪玉を持ち上げ、鼻を振り上げて襲い掛かる。が、寸前で距離を開けたブランシュはこの攻撃を避け、構わず再び前進して銀嶺に斬り掛かる。
彼女が攻撃している間にランドラットが怒涛の突進を、俺がが援護射撃を行う。
転倒を狙うために脚に向かって激しい集中砲火を行い、剣士組への銀嶺の攻撃をできるだけ逸らす。当然、振り向いた銀嶺は俺を狙って雪玉を発射するが、距離を十分に開けていただけあってそれを幾分か余裕を残して避けると、再び距離を取って狙撃を再開する。そして───激しい吹雪の中、突如として甲高い音がエリア全体に響きわたる。
エリア全体に響く角笛の音色に、戦闘中の三人が一斉に振り返った。その視線の先にはエリアの端で角笛を吹くクリスの姿がある。その足下に見える電撃を見てすぐに彼の策を察すると、すぐさま散開して銀嶺に道を開ける。
角笛の音色に彼を見たのは三人だけではない。鬱陶しく肉薄乱舞していたブランシュに向けていた敵意を、銀嶺は視線と共に角笛を吹くに向ける。
低い唸り声を上げた銀嶺は突如として頭を地面に埋め始める。そして、そのまま顔を埋めた状態で雪原を砕き削りながら猛進し始めたではないか。その並ならぬ巨体で大雪で掘り起こす姿はまるで除雪車のようだ。
すさまじい勢いで迫る銀嶺。その怒り狂った瞳を前にしてクリスは身を震わせるが、自分の前にはある意味最強の盾が存在する。奴は、決して自分を潰すことなど出来ない。
そして、銀嶺の脚がシビレ罠を踏み抜いた───その瞬間、ヘルムに隠されたクリスの口元に笑みが浮かぶ。
シビレ罠を踏み抜いた事で、銀嶺の体を電源が縛りつけた。怒涛の突進は硬直した筋肉はそれまでの勢いを全て妨げる杭となる。当然、突進の勢いは失われ、彼を引き潰すつもりいたその頭殻は、クリスの眼前で止まる。
その眼前、クリスは三本の矢を構え始める。「んじゃあ、やりますかねぇ───三羽鴉、参る」
一射、二射と連続して牙と頭殻を通すようにして矢を放つ。そして最後の一本を力強く引き絞り、精確に狙いを定め、放つ。
牙と頭殻を狙った一撃は的確に命中。長く丸みの帯びた牙を一本砕いていた。「…まぁ、こんなもんでしょ」
「よくやったぞクリス!」
「毎度毎度いい仕事するわね」
「やってくれるなぁ、おい!」三者三様ながら、クリスの見事な作戦と攻撃に感嘆する。だがすぐに彼が作った隙を無駄にしまいと攻め込む。
身体が動かない銀嶺に対して、四人は容赦のない一斉攻撃を仕掛ける。皆これまでの戦いで確かな疲労が蓄積しているはずだが、その動きや表情はそれを思わせない程に勇ましく、峻烈だ。
白い息を吐きながら奮戦する四人の狩人。状況は最初の頃に比べれば劇的にこちら側に有利なものになっている。だがそれはあくまで繊細なバランスの上で成り立っているに過ぎない。こちらは常に神経を尖らせて続けてミスの許されない戦いに対して、銀嶺は一撃でも敵に与えられればその途端に戦況は一気に傾く。
有利には違いないが、それは薄氷の上のギリギリの状況に過ぎない。 -
780
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-14 20:56
ID:SIwtAG4o
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「そろそろ離れろッ!」
クリスがそう叫び、近接武器の二人が突発的な攻撃可能な範囲を脱すると同時に、銀嶺のシビレ罠による拘束が解かれた。
体の自由を取り戻した銀嶺。自らを束縛し、一方的に身を痛めつけた相手に対する憎悪は、すでに彼女の激情を噴火させる程にまでなっていた。
天高く咆哮を轟かせる銀嶺。その纏う気配はこれまでとは明らかに違う。目も血走り、激しい憎悪に支配される。銀嶺の怒り狂った瞳と目が合い、思わず背筋がゾクッとする。
すぐに固まっている事は危険と判断して、誰も何も言わずも全員がお互いに距離を取るように散る。そこへ、銀嶺が突っ込んで来た。
先程クリスを引き潰そうとしていたあの突進を目が合った俺に対して繰り出して来る。
舞い上がる雪塊を纏いながら怒涛の勢いで迫る銀嶺に対して全速力で横へ逃げる俺の背後を、轟音と地響きと共に通過していく。通過していったのを確認し弓を構えようとするが、その直後頭上が暗くなり見上げてその正体を確認する。
───そこにあったのは巨大な雪玉。どうやら頭を地面から引き出す勢いで、上空へ雪を投射したようだ。
今度は走っているだけでは回避できない。そう思い直撃の寸前、前に向かって身を投げ出した。雪の上に肩から落ちて思わず顔を顰めたが、こんな直撃を受けるのに比べたら遥かにマシだ。
雪玉が割れる音が響き渡り、荒い息を繰り返しながら起き上がる。だが息を整えている暇などなく、すぐに銀嶺の姿を探す。すると、銀嶺は旋回してこちらに向き直ろうとしていた。
だが、その間にブランシュは左脚を中心に斬り掛かる。そして、これまでの度重なる近接二人の剣撃や俺とクリスの的確な射撃で脚を集中的に狙われていた銀嶺は、ここで初めてバランスを崩して膝をつくようにして転倒した。
この瞬間を無駄にしない為にも全員が全力で銀嶺への攻撃を開始する。ブランシュは左脚に対して刀を縦横無尽に動かして気刃斬りを叩き込み、俺とクリスも再び前進しながら射撃。そして、ランドラットは再度体勢を低くし突撃。だが転倒している時間はほんのわずかだ。すぐに銀嶺は起き上がってしまい、すかさずその場で鼻を振り回す。ランドラットとブランシュはそれぞれガードといなしでこれをやり過ごし、俺とクリスは構わず射撃を続けていた。結果、銀嶺は再び俺達二人を狙って雪玉を噴射する。
慌てて後方へと跳ぶ俺達は何とかこの一撃を回避したが、銀嶺は間髪入れずに接近し鼻を叩きつけてきた。俺は回避をすることが出来たが、クリスの背中にちょっとした木の幹程の太さの鼻が叩きつけられた。「ぐぁ……ッ!」
弾き飛ばされたクリスの体は雪の上を転がった後、そのまま倒れてしまう。痛みと衝撃で気を失い掛けたが、それだけは何とか踏ん張った。だがそれは同時に耐え難い痛みが全身を襲う事を意味している。痛さのあまり動けずにいるクリスに対し銀嶺が再び彼の方へ向き直る。
「まずい……ッ!」
慌てて弓を構えるが視界の隅から、風と粉雪を纏いながらランドラットが突貫する。俺よりもずっと速い速度で接近したランドラットは構えたミレニアムで銀嶺の後脚を突き貫く。予期しない一撃に銀嶺は思わず怯み、ブランシュはその隙をつき倒れているクリスを抱き抱えてその場をすぐさま離脱する。
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781
名前:名無しさん
投稿日:2018-12-14 22:55
ID:dgyMd.Vs
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全く関係ないが、MHWのノベライズでまんまここの人と同名のニコラスが登場してて草
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782
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-17 20:02
ID:gX20EMvk
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足を雪上に滑らせながら急停止するブランシュの腕の中では痛みに顔をしかめるクリスが抱かれている。彼女はふぅと安堵の息を漏らすと、アイテムポーチから回復薬グレートを取り出すとコルクを抜いて───
「……飲みなさい」
「ごぶぅッ!?」クリスの口に無理矢理流し込んだ。
ビンを咥えながらもがき苦しむ彼に対し、ブランシュは容赦なくビンを傾き続ける。しかもご丁寧に鼻を摘んでおり息が出来ず必死になって回復役グレートを飲むクリス。飲み干し終えると、激しく咳き込む。「な、なんばしよっとですかぁッ!?」
当然抗議の声を上げるクリスだったが、そんな彼を抱きかかえるブランシュは意外と元気そうな彼を見て安心したように小さく微笑む。
「あら、意外と平気そうね」
「……あー、一応感謝しておくよ。 ありがとうな」
「それはそうと───重い」怒りはしたものの、自分は助けられた身だと気づくと彼は礼を言う。
ブランシュは容赦なくクリスを放り捨てる。お尻から地面に落ちた彼は打った所を押さえながら立ち上がりブランシュに再び怒鳴り掛かる。
が、ブランシュはどこ吹く風で彼に背を向けて吹けもしない口笛を吹くフリをする始末。正直、現在進行形で狩猟が行われているとは思えない程、何ともいつもの光景となってしまっている。
何はともあれ、二人とも無事だった事に安心し銀嶺の脚目がけ矢を射続ける。ブランシュとクリスはそんな俺を見て、直ぐに銀嶺の元へ向かう。
向かった二人のうち、ブランシュは銀嶺の頭目掛けて刀を叩き込む。迸る炎と鮮血に彩られながら、彼女は雪上を舞う。そしてクリスはペイント瓶を装填し、銀嶺の目掛けて撃ち込む。ペイント弾は見事に銀嶺の右脚に命中し、ペイントの実の独特の匂いが辺りに漂い始める。
二人の行動と並行しながら、俺とランドラットは攻撃を続ける。順調に狩猟は進んでいる。このまま足止めを出来ればよいのだが…* * *
「……むぅ、なんじゃ一体…。」
ズシン、ズシンと震動が体と鼓膜を襲い少女は目を覚ます。体に振り積もった雪を払いつつ周囲を見渡すと、先程より降り続けていた吹雪は少し弱まっており景色を目のあたりにすることは容易い。
「ほぉ、絶景かな、絶景かな! ちょっと怖いが……」
もっとよく見えるようにと王女は背負っていたリュックから双眼鏡を取り出し、その先を見る。
ふと双眼鏡で見つけたのは、武器を構え何かに立ち向かっている四人の影。彼らの装備や武器を見る限り……。「あれは……ハンター!? うおぉぉぉ! 生のハンターを見たのは始めてじゃ!」
双眼鏡を目につけたまま少女、第三王女は歓喜の声を上げていた。
実はこの王女、銀嶺に逢いに行くといって王国を出てから、一度たりともモンスターにもハンターにも、王国で働く人間ですら遭遇していない。
王女のとんでもない程の豪運と狡賢さが為す技なのか、王国から忍び出て街へ降り、行き着けの店から旅の支度を買い、まんまと脱走したのである。
そして道中は危険なモンスターと遭遇しておらず、捜索隊にもハンター達にも見つかることなく、当人は気付いていないが銀嶺の元へ辿り着いたのだ。
そんな彼女の幸運や知恵を持ってしても、一度たりとも本物のハンターに出会ったことは無い。精々、絵や写生でしかその姿を見たことが無いのだ。
故に、絵で見たような装備を着込んでいるハンターを生で見るのはこれが初めてで、王女にとって衝撃的だった。 -
783
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-19 21:26
ID:gX20EMvk
[編集]
きっとわらわの為に爺がクエストを依頼してくれたのだと信じて止まない彼女は、彼らに向けて大きく手を振る。
少しでも解かりやすいようにと声を張り、手を振り続けていく。* * *
「……あの、何か手を振ってる人がいるんですけど?」
高い視力が自慢のクリスが、銀嶺の背中で大きく手を振って存在感をアピールしてくれた王女を目撃する。
それを聞き俺達思わず銀嶺の背中を見て、呆然とそれを見詰めていた。ブランシュなど目を丸くしている様子からして、信じられない、と言っているようだ。「おいおい、どうするんだよあれ…。 王女様目覚めちゃったぞ…」
「これは…今以上に慎重に動かないといけないわね…」
「だな。 とりあえずあの王女様が振り落とされないようにアイツの行動を制限できるように立ち回って…」
「───オラオラァッ!」
「いくか───って、何突撃しに行ってんだあのバカはーッ!?」視界の端、体制を低くして突撃するランドラットが見えクリスは盛大にツッコミを入れていた。
まぁ、彼は元々強いモンスターと戦えればいいという救援とは程遠い理由でついてきているので協力を仰ぐのは無理にも等しいだろう。
兎に角第三王女が目覚めてしまった以上、彼女の救出が最優先となるだろう。となれば、これから俺達がすべき行動は…。~行動を選択してください~
1 第三王女を救出出来る隙を探しつつ慎重に立ち回る
2 クリスに罠を使用してもらう(罠の指定可能)
3 脚を攻撃して転倒を狙う
4 その他 -
784
名前:名無しさん
投稿日:2018-12-19 22:13
ID:xdoQXFsY
[編集]
4.王女様に多少痛い目を見てもらう覚悟で全員特攻
もうこうなったら事故(意図的)でお灸据えちゃいましょ
-
785
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-22 20:09
ID:gX20EMvk
[編集]
ランドラットが突撃してしまった以上、こちらも攻撃に加わるしかないだろう。
……別に第三王女に恨みがあるとか、多少痛い目をみてもらおうとかは思ってない。ないったらない。「貴方にしては珍しい判断ね。 いいわ、乗ってあげるようじゃないの」
「俺としては王族の方々に喧嘩売るような真似したくないんすけどね…。 あーもう、なるようになれってヤツっすね!」
「よし、それじゃあ…突撃!」俺の突撃命令に一斉に銀嶺へと殺到する。正面にいるランドラットと対峙していたため、崖を背にした状態となった銀嶺に対し、右斜めからは俺とブランシュ、そして左斜めからクリスが突っ込む。
複数箇所から攻めて来る敵に対し、一瞬狙いを定めるのを迷う銀嶺。その隙を突いてクリスは走りながら矢を放つ。弾き出された矢は吸い込まれるようにして銀嶺のこめかみに突き刺さる。攻撃を受けた事で振り返る銀嶺。
その隙を突くようにブランシュが斬り掛かる。一撃、二撃と剣撃を入れると反射的に銀嶺は彼女の方へ向き直ると、彼女を踏みつけるために脚をあげる。
大地を揺るがす一撃を、ブランシュは身を捻って流れるような動きで回避する。そして間髪入れずに振り払いの一撃を叩き込む。
回避された事でしつこく追撃しようとした銀嶺の後ろ脚に、ランドラットの鋭い一撃がヒットするも、甲殻の一部を弾き飛ばすのに留まる。もう一撃入れようと構えるランドラットだったが、銀嶺は素早く彼の方へ振り返ると至近距離で駆け出す。「くぉのぉ……ッ!」
回避が間に合わず、体勢が整っていなかった為直撃こそ避けるも勢いに負けて尻餅をついてしまう。雪の上に倒れた彼を見て駆け寄ろうとするが、それを妨害するように銀嶺は反転。こちらに向かって突っ込んで来た。
「邪魔だけはさせませんよッ!」
クリスはすかさず銀嶺の進行方向に向かって閃光玉を投げる。炸裂する光の一撃は銀嶺の視界を奪い、その突撃も止める。
「ふおぉっ!? 目が、目がァッ!?」
銀嶺の上で何やら声が聞こえたが、今は気にすることは出来ない。
動きが止まった銀嶺を見て俺はランドラットの下へ、残るクリスとブランシュはこの隙を突いて攻撃を仕掛ける。 -
786
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-25 19:04
ID:gX20EMvk
[編集]
「大丈夫か、ランドラット?」
ランドラットは倒れた時に打った腰を押さえながら「あぁ、大丈夫だ」と答えてゆっくりと立ち上がる。
「無茶だけはするなよ」と一言告げ、閃光玉を受けて暴れる銀嶺に向かって突撃する。
俺達が合流する頃には銀嶺の視界は回復し、短く天に吠えて視界を取り戻すと、迫り来る俺とランドラットに対して雪玉を発射。これを左右に避けて回避すると、ランドラットを追って視線を動かす銀嶺のこめかみにクリスの放った矢が命中。銀嶺は彼を追うのを諦めて振り返り、クリスに目標を定める。
怒号を上げながら突進して来る銀嶺に対し彼はは無理な攻撃は避けてすぐに回避行動を取る。
横へ走って銀嶺の正面を避けると、銀嶺の背中に向けて麻痺毒が染み込んだ矢を放つ。
背中に受けた矢に再び彼を狙って振り返るが、そこへブランシュが強襲する。「……はぁッ」
両手でしっかりと握り締めた飛竜刀【双紅蓮】での振り下ろしの一撃は振り返った銀嶺の前脚に炎と鮮血を迸らせる。この強烈な一撃には銀嶺も悲鳴を上げて跪く。彼女はすぐさま横への振り抜きの一撃を入れると、銀嶺の左前脚の方へ移動すると、もう一撃叩き込む。
姿勢を正した銀嶺は鬱陶しく斬りつけて来るブランシュを叩き潰そうと鼻を持ち上げるが、彼女はこれを見て逆に銀嶺の懐へと突っ込み、腹部に潜り込んでこれを回避、そのまま腹部に一撃を食らわせ退避する。
銀嶺はすぐに振り返るが、そこへ再びブランシュが強襲。牙目掛けて刀を振るうと、すぐさま左前脚の方へ跳ぶ。
鬱陶しい敵の攻撃に銀嶺は再び彼女を狙って突進を仕掛けるが、ブランシュはこれも鮮やかに回避してみせた。 -
787
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2018-12-28 19:02
ID:sYT/lg0g
[編集]
短いけど投稿
あとで書き足します
─────────────────────自分の攻撃を華麗に避けるブランシュに対し、銀嶺の苛立ちは加速する。そんな彼女に追い打ちを掛けるように、神速の白雪姫は嘲笑う。
「……その程度? 私を倒したければ、本気を出してみなさいよ」
まるで彼女の嘲笑にキレたかのように怒号を上げて襲い掛かる銀嶺。しかしブランシュはこれを鮮やかに回避、不発に終わった事でさらに怒る銀嶺は彼女の姿を探す。
そこへ放たれた矢が次々に命中し、怒号は悲鳴へと変わり同時にランドラットも攻撃を仕掛ける。一撃を入れるには時間が足りないため、前脚に斬り掛かった後、すぐさま深追いはせずに距離を取るとその直後、銀嶺は鼻で辺りを一掃した。
唸り声を上げ、辺りを威嚇する銀嶺に剣士組は距離を取って共に銀嶺を包囲する。
一瞬の睨み合い。まだまだ戦闘は長引く事を想定して身構える。「……あ?」
「……?」が、ランドラットとブランシュが突如として雪が降り続く空を見上げ始めた。
「…? どうした二人共?」
「いや、今何か…」
「声が聞こえた、ような気がしてな…」
「声? そんなもん聞こえなんて…」
「───ぬおぉ!? 一体なんじゃ、何が起こっておるッ!?」第三王女と銀嶺の声が聞こえ、見てみれば天を仰いでいた銀嶺は突如こちらに背を向けて走り出していた。
「逃げるつもりかッ!」
ランドラットが逸早く反応して走るが、時すでに遅し。銀嶺は既に山頂であるエリア8を抜け出していた。突然の事に呆然としたが、すぐに全員を集めた。それぞれ怪我こそないがそれなりに疲労しているのが見て取れた。
「まだ足を引きずる動作をしないって事は、奴は巣には戻らないだろうな」
「そうだな。 あの方向だとエリア6に移動したんでしょうよ」
「……けど、問題はあの王女様よね?」ブランシュはそう言いながら砥石を使って切れ味を回復させている。
そうだ。依然としてあの第三王女は銀嶺のあの山のような背中の上にいる。どうにかして彼女を銀嶺から引き摺り下ろさなければならない。
ともなればここからすべき行動は…。~行動を選択してください~
1 第三王女を救出出来る隙を探しつつ慎重に立ち回る
2 クリスに罠を使用してもらう(罠の指定可能)
3 脚を攻撃して転倒を狙う
4 その他 -
788
名前:名無しさん
投稿日:2018-12-30 13:00
ID:r9G/sj0k
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4.王女様に多少痛い目を見てもらう覚悟で全員特攻(作戦継続)
もうこうなったら毒を食らわば毒皿までやな
それと更新時は何かアナウンスがあるとありがたい -
789
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2019-01-01 20:22
ID:To.mFaL.
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とりあえず全員に王女様に多少痛い目を見てもらう覚悟で全員特攻、つまりは作戦を継続することだけ伝えてエリア6へと向かう。
その途中、ランドラットとブランシュが聴いたという声が気になり、二人に尋ねてみることにした。「あ? あー、なんつーかなぁ甲高いモンスターっー声だったなぁ。 少なくとも俺は聴いたことがねぇ」
「そうか。 ブランシュはどうなんだ?」
「…そうね、何処かで聴いたことがある声ではあったわね。 思い出せはしないけど」
「そうなんですかい?」
「じゃあ思い出せたらまた教えてくれないか?」
「善処するわ」
「そんな事気にしてないでとっとと行こうぜ? せっかくの獲物が逃げちまうぞ」意気揚々とエリア7を目指すランドラットの背中を一瞥し、彼の後を追って歩き出す。
そして一行は、エリア7へと達する。* * *
吹雪は晴れており美しい星空が見渡せる。ベルナ村でも星空を眺めることができるが、こうした雪山からみる満天の星空もまた風情がある。
だが、決してここに星を鑑賞しにやって来たのではない。その視線は全員、ある一点に注がれている。
暗闇に支配された大地にあって、なおその存在感が霞む事はない圧倒的な生命力。生命の息吹が遠く離れたここにまでヒシヒシと伝わって来る。
向こうもこちらに気づいたのか、ゆっくりと振り返る。その瞬間、敵意に満ちた瞳が闇の中で不気味に光り輝いた。「行くぞッ!」
先手必勝。俺の掛け声と同時に一斉に行動を開始した。剣士組がランドラットを中心に左側にブランシュが続き、その後方からガンナーの俺とクリスが走りながら瓶を装填する。俺が装填したのは強撃ビンだ。
銀嶺低い唸り声を上げると、迫る雑魚を撃破するように雪を蹴って地面を駆け出した。
必殺の突進で迫る銀嶺に対し、ランドラットと俺は右へ、ブランシュとクリスは左へ転進して中央突破で迫る銀嶺の突進を受け流す。 -
790
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2019-01-04 20:03
ID:gX20EMvk
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左右へ分散した俺達に対し、銀嶺はその間を突き抜けるように突き抜ける。その動きは昼間のそれと何ら変わりない勇ましいもの。その姿に内心愕然としていた。
こちらはかなり疲労を蓄積しているというのに、奴にはそんな素振りがまるで無い。相当なダメージを蓄積させているはずなのに、銀嶺の突進にはそれを感じさせる衰えはまるでない。
───自分達の攻撃は、本当に効いているのだろうか。そんな疑問と不安が胸を支配しそうになるが、そんな自分のネガティブ思考を無理やり封じる。
チームで狩りをする以上、自分一人だけが諦めてはいけない。
雄叫びを上げて反転、銀嶺を追い掛けるランドラットも、無言のまま同じく反転して砂を蹴って地面スレスレを滑空するかのように突貫するブランシュも、走りながらすでにペイント瓶を当てて本格的な射撃を開始しているクリスも。
皆、その表情には疲労の色はあれど絶望の色には染まっていない。
皆、まだまだ諦めてはいないのだ。だから、まだ諦めるには早過ぎる。
一度は絶望に支配されそうになった心に、もう一度闘志の炎を燃え滾らせる。すると、次第に気温が下がってきて肌寒くなってきた外気を感じさせない程に体が温まる。そして三人に遅れながらも、銀嶺を追い掛け走り出した。雪を巻き上げながら停止する銀嶺、その脚を狙って矢を放つ俺とクリス。
夜の暗さで昼間に比べて正確な射撃が難しくなり何発か俺は外してしまうが、そんな事をまるで感じさせない程クリスは正確に狙い撃つ。彼の瞳には夜の闇など何の弊害もないのか、そう思わずにはいられない技量だ。
連続して片脚を狙い撃ちながら横へ走って未だ接近中の剣士組から銀嶺の気を逸らす。
弦を引く人差し指は次第に疲労と寒さで感覚がなくなってくる。だけど、それでも一定のリズムで繰り返される伸縮運動はやめない。この一回一回が、確実に銀嶺のダメージとなり、仲間を救う一発には違いないのだから。
低い唸り声を上げ、銀嶺の瞳がこちらを捉える。その瞬間、俺は思った通りの状況に喜ぶと同時に確実な敵意を向ける銀嶺の瞳に恐怖する。二種類の震えが、弦に掛けられた指を震わせる。だが、こちらが生み出した隙はしっかりと生かされた。
横へ移動したこちらの方へ振り返った為に余計に旋回するハメになった銀嶺。そのわずかな角度は、同時にわずかな隙の延長と同義。時間にすれば本当に一瞬だ。だが、その一瞬があれば彼女は突き抜ける。
大地を蹴り上げ、白雪姫は天を舞う。
銀嶺の視界に、一瞬だけ影が入った。気にも留めないような一瞬の出来事。だが、それが彼女の残したわずかな軌跡。「……がら空きね」
蔑むようにつぶやくと、ブランシュは銀嶺の頭上から襲い掛かる。引き抜いた飛竜刀【双紅蓮】は月明かりを受けて妖艶に光り輝く。その刃先は、吸い込まれるようにして銀嶺の頭殻を斬り裂いた。
突然頭殻を斬り裂かれた銀嶺は悲鳴を上げて仰け反った。その間に彼女は地面に着地すると、がら空きとなった脚を狙って刀を翻す。 -
791
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2019-01-07 19:56
ID:gX20EMvk
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あっという間に襲い掛かったブランシュに対して、ランドラットは少々遅れるも彼女が生み出した隙を突いて銀嶺に襲い掛かる。
「うおおおおおぉぉぉぉぉッ!」
勇ましい雄叫びを上げながら突撃、ミレニアムが脚の甲殻を削るように表面を抉る。わずかに飛び出す血が、確実なダメージの証拠だ。
甲殻の表面を削る嫌な音を無視しながら連続で突きその横を駆け抜けすぐさま反転、銀嶺に対して槍を連続で突き出す。
さらにもう一撃入れたい所だが欲張ってはいけないと、彼の勘が告げている。自分の勘を信じて彼が盾を構えると同時に、銀嶺は体を旋回させて空気を殴りながら長大な鼻が振り回す。
銀嶺を中心に二方向から迫る二人を援護するようにこちらも唸りをあげる。次々に放たれる矢は銀嶺の纏い直した冷たき氷の甲冑に突き刺さる。
大多数はこうして硬い甲殻に阻まれてしまう。しかし例え三発に一発だとしても、確実に肉を抉る矢はその数だけダメージとなって蓄積される。
こちらからの攻撃に意識を逸らされそうになるも、銀嶺は二方向から迫り来る敵に対して鼻で薙ぎ払うように旋回攻撃。迫っていた二人は振るわれる凶悪な鼻を前に接近を中断せざるを得ない。
だが、侵入を阻んだのは一瞬。振るわれる鼻はランドラットの前を掠めた後、銀嶺の鼻が反対側を薙ぎ払っている間に再び突進を仕掛ける。一気に距離を縮め、軸となっている脚を狙ってミレニアムを突き立てる。
一瞬遅れてブランシュも同時に斬り込む。ブランシュは戦風となって暴れ狂い、ランドラットは力強い一撃で銀嶺の鎧を砕く。 -
792
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2019-01-10 20:28
ID:gX20EMvk
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仕事や私生活で忙しくなかなか更新できなくてすみません…
なるべく更新スピードを上げられるよう頑張ってみます
─────────────────────群がる二人のうち、最も鬱陶しいブランシュを狙って銀嶺は上体を持ち上げるが、彼女はそれを簡単に回避し、銀嶺は何もない空間を巨体で押しつぶしていた。
再び二方向へと散る二人に対し、振り返った銀嶺は今度はランドラットを狙って突進を仕掛ける。彼はその一撃に対し盾を構えガードしてやり過ごすが、大きく後退を余儀なくされた。
ランドラットを吹き飛ばし、銀嶺は振り返ると再びブランシュに向かって突進を仕掛けるが、当然彼女はそれを簡単に避ける。その間、俺とクリスは暴れ回る銀嶺に確実な射撃を行い続ける。
続けて矢を番えた時銀嶺の唸る怒号に、思わず耳を塞いでその場に膝を突いてしまった。激しい頭痛すら感じる膨大な爆音の中、必死になって前方を見る。「うおおぉぉッ!? 耳があああぁぁッ!?」
耳を塞いで叫ぶ第三王女。至近距離にて発せられるあまりの騒音に思わず体勢を崩してしまい、銀嶺の背中から落下する。
無理やり体を動かそうとするが、本能に直接恐怖を呼び起こすその声に立ち竦み、そのすさまじい音量に耳を塞ぎながら体が動かなくなる。理性では動かなくてはならないのに、体が言う事を聞いてくれない。
必死に目だけを開いていると、驚くべき光景を見た。「よし、こっち来い!」
いつの間にか俺の隣にいなくなっていたクリスが両腕を広げ、第三王女が落下する地点に待機していた。
そして両手で軽々と受け止め、銀嶺から距離を取るために気絶している王女を脇に抱えて走り出す。「んじゃあ、直ぐに戻るんであとは任せましたよ! お零れは頂きたいんでねッ!」
そしてモドリ玉を取り出してそう叫んだあと地面に叩きつけ、王女を連れその場から退避した。
緑の煙に消えるクリスを横目に、咆哮から身体が解放され銀嶺を見据える。
紆余曲折あったが第三王女の救出が完了した。あとはこの巨山を打ち倒すだけだ。~行動を選択してください~
1 隙を探しつつ慎重に立ち回る
2 脚を攻撃して転倒を狙う
3 近接組の援護をしつつ罠を設置
4 その他 -
793
名前:名無しさん
投稿日:2019-01-11 12:58
ID:pJBQclzA
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2かな。これまで強引に突撃してきてある程度ダメージ蓄積してるだろうし転倒狙って畳み掛けちまえい
ちと不粋な奴がいるようだけど、まあ程々に頑張りや〜。あたしゃ応援してるよ。
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794
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2019-01-12 21:41
ID:4v/bJPFE
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銀嶺がこちらを見据えた隙を狙い、横からブランシュが突進。構えた飛竜刀【双紅蓮】を銀嶺の前脚に叩き込む。
迸る血の雨の中、ブランシュはガッと右足で体の勢いを止めると、そこで体を回転させながら横一線に強力な一撃を叩き込む。刃が銀嶺の甲殻の内側にある硬い筋肉に刺さって血が噴き出した。が、「……ッ!? ぬ、抜けない…ッ!」
銀嶺の強靭な筋肉に刺さった太刀はガッチリと筋肉に包まれてビクともしないようで、ブランシュ必死になって抜こうとするが、銀嶺が動き回って集中できない。
異物をぶち入れた敵を吹き飛ばそうと銀嶺は前脚を上げる。それをみて彼女は反射的に後退した。もちろん、剣を見捨てて。
「何とかして取らないと…ッ!」
「任せろッ!」ブランシュが戦力から外れたと知るやいなや、ランドラットは銀嶺に突貫する。銀嶺も武器を失った彼女を無視して突っ込んで来るランドラットに向き直る。
だが、そうはさせない。彼を援護する為に脚の甲殻目掛け矢を放つ。
甲殻の隙間の肉に突き刺さり、銀嶺が激痛に悶えているその隙にランドラットは槍を突き立てるが刃が深く刺さらずにわずかな血しか出ず、傷も浅い。
思わず舌打ちを漏らすランドラット。だが、は無防備なブランシュから注意を逸らすために槍を何度も突き立て銀嶺に肉薄する。「……ごめんなさい。 迷惑をかけるわね…」
「気にするな。 ある程度ダメージ蓄積してるだろうしそろそろ転倒するころだろう。 奴が転倒したら俺とランドラットで攻撃するからその間にブランシュは太刀を抜いてみろ。 でも無理はするなよ? 無理とわかったらすぐに離れるんだ、わかったな?」
「えぇ、分かったわ」銀嶺から離脱してきた彼女にそう声をかけ、銀嶺の叩きつけてきた鼻を防ぐランドラットに援護をするように続けて矢を放つ。
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795
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2019-01-14 23:07
ID:W2M/gDW.
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彼は常に暴れ回る銀嶺に肉薄して、文字通りその身を削るような危険な戦いを強いられる。自分の役目は、そんな彼の負担を少しでも軽くし、ブランシュの太刀を引き抜く隙をつくる事。銀嶺の片脚に矢を当てて、気を紛らわせる。
それが自分のこのチームでの役目───クリスがいない以上、自分にしかできない役目だ。「───オラァッ!」
ランドラットが放った鋭い一撃に、バランスを崩した銀嶺はその場に横倒しに倒れた。これまでの四人の攻撃で脚に積み重なっていたダメージが、ようやくその効果を発揮したのだ。
「急げブランシュッ!」
そう叫び銀嶺の体に向かって矢を撃ち込み、ランドラットは銀嶺の頭に向かって連続してミレニアムを叩き込む。
ランドラットの渾身の一撃は銀嶺の頭殻がに深い傷を入れ、彼はそれに心の中でガッツポーズしてさらに槍を突き刺していく。
一方のブランシュは銀嶺の前脚に突き刺さった飛竜刀【双紅蓮】の柄を掴むと、全力で引っ張る。だが、やはり動かない。
ならばと彼女は腰から剥ぎ取りナイフを取り出し構えると、飛竜刀【双紅蓮】が刺さった傷口に突き刺した。そしてそのまま力を込めて切り裂く。ドボドボと血が流れ出すが構いやしない。必死に傷口をえぐり、広げていく。そして、「……これでッ!」
彼女は思いっ切り傷口にナイフを刺し込むと、太刀の柄を握って思いっ切り引っ張った。
「ブランシュッ! もう限界だッ!」
そうブランシュに叫ぶが、変わらず彼女は全力で剣を引き抜いている。
と、ついに銀嶺が動きだした。だがその瞬間、今まで引き締められていた筋肉が緩み、剣がついに抜けた。
ブランシュは勢い余って後ろに倒れそうになったが何とか堪えた。だがその手にはしっかりと飛竜刀【双紅蓮】が握られている。 -
796
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2019-01-16 23:14
ID:W2M/gDW.
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銀嶺は散開した敵を睨むと、砕けた頭殻を鼻で触れると怒号を発した。
ランドラットはチャンスとみて突っ込み、ブランシュもその後に続く。だが、銀嶺はその動きに大きく後退すると四足で地面をしっかりと掴み、鼻から冷気を噴出して来たのを見てランドラットは眼を大きく見開いて急停止するが、ブランシュは間に合わずブレスに直撃。みるみるうちに身体を氷が覆っていく。「…くっ! 身体が…ッ!」
「ブランシュ! 動くなよッ!」ランドラットが銀嶺の気を引いているあいだに、すぐさま矢を一本番え彼女の身体に当たらないように狙いを定め矢を放つ。
彼女を覆う氷塊に突き刺さると、火属性の弓であった灼炎のブレイザーのお陰か矢が刺さったところから溶けていき、ある程度溶けたところでブランシュは自らの力で氷を割っていた。
彼女は軽く会釈すると飛竜刀【双紅蓮】を構え再度突撃する。
さて、剣士組が奮戦を見せている間、ガンナーであるこちらも目立たないながらも確実な攻撃の積み重ねで仲間を援護しなければならない。
そう思い距離をとりつつ矢を番え───ようとしたとき、不意に叫び声が聴こえたような気がした。
火竜や迅竜のようなものではなく、まるで、そう、かの骸龍や天彗龍のように心から恐怖を抱かずにはいられないもののような…。「うぉッ!? なんだなんだッ!?」
「急に暴れだしてたりして、一体如何したってのよ…!」二人の声と地響きに顔を向けてみれば、そこには鼻を振り回し暴れ回る銀嶺の姿があった。しかし鼻を乱雑に振りながら走るその姿は、まるで癇癪を起こした子供のようもみえる。そして───声しか聴こえない正体不明の何かに怯えているようにも。
……気になる事は山積みだが攻撃の手を休める暇はないだろう。
だが、今の銀嶺の状態は錯乱しているといってもよい。今まで以上に気をつけなければ…。~行動を選択してください~
1 隙を探しつつ慎重に立ち回る
2 脚を攻撃して転倒を狙う
3 近接組の援護をしつつ罠を設置
4 その他 -
797
名前:名無しさん
投稿日:2019-01-18 16:43
ID:SE4//Y.I
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4で、自分の感覚を信じて周囲の警戒へ移行。攻勢に出るのは少なくともクリスが合流するまで待つ。
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798
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2019-01-19 22:59
ID:mtgEUFI2
[編集]
「…二人共! こっちに来てくれ!」
あたり構わず暴れ回る銀嶺に近付けず、たたらを踏む近接組を呼び出し、先程二人が聴いたと思われる声が聴こえたことを伝えた。
「その声と今の奴の状況、少なくとも関係はないと思うんだ」
「……あなたのその感覚を信じるなら今は周囲の警戒を優先した方がよさそうね…。 攻勢に出るのはクリスが合流してから、分かったわね? ロンドベッド」
「ランドラットだ! …ッチ、分かったよ」作戦は現状では最も現実的なものであり、当然反対意見は出ない。銀嶺より強烈な『何か』が居る可能性がある以上、警戒をするには越したことはないだろう。
尚も暴れ回る銀嶺を見据えた時、「…また雪?」
再度雪が振り始めたことに気付いた。これまで晴れていたのだが、山の天気は変わりやすいとはよく言ったものだ。見上げる空にはいつの間にか鈍色の雲が空全体を覆っている。
そして、瞬く間に雪の勢いは増していき吹雪へと変わっていった。
吹雪となれば、視界は著しく悪化してしまう。そうなれば銀嶺といえど、距離が離れてしまうだけでその姿を見失いかねない。遠くから雪玉を放たれればこちらが気づく頃には回避が間に合わない距離になっている可能性もある。「何処だ…!」
頼りになる耳も吹雪の音のせいでよくわからず、辺りを見回すようにその場で回りながら目を凝らす───その前に突然こちらに飛んでくる雪玉が見えたのは、まさにその時だった。
-
799
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2019-01-22 22:19
ID:mtgEUFI2
[編集]
慌てて回避しようとしたが、気づくのが遅過ぎた雪玉をまともに正面から受けてしまい、そのまま弾き飛ばされ再び雪の上に倒れる。
同じように目を凝らしていた二人は目の前で起きた光景に心臓が止まりそうになりがらも、こちらに駆け寄りランドラットが俺を抱き起こしてくれていた。「おい、大丈夫か?」
「な、何とか……」そう言いながら起き上がって平気を装っているが、ヘルムの下では体に走る痛みに顔を苦悶に歪めている。心配掛けまいとしていたが、ブランシュにはお見通しなだったようで
「……一度撤退すべきね」
こちらの様子と天気を見てこれ以上の戦闘は危険と判断し、撤退すべきと主張するブランシュに対して「大丈夫だから」と言いながらアイテムポーチから秘薬を取り出すと、口の中に放り込んだ。
心配そうに見詰める彼女を前に改めて「大丈夫だから。 このまま続行しよう」と力強く言うと、ブランシュは短くため息を零し撤退案を引っ込める。「じゃあこのまま続けるけれど、無理だけはしないでよ?」
「わかってる」体勢を整え周囲の警戒を続けると、吹雪の中薄らと逃げるようにしてエリア移動する銀嶺の姿がみえた。あの先は確かエリア7だったはずだ。
二人に銀嶺がエリア移動したことを伝え、風上に向け顔を守るようにしながら雪を踏み締めて歩みを続けた。 -
800
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2019-01-25 20:07
ID:mtgEUFI2
[編集]
「…だーッ! 帰ってきたらいきなり遭遇とか巫山戯んなってーのッ!」
エリア7へとたどり着くと、銀嶺の突進を避け振り向きざまに側頭部に向けて、叫びながら矢を放つクリスの姿が薄らとみえた。
彼の姿を捉えるやいなや、ランドラットが「っしゃあ! いくぜいくぜいくぜぇ!」と叫びながらミレニアムを構え突撃し、その後に続くようにしてブランシュも駆けていく。
銀嶺に突撃した近接組の二人と入れ替わるようにしてクリスはこちらに駆け寄ってくる。第三王女はどうしたのか、と聞くと「王女様なら落下したショックでずっとベースキャンプのベッドで眠ったままっすよ。 救助隊もこの吹雪で立ち往生してるらしいんで、アイルー達に吹雪が止むまで火をたいて暖かくしといてやれっていっておきましたよ」
銀嶺の背中から落下した時はヒヤリとしたものだが、無事そうで一安心といったところか。
…別に痛い目を見ればよかったのにとは思っていない。ないったらない。「…で、なんか銀嶺の気が立ってるような気がするんすけど…。 なんかあったんですか?」
辺りに雪玉を連射し始めた銀嶺の姿を見ながら、話を切り出してきたクリスに二人が聞いたという声を聞いた事。そしてその声が聞こえたあと銀嶺の様子がおかしくなったことを伝えると、彼は親指を顎にあて考えるような仕草をしていた。
「…どうかしたのか?」
「…いや、ここに来る途中何かを見たような気がするんすよね」
「何か、だって?」
「吹雪であまり見えなかったんすけど、こう、黒い影が見えましてね。 それが何か理解する前にどっかに飛んでいっていきましたよ」やはり今の雪山には何かがいるのか?二つ名個体である銀嶺を凌ぐ何かが…。
「まぁそれは兎も角、奴さん倒しにいきましょうや。 あいつらも援護を欲しがってるでしょうし」
そう彼に促されるままに銀嶺を見れば、ブランシュ目掛け突進を仕掛けるが難なく避けられ、勢いそのままにして岩壁に激突。止まった銀嶺に向かって近接組の二人が殺到する。
二人の援護をするように弓を展開させながら、クリスが見たという黒い影についてかんがえていた。
飛んでいったという証言からモンスターなのは確実なのだろうが願わくば、それが乱入をしてこないことを祈るしかない -
801
名前:名無しさん
投稿日:2019-01-25 21:00
ID:IAReOkBw
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どうせクシャ乱入するんだろうな、それでまた長引くんだろうな
-
802
名前:王女は雪山へいった@時雨
投稿日:2019-01-28 18:50
ID:mtgEUFI2
[編集]
岩壁に激突した衝撃で目が覚めたのか、群がる敵を一掃しようと銀嶺は突進で蹴散らすと共に体勢を立て直す為に距離を開ける。こちらが追い掛けると、それを読んでいたか振り向きつつ吸い込みを行っていた。
急いで散開するが、それを待たずに吸い寄せられた敵に対し右脚を振りあげる。狙われたのはブランシュだ。
反射的にいなしをするも、重量のある銀嶺の踏みつけには柔らかい雪上の上という事もあって耐え切れず、押し倒されてしまう。
倒れたまま視線を上げると銀嶺が血走った目で自分を見詰めている事に気づき、その視線に背筋が凍り付くような感覚に陥る。
彼女を助けようと慌てて駆け寄るこちらに対し、近寄らせないといっているのか銀嶺は鼻を持ち上げ振り回す。そして「があぁ……ッ!?」
逃げられない状況で至近距離での直撃を受けたブランシュ。簡単に体を吹き飛ばすような強力な一撃を防げられない状況で真正面から受け、体が潰されるかのような衝撃に、声も出す事もできず激痛に晒され、彼女は一瞬の浮遊の後雪の上に叩きつけられた。
「…ッちィ、この野郎!」
舌打ちを鳴らし突撃するランドラットだがそれを遮るように銀嶺は彼に迫る。
逃げられず、盾でガードするも、まるで殴られたかのような衝撃と共に彼の体は吹き飛ばされ、地面の上に倒れる。直撃こそ避けたもののダメージを負った事でフラフラと立ち上がったランドラットに対し、銀嶺は容赦なく雪玉を噴射する。
背後からの一撃に避けられなかったランドラットはその直撃を受け、雪の上に正面から倒れ込んだ。
剣士組が壊滅的被害を受けたのを見て、すかさず俺は生命の粉塵をばら撒く。クリスはすぐさま銀嶺の正面へと走ると、こちらに向かって振り返る銀嶺目掛けて閃光玉を投げた。幸い、この一撃は見事に炸裂し銀嶺は視界を封じられる。「無事か、皆ッ!?」
辺りを確認すれば、起き上がったランドラットは回復薬グレートを飲みながら頷き、そしてブランシュもフラフラと起き上がるとアイテムポーチから秘薬を取り出して口に放り込む。
-
803
名前:名無しさん
投稿日:2019-01-30 01:03
ID:lqrMmowM
[編集]
だんだんドリー○スみたいな進行ペースになってきてる…
ちょいちょい中傷コメとかあるしやっぱ相当モチベ下がってるんだろうか -
804
名前:名無しさん
投稿日:2019-01-30 14:51
ID:h.TySBpU
[編集]
進行ペースは最初からこんな感じでしょ
今に始まった事じゃないけど折角の選択肢も選ぶ意味あるんだかないんだか分んない物ばっかだしドンドン反応なくなってるしモチベ落ちてるのは読み側もじゃね -
805
名前:名無しさん
投稿日:2019-01-30 18:06
ID:l/sYox52
[編集]
ペース落ちてるのは仕事とかあるんだろうがここまで落ちるとなぁ…
どうしても忙しいんならシナリオとり消すか、引き継いでもらうかした方がいいかもな
援護するつもりはないが、読み手である俺らは「ここまで引っ張っといて終わらせられないのかよ」とかのレスは送らないでやれよ? -
806
名前:時雨
投稿日:2019-01-31 20:10
ID:mtgEUFI2
[編集]
仕事の都合状、続けるのが難しくなってしまいました…
長々と枠取ってたくせに終わらせることが出来ず申し訳無く思っております…
本当に申し訳ない… -
807
名前:名無しさん
投稿日:2019-01-31 21:39
ID:r9G/sj0k
[編集]
ドンマイ!
-
808
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-01 07:36
ID:MOuudj5U
[編集]
更新楽しみでした
残念です -
809
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-01 18:11
ID:ms8xBKrs
[編集]
うーん感想というには厳しいけど戦闘が長いわりに代わり映えしなくて退屈だったなぁ
王女様もあんまり存在感なかったし
でも無かった事にするならするで原作レ〇プにならなくて良かったのかもしれない(王女様はゲーム中では見た目は分からない) -
810
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-02 14:15
ID:uEEJDN/Q
[編集]
これゲームブック風やったから需要あったんやろか?
普通に読み物としてモンハン題材の話書いたら需要ないんかな -
811
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-02 14:47
ID:D6Mr1yTY
[編集]
次のシナリオ始めにくいこの空気
メンタル強めのどなたかお願いします -
812
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-02 14:48
ID:50Nfa1UE
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書き手からも読み手からも散々プロ扱いされてる兎氏でも単純な読み物としてってなると厳しいんじゃない?
単に練り込まれた本格的なリレー小説に需要があるんだとしたらハードリアルの方が延びてただろうし -
813
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-02 15:09
ID:jZ20teGo
[編集]
かと言って参加型で進行するほど読者いるんかいね今
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814
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-02 16:05
ID:ppizYosU
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私の目がおかしいって訳じゃ無いのなら、少なくとも私の目には上のレスに約10人分のIDが見える。
ルール的にはこの中の誰がやってもなんら問題は無い。とはいえそんな気軽にやろうという気にはなれないんでしょうが。私くらい厚顔無恥になれればいいのだけれど……
(追記)
>>810単純に読み物として面白く出来るのなら……pixivやハーメルンにでも行ってろってことです(追々記)
>>819迷ったら、書いてみろ!
モンハン題材にするなら独自解釈独自設定は当たり前、寧ろそうでもしなければ話が成り立たないし……正直文句があるならカプコンに言えって話ですよ。 -
815
名前:暇
投稿日:2019-02-02 16:45
ID:Rmcp7oJU
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お、次のシナリオやる宣言か?
俺もまだまだやってみたい没ネタあるんだけどなー俺もなー所でそろそろ次スレどうするか考えなきゃいかん気がするんですがいるかな?いらんよね?
残り200レスきって多くても5シナリオくらいだろうけど。あ、そうだ(追記)
単純な読み物としての需要となると深く正確でかつ独自の世界観への理解がないと厳しいと思います。(時代物でも評価点の大きな一つになってるんだって)
昔どっかでチラ見した気がする(曖昧)支給品作る仕事してる冴えない少年がハンターを裏から支える日常を描いたお話とか面白かったけどそのレベルじゃないとやっぱキツイのかなって。 -
816
名前:兎
投稿日:2019-02-02 17:00
ID:r2AQHDk2
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このスレで畳むならどういう方向で〆るか考えないとなぁ、今からカマキリやお馬まではどうやっても詰め込めないだろうし。
そして正直どうしようなこれ、なかったことにして次シナリオ投下するか、何とかしてこのシナリオ終わらせるか... -
817
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-02 17:06
ID:fd9DqENk
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小説っていうか書き物ってさ、読んでる側はあんま実感ないけど書き手側は凄く大変なのよね。例えば3000字。この3000字は読み手側は5、6分で消費する。でも書き手側はこの3000字を30分から1時間、下手すれば2時間も掛けて書くんだよね。
時雨氏は本当によく頑張った。仕事も忙しいのに暇な時間を見つけて書いてくれた。これは尊敬に値することだと心から思う。 -
818
名前:暇
投稿日:2019-02-02 17:20
ID:Rmcp7oJU
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なんだ皆決めあぐねてるなら俺が(進行役の顔を)立たせてやるか、しょうがねぇな(悟空)
適当に引き継いで次の選択肢で一旦終わらせるから大丈夫だって安心しろよ~
じゃあちょっと待ってね -
819
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-02 17:46
ID:jZ20teGo
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>>815
ワイの中で考えてる獰猛化やオストガロア、バルファルクの関連性を獰猛化調査をしてた筆頭チームを使って保管しようと思ってるんやけど、各々見解あるやろしやぱ反発買うんかなぁ -
820
名前:暇
投稿日:2019-02-02 20:20
ID:Rmcp7oJU
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>>819
(獰猛化は極度の興奮状態って意外に説明ないんだし様々な原因の一つとして色々考えてくれて)ええんやで銀領ガムートの思わぬ反撃から這う這うの体で何とか立て直す俺たちであったが、トラブルは続くものと言うのが世の相場。
このまま流れを引き寄せる、とは行かなかった。
突然の闖入者のせいで…!「はぁーっはっはっは!追い詰めたぞ銀領よ!」
「城中の兵どもをも出し抜くわらわの潜入術があれば、キャンプからここまで戻ってくる程度は造作もないことよ!」その場にいた全員が振り向く。
雪山の冷たく張り詰めた空気に響く陽気な高笑い…その主!
わがまま第三王女、まさかのご帰還である。
しかもキャンプから勝手に持ち出したのか、手には一振りの剥ぎ取りナイフまで握られている。「世にも稀なる銀領ガムート、その噂を聞いた時から心に決めておった事がある…」
「わらわは!そなたの毛で!新しい耳当てを作るのじゃ!兄上直伝の剣捌きを見よー!てやーーー!」そのままナイフを高く振りかざしながらトコトコと突撃する王女。
流石に無茶だ。
半ば呆れながら仲間たちに目配せして一度戦闘を中断し、王女を再確保するべく散会し取り囲む陣形を取ろうと各々が動き出した…その時。
降り始めていた雪が突然横なぎの吹雪に変わった。
目、鼻、口、耳。
顔じゅうの器官に轟音と冷気と強風が叩きつけられ、一瞬五感が麻痺する。
そんな中で確かに俺たちは聞いたのだ。ゴゴゴゴゴ、と
山頂から、低く何かが揺れる音を。
-
821
名前:暇
投稿日:2019-02-02 20:23
ID:Rmcp7oJU
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容赦なく兜に叩きつけてくる雪と、雪山用装備を作っていなかった自分を恨めしく思いながらも懸命に目を細め、山の頂に目を向ける。
そこに見えたのは、頂を中心に渦巻く吹雪と、山から滑り落ちてくる白い煙か波のような…なんだあれ?「思い…だした…!」
道中で見つけた錆びた鉄片を取り出しながらブランシュが呟く。
「あなたも見た事ないかしら?色味が違ってたから今まで思い当たらなかったけど…これ鋼龍の甲殻よ…」
…鋼龍クシャルダオラ。またの名を風翔龍。
鋼の外皮と気象さえ一変させる風の力を秘めた古龍。
その痕跡がここにあるということは…。「ええ、この雪山は古巣って所なのでしょうね。全身が錆びて脱皮の時期を迎えた、鋼龍クシャルダオラの…ね」
錆びた鉄片のような甲殻。雪の中空を飛んで消えていった黒い影。
それから今の状況から察するに、山頂で渦巻く吹雪の正体こそ鋼龍クシャルダオラなのだろう。
そして脱皮の時期にはとりわけ気性が荒くなり、目に映る一切をその能力で排除しようとすると言うクシャルダオラの膝元で、世界最強峰たる銀領ガムートと歩く人間災厄と言っても過言ではないわがまま第三女王を巻き込んで大立ち回りをしていたのだ。そうなれば、かの古龍はその風の力で何をするだろうか?
もしも俺がかの古龍の立場だったら…
そこに考えが至った時、叩きつける吹雪のせいではない何かで、ゾっと背筋が冷えた。「雪崩じゃねーか!」
ランドラットが叫んだ。
そう…かの古龍は自らの古巣を守るために、持てる風の力をありったけ開放して雪崩を起こしたのだ。
山頂から落ちてくる白い煙の波は、つまるところ大質量の雪の塊だったのだ!
巻き込まれたら3乙どころじゃあすまない…!何とか逃れる術はないか!?周囲を見渡す!
この場にいるのは俺、ブランシュ、ランドラット、クリス、そして第三王女の「五人」。それから閃光玉で目を回している銀領ガムート。
地形は…ここは地図出いうところのエリア7、山頂に隣接しており周囲には小さな段差があるきりで遮蔽物もない。
ただし、エリア全体でみれば山頂に対してくの字に曲がった地形をしており、エリア南部にはキャンプ跡もあり遮蔽を取ることが出来るかもしれない。
他には東に同じく山頂に隣接するエリア6へと続く道があり、南には崖を隔てて麓の草原地帯へと続くエリア2へ出る。
エリア6から洞窟内へ逃れたり、エリア2の崖を飛び下り身を寄せる事が出来れば雪崩をやり過ごすことも可能かもしれない。
ただし、これらは全て雪崩に追いつかれずに走る事が出来ればの話だ。
道具は…ちょっと漁ってみないと分からん!この状況で雪崩から助かるために取るべき行動は!?
1、エリア7南部のキャンプ跡まで走る
2、東へ隣接するエリア6から洞窟内エリア5へ逃れる
3、南へ走り続けエリア2の崖へ身を隠す
4、何か道具を使う
5、その他(お好きな行動) -
822
名前:暇@王女は雪山へ行った
投稿日:2019-02-02 20:33
ID:Rmcp7oJU
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名前抜けてた。これでいいかな?
前2レスは各自脳内補完でお願いします。 -
823
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-03 10:20
ID:vCCL0yDA
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おっ更新来てたのか。暇氏GJです👍
そしたら選択肢は4+5の複合で
「ポーチの中の『強走薬グレ~ト~!(cv:大山のぶ代)』を回し飲みした上で、全員で銀嶺に騎乗してしがみつく」
というのはどうでしょうか?
どうしても王女の存在がネックになってくるし、全員を生き残らせるにはこれしかないかな、と銀嶺の二つ名は伊達じゃない!…のを切に祈ります(他力本願)
-
824
名前:暇@王女は雪山へ行った
投稿日:2019-02-03 21:32
ID:Rmcp7oJU
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素晴らしい!これはおまけせなアカンやろなぁ。
クシャルダオラが引き起こした雪崩が怒涛の勢いでこちらに迫る。
古龍、存在するだけで自然災害に匹敵しうる生物。この現状はその意味を今更になって嫌になる程に理解させてくれる。
逃れる術は…!
遮蔽を取れる地形までは走って間に合う距離じゃない。戻り玉も間に合う保証はないし人数分の個数もない。
後は各種ドリンクと罠爆弾、あとは弾薬くらいしか持ってないし。
ああ、もう詰みだ…!散々に知恵を絞ったつもりだが一度本領を発揮した古龍の力…言い換えるならば自然の力に、個人が立ち向かえる訳がない。
逃れる術は、ない。不意に止む風。
頂を取り巻く吹雪が解かれ、翼を広げたクシャルダオラが下界を見下ろしている。
轟音と共に滑り落ちてくる巨大な雪の波…大自然の力の一端を目の当たりにした俺は、ただ目を奪われ立ち尽くすしか出来ないでいた。
美しいとさえ思った。
しかして、その幻想的な諦めと感傷を打ち破ったのは、突然の…「バぅァぁああああああああああアオオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおア!!!!!!!」
咆哮。ズぅ……… ぅうン…!
地鳴り。「あなたの旦那!何ボーっとしてんですかい!」
「早くこっちへ走って!銀領が視力を取り戻したわ!今攻撃を受けたら逃げられない!」
「サッサと来い馬鹿野郎!あんな大雪崩、砦でも受けきれねぇぞ!」
「はわわ…わらわはわわわわ」
そして仲間たちの声。一瞬思考が平静を取り戻し、仲間たちと銀領と雪崩を見比べる。
そして気がついた。
迫る雪崩に目掛けて頭を地面にめり込むほどに打ち下ろし、渾身の大突進を繰り出すべくその巨体と四肢に力を溜める銀領ガムート。
白銀の連峰の体現者たるこのモンスターもまた、言い換えれば自然の象徴だろう。
ならば今、山頂に座すクシャルダオラに対抗できる存在はこの銀領ガムートを置いて他にいない。どうせ逃げたって間に合わないならば…。
雪崩から全員揃って助かりたいならば…!
むしろ…逆!
銀領に乗って、雪崩を突破させる!意を決し銀領へ向って助走をつける。
「ちょっと!どうして銀領に突っ込んでいくの!?」
ブランシュが俺の行動を咎める。
しかし、これでいいのだ。
銀領ガムートに向かって飛びかかり、その毛に捕まる。
ゴワゴワと硬い毛束は指の間にしっかりと絡まって掴みやすく、存外に背に登るのに苦労は少なくて済みそうだ。「ほぉん、そういう事か。面白れぇからテメェの考えに乗ってやる」
「正気ですかい、衛士の旦那!?…ああもう分かりましたよ!」
俺の考えを察し、正反対の反応を見せるランドラットとクリス。
だがなんだかんだ言いつつ皆銀領に向かって走り出してくる辺り、やるしかないとは理解したようだ。「わらわも乗るぞ!今度こそ銀領の背を楽しむのじゃ!」
この王女も懲りないお方だ。
後でお尻ぺんぺん…は俺の首が飛ぶからこっそり曲射でもしてやろう。かくして俺たちは、鋼龍クシャルダオラの引き起こした雪崩に対し、銀領ガムートに乗って対抗するという一世一代の賭けに出た。
-
825
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-04 14:34
ID:s8CQh1QY
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>>820ほんなら適当に書いてくで〜
書きもんはそんなしたことないから適当やが -
826
名前:王女は雪山へ行った@暇
投稿日:2019-02-04 23:44
ID:Rmcp7oJU
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すんません思ったより長くなったので若干ダイジェスト気味に行きます。
>>825
新しいスレ建ってますねぇ!あのスレは今やってる物語専用ですか?全員が銀嶺の背に登り終え、後は雪崩を待ち構えるのみ。
だが、ただでさえ暴れ狂う銀嶺にしがみつき続けることになるのだ。スタミナはいくら補給してもしすぎることは事ないだろう。
そんな時はこれ!強走薬グレートー!(ダミ声)。
スタミナ勝負の弓使い必携、疲れを「感じなくする」とかいうどう考えてもヤバい飲み薬。その量、瓶になみなみと入って5回分、つまり全員分ある!
材料の調達、調合、ともに難しい貴重品だが命には代えられない。
ここは全員で回し飲みと行こうじゃないか。
と、提案するも…「あ、あの…ね。これって間接…キス、にならないかしら。あ、違うのよ!別にそういうの気にするほど子供じゃないわ!ええ大人の女ですとも!でもね…ムグ!」
「わらわは気にする年じゃ!わらわの様なうら若き乙女が下々のしかも男と同じ杯を用いるなど、そのようなはしたない真似をしてはコウノトリさんに顔向け...オゴ!」なにやら面倒くさい事を言い出した女性陣の口に無理やり瓶をねじ込んで黙らせ…もとい、飲ませる。
その後、俺から順に男性陣へと回って俺の元へと瓶が帰ってくる間、「とんだ変態ね」とか「父上に言いつけてやる」とか散々な言われようであったが俺はいつでも一生懸命なだけだ。
きっと誤解は解ける事だろう。解けるといいな。処刑だけは勘弁して下さい。「いい加減口閉じろ!舌噛むぞ!」
ランドラットの一括。
ハッとして前を見るといよいよ雪崩が目前に迫っていた。
強走薬のおかげか、腹の底から湧いてくる力をありったけ腕にこめて、銀嶺の毛を掴む。
ドウッ!っと音を立てて雪崩がぶつかるのと同時に、銀嶺が動き出した。轟々と大きな音がする。それ以外は何も聞こえない。
砕かれた雪の波が掛かる。それ以外は何も見えない。
上下に、左右に、激しく揺さぶられる。それ以外は何も分からない。「ぶうううううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああおおおおおおお!!!」
「く…!ゆれ……!?」「なん…!?き…!」雪崩と咆哮と叫び声と。
それらが無秩序にまじりあって雪山に響き渡る中、俺たちを乗せた銀嶺ガムートは突き進む。
地面も、壁も、雪崩も、一切の隔てなく削り倒しながら真っ直ぐに山頂へ…鋼龍クシャルダオラの元へと。
世界最強峰、銀嶺ガムートの名は伊達はでなかった。押し返しているのだ、古龍の引き起こした災害を。雪崩を半分ほど突き進んだあたりで銀嶺の体が傾いた。
俺たちとの戦闘で割れてしまった脚部の甲殻では、雪を踏みしめるだけの体力が残っていないのだ。
それでも銀嶺は歩みを止めない。
クシャルダオラからの追撃はない。向こうも力を誓い果たしているのだろうか。雪崩を突破するまであと少し、というところで更に銀嶺の体勢が不安定になった。
最大の武器であり弱点でもある頭部を守る甲殻もまた戦闘により裂けており、雪を押し返すのに余計な消耗を強いている。
それでも銀嶺は歩みを止めない。
何がこのモンスターをそこまで駆り立てるのか。しかし、今はその矜持にすがるより他にない。勢いのピークを過ぎ徐々に収まりつつある雪崩のなかを、傷つき疲労した足取りでなお銀領は突き進む。
吹き荒れていた吹雪も、押し寄せる雪崩も、暴れ狂う銀領も、雪山のすべてが静まっていく。そんな中、俺たちを乗せたままの銀嶺が雪崩を突破するのと、精魂尽き果て倒れ伏すのは同時の事であった。
-
827
名前:王女は雪山へ行った@暇
投稿日:2019-02-04 23:54
ID:Rmcp7oJU
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倒れた勢いそのままに銀領ガムートの背から放り出される。
元々しがみ付く俺たちを気にも留めていなかったのだから当然と言えば当然だが。
そんな銀領ガムートが立ち上がる力すら失ってなお真っ直ぐに睨め付ける相手はただ一つ。
雪崩を抜けた先、雪山の山頂。
今や俺たちのすぐ頭上に座してこちらを俯瞰する、雪崩を起こした張本人…鋼龍クシャルダオラ。
雪崩から身を守るために銀領ガムートにしがみついた結果、ここまでたどり着いた…たどり着いてしまった訳だ。表向き銀領の討伐という体の王女捜索のはずが、いつの間にか規格外の大型モンスターの縄張り争いに巻き込まれた形になる。
上等だ。こちとら既にでかい賭けに一つ勝ってるんだ…!
生き残るためにもう一つくらい賭けてみたって良いだろう。ゆっくりと立ち上がり深く息をついて弓を引く。
極限の状況における、やけくそとも達観ともつかない狂気と正気の境界に意識を置き、狙いを定める。
その先に居る獲物。賭けの対象。
鋼龍クシャルダオラへと目掛けて…!勝算がないわけではなかった。
クシャルダオラはその風の力を使って銀領ガムートを消耗させるほどの大雪崩を引き起こしたのだ。
向こうももはや風を操る程の力は残っていない可能性はある。
現にブレスによる追撃はなく、吹き荒んでいた吹雪も止んでいる。
それからもう一つ。
古龍とはその長大な寿命ゆえに、強大な力を持つわりに生存に対して非常に慎重な一面があるという。
例えばある程度の「手傷を負いかねない状況」にある時、十分な戦闘力を残しているにも関わらずその場を逃げ去っていく習性が報告される事がある。
持たざる者が時として何物をも恐れぬ振る舞いをする一方で、持てる者がその財産を失うことを異常に恐れるように。
つまりは、一部の例外的な「状況」や「人物」を除いて、古龍に対しておよそ人類が取れうる最も現実的な対抗手段。「撃退」狙い。
「そうこなくっちゃあ面白くねぇよな!」
ランドラットが一歩、俺より前に出て大槍を突き出す。
「やれやれ、今日は散々ですよ。ブランシュ、あんたも旦那方といるときはいつもこうなのかい?」
「冗談言わないで、たまにしかないわよ!…ないわよね?」
クリスもブランシュも呆れながらも付き合ってくれるようだ。
こちらにはこれだけの人数もいる。
疲労困憊とはいえクシャルダオラとは対立関係にある銀領ガムートもいる。
「わらわを高所から見下ろすとは良い度胸じゃ!そこに直れ!」
あとなぜか王女も。「手傷を負いかねない状況」は揃っている…はずだ。
頼む、退いてくれくれ…!
武器を構えたままの睨み合いが続く。
先ほどまでの雪崩騒ぎが嘘のように雪山は奇妙な静寂を保ったまま、ギュウッと足元の雪を踏みしめる音だけがなっている。
ギシリ、と耳障りな金擦れの音を立てて、クシャルダオラが身じろぐ。
来るか…!
静寂が一瞬で緊張に変わる。クシャルダオラが威風堂々と一歩を踏み出そうとした直後、空気がわずかに揺れた。
「おおおおおおおおおお…!」
銀領ガムートの立つ力すら失ってなお深く強い呼吸。
それだけで威嚇しているのだ。
吐く息が風となり雪が舞い上がる。
クシャルダオラの動きが止まる。そして…そして、クシャルダオラは当て付けがましく翼を振るって錆びた鉄粉を降り飛ばすと、振り向きざまにこちらを一瞥したきり、ギシギシと音をたてながら鈍色の空の向こうへと飛び去っていった。
やはり、向こうも力を消耗したいたのだろうか。
倒れているとはいえ雪崩を打ち破った銀領ガムートと言う無視できない存在があったのも大きかったかもしれない。
ともあれ…ひとまずは、助かった。「あ、テメこのやろ!逃げんなー!俺と戦えー!」
元の静けさを取り戻した雪山にランドラットがわめく声だけが響いていた。 -
828
名前:王女は雪山へ行った@暇
投稿日:2019-02-05 00:00
ID:Rmcp7oJU
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それからしばらく…
「で、だ」
「コイツはどうすんだ?」あの威嚇が最後の力を振り絞った物だったのか、倒れたまま動かない銀領に大槍を突きつけながらランドラットが言った。
「そういえば銀領ガムートの討伐に来たのだったわね」
「確かに今なら楽に討伐できるでしょうがね…」そうだ。
いかに今は無抵抗であろうと銀領ガムートだって強大なモンスター。加えてここはポッケ村にほど近い雪山。
次に古龍並みの災害を引き起こすのがコイツではない保障はない。
少し気は引けるがせめて一思いに楽に…「ならん!」
止めを放とうと矢を手にした俺を、王女の一喝が押しとどめた。
「銀峰ガムートを狩って参れとは、元よりわらわが言い出した事じゃ。だがわらわは気が変わった。殺してはならん」
「で、では捕獲してお城へ連れ帰る気で?でしたらちょうど落とし穴と麻酔が余ってますから…」
「それも、ならん!」なんとか場を収めようとするクリスも一喝し女王は不敵に笑って俺たちを見回す。
嫌な予感がする。「わらわは気が変わった。銀領ガムートはわらわのペットにする!」
「では王女様、やはり一度捕獲したほうが良いのではないかしら?」
「いいや、ここで飼う!」は…?
全員が絶句した。
ここで飼う?
つまり野放しにしろって言ってるのか、この王女様は?「そもそもじゃ、さっき飛んで行ったモンスター…あれは古龍と言うヤツであろう?」
「今ここで銀領ガムートを仕留めれば、力の空白地帯となった雪山にすぐにでもアレが戻ってくるぞ」む、一理ある。
わがままなりに王女なだけあって教養はあるようだ。「いかな銀領とてここまで力を失えばしばらく大人しくしているほかあるまい。狩り場に出没するのが危険であるならば人の居らぬ深奥に誘導する事も今なら容易なはずじゃ」
「それにわらわ、ずっとこやつの背に乗っておったが酷い事なんて全然されておらんぞ!むしろおぬし等の方がよっぽどわらわにひどい事を…」うむ、何やら耳に痛い事を言い出したのでこの話はこの辺で手打ちにしよう。
王女様のおっしゃることは至極当然の話である。
そうだろお前ら!
仲間に同意を求める。
言っておくが決して我が身かわいさで言ってる訳じゃない。「ま、いいんじゃねーの?どうせ苦労すんのは城の連中だ。それに動けない獲物を仕留めたってつまんねぇしな」
「そういう事なら、私としてもあのクシャルダオラの方がよっぽど気がかりだしね」
「ガムートも元々はポポの群れに混じって暮らすほど温厚な種ですしねぇ。旦那方やブランシュがいいってんなら俺もまあ良いですよ」仲間たちもそれぞれに理由は違えど王女の言い分に納得はしたようだ。
そんな俺たちを見てわがままな第三王女は、ぱあっと音がしそうな笑顔を浮かべている。
本当に、わがままな王女さまだ。
それでもなぜだか間違った選択をした気がしなくて、俺はどこか晴れやかな胸の内で雪山の曇り空を見上げるのであった。ハンター達に悪名高きわがまま第三王女の雪山失踪事件は、こうして一旦幕を閉じる事となった。
-
829
名前:王女は雪山へ行った@暇
投稿日:2019-02-05 00:10
ID:Rmcp7oJU
[編集]
* * *
「…という訳じゃ、ネコート殿」
「ああ、はい。流石というか何というか、龍歴院は街のハンターズギルドとはずいぶんと違った仕事をされますね」
「それを言うならそちらの王女様もじゃろうて。追いつめた銀領ガムートの処遇について、ずいぶんな無茶をご所望だがどうするおつもりかね?」龍歴院の一室。
ともすれば嫌味の応酬にも聞こえるやり取りをしながら、ギルドマネージャーとネコートさんが今回の騒動の報告書を読んでいる。
横に控えているクルトアイズは、内心ひどく居心地の悪い思いで立っていた。「それに付きましては、王女様の望まれている通りに銀領の誘導と監視を…付きましてはまた龍歴院に」
「おっと歳のせいか最近は耳が遠くていかんね」
「そんニャ、ギルドマネージャー殿!こんな事、もう龍歴院にしか頼めないのですニャ!」結局、その後の銀領ガムートは大人しく暮らしたのか。雪山は平穏になったのか。王女は何かやらかさなかったか。
様々な事情が内密に処理されたが、それらはまたあるかも知れない別のお話である。* * *
とある王城にて。「父上ー!母上ー!兄上姉上ー!ただいまなのじゃー!」
今回の騒動の発端、第三王女は意気揚々と王城を進む。
今までもいくつもとんでもないわがままを言っては城とハンターズギルドを困らせてきた彼女であったが、今回は飛び切りであったといえよう。
古龍と二つ名持ちのモンスターの争いに巻き込まれてこうして無事に帰れる事自体が奇跡の連続でありハンターたちの尽力の賜物であるという他ない。
そんな事実を知ってか知らずか、今日もわがままな第三王女はちっとも懲りた様子なく、出迎えた父王を見つけると嬉しそうに駆け寄った。「父上!あのね、わらわね、いっぱい色んな事して遊んできたのじゃ!」
「こお~んなでっかい象に乗ってね、あと生まれて初めてハンターを見て、雪崩がドバーって来て…ええとそれから」
子供の例に漏れず、その日何を見てどんなことをしてどのように感じたかをいちいち興奮気味に報告していく。
それから最後にどんなわがままも許してやりたくなるほどの、飛び切りの笑顔で王女はこう言うのだ。「わらわ、雪山に行ってきた!」
シナリオ50~王女は雪山へ行った~クリア?
-
830
名前:王女は雪山へ行った@暇
投稿日:2019-02-05 00:15
ID:Rmcp7oJU
[編集]
以上でシナリオ50終了です。
展開に付きましてはただクシャ乱入して相打ちとかではマンネリだろうと言うのとあとなるべく早く終わらせようと言う考えがあってクシャに頑張ってもらって雪崩おこしました。
クシャ強すぎない?と思わなくも無かったけど古龍が能力全開でジャッキーチェンばりの環境利用闘法を始めたらこうなるんじゃないかなと想像を膨らませた結果であります。
古龍との戦いはまずその能力の対策から。
それはスキルや立ち回りだけじゃなく、それ以前の少しでも能力の脅威を封じつつ決戦を強いるための組織的な調査と追跡から始まってるんじゃないかなーみたいな。
本当は王女のように雪山用装備でもなくランドラットのように鍛えてるわけでもなく、他二人のように軽やかでもないであろうあなただけが雪崩に巻き込まれて失敗エンドでええかー、銀嶺ガムートを利用することに気づいてもらえたら生還エンドもありかなー。
くらいに考えてたんだけど見事にその選択をとっていただいたのでマジかよどうすべぇ…と無い頭を捻りながらなんとか終わらせました。あと前半クリス?推しがちょっと露骨だった気がするので引き継いだ後は控えめにしておきました。
まだまだ活躍させる予定があったなら申し訳ない。
ついでにクリス?について質問ですが「クリスに罠を使わせる」って選択は彼以外は罠を使えない理由があったのか。
また目がいいみたいな描写があったけどどこで出てきた設定なのか、それぞれ教えてもらえると嬉しいです。
見落としてるのかもしれないけどなにぶん急いで斜め読みしただけなので…(は?)ではこれでシナリオの引継ぎを終了します。
お疲れ様でした! -
831
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-05 10:33
ID:jZ20teGo
[編集]
>>826引継ぎお疲れ様でした!
専用ってことはないけど普段文章書かないしシナリオこっちとは全然違うから分けとこうかなぁて感じ! -
832
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-10 18:35
ID:r2AQHDk2
[編集]
・ミーシャちゃん回
・選択肢多分少なめ
・長くなったらゴメン(重要)おk?
シナリオ51:よだかの星
銀嶺ガムートの狩猟、もとい第三王女のワガママへ付き合わされた一件から数日が過ぎようとしていた。
雪山ほどではないとは言え、この時期のベルナ村を通り過ぎる風は不意に鋭く肌を刺し、寒さが震えとなって全身を駆け巡る。
――同居人となったメイレーは片腕で器用にエリックを抱いて毛布に包まり安らかな寝息を立てている。 悪夢にうなされる様子も、失くした腕の幻肢痛に苛まれる様子もない。
自己の希薄さ、とでも言えばいいのだろうか。 口調が移りやすいだけかと思えば、今や片腕の生活にもすっかり慣れたようで、ルームサービスとしても板についてきた。
在るものを在るがままに受け入れる、適応力などという言葉では荷が勝ちすぎる、彼女が知らず知らずのうちに身に着けた特異な能力。
彼女が此処に居ること、狩人を目指していること、そもそもあの状況から生還出来たこと――偶然の積み重ねと言ってしまえば確かにそうかもしれない。
だからこそ、だろうか。 この少女の行く末は自分が見守る……いや、見届けなければいけないのだろうと、胸中には日々そんな思いが渦巻くようになっていた。そのためにも力が欲しい、行き場を失った切なる願いから無造作に振るった腕が、あの日からベッドの横に立てかけてある弓に触れる。
先の依頼でミーシャから預かった灼炎のヴァルスター、握り締める左手に伝わる熱は斬竜の吐息が如く力強さを秘めていた。
弓に精通した彼女が見立ててくれただけあり扱い易さは折り紙付き、そして何よりもあのディノバルドの力を手中に収めたようで言い得ぬ高揚感すら湧いてくる。
名弓、その一言に尽きる一級品。 まさに今求めている『力』というもの体現したかのような……何れ彼女へ返さなければならないのが惜しい程だが、これは飽くまで借り物だ。
ここ数日姿が見えないミーシャだったが、今日の昼にはこれを受け取るためマイルームを訪れるとケイ――あの眼光の鋭いアイルーから連絡があった。
一品物と言う訳ではないのだし、後々加工屋に依頼して同じものを作って貰えばいい。 そう自分を納得させ弓を手放すと、軽く息を吐きだして天井を見上げる。
――昼までは、随分と時間がかかりそうだった。* * *
「それ、貰っちゃっていいですよー。」
予定より少し早く訪れたミーシャと昼食を取りながら銀嶺の話をしていると、あっけらかんと彼女はそう口にした。
如何に同じ武器を同じ職人が作ったとしても握り心地や弦の張り具合、リムの角度――非常に微細な差はどうしても生じてしまうから、手に馴染んでいる物を使うに越したことはないらしい。「その代わり、ちょっとお願いがあるんですよー。」
――正直、厄介ごとの匂いしかしない。 全財産かけてやってもいい、だが決して安くない貰い物をしてしまっただけに断り辛い。
寧ろそのお願いとやらを承諾させるための撒き餌だったかのように思えてくるが……いや、こんな事でケチをつけるのはよそう。
内容を聞いてからでも遅くはないだろう、そう判断してミーシャに続きを話すように促してみる。「デートしてくれませんー? 明日の朝龍歴院前で待ち合わせでー。」
……は? 今コイツなんて言った?
いや正直彼女との関係はまんざらでもないと言うか、変に気負わずスキンシップを取れる仲と言うか、そもそも一番既成事実が多いのは確かにコイツと言うか――
狼狽えている間にミーシャは口元を拭い、いつもの悪戯っぽい笑顔を浮かべ手を振りながらマイルームを後にしてしまう。「おにい、でーとってなにー?」
間延びした口調の移ったメイレーが不思議そうに顔を覗き込んでくる。 やめろ、今そんな純粋な視線を俺に向けないでくれ。
何とか答えをはぐらかすと変わらぬ表情で首を傾げ続ける彼女を尻目に、そそくさと明日の準備を整え始めるのだった。 -
833
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-10 18:36
ID:r2AQHDk2
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本日の天気は、風は強めに吹いているかもしれないが日差しは暖かい。 絶好のデート日和と言ったところだろうか。
悶々としたままに夜を迎えてしまいやや寝不足気味ではあるが、悩んだ甲斐あってそれなりに服装は決まっていると自負している。
あとはもう成り行きに任せるしかないだろう、どこへ出かけるとも何も聞いていないのだから、いやしかし開口一番なんと声をかけるべきか……「あら、奇遇ね。 今日はオフの日なのかしら?」
不意に後ろから声をかけられる、振り返ると凛とした佇まいのベテランランサー――アリーチェの姿があった。
今日はちょっと……そう返答しかけたところでその後ろで手を振るエリクシルの姿に気付く、着ているのはミツネ一式……いや天眼一式だろうか。 何にせよ珍しい組み合わせだ。「これからミーシャちゃんと出かけるんですよ、シナト村って言う所の近くまで行くとか……」
シナト村……確か極東に位置する山脈の辺りに存在する集落だったはずだ、いやその前にミーシャと出かけるとか聞こえたが……
「ええ、貴方も誘われていたのかと思ったけれど、その様子だと違うみたいね。」
… … … … …
あの野郎、ハメやがった!! マズイ、ここで「デートって言われてたからこんな服装で来ちゃいました。」なんて口にしようものなら何を言われるか、どうにかして取り繕わなければ――
ミーシャに誘われたことは正直に話すとして……そう、消耗品を買い足しに来た事にしよう。 買い物が終わればすぐに準備して戻ってくるつもり、これなら完璧だ。「態々龍暦院のショップに来たの? ベルナ村の雑貨屋でも必要なものは揃うと思うのだけれど?」
完璧でも何でもなかった、これ以上訝しまれる前にさっさと退散してしまおう。
半ば無理矢理に話を切り上げてマイルームへと走り去る、恐らく背後では2人共首を傾げているだろうがそんな事には構っていられない。
畜生、完全に弄ばれてしまった。 後で頬の一つでも抓ってやる――アイテムボックスの前に立つなり一張羅を脱ぎ捨て、大慌てで装備を引っ張り出す。じっくりと長考する時間もないし、シナト村の近くに行くと言っていたがあの辺りに生息しているモンスターの事が頭に入っている訳でもない。
強いて言えば今の面子は剣士1人にガンナー2人、近接武器を持ち出した方がバランスが取れるかもしれないと言うことだけか……何を持っていくべきだろうか?* * *
・武器、防具、スタイル、狩技を選択して下さい。
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834
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-10 20:34
ID:w0pYpYJA
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デートだと聞いてたからね。開き直って灼炎のヴァルスター担いでいってミーシャの反応に期待しよう。
防具はブラキX一式、スタイルはブシドー、狩技はアクセルレインでお願いします。 -
835
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-10 22:06
ID:r2AQHDk2
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騙したミーシャへの当てつけに武器は灼炎のヴァルスターを持って行ってやろう、防具は困った時のバルクシリーズ……では芸がない、ブラキXシリーズにでもしておくことにする。
手早く装備を着込み龍暦院前に戻ると、今度は先程の2人に加えてミーシャの姿もあった。 何とか誤魔化せたようだ。「遅刻ですよー?」
咎めるような言い方ではない、それどころかこちらにだけ顔を向けているミーシャはしてやったりと言わんばかりに舌を覗かしている。
今すぐにでも小突いてやりたいところだが後ろ2人の目もある、それが分かっていてコイツもやっているのだろう、ここは我慢せねば……「ところでミーシャ、シナト村の方面なんてどうやって行くのかしら。 龍暦院の狩猟区域からは外れているわよ?」
アリーチェの疑問は尤もだった、シナト村の辺りはバルバレやドンドルマのギルド、そして大老殿が管轄している。
特例でもなければ龍暦院の保有する飛行船等は使えないだろうし、そうでなくても今回は狩猟依頼ではなくミーシャの私用のようだ、移動手段は自分達で確保しなければならないだろう。「大丈夫ですよー、移動手段ならあの船の船長さんに話をつけてありますからー。」
そう言って彼女が指差した先には、一隻の飛行船が停泊していた。
……随分と個性的なデザインの飛行船だ、船体はまるでクジラのように見えるのだが、全体的に朱に彩られた上に船首である口内からは撃龍槍が覗き見えている。「我らの団って言うキャラバン隊の船なんですけどねー、知り合いが居たのでお願いしてみたら快く引き受けてくれたんですよー。」
キャラバン隊に知り合いが居るとは意外だった、ドンドルマでもハンターをしていただけあって実は顔が広いのかもしれない。
「準備が出来たらすぐに出発してくれるらしいですから、忘れ物がなければ出発しますよー。」
忘れ物と言っても、最悪足りない消耗品はそのシナト村という所でも補給出来るだろう。
装備の方も突貫で着込んでは来たが――恐らく不備はなさそうだ。 ミーシャの目的は分からないままだが美女3人に囲まれた船旅も悪くない……それでもアイツは1発小突く必要はあるが。
エリクシルとアリーチェもどうやら問題はないらしい、首を縦に振って準備完了の意を示すと、独創的な飛行船へと向けて歩き出した。* * *
「ワッハッハ! 随分と見知った顔が居るのぅ、どうやらワシらはよっぽど縁が深いようじゃの!」
乗船するなり出迎えてくれた人物に思わず目を丸くした、太古の病魔との一件や宝玉眼争奪戦で世話になった竜人問屋その人だった。
思い返せば確かにキャラバンに同行しているとか、そんな話をしていた覚えが頭の片隅に残っている。「その説は毎度ありがと300万ゼニー! いや、アレは20万ゼニーじゃったな、ワッハッハ!」
ポロっと極秘依頼の事を漏らしかけた竜人問屋に慌てて口元で人差し指を立てる、失言だと気付いた彼はわざとらしく数度咳払いをするとポンと膝を叩いて話を切り替える。
「ワシが言うのもなんじゃがこの船の乗り心地は中々のもんじゃぞ、シナト村に着くまでの間のんびりと過ごすが良いじゃろうて。 ワッハッハ!」
そんな会話をしている内に船体が揺れ徐々に高度が上がり始めた、すぐに出発してくれるらしかったが、此処まで早いとは予想外だった。
辺りを見回せばキャラバン隊のメンバーと思われる人物の姿も数名見える。
大柄で逞しい男、眼鏡をかけた知的な女性、中華鍋を担ぐアイルー、ハンマーを手にした元気のいい少女――船のデザインに負けず劣らず個性的な面々だ。
他にもこの飛行船の操舵をしているであろう船長……いやキャラバン隊だから隊長か、それとも隊の名称からして団長だろうか? 何にせよ長を務める人物がどこかに居るはずだ。ゆっくりできる時間があるのならばミーシャ達3人も含め、一通り話をしておきたいところである。 さて、まず誰から声をかけるか……
* * *
1.とりあえずミーシャを連れ出して小突く
2.ここぞとばかりにエリクシルと2人きりに
3.アリーチェと親交を深めておく
4.『我らの団』の面々に挨拶する※選択肢で選ばれなかった方々も執筆が端折られるだけで会話したことにはなります※
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836
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-11 00:27
ID:BfhIy47s
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筆頭ライター投稿しとるやんけ、選択肢選んだろ!
団長とかの掛け合いどう描かれるか楽しみではあるけどここはやっぱりミーシャで!
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837
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-11 12:51
ID:wSJ6dbXY
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>>836
選択肢やる予定なかったけど寂しいからやるわ!
我らの団もベルナ来るから絡ませんとな! -
838
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-12 22:18
ID:r2AQHDk2
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ホントはね、昨日の夜に投げれたハズだったんだ。 仕事で遅くなったから夜の1時まで頑張って書き上げて投稿しようともしたんだ。 文字数制限オーバーに心折れてそのまま寝ちゃったよ……
そんな訳で選択肢まで結構しっちゃかめっちゃかに分割します(人間の屑* * *
何はともあれ、まずはミーシャの奴にお灸を据えねばならない。 ふらふらと何処かへ行こうとしているアイツの首根っこを引っ掴み、人気のない船尾へと引きずっていく。
またしてもエリクシルとアリーチェの奇異な視線を浴びる事になったが、こればかりは仕方がないというものだろう。「相変わらず仲いいなぁ……」
「そうね、でもあの関係は恋人と言うより兄妹に近いけれど。」――そんな会話がなされていたことは、誰にもあずかり知らぬところである。
* * *
予想通り船尾周辺に人影は見当たらなかった、こいつの気紛れには散々付き合わされてきたが今回は度が過ぎる、多少のお仕置きは然るべきだろう。
「だってお人好しのあなたの事だから、ちゃんと話したら絶対断らないじゃないですかー。」
ミーシャは少しも悪びれた様子もなく膨れっ面で唇を尖らせると、そっぽまで向いて分かりやすく拗ねて見せる。
言葉をそのまま受け止めるのなら頼みを断ってほしかったように聞こえるが、いまいち思惑が飲み込めない。「アリーチェさんとエリクシルさんはもう知ってるんですけどねー……」
――珍しくしおらしい声で彼女が語りだしたのは、自らの生い立ちに関することだった。
生まれてくる前に父親は亡くなっていたこと、それを追うように母親もすぐに亡くなったこと、唯一肉親と呼べた養父もドンドルマでハンターとなってすぐに他界したこと。
自分には、他人が当たり前に持っているような『生まれてきた理由』がない、それに代わる何かを求め苛烈な狩猟に身を投げたこと
それでもごく僅かに、仲間と呼べる人々と出会い、別れ、そして遂には白髪鬼とまで呼ばれるようになったこと――「それでも、最近は皆が居ればそれでいいって……そう思い始めていたのに、こんな物が届くんですよー。」
懐から取り出したのはクシャクシャになった便箋だった、皺まみれになっているのに、切り口だけは妙に新しい……それだけ開封を逡巡したということだろう。
「もうハンターを引退したはずの知り合いからこれが届いて……お義父さんの故郷が分かったって、お前の求めてるものの手がかりもあるはずだ、ってー……」
『生まれてきた理由』――即ち、自分自身が望まれて生まれてきたかどうか。
証明できる物があるとすれば親の愛情だったり笑顔だったり……それは全て彼女の人生で欠けてきたパズルのピースだ。「正直今だって知るのが怖いんですよ、でもそんな事話したらあなたの返事は決まっちゃうじゃないですかー、だから選択の余地がある方法を選んだんですよー。」
つまり、あの狂言は彼女なりに遠回しながら気を使った結果であり、自身のプライドを出来る限り傷つけない方法を選んだということなのだろう。
――だからと言ってお灸を据えなくていい理由にはならない。 両頬を抓って無理矢理グイっと上に持ち上げてやる。「いひゃいでふってー、にゃにしゅるんでふかー!!」
手をばたつかせて抗議するのを黙殺し、薄らと潤む彼女の目をじっと見つめる。
――こんな回りくどい方法を取ったなら、せめていつも通りで居ろ。 俺の知るミーシャはどんな時だろうと、何が相手だろうと大胆不敵に笑っているぞ。
そう伝えて頬を離してやると、彼女は目を丸くしたまま暫しこちらを見つめ――ふっと笑みを浮かべる。
「あーあ、こんなことならあんな回りくどい方法取るんじゃなかったなー。」
漸く普段のミーシャに戻ったようだ、話の内容を全く気にしていないわけではないが、本人があんな調子では上手く行くものも行かなくなると言うものだ。
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839
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-12 22:18
ID:r2AQHDk2
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……しかし、改めて思えばよく1人だけで飛行船に乗せてもらえる交渉が出来たものだ、顔見知りとはいえあの竜人問屋を頷かせるのは一筋縄ではいかなかっただろう。
「昔手に入れた素材を譲ってあげたんですよー、2つ手に入ったから1つは自分で持ってたんですけど、何でも宝玉眼とか呼んでる貴重品らしくてー。」
様々な偶然が重なった結果、盛大に吹き出してしまう。 よくよく考えれば、あれが本当に何かの眼だとすれば確かに同じ物がもう1つあるのは道理だが……!
あの大捕物に自分が巻き込まれぬことが二度とありませんように――そう願いながら会話を一方的に打ち切ると、そそくさとその場を立ち去るのだった。その後、初老ながら活力溢れる団長や寡黙で大柄な竜人、彼に師事する加工職人見習いの少女、料理長であるというアイルーや旅団の看板娘と言った個性的な面々と挨拶をかわして床に就く。
明日の朝にはシナト村という場所に到着しているというが、果たしてどんな村なのであろうか――* * *
「うわぁ……!」
シナト村に降り立った途端、エリクシルが感嘆の声を漏らす。
海の代わりに広がる白い雲、うねりと共に解け行くそれは白波よりも儚く消えて、幾つもの山の頂が岩礁のように転々と飛び出ている。
彼女が瞳を輝かせるのも無理はない、切り立った山々の上に存在するこの村から見える景色は他とは一線を画している。「ここが錬金術発祥の地と言われている伝説の村なんですね! まさか本当に来れるなんて!!」
……いや、どうやら彼女は感動のベクトルが違ったようだ。 1人で勝手に村の奥まで走っていき、大窯をかき混ぜている人物から食い入るように話を聞き始めている。
彼女らしいと言えばそうかもしれない、何はともあれ、船で聞いたミーシャの養父とやらの家を探さなければならない、まずは聞き込みでも……「お義父さんが居たのはシナト村じゃなくて、此処から少し山を降りた先にある名前もない集落らしいですよー。」
歩き出そうとしたところをミーシャが制止する、懐から取り出した便箋――ここに来るまでに散々読んでいたそれには詳しい道程も記されているようだ。
小さな村だから人探しも容易だと思っていたが、どうやらそう上手くいかないらしい。 正直この雲海の中を進むのは気が引けるが――「君たち、名もなき集落まで行くのかい?」
不意に声をかけてきたのは、近くで畑を耕しているにこやかな青年だった。
先程までクワを振るっていた手を止めると、汗を拭いならこちらに歩み寄ってくる。「名もなき集落……随分な呼び方なのね。」
「あそこで暮らす人達も村の名前を知らないくらいだからね、この村とも殆んど交流がないんだ。 山道に沿って2、30分で着く距離だけど、道中足場が滑りやすいから気を付けて。」アリーチェと短く会話した青年は踵を返すと、再び畑でクワを振り始める。
名もなき集落――こんな秘境紛いの地で暮らす人々なのだから余程神秘的か、或いは偏屈染みた人々の集まりなのだろう。「お前さん達が帰ってくるまで俺たちはちゃーんとここで待ってるからな、安心して行ってこい! なぁに、どんな困難が待っていようとお前さんらなら出来る出来る!」
こんな地まで送り届けてくれたどころか見送りまでしてくれる団長に謝辞を述べると、今だ話し込んでいるエリクシルの首根っこを掴みズルズルと引きずっていく。
あと少しで新しい錬金の境地が、とか叫んでいるが通過点に過ぎない村に何時までも居られない、続きは帰り際にでも聞くように諭して諦めさせ荒れた参道へと歩を進めることになった。 -
840
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-12 22:19
ID:r2AQHDk2
[編集]
「見えてきたわ、あれが集落みたいよ。」
湿った岩の連なる視界の悪い山道を歩き小一時間は経っただろうか、先頭を行くアリーチェが指差す先にはシナト村の入り口にもあった独特な赤い門のような建造物がそびえていた。
あの青年は2、30分と言っていたが、それには『山道に慣れている者の足で』という枕詞が付いていたのだろう。 皆疲労の色は隠せずエリクシルに至ってはすっかり押し黙ってしまっている。
ミーシャの目的も大事だがその前に小休止しなければ身が持たないだろう、集落にどこか休める場所があればいいのだが――「止まれ! 村には何人も入れることは出来ん!!」
どうにもそうはいかないらしい、霧をかき分けて集落から現れたのは左頬に黒い紋様を絵付けた筋骨隆々とした男だった。
何人も入れることは出来ないとは随分な言いようだが、やはりこんな場所に住んでいるからには外部と係わりを持たないような掟でもあるのだろうか。「今この村は奇病が襲っている、態々火中に飛び込む真似をする必要もあるまい、立ち去られよ!」
……予想より遥かに現実的な理由かつこちらの事を案じてくれていた、自分の想像は妙な偏見だったということか。
だがこの男の発言は聞き逃せる物ではない、三度邂逅することになった『奇病』というワードに思わずエリクシルと目を見合わせる。
今からシナト村まで引き返すの事も体力的に厳しい、それに他との交流が希薄な村に病という組み合わせはどう考えても嫌な予感しかしない。「私にはどうしてもここに用事があるんですよー、1日でいいから入れてくれませんー?」
何よりミーシャには帰れと言われたところで帰れない理由もある、直視するにも勇気がいるような強面の男と真正面から向き合っている辺りどこまでも食い下がる魂胆なのだろう。
「ダメだダメだ、これはお前たちの為でも……むっ?」
その姿を見た瞬間、男の様子が一変した。 威圧するような態度はどこへ行ったのか、ハッとした表情でミーシャの事を――正確には、彼女の目元のペイントを――見つめている。
なんだかよく分からないが、これはこの男を言い包めるチャンスなのではないだろうか? 上手くいけば村に入れるかもしれない、さて、どう切り出すか……* * *
見張りの男を言い包める方法を選択して下さい。
1.以前にも蔓延した奇病の原因を突き止め解決したことがある、と実績を持ち出す。
2.ミーシャはこの村の出身者だ、とハッタリをかます。
3.もう一歩も動けないから少しでも休ませてくれ、と泣き落としにかかる。
4.相手は一人、強行突破を試みる
5.自由枠 -
841
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-15 12:23
ID:hsQbZJeY
[編集]
なんだか止まってるので選んじゃおう、2番でお願いします~
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842
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-17 03:07
ID:lnZ1BS7Q
[編集]
ちょっとリアル忙しくて投稿速度いつもより遅い上に選択肢が少ない構成だから書き上げに時間がががが。
長くて見辛くてゴメンね(´・ω・`)* * *
男の左頬に刻まれた独特の黒い紋様、その男が見つめるミーシャのトレードマークでもあるペイント、これは何か関係があるに違いない。
彼が冷静であるならまだしも、多少なりとも動揺している今ならハッタリが通るかもしれない。――ミーシャはこの村の出身者だ、生まれ故郷にも入れて貰えないのか?
目の前に割って入りさも当然の主張の如く胸を張って言い放つ、我ながら中々の名演ではないだろうか。
「いや、そんなはずは……しかしその紋様はまさしく……」
当惑を隠せない様子でしどろもどろに受け答えをする男が一歩後退る、こうなってしまえばもうこちらの物だ、すかさず一歩詰めより語気を強めに「どうなんだ?」と問い詰める。
「ええい、そこまで言うなら通るがいい! だがもしも貴様の言葉に一つでも偽りがあると知れたならば……その頭、二度と胴体の上に君臨出来ぬ物と思え!」
怨嗟染みた感情を込めた目で睨みつけながらも、どこか自棄になった様子で男は道を開けた。
成り行きを見守っていた3人を手招きしつつ、彼の横を悠々と通り過ぎて村へと足を踏み入れる。「ちょっと、あんな事言ってよかったの?」
入り口から少し離れ見張りに声が届かない距離まで来ると、アリーチェが声を潜めながら咎めるように話しかけてきた。
確かに出身者と騙しはしたがミーシャは完全に部外者と言う立場でもない、少々強引だがこの集落に居る間は嘘を貫くとしよう。
……もし最悪の事態になりそうならば尻尾を巻いて逃げればいい、流石に集落の外にまでは追ってこないだろう。「だっ、大丈夫ですっ、こんなこともあろうかとトウガラシと火薬草に、けむり玉がっ。」
「逃げ方が過激過ぎですよー、あと先に息整えましょうかー。」
「はぁ……どうなっても知らないわよ?」息も絶え絶えながら手持ちの道具を見せようとするエリクシルの背をミーシャが擦りながら宥める、危機感の薄いやり取りに歴戦のランサーはやれやれと言わんばかりに額に手を当てる。
彼女が憂う通りあまり長居の出来た状況でもない、早いところミーシャの探し物を見つけて――そういえばこいつの探し物ってなんだ? 結局具体的な事は聞いてない、今の内に確認しておかなければ。「さぁ?」
… … … … …
つまり、これと言った明確な探し物がある訳ではなく『何かあるかも』程度なのか? ハッタリをかましてまで集落に入ったと言うのに?「お義父さんの家から手記でも見つかれば何か分かるかなって思ってるんですけどねー。」
――聞くだけ聞こう、その養父とやらの家はどこにあるんだ?
「さぁ?」
集落の人間に嘘がバレる前に、顔も見たこともないミーシャの養父が暮らした家を見つけ、在るかどうかも分からない探し物を見つけろ、と――何とも途方もない話に思わず天を仰ぐ。
深い靄に霞む太陽は頭上を通り過ぎ黄昏へと傾きだしていた、当てもなく人気のない集落を歩き回る自分の首は、果たして何時まで繋がっていることだろうか……。 -
843
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-17 03:08
ID:lnZ1BS7Q
[編集]
「ミーシャ、あなたの養父についてだけど……他に家族は居なかったのよね?」
集落を彷徨い続け数刻、不意に足を止めるとアリーチェはそう切り出してきた。
「そうですねー……親兄弟の話は聞いたことないですよー。」
「なら、この集落の何処かに家があっても、そこには誰も住んでいない可能性が高いわよね?」彼女の問いに、ミーシャは少し考え込みつつも頷きを返す。 それを確認するとアリーチェは背を向けある一点へ視線を向ける。
「此処ですれ違った人達、何人かは見張りやあなたみたいに顔にペイントをしていたわ。 それはこの村と密接に関係があると思うの、だとしたら……あの家が怪しいんじゃないかしら。」
集落の中でも『外れ』に位置するその家は酷く寂れており一見して明らかに人気が感じられない、それでも扉に深紅で描かれた大きな翼のような紋様だけは言い知れぬ存在感を示している。
「あの形、ミーシャちゃんの……」
「お義父さんは弓が上手くなるおまじないって言ってましたけど……偶然にしては出来過ぎてますよねー。」そう、あれをそのまま縮小していけば、丁度ミーシャのペイントと同じ模様になるのだ。
もしもこのペイントが屋号のように使われているのだとしたら、養父が暮らしていた家でほぼ間違いないだろう。
調べてみる価値はある。 そう判断して古い扉に手をかけゆっくりと押し開くと、悲鳴にも似た軋みと共に長い月日をかけ積もったであろう埃が舞い上がる。「これは……凄いわね。」
埃が、だろうか。 それともこの光景が、だろうか。
弓、弓、弓――寝食を行う僅かなスペースを除き、見渡す限り弓の山。
弓ではない物が目に飛び込んできたかと思えば、それは矢であるか手入れ道具であるか、後生大事に壁に掛けられた物もあれば床に投げ捨てられている物もある。「お義父さんらしいと言うか……おかげで分かりやすくて済みましたねー。」
こうも弓ばかり並んでいては、普通なら何処にでもあるようなものが異物として飛び込んでくる。
机の片隅にあるコップや床に転がる羽ペンにインク瓶、そして机の上――やたらと丁寧に安置されている手記と、その真ん中辺りに挟み込まれた封筒。
示し合わしたように視線がミーシャに集まる、床の軋みと共に近付いた彼女は手が触れる寸前で一瞬逡巡したように動きを止めたものの、手記を持ち上げそのページを開く。「『もしこれを開いているのがお前ならば、封筒を託す。』……ですってー。 はは、これ間違いなくお義父さんの字ですよー。」
ミーシャに見せられた手記には、今まさに彼女が読み上げた言葉が如何にも不器用そうな無骨な文字で書かれていた。
期待と不安が入り混じった乾いた声と共に剥ぎ取りナイフを取り出しすと、微かに震える手で封筒の縁を切り捨てる。
中に入っていたのは4つ折りにされた便箋、どんな弓も使いこなす器用な指先が、中を見ることを拒絶するかのように何度か縁を捲り損ね――紙の擦れる静かな音が鳴る。
嫌な沈黙と共に視線が文字を追う、その動きもすぐに止まると彼女は深く息をつき、便箋を封筒へ戻す。「ミーシャちゃん、何が――」
「長、こいつらです! 村の出身者だと言い張ったのは!!」エリクシルの問いをかき消す怒号、入り口で言い包めたはずの見張りを先頭に武器を手にした村人達が次々と雪崩れ込んでくる。
床に転がる弓を蹴り飛ばしながら次々に剣先や穂先がこちらを向く。 ――マズイ、完全に逃げ場がない。「……此処で暮らしておったのは、一番の変わり者で、一番に弓の扱いに長けた者じゃった。」
彼らの後ろから現れた『長』は、屈強な男たちとは対照的に、痩せ細り杖を片手に歩く腰の曲がった老人だった。
見えて居るかも怪しいような細い目でこちらを一瞥すると、真っ直ぐにミーシャの元へ歩み寄り彼女の事を見上げる。「鷹の翼を眼に宿す者よ、お前と此処の主はどの様な関係じゃ? どうしてその紋を知っておる?」
枯れ枝のように容易く折れそうな細身に似つかぬ鋭い眼光がミーシャを射貫く、傍から見ていても身動ぎしそうになる視線を、彼女は退屈そうに見下ろし返していた。
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844
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-17 03:09
ID:lnZ1BS7Q
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「私はお義父さんの……此処の主の義理の娘ですよー。」
無感情に言い放った途端取り囲んでいた村人達がざわつき始める、流石に予想していなかった返答なのだろう。
動揺する彼らを意に介さずミーシャは淡々と集落を訪れた目的、そしてすべき事が済んだ以上長居する理由もないことを告げる。
その言葉を聞いた長は微かに眉根を動かすと、こちらに背を向けて数歩進むと静かに首を縦に振る。「お前達は勝手に集落に入り、勝手に同胞の住む場所を荒らした罪人として裁かれなければならぬ。」
老人の言葉に動揺していた村人が一斉に武器を構え直す、エリクシルが小さく悲鳴を上げ、アリーチェが彼女を庇うようにして前に出る。
どうにかして包囲を潜り抜けて逃げ出さなければ、しかしこの緊迫した状況で何が出来る――?「だが義理とは言え同胞の子であるならば家族も同然、無下に裁くことは出来ぬ。」
その言葉と共に向き直り杖を持たぬ方の手を掲げると、突き付けられていた武器が一斉に下げられる。
「――蔓延している奇病、その原因を突き止める手を貸してくれるならば、今回の一件は不問としてやろう。」
こちらの意思を確認するような言葉が続かないということは拒否権などないのだろう、断ればこの場で全員串刺しと言ったところか。
またしても厄介事に巻き込まれてしまった、今回は自分が蒔いた種なのだから文句など言えないのだが……念のため視線を送ってみるが3人とも意思は同じの様だ。「ならばお前達はこの里の客人だ、皆の者、奇病の事は然るべき助力をするように。」
そう告げると長はその場を立ち去る、武器を手にしていた村人達も不承不承と言った様子で散開していく。
「はぁ~……」
大きな溜め息と共にエリクシルがその場で座り込む、アリーチェも手の甲で冷や汗を拭っているし、自分自身も痛いくらいに心臓が鳴っている。
いつも通りに――寧ろいつもより冷静に――構えているのはミーシャだけだ、あの状況で動じないコイツの心臓は果たしてどうなっているのだろう。「全く……誰かさんがあんな真似しなければもう少し穏便に済んだのにね。」
冷ややかな声色と共に視線が突き刺さる。 ……確かに早計な手段を取ってしまったかもしれない。
「そうだ、ミーシャちゃん。 それには一体何が書いてあったの?」
「んー……後で話しますよー、それよりも奇病って言うのを解決して早く帰りませんー?」書いてあった内容を察しようにも、彼女の表情はどこか退屈そうということしか読み取れない。
何はともあれ無事に帰るには奇病とやらの原因を突き止めなければいけないという事か、こっそり逃げ出そうにも集落の入り口は1つだけ、見つかればどうなるか分かったものではない。「集落の人も一応は協力してくれるのよね、奇病の情報を集めるのと……」
「治す方法も必要ですよね、薬の処方は任せてください!」小さな集落とはいえ4人しか居ないのだから手分けした方が良いだろう、情報収集をする組と治療に当たる組が必要だが、どう分けるか――
* * *
・メンバーを情報収集班と治療班に分けてください。
・分け方は2-2でも1-3でも構いません。 -
845
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-18 06:53
ID:26otmwLw
[編集]
ミーシャとアリーチェで情報収集、あなたとエリクシルで薬調合と普通な感じで
-
846
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-20 08:01
ID:lnZ1BS7Q
[編集]
今回も2000文字制限の所為で変なところで分割だよ。(´・ω・`)
一応シナリオ的には半分切ってるので気長にお付き合いください。* * *
情報収集はミーシャとアリーチェ、そして治療は俺とエリクシル、この組み合わせで臨むとしよう。
先程の騒動から考えると、ミーシャが相手ならば村人達もある程度心を許してくれるのではないだろうか、同胞の子は家族同然と言った長を信じるとしよう。
万が一の為にアリーチェにも同行してもらい、エリクシルには例の如く奇病の調査をして貰う。 俺は名目上の助手兼護衛だ、流石にエリクシルも一人きりでは心細いだろう。「余計なお世話かもしれないけれど、そっちも十分に気を付けるのよ。」
「何かあったらすぐにお知らせしますねー。」アリーチェならば村人達に粗相をすることもないだろうし、ミーシャはなんだかんだ言って目ざといところがある、悪くないペアだろう。
手短に一旦の別れを告げると、こちらはエリクシルと共に奇病に侵されている村人の元を訪ねることにした。* * *
病に倒れた面々は集落の集会所――狩人が指すそれではなく、本来の意味合いでの場所――で横たわっていた。
簡易的な寝床に寄せ集められた住人は時折苦しそうな呻き声をあげ、身内と思われる人々が懸命の看病を続けている。
倒れているのは数名と言ったところか、太古の病魔やドスイーオスの件と比べれば見劣りしそうだが、元々集落で暮らしている人数を考えると看過出来ぬ事態だろう。「発熱……手足の麻痺……意識の混濁……」
病人の隣で膝をつくとエリクシルは手早く症状の確認に入る、本業は錬金術師とは言え似たような騒動も3度目となれば慣れたものだ。
……予想はしていたが、前回は倒れていたし前々回も調査に回っていた為、治療となると手持ち無沙汰だ、水枕の交換でも手伝うべきか?「ああ、どうして戦士達ばかり次々と……」
ふとしわがれ声の呟きが耳に入り振り向くと小柄な老婆が嘆きながら水枕を変えていた、戦士ばかりとは一体どういう事だろうか。
「皆それぞれ顔に紋様があるじゃろう? これはこの集落の習わしでね、戦いに長けた者は扱う武器に応じた紋様を顔に刻むのさ。」
事情を尋ねると老婆は親切にそう教えてくれた、改めて病人達を眺めてみると確かに顔の何処かしらに見張りの男のやミーシャの様なペイントがある。
「獣を狩りに行った者、野草を摘みに行った者、様々ではあるが山に出かけるなりこの有様じゃ……このままではいずれ儂も山に行かねばならぬか……」
物騒なことを言わないで欲しいものだ、しかし今の話が本当なら奇病に侵された戦士達は全員天空山に出かけたと言う事になる。
様は自分達ハンターと似たような仕事をしているのだろうが、それならば何かしらのモンスターに襲われたのだろうか? ……ふと何時かの影蜘蛛が頭を過ぎり背筋が凍る。
今全てを判断するには早計だろう、エリクシルを手伝いながら情報収集をしている2人の帰りを待ってから答えを出せばいい。 そう結論付けて水枕の取り換えに勤しむのだった。* * *
「お待たせしましたっ! 倒れた方々の容態も安定してきましたよ。」
あれからどれだけもしない内にアリーチェとミーシャは戻ってきた、すぐにでも情報交換と行きたかったがエリクシルの仕事が終わるまでに少々時間がかかってしまった。
おかげで集会所中に広がっていた呻き声は鳴りを潜め、代わりに落ち着いた寝息が聞こえてきている。「幾つかお薬を試してみて病気の正体もほぼ掴めました、少し奇妙ではあるんですけど……」
「なら、それを含めて情報交換としましょうか。」分☆割
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847
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-20 08:02
ID:lnZ1BS7Q
[編集]
2人が集めてきた情報によると病が流行りだしたのは数日前、食料調達に出かけた者数名が風邪のような症状を訴え始めてからだという。
微熱と全身の倦怠感、少し大人しくしていれば快方に向かうと誰もが思っていたが見る見るうちに症状は悪化し今の惨状に至る。
最初の発病者がこの状態になるまでの間にも2人、3人と同じ症状を訴える者が増え、遂にはこの集落の半数以上が倒れてしまった。「看病に当たっていた人が同じ症状に陥ることはなかったみたいですよー、空気感染とかじゃないみたいですねー。」
戦士達の間で蔓延した奇病、集落の人間は山神の祟りなどと言い出している者もいるらしいが――エリクシルが治療出来たという事はそんな類のものではないのだろう。
「ええ、結論から言ってしまうと――検出されたのは、ブナハブラの麻痺毒です。」
彼女が言うには、倒れた者全員に虫刺されの痕があったと言う。 その周辺の体液を分析してみたところ検出されたのはその麻痺毒と――
「……微量の狂竜ウイルスと、獰猛化エキスと一緒に。」
――厄介な二つのオマケだった。
* * *
「仮説ではあるんですけど、普通なら代謝で身体から排出される麻痺毒が、獰猛化エキスで活性化して体内に残留し続けたんだと思います。
その後遅効性の狂竜ウイルスの作用で免疫力が低下して風邪のような症状から始まって、最終的に麻痺毒が手足の麻痺や意識の混濁を招いた……。」
「確かにそれなら天空山に立ち入った後で発症したことも、倒れたのが戦士の方だけなのも、二次感染が起きていないことも全て説明がつくわね。」そこまで分かってしまえばその後の処置は早かった。
ウチケシの実を用いて狂竜ウイルスの活動を抑え込み低下した免疫力を復活させ、刺された場所から血抜きを行い毒素を排出し、解毒草の絞り汁で傷口を消毒。
後は適度な水分補給と出来る限りの食事で代謝を上げてしまえば程なくして熱も下がり始めてくるだろう、集落を襲っていた奇病の呆気ない幕切れだった。「でも、これは『原因』とは言えないわよね?」
険しい表情のままのアリーチェが発した言葉に頷きを返す、これは飽くまで治療法を確立しただけだ。
奇病の原因は狂竜ウイルスを取り込み、獰猛化までしているブナハブラ――そしてその裏に居る、短期間での変異を促した『何か』の存在。「場所が場所だから、狂竜ウイルスを取り込めるようになったって言うのはまだ納得がいく……けれど、小型モンスターまで獰猛化するのはやっぱり不自然ね。」
何らかの要因によって極度の興奮状態に陥ることで発現する獰猛化、元より気性の荒い大型モンスターならまだしも今回に至ってはあのブナハブラだ。
狩猟中でも気紛れに横槍を入れてくるあのモンスターが獰猛化するほど興奮する、そんな事があり得るとしたら――「生態系を崩しかねない程の何かが、この近辺に現れたってことですよね……?」
――今まで天空山に居なかった種、若しくは全くの新種かつ、二つ名持ちクラスの危険度を有したモンスター。 『何か』の正体はそんなところだろうか。
そいつを撃退するなり狩猟するなりしなければ、奇病の原因を突き止めたとは言えないだろう。「話によると、どんな腕の立つ戦士でも天空山の奥地には立ち入らないらしいわ、何かが身を潜めているとしたらそこじゃないかしら?」
「それか禁足地に入り込んでるかですねー、特に最近は危険なモンスターが屯してるみたいですしー。」アリーチェとミーシャがそれぞれ探すべき場所の候補を挙げてくれる、2人とも言い分も尤もなのだが、果たしてどちらを探すべきか。
既に陽も落ちかけている、探索は明日になるとしてもどちらから探すかは今の内に決めておきたいところだ――* * *
明日の行動方針を決めてください。(シナリオボスとかが分岐します。)
1.アリーチェの推す天空山の奥地を調べてみる。
2.ミーシャの推す禁足地を調べてみる。 -
848
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-20 12:25
ID:r58x5dLw
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獰猛な混沌ゴアとか期待して天空山で~
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849
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-22 10:55
ID:lnZ1BS7Q
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ぬぅ、風邪引いたか……? 一旦書けているところまで投げておこう、選択肢まで行けなくてスマヌ……
* * *
ブナハブラが影響を受けているということは、元凶も天空山の何処かにいる可能性が高い。
アリーチェの言うように天空山の奥地を調べてみることにしよう、もし当てが外れたなら禁足地に向かえばいいだけのことだ。「それじゃあ……もう今日は休みませんか? 私、流石に疲れちゃって……」
方針に誰も異存のないことを確認すると、エリクシルはおずおずと手を挙げながらそう進言してきた。
確かにシナト村を出てからと言うものの、山道を歩き、集落を探し回り、奇病の原因を探り――エリクシルだけではなく、皆疲労はかなり蓄積している。
二次感染の心配はないと分かっていても病人達と同じ家屋で休むことになるのは少々気が引けるが……何かあればすぐに駆け付けられる、強引にそう思っておくとしよう。
――粗末な毛布を被ってどれだけもしない内に寝息が聞こえ始める、余程疲れていたのだろう。 明日に備えて瞼を閉じ睡魔に身を委ねてしまうとしよう。* * *
まどろみだしてどれだけ経っただろうか、不意に衣擦れの音で目を覚ますと集会所から出ていく人影が目に付いた。
外はまだ暗いと言うのに、身を乗り出してみれば明らかに膨らみの足りない毛布が1つ有る。 何かあったのだろうか……仲間や病人達を起こさすよう注意を払い、入口へと向かう。「……あら、起こしちゃったわね。」
月明かりの先に居たのはアリーチェだった、ミス・ドンドルマ殿堂入りを果たすだけの事はあり、月光に照らされた佇まいはブランシュとはまた違う、凛とした美しさがある。
顎先でクイと隣を指され横に来るように示され、虫の声だけが静かに響く闇を進んで歩み寄る。「私、自分の事はもっと冷淡で淡白な女だと思っていたのだけれど……」
瞳に月を映しながらベテランランサーはぽつりとそう呟いた。
何時かの獰猛化テツカブラとの一件以来親し気にはなっていたが、個人的な頼みを聞くほどに親しかったとは意外だった。「こっちから協力を申し出たのよ、あの子の助けになるために。」
――ますます意外だった、興味を持った相手でもなければ中々に辛辣な言動を見せる彼女が此処までするとは。
「頭から離れないのよ。 あの時、私を庇った後に見せたミーシャの――ドンドルマの白髪鬼としての顔が。」
面識以前から2人を繋ぐ奇妙な縁、様々な偶然が折り重なって結果同じ名を冠することになった、全く違う2人。
「でも、私に出来ることは助けになる事だけだわ。」
夜の空気よりもずっと冷ややかな口調でアリーチェは語る、助けになるだけでも十分ではないかと思うのだが――遠くを見つめる彼女の横顔を覗き込み、続きを待つ。
「あの子が無茶をした時に止めることは出来るわ、でもミーシャに白髪鬼の顔をさせないように出来るのは……」
山風にブロンドの髪が揺れる、言葉を区切った彼女と初めて視線が交錯する。
彼女の振るう槍を思わせる、真っ直ぐな視線。 それが暫し瞳の奥を射貫いて――「……さ、話もここまで。 あまり夜歩きしていると身体に毒よ。」
一方的なまでに会話を切られ、アリーチェは静かに集会所へと引き返していく。
どことなく釈然としない気持ちでその背中を見送り頭上に輝く満月を仰ぎ見ると、濃い藍鉄色をした星海を一羽の鷹が悠然と横切っていくのが見えた。 -
850
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-24 01:15
ID:r2AQHDk2
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完全に風邪っ引きですが投げれるところまで投げておきます、短くなってスマヌ…
* * *
騒動から一夜明け、一部容態の回復した戦士達や村人の謝辞を背に受けながら、天空山のベースキャンプを目指し相も変わらず霧に包まれた山道を進む。
奇病の原因――天空山の奥地に潜む『何か』を突き止めなければならない、予測の付かぬ未知の手合いと言うだけでも、死闘となるのは間違いないだろう。
皆の装備は……概ね普段通りと言ったところだろうか、アリーチェは最早正装と化したセインスクウィードにEXレイアシリーズ、ミーシャは何時もの防具に手入れの行き届いた闘弓バリエンテ。
変わり種としては、いつの間に手に入れたやら自分でもまだ作ったことのない天眼一式で身を包み、瓢箪のような形状をした玩具染みた軽弩を担ぐエリクシルくらいか。
彼女達の事を心配する必要性はなさそうだ、寧ろ総合的な面で不安の残るのは自分自身なのかもしれない。 通り名持ちの2人やここ最近張り切っているエリクシルの足を引っ張らないようにせねば。「天空山の奥地……何が居ると思います?」
気を引き締めていると、眉根を寄せながらエリクシルが声をかけてきた。
ここは初めて訪れる狩場のため、地形や生態系について詳しくは知らないが、出立前にこちらを先導する2人に聞いた限りではかなりの種が生息しているようだ。「あれから少し考えたんです。 生態系を根本的に崩すようなモンスターが現れたなら、影響を受けたのがブナハブラだけなのはおかしいんじゃないかって……」
事実、以前とある事件がきっかけでこの天空山に狂竜ウイルスが蔓延した際は、阿鼻叫喚の地獄絵図になったとミーシャ達が話していた。
それを考えれば今の状況と言うのは被害が少な過ぎる、全種とは言わずとも甲虫種くらいは影響を受けていてもおかしくない筈だ。「もしかしたら、今天空山に影響を与えているのは強大なモンスターじゃなくて……」
「着いたわ、ベースキャンプよ。」――話している内に目的地に着いたようだ、エリクシルの言う推測も気になるが、ここまで来たら相対してしまう方が早いだろう。
アリーチェの広げる周辺地図を覗き込むと、どうやら天空山は狩猟エリアの中央付近がベースキャンプとなっているらしい。
意外にも狩猟エリアは少なく、名の通り天を貫くほど巨大な山脈ではあるが、この環境に適応した種やそもそもの生息域は限られているのだろう。「集落の情報通りだとすれば、ベースキャンプに近いエリアに異変はなさそうなんですよね?」
「エリア4は猫ちゃん達の住処ですし、エリア8には飛竜くらいしか寄り付かないですよー。」
「エリア2に居るのもババコンガ程度ね、一番怪しいのはエリア7かしら。」アリーチェが広げた地図を皆で覗き込みながら幾つか印を付けていく。
情報を纏めると、右回りか左回りかでエリア7を目指すことになるが……左回りならばエリア3を確認すべきかどうかも決めなければならないだろう。
此処からでも絶えず落石が――それも当たれば死は免れないサイズの物が――降り続けているのが見える、正直こんなおっかない狩場に長居もしたくない。
さて、奥地に進むルートはどうしようか……* * *
奥地に向かうルートを選択して下さい
1.エリア3は無視して左回りで奥地へ(BC→1→5→6→7)
2.エリア3も調査して左回りで奥地へ(BC→1→3→5→6→7)
3.右回りで奥地へ(BC→1→2→6→7)
4.自由枠(関係ないエリアも見たい、チーム分けしてそれぞれ回る等)MH4やったことねぇよ! 天空山分からねぇよ! って方の為にマップ乗せときます。
http://wiki.mh4g.org/data/1519.html -
851
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-24 06:37
ID:26otmwLw
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エリア3の調査もしながら採掘して懐を温めながら7に向かいましょう
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852
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-24 12:28
ID:ppizYosU
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BCを出る前に一度後ろを振り返ろう(提案)
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853
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-25 00:37
ID:r2AQHDk2
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>>852
フグゥ* * *
確かこの天空山は希少な鉱石が採掘出来ることでも有名だったはずだ、素材として使えなくても換金は可能だろう、タダ働きだけ御免被りたい。
と言う訳でエリア3にて調査と言う名目の採掘をしてから奥地に向かうことにしよう、異論は認めない。「その気概だけは見習うべきかもしれないわね……」
呆れた様子でアリーチェが先頭を行く、それに続いてミーシャとエリクシルも後に続いていく。 ……そうは言ってもこちらにとっては死活問題なのだが。
仲間に理解されない事を嘆きながらもベースキャンプを出ようとし――ふと振り返る。
背後に聳えるのは人が立ち入らぬよう封印の施された石門、僅かな隙間から覗くその先は禁足地と呼ばれる場所、いずれは足を踏み入れる日が来るのだろうか。
そう物思いに耽っているとその門の隙間から蠢くものが見えた、何やら小さく光るものがこちらへと近付いてくる。
はっきりとその姿を認識できるようになったのは足元までやってきた時だった、金色の細長い身体に両腕の鎌――蟷螂のようだがこちらの足を引っ掻こうとしてやたらと好戦的だ。
見たこともない虫だったため観察していたがこうまでされると煩わしくなってきた、脚を振り上げて思いっきり踏みつけてやると、潰れた蟷螂は四肢を痙攣させながらも絶命したようだ。「何かあったんですかー? 早く行ってお望みの採掘して奥まで行きますよー!」
遠くでミーシャが声を張り上げている、訳の分からない蟷螂などに時間を要らぬ取られてしまったようだ。
踏みつけた時のやたらと硬い感触に多少の違和感を覚えつつも、先にベースキャンプを出た3人を急いで追いかけることにした。* * *
なんだかんだと言いながら、しっかりと採掘に付き合ってくれる辺り皆いい仲間だと、飛竜の巣に程近い場所でポーチを眺めながらつくづく思う。
ポーチを満たした希少な鉱石の数々、頬を緩め切ってしまうのには十分値するだろう、これで今回かかる諸経費は賄えそうだ。「さ、満足したかしら? 早く奥地に向かうわよ。」
やれやれと言わんばかりの表情を浮かべるアリーチェは、さながら子供のワガママを聞く母親のようだ、本人に言えば大変なことになるだろうが。
結局はこのエリアには何も異変はないようだ、やるべき事は終わったのだから次はエリア5へ向かって――「いやぁあああっ!!」
劈く悲鳴が天空山に響く、今の声はエリクシル……ではない、ミーシャだ。 あいつがこんな叫びをあげるとは何事だろうか。
アリーチェとアイコンタクトを交わし崖下へ飛び降りると、そこには一心不乱に何かを踏みつけるミーシャと、それを唖然と見つめるエリクシルの姿があった。「はぁ……はぁ……っ!」
「み、ミーシャちゃん? 急にどうしたの……?」息を切らしてようやく脚を止めた彼女はおぞましい物を見るような目で後退る、そこまでして踏みつけていたものは――
「カマキリだけは大っ嫌いなんですよ! なんでこんな所に……ああ、気持ち悪いっ!!」
錯乱気味にまくし立てたミーシャの言う通り、踏み付けていたのは先程も見かけた蟷螂だった。 大胆不敵な彼女にもここまで苦手な物があったとは意外なものだ。
エリクシルが懸命にミーシャを落ち着かせる中、アリーチェは屈みこんで蟷螂の死骸を指で摘まみ上げる。「……こんな生き物、天空山で見た事ないわ。」
新種と言う事だろうか? だとすればこれが奇病の――ブナハブラが変異した原因となってしまう。
確かにあれだけ好戦的な気性の蟷螂に襲われれば瞬く間に食料となってしまうだろうが、こんなものが1匹2匹居たところで生態系が狂うとも思えない。「……ねぇ、嫌なことが頭に過ぎったんだけど。」
死骸を空きビンへ入れてサンプリングしたアリーチェが、険しい顔つきでそう切り出す。
「蟷螂って確か、卵鞘から無数に産まれてくるのよね?」
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854
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-25 00:38
ID:r2AQHDk2
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… … … … …
特に蟷螂が苦手という訳ではないが、背筋に冷たいものが流れたのが分かる。
これを踏み付けていたミーシャはエリア5の方を向いていた、つまりこの蟷螂はそちらからやってきたことになる。
ゆっくりと振り返る、エリクシルの戸惑う顔、ミーシャの引き攣った顔、アリーチェの強張った顔が視界を流れ――耳障りな甲高い鳴き声を上げながら大挙する蟷螂の姿が視界に入る。
今までの個体は幼体だったのだろうか、姿を見せたその蟷螂達は膝の高さ程まで成長している。「か、帰りましょう! ベースキャンプまで引き返しましょう!!」
「賛成よ、あまりにも部が悪いわ!」
「わ、分かりましたっ!」かなりマズイ状況ではあるが、撤退しようとする3人を慌てて引き留める。
あの蟷螂は禁足地からもやってきていた、引き返せば挟み撃ちになる――逃げるならば上しかないだろう。「うう……私にとってはこんなの悪夢ですよー!!」
誰よりも先にミーシャは蔦を掴んで一気に登っていく、それに続くようにして一斉に崖を登り蟷螂達から逃れようとする。
「あれだけの数が居たから……だから、捕食されるブナハブラが異常な変異を遂げたってことですか?!」
エリクシルの声に思わず後ろを振り返る、高い場所から見下ろすとこの場所に続く左右の道――エリア1、5両方から蟷螂の軍勢が迫っている。
……100匹は、居るだろうか? あれだけの数まともに相手に出来たもんじゃない、取り合えずこのエリアの一番上まで来たがどうするべきか。
逃げる手立てはなさそうだ、何とか迎撃しなければ――* * *
・蟷螂の軍勢に対する手段を決定して下さい。
1.此処から武器攻撃で迎撃する(アリーチェは射程外の為3D6×3)
2.アイテムを駆使し迎撃する(選択されたアイテム次第)
3.自由枠※シナリオボスのレギュレーション解説※
アトラル・カ幼体100匹(?!)との戦闘です、これから選択肢を選ぶごとに幼体達が崖を1段ずつ上がって来ます。
3回目の選択肢を選び終わった時点で追い付かれ一斉に襲われますのでそれまでに撃退を目指しましょう。
なお、主人公達の武器攻撃だけでは基本的に『一人につき3D6』の数しか減らせず、アリーチェに関しては『3回目の選択肢まで武器攻撃が出来ない』状態です。
普通に攻撃を重ねても撃破しきれるかは五分五分です、アイディアを駆使して撃退を目指しましょう。
なお狩技に関しては『最初から使用可能な代わり1つにつき1回まで』とします。(管理を楽にしようとする人間の屑全員のステータス
主人公 武器:灼炎のヴァルスター スタイル:ブシドー 狩技:アクセルレイン
アリーチェ 武器:セインスクウィード スタイル:ストライカー 狩技:未確定(選択肢を選ぶ際自由に決定可能です)
ミーシャ 武器:闘弓バリエンテ スタイル:ブレイヴ 狩技:未確定
エリクシル 武器:瓢弾【千成】 スタイル:レンキン 狩技:未確定 -
855
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-25 20:29
ID:ppizYosU
あなたとミーシャは選択肢1で通常攻撃
エリクシルは選択肢1に+αで鬼人弾を使った後にレンキン音波爆弾が作れるようになるまで通常攻撃(小型モンスター扱いになるのか知らんけど)
アリーチェは一応選択肢2で、蟷螂の群れがくるまでドーピングしててもらうついでに、時間が余ったら崖際に採れたてのライトクリスタルでも並べててもらおう(謎の儀式)フルで攻撃しても滅ぼせる確率はそんなに高くないけど、果たしてどういうギミックが仕込まれているのか……はっ!?まさか失敗した場合は小さい蟷螂がミーシャちゃんの服の中に入り込むというイベントが発生するという可能性も!?(殴
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856
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-25 20:30
ID:ppizYosU
[編集]
ぎゃーパス付けようとしたら誤爆したー
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857
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-25 21:47
ID:nWYzrp.w
[編集]
後ろのエリアから竜の卵盗んで崖下に投げれば発狂レイア召喚できるかな?とも思ったけど…流石にリスクが大きいか?
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858
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-26 11:01
ID:7ZXqssMU
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>>857
さすがにこっちにも被害出そうやしやるとしたら最後の選択の時やろなあ -
859
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-02-27 00:32
ID:r2AQHDk2
[編集]
あ、レンキンゲージ考えてなかったな……狩技と同じ扱いでいっか。(発想が適当な屑)
* * *
幸いこちらにはガンナーが3人も居る、槍の届かないアリーチェは兎も角として今なら地の利を活かして先手を打つ事が可能だ。
あれだけの数ならば適当に撃っても当たるというものだ、ジリ貧になる前に少しでも数を減らしておかなければ。「目、瞑りながら撃っていいですー……?」
「我慢しなさい、あれが一番上まで来るよりマシでしょう。」弱々しい声を上げるミーシャに対しアリーチェが静かに喝を出す、その手には赤いビン――鬼人薬グレードを握っている、自己強化を図っている辺り流石に抜け目がない。
ぐずぐずしていると岸壁に隠れて矢が当たらなくなってしまう、崖際に陣取ると灼炎のヴァルスターを引き絞り、眼下目掛けて矢を放つ。
虚空を切り裂いた矢は炎に包まれ、獲物を食いちぎる斬竜さながらに蟷螂達の身を焼いていく。
二の矢を構えんとした時、重みのある風切り音が真横を通り抜けたかと思うと少し遅れて鈍い衝撃音が響く、腹を括ったのかミーシャも攻撃に加わり始めたようだ。「当たってますよねー?! 後射線に入ったらそっちが退いてくださいよー!」
本当に目を瞑ってバリエンテを扱っている、こいつの蟷螂嫌いは筋金入りのようだ。 確かにあれだけの数が蠢いていると否応なしに不気味さは感じるが……
「そ、そうだ! 皆さん、これを!」
慌てふためくエリクシルの声と共に短い装填音がしたかと思うと背後から赤い光が身を包む、玩具みたいな見た目に反しあの軽弩には鬼人弾まで内蔵されているようだ。
攻撃の機会を減らしてでも効果的な支援を選択してくれた彼女には感謝しかないが、今はそれを伝える時間すら惜しい、慣れないながら再び弦を引いて迫る軍勢を焼き焦がしていく。「えっと、あとは……!」
「十分よ! あなたも攻撃に回って!!」一瞬戸惑いを見せるもアリーチェに指示を出され、短く呼吸を整えると自分の真横まで駆けてきて同じように崖際に陣取って軽弩を構える。
視線が交錯する、エリクシルは微笑みながら力強く頷いて見せるとボウガンのトリガーを引き、独特な銃声が立て続けに3度響き渡る。「早いわね……もう一段目まで登り切られてる。」
3種類の矢弾の雨に晒されながらも蟷螂達の勢いは衰えを知らない。
階段状になった台地の1段目をあっという間に制圧され、早いものは既に2段目へと登ろうとしている。
勿論死骸もかなりの数だ、頭や胴を貫かれたり、半身を弾丸で吹き飛ばされ絶命した蟷螂が数十体――全体の3割程度は減らせただろうか。
先程と違い、2段目の台地へ登る為の蔦はこちらから丸見えだ、先程よりは多少狙いやすいだろうが……単純な計算をしてしまうと、此処まで到達するまでに倒しきれるかはギリギリだ。アリーチェも攻撃に加われるラストスパートには余裕を持たせたい、その為には、恐らくここが正念場だ――!!
* * *
~1ターン目攻撃結果!~
エリクシルの鬼人弾による援護! 他3名の武器攻撃の達成値に+2!!
アリーチェの鬼人薬グレートによるドーピング! アリーチェの武器攻撃の達成値に+2!!(累計+4)
主人公、ミーシャによる武器攻撃! 群れに3D6+2のダメージ!!(主人公12+2、ミーシャ7+2)
エリクシルの援護後の武器攻撃! 援護による攻撃機会の損失もあり、群れに2D6のダメージ!!(エリクシル6)累計ダメージ29!(71/100)
* * *
・蟷螂の軍勢に対する手段を決定して下さい。 なおこのターンは相手を先程より狙いやすいため全ての達成値に+2されます。(選択肢が使い回しになるのだけはご了承下さい。)
1.此処から武器攻撃で迎撃する(アリーチェは射程外の為3D6×3)
2.アイテムを駆使し迎撃する(選択されたアイテム次第)
3.自由枠 -
860
名前:名無しさん
投稿日:2019-02-28 13:54
ID:v0KsZZZs
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んー・・・兎さんのことだから何か一気に撃退出来たりするギミック仕込んでそうなんだけどなんだろう?
とりあえず無難にあなたとミーシャでアクセルレイン、エリクシルはラピッドヘブン、アリーチェに崖の上からタル爆弾落として貰うとかかな -
861
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-03-01 00:48
ID:r2AQHDk2
[編集]
>>860
一応想定していたギミックのヒント:蔦、ヴァルスター、ゼルダの伝説。* * *
この位置からなら崖の蔦を伝い登ってくる蟷螂達の姿が丸見えだ、畳みかけるなら今しかないだろう。
この好機は絶対に逃せない、矢に薬袋を括りつけると頭上目掛けてそれを放つ――微かに煌めく粉塵が全身に降り注ぎ、一時的とは言え身体能力のリミッターが取り払われる。
比喩表現ではなく本当に動きの軽くなった身体で弓を構え直すと、こちらに迫る蟷螂の速度に負けじと次々と矢を番え放っていく。「ミーシャ、あなたもいい加減まともに攻撃しなさい!」
「嫌いって言ってるのに直視しろって言うんですかー! 悪魔! 鬼!!」
「鬼はあなたでしょうが!!」白髪鬼同士でしか絶対に出来ないやり取り、その後も不服そうに小さく唸っていたが漸く彼女も腹を決めたようだ。
涙目になりながらもミーシャも同じように薬袋を放つ、引き攣った表情で特徴的なリム越しに彼女の目が獲物を捉えると、重量に物を言わせた矢が次々と蟷螂を叩き落していく。「数の勝負だったら私だって負けませんから!」
弾丸を装填しながらエリクシルはその場で片膝を着く、まだ蔦に辿り着けず両腕をこちらへ振り上げて威嚇する蟷螂達に銃口を向けると、躊躇いなくトリガーを引く。
軽快な射撃音が立て続けに鳴ると、数瞬遅れて悲鳴染みた耳障りな鳴き声が次々と上がり始める。 掃射を行うならこれ以上適した狩技もないだろう。
――敵の減り方が先程の比ではない、これなら十分に押し切れる。 そう確信した瞬間、万全の状態で迎え撃つ準備をしていた筈のアリーチェが崖際へと躍り出た。「このままじゃ私の出番なさそうじゃない? これ位は……出来るわよっ!」
ドンッと重量感たっぷりな音と共に彼女は自分の両隣へと大タル爆弾――正確にはさらに一回り大きな大タル爆弾G――を設置する。
底が崖から少しはみ出た不安定な状態、蓋の縁に手をかけてすぐに落ちないよう支えながら機を待ち……数匹が2段目に台地を登り切ると同時に手前へと押し出す。
慣性に従い空中で少し回転しながら落下したそれは真下の台地へと激突し、すぐさま轟音と熱風が天空山を駆け抜けていく。
爆煙が収まると、身動きできる蟷螂は10匹程しか残っていなかった。 これで大勢は決した、最早後れを取る要素は何一つないだろう。そう考えると、得も知れぬ脅威を与えてきたこいつらに何かしらの意趣返しをしたくなってきた。 確か先程みた地図からするとこの先には――
「どうしたんですか? 急にニヤニヤして……え? レンキン音爆弾で? ……わ、分かりました。」
都合よく話しかけてきたエリクシルにある作戦を耳打ちする、かなり声が上ずっている辺り流石に面食らったのだろう。
急に踵を返し駆け出した俺をアリーチェが呼び止めるが、それも意に介さずエリア8へ入ると、中央に鎮座するそれを抱え込んで即座に来た道を戻る。「ちょっと、こんな時にふざけてる場合じゃ――」
そうこうしているうちに、残った蟷螂達は3段目の台地――俺達の逃げた高さまでやってきていた、ミーシャに至っては既に弓を背に戻して全力でこちらへ駆け出してきている。
彼女のこんな姿を見る機会はそうそうないだろうがそれもこれで見納めだ、エリクシルに合図を送るとその手から投げられた特別製の音爆弾が放物線を描き炸裂する。
甲高い音に蟷螂達がパニックを起こす、その隙にここまで運んできたものを頭上に掲げると、全身全霊の力を込めて蟷螂達の中心に放り込む。――響く破砕音、流れ出る生命の元、そして轟くは地を割る咆哮と羽ばたきの音。
自らが産んだ卵を壊され激昂した陸の女王が地に降り立つ、その怒りの矛先は一番近くに居た、一連の騒動に全く関係のない者に向けられる。
如何に数が集まろうとも、幾ら昆虫の中では巨体であろうとも、竜に勝るには至らない。 一方的な蹂躙が行われだしたのを尻目に、仲間たちへと撤退の合図を下すのだった。* * *
~2ターン目攻撃結果!~
主人公、ミーシャがアクセルレイン発動! 高速の攻撃で群れに4D6+4のダメージ!!(主人公10+4、ミーシャ13+4)
エリクシルがラピットヘブン発動! 群れに4D6+2のダメージ!!(エリクシル12+2)
アリーチェが大タル爆弾Gを投下! 群れに15の固定ダメージ!!累計ダメージ89!(11/100)
3ターン目で負ける要素がなくなったので3回目の判定省略、勝利!! -
862
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-03-03 04:40
ID:r2AQHDk2
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あの蟷螂はベースキャンプの奥、禁足地からも姿を見せていた。
その為キャンプにすら寄らず一目散に集落へ引き返したのだが、どうやらそれが功を奏したようで何事もなく帰還することが出来た。
アリーチェが瓶詰めした幼体の死骸を引き渡し、奇病の真相についての推察を伝え、快復した戦士達に見送られながらシナト村に引き返し――今はベルナ村へ帰る飛行船の上だ。――夜風に晒され今になって身体が震える、未知のモンスターなど危険極まりないのは分かり切っているのに、あの数を相手によく切り抜けたものだと思う。
一度に相対したモンスターの数も、倒しきったモンスターの数も3桁に届こうという狩人は恐らく他には居ないだろう――キャラバン隊の加工屋に採掘した鉱石を鑑定して貰いながらそんな事を考える。
「どれもこれも……龍暦院では使えない鉱石だな……せめて俺が買い取ってやろう……」
その巨体に見合うゆっくりとした口調で告げると、天空山で採れた鉱石の山があっという間に硬貨の山に置き換わる。
色々と大変な目にはあったが、これだけでも今回遠出した価値は十分にあったと言えるだろう。「この素材は……中々に癖が強かったぞ……」
――収穫はもう一つある、どさくさに紛れて撤退しながら集めてきたあの蟷螂の甲殻類だ。
走りながら拾い集めた程度なので数は多くないが、何かしら作れはしないかとダメ元で手渡してみた所、採取した鉱石の一部も交えて一振りの狩猟笛へと仕上げてくれた。「甲殻とは思えない程硬いが……その分脆い……まともに使うなら工夫が要るだろう……」
黄金に輝く美しくも妖しいデザインは、あの蟷螂の異質さをそのまま形にしたかのようだった。
結局あれが何だったのかは分からず終いだが、報告書だけ提出すれば後の事は龍暦院が対応してくれるだろう。「ベルナ村まではまだかかる……今はゆっくり休むといい……」
慣れない山道を歩き続けて身体は確かに限界だ、しかしその前に結局有耶無耶になってしまっている事を確認せねば。
アイツの事だ、また甲板の何処かで空でも見ながらあの歌を歌っているのだろう。 その辺りを歩いていればすぐに見つかるはず――「あら、用事は済んだの?」
探しに行こうとしたところでばったりとアリーチェと出くわす、完成したばかりの狩猟笛を見せこれからミーシャを探すつもりだと告げると彼女は何も言わずに首を縦に振る。
「ミーシャなら船首の方に居たわよ、また歌っていたわ。」
行きは後ろで帰りは前か、気紛れで何処かへ移動する前にさっさと捕まえてしまおう。
船首へと向かうために彼女とすれ違おうとして――その表情が妙に神妙であることに気付いて脚を止める。「テツカブラの狩猟に行って、あの子の話を聞いて……私なりに考えていた事があるの。 産まれてくる意味とか、死んでいく意味とか。」
問い質したわけではないが、アリーチェは静かに心の内を吐露し始める。
……正直、哲学めいていて何やら難しい話だ、そんなことは考えたこともないし、考えたとしても自分には答えなど分からないだろう。「ええ、きっと正解なんてないわ。 ……でも、何のために生きているかは?」
唐突に、メイレーの顔が脳裏を過ぎった。 アリーチェの言わんとしている事は何もミーシャの件だけではなく、彼女にも通じる部分があるのだ。
2人が決定的に違うのは手にしようとしているもののベクトルだけだ、ならばその過程において彼女が『白髪鬼』のような存在になったとしても不思議ではない。……だが、その後は? 彼女の望みが順当に叶ってハンターになれたとして、彼女の目標が――容易に想像できる仇討が――達成された時、彼女に何が残る?
「私はあなたと会えて良かったと思っているわ、ミーシャもエリクシルも同じ。 ……だから、何時かあの子がそう思えるようにね。」
全てが終わった後メイレーがからっぽにならないようにしろ――そう言いたいのだろう、スケベハンターなどと言われる男には重責過ぎやしないだろうか。
「さ、早くしないとミーシャがどこかに行っちゃうわよ。」
背負った物の重さを痛感しているこちらの事もどこ吹く風に、言いたいことだけを言うとアリーチェは軽く手を振って船室へと姿を消してしまうのだった。
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863
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-03-03 04:41
ID:r2AQHDk2
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釈然としないままに1人残されてしまい、仕方がなく再び船首の方へと歩を進める。
アリーチェとは予想外に重大な会話をしてしまったが、そもそもはミーシャが養父の家で手に入れた物――彼女の求めているものが一体何だったのか、それを聞いておきたいだけなのだ。「きゃっ……!!」
歩き出してすぐ、飛び出してきた人影――今度はエリクシルとぶつかる。
「ご、ごめんなさい! 前を見ていなくて……」
彼女は彼女で様子がおかしい、しきりに目を擦っているし目の周りは真っ赤になっている。
すっかり泣き腫らしたであろう事は一目瞭然だったのだが、一体何を此処まで泣くことがあったのか……「さっきまでミーシャちゃんと話してて……助けられてばかりだったのに助けになれて、それで……っ!」
エリクシルには珍しく要領を得ない喋り方だが、どうやら感涙の類なのは間違いないようだ。
泡狐竜を狩猟した一件以来親密な2人だが何かとエリクシルは彼女に助けられる節が多かった、それだけにミーシャの根幹に関わるような事で力を貸せたのは嬉しかったのだろう。
とりあえずは時折えずき交じりにな程に泣き続ける彼女を落ち着かせるのが先決だ、絞り出される言の葉を聞き逃さぬよう丁寧に相槌を打ち話を聞いていく。「すみません、お見苦しいところを……」
息も整い冷静さを取り戻したエリクシルが頭を下げる。 どれだけ話を聞いていただろうか、それだけ彼女にも思う所があったのだろう。
何はともあれ、これなら彼女はもう大丈夫だとは思うが……船室まで送るべきだろうか。「あのっ!」
対応に迷っていると唐突にエリクシルが顔を上げた、彼女の瞳の中に困惑した自分の顔が映り込む。
「私……足手纏いなのは分かってますけど、やっぱりあなたの隣に居たいんです。 狩猟も、そうじゃない時も。」
唐突な言葉に思わず狼狽えてしまう、ミーシャからも告白紛いの事は言われたが、これは疑いようもなく完全に告白だろう。
「今はミーシャちゃんの傍に居てください、でも……私をあなたの横を歩かせてください、頑張ってついていきますからっ!」
天空山で見せた笑みの理由が分かった気がして、言葉も返せず頭を掻く。
結局は彼女に言われたことを理由にし、答えを保留にしたまま足早にその場を立ち去り、逃げるように船首の方へと向かうのだった。 -
864
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-03-03 04:42
ID:r2AQHDk2
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「悲しみに 追いつかれぬよう――♪」
漸く辿り着いた船首では、ミーシャがいつもの歌を歌っていた。
甲板を駆け抜ける風が真っ白な髪を揺らし、ただでさえ際どい彼女の防具が更に際どくはためく。「……見たいなら幾らでも見せてあげますよー、まぁ、今見たいのはこっちだと思いますけどー。」
邪な視線に気付いたのか、夜空を眺めていたミーシャが背を向けたまま手を差し出す。。
その手に握られているのはあの集落――養父の家で彼女が手に入れた、彼の手記に挟まれていた封筒。
何も語らず無言で差し出してくるというのは中の物を見ても良いと言うことなのだろう、それを受け取り中を覗くと1枚の便箋が入っていた。
丁寧に折り畳まれたそれを開く、便箋の中央に小さく弱々しい文字で書かれていたのは、たった数文字のメッセージ。――傍で歩みを見守れないのが無念ですが、どうか凛と往きなさい。 愚かな母の唯一の願いです、貴方は幸せにおなりなさい。――
「笑っちゃいますよねー。 生まれた理由が知りたいとか、変に格好つけて鬼とか呼ばれて、蓋を開けてみれば何の変哲もない結果ですよー。」
恐らくここに書かれてあるメッセージは、ミーシャの母親が最後の力を振り絞って書いたものなのだろう。
共に生きられない事への懺悔と、切実に乞い願う娘への幸せ――彼女の言葉を借りるなら、疑いようのなく明確な『自分が望まれて産まれてきた』という証明。「何の変哲もないのにー……ははっ、なんで……っ。」
月の光に照らされて、彼女の眼から零れた涙が光る。
無理もないだろう、どれだけ下らなかろうが、たとえ悲惨な結末であろうが、これが彼女が追い求めていた答えなのだから。――白髪鬼だの呼ばれている彼女も特別な存在ではない、今回の件でミーシャの意外な一面を垣間見てつくづくそう思ったのだ。
「一体私を何だと思ってるんですかー、蟷螂は嫌いですし、泳げないですし、野菜はあんまり好きじゃない普通の女の子ですよー。」
……いや、まぁ、それも意外だが、そう自分から積極的にイメージを崩されると色々戸惑ってしまう。
掴みどころがなく大胆不敵で、それでいて常に冷静に敵を見据える優秀な弓使い。 彼女にはこれからもそんな存在であってほしいものなのだが。「どんな完璧超人ですか私は、お義父さんの歌詞が少し嫌だったから最後まで歌いきれなかった小心者ですよー?」
声色が変わり言動に軽口も混ざってきた、少しはいつもの調子が戻ってきたようだ。
しかし何度か聞いた歌だったがまだ続きがあるとは初耳だ。「折角だし聞いていって下さいよー、1人じゃまだ歌いたくないですしー。」
手で軽く目を擦ると、軽く咳払いをして喉の調子を戻す。
すぐそこに、手を伸ばせば届きそうな位置にある満月を見上げながら、彼女は歌を紡ぎだす。* * *
――やがて加速する白い吐息 煌めく花になり 砕けては胸を刺す それでも
群れた奴らが噂する 悪意の風に曝され 夜鷹はただ翔け昇る
死んでもいい 生きてるなら 燃えてやれ――
* * *
~シナリオ51:よだかの星~ & ~シナリオ30.5:鬼ガ狩ル鬼蛙~ CLEAR!!
GET:宝笛の金属器
GET:勲章・鷹翼の紋(ミーシャの出生を解き明かした証、彼女とおそろいのペインティング。) -
865
名前:よだかの星@兎
投稿日:2019-03-03 04:43
ID:r2AQHDk2
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今回も長々とお付き合いありがとうございました。
SSにはいつも作者の『書きたい』と読者の『読みたい』とのギャップが生じる物だと思っていますが、今回は『書きたい』を前面に押し出して執筆させて頂きました。
その為読者の方々にはつまらなく感じる部分もあったと思います、申し訳ありません。 それでは恒例の解説とさせて頂きます。・シナト船での選択肢
選択したキャラと会話イベントが起きます、仲間3人であれば今回のストーリーの掘り下げ関係、我らの団の誰かならMH4Gに絡めた会話を考えていました。
団長だったら「お前さんはうちのお抱えハンターとよく似た目をしているな!」みたいな会話を考えていました、なんだかんだ彼はいいキャラしていると思います。・言い包めの選択肢
何気ない選択肢のようですが実はストーリー展開が分岐します。
今回は大きく分けて『村での調査』『養父の家の捜索』『天空山の調査』の3パートから成り立っており、どこから開始か決定する選択肢でした。・メンバーの分け方
ほぼ演出の差が出るだけになります、が一応主人公が向かった方だけより詳しい情報が手に入るようにはしてあります。・天空山or禁足地
ボスはアトラル・カ固定ですが、天空山では幼体100匹の撃破、禁足地では卵鞘の破壊がクリア条件になります。・調査ルート
ボス戦を行うエリアと制限ターンが変わります、本来エリア3を調査した場合は挟み撃ちを受けて2ターンで撃破し切る必要がありました。
まさか、後ろ振り返るなんてなぁ……(遠い目)・ボス戦
手数を増やす系の案はダイス数、バフ系の選択肢は固定値に修正が加わります。
アイテムは閃光玉等の行動妨害系はダイス増加、タル爆弾は固定ダメージ、因みに2段目登攀中に蔦を焼く案が出された場合固定値50というギミックを仕込んでいました。・シナリオクリア
本シナリオだけではなく後味の悪かった『鬼ガ狩ル鬼蛙』もようやくクリア扱いです。
長いパスになりましたがここまでやってこれたことを皆様に感謝。・タイトル
ミーシャちゃんの核心に繋がるシナリオということでテーマソングのタイトルをそのままお借りしました。
これまで書いてきたシナリオの展開次第ではミーシャちゃん死亡エンドも考えていましたが――これだけ皆様に愛されることになり、作者としても喜ばしい限りです。さて、もしかしたらタイトルで何となく察している方が居るやもしれませんが、これで私、兎がテキクエで書くシナリオは最後になります。
書き始めて早2年と言うべきか、たった2年と言うべきか、何にせよ非常に濃密な時間を過ごさせて貰いました。
スレ内ではプロや筆頭ライターと言った賛辞を頂き、スレ外でも皆様の暖かい対応の数々……自分は幸せ者ですね。
最後になりますが、散々公言している大好きなバンド、Sound Horizonのとある歌詞を引用してお別れの挨拶の代わりにしたいと思います。* * *
僕等 此れが最後かもしれないけど
さよならは嫌だから 5文字の【伝言】-message- 唯 遺して逝きたいんだありがとう
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866
名前:名無しさん
投稿日:2019-03-06 02:29
ID:v6C69k2U
[編集]
普段なら作者陣からのお疲れ様ラッシュがあるのにもうそれも無いんだな・・・
いつも斬新で面白く読み手の目線に立った楽しいシナリオを投稿し続けてくれた兎氏には感謝してもしきれないこちらこそ、ありがとう
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867
名前:名無しさん
投稿日:2019-03-14 00:12
ID:NakhxNcU
兎氏お疲れ様でした。いつも楽しく読ませてもらっていました。もう兎氏のシナリオが読めないことが悲しいです。
今までありがとうございました。 -
868
名前:イオン・H・ハイアーインズ
投稿日:2019-03-20 09:02
ID:sX..C1vc
[編集]
ミーシャこと兎氏、お疲れ様です。
あなたに幾度も助けられてハンターを続けています。
今は少し休んでいる状態ですが、また狩りに行くことがあれば、あなたのくれた二つ名に恥じぬプレイをしたいと思います。
『夕刻の蝶』ことイオン・H・ハイアーインズより、心からの賛辞と感謝を。エリアル万歳!
ミラバルカンのメテオだってアマツマガツチのヒレ何でやねんだって「飛べば避けれりゅ!」 -
869
名前:名無しさん
投稿日:2019-04-18 22:56
ID:ozfWGhCI
[編集]
まだ作者さん達残ってるんだろうか(ごきげんようしたあの人除いて
シナリオは終わりにしろ裏話のリクエストとか一問一答投げたら答えてくれたりしないかな -
871
名前:名無しさん
投稿日:2020-05-27 19:35
ID:gZo0QGfE
へ
-
872
名前:猫の手
投稿日:2020-08-05 10:42
ID:k0UDzQCM
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もう作者陣の皆さん含めて誰もこのスレにいないのでしょうか?
このスレのお話好きだったのに…まだまだ回収してないフラグとかありますし、このコメントみた作者陣の皆様、どうかシナリオ52をお願いします!(渇望のピアス装備済み)
(お前がかけと?文才ないんだよ)
とりあえず、これみた人コメントください -
873
名前:暇
投稿日:2020-08-28 19:37
ID:kZJtOvU.
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へーい(ドスジャギィ)
-
874
名前:猫の手
投稿日:2020-09-04 16:42
ID:ZwqjZB4k
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ふう。やっと1人か、…次が読みたい。
このスレ大好きで、2年前ぐらいにモンハン始めた上位ハンター(村上位)(ダブルクロス)なんですけど、このスレの物語が面白くてすぐに読み終わりました!続きが読みたいです!
にしても暇さんやばすぎ兎さんや蟹さんのシナリオをそこそこって言えるぐらい文才あるとかやばい。 -
875
名前:名無しさん
投稿日:2020-09-04 23:51
ID:qtlCqPzY
[編集]
>>874
このテキクエの続きはもう無い
終わってしまったんだ
総合雑談スレ728辺りから読め -
876
名前:暇
投稿日:2020-09-05 08:04
ID:T0XJ9E7U
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はえ~雑談でやってたんすねぇ~
考えてた筋書きがポシャるくらい日常茶飯事だから気にしすぎることないない
兎さんなんだかんだで出没しとるならまた新しい巣箱置いといて月一更新くらいにしとけば寄ってくるやろ(適当)>>874
ネタばれを恐れぬ猛者で草
なお、おだてても効かん模様(謙虚) -
877
名前:猫の手
投稿日:2020-09-15 17:48
ID:U0tCT1Ic
[編集]
>>876
ちなみに僕は、このスレの書き込みが更新されなくなった後に来たで
それと、これって本当に終わったんですか?始動者暇さんですし? -
878
名前:名無しさん
投稿日:2020-09-15 19:44
ID:MuxKUwRg
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>>877
別に原案者が終了宣言した訳ではないから暇氏の一言次第で再開も正式終了もできる
実際のところ勘違い読者に叩き出されたり存在忘れてたりごきげんようしたり真っ当に再開しようとして訳のわからん批判や身内に足引っ張られたりしたりで他の作者居ないからかなり厳しいけど -
879
名前:猫の手
投稿日:2020-09-16 21:05
ID:U0tCT1Ic
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>>878 まあ、作者は、読者がなればいいし、今四人人確認されてるし、批判されたら批判されたで考えれば良くない?
ただ、あらすじのために時雨さんを探さないとな -
880
名前:暇
投稿日:2020-09-19 20:51
ID:BiAloAlU
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自分はワールド出るまでの暇つぶしくらいのノリで始めてこんな続くと思ってなかったし、実際ワールド出てからは放ったらかしだったしなぁ…
ここまで続けられるくらい協力してくれた参加者の皆にも、興味はなくとも容認はしてくれていた他の住人達にも、感謝はしとる…が、自分だけの一声で再開とは現状いくまいよ。
(期待に沿えなくて)すまんななのでワールドにミラ来るまでとスイッチにライズ出るまでの暇は単発専用物語スレ立てたのでそっちでつぶしまーす!!!(は?)
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881
名前:名無しさん
投稿日:2020-09-19 23:24
ID:zI88a.Ds
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仮に再開したとして兎氏並みの文章持ってこいとは言わないけど暇氏や千壱氏レベルはないと読みたくないね
文章力とかじゃなくて選択肢ド下手とか読者置き去りやヒール気取りなのはもう勘弁じゃあ読まなければいいって? 実際リアルタイムでも名前伏せてる作者の話は読み飛ばしてたよ
-
882
名前:名無しさん
投稿日:2020-09-21 21:08
ID:BiAloAlU
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>>881
千壱さんいいよね…リィというキャラクターを生み出しただけでもマジリスペクト(露骨なスレ埋め雑談)
コメント書き込み
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